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  • 特許-バキュームグリッパ 図1
  • 特許-バキュームグリッパ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】バキュームグリッパ
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/02 20060101AFI20241107BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20241107BHJP
   B65G 7/12 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B66C1/02 Z
B25J15/06 D
B65G7/12 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020146680
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041466
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000236311
【氏名又は名称】品川フアーネス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】福井 茂
(72)【発明者】
【氏名】矢野 賢一
(72)【発明者】
【氏名】續木 竜二
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-093607(JP,U)
【文献】特開2015-042435(JP,A)
【文献】登録実用新案第3145202(JP,U)
【文献】特開平11-090875(JP,A)
【文献】米国特許第05306059(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/02
B25J 15/06
B65G 7/00- 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被運搬物を吸着するための吸着面を有するゴム板と、
前記ゴム板の上面に積層して連結された金属板と、
前記金属板の上方に設けられ、前記金属板に平行に延びる管状の把持部と、
前記金属板と前記把持部を相互に連結する連結部材と、
前記把持部内に設けられるとともに負圧源に連結された負圧導入機構とを備え、
前記負圧導入機構は、前記把持部から前記金属板側に突出し、前記金属板と前記ゴム板を貫通して前記吸着面に開口するバキュームチューブと、外気または前記負圧源において生じる負圧を前記バキュームチューブの開口部に導く圧力制御部とを有し、
前記連結部材が前記金属板と前記ゴム板を貫通して相互に平行に延びる一対のボルトであり前記ボルトの頭部が前記ゴム板の吸着面に係合し、前記ボルトにおいて前記金属板の上面にはナットが螺着される
ことを特徴とするバキュームグリッパ。
【請求項2】
前記圧力制御部が、先端に外気吸引口が形成されたリリース管であることを特徴とする請求項1に記載のバキュームグリッパ。
【請求項3】
記バキュームチューブが前記一対のボルトの間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のバキュームグリッパ。
【請求項4】
前記吸着面において、前記連結部材の先端部と前記バキュームチューブの開口部とが、前記吸着面の外周縁よりも凹陥していることを特徴とする請求項1に記載のバキュームグリッパ。
【請求項5】
前記ゴム板が、前記吸着面を有する下側ゴム層と、前記金属板と前記下側ゴム層の間に位置する枠状の中間ゴム層とを備えることを特徴とする請求項1に記載のバキュームグリッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば耐火レンガ等の重量物を運搬するために用いられるバキュームグリッパに関する。
【背景技術】
【0002】
従来築炉作業では、約10Kgのレンガを運搬する際に、作業員がレンガを所定の位置に設置するときに指をレンガと地面の間に挟んでしまい、骨折するおそれがあるという問題があった。この問題を解決するために、レンガを直接触らないで運搬できる装置として、ブロックホルダと呼ばれるリンク機構が知られている。ブロックホルダは持ち手を持ち上げる力を把持力に変換するもので、レンガに直接触れることなく作業を行うことが可能である。なお、耐火レンガを運搬するために利用できる装置として、特許文献1に開示された構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-1913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブロックホルダを用いる際、ブロックホルダの爪部分をレンガの隙間に挿入する必要があるので、レンガを破損するおそれがあり、またレンガが移動中に爪部分から外れて落下するおそれもあった。
【0005】
本発明は、耐火レンガ等の被運搬物を、破損することなく、かつ安全に搬送することができるバキュームグリッパを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るバキュームグリッパは、下面が被運搬物を吸着するための吸着面であるゴム板と、ゴム板の上面に積層して連結された金属板と、金属板の上方に設けられ、金属板に平行に延びる管状の把持部と、金属板と把持部を相互に連結する連結部材と、把持部内に設けられるとともに負圧源に連結された負圧導入機構とを備え、負圧導入機構は、把持部から金属板側に突出し、金属板とゴム板を貫通して吸着面に開口するバキュームチューブと、外気または負圧源において生じる負圧をバキュームチューブの開口部に導く圧力制御部とを有することを特徴としている。
【0007】
圧力制御部は例えば、先端に外気吸引口が形成されたリリース管である。連結部材は、金属板とゴム板を貫通して延び、ゴム板に固定されることが好ましい。例えば連結部材は相互に平行に延びる一対のボルトであり、バキュームチューブは一対のボルトの間に配置される。好ましくは吸着面において、連結部材の先端部とバキュームチューブの開口部とが、吸着面の外周縁よりも凹陥している。ゴム板は、吸着面を有する下側ゴム層と、金属板と下側ゴム層の間に位置する枠状の中間ゴム層とを備えていてもよい。
【0008】
またバキュームグリッパは、把持部の外側に設けられ、支持部材によって把持部に揺動自在に支持されるチューブカバーを備えてもよく、この場合、チューブカバーは把持部に沿って支持部材から両側に延び、支持部材の一方の側に位置して把持部の上面に対向し、圧力制御部に設けられた外気吸引口を閉塞可能な蓋部と、支持部材の他方の側に位置して把持部の下面に対向する操作部とを有する。この構成において、バキュームグリッパは例えば、把持部内に設けられたバネと当接ピンを備え、当接ピンは把持部から突出して操作部に当接し、バネにより、操作部を下方へ付勢する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐火レンガ等の被運搬物を、破損することなく、かつ安全に搬送することができるバキュームグリッパを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係るバキュームグリッパを示す斜視図である。
図2】第1実施形態のバキュームグリッパを下方から見た斜視図である。
図3】中間ゴム層を示す平面図である。
図4】連結部材による金属板とゴム板の連結構造を示す断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るバキュームグリッパを示す斜視図である。
図6】第2実施形態のバキュームグリッパの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係るバキュームグリッパ10を示す斜視図である。このバキュームグリッパ10は築炉作業において耐火レンガを運搬するために用いられ、下面がレンガを吸着するための吸着面11であるゴム板12と、ゴム板12の上面に積層して連結された金属板13とを有する。吸着面11は、耐火レンガ等の被運搬物の上面に吸着するのに十分な大きさを有する。
【0012】
ゴム板12と金属板13は略矩形を呈し、ゴム板12は吸着面11を有する下側ゴム層14と、金属板13と下側ゴム層14の間に位置する中間ゴム層15とを備える。後述するように中間ゴム層15は枠状を呈し、その外形すなわち輪郭は金属板13および下側ゴム層14の輪郭と同じであり、これによりゴム板12の内部にはスペース30(図4参照)が形成される。
【0013】
金属板13の上方には把持部20が設けられる。把持部20は金属板13の長手方向に平行に延びる管状部材である。金属板13と把持部20は連結部材21、22により相互に連結される。連結部材21、22は相互に平行に延びる一対のボルトであり、金属板13とゴム板12を貫通して延び、金属板13とゴム板12の吸着面11とにおいて固定される。
【0014】
把持部20内には負圧導入機構23が設けられ、負圧導入機構23から延びる導入管29は負圧源(図示せず)に連結される。負圧導入機構23は、把持部20から金属板13側に突出するバキュームチューブ24を有し、バキュームチューブ24は連結部材21、22すなわち一対のボルトの間に配置される。バキュームチューブ24は把持部20の下面に形成された孔25から突出し、金属板13とゴム板12を貫通して吸着面11に開口する。負圧導入機構23は、負圧源において生じる負圧をバキュームチューブ24の開口部28(図2参照)に導くためのリリース管(圧力制御部)26を有する。リリース管26は把持部20の下面に形成された孔27から金属板13側に突出し、その先端には外気吸引口26a(図2参照)が形成される。
【0015】
図2はバキュームグリッパ10を下方から見た斜視図である。この図に明示されるように、吸着面11の中心部にはバキュームチューブ24の開口部28が形成され、開口部28の近傍には連結部材21、22の先端部であるボルト頭部21a、22aが位置する。ボルト頭部21a、22aと開口部28はゴム板12の長手方向に配列され、ボルト頭部21a、22aと開口部28が設けられた吸着面11の領域は吸着面11の外周縁よりも凹陥している。開口部28はボルト頭部21a、22aよりも突出しており、ボルト頭部21a、22aの付近には、被運搬物に対する吸着力を発揮する空間S(図4参照)が形成される。
【0016】
図3、4を参照して、ゴム板12の構造について説明する。中間ゴム層15は矩形の枠状であり、金属板13および下側ゴム層14と略同じ外形を有する。したがって金属板13と中間ゴム層15と下側ゴム層14を積層した状態において、これらの間にはスペース30が区画形成される。連結部材21、22のボルト頭部21a、22aはワッシャ31を介して吸着面11に係合する。連結部材21、22において、金属板13の上下にはワッシャ33、34が嵌合され、上側のワッシャ33の上側にはナット35が螺着される。
【0017】
ナット35を締めることにより連結部材21、22のボルト頭部21a、22aが金属板13側に持ち上げられ、ワッシャ34が下側ゴム層14と金属板13によって挟圧される。これにより、金属板13と中間ゴム層15と下側ゴム層14の間に形成されたスペース30は連結部材21、22を含む領域の下側ゴム層14が金属板13側に湾曲し、吸着面11が凹陥してボルト頭部21a、22aの近傍に空間Sが形成される。なお、この状態における下側ゴム層14の湾曲形状はワッシャ34の厚さを変えることによって調整可能である。
【0018】
再び図2を参照してリリース管26について説明する。リリース管26の外気吸引口26aは外気に露出しており、作業員の指先によって閉塞可能である。リリース管26はバキュームチューブ24に連通しており、外気吸引口26aが閉塞されているとき、バキュームチューブ24には負圧が導かれ、外気吸引口26aが開放されているときバキュームチューブ24には導入管29から大気圧が導かれる。したがって、吸着面11を耐火レンガ等の被運搬物の上面に密着させた状態でリリース管26の外気吸引口26aを閉塞することにより、開口部28から負圧が導かれ、被運搬物は吸着面11に吸着される。
【0019】
次に本実施形態のバキュームグリッパ10の作用について説明する。通常の使用では、まずリリース管26側の連結部材21とバキュームチューブ24の間に中指を、また他方の連結部材22とバキュームチューブ24の間に薬指を差し込む。この状態で把持部20を持ち上げ、耐火レンガ等の被運搬物の上面に吸着面11を密着させる。そして示指によりリリース管26の外気吸引口26aを閉塞すると、吸着面11と被運搬物の間の空間に負圧が導かれ、把持部20を介して被運搬物を持ち上げることができる。被運搬物を所定位置まで運搬した後、外気吸引口26aを開放すれば吸着面11と被運搬物の間が大気圧に近づき、被運搬物を所定位置に定めることができる。
【0020】
このように本実施形態によれば、耐火レンガ等の被運搬物の運搬時に、バキュームグリッパ10を被運搬物の上面に密着させた状態でリリース管26の外気吸引口26aを閉塞し、把持部20を持ち上げるだけでよいので、被運搬物を破損することなく、かつ安全に搬送することができる。
【0021】
次に図5、6を参照して本発明の第2実施形態を説明する。この実施形態の第1実施形態との違いは、チューブカバー40を有する点である。チューブカバー40は把持部20の外側に設けられ、支持部材41によって把持部20に揺動自在に支持される。チューブカバー40は把持部20に沿って支持部材41から両側に延び、支持部材41の一方の側すなわち導入管29側に位置して把持部20の上面に対向する蓋部42と、支持部材41の他方の側すなわち導入管29とは反対側に位置して把持部20の下面に対向する操作部43とを有する。
【0022】
チューブカバー40の蓋部42は把持部20の上面を覆う半円筒状を呈し、操作部43は把持部20の下面を覆う半円筒状を呈する。把持部20内に設けられた筒状部材49にはバネ44と当接ピン45が設けられ、当接ピン45は把持部20から下方へ突出して操作部43に当接する。一方、導入管29には外気吸引口29aが形成され、把持部20には外気吸引口29aに対応させて開口48が形成される。蓋部42が把持部20に密着した状態において外気吸引口29aは閉塞され、このとき操作部43は当接ピン45をバネ44に抗して把持部20内に退没させる。
【0023】
第2実施形態の作用は基本的に第1実施形態と同様であるが、チューブカバー40の操作が異なる。すなわち作業員は、吸着面11に負圧を導入あるいは解放するために外気吸引口29aを直接閉塞するのではなく、チューブカバー40を把持部20側に変位させればよい。具体的には、チューブカバー40を握って操作部43を把持部20の下面に当接させると、蓋部42が外気吸引口29aを閉塞し、これにより吸着面11に負圧が導入される。これに対してチューブカバー40を解放すると、バネ44の弾発力によって当接ピン45が把持部20から突出し、これにより操作部43が下方へ揺動するとともに蓋部42が上方へ揺動して外気吸引口29aが大気に連通し、吸着面11に大気が導かれる。すなわち第2実施形態では導入管29が圧力制御部である。
【0024】
したがって第2実施形態によっても第1実施形態と同様な効果が得られるが、外気吸引口29aを示指で閉塞するのではなく、チューブカバー40の蓋部42で閉塞するので、より確実に外気吸引口29aを閉塞することができる。
【符号の説明】
【0025】
11 吸着面
12 ゴム板
13 金属板
20 把持部
21、22 連結部材
23 負圧導入機構
24 バキュームチューブ
26 リリース管
28 開口部
29 導入管
図1
図2
図3
図4
図5
図6