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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】スイッチングデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20241107BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241107BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20241107BHJP
   H01L 21/314 20060101ALI20241107BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241107BHJP
   H01L 21/368 20060101ALI20241107BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
H01L29/78 301G
H01L21/31 B
H01L21/314 M
H01L21/314 A
H01L29/78 652T
H01L29/78 652K
H01L29/78 658F
H01L29/78 658E
H01L29/78 658A
H01L21/368 Z
H01L21/318 C
H01L29/78 301B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021029177
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022130163
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513067727
【氏名又は名称】高知県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 英幹
(72)【発明者】
【氏名】大川 峰司
(72)【発明者】
【氏名】川原村 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲麗▼
【審査官】石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-018888(JP,A)
【文献】特開2020-126892(JP,A)
【文献】特開2018-142637(JP,A)
【文献】特開平07-273194(JP,A)
【文献】特開2000-183051(JP,A)
【文献】特開2019-021753(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0044067(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 21/31
H01L 21/314
H01L 29/12
H01L 29/78
H01L 21/368
H01L 21/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングデバイス(10、500、600)の製造方法であって、
シリコンを含む第1有機成膜原料を窒化ガリウム半導体層(12、612)の表面に供給するとともに酸化ガスを含む第1反応ガスを非プラズマ状態で前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給することによって、前記窒化ガリウム半導体層上に酸化シリコンにより構成された第1ゲート絶縁膜(21、621)を形成する工程と、
シリコンを含む第2有機成膜原料を前記第1ゲート絶縁膜の表面に供給するとともに酸化ガスを含む第2反応ガスを非プラズマ状態で前記第1ゲート絶縁膜の前記表面に供給することによって、前記第1ゲート絶縁膜上に酸化シリコンにより構成された第2ゲート絶縁膜(22、622)を形成する工程と、
を有し、
前記第1反応ガスに含まれる前記酸化ガスと前記第2反応ガスに含まれる前記酸化ガスが同種のガスであり、
前記第1反応ガス中の前記酸化ガスの濃度が、前記第2反応ガス中の前記酸化ガスの濃度よりも低い、
製造方法。
【請求項2】
前記第1有機成膜原料が、シリコンを含む成膜原料が溶解しているとともに有機溶剤を含む第1溶液(84d)であり、
前記第2有機成膜原料が、シリコンを含む成膜原料が溶解しているとともに有機溶剤を含む第2溶液(84d)である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第1溶液からミスト(83)を発生させ、前記第1溶液の前記ミストを前記第1反応ガスとともに前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給し、
前記第2ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第2溶液からミスト(83)を発生させ、前記第2溶液の前記ミストを前記第2反応ガスとともに前記第1ゲート絶縁膜の前記表面に供給する、
請求項2に記載に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第1ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第1溶液を前記窒化ガリウム半導体層の前記表面にスプレー塗布しながら前記第1反応ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給し、
前記第2ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第2溶液を前記第1ゲート絶縁膜の前記表面にスプレー塗布しながら前記第2反応ガスを前記第1ゲート絶縁膜の前記表面に供給する、
請求項2に記載に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第1溶液をインクジェット法によって前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に塗布しながら前記第1反応ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給し、
前記第2ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第2溶液をインクジェット法によって前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に塗布しながら前記第2反応ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給する、
請求項2に記載に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第1溶液中にバブルを発生させることによって前記第1溶液の液滴を発生させ、前記第1溶液の前記液滴を前記第1反応ガスとともに前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給し、
前記第2ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第2溶液中にバブルを発生させることによって前記第2溶液の液滴を発生させ、前記第2溶液の前記液滴を前記第2反応ガスとともに前記第1ゲート絶縁膜の前記表面に供給する、
請求項2に記載に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第1有機成膜原料を含む第1原料ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給する工程と、前記第1反応ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給する工程と、を交互に複数回繰り返し、
前記第2ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第2有機成膜原料を含む第2原料ガスを前記第1ゲート絶縁膜の前記表面に供給する工程と、前記第1反応ガスを前記第1ゲート絶縁膜の前記表面に供給する工程と、を交互に複数回繰り返す、
請求項1に記載に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1反応ガスに含まれる前記酸化ガスと前記第2反応ガスに含まれる前記酸化ガスが、オゾンである請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第2ゲート絶縁膜の平均炭素濃度が、前記第1ゲート絶縁膜の平均炭素濃度よりも低い、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第2ゲート絶縁膜の少なくとも一部の炭素濃度が、3×1019atoms/cm未満である請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第2ゲート絶縁膜を形成する前記工程の実施後に、前記第1ゲート絶縁膜と前記第2ゲート絶縁膜をプラズマ状態の酸化ガスに曝す工程を有さない、請求項1~10のいずれか一項に記載に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第1ゲート絶縁膜を形成する前記工程の実施後に、前記窒化ガリウム半導体層と前記第1ゲート絶縁膜の界面にガリウム酸化物層が存在しない、または、前記窒化ガリウム半導体層と前記第1ゲート絶縁膜の界面に存在するガリウム酸化物層の厚さが1nm以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、スイッチングデバイスの製造方法に関する。
【0002】
特許文献1には、スイッチングデバイスの製造方法が開示されている。この製造方法は、第1ゲート絶縁膜形成工程と、第2ゲート絶縁膜形成工程を有している。第1ゲート絶縁膜形成工程では、オゾンを酸化剤として用いたALD法(atomic layer deposition)により、窒化ガリウム半導体層上に酸化シリコンにより構成された第1ゲート絶縁膜を形成する。第2工程では、酸素プラズマを酸化剤として用いたALD法により、第1ゲート絶縁膜上に酸化シリコンにより構成された第2ゲート絶縁膜を形成する。第2ゲート絶縁膜上には、ゲート電極が形成される。
【0003】
第1の工程では、比較的酸化力が低いオゾンを酸化剤として使用するので、窒化ガリウム半導体層の酸化を抑制しながら窒化ガリウム半導体層上に第1ゲート絶縁膜を形成することができる。窒化ガリウム半導体層の酸化を抑制することで、スイッチングデバイスの特性を向上させることができる。但し、第1工程では、比較的酸化力が低いオゾンを酸化剤として使用するので、第1ゲート絶縁膜中に炭素が取り込まれ易い。このため、第1ゲート絶縁膜ではゲートリークを抑制できない。第2工程では、酸化力が高い酸素プラズマを酸化剤として使用するので、第2ゲート絶縁膜中に炭素が取り込まれ難い。したがって、高い絶縁性を有する第2ゲート絶縁膜を形成することができ、ゲートリークを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-071497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の製造方法では、第1ゲート絶縁膜上に、酸化力が高い酸素プラズマを酸化剤として使用して第2ゲート絶縁膜を形成する。発明者らが行った実験により、第2工程において酸素プラズマ等の酸化力が高いプラズマ状態の酸化ガスを使用すると、第1ゲート絶縁膜の下部の窒化ガリウム半導体層が酸化されることが判明した。その結果、第1ゲート絶縁膜と窒化ガリウム半導体層の界面にガリウム酸化物層が形成される。当該界面にガリウム酸化物層が形成されると、スイッチングデバイスの特性が低下する。本明細書では、ゲート絶縁膜と窒化ガリウム半導体層の界面におけるガリウム酸化物層の形成を抑制しながら絶縁性が高いゲート絶縁膜を形成する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するスイッチングデバイスの製造方法は、シリコンを含む第1有機成膜原料を窒化ガリウム半導体層の表面に供給するとともに酸化ガスを含む第1反応ガスを非プラズマ状態で前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給することによって前記窒化ガリウム半導体層上に酸化シリコンにより構成された第1ゲート絶縁膜を形成する工程と、シリコンを含む第2有機成膜原料を前記第1ゲート絶縁膜の表面に供給するとともに酸化ガスを含む第2反応ガスを非プラズマ状態で前記第1ゲート絶縁膜の前記表面に供給することによって、前記第1ゲート絶縁膜上に酸化シリコンにより構成された第2ゲート絶縁膜を形成する工程と、を有する。前記第1反応ガスに含まれる前記酸化ガスと前記第2反応ガスに含まれる前記酸化ガスが同種のガスである。前記第1反応ガス中の前記酸化ガスの濃度が、前記第2反応ガス中の前記酸化ガスの濃度よりも低い。
【0007】
なお、スイッチングデバイスは、ゲート絶縁膜を有するスイッチングデバイスであれば、いずれのスイッチングデバイスであってもよい。例えば、スイッチングデバイスは、電界効果トランジスタ(FET:field effect transistor)であってもよいし、高電子移動度トランジスタ(HEMT:high electron mobility transistor)であってもよい。
【0008】
また、窒化ガリウム半導体層は、窒化ガリウムを主成分とする半導体層である。例えば、窒化ガリウム半導体層は、窒化ガリウム(GaN)により構成されていてもよいし、窒化インジウムガリウム(InGaN)により構成されていてもよいし、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)により構成されていてもよいし、窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)により構成されていてもよい。
【0009】
また、酸化シリコンは、SiとOとの結合を含む化合物である。例えば、酸化シリコンは、SiOであってもよいし、SiONであってもよい。
【0010】
なお、第1有機成膜原料と第2有機成膜原料は、同種の原料であってもよいし、異なる原料であってもよい。
【0011】
この製造方法では、第1ゲート絶縁膜を形成する工程において、シリコンを含む第1有機成膜原料を窒化ガリウム半導体層の表面に供給するとともに酸化ガスを含む第1反応ガスを非プラズマ状態で前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給することによって酸化シリコンにより構成された第1ゲート絶縁膜を形成する。ここでは、酸化ガスの濃度が低い第1反応ガスが使用される。したがって、窒化ガリウム半導体層と第1ゲート絶縁膜との界面でのガリウム酸化物層の形成を抑制しながら、第1ゲート絶縁膜を形成することができる。また、第1反応ガス中における酸化ガスの濃度が低いので、第1ゲート絶縁膜中に炭素が取り込まれ易い。したがって、第1ゲート絶縁膜の絶縁性はそれほど高くない。第2ゲート絶縁膜を形成する工程では、シリコンを含む第2有機成膜原料を前記第1ゲート絶縁膜の表面に供給するとともに酸化ガスを含む第2反応ガスを非プラズマ状態で前記第1ゲート絶縁膜の前記表面に供給することによって、前記第1ゲート絶縁膜上に酸化シリコンにより構成された第2ゲート絶縁膜を形成する。ここでは、酸化ガスの濃度が高い第2反応ガスが使用される。したがって、第2ゲート絶縁膜中に炭素が取り込まれ難い。したがって、絶縁性が高い第2ゲート絶縁膜を形成できる。したがって、第1ゲート絶縁膜と第2ゲート絶縁膜とを有するゲート絶縁膜は、全体として高い絶縁性を有している。このゲート絶縁膜によれば、ゲートリークを抑制できる。また、第2反応ガスは非プラズマ状態で第1ゲート絶縁膜の表面に供給される。非プラズマ状態の第2反応ガスの酸化力はプラズマ状態の酸化ガスの酸化力ほど高くはないので、第1ゲート絶縁膜の下部の窒化ガリウム半導体層の表面が酸化されることが抑制される。したがって、窒化ガリウム半導体層と第1ゲート絶縁膜との界面でのガリウム酸化物層の形成を抑制しながら、第2ゲート絶縁膜を形成することができる。以上に説明したように、この製造方法によれば、ゲート絶縁膜と窒化ガリウム半導体層の界面におけるガリウム酸化物層の形成を抑制しながら絶縁性が高いゲート絶縁膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】スイッチングデバイス10の断面図。
図2】スイッチングデバイス10の製造方法の説明図。
図3】スイッチングデバイス10の製造方法の説明図。
図4】スイッチングデバイス10の製造方法の説明図。
図5】スイッチングデバイス10の製造方法の説明図。
図6】ミストCVD法の説明図。
図7】ゲート絶縁膜と窒化ガリウム半導体基板の界面のXPS分析結果を示すグラフ。
図8】実施例1の製造方法により製造されたスイッチングデバイス10の移動度を示すグラフ。
図9】酸素プラズマを使用する製造方法により製造されたスイッチングデバイス10の移動度を示すグラフ。
図10】ゲート絶縁膜中の炭素濃度分布を示すグラフ。
図11】ゲート絶縁膜に印加する電界とゲート絶縁膜に流れるリーク電流の関係を示すグラフ。
図12】スプレー法の説明図。
図13】インクジェット法の説明図。
図14】バブリング法の説明図。
図15】非プラズマ状態の酸化ガスを使用するALD法の説明図。
図16】スイッチングデバイス500の断面図。
図17】スイッチングデバイス500の製造方法の説明図。
図18】スイッチングデバイス500の製造方法の説明図。
図19】スイッチングデバイス500の製造方法の説明図。
図20】スイッチングデバイス500の製造方法の説明図。
図21】スイッチングデバイス500の製造方法の説明図。
図22】スイッチングデバイス500の製造方法の説明図。
図23】スイッチングデバイス500の製造方法の説明図。
図24】スイッチングデバイス600の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書が開示する一例のスイッチングデバイスの製造方法では、前記第1有機成膜原料がシリコンを含む成膜原料が溶解しているとともに有機溶剤を含む第1溶液であり、前記第2有機成膜原料が、シリコンを含む成膜原料が溶解しているとともに有機溶剤を含む第2溶液であってもよい。この場合、1つの構成においては、ミスト塗布法を用いてもよい。すなわち、前記第1ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第1溶液からミストを発生させ、前記第1溶液の前記ミストを前記第1反応ガスとともに前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給してもよい。また、前記第2ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第2溶液からミストを発生させ、前記第2溶液の前記ミストを前記第2反応ガスとともに前記第1ゲート絶縁膜の前記表面に供給してもよい。また、別の構成においては、スプレー塗布法を用いてもよい。すなわち、前記第1ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第1溶液を前記窒化ガリウム半導体層の前記表面にスプレー塗布しながら前記第1反応ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給してもよい。前記第2ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第2溶液を前記第1ゲート絶縁膜の前記表面にスプレー塗布しながら前記第2反応ガスを前記第1ゲート絶縁膜の前記表面に供給してもよい。また、別の構成においては、インクジェット法を用いてもよい。すなわち、前記第1ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第1溶液をインクジェット法によって前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に塗布しながら前記第1反応ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給してもよい。前記第2ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第2溶液をインクジェット法によって前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に塗布しながら前記第2反応ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給してもよい。また、別の構成においては、バブリング法を用いてもよい。すなわち、前記第1ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第1溶液中にバブルを発生させることによって前記第1溶液の液滴を発生させ、前記第1溶液の前記液滴を前記第1反応ガスとともに前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給してもよい。前記第2ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第2溶液中にバブルを発生させることによって前記第2溶液の液滴を発生させ、前記第2溶液の前記液滴を前記第2反応ガスとともに前記第1ゲート絶縁膜の前記表面に供給してもよい。
【0014】
これらの構成によれば、好適に第1ゲート絶縁膜と第2ゲート絶縁膜を形成することができる。
【0015】
本明細書が開示する一例のスイッチングデバイスの製造方法では、前記第1ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第1有機成膜原料を含む第1原料ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給する工程と、前記第1反応ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給する工程と、を交互に複数回繰り返してもよい。前記第2ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記第2有機成膜原料を含む第2原料ガスを前記第1ゲート絶縁膜の前記表面に供給する工程と、前記第1反応ガスを前記第1ゲート絶縁膜の前記表面に供給する工程と、を交互に複数回繰り返してもよい。
【0016】
この構成によれば、好適に第1ゲート絶縁膜と第2ゲート絶縁膜を形成することができる。
【0017】
本明細書が開示するいずれかの製造方法においては、前記第1反応ガスに含まれる前記酸化ガスと前記第2反応ガスに含まれる前記酸化ガスが、オゾンであってもよい。
【0018】
本明細書が開示するいずれかの製造方法においては、前記第2ゲート絶縁膜の平均炭素濃度が、前記第1ゲート絶縁膜の平均炭素濃度よりも低くてもよい。この場合、前記第2ゲート絶縁膜の少なくとも一部の炭素濃度が、3×1019atoms/cm未満であってもよい。
【0019】
これらの構成によれば、ゲートリークを好適に抑制できる。
【0020】
本明細書が開示するいずれの製造方法においては、前記第1ゲート絶縁膜を形成する前記工程の実施後に、前記第1ゲート絶縁膜と前記第2ゲート絶縁膜をプラズマ状態の酸化ガスに曝す工程を有さなくてもよい。
【0021】
この構成によれば、ゲート絶縁膜と窒化ガリウム半導体層の界面におけるガリウム酸化物層の形成を好適に抑制できる。
【0022】
本明細書が開示する一例の製造方法においては、前記第2ゲート絶縁膜を形成する前記工程の実施後に、前記窒化ガリウム半導体層と前記第1ゲート絶縁膜の界面にガリウム酸化物層が存在しない、または、前記窒化ガリウム半導体層と前記第1ゲート絶縁膜の界面に存在するガリウム酸化物層の厚さが1nm以下であってもよい。
【0023】
この構成によれば、スイッチングデバイスの特性をより向上させることができる。
【0024】
図1に示す実施形態のスイッチングデバイス10は、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)である。スイッチングデバイス10は、窒化ガリウム半導体基板12を有している。窒化ガリウム半導体基板12は、高濃度n型層14a、バッファ層14b、ドリフト層14c、ボディ層16、ソース層18、及び、ドレイン層20を有している。高濃度n型層14aは、窒化ガリウム半導体基板12の下面を含む範囲に設けられている。バッファ層14bは、高濃度n型層14aよりもn型不純物濃度が低いn型層であり、高濃度n型層14a上に設けられている。ドリフト層14cは、バッファ層14bと同等のn型不純物濃度を有するn型層であり、バッファ層14b上に設けられている。ボディ層16は、p型層であり、ドリフト層14c上に設けられている。ソース層18とドレイン層20は、n型層であり、ボディ層16上に設けられている。ソース層18とドレイン層20は、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aを部分的に含む範囲に設けられている。ソース層18とドレイン層20は互いから分離されている。すなわち、ソース層18とドレイン層20の間にボディ層16が設けられており、ボディ層16によってソース層18がドレイン層20から分離されている。
【0025】
窒化ガリウム半導体基板12の上部に、ゲート絶縁膜23、ゲート電極24、ソース電極26、及び、ドレイン電極28が配置されている。
【0026】
ゲート絶縁膜23は、第1ゲート絶縁膜21と第2ゲート絶縁膜22を有している。第1ゲート絶縁膜21と第2ゲート絶縁膜22は、酸化シリコン(例えば、SiO、SiON等)によって構成されている。第1ゲート絶縁膜21は、窒化ガリウム半導体基板12上に配置されている。第1ゲート絶縁膜21は、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aのうち、ソース層18の表面からドレイン層20の表面まで伸びている。第1ゲート絶縁膜21は、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aにおいて、ソース層18、ボディ層16、及び、ドレイン層20に接している。第2ゲート絶縁膜22は、第1ゲート絶縁膜21上に配置されている。第2ゲート絶縁膜22は、第1ゲート絶縁膜21の上面の全域を覆っている。
【0027】
ゲート電極24は、導体(例えば、金属やポリシリコン)により構成されている。ゲート電極24は、第2ゲート絶縁膜22上に配置されている。ゲート電極24は、ソース層18の上部からドレイン層20の上部まで伸びている。ゲート電極24は、ゲート絶縁膜23を介して、ソース層18、ボディ層16、及び、ドレイン層20に対向している。
【0028】
ソース電極26は、導体により構成されている。ソース電極26は、ソース層18上に配置されている。ソース電極26は、ソース層18にオーミック接触している。
【0029】
ドレイン電極28は、導体により構成されている。ドレイン電極28は、ドレイン層20上に配置されている。ドレイン電極28は、ドレイン層20にオーミック接触している。
【0030】
ゲート電極24に閾値以上の電位を印加すると、ゲート絶縁膜23の直下のドレイン層20にチャネルが形成される。チャネルによってソース層18とドレイン層20が接続される。この状態で、ドレイン電極28にソース電極26よりも高い電位を印加すると、ソース層18からチャネルを通ってドレイン層20へ電子が流れる。すなわち、スイッチングデバイス10がオンする。なお、後に詳述するが、スイッチングデバイス10では、第1ゲート絶縁膜21と窒化ガリウム半導体基板12との界面30における界面準位密度が低い。したがって、スイッチングデバイス10のチャネル移動度は高い。また、後に詳述するが、スイッチングデバイス10では、第2ゲート絶縁膜22が高い絶縁性を有している。したがって、ゲート絶縁膜23では、ゲートリークが生じ難い。
【実施例1】
【0031】
次に、実施例1のスイッチングデバイス10の製造方法について説明する。図2は、加工前の窒化ガリウム半導体基板12を示している。スイッチングデバイス10は、図2の窒化ガリウム半導体基板12から製造される。図2に示す窒化ガリウム半導体基板12の全体は、高濃度n型層14aにより構成されている。高濃度n型層14aは、約400μmの厚さを有しており、約1×1018cm-3のn型不純物濃度を有している。
【0032】
まず、図3に示すように、高濃度n型層14a上に、窒化ガリウムにより構成されたバッファ層14bをエピタキシャル成長させる。ここでは、バッファ層14bのn型不純物濃度が約2×1016cm-3となり、バッファ層14bの厚さが約0.3μmとなるようにバッファ層14bを形成する。次に、図3に示すように、バッファ層14b上に、窒化ガリウムにより構成されたドリフト層14cをエピタキシャル成長させる。ここでは、ドリフト層14cのn型不純物濃度が約2×1016cm-3となり、ドリフト層14cの厚さが約1.0μmとなるようにドリフト層14cを形成する。次に、図3に示すように、ドリフト層14c上に、窒化ガリウムにより構成されたボディ層16をエピタキシャル成長させる。ここでは、ボディ層16がp型不純物(例えば、マグネシウム)を約5×1017cm-3の濃度で有しており、ボディ層16の厚さが約1.5μmとなるようにボディ層16を形成する。その後、窒化ガリウム半導体基板12を窒素雰囲気下において約850℃にて約5分間アニールし、ボディ層16中のp型不純物を活性化させる。
【0033】
次に、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aからボディ層16に選択的にn型不純物(例えば、シリコン)を約3×1015cm-2のドーズ量でイオン注入する。その後、窒化ガリウム半導体基板12全体を窒素雰囲気下において約1000℃にて約5分間アニールし、注入したn型不純物を活性化させる。これによって、図4に示すように、ボディ層16の表層部の一部に、ソース層18とドレイン層20を形成する。
【0034】
次に、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aを洗浄する。次に、ゲート絶縁膜形成工程を実施する。ゲート絶縁膜形成工程では、図5に示すように、上面12a上に酸化シリコンにより構成されたゲート絶縁膜23を形成する。すなわち、上面12a上に第1ゲート絶縁膜21を形成し、第1ゲート絶縁膜21上に第2ゲート絶縁膜22を形成する。実施例1のゲート絶縁膜形成工程では、ミストCVD法(chemical vapor deposition)により第1ゲート絶縁膜21と第2ゲート絶縁膜22を形成する。
【0035】
図6は、ミストCVD法を実行するミストCVD装置80を示している。ミストCVD装置80は、炉82、ミスト発生装置84、キャリアガス供給源86、第1反応ガス供給源88a、及び、第2反応ガス供給源88bを有している。
【0036】
炉82は、チャンバー82aを有している。チャンバー82a内に、窒化ガリウム半導体基板12を載置することができる。炉82は、ヒータを内蔵しており、チャンバー82a内の窒化ガリウム半導体基板12を加熱することができる。
【0037】
ミスト発生装置84は、ミスト発生タンク84a、容器84b、超音波振動子84cを有している。ミスト発生タンク84a内には、溶液84dが貯留されている。溶液84dは、有機溶剤にシリコンを含む成膜原料を溶解させたものである。例えば、シリコンを含む成膜原料として、ポリシラザン、テトラエトキシシラン、トリエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラン等のシリコン化合物を用いることができる。有機溶剤として、酢酸ブチル、ジメチルエーテル、酢酸メチル、アセトニトリル、ジブチルエーテル等を用いることができる。容器84bは、液体84e(例えば、水)を貯留している。ミスト発生タンク84aの下部は、液体84e内に浸漬されている。容器84bの底面に、超音波振動子84cが固定されている。超音波振動子84cは、液体84eに超音波を加える。液体84eに加えられた超音波は、液体84eを介してミスト発生タンク84a内の溶液84dに伝わる。すると、溶液84dの液面が振動し、溶液84dの上部の空間に溶液84dのミスト83が発生する。このように、ミスト発生装置84は、ミスト発生タンク84a内に、溶液84dのミスト83を発生させる。ミスト発生タンク84aは、原料供給管94を介して炉82に接続されている。ミスト83は、ミスト発生タンク84aから原料供給管94を介して炉82に供給される。炉82内を下流端まで流れたミスト83は、炉82の外部へ排出される。
【0038】
キャリアガス供給源86は、キャリアガス供給管90を介してミスト発生タンク84aに接続されている。キャリアガス供給源86は、ミスト発生タンク84aにキャリアガス(例えば、アルゴン等の不活性ガス)を供給する。
【0039】
第1反応ガス供給源88aと第2反応ガス供給源88bは、反応ガス供給管92を介して原料供給管94の途中に接続されている。第1反応ガス供給源88aは、原料供給管94に第1反応ガスを供給する。第2反応ガス供給源88bは、原料供給管94に第2反応ガスを供給する。ミストCVD装置80では、使用する反応ガス供給源を第1反応ガス供給源88aと第2反応ガス供給源88bの間で切り換えることができる。第1反応ガスは酸化ガス(本実施形態ではオゾン)を含んでいる。第2反応ガスは酸化ガス(本実施形態ではオゾン)を含んでいる。すなわち、第1反応ガスに含まれる酸化ガスと第2反応ガスに含まれる酸化ガスが同種のガスである。第1反応ガス中の酸化ガスの濃度は、第2反応ガス中の酸化ガスの濃度よりも低い。第1反応ガス中の酸化ガスの濃度は、10g/m未満であり、第2反応ガス中の酸化ガスの濃度は、10g/m以上である。
【0040】
ゲート絶縁膜形成工程は、第1ゲート絶縁膜21を形成する第1ゲート絶縁膜形成工程と、第2ゲート絶縁膜22を形成する第2ゲート絶縁膜形成工程を有している。
【0041】
第1ゲート絶縁膜形成工程では、まず、炉82のチャンバー82a内に窒化ガリウム半導体基板12を載置する。ここでは、チャンバー82a内を流れるミストに上面12aが曝される向きで、窒化ガリウム半導体基板12をチャンバー82a内に載置する。次に、炉82によって窒化ガリウム半導体基板12を加熱する。第1ゲート絶縁膜形成工程及び第2ゲート絶縁膜形成工程の間は、窒化ガリウム半導体基板12の温度を約400℃に維持する。次に、超音波振動子84cを作動させて、溶液84dからミスト83を発生させる。同時に、キャリアガス供給源86からミスト発生タンク84aへのキャリアガスの供給を開始し、第1反応ガス供給源88aから原料供給管94への第1反応ガスの供給を開始する。キャリアガス供給管90からミスト発生タンク84a内に流入したキャリアガスは、ミスト発生タンク84a内のミスト83と共に原料供給管94へ流れる。原料供給管94内では、ミスト83がキャリアガスとともに炉82へ向かって流れる。原料供給管94の途中で、反応ガス供給管92から原料供給管94内に第1反応ガスが流入する。このため、原料供給管94のうちの反応ガス供給管92との合流部よりも下流側の部分では、ミスト83がキャリアガスと第1反応ガスとともに炉82へ向かって流れる。ミスト83、キャリアガス、及び、第1反応ガスは、原料供給管94の下流端まで達すると、炉82のチャンバー82a内へ流入する。チャンバー82a内を流れるミスト83の一部は、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに付着する。すると、上面12aに付着したミスト83に含まれる有機溶剤が揮発し、上面12aにシリコンを含む成膜原料が固着する。また、上面12aにシリコンを含む成膜原料が固着するのと同時に、成膜原料が第1反応ガスによって酸化されて酸化シリコンとなる。したがって、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに、酸化シリコンにより構成された第1ゲート絶縁膜21が、例えば、10nm成長する。
【0042】
第1ゲート絶縁膜21が所定の厚さまで成長したら、第1ゲート絶縁膜形成工程から第2ゲート絶縁膜形成工程に移行する。第2ゲート絶縁膜形成工程では、ミストCVD装置80で使用する反応ガス供給源を、第1反応ガス供給源88aから第2反応ガス供給源88bに切り換える。したがって、第1ゲート絶縁膜21の上面に、ミスト83とともに第2反応ガスが供給される。第1ゲート絶縁膜21の上面に付着したミスト83に含まれる有機溶剤が揮発するので、第1ゲート絶縁膜21の上面にシリコンを含む成膜原料が固着する。それと同時に、第1ゲート絶縁膜21の上面に固着した成膜原料が第2反応ガスによって酸化されて酸化シリコンとなる。したがって、第1ゲート絶縁膜21上に、酸化シリコンによって構成された第2ゲート絶縁膜22が、例えば90nm成長する。
【0043】
ゲート絶縁膜23(すなわち、第1ゲート絶縁膜21と第2ゲート絶縁膜22)を100nm形成したら、窒化ガリウム半導体基板12を窒素雰囲気下において約800℃にて約5分間アニールする。
【0044】
次に、図1に示すように、ソース層18の上部、及び、ドレイン層20の上部において、ゲート絶縁膜23にコンタクトホール26a、28aを形成する。次に、ゲート電極24、ソース電極26、及び、ドレイン電極28を形成する。その後、必要に応じて、窒化ガリウム半導体基板12に対して水素シンタ処理を実施する。以上の工程によって、図1に示すスイッチングデバイス10が完成する。
【0045】
図7は、スイッチングデバイス10においてガリウム酸化物層の有無を検証した実験結果を示している。図7のグラフA~Cは、スイッチングデバイス10として3つのサンプルを作成し、各サンプルに対してGaLMMについてのXPS分析を行った結果を示している。グラフAは、ゲート絶縁膜21を形成していない状態(図4の状態)のボディ層16の表面に対してXPS分析を行った結果である。すなわち、グラフAは、ガリウム酸化物層が存在しない状態のボディ層16の表面に対してXPS分析を行った結果である。グラフBは、実施例1のゲート絶縁膜形成工程によってゲート絶縁膜21を形成し、そのゲート絶縁膜21とボディ層16との界面30にXPS分析を行った結果である。グラフCは、酸素プラズマ(プラズマ状態の酸素ガス)を用いたALD法によってゲート絶縁膜21を形成し、そのゲート絶縁膜21とボディ層16との界面30にXPS分析を行った結果である。なお、グラフB及びCの測定では、ゲート絶縁膜21をウェットエッチングすることによってゲート絶縁膜21の厚さを約5nmまで減少させ、その後に、ゲート絶縁膜21とボディ層16の界面30に対してXPS分析を行った。
【0046】
図7に示すように、グラフBはグラフAとほぼ一致するのに対し、グラフCはグラフAに対して明らかなずれを有する。Noritake Isomura at el(2020). X-ray photoelectron spectroscopy insights on interfaces between SiO2 films and GaN substrates: differences due to depositional technique, Jpn. J. Appl. Phys. 59, 090902 (2020)に示されているように、ゲート絶縁膜と窒化ガリウム半導体との界面のXPS分析の結果を比較することで、当該界面にガリウム酸化物層が存在するか否かを検出することができる。この手法によれば、厚さが1nmより厚いガリウム酸化物層を検出することができる。上述したように、グラフAはガリウム酸化物層が存在しない状態のボディ層16の表面に対してXPS分析を行った結果である。グラフBはグラフAと一致しているので、グラフBのサンプルでは、界面30にガリウム酸化物層が存在しない、または、界面30に存在するガリウム酸化物層の厚さが1nm以下(検出限界以下)である。すなわち、実施例1の製造方法によりゲート絶縁膜21を形成した場合には、界面30にガリウム酸化物層が形成されない、または、界面30に形成されるガリウム酸化物層の厚さが1nm以下である。グラフCはグラフAに対してずれを有しているので、グラフCのサンプルでは、界面30に厚さが1nmよりも厚いガリウム酸化物層が存在する。すなわち、酸素プラズマを用いたALD法によってゲート絶縁膜21を形成した場合には、界面30に厚さが1nmよりも厚いガリウム酸化物層が形成される。
【0047】
以上に説明したように、実施例1の製造方法によれば、ガリウム酸化物層の形成を抑制できる。その理由は、以下のように考えられる。ゲート絶縁膜を形成するときに、プラズマ状態の酸化ガスを使用すると、プラズマ状態の酸化ガスの酸化力が高すぎるため、窒化ガリウム半導体基板の表面が酸化される。窒化ガリウム半導体基板の表面が酸化シリコン膜で覆われている状態でプラズマ状態の酸化ガスを使用する場合であっても、酸化シリコン膜の下部の窒化ガリウム半導体基板が酸化される。このように、プラズマ状態の酸化ガスを使用する場合には、ゲート絶縁膜と窒化ガリウム半導体基板との界面にガリウム酸化物層が形成される。これに対し、実施例1の第1ゲート絶縁膜形成工程では、酸化ガスを含む第1反応ガスを非プラズマ状態で使用する。すなわち、窒化ガリウム半導体基板12上でシリコンを含む成膜原料を非プラズマ状態の第1反応ガスによって酸化することによって、第1ゲート絶縁膜21(すなわち、酸化シリコン膜)を形成する。第1反応ガス中の酸化ガスの濃度が低く、かつ、第1反応ガスが非プラズマ状態であるので、第1反応ガスの酸化力はそれ程高くない。したがって、第1ゲート絶縁膜形成工程中に窒化ガリウム半導体基板12の上面12aが酸化されることを抑制できる。また、実施例1の第2ゲート絶縁膜形成工程では、酸化ガスを含む第2反応ガスを非プラズマ状態で使用する。すなわち、第1ゲート絶縁膜21上でシリコンを含む成膜原料を非プラズマ状態の第2反応ガスによって酸化することによって、第2ゲート絶縁膜22(すなわち、酸化シリコン膜)を形成する。第2反応ガス中の酸化ガスの濃度は第1反応ガス中の酸化ガスの濃度よりも高いので、第2反応ガスの酸化力は第1反応ガスの酸化力よりも高い。しかしながら、第2反応ガスが非プラズマ状態であるので、第2反応ガスの酸化力は、第1ゲート絶縁膜21の下部の窒化ガリウム半導体基板12を酸化させるほど強くはない。したがって、第2ゲート絶縁膜形成工程中に窒化ガリウム半導体基板12の上面12aが酸化されることを抑制できる。したがって、この製造方法によれば、ゲート絶縁膜23と窒化ガリウム半導体基板12との界面30にガリウム酸化物層が形成されることを抑制できる。また、実施例1の製造方法では、ゲート絶縁膜形成工程でプラズマ状態の酸化ガスを使用せず、ゲート絶縁膜23の形成後にゲート絶縁膜23がプラズマ状態の酸化ガスに曝されることも無い。これによっても、界面30にガリウム酸化物層が形成されることを抑制できる。したがって、実施例1の製造方法によれば、界面30にガリウム酸化物層が存在しない、または、界面30に存在するガリウム酸化物層の厚さが1nm以下であるスイッチングデバイス10を製造することができる。
【0048】
界面30におけるガリウム酸化物層の形成が抑制されると、界面30における界面準位密度を低減することができる。スイッチングデバイス10では、界面30に沿ってチャネルが形成されるので、界面30の界面準位密度を低減することで、チャネル移動度を向上させることができる。図8は、実施例1の製造方法により製造したスイッチングデバイス10のチャネル移動度を測定した結果を示している。図8に示すように、この場合、150cm/Vsを超える移動度が得られた。図9は、酸素プラズマを用いたALD法によってゲート絶縁膜23を形成した場合のスイッチングデバイス10のチャネル移動度を測定した結果を示している。図9に示すように、この場合、移動度は最大でも約56cm/Vsであった。このように、実施例1の製造方法によれば、界面30におけるガリウム酸化物層の形成を抑制でき、チャネル移動度の高いスイッチングデバイス10を製造することができる。
【0049】
また、図10は、ゲート絶縁膜の内部の炭素濃度を示している。図10のグラフDは、窒化ガリウム半導体基板12上に第1ゲート絶縁膜21を形成したサンプル(すなわち、低濃度の酸化ガスを有する第1反応ガスを使用して酸化シリコン膜を形成したサンプル)において炭素濃度を測定した結果を示している。図10のグラフEは、窒化ガリウム半導体基板12上に第2ゲート絶縁膜22を形成したサンプル(すなわち、高濃度の酸化ガスを有する第2反応ガスを使用して酸化シリコン膜を形成したサンプル)において炭素濃度を測定した結果を示している。図10に示すように、グラフE(すなわち、第2ゲート絶縁膜22)ではグラフD(すなわち、第1ゲート絶縁膜21)に比べて低い平均炭素濃度が得られた。特に、グラフEに示すように、第2ゲート絶縁膜22の大部分(厚みの半分以上の範囲)では、3×1019atoms/cm未満の極めて低い炭素濃度が得られた。このように、第2ゲート絶縁膜22で第1ゲート絶縁膜21よりも炭素濃度が低くなる理由は、以下の通りであると考えられる。ゲート絶縁膜(すなわち、酸化シリコン膜)を成長させるときには、有機溶剤に含まれる炭素が酸化シリコン膜中に取り込まれる。酸化ガスの濃度が高い第2反応ガスを使用して第2ゲート絶縁膜22を形成する場合には、酸化ガスの濃度が低い第1反応ガスを使用して第1ゲート絶縁膜21を形成する場合よりも、酸化シリコン膜の成長速度が速い。このため、第2ゲート絶縁膜形成工程では、第1ゲート絶縁膜形成工程よりも酸化シリコン膜中に炭素が取り込まれ難いと考えられる。また、窒化ガリウム半導体基板12の上面に付着した炭素の大部分は、酸化ガスによって酸化されて除去される。酸化ガスの濃度が高い第2反応ガスを使用して第2ゲート絶縁膜を形成する場合には、酸化ガスの濃度が低い第1反応ガスを使用して第1ゲート絶縁膜を形成する場合よりも、炭素が酸化によって除去され易い。したがって、第2ゲート絶縁膜形成工程では、第1ゲート絶縁膜形成工程よりも酸化シリコン膜中に炭素が取り込まれ難いと考えられる。以上の理由によって、第2ゲート絶縁膜22中の炭素濃度が、第1ゲート絶縁膜21中の炭素濃度よりも低くなると考えられる。
【0050】
また、図11は、ゲート絶縁膜に生じるリーク電流を示している。図11のグラフDは図10のグラフDのサンプル(すなわち、第1ゲート絶縁膜21)での測定結果を示しており、図11のグラフEは図10のグラフEのサンプル(すなわち、第2ゲート絶縁膜22)での測定結果を示している。図11に示すように、いずれの電界強度においても、第2ゲート絶縁膜22(すなわち、グラフE)では、第1ゲート絶縁膜21(すなわち、グラフD)よりもゲートリークが生じ難い。このように、炭素濃度が低い第2ゲート絶縁膜22は、炭素濃度が高い第1ゲート絶縁膜21よりも高い絶縁性を有している。
【0051】
実施例1の製造方法によれば、第1ゲート絶縁膜21上に絶縁性が高い第2ゲート絶縁膜22を形成できるので、絶縁性が高いゲート絶縁膜23を形成することができる。したがって、ゲート絶縁膜23におけるゲートリークを抑制できる。
【0052】
以上に説明したように、実施例1の製造方法によれば、界面30におけるガリウム酸化物層の形成を抑制しながら、第2ゲート絶縁膜22を含む絶縁性が高いゲート絶縁膜23を形成することができる。したがって、実施例1の製造方法によれば、チャネル抵抗が低いとともに、ゲートリークが少ないスイッチングデバイス10を製造することができる。
【0053】
次に、実施例2~5の製造方法について説明する。なお、実施例2~5の製造方法では、ゲート絶縁膜形成工程のみが実施例1の製造方法とは異なる。したがって、以下では、実施例2~5のゲート絶縁膜形成工程について説明する。
【実施例2】
【0054】
実施例2のゲート絶縁膜形成工程では、スプレー塗布法によって第1ゲート絶縁膜21と第2ゲート絶縁膜22を形成する。すなわち、ここでは、窒化ガリウム半導体基板12を加熱しながら、図12に示すように、溶液84dを窒化ガリウム半導体基板12の上面12aにスプレー塗布する。同時に、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに、酸化ガス(ここでは、オゾン)を含む反応ガスを供給する。上面12aに付着した溶液84dから有機溶剤が揮発し、上面12aにシリコンを含む成膜原料が固着する。また、上面12aに成膜原料が固着するのと同時に、成膜原料が反応ガスによって酸化される。酸化された成膜原料は、酸化シリコンとなる。したがって、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに、酸化シリコンが成長する。第1ゲート絶縁膜形成工程では、溶液84dを上面12aにスプレー塗布しながら、酸化ガスの濃度が低い第1反応ガスを上面12aに供給する。したがって、炭素濃度が高い第1ゲート絶縁膜21が上面12a上に形成される。第2ゲート絶縁膜形成工程では、溶液84dを第1ゲート絶縁膜21の上面にスプレー塗布しながら、酸化ガスの濃度が高い第2反応ガスを上面12aに供給する。したがって、炭素濃度が低い第2ゲート絶縁膜22が第1ゲート絶縁膜21上に形成される。
【実施例3】
【0055】
実施例3のゲート絶縁膜形成工程では、インクジェット法によって第1ゲート絶縁膜21と第2ゲート絶縁膜22を形成する。すなわち、ここでは、窒化ガリウム半導体基板12を加熱しながら、図13に示すように、インクジェットヘッド300から窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに向かって溶液84dの液滴を吐出する。同時に、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに、酸化ガス(ここでは、オゾン)を含む反応ガス供給する。上面12aに付着した溶液84dから有機溶剤が揮発し、上面12aにシリコンを含む成膜原料が固着する。また、上面12aに成膜原料が固着するのと同時に、成膜原料が反応ガスによって酸化される。酸化された成膜原料は、酸化シリコンとなる。したがって、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに、酸化シリコンが成長する。第1ゲート絶縁膜形成工程では、溶液84dをインクジェット法によって上面12aに塗布しながら、酸化ガスの濃度が低い第1反応ガスを上面12aに供給する。したがって、炭素濃度が高い第1ゲート絶縁膜21が上面12a上に形成される。第2ゲート絶縁膜形成工程では、溶液84dをインクジェット法によって上面12aに塗布しながら、酸化ガスの濃度が高い第2反応ガスを上面12aに供給する。したがって、炭素濃度が低い第2ゲート絶縁膜22が第1ゲート絶縁膜21上に形成される。
【実施例4】
【0056】
実施例4のゲート絶縁膜形成工程では、バブリング法によって第1ゲート絶縁膜21と第2ゲート絶縁膜22を形成する。図14は、バブリング法に使用するバブリング成膜装置400を示している。バブリング成膜装置400は、図6のミストCVD装置80のミスト発生装置84をバブリングタンク310に置き換えたものである。バブリングタンク310内には、溶液84dが貯留されている。キャリアガス供給管90の下流端は、バブリングタンク310内で溶液84d内に浸漬されている。原料供給管94の上流端は、バブリングタンク310内で溶液84dの液面よりも上側に配置されている。バブリング成膜装置400によってゲート絶縁膜23を形成する場合には、窒化ガリウム半導体基板12を加熱しながら、キャリアガス供給源86からキャリアガス供給管90へキャリアガスを供給し、第1反応ガス供給源88aまたは第2反応ガス供給源88bから反応ガス供給管92へ酸化ガス(ここでは、オゾン)を含む反応ガス供給する。バブリングタンク310に供給されたキャリアガスは、溶液84d内を泡となって通過する。これによって、キャリアガス中に溶液84dの液滴が発生する。溶液84dの液滴は、キャリアガス及び反応ガスとともに炉82内の窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに供給される。上面12aに溶液84dの液滴が付着すると、溶液84dから有機溶剤が揮発し、上面12aにシリコンを含む成膜原料が固着する。また、上面12aに成膜原料が固着するのと同時に、成膜原料が反応ガスによって酸化される。酸化された成膜原料は、酸化シリコンとなる。したがって、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに、酸化シリコンにより構成されたゲート絶縁膜が成長する。第1ゲート絶縁膜形成工程では、バブリング成膜装置400で、第1反応ガス供給源88aから炉82に第1反応ガスを供給しながら第1ゲート絶縁膜21を成長させる。第1反応ガス中の酸化ガス濃度が低いので、炭素濃度が高い第1ゲート絶縁膜21が上面12a上に形成される。第2ゲート絶縁膜形成工程では、バブリング成膜装置400で、第2反応ガス供給源88bから炉82に第2反応ガスを供給しながら第2ゲート絶縁膜22を成長させる。第2反応ガス中の酸化ガス濃度が高いので、炭素濃度が低い第2ゲート絶縁膜22が第1ゲート絶縁膜21上に形成される。
【0057】
以上に説明したように、実施例2~4の製造方法は、いずれも、実施例1と同様に、成膜原料が溶解しているとともに有機溶剤を含む溶液84dを、加熱した窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに供給する技術である。実施例2~4のいずれの製造方法でも、非プラズマ状態の酸化ガスを用いて、ゲート絶縁膜23を形成する。また、実施例2~4のいずれの製造方法も、ゲート絶縁膜23を形成した後にゲート絶縁膜23をプラズマ状態の酸化ガスに曝す工程を有しない。したがって、実施例2~4のいずれの製造方法でも、ゲート絶縁膜23とボディ層16の界面30におけるガリウム酸化物層の形成を抑制できる。実施例2~4のいずれの製造方法でも、チャネル移動度が高いスイッチングデバイス10を製造することができる。また、実施例2~4のいずれの製造方法でも、炭素濃度が低い第2ゲート絶縁膜22を含むゲート絶縁膜23を形成することができる。したがって、ゲートリークが生じ難いスイッチングデバイス10を製造することができる。
【0058】
なお、実施例1~4では、第1ゲート絶縁膜形成工程と第2ゲート絶縁膜形成工程で共通の溶液84dを使用した。しかしながら、第1ゲート絶縁膜形成工程で使用する溶液(以下、第1溶液という)と第2ゲート絶縁膜形成工程で使用する溶液(以下、第2溶液という)が異なっていてもよい。例えば、第1溶液に溶解している成膜原料と第2溶液に溶解している成膜原料が異なっていてもよい。また、第1溶液に溶解している有機溶剤と第2溶液に溶解している有機溶剤が異なっていてもよい。
【実施例5】
【0059】
実施例5のゲート絶縁膜形成工程では、非プラズマ状態の反応ガスを用いたALD法によって第1ゲート絶縁膜21と第2ゲート絶縁膜22を形成する。図15は、実施例5のゲート絶縁膜形成工程を示している。図15に示すように、第1ゲート絶縁膜形成工程にでは、ステップS2とステップS4を交互に複数回繰り返す。ステップS2では、窒化ガリウム半導体基板12を加熱しながら、元素としてシリコンを含む有機原料ガスを窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに供給する。その結果、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに、シリコンを含む原料が堆積する。ステップS4では、窒化ガリウム半導体基板12を加熱しながら、酸化ガス(ここでは、オゾン)を低濃度に含む第1反応ガスを窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに供給する。その結果、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに堆積したシリコンを含む原料が酸化されて酸化シリコンとなる。ステップS2とステップS4を繰り返すことで、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに酸化シリコン膜が成長する。第1ゲート絶縁膜形成工程では、有機原料ガス中の炭素が酸化シリコン膜中に取り込まれる。第1反応ガス中の酸化ガスの濃度が低いので、第1ゲート絶縁膜形成工程では、炭素濃度が高い酸化シリコン膜(すなわち、第1ゲート絶縁膜21)が形成される。図15に示すように、第2ゲート絶縁膜形成工程では、ステップS6とステップS8を交互に複数回繰り返す。ステップS6では、窒化ガリウム半導体基板12を加熱しながら、元素としてシリコンを含む有機原料ガスを第1ゲート絶縁膜21の上面に供給する。その結果、第1ゲート絶縁膜21の上面に、シリコンを含む原料が堆積する。ステップS8では、窒化ガリウム半導体基板12を加熱しながら、酸化ガス(ここでは、オゾン)を高濃度に含む第2反応ガスを第1ゲート絶縁膜21の上面に供給する。その結果、第1ゲート絶縁膜21の上面に堆積したシリコンを含む原料が酸化されて酸化シリコンとなる。ステップS6とステップS8を繰り返すことで、第1ゲート絶縁膜21上に酸化シリコン膜が成長する。第2ゲート絶縁膜形成工程では、有機原料ガス中の炭素が酸化シリコン膜中に取り込まれる。第2反応ガス中の酸化ガスの濃度が高いので、第2ゲート絶縁膜形成工程では、炭素濃度が低い酸化シリコン膜(すなわち、第2ゲート絶縁膜22)が第1ゲート絶縁膜21上に形成される。したがって、ゲートリークが抑制される。
【0060】
また、実施例5の製造方法でも、非プラズマ状態の酸化ガスを用いてゲート絶縁膜23を形成する。また、実施例5の製造方法も、ゲート絶縁膜23を形成した後にゲート絶縁膜23をプラズマ状態の酸化ガスに曝す工程を有しない。したがって、実施例5の製造方法でも、ゲート絶縁膜23とボディ層16の界面30におけるガリウム酸化物層の形成を抑制できる。実施例5の製造方法でも、チャネル移動度が高いスイッチングデバイス10を製造することができる。但し、この手法は原理的に原子レベルでの成膜手法となる為、例えば、100nm成膜するには10時間以上要する。一般的なCVDによる成膜手法では、成膜時間がせいぜい数10分程度である事を考えると、プラズマ状態の酸化ガスを使わなくても、ALD法では、長時間成膜中に界面30にガリウム酸化膜が形成されてしまう為、実施例5は、特に、10nm以下の成膜時に有効である。
【0061】
なお、実施例5では、第1ゲート絶縁膜形成工程で使用する有機原料ガスと第2ゲート絶縁膜形成工程で使用する有機原料ガスが同種であってもよいし、これらが異なっていてもよい。
【0062】
(変形例1)
次に、図16に示す変形例のスイッチングデバイス500について説明する。スイッチングデバイス500は、縦型のMOSFETである。スイッチングデバイス500の各部のうち、スイッチングデバイス10と機能が共通する部分には、スイッチングデバイス10と同じ符号を付している。
【0063】
図16に示すように、スイッチングデバイス500の窒化ガリウム半導体基板12は、スイッチングデバイス10と同様に、高濃度n型層14a、バッファ層14b、ドリフト層14cを有している。ドリフト層14c上に、複数のボディ層16が設けられている。各ボディ層16は、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aを部分的に含む範囲に設けられている。複数のボディ層16は、互いに分離されている。2つのボディ層16の間にドリフト層14cが設けられており、ドリフト層14cによって2つのボディ層16が互いに分離されている。以下では、2つのボディ層16の間に位置するドリフト層14cを、JFET層14d(junction field effect transistor層)という。各ボディ層16は、p型の高濃度層16aと、高濃度層16aよりもp型不純物濃度が低いp型の低濃度層16bを有している。高濃度層16aは、ドリフト層14cに対して上側から接している。低濃度層16bは、高濃度層16aに対して上側から接している。各低濃度層16bに囲まれた範囲内に、ソース層18とコンタクト層510が設けられている。各ソース層18は、上面12aを部分的に含む範囲に設けられている。各ソース層18は、ボディ層16によってドリフト層14cから分離されている。各コンタクト層510は、高濃度層16aよりもp型不純物濃度が高いp型層である。各コンタクト層510は、上面12aを部分的に含む範囲に設けられている。
【0064】
窒化ガリウム半導体基板12の上部に、ゲート絶縁膜23、ゲート電極24、ソース電極26、及び、層間絶縁膜520が配置されている。ゲート絶縁膜23は、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aの一部を覆っている。ゲート絶縁膜23は、第1ゲート絶縁膜21と第2ゲート絶縁膜22を有している。第1ゲート絶縁膜21は、上面12aのうちのソース層18の表面、低濃度層16bの表面、及び、JFET層14dの表面に跨る範囲を覆っている。第2ゲート絶縁膜22は、第1ゲート絶縁膜21上に配置されている。第2ゲート絶縁膜22は、第1ゲート絶縁膜21の上面全域を覆っている。ゲート電極24は、第2ゲート絶縁膜22上に配置されている。ゲート電極24は、ゲート絶縁膜23を介して、ソース層18、ボディ層16、及び、JFET層14dに対向している。ゲート電極24の上部は、層間絶縁膜520により覆われている。ソース電極26は、層間絶縁膜520を覆っており、ソース層18とコンタクト層510にオーミック接触している。窒化ガリウム半導体基板12の下面には、ドレイン電極28が設けられている。ドレイン電極28は、高濃度n型層14aにオーミック接触している。
【0065】
ゲート電極24に閾値以上の電位を印加すると、ゲート絶縁膜23の直下の低濃度層16bにチャネルが形成される。チャネルによってソース層18とJFET層14dが接続される。この状態で、ドレイン電極28にソース電極26よりも高い電位を印加すると、ソース層18から、チャネル、ドリフト層14c、バッファ層14bを通って高濃度n型層14aへ電子が流れる。すなわち、スイッチングデバイス500がオンする。
【0066】
スイッチングデバイス500は、図2に示す窒化ガリウム半導体基板12(全体が高濃度n型層14aにより構成されている基板)から製造される。
【0067】
まず、図17に示すように、高濃度n型層14a上に、窒化ガリウムにより構成されたバッファ層14bをエピタキシャル成長させる。ここでは、バッファ層14bのn型不純物濃度が約2×1016cm-3となり、バッファ層14bの厚さが約0.3μmとなるようにバッファ層14bを形成する。次に、図17に示すように、バッファ層14b上に、窒化ガリウムにより構成されたドリフト層14cをエピタキシャル成長させる。ここでは、ドリフト層14cのn型不純物濃度が約2×1016cm-3となり、ドリフト層14cの厚さが約5.0μmとなるようにドリフト層14cを形成する。次に、図17に示すように、ドリフト層14c上に、窒化ガリウムにより構成された高濃度層16aをエピタキシャル成長させる。ここでは、高濃度層16aのp型不純物濃度が約5×1019cm-3となり、高濃度層16aの厚さが約0.5μmとなるように高濃度層16aを形成する。次に、図17に示すように、高濃度層16a上に、窒化ガリウムにより構成された低濃度層16bをエピタキシャル成長させる。ここでは、低濃度層16bのp型不純物濃度が約5×1017cm-3となり、低濃度層16bの厚さが約1.5μmとなるように低濃度層16bを形成する。その後、窒化ガリウム半導体基板12を窒素雰囲気化において約850℃にて約5分間アニールし、窒化ガリウム半導体基板12中の不純物を活性化させる。
【0068】
次に、図18に示すように、エッチングマスクを用いて窒化ガリウム半導体基板12の上面12aを選択的にドライエッチングすることによって、上面12aに凹部530を形成する。ここでは、凹部530の幅が約4μmとなり、凹部530の深さがドリフト層14cに達するように、凹部530を形成する。
【0069】
次に、図19に示すように、窒化ガリウム半導体基板12上にn型層540をエピタキシャル成長させる。ここでは、n型層540のn型不純物濃度が約2×1016cm-3となり、n型層540の厚さが約3.0μmとなるように、n型層540を形成する。このようにn型層540を形成すると、凹部530がn型層540によって埋まる。凹部530内のn型層540によって、JFET層14dが形成される。
【0070】
次に、図20に示すように、CMP(chemical mechanical polishing)によって窒化ガリウム半導体基板12の上面12aを平坦化する。ここでは、上面12aに低濃度層16bが露出するように上面12aを平坦化する。
【0071】
次に、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aから低濃度層16bに選択的にn型不純物(例えば、シリコン)を約3×1015cm-2のドーズ量でイオン注入する。その後、窒化ガリウム半導体基板12全体を窒素雰囲気下において約1000℃にて約5分間アニールし、注入したn型不純物を活性化させる。これによって、図21に示すように、低濃度層16bの表層部の一部に、ソース層18を形成する。
【0072】
次に、図22に示すように、窒化ガリウム半導体基板12の上面12a上に、ゲート絶縁膜23(すなわち、第1ゲート絶縁膜21と第2ゲート絶縁膜22)を形成する。ここでは、上面12a全体を覆うように第1ゲート絶縁膜21と第2ゲート絶縁膜22を形成する。第1ゲート絶縁膜21と第2ゲート絶縁膜22は、上述した実施例1~5のいずれかのゲート絶縁膜形成工程によって形成することができる。
【0073】
次に、図22に示すように、第2ゲート絶縁膜22上にゲート電極24を形成する。ここでは、第2ゲート絶縁膜22の上面全体を覆うようにゲート電極24を形成する。
【0074】
次に、図23に示すように、ゲート絶縁膜23とゲート電極24を部分的に除去することによって、ソース層18と低濃度層16bの一部を露出させる。次に、低濃度層16bにp型不純物をイオン注入し、その後、活性化アニールを行うことで、図23に示すように、コンタクト層510を形成する。その後、窒化ガリウム半導体基板12の上部に層間絶縁膜520とソース電極26を形成し、窒化ガリウム半導体基板12の下部にドレイン電極28を形成することで、図16に示すスイッチングデバイス500が完成する。
【0075】
以上に説明したように、変形例1のスイッチングデバイス500のゲート絶縁膜23は、上述した実施例1~5のいずれかのゲート絶縁膜形成工程によって形成される。したがって、高い絶縁性を有するゲート絶縁膜23が形成される。また、ゲート絶縁膜23と窒化ガリウム半導体基板12の間の界面30における酸化ガリウム層の形成が抑制される。すなわち、変形例1のスイッチングデバイス500では、界面30にガリウム酸化物層が存在しない、または、界面30に存在するガリウム酸化物層の厚さが1nm以下である。したがって、変形例1のスイッチングデバイス500では、界面30における界面準位密度が低い。このため、変形例1のスイッチングデバイス500のチャネル移動度は高い。
【0076】
(変形例2)
上述したスイッチングデバイス10、500は、MOSFETであった。しかしながら、他のスイッチングデバイスに本明細書に開示の技術を適用してもよい。例えば、HEMTに本明細書に開示の技術を適用してもよい。図24は、HEMTの一例として変形例2のスイッチングデバイス600を示している。図24では、窒化ガリウム半導体基板612が、キャリア走行層618とキャリア供給層620を有している。キャリア走行層618は、n型の窒化ガリウム(すなわち、n-GaN)により構成されている。キャリア供給層620は、キャリア走行層618上に設けられている。キャリア供給層620は、i型の窒化アルミニウムガリウム(すなわち、i-AlGaN)により構成されている。キャリア走行層618とキャリア供給層620の界面640はヘテロ接合面であり、界面640に沿って二次元電子ガスが生じている。キャリア供給層620の上面にリセス650が設けられており、リセス650内にゲート絶縁膜623とゲート電極624が設けられている。ゲート絶縁膜623は、キャリア供給層620に接する第1ゲート絶縁膜621と、第1ゲート絶縁膜621上に配置された第2ゲート絶縁膜622を有している。ゲート電極624は、ゲート絶縁膜623を介してキャリア供給層620に対向している。また、窒化ガリウム半導体基板612の上面には、ゲート電極624の両側にソース電極626とドレイン電極628が設けられている。
【0077】
ゲート電極624の直下の界面640では、ゲート電極624の電位によって二次元電子ガスが発生したり、消失したりする。ゲート電極624の直下の界面640に二次元電子ガスが生じていると、二次元電子ガスを通ってソース電極626からドレイン電極628へ電子が流れる。ゲート電極624の直下の界面640で二次元電子ガスが消失すると、ソース電極626からドレイン電極628へ向かう電子の流れが停止する。このように、ゲート電極624の電位によって、スイッチングデバイス600がオン-オフする。
【0078】
図24のスイッチングデバイス600(すなわち、HEMT)において、ゲート絶縁膜623(すなわち、第1ゲート絶縁膜621と第2ゲート絶縁膜622)は、上述した実施例1~5のいずれかのゲート絶縁膜形成工程によって形成することができる。したがって、高い絶縁性を有するゲート絶縁膜623が形成される。また、第1ゲート絶縁膜621とキャリア供給層620の界面630におけるガリウム酸化物層の形成を抑制できる。すなわち、変形例2のスイッチングデバイス600では、界面630にガリウム酸化物層が存在しない、または、界面630に存在するガリウム酸化物層の厚さが1nm以下である。したがって、界面630における界面準位密度が低い。界面630における界面準位密度は、その直下の2次元電子ガスの振る舞いに大きい影響を与える。したがって、界面630における界面準位密度を低減させることで、スイッチングデバイス600の特性を改善することができる。
【0079】
なお、上述した実施例1~5のゲート絶縁膜形成工程では、酸化ガスとしてオゾンを使用した。しかしながら、酸化ガスとしてシリコンを酸化可能な他のガス(例えば、酸素、水蒸気等)を使用してもよい。但し、オゾンは、酸素及び水蒸気よりも高い酸化力を有するため、ゲート絶縁膜形成工程における窒化ガリウム半導体基板の加熱温度が比較的低くても、好適にゲート絶縁膜を形成することができる。また、このように窒化ガリウム半導体基板の加熱温度を比較的低温とすることで、ゲート絶縁膜形成工程中に窒化ガリウム半導体基板からゲート絶縁膜にガリウムが拡散することを抑制できる。これによって、スイッチングデバイスの特性の劣化を防止できる。
【0080】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0081】
10:スイッチングデバイス、12:窒化ガリウム半導体基板、16:ボディ層、18:ソース層、20:ドレイン層、21:第1ゲート絶縁膜、22:第2ゲート絶縁膜、24:ゲート電極
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