(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】タウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法
(51)【国際特許分類】
C07J 41/00 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
C07J41/00
(21)【出願番号】P 2023518322
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 KR2021011234
(87)【国際公開番号】W WO2022059948
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-22
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(73)【特許権者】
【識別番号】521165873
【氏名又は名称】シャペロン インク.
【氏名又は名称原語表記】SHAPERON INC.
【住所又は居所原語表記】#606(Jagok-dong), Gangnam ACE Tower 174-10, Jagok-ro Gangnam-gu, Seoul 06373 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ソン、スンヨン
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-267985(JP,A)
【文献】特表2010-525003(JP,A)
【文献】米国特許第04104285(US,A)
【文献】特表2009-518456(JP,A)
【文献】Toshiaki Momose, et al.,"An Improved Synthesis of Taurine- and Glycine-Conjugated Bile Acids",Lipids,米国,1997年,Vol.32, No.7,p.775-778
【文献】平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック,2008年,pp.17-23,37-40,45-51,57-65
【文献】Francesco Benturoni, et al.,"Continuous flow synthesis and scale-up of glycine- and taurine-conjugated bile salts",Organic & Biomolecular Chemistry,Vol.10, No.20,英国,2012年,p.4109-4115
【文献】Roger Shaw, et al.,"Bile Acids: LXI. Synthesis and Properties of Conjugates of 5α-Bile Acids",Lipids,米国,1980年,Vol.15, No.10,p.805-810
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)
タウリン酸ナトリウム、デオキシコール酸及びN-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(EEDQ)を含む溶液を攪拌機に入れ、温度を調節して攪拌し、粗(crude)タウロデオキシコール酸ナトリウムを合成するステップと、
2)有機溶媒を用いて、ステップ1)で合成した粗(crude)タウロデオキシコール酸ナトリウムを洗浄及びろ過してケーキを得るステップと、
3)イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)を含む溶液にステップ2)で得られたケーキを混合し、その後i)加熱しながら攪拌して溶解し、ii)冷却しながら攪拌して再結晶させ、iii)イソプロピルアルコールで洗浄及びろ過する精製ステップとを含む、タウロデオキシコール酸ナトリウム(sodium taurodeoxycholate)の大量生産方法。
【請求項2】
前記ステップ2)の有機溶媒が、エタノール、アセトン、ピリジン、ヘキサフルオロイソプロパノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサン、トルエン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸メチル、及びそれらの2種以上の混合溶媒からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のタウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法。
【請求項3】
前記ステップ2)の有機溶媒が、エタノール及びアセトンを含み、エタノールとアセトンの混合体積比が1:0.5~2の混合溶媒である、請求項1に記載のタウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法。
【請求項4】
前記ステップ3)は、2回以上繰り返すことを特徴とする、請求項1に記載のタウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法。
【請求項5】
前記ステップ3)は、2~3回繰り返すことを特徴とする、請求項1に記載のタウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法。
【請求項6】
前記ステップ3)のイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)を含む溶液が、水及びイソプロピルアルコールを含み、水とイソプロピルアルコールの混合体積比が1:1~10である、請求項1に記載のタウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法。
【請求項7】
前記ステップ3)のi)における加熱が、20~100℃に加熱するものである、請求項1に記載のタウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法。
【請求項8】
前記ステップ3)のii)における冷却が、0~50℃に冷却するものである、請求項1に記載のタウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法。
【請求項9】
前記ステップ3)のii)における攪拌が、8~30時間攪拌するものである、請求項1に記載のタウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法。
【請求項10】
前記ステップ3)におけるイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)を含む溶液中のイソプロピルアルコールは、前記ステップ2)のケーキ重量の5~20倍である、請求項1に記載のタウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法。
【請求項11】
4)アセトン(acetone)を含む混合溶液を用いて、ステップ3)で得られたタウロデオキシコール酸ナトリウムを精製するステップをさらに含む、請求項1に記載のタウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法。
【請求項12】
前記ステップ4)が、
A)アセトンを含む混合溶液にステップ3)でろ過したタウロデオキシコール酸ナトリウムを溶解するステップと、
B)ステップA)の溶解液にアセトンを滴下し、冷却及び攪拌しながら再結晶させるステップと、
C)再結晶したタウロデオキシコール酸ナトリウムをアセトンで洗浄及びろ過して乾燥させるステップとを含む、
請求項11に記載のタウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法。
【請求項13】
前記タウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法は、1回の生産で1kg以上製造可能であることを特徴とする、請求項1に記載のタウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タウロデオキシコール酸ナトリウム(sodium taurodeoxycholate)の大量生産方法に関し、より具体的には、1)粗(crude)タウロデオキシコール酸ナトリウムを合成するステップと、2)有機溶媒を用いて、ステップ1)で合成した粗(crude)タウロデオキシコール酸ナトリウムを洗浄及びろ過してケーキを得るステップと、3)イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)を含む溶液にステップ2)で得られたケーキを混合し、その後i)加熱しながら攪拌して溶解し、ii)冷却しながら攪拌して再結晶させ、iii)イソプロピルアルコールで洗浄及びろ過する精製ステップとを含む、タウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
胆汁酸または胆汁酸塩とは、肝及び胆嚢から分泌される物質であり、グリココール酸(Glycocholic acid)、タウロコール酸(Taurocholic acid)などを含み、コレステロールなどの作用機序に関連する物質を意味する。胆汁酸の種類は多く、コール酸(cholic acid)、ケノデオキシコール酸(chenodeoxycholic acid)、タウロコール酸(taurocholic acid)、リトコール酸(lithocholic acid)などが含まれ、各物質はそれぞれ疾患の治療及び予防に有用であることが周知である。
【0003】
胆汁酸の一種であるタウロデオキシコール酸は、現在自然界に存在するほとんど唯一の形態のスルホン酸(sulfonic acid)物質である。タウロデオキシコール酸の塩の形態であるタウロデオキシコール酸ナトリウムは、GPCR19作用剤であり、血中IgE含有量を減少させ、TH2サイトカインレベルを低下させ、TH1サイトカインレベルを上昇させるので、アトピー予防または治療用組成物として用いられ(特許文献1)、認知障害及び行動障害を改善し、脳組織の細胞死を抑制し、免疫力を増強させ、アミロイドβプラークの形成を減少させることにより、アルツハイマー疾患、認知症の抑制または治療効果を奏することが知られている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、このようなタウロデオキシコール酸ナトリウムを実際に医薬品として開発するためには大量生産が可能でなければならないが、タウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産においては、合成の際に工程上やむを得ず生成される様々な副生成物、未反応原料、水溶性及び溶解性に大差がないことなどの問題により、効果的に分離精製する上での生産上の困難があった。また、一般に知られている方法により精製すると、回収問題、再使用問題、収率問題、分離工程複雑化などにより、商業的に繰り返し生産することが困難である。
【0005】
これに関して、特許文献3には、タウロウルソデオキシコール酸の精製方法であって、有機溶剤と酸性またはアルカリ性水溶液を用いた液液抽出法により製造する方法が開示されており、特許文献4には、胆汁酸を用いると共に、RuCl3、NaIO4及び酸を用いて胆汁酸誘導体を製造する方法が開示されている。しかしながら、タウロデオキシコール酸ナトリウムの合成方法については知られておらず、タウロデオキシコール酸の精製方法についても知られておらず、商業的に繰り返し生産できる程度に大量生産する方法については全く知られていない。
【0006】
よって、本発明者は、タウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法において、イソプロピルアルコールを用いてバッチ洗浄(batch washing)方式で分離、精製すると、工程過程が簡略になり、純度が高くなり、大量生産できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国登録特許第10-1998402号公報
【文献】韓国登録特許第10-1743960号公報
【文献】韓国登録特許第10-0396113号公報
【文献】韓国登録特許第10-2068381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、タウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産が難しく、工程が複雑であるという従来の問題を解決するために、イソプロピルアルコールを用いてバッチ洗浄(batch washing)方式で分離、精製することにより、工程過程が簡略化され、副産物が少なく、純度が高いタウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記問題を解決するために、本発明は、1)粗(crude)タウロデオキシコール酸ナトリウムを合成するステップと、2)有機溶媒を用いて、ステップ1)で合成した粗(crude)タウロデオキシコール酸ナトリウムを洗浄及びろ過してケーキを得るステップと、3)イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)を含む溶液にステップ2)で得られたケーキを混合し、その後i)加熱しながら攪拌して溶解し、ii)冷却しながら攪拌して再結晶させ、iii)イソプロピルアルコールで洗浄及びろ過する精製ステップとを含む、タウロデオキシコール酸ナトリウム(sodium taurodeoxycholate)の大量生産方法を提供する。
【0010】
また、前記大量生産方法により製造されたタウロデオキシコール酸ナトリウムを提供する。
【0011】
本発明のタウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法は、1回の生産で1kg以上製造することができる。
【0012】
本発明の一態様において、ステップ1)の粗(crude)タウロデオキシコール酸ナトリウムは、タウリン酸ナトリウム、デオキシコール酸及びN-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(EEDQ)を含む溶液を攪拌機に入れ、温度を調節して攪拌することにより合成されるものである。
【0013】
本発明の一態様において、ステップ2)の有機溶媒は、エタノール、アセトン、ピリジン、ヘキサフルオロイソプロパノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサン、トルエン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸メチル、及びそれらの2種以上の混合溶媒からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0014】
具体的な本発明の一態様において、ステップ2)の有機溶媒は、エタノール及びアセトンを含み、エタノールとアセトンの混合体積比が1:0.5~2の混合溶媒である。
【0015】
本発明の一態様において、ステップ3)は、2回以上繰り返すことを特徴とする。具体的な本発明の一態様において、ステップ3)は、2~3回繰り返すことを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様において、ステップ3)のイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)を含む溶液は、水及びイソプロピルアルコールを含み、水とイソプロピルアルコールの混合体積比が1:1~10である。
【0017】
本発明の一態様において、ステップ3)のi)における加熱は、20~100℃に加熱するものである。
【0018】
また、本発明の一態様において、ステップ3)のii)における冷却は、0~50℃に冷却するものである。
【0019】
さらに、本発明の一態様において、ステップ3)のii)における攪拌は、8~30時間攪拌するものである。
【0020】
さらに、本発明の一態様において、ステップ3)におけるイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)を含む溶液中のイソプロピルアルコールは、ステップ2)のケーキ重量の5~20倍である。
【0021】
本発明の一態様において、4)アセトン(acetone)を含む混合溶液を用いて、ステップ3)で得られたタウロデオキシコール酸ナトリウムを精製するステップをさらに含んでもよい。
【0022】
具体的な本発明の一態様において、ステップ4)は、A)アセトンを含む混合溶液にステップ3)でろ過したタウロデオキシコール酸ナトリウムを溶解するステップと、B)ステップA)の溶解液にアセトンを滴下し、冷却及び攪拌しながら再結晶させるステップと、C)再結晶したタウロデオキシコール酸ナトリウムをアセトンで洗浄及びろ過して乾燥させるステップとを含んでもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、タウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法に関し、イソプロピルアルコール及びバッチ洗浄方式を用いて精製することにより、工程過程が簡略化され、大量生産が可能になり、高い純度でタウロデオキシコール酸ナトリウムを工業的に生産できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】本発明の大量生産方法の精製過程を示す図である。
【
図3】本発明の大量生産方法のSchemeを示す図である。
【
図4】本発明の生産方法により製造されたタウロデオキシコール酸ナトリウムが合成されたか否かをクロマトグラフィーにより確認した図である。
【
図5】本発明の生産方法により製造されたタウロデオキシコール酸ナトリウムの純度をHPLCにより確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
タウロデオキシコール酸ナトリウム(sodium taurodeoxycholate)の製造において、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)を含む溶液を用いて大量に生産する。
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0027】
本発明の明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは特に断らない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0028】
本明細書における化合物とは、特に断らない限り、通常認識される化合物を意味する。
【0029】
本発明は、1)粗(crude)タウロデオキシコール酸ナトリウムを合成するステップと、2)有機溶媒を用いて、ステップ1)で合成した粗(crude)タウロデオキシコール酸ナトリウムを洗浄及びろ過してケーキを得るステップと、3)イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)を含む溶液にステップ2)で得られたケーキを混合し、その後i)加熱しながら攪拌して溶解し、ii)冷却しながら攪拌して再結晶させ、iii)イソプロピルアルコールで洗浄及びろ過する精製ステップとを含む、タウロデオキシコール酸ナトリウム(sodium taurodeoxycholate)の大量生産方法に関する。
【0030】
また、前記大量生産方法により製造されたタウロデオキシコール酸ナトリウムに関する。
【0031】
本発明において、粗(crude)タウロデオキシコール酸ナトリウムを作製するための反応物としては、例えば加工されていないデオキシコール酸、タウリン、タウリン酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸誘導体などが挙げられる。また、反応物は、市販されているものを用いてもよく、当該技術分野で公知の方法で合成するか、自然界から採取し、その後処理して得られたものを用いてもよい。これらは例示にすぎず、前記物質または方法に限定されるものではない。
【0032】
具体的には、本発明の一態様において、ステップ1)の粗(crude)タウロデオキシコール酸ナトリウムは、タウリン酸ナトリウム、デオキシコール酸及びN-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン(EEDQ)を含む溶液を攪拌機に入れ、温度を調節して攪拌することにより合成されるものであってもよい。
【0033】
より具体的には、タウリン酸ナトリウム及びデオキシコール酸は合成されたものを用いてもよく、タウリン酸ナトリウムはタウリンとナトリウム塩を混合して作製してもよく、デオキシコール酸は天然デオキシコール酸を結晶化して得てもよいが、これらに限定されるものではなく、公知の方法により作製したものや、市販されているものなど、いかなるものを用いてもよい。また、本発明における前記反応物は、粗(crude)タウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産のために、適量を用いる。
【0034】
さらに、本発明において、EEDQは、下記化学式で表される化合物であり、IUPAC名が「2-エトキシ-2H-キノリン-1-カルボン酸エチルエステル(2-Ethoxy-2H-quinoline-1-carboxylic acid ethyl ester)」、「エチル1,2-ジヒドロ-2-エトキシキノリン-1-カルボキシラート(Ethyl 1,2-dihydro-2-ethoxyquinoline-1-carboxylate)」である。
【0035】
【0036】
具体的には、本発明において、タウリン酸ナトリウム、デオキシコール酸及びEEDQを用いる場合、下記化学反応を行ってもよい。
【0037】
【0038】
本発明において、ステップ1)は、反応物を合成してタウロデオキシコール酸ナトリウムを合成するものであってもよい。本発明の一態様による具体的な合成方法によれば、デオキシコール酸とEEDQ(N-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン)が反応してキノリンを副産物とする中間体を形成し、中間体とタウリン酸ナトリウムが反応してタウロデオキシコール酸ナトリウムを形成するようにしてもよい。また、その際の溶媒としてエタノールを用いてもよい。
【0039】
より具体的には、本発明において、タウリン酸ナトリウム、デオキシコール酸及びEEDQを用いるので、大量に合成する際に、ステップ1)において、40℃で反応性が高く、副反応が少なく、反応中の安定性が高い。また、ステップ2)において、反応性が高く、副反応が少なく、反応中の安定性が維持されるという利点を有するだけでなく、反応後にタウロデオキシコール酸ナトリウムが固体として得られ、遊離した活性化基は溶媒で除去することができるので、遊離した活性化基の除去が容易である。さらに、前記精製により、高収率及び高純度でsingle impurityが0.1%未満のタウロデオキシコール酸ナトリウムが得られる。
【0040】
ステップ1)において、反応物の量、温度及び攪拌は、合成されるタウロデオキシコール酸ナトリウムの量に応じて適切なレベルに調節してもよい。また、適切なレベルを決定するために、ステップ1)で生成された物質、未反応物質などを分析して決定してもよい。
【0041】
これらに限定されるものではないが、具体的には、ステップ1)は、加熱しながら攪拌するステップと、冷却しながら攪拌するステップとを含み、タウロデオキシコール酸ナトリウムを合成するものであってもよい。
【0042】
前記合成ステップにおいて、加熱時の温度は、30~100℃であってもよく、より具体的には、30~80℃、31~70℃、32~60℃、33~55℃、34~50℃、35~45℃に加熱して攪拌するようにしてもよい。しかしながら、加熱温度が100℃を超えると、生成される不純物の量が顕著に増えるので、精製時に要する時間、経済性の面で好ましくない。また、加熱温度が約40℃であれば、副反応が少なく、かつ安定性が高い。
【0043】
また、前記合成ステップにおいて、加熱しながら攪拌するステップは、10~30時間攪拌するものであってもよく、より具体的には、12~28時間、14~26時間であってもよい。さらに、具体的には、攪拌開始0.5~5時間後に結晶が生成されるようにしてもよく、生成された結晶が凝集しないようにほぐして高収率の合成が行われるようにするステップをさらに含んでもよい。
【0044】
さらに、前記合成ステップにおいて、冷却時の温度は、0~30℃であってもよく、より具体的には、10~30℃、15~25℃であってもよい。冷却時に0℃未満に温度が下がると不純度が上昇するので、0℃以上を保持しなければならず、冷却時の温度が約20℃であれば結晶化に有利である。
【0045】
さらに、前記合成ステップにおいて、冷却しながら攪拌するステップは、0.1~5時間攪拌するものであってもよく、より具体的には、攪拌時間は、0.2~3時間、0.3~2時間、0.4~2時間、0.5~2時間であってもよい。
【0046】
本発明において、ステップ2)は、ステップ1)で生成された物質を洗浄及びろ過するステップである。
【0047】
本発明の一態様において、ステップ2)の有機溶媒は、エタノール、アセトン、ピリジン、ヘキサフルオロイソプロパノール、プロパノール、ブタノール、シクロヘキサン、トルエン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸メチル、及びそれらの2種以上の混合溶媒からなる群から選択される少なくとも1種である。前記有機溶媒は、少なくとも1種選択されるものであり、単一溶媒が用いられるか、2種以上を混合した混合溶媒が用いられる。
【0048】
具体的な本発明の一態様において、ステップ2)の有機溶媒は、エタノール及びアセトンを含み、エタノールとアセトンの混合体積比が1:0.5~2の混合溶媒である。より具体的には、有機溶媒は、エタノールとアセトンの混合体積比が1:0.6~1.4、0.75~1.25、0.8~1.2の混合溶媒である。
【0049】
本発明において、ステップ3)は、ステップ1)、2)で得られた物質を精製するステップである。本発明において、ステップ3)は、バッチ洗浄(batch washing)方式で精製するものであり、ステップ1)、2)で得られた物質を乾燥する過程を経ずに精製を行う。従来のカラム方式ではないので、工程過程が簡略化され、不純度が低く、大量にして工程を行うことができるので、タウロデオキシコール酸ナトリウムを大量に生産することができる。
【0050】
本発明の一態様において、ステップ3)は、2回以上繰り返すことを特徴とする。具体的な本発明の一態様において、ステップ3)は、2~3回繰り返すことを特徴とする。ステップ3)の繰り返し回数は、純度、収率を考慮して選択してもよい。各繰り返し回数の間に乾燥する過程を経ないので、単純な工程で精製することができる。
【0051】
ステップ3)に用いられるイソプロピルアルコールの量、温度、攪拌時間などは、合成されるタウロデオキシコール酸ナトリウムの量に応じて適切なレベルに調節してもよい。
【0052】
具体的な本発明の一態様において、ステップ3)のイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)を含む溶液は、水及びイソプロピルアルコールを含み、水とイソプロピルアルコールの混合体積比が1:1~10であってもよい。より具体的な本発明の一態様において、前記混合体積比は、具体的に1:5~10、1:6~9であってもよい。
【0053】
具体的な本発明の一態様において、ステップ3)のi)における加熱は、20~100℃に加熱するものである。具体的には、30~90℃、35~85℃、40~80℃、45~75℃、46~74℃、47~73℃、48~72℃、49~71℃、50~70℃に加熱して攪拌するものであってもよい。ステップ3)のi)における加熱は、イソプロピルアルコールを含む混合溶液に物質を完全に溶解して攪拌するものであってもよく、溶解したことを確認し、その後10~30分間さらに攪拌するものであってもよい。これらに限定されるものではないが、約60℃であれば、精製時間及び安定性の面で優れた反応が得られる。
【0054】
具体的な本発明の一態様において、ステップステップ3)のii)における冷却は、0~50℃に冷却するものである。具体的な冷却温度は、10~40℃、15~35℃、15~34℃、15~33℃、15~32℃、15~31℃、15~30℃であってもよく、冷却は、結晶を形成するために行われてもよく、急激に冷却すると結晶化が円滑に行われないので、徐々に冷却するようにしてもよい。
【0055】
具体的な本発明の一態様において、ステップ3)のii)における攪拌は、8~30時間攪拌するものである。より具体的な攪拌時間は、8~25時間、8~20時間、9~15時間であってもよい。攪拌時間は、反応物の量、温度を考慮して適切なレベルに調節してもよい。
【0056】
本発明の一態様において、ステップ3)におけるイソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)を含む溶液中のイソプロピルアルコールは、ステップ2)のケーキ重量の5~20倍を用いるようにしてもよい。具体的には、用いられるイソプロピルアルコールは、ステップ3)に用いられる全てのイソプロピルアルコールの量を含むものであり、水と混合して用いられる場合は、水を除くイソプロピルアルコールの重量を意味する。より具体的には、イソプロピルアルコールの重量比は、ケーキの重量の5~15倍、6~14倍、7~12倍であってもよく、前記範囲であれば再結晶化の程度が最も優れる。
【0057】
本発明の一態様において、ステップ3)の後に、ステップ4)をさらに含んでもよく、ステップ4)は、アセトン(acetone)を含む混合溶液を用いて、ステップ3)で得られたタウロデオキシコール酸ナトリウムを精製するステップであってもよい。
【0058】
具体的な本発明の一態様において、ステップ4)は、A)アセトンを含む混合溶液にステップ3)でろ過したタウロデオキシコール酸ナトリウムを溶解するステップと、B)ステップA)の溶解液にアセトンを滴下し、冷却及び攪拌しながら再結晶させるステップと、C)再結晶したタウロデオキシコール酸ナトリウムをアセトンで洗浄及びろ過して乾燥させるステップとを含んでもよい。
【0059】
本発明において、ステップ4)は、さらに含んでもよいものであり、本発明の必須構成に該当するものではなく、ステップ4)をさらに含むと、純度が99.5%以上に達する。
【0060】
また、具体的な本発明の一態様において、ステップ4)のステップA)のアセトンを含む混合溶液は、水及びアセトンを含み、混合体積比が1:1~10である。より具体的な本発明の一態様において、ステップA)の混合溶媒における水とアセトンの混合体積比は、具体的には1:5~10、1:6~9であってもよい。
【0061】
さらに、具体的な本発明の一態様において、ステップ4)のステップB)における、ステップA)の溶解液に滴下、冷却及び攪拌しながら行う再結晶は、溶解液にアセトンを滴下してから攪拌するステップ、攪拌してからアセトンを滴下するステップ、またはアセトンを滴下しながら攪拌するステップだけでなく、アセトンを滴下して攪拌し、結晶が生成されるとアセトンの滴下を止めて攪拌するステップが全て含まれるものであり、滴下、冷却及び攪拌の順序が限定されるものではない。
【0062】
さらに、具体的な本発明の一態様において、ステップ4)のステップC)は、10~40℃で行われてもよく、より具体的には、15~35℃、15~34℃、15~33℃、15~32℃、15~31℃、15~30℃で行われてもよく、冷却の標的及び効果については前述した通りである。
【0063】
さらに、本発明の一態様において、ステップ4)のアセトンは、ステップ3)でろ過したケーキ重量の5~20倍、より具体的には5~15倍、5.5~12倍、6~12倍を用いるようにしてもよい。さらに、これは、ステップ4)のステップA)~C)に用いられる全てのアセトンの量を含むものであり、水と混合して用いられる場合は、水を除くアセトンの重量を意味する。
【0064】
本発明の一態様において、タウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法は、1回の生産で1kg以上製造することができる。
【0065】
また、本発明の一態様において、タウロデオキシコール酸ナトリウムの収率が25%以上であってもよい。より具体的には、収率は、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上であってもよい。
【0066】
また、本発明の一態様において、タウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法は、純度が99%以上のタウロデオキシコール酸ナトリウムを製造するものであってもよい。より具体的には、純度は、99.1%以上、99.15%以上、99.2%以上、99.25%以上、99.3%以上、99.35%以上、99.4%以上、99.45%以上、99.5%以上であってもよい。
【0067】
本発明は、タウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産方法であり、タウロデオキシコール酸ナトリウムの収率が25%以上であると共に、純度が99%以上であり、1回の生産で1kg以上製造することができるので、効率的にタウロデオキシコール酸ナトリウムを製造することができる。
【0068】
以下、実施例及び実験例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0069】
しかしながら、これらの実施例及び実験例は本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらの実施例及び実験例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0070】
タウリン酸ナトリウム(sodium taurate)の大量合成
反応器に水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)2.04kgとエタノール(ethanol)44Lを投入して攪拌を開始した。攪拌の際に、外部温度を55℃に設定し、内部温度を55℃に加熱し、水酸化ナトリウムが完全に溶解したことを確認してからタウリン(taurine)5.5kgを投入した。タウリン投入完了後に、2時間以上攪拌し、攪拌完了後に、外部温度を30℃に設定し、内部温度を30℃に冷却して1時間攪拌した。攪拌完了後に、ブフナー漏斗で洗浄/ろ過した。洗浄/ろ過は、まずエタノール27.5Lで洗浄/ろ過し、その後アセトン16.5Lで追加洗浄/ろ過した。ろ過したケーキ(wet cake)をトレイに移して乾燥機に入れ、その後35℃で12時間以上真空乾燥してタウリン酸ナトリウム5.28kgを得た。
【実施例2】
【0071】
タウロデオキシコール酸ナトリウム(sodium taurodeoxycholate)の大量合成
反応器に<実施例1>で作製したタウリン酸ナトリウム(sodium taurate)1.96kg、デオキシコール酸(deoxycholic acid)5.5kg、EEDQ(N-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン)6.93kg、エタノール(ethanol)55Lを投入し、攪拌を開始した。攪拌の際に、外部温度を40℃に設定し、内部温度を40℃に加熱して15時間以上攪拌した。攪拌完了後に、外部温度を20℃に設定し、内部温度を20℃に冷却し、冷却完了後に1時間攪拌した。攪拌完了後に、ブフナー漏斗で洗浄/ろ過した。洗浄/ろ過は、エタノール及びアセトンの混合液(混合体積比1:1)55Lで2回に分けて洗浄/ろ過し、アセトン16.5Lで洗浄/ろ過して1stケーキ7.515kgを得た。
【実施例3】
【0072】
<実施例3-1>タウロデオキシコール酸ナトリウム(sodium taurodeoxy cholate)の大量精製(1)
反応器に<実施例2>で作製した1stケーキ7.515kg、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)76.1L、精製水(purified water)10.1Lを投入して攪拌した。攪拌の際に、外部温度を60℃に設定して加熱し、完全に溶解したことを確認してから20分間追加攪拌した。その後、3時間かけて20℃に徐々に冷却し、次いで12時間以上追加攪拌した。攪拌完了後に、ブフナー漏斗で洗浄/ろ過した。ここで、イソプロピルアルコール15.6Lで洗浄/ろ過して2ndケーキ13.13kgを得た。
【0073】
その後、反応器に2ndケーキ13.13kg、イソプロピルアルコール56.8L、精製水7.6Lを投入して攪拌した。攪拌の際に、外部温度を60℃に設定して加熱し、完全に溶解したことを確認してから20分間追加攪拌した。その後、3時間かけて20℃に徐々に冷却し、次いで12時間以上攪拌した。攪拌完了後に、ブフナー漏斗で洗浄/ろ過した。ここで、イソプロピルアルコール11.4Lで洗浄/ろ過して3rdケーキ7.88kgを得た。
【0074】
その後、再度反応器に3rdケーキ7.88kg、イソプロピルアルコール42.6L、精製水5.7 Lを投入して攪拌した。攪拌の際に、外部温度を60℃に設定して加熱し、完全に溶解したことを確認してから20分間追加攪拌した。その後、3時間かけて20℃に徐々に冷却し、次いで12時間以上追加攪拌した。攪拌完了後に、ブフナー漏斗で洗浄/ろ過した。ここで、イソプロピルアルコール8.5Lで洗浄/ろ過し、ろ過した固体(wet solid)を得た。ろ過した固体の重量を測定したところ、4.73kgであった。ろ過した固体をトレイに移して乾燥機に入れ、その後35℃で6時間以上真空乾燥してタウロデオキシコール酸ナトリウム2.84kgを得た(純度99.0%)。
【0075】
<実施例3-2>タウロデオキシコール酸ナトリウム(sodium taurodeoxycholate)の大量精製(1)
実施例<3-1>と同様にタウロデオキシコール酸ナトリウムを大量精製するが、1stケーキの重量を変えて精製した。1stケーキ6.91kgを投入し、2ndケーキ11.34kg、3rdケーキ6.81kg及びろ過した固体(wet solid)4.08kgを経てタウロデオキシコール酸ナトリウム2.45kgを得た(純度99.9%)。
【実施例4】
【0076】
タウロデオキシコール酸ナトリウム(sodium taurodeoxy cholate)の大量精製(2)
反応器に<実施例3-1>及び<実施例3-2>で精製したタウロデオキシコール酸ナトリウム(sodium taurodeoxycholate)2.84kg及び2.45kg、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)64.2L、精製水(purified water)8.6Lを投入して攪拌した。攪拌の際に、外部温度を60℃に設定して加熱し、完全に溶解したことを確認してから20分間追加攪拌した。その後、3時間かけて20℃に徐々に冷却し、次いで12時間以上追加攪拌した。攪拌完了後に、ブフナー漏斗で洗浄/ろ過した。ここで、イソプロピルアルコール12.8Lで洗浄/ろ過してケーキ(wet cake)6.89kgを得た。
【0077】
その後、反応器にろ過したケーキ6.89kg、イソプロピルアルコール47.6L、精製水6.4Lを投入して攪拌した。攪拌の際に、外部温度を60℃に設定して加熱し、完全に溶解したことを確認してから20分間追加攪拌した。その後、3時間かけて20℃に徐々に冷却し、次いで12時間以上追加攪拌した。攪拌完了後に、ブフナー漏斗で洗浄/ろ過した。ここで、イソプロピルアルコール9.7Lで洗浄/ろ過して固体(wet solid)を得た。ろ過した固体の重量を測定したところ、5.17kgであった。ろ過した固体をトレイに移して乾燥機に入れ、その後35℃で6時間以上真空乾燥してタウロデオキシコール酸ナトリウム3.10kgを得た。
【実施例5】
【0078】
タウロデオキシコール酸ナトリウム(sodium taurodeoxycholate)の大量精製(3)
反応器に<実施例4>で得られたタウロデオキシコール酸ナトリウム(sodium taurodeoxycholate)3.10kg、アセトン(acetone)2.9L、精製水(purified water)2.9Lを投入して攪拌を開始した。攪拌の際に、外部温度を30℃に設定し、内部温度を30℃に調節して完全に溶解させた。その後、得られた溶液を0.45μmカートリッジフィルターでフィルタリングし、結晶化器に移送した。
【0079】
その後、結晶化器にアセトン8.3Lを滴下し、結晶が生成されたらアセトン滴下を停止し、次いで1時間攪拌した。攪拌完了後に、アセトン10Lを滴下しながら攪拌し、滴下完了後に、20℃に冷却して2時間追加攪拌した。攪拌完了後に、ブフナー漏斗で洗浄/ろ過した。ここで、アセトン7.2Lで洗浄/ろ過してケーキ(wet cake)5.92kgを得た。ろ過したケーキをトレイに移して乾燥機に入れ、その後70℃で12時間以上真空乾燥し、結晶化したタウロデオキシコール酸ナトリウム2.61kgを得た(収率:25±2%,純度99.9%以上)。
【実施例6】
【0080】
タウロデオキシコール酸ナトリウム(sodium taurodeoxycholate)の凍結乾燥
<実施例5>で得られた結晶化したタウロデオキシコール酸ナトリウム2.61kgを蒸留水25.0Lに溶解して溶液を作製し、その後トレイ(Tray)に移して凍結乾燥機に入れた。その後、凍結乾燥機の設定を表1のようにして凍結乾燥を行った。凍結乾燥により結晶化物2.57kgを得て、凍結乾燥により得られた結晶化物を粉砕網サイズ0.99mm、回転速度3000rpmで粉砕機により90分間粉砕し、結晶化したタウロデオキシコール酸ナトリウムを得た。
【0081】
【0082】
<実験例1>タウロデオキシコール酸ナトリウム合成の確認
<実施例2>で合成されたタウロデオキシコール酸ナトリウムをサンプリングし、HPLCにより分析した。HPLCは表2に示す条件下で分析した。移動相(mobile phase)は、リン酸二水素ナトリウム一水和物(sodium dihydrogenphosphate monohydrate)4.0g、ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium dodecyl sulfate)0.606g、水(water)1000mL及びアセトニトリル(acetonitrile)515mLを混合し、その後リン酸(phosphoric acid)を用いてpH2.1に調節して作製した。サンプリングは、50mgを10mLフラスコに加えてメタノール3.0mLに溶解させ、その後移動相を表示線まで充填し、0.45μmメンブレンシリンジフィルター(membrane syringe filter)でフィルタリングし、HPLCバイアル(vial)に入れて作製した。分析の結果、タウロデオキシコール酸ナトリウムが合成されたことが確認された。
【0083】
【0084】
<実験例2>未反応物及びタウロデオキシコール酸ナトリウムの検出の確認
<実施例2>における攪拌後に、結晶が沈降したら上清のエタノール溶液をサンプリングし、TLCにより反応物の検出有無を確認した。TLC展開溶媒は、それぞれ1)デオキシコール酸に対してCHCl
3:MeOH=9:1、PMA発色溶媒、2)タウリンに対してIPA:H
2O=8:2、Ninhydrine発色溶媒、3)タウロデオキシコール酸ナトリウムに対してCH
3Cl:MeOH=7.5:2.5溶媒を用いて分析した。また、EEDQと副産物であるキノリン(quinoline)は、UV 254nmにおいて肉眼で確認した。分析の結果、
図4に示すように、出発物質であるデオキシコール酸が存在しないことが確認された。
【0085】
<実験例3>各精製(再結晶)回数におけるタウロデオキシコール酸ナトリウムの純度の確認
<実験例3-1>不純物検出試験
前記実施例で作製したタウロデオキシコール酸ナトリウムの純度を確認するために、デオキシコール酸ナトリウム、ソフトマター、重金属、タウリン、残留溶媒の検出有無及び乾燥減量を測定した。
【0086】
検出は、実施例で作製したタウロデオキシコール酸ナトリウムの一定量を溶媒に溶解させた検液と、タウロデオキシコール酸ナトリウム標準品の一定量を溶媒に溶解させた標準液を作製し、紫外部吸光光度計により測定した。また、乾燥減量は、大韓民国薬典一般試験法乾燥減量試験法に従って測定し、重金属は、大韓民国薬典一般試験法重金属試験法第1法に従って測定した。
【0087】
分析結果を表3~表8に示す。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
表3~表8に示すように、本発明の精製方法により大量に合成されたタウロデオキシコール酸ナトリウムは、デオキシコール酸ナトリウム、ソフトマター、重金属などの含有量が非常に低く、純度が非常に高いことが確認された。
【0095】
<実験例3-2>純度実験
<実施例2>~<実施例5>で精製したタウロデオキシコール酸ナトリウムを各ステップでサンプリングし、前記方法により純度を分析した。分析結果を表9に示す。
【0096】
【0097】
表9に示すように、本発明の精製(再結晶)方法により大量にタウロデオキシコール酸ナトリウムを作製すると、純度が非常に高いことが確認された。具体的には、<実施例3-1>、<実施例3-2>、<実施例4>及び<実施例5>は、それぞれ1回の精製(再結晶)であり、再結晶回数が2回以上になると、純度は99%以上になり、収率も25%以上と高くなり、大量にタウロデオキシコール酸ナトリウムを製造できることが確認された。
【0098】
<比較例>他の合成方法によるタウロデオキシコール酸ナトリウムの合成
<1-1>クロロギ酸イソブチル(isobutyl chloroformate)を用いた合成
<実施例2>と同様に、反応器にタウリン酸ナトリウム(sodium taurate)、デオキシコール酸(deoxycholic acid;DCA)、クロロギ酸イソブチル(isobutyl chloroformate)を投入し、温度、溶媒、塩基を変化させてタウロデオキシコール酸ナトリウムを合成した。合成過程は下記化学反応により行った。
【0099】
【0100】
前記合成方法は、ステップ1の反応が低調であり、温度及び/または溶媒を変化させてDCAが定量的に変換される反応条件を探索したが、後続のステップ2での反応率が低調であり、溶媒、温度、baseを変化させて反応させても収得率が非常に低かった。
【0101】
<1-2>塩化ピバロイル(Pivaloyl chloride)を用いた合成
<実施例2>と同様に、反応器にタウリン酸ナトリウム(sodium taurate)、デオキシコール酸(deoxycholic acid;DCA)、塩化ピバロイル(Pivaloyl chloride)を投入し、温度及び/または溶媒を変化させてタウロデオキシコール酸ナトリウムを合成した。合成過程は下記化学反応により行った。
【0102】
【0103】
前記合成方法は、ステップ1において出発物質であるDCAが完全には変換されず、ステップ2においてもTDCへの変換が50%未満であり、反応溶媒、反応温度、塩基などを変化させても反応率が低調であることが確認された。
【0104】
<l-3>TPP/DTBTを用いた合成
<実施例2>と同様に、反応器にタウリン酸ナトリウム(sodium taurate)、デオキシコール酸(deoxycholic acid)、トリフェニルホスフィン(triphenylphosphine;TPP)、DTBTを投入し、温度、溶媒、塩基を変化させてタウロデオキシコール酸ナトリウムを合成した。合成過程は下記化学反応により行った。
【0105】
【0106】
前記合成方法は、ステップ1において活性化基を作製する反応は迅速かつ良好に行われたが、後続のDCAとの反応が完全には行われなかった。また、反応後に、出発物質であるDCA及びTPP/DTFT saltが残留し、溶解度が同程度であるので完全な除去が難しいという問題があり、ステップ2の反応率が20~30%と収得率が低いことが確認された。
【0107】
<1-4>DCC/HOBt/MMPを用いた合成
<実施例2>と同様に、反応器にタウリン酸ナトリウム(sodium taurate)、デオキシコール酸(deoxycholic acid)、DCC(N,N'-Dicyclohexylcarbodiimide)、HOBt(Hydroxybenzotriazole)及びMMPを投入し、温度、溶媒を変化させてタウロデオキシコール酸ナトリウムを合成した。合成過程は下記化学反応により行った。
【0108】
【0109】
前記合成方法は、ステップ1において完全な活性エステル(active ester)に完全に変換され、ステップ2の反応においても出発物質である活性エステルが完全に消失した。反応性は高かったが、多くの含有量における不純度が高かった。また、Work-up過程が複雑であり、不純物の除去が円滑に行われず、収率及び純度はそれぞれ65~70%、70~75%であり、低調であることが確認された。具体的な純度を表10に示す。
【0110】
【0111】
<1-5>DSCを用いた合成
<実施例2>と同様に、反応器にタウリン酸ナトリウム(sodium taurate)、デオキシコール酸(deoxycholic acid)、DSC(N,N'-Disuccinimudyl carbonate)を投入し、温度、溶媒を変化させてタウロデオキシコール酸ナトリウムを合成した。合成過程は下記化学反応により行った。
【0112】
【0113】
前記合成方法は、TLC上のステップ1において完全な活性エステル(active ester)に変換されたが、ステップ2において不純物が多量に生成された。また、低い温度で反応が容易に行われるが、新たなimpurity及び不純物の除去が困難であり、収率及び純度はそれぞれ55~60%、0.2%であり、低調であることが確認された。具体的な純度を表11に示す。
【0114】
【0115】
<1-6>HATUを用いた合成
<実施例2>と同様に、反応器にタウリン酸ナトリウム(sodium taurate)、デオキシコール酸(deoxycholic acid)、HATU(1-[Bis(dimethylamino)methylene]-1H-1,2,3-triazolo[4,5-b]pyridinium 3-Oxide Hexafluorophosphate)を投入し、温度、溶媒を変化させてタウロデオキシコール酸ナトリウムを合成した。合成過程は下記化学反応により行った。
【0116】
【0117】
前記合成方法は、ステップ1において完全な活性エステル(active ester)に変換され、ステップ2においても活性エステルが完全に変換され、反応性に非常に優れた。しかしながら、ソフトマターにおいては、TDCと共に新規impurityも形成され、副産物の除去が相対的に困難であることが確認された。また、不純物及び副産物をH2Oで溶解して除去しなければならないが、TDCも同様にH2Oに溶解しやすいので、分離が困難であるという問題が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、タウロデオキシコール酸ナトリウムの大量生産を可能にするので、化学、医薬、製薬などの産業分野において有用である。