(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】異常検知式部品供給装置
(51)【国際特許分類】
B65G 43/08 20060101AFI20241107BHJP
B65G 47/08 20060101ALI20241107BHJP
B65G 47/90 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B65G43/08 E
B65G47/08 C
B65G47/90 Z
(21)【出願番号】P 2024044220
(22)【出願日】2024-02-29
【審査請求日】2024-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512035918
【氏名又は名称】青山 省司
(72)【発明者】
【氏名】青山 好高
(72)【発明者】
【氏名】青山 省司
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-225369(JP,A)
【文献】特開平07-299792(JP,A)
【文献】特開平02-269579(JP,A)
【文献】特許第2728790(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/00-43/10
B65G 47/00-47/96
B23P 19/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体は、主部材と蓋部材によって構成され、
前記主部材に、送給力によって移送通路を移動してきた部品を受け入れる
導入溝とこの導入溝に連続している移行通路が設けられ、
前記移行通路に受け入れられた部品を前記移行通路の端部まで移行させる進退動作式の押圧部材が設けられ、
前記移行通路の端部に位置している部品を挟み付けて固定状態とする、前記移行通路の内端面と、前記押圧部材の押圧面が形成され、
前記内端面は、開放された移行通路を閉鎖するとともに主部材に固定される端部材の外側面の一部によって構成され、
部品が
前記移行通路の内端面に到達したときから、部品の存在を示す信号を継続的に発信し続ける部品検知センサーが、
前記内端面を有する端部材に取り付けられており、
前記移行通路の端部で固定状態とされた部品の一部が前記装置本体から突き出るように構成されることにより、この突き出ている部分が被保持部分とされ、
前記被保持部分を保持して部品を目的箇所へ供給する送給機構が、部品を保持し損なった状態で前記目的箇所へ移動することが発生したとき、部品が前記移行通路の内端面に到達し
て固定状態とされたときから継続して発信されている部品残存信号
と、部品を保持し損なって前記目的箇所へ移動する送給機構の動作から発信される信号によって、異常検知信号が発信され、この異常検知信号によって、
前記内端面と前記押圧面との間で挟み付けられて固定状態とされている部品に向かって前記送給機構を復帰させるとともに、再度前記被保持部分の保持動作をするように構成したことを特徴とする異常検知式部品供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の箇所に待機させた部品を保持して、目的箇所へ供給する異常検知式部品供給装置に関するもので、とくに、待機している部品を保持し損なった場合の対応策に特徴がある。
【背景技術】
【0002】
特開2011-225369号公報には、パーツフィーダなどの部品供給源から送られてきた部品を、所定の箇所に待機させ、この待機部品をロボット装置で保持して、目的箇所へ供給することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている技術は、送り込まれてきた部品を左右に振り分けて所定の箇所に静止させ、ついでロボット装置で部品を保持し、目的箇所へ供給するものである。この先行技術においては、ロボット装置が部品を保持し損なったとき、すなわち保持ミスが発生したときの対応技術については、何も記載されていない。
【0005】
以下の説明において、部品を保持し損なったことを、保持ミスと表現している。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、装置に組み込まれた簡単なセンサーからの継続的な部品検出信号によって、自動的で確実な保持ミスの検出を遂行させるとともに、正常な部品保持を自動的に実行させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
装置本体は、主部材と蓋部材によって構成され、
前記主部材に、送給力によって移送通路を移動してきた部品を受け入れる導入溝とこの導入溝に連続している移行通路が設けられ、
前記移行通路に受け入れられた部品を前記移行通路の端部まで移行させる進退動作式の押圧部材が設けられ、
前記移行通路の端部に位置している部品を挟み付けて固定状態とする、前記移行通路の内端面と、前記押圧部材の押圧面が形成され、
前記内端面は、開放された移行通路を閉鎖するとともに主部材に固定される端部材の外側面の一部によって構成され、
部品が前記移行通路の内端面に到達したときから、部品の存在を示す信号を継続的に発信し続ける部品検知センサーが、前記内端面を有する端部材に取り付けられており、
前記移行通路の端部で固定状態とされた部品の一部が前記装置本体から突き出るように構成されることにより、この突き出ている部分が被保持部分とされ、
前記被保持部分を保持して部品を目的箇所へ供給する送給機構が、部品を保持し損なった状態で前記目的箇所へ移動することが発生したとき、部品が前記移行通路の内端面に到達して固定状態とされたときから継続して発信されている部品残存信号と、部品を保持し損なって前記目的箇所へ移動する送給機構の動作から発信される信号によって、異常検知信号が発信され、この異常検知信号によって、前記内端面と前記押圧面との間で挟み付けられて固定状態とされている部品に向かって前記送給機構を復帰させるとともに、再度前記被保持部分の保持動作をするように構成したことを特徴とする異常検知式部品供給装置である。
【発明の効果】
【0008】
部品検知センサーからの信号は、移行通路の内端面に部品が到達したときから継続して発信されているので、この継続信号を根拠にして、保持ミスによる部品残存の異常状態を検知することが確実かつ簡単に行うことができる。この異常検知の方策としては種々なものが採用できるが、例えば、タイマー装置を用いて、継続して発信している発信時間が所定時間に達したときに発信される信号をトリガーにして異常を判定したり、部品を保持しないまま目的箇所へ移動する送給機構の動作から得られる信号をトリガーにして異常を判定したりすることができる。異常判定で得られた信号をトリガー信号にして、送給機構を再作動させ、残存している部品を保持する。このような保持ミスの検知、残存部品への再保持動作が一連の動作として自動的になされるので、信頼性の高い異常検知式部品供給装置が得られる。
【0009】
このように、部品検知センサーからの信号を継続した状態で発信させているので、上記のようなタイマー装置からのタイムアップ信号や送給機構からの動作信号で異常状態を検知することができ、この異常検知信号によって、再び送給機構による部品保持動作を行わせることが可能となり、信頼性の高い部品供給が実現する。
【0010】
また、部品検知センサーからの継続信号と、上記のようなタイマー装置や送給機構からの信号が揃ったところで異常状態を確実に検知することができる。この検出信号によって再び送給機構による部品保持動作を行わせることが可能となり、信頼性の高い部品供給が実現する。また、部品検知センサーからの継続信号と、上記のようなタイマー装置や送給機構からの信号が揃ったところで異常状態を検出するものであるから、正常な繰り返し作動の中で万一保持ミスが発生しても、自動的にかつ確実に保持ミスを検知して送給機構の再動作ができるので、生産ラインにおいて部品欠如などのない信頼性の高い異常検知式部品供給装置が得られる。
【0011】
また、部品検知センサーからの継続信号に対して、他の信号を関与させて部品の保持ミスという異常状態を検知するものであるから、他の信号として、例えば、上述のようなタイマー装置などからの信号を活用して、自動的検知や送給機構の動作の信頼性向上が確保できる。
【0012】
本願発明にかかる異常検知式部品供給装置を入手して、既設の設備から得られる信号を活用して、前述の継続信号から異常状態の検出へ導くことができるので、汎用性の高い部品供給が得られる。つまり、上記のような部品検知センサーから部品残存信号を発信し続けることができる異常検知式部品供給装置を入手し、既存の設備事情に適合させた態様で異常状態の検出が行えるので、使い勝手のよい異常検知式部品供給装置の提供が可能となる。
【0013】
上述のように、部品検知センサーからの継続した信号を活用するものであるから、部品検知センサー自体に特別な機能を付与する必要がなく、装置構造の簡素化にとって有利である。
【0014】
本願発明は、異常検知式部品供給装置という装置発明であるが、部品検知センサーからの継続信号を利用して保持ミスを検出する過程などに注目した方法発明として存在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図6】移行通路の端部を部分的に示す平面図である。
【
図7】送給機構を含めて示した全体的な側面図である。
【
図9】押圧部材を電動モータで進退させる場合の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の異常検知式部品供給装置を実施するための形態を説明する。
【実施例】
【0017】
【0018】
最初に、供給される部品について説明する。
【0019】
本願発明で扱われる部品としては、頭部付き軸状部品、プロジェクションナット、ボルトなど、種々な部品が対象となるが、この実施例では、一般的なボルトが対象とされている。
【0020】
ボルト1の形状を、
図3によって説明する。ボルト1は、六角形の頭部2と、頭部2に一体化されている円形のフランジ3と、雄ねじが切られた軸部4によって構成されている。そして、ボルト1は、磁性体である鉄材料で作られている。
【0021】
つぎに、移送通路について説明する。
【0022】
パーツフィーダ5から吊り下げ状態で移動してきたボルト1は、直進フィーダ6に移載されて装置本体7に送り込まれる。直進フィーダ6は、一般的に使用されている形式のもので、平行に配置された2本のガイドレール8に、吊り下げ状態(首吊り状態)で移送される。ガイドレール8の上面がスライド面9とされ、フランジ3の下面がスライド面9上を滑動するようになっている。なお、2本のガイドレール8は、
図3に示すように、鋼板製の結合部材10によって一体化され、
軸部4は両ガイドレール8の間を通過するようになっている。このガイドレール8の間の空間が移送通路8Aである。
【0023】
ボルト1に送給力を付与して、装置本体7へボルト1を送給するようになっている。そのために直進フィーダ6が設置してある。直進フィーダ6は、装置の機枠などの静止部材11に固定された基板12上に配置してある。傾斜姿勢で配置した2つの板バネ13の上端がガイドレール8の一部である結合部材10に固定され、板バネ13の下端が基板12に固定されている。基板12上に電磁石14が配置され、この電磁石14への電流を断続させることによって、ガイドレール8に上下方向と進退方向の合成振動を付与して、ボルト1に送給力が伝達される。
【0024】
図4に示すように、送給される部品がプロジェクションナット32に変わった場合には、ガイドレール8を、ガイド溝36を有するガイドレール37に変更する。
【0025】
上記送給力は、合成振動をガイドレール8に付与しているものであるが、このような手法に換えてエアシリンダで動作するプッシュロッドのような機構を採用することも可能である。
【0026】
つぎに、装置本体と移行通路について説明する。
【0027】
装置本体7は、主部材16と後述の蓋部材19によって構成されている。主部材16は、直方体の形状をした材料部材によって作られている。主部材16には、移送通路8Aからのボルト1を受け入れる導入溝17と、ボルト1を所定の箇所へ移動させる移行通路18が形成されている。導入溝17に入ったボルト1が移行通路18の端部まで移行できるようにするため、導入溝17と移行通路18はL字型になって連続している。また、導入溝17と移行通路18は、いずれもボルト1を吊り下げ状態で移送できるように、軸部4の長さよりも長い深さ寸法の溝形構造になっている。主部材16の上面は平面29になっており、フランジ3の下面がこの平面29上を滑動するようになっている。
【0028】
移行通路18は、主部材16の端部で開放されているので、それを閉鎖するために、厚板で作られた端部材19が主部材16に固定してある。この固定はボルト付けや溶接など種々な方法が採用できるが、ここでは
図6に示した固定ボルト20が使用されている。主部材16および蓋部材19は、ステンレス鋼のような非磁性材料で作られている。こうすることによって、後述の永久磁石の吸引力がより強くボルト1に作用する。
【0029】
移行通路18に連続した状態でガイド溝21が形成され、ここに進退動作式の押圧部材22がはめこんである。押圧部材22を進退させる構造としては種々なものが採用できるが、ここではエアシリンダ23が用いられている。エアシリンダ23は、主部材16の端部に固定され、そのピストンロッド24が押圧部材22に結合されている。なお、主部材16、エアシリンダ23は、静止部材11に結合部材25を介して強固に固定してある。
【0030】
押圧部材22の端面は、ボルト1の進入を妨げないようにするために、最後退位置が移行通路18に突き出ない位置とされている。そして、押圧部材22の端面は、導入溝17から進入してきたボルト1を移行通路18の端部側へ移動させるための、押圧面26とされている。この押圧面26は平坦な面であり、押圧部材22の進退方向線が押圧面26に対して、垂直になっている。
【0031】
押圧部材22が進出するときに、押圧部材22が導入溝17に待機している軸部2に干渉してはならないので、軸部2を導入溝17の箇所で停止させる必要がある。そのために、永久磁石27を導入溝17の近くに配置してある。ここでは、主部材16に埋め込んだ態様となされている。導入溝17に入ってきたボルト1は、永久磁石27で吸引されて制動力を受ける。永久磁石27に換えて、電磁石や真空バキュームで吸引したり、細長い規制ロッドを進出させたりすることも可能である。
【0032】
移行通路18の内端面28は、蓋部材19の外側面の一部によって構成されている。移行通路18に入ってきたボルトの軸部4が、押圧部材22の進出によって内端面28に到達すると、軸部4は内端面28と押圧面26によって挟み付けられた固定状態になる。
【0033】
主部材16の上面29は、上述のように平面になっており、吊り下げ状態になったボルト1の頭部2やフランジ3が上面29から突き出ており、この突き出ている部分が被保持部分30(
図7参照)とされ、突出長さは符号Lで示されている。また、
図4に示した場合においても被保持部分の高さが符号Lで示されている。
【0034】
図2に示されているように、導入溝17から移行通路18へボルト1を引き込むために、永久磁石31が主部材16に埋め込んである。また、移行通路18へ引き込まれて押圧部材22の押圧面26に接触している軸部4を検出して押圧部材22の進出を行わせるために、始動センサー33が主部材16に埋め込んである。
【0035】
つぎに、部品検知センサーについて説明する。
【0036】
部品検知センサー34は、内端面28に到達した軸部4を検出するもので、蓋部材19に取り付けてある。また、内端面28に軸部4を確実に接触させるために、
図5に示すように、蓋部材19に永久磁石35が埋め込まれた状態で配置してある。部品検知センサー34から発信される検知信号は、ボルト1が後述のロボット装置のような送給機構100によって保持されて抜き取られたときに停止される。換言すると、内端面28から軸部4が離隔すると、ボルト存在を示す検知信号の発信が停止する。
【0037】
部品検知センサー34は、送給機構100に保持ミスが発生して、ボルト1が内端面28に接触しているか、またはわずかに内端面28から離れているときに、部品が残存していることを示す信号を継続して発信する。この信号が、部品残存信号である。
【0038】
なお、前述の始動センサー33や部品検知センサー34としては、種々な形式のものが採用できるが、ここでは磁界内に磁性体が存在することによって発信するタイプのものが採用されている。
【0039】
つぎに、送給機構について説明する。
【0040】
送給機構は、装置本体7の上面から突き出ている被保持部分30を保持してボルト1を、図示していないが、ネジ締め装置へ供給したり、ボルト1がプロジェクションボルトである場合には、図示していないが、電気抵抗溶接用電極へ供給したりする役割を果たすものであり、製作している製品によっていろいろと変更される。送給機構全体は、符号100で示されている。
【0041】
送給機構100は、ロボット装置のような機能を有するもので、ここでは
図7に示すように、上下方向と水平方向に動作する形式とされている。細長い棒状の進退アーム39は、水平エアシリンダ40によって水平方向に進退するようになっている。進退アーム39や水平エアシリンダ40を上下方向に進退させるために、昇降エアシリンダ41が設けられ、この昇降エアシリンダ41は、結合部材25を介して静止部材11にしっかりと固定されている。
【0042】
進退アーム39の端部近くに電動モータ42が固定され、その出力回転軸43の軸線は、上下方向に設定されている。保持部材44は、下向きに開口しているカップ状の部材であり、六角形の保持孔45が設けてある。ボルト1の六角形の頭部2が保持孔45に相対的にはまり込むことができるようになっている。このはまり込みは、頭部2が保持孔45内にぴったりと入り込んで、頭部2が保持孔45内で回転できない状態を形成している。いわゆるカップリングの成立である。保持孔45の奥に永久磁石46がはめ込まれ、この磁力でカップリングしたボルト1が保持孔45から抜け出ないようにしている。
【0043】
保持部材44の回転は、電動モータ42によって行われる。そのために、出力回転軸43と保持部材44が接手ユニット47を介して結合されている。接手ユニット47は、出力回転軸43に結合された円筒部材48内に摺動可能な状態でピストン49が挿入され、ピストン49のピストンロッド50が下方に突き出て、保持部材44に結合されている。円筒部材48と保持部材44の間に圧縮コイルスプリング51が配置され、その張力が保持部材44を下降させる方向に作用している。
【0044】
図7から明らかなように、出力回転軸43、円筒部材48、ピストンロッド50、圧縮コイルスプリング51、保持部材44および待機している被保持部分30は、中心軸線O-O上に整列している。
【0045】
水平エアシリンダ40の進退動作と、昇降エアシリンダの上下動作によって、保持部材44が電動モータ42で回転させられながら下降してきて、保持部材44の六角孔(保持孔45)と被保持部分30の六角頭部(頭部2)が合致すると、圧縮コイルスプリング51は縮小されることなく、頭部2は相対的に保持孔45内に入り込み、いわゆるカップリングが成立する。その後、昇降エアシリンダ41の作動と、水平エアシリンダ40の作動によって、ボルト1は相手方部材(図示していない)のねじ孔に合致し、電動モータ42によってねじ込まれる。
【0046】
電動モータ42の回転を保持部材44に伝達するために、回り止め構造が採用されている。それは
図8に示されており、ピストンロッド50の断面形状が六角形とされ、円筒部材48側の貫通孔52も六角形とされていることにより、ピストンロッド50と円筒部材48の相対回転が禁止されている。
【0047】
つぎに、ボルト保持をし損なった場合を説明する。
【0048】
ボルト1の保持ミスは、保持部材44の保持孔45が、何らかの原因で中心軸線O-Oからずれていることによって発生する。あるいは、圧縮コイルスプリング51の張力不足の場合にも発生する恐れがある。保持部材44が回りながら下降してきても、頭部2の上面に保持部材44の下面が擦り付けられて圧縮コイルスプリング51が縮小するだけで、カップリングが成立しないことになる。
【0049】
つぎに、エアシリンダ23の変更事例を説明する。
【0050】
エアシリンダ23に換えて電動モータ54が使用されている。電動モータ54の回転運動を進退動作に変換すればよく、一般的に採用されている進退出力式電動モータを採用するのが便利である。
【0051】
静止部材11に固定された円筒型本体55内に、進退方向に摺動可能とされた円筒型の進退部材56がはめ込まれている。電動モータ54の回転は伝動ベルト57を経て回転軸58につたえられる。回転軸58は進退部材56内を貫通し、その貫通構造部分にボールスクリュー式ユニット59が配置してある。このボールスクリュー式ユニット59は、一般的に採用されているもので、進退部材56の内面に形成した螺旋溝と、回転軸58の外周面に形成した螺旋溝の間に、多数の鋼球を介在させたもので、回転軸58が正転・逆転をすることによって、進退部材56が進退する。進退部材56にロッド24を介して押圧部材22が結合してある。
【0052】
つぎに、動作について説明する。
【0053】
最初に、保持ミスが発生しない正常な場合を説明する。
【0054】
装置の動作は、
図10の制御動作系統図を中心にして説明する。同図において、細線で示した矢線は、信号伝達の役割を果たしている。太線は、エアシリンダに対する作動空気の吸排管である。
【0055】
装置の始動前の状態は、
図1に示すように、直進フィーダ6の動作で移送通路8Aから導入溝17に入ってきたボルト1が、永久磁石27によって制動状態になっている。そして、直進フィーダ6は停止している。
【0056】
作業者が起動スイッチ60を閉じると、起動信号が発信される。簡単なコンピュータ装置またはシーケンス回路によって構成された制御装置61に伝えられた各種の信号がここで処理されて、空気切換弁62を作動させるようになっている。
【0057】
作業者が起動スイッチ60を閉じると、それによって発信された起動信号が制御装置61に伝えられる。これによって、直進フィーダ6を作動させ、導入溝17に停止していた最先のボルト1は、直進フィーダ6の送給力が永久磁石27の吸引力に打ち勝って、移行通路18に進入する。ボルト1が移行通路18に進入すると、それを始動センサー33が検知してその信号が制御装置61へ送られる。この信号によって、直進フィーダ6の動作が停止され、同時に制御装置61から発信された信号によって空気切換弁62が切り替えられる。
【0058】
ついで空気切換弁62からエアシリンダ23へ供給された作動空気でピストンロッド24が進出して、押圧部材22の押圧面26がボルト1を押し出す。これによって、ボルト1は移行通路18を通って内端面28に押付けられ、軸部4が押圧面26と内端面28によって挟み付けられた固定状態になる。
【0059】
軸部4の挟み付けと同時に、部品検知センサー34から発信された信号が制御装置61へ伝えられ、これによって送給機構100を始動する信号が空気切換弁62へ送られて、水平エアシリンダ40と昇降エアシリンダ41が始動して保持部材44が被保持部分30に接近する。水平エアシリンダ40と昇降エアシリンダ41を始動させる制御装置61からの信号によって、進退アーム39に取り付けられた電動モータ42も回転を開始する。進退アーム39の移動によって保持部材44の下面が頭部2の上面に当たると、保持部材44の回転中に頭部2と保持孔45の六角形がぴったりと合致し、保持孔45内への頭部2のカップリングが形成される。この時には、圧縮コイルスプリング51は押し縮められることはない。
【0060】
上記のようにカップリングが成立すると、送給機構100から発信される信号でエアシリンダ23が後退して元の位置に戻り、これによって軸部2の挟み付け固定状態は解除される。押圧面26の後退後、エアシリンダ23に取り付けた後退センサー63からの信号が制御装置61に送られて、昇降エアシリンダ41が動作し、ついで水平エアシリンダ40も動作して、ボルト1は永久磁石46で吸引されたまま相手方部材のねじ孔などの目的箇所へ供給される。上述の一連の動作が保持ミスのない正常な供給動作である。
【0061】
なお、上述した送給機構100から発信される信号は、図示していないが、昇降エアシリンダ41のピストン動作位置から取り出される信号である。あるいは、静止部材11に取り付けられた昇降位置検知センサー64が、下降してきた進退アーム39の端部に反応して、送給機構100から発信される信号として発信させることも可能である。そして、昇降位置検知センサー64は下降してくる進退アーム39の端部に反応して発信するので、進退アーム39またはその端部は磁性体で構成してある。
【0062】
つぎに、保持ミスが発生した異常な場合を説明する。
【0063】
保持部材44が中心軸線O-Oからずれていることなどが原因して、ボルト1の頭部2が保持孔45に入り切らないときには、進退アーム39がさらに下降するので、圧縮コイルスプリング51を縮小させながら円筒部材48内をピストン49が上昇する。
【0064】
進退アーム39の下降によって、送給機構100から発信される信号がトリガー信号になって、または昇降位置検知センサー64からの信号がトリガー信号になって、部品検知センサー34から発信し続けている信号が、制御装置61において部品残存信号に変換されて、ボルト1の保持ミスを検知する信号となる。この部品残存信号が、異常検知信号である。
【0065】
また、別の動作として、部品検知センサー34から発信し続けている部品残存信号と、送給機構100から発信される信号または昇降位置検知センサー64から発信される信号を、制御装置61においてアンド処理をすることも可能である。このアンド処理をすることによって、ボルト1が残存していることが検知される。この検知信号が異常検知信号である。
【0066】
上記の異常検知信号が制御装置61から発信されると、空気切換弁62の動作で再びエアシリンダ23が動作して押圧部材22を進出させる。この押圧部材22の再進出時に、次のボルト1(2番目のボルト1)が移行通路18に進入しないようにするために、上記の異常検知信号によって、直進フィーダ6の停止状態が維持され、永久磁石27の吸引力で次のボルト1は制動状態になっている。
【0067】
押圧部材22の再進出によって残存ボルト1は再び挟み付け固定状態になる。押圧部材22の再進出の際にエアシリンダ23の後退センサー63からの信号発信が停止されるので、この停止状態を制御装置61で検知して、この検知信号を送給機構100の動作再開のトリガー信号にする。これによって、上述の正常時と同様な送給機構100の動作が再開され、被保持部分30が保持される。このように、保持ミスが発生したときには、保持ミスの自動発見、送給機構100による被保持部分30の自動的保持が遂行される。
【0068】
なお、上記各種のエアシリンダに換えて、進退出力をする電動モータを採用することもできる。また、永久磁石を電磁石に換えることも可能である。
【0069】
以上に説明した実施例の作用効果は、つぎのとおりである。
【0070】
部品検知センサー34からの信号は、移行通路18の内端面28にボルト1が到達したときから継続して発信されているので、この継続信号を根拠にして、保持ミスによるボルト残存の異常状態を検知することが確実かつ簡単に行うことができる。この異常検知の方策としては種々なものが採用できるが、例えば、タイマー装置を用いて、継続して発信している発信時間が所定時間に達したときに発信される信号(タイムアップ信号)をトリガーにして異常を判定したり、ボルト1を保持しないまま目的箇所へ移動する送給機構100の動作から得られる信号をトリガーにして異常を判定したりすることができる。異常判定で得られた信号をトリガー信号にして、送給機構100を再作動させ、残存しているボルト1を保持する。このような保持ミスの検知、残存部品への再保持動作が一連の動作として自動的になされるので、信頼性の高い異常検知式部品供給装置が得られる。
【0071】
このように、部品検知センサー34からの信号を継続した状態で発信させているので、上記のようなタイマー装置からのタイムアップ信号や送給機構100からの動作信号で異常状態を検知することができ、この異常検知信号によって、再び送給機構100による部品保持動作を行わせることが可能となり、信頼性の高いボルト供給が実現する。
【0072】
また、部品検知センサー34からの継続信号と、上記のようなタイマー装置や送給機構100からの信号が揃ったところで異常状態を確実に検知することができる。この検出信号によって再び送給機構100によるボルト保持動作を行わせることが可能となり、信頼性の高いボルト供給が実現する。また、部品検知センサー34からの継続信号と、上記のようなタイマー装置や送給機構100からの信号が揃ったところで異常状態を検出するものであるから、正常な繰り返し作動の中で万一保持ミスが発生しても、自動的に確実に保持ミスを検知して送給機構100の再動作ができるので、生産ラインにおいてボルト欠如などのない信頼性の高い異常検知式部品供給装置が得られる。
【0073】
また、部品検知センサー34からの継続信号に対して、他の信号を関与させてボルトの保持ミスという異常状態を検知するものであるから、他の信号として、例えば、上述のようなタイマー装置などからの信号を活用して、自動的検知や送給機構の動作の信頼性向上が確保できる。
【0074】
本実施例にかかる異常検知式部品供給装置を入手して、既設の設備から得られる信号を活用して、前述の継続信号から異常状態の検出へ導くことができるので、汎用性の高いボルト供給が得られる。つまり、上記のような部品検知センサー34からボルト残存信号を発信し続けることができる異常検知式部品供給装置を入手し、既存の設備事情に適合させた態様で異常状態の検出が行えるので、使い勝手のよい異常検知式部品供給装置の提供が可能となる。
【0075】
上述のように、部品検知センサー34からの継続した信号を活用するものであるから、部品検知センサー34自体に特別な機能を付加する必要がなく、装置構造の簡素化にとって有利である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
上述のように、本発明の異常検知式部品供給装置によれば、部品検知センサーから継続的に発信されている部品残存信号に対し、送給機構から発信される信号を関与させて、保持ミスの検知と再保持の遂行を行うものである。したがって、種々なボルト締め付け工程や自動車の車体組み立て工程などの広い産業分野で利用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 ボルト、部品
2 頭部
3 フランジ
4 軸部
6 直進フィーダ
7 装置本体
8 ガイドレール
8A 移送通路
9 スライド面
16 主部材
17 導入溝
18 移行通路
19 端部材
21 ガイド溝
22 押圧部材
23 エアシリンダ
26 押圧面
28 内端面
30 被保持部分
33 始動センサー
34 部品検知センサー
39 進退アーム
40 水平エアシリンダ
41 昇降エアシリンダ
42 電動モータ
44 保持部材
45 保持孔
46 永久磁石
60 起動スイッチ
61 制御装置
62 空気切換弁
63 進退センサー
64 昇降位置検知センサー
100 送給機構
【要約】
【課題】装置に組み込まれた簡単なセンサーからの継続的な部品検出信号によって、自動的で確実な保持ミスの検出を遂行させるとともに、正常な部品保持を自動的に実行させること。
【解決手段】装置本体7に、導入溝17と移行通路18が設けられ、移行通路18の部品1を移行通路18の端部まで移行させる押圧部材22が設けられ、移行通路18の端部に位置している部品1を挟み付ける、移行通路18の内端面28と、押圧部材22の押圧面26が形成され、部品1が移行通路18の内端面28に到達したときから、部品1の存在を示す信号を継続的に発信し続ける部品検知センサー34が、装置本体15に取り付けられ、部品1の被保持部分30を保持して部品1を目的箇所へ供給する送給機構100が、部品1を保持し損なったとき、部品検知センサー34から発信されている部品残存信号によって、送給機構100を復帰させるとともに、再度被保持部分30の保持動作をするように構成した。
【選択図】
図7