(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】バレルメッキ装置用リード線のリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
C25D 21/00 20060101AFI20241107BHJP
C25D 17/20 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
C25D21/00 F
C25D17/20 K
(21)【出願番号】P 2024070124
(22)【出願日】2024-04-23
【審査請求日】2024-04-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524157660
【氏名又は名称】株式会社ホクトウ
(74)【代理人】
【識別番号】100137899
【氏名又は名称】大矢 広文
(72)【発明者】
【氏名】金田 英男
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-050618(JP,U)
【文献】特開2015-183319(JP,A)
【文献】特開平05-093950(JP,A)
【文献】特開2002-351109(JP,A)
【文献】特公昭49-042174(JP,B1)
【文献】中国実用新案第211248091(CN,U)
【文献】中国実用新案第202239373(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 21/00
C25D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレルメッキ装置のメッキ槽内に貯留するメッキ液中の陽極から陰極に通電して被処理物に電気メッキ処理を施すバレルメッキ装置用リード線のリサイクル方法であって、
前記バレルメッキ装置用リード線のリード線本体に螺設されている古い電極玉を取り外す工程と、
前記リード線本体の先端側に被覆されている古い被覆体を取り外す工程と、
前記リード線本体の先端側に新しい被覆体を被覆する工程と、
前記リード線本体に新しい電極玉を螺設して新しいリード線とする工程と、
前記新しいリード線を加熱及び/又は冷却することによりクセ付けする工程と、を備えたバレルメッキ装置用リード線のリサイクル方法。
【請求項2】
前記リード線本体の先端側に新しい被覆体を被覆する工程に換えて、前記リード線本体の先端側をコーティング材で被覆する工程と、を備えた請求項1に記載のバレルメッキ装置用リード線のリサイクル方法。
【請求項3】
前記新しいリード線にリサイクル回数に応じたマーキング加工を施す工程をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載のバレルメッキ装置用リード線のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バレルメッキ装置で電気メッキ処理を施す際に使用する、バレルメッキ装置用リード線のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケルメッキ、スズメッキ、亜鉛メッキ、合金メッキ等(以下単に「メッキ」という)は耐食性が高く、色調も良好であるため、防食、装飾等の様々な用途に用いられている。製品にメッキを施す方法としては種々の方法があるが、特に多数の小物品、小部品等に対してメッキ処理を施す場合には、バレルメッキ装置を用いたバレルメッキ方法を使用することが好適で広く用いられている。
【0003】
バレルメッキ装置では、処理液が充填される処理液槽(メッキ槽)と、処理液槽内に回転可能に配置されるバレル容器と、処理液槽内に投入された陽極からリード線の陰極に通電し、メッキ用バレルを中心軸周りに回転させながら被処理物に電気メッキを行うものである。
【0004】
リード線を用いてメッキを行うと、電極(陰極)上にメッキ金属が析出するが、バレルメッキ方法においてそのままの状態で電気メッキ作業を継続すると通電力の低下により被処理物と電極との接触が悪くなり、また、析出した金属に被処理物が接触して被処理物に傷等が付着して製品価値が低下する場合がある。したがって、電極上に一定量の金属の析出が認められた場合はリード線を交換する必要があるが、リード線の有効活用等を図るため、電極部分のみ取り換えることが広く行われている。
【0005】
リード線の電極上にメッキ金属が付着した場合、新しい電極に交換してリード線自体(リード線本体)は再度使用することを内容とする発明、考案として様々な種類のものが知られているが、例えば、特許文献1に記載の「電気メッキバレル用陰極部」がある。特許文献1に係る考案は、絶縁被覆したリード線と、このリード線の先端に取付けられたステンレス製のボルトと、このボルトの先端側に着脱自在に螺合させた亜鉛または亜鉛合金製のキャップと、このキャップとリード線との間にボルトの中間部に取付けられた耐酸耐アルカリ性のパッキングおよび硬質樹脂スリーブとから成ることを特徴とする電気メッキバレル用陰極部である。
【0006】
特許文献1には、「陰極部11の表面にメッキ金属16が付着して、次第に成長してくる。メッキ金属16がある程度塊状になったときに、・・・メッキ金属16の付着したキャップ23をねじってステンレスボルト17から取外して第6図のように分離する。この後新たなキャップ23をボルト17に螺合させて交換作業を完了する。」旨、記載されている(第7頁)。
【0007】
また、特許文献2に記載の「バレルめっき用接点端子」がある。特許文献2に係る考案は、バレル本体内に配設され、製品と接触するカソード接点端子において、リード線とハンダ付けされる基部と、これに接続され取り外し自由の先頭部とから構成し、先頭部のみを取り外して外周に成長しためっき被膜を、リード線をバレル本体から取り外すことなく除去自在に設けたことを特徴とするバレルめっき用接点端子である。
【0008】
特許文献2には、「接点にめっき被膜がつくがこれが一定の厚さに成長したとき接点の先頭部を逆転して外し、新しい先頭部と簡単に交換することができるのである。」旨記載されている(第4頁)。
【0009】
【文献】実開昭59-193865
【文献】実開昭63-98379
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、文献1や文献2に係る考案のように、電極部を安易に交換すると通電力が低下することによりめっき効果が低下する等のおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明は、バレルメッキ装置用リード線のリサイクル方法を提供するものである。
【0012】
請求項1の発明は、バレルメッキ装置のメッキ槽内に貯留するメッキ液中の陽極から陰極に通電して被処理物に電気メッキ処理を施すバレルメッキ装置用リード線のリサイクル方法であって、バレルメッキ装置用リード線のリード線本体に螺設されている古い電極玉を取り外す工程と、リード線本体の先端側に被覆されている古い被覆体を取り外す工程と、リード線本体の先端側に新しい被覆体を被覆する工程と、リード線本体に新しい電極玉を螺設して新しいリード線とする工程と、新しいリード線を加熱及び/又は冷却することによりクセ付けする工程と、を備えたバレルメッキ装置用リード線のリサイクル方法
である。
【0013】
請求項2の発明は、リード線本体の先端側に新しい被覆体を被覆する工程に換えて、リード線本体の先端側をコーティング材で被覆する工程と、を備えた請求項1に記載のバレルメッキ装置用リード線のリサイクル方法である。
【0014】
請求項3の発明は、新しいリード線にリサイクル回数に応じたマーキング加工を施す工程をさらに含む、請求項1又は請求項2に記載のバレルメッキ装置用リード線のリサイクル方法である。
【発明の効果】
【0017】
本願請求項1、請求項2に記載の発明によれば、リード線本体はそのまま使用し、古い電極玉等を新しい電極玉等に取り換えることにより、性能維持さらには性能向上する新しいリード線としてリサイクルすることができる。
【0018】
本願請求項3に記載の発明によれば、交換作業を行った回数を外部から容易に視認することができるため、リード線本体の交換時期を想定することができる。
【0019】
本願請求項4、請求項5に記載の発明によれば、バレルメッキ装置等の形状に合わせることができ、効率的なメッキ作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図6】緩衝材が介在するリード線の自由端側の写真である。
【
図7】リード線本体から電極玉、緩衝材を取り外した分解写真その1である。
【
図8】リード線本体から電極玉、緩衝材を取り外した分解写真その2である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
バレルメッキ装置(不図示)を用いたバレルメッキ方法は、バレルと呼ばれる容器内に多数の被メッキ物(ねじ、ナット等の小物品)を収容し、このバレル容器をメッキ槽内のメッキ液に浸漬し、バレル容器を回転させてバレル容器内の被メッキ物を移動させながら、メッキ槽内に投入された陽極板(陽極)からリード線1(陰極)に直流電流を流すことにより、被メッキ物の表面上にメッキ被膜を形成するものである。
【0022】
本発明は、バレルメッキ装置において電気メッキ処理を施す際、メッキ液中に投入される陰極となるリード線1、すなわち、バレルメッキ装置用リード線(以下単に「リード線」とする)1のリサイクル方法である。メッキ処理によりリード線1の電極玉20上にメッキ金属が析出した場合等であっても、本発明の各工程を経ることによって新しいリード線1としてリサイクルされ再利用することができるものである。
【0023】
リード線1は周知のバレルメッキ装置に固設されている。以下簡単にバレルメッキ装置及びメッキ処理の一例について説明する。
【0024】
上下動可能なアームによってメッキ槽内において回転自在に軸支され、被メッキ物を収容するバレル容器は、六角形等の多角形の容器体で、被メッキ物をメッキ液に浸漬するための多数の孔を穿設する。バレル容器の左右両側面には、駆動部(モーター)の回転軸に連結する第一歯車と歯合する第二歯車が固設されている。
【0025】
バレル容器内に一本、又は、複数のリード線1(陰極)が投入され、リード線1の電極玉20が被メッキ物に接触した状態とする。メッキ槽内の陽極板(陽極)からバレル容器内の陰極へ通電された状態で、駆動部の稼働により、第一歯車及び第一歯車に歯合する第二歯車が回転することによってバレル容器が回転する。これにより、電源のプラス端子と連接する陽極板(陽極)から電源のマイナス端子と連接するリード線1(陰極)に通電し、陰極と接触する被メッキ物に電気メッキ処理が行われる。なお、複数本のリード線1の配置としては、例えば、バレル容器の左右方向両端の貫通穴から二本一対のリード線1が挿入される配置、上方からバレル容器内へ二本以上のリード線1が垂下される配置等が挙げられる。ここで、バレル容器の左右から二本一対のリード線1を挿入する例の場合、左右のリード線1の電極玉20のネジ溝の正逆を変えるのが望ましい。具体的には、一方のリード線1の電極玉20のネジ穴22を正回転のネジ溝とし、他方のリード線1の電極玉20のネジ穴22を逆回転のネジ溝とするのが望ましい。このように互いに逆回転のネジ溝からなる電極玉20にすることによれば、バレル容器が回転することによって両電極玉20、20がバレル容器の内面と摩擦接触、回転接触等することにより両電極玉20、20を緊締することができる。
【0026】
次にバレルメッキ装置で使用されリサイクルされるリード線1について説明する。なお、実施形態において、古い構成物品、それに対応する新しい構成物品には同じ符号を付している。
【0027】
リード線1は、リード線本体2、電極玉20に大別することができる。リード線本体2は、電気を通す導線3、導線3の一端(自由端)に連接する接続基部6、導線3の他端(基端)に連接する端子13を主な構成物品とする。リード線1(リード線本体2及び電極玉20)の長さは問わない。
【0028】
導線3の材質としては、軟銅撚り線、可撓銅撚り線等が挙げられるが、特に限定されない。この導線3は絶縁体5で被覆している。
【0029】
絶縁体5の材質としては、軟性ビニール等が挙げられ、絶縁素材であればどのようなものであってもよい。
【0030】
リード線本体2の先端には接続基部6を備えている。接続基部6は、導線3と電極玉20を接続する部材であり、導線3の一端に接続基部6を連接する。具体的には、接続基部6の本体部7の後端には接続穴(不図示)が開口され、この接続穴に挿入された導線3の自由端側を挟圧保持している。絶縁体5の自由端から芯出しされた導線3の芯出し部分に接続基部6を連接する。なお、挟圧部分は、一箇所であっても二箇所以上であってもよい。内部構造については図示しないが、例えば、絶縁体5から導線3が芯出しされた状態で、絶縁体5ごと導線3を圧着する部分である絶縁体圧着部分15と、導線3(芯出し部分)を圧着する部分である導線圧着部分17との二箇所でリード線1の自由端側を挟圧保持する構成が挙げられる。このような例の場合、接続基部6の接続穴は異径の二段構成とし、一段目(大径)が絶縁体圧着部分15となり、二段目(小径)が導線圧着部分17となる。そして、本体部7の前端からはボルト部8が立設しており、このボルト部8には電極玉20のネジ溝と螺合するネジ溝が螺刻されている。
【0031】
リード線本体2の自由端の接続基部6には、電極玉20が螺着されている。電極玉20は円柱状の部材で、基端から穴が穿設されており、この穴の内周面にネジ溝が螺刻されている。すなわち、中央軸方向にネジ穴22が設けられている。先端側の形状は、砲弾形状(球面形状)、平面形状等どのような形状であってもよく、特に限定されない。また、電極玉20の先端側にカラーを圧入嵌着したり、また、鍔カラーを溶着してもよい(不図示)。電極玉20は、黄銅(真鍮)の他、銅、鉄、ステンレス鋼等、通電性を有するものであれば材質は問わない。チタンであってもよい。電極玉20の径、長さ等は任意に選択することができる。
【0032】
導線3は絶縁体5によって被覆されているが、リード線本体2の自由端側をさらに被覆体10で被覆する。具体的には、接続基部6の本体部7の際(先端面7a)にかけて被覆されている。被覆体10の材質はどのような材質であってもよい。例えば、伸縮性がありリード線1を被覆する絶縁体5に対し密着性があるもの、熱収縮によってリード線1を被覆する絶縁体5に対し密着性があるもの、メッキに使用する薬液に対して耐性(耐薬品性)のある等の材質のものが挙げられる。
【0033】
リード線本体2の基端には、端子穴13aが穿設された端子13を連接する(
図9等参照)。端子13と導線3の連接方法は半田付け、スポット溶接(抵抗溶接)等の他、どのような方法であってもよい。リード線本体2の基端側と端子13との間は被覆体10で被覆し、さらにシール構造を施すのが望ましい。
【0034】
電極玉20を接続基部6に螺設するが、電極玉20と接続基部6の間には、緩衝材30を介在させてもよい(
図5等参照)。具体的には、導線3と電極玉20を接続する接続基部6のボルト部8に緩衝材30を外嵌し、最終的には電極玉20で圧着する。緩衝材30は、電極玉20と接続基部6との間を緩衝密閉できるものであればどのようなものでもよく、例えば、Oリング(樹脂製等)、パッキン(ゴム製等)等が挙げられる。
【0035】
接続基部6のボルト部8に通電グリスを塗布することもできる。この通電グリスは、通電効果を有するものであればどのようなものでもよいが、例えば、グリス等の油脂に銅等の電気抵抗の低い金属粉を混合したもので、添加剤として酸化防止剤、腐食防止剤等をも含有するものが挙げられる。なお、グリス組成物のちょう度、滴点、離油度等は適宜選択することができる。
【0036】
通電グリスをボルト部8に塗布することにより、電極玉20を接続基部6に螺設した際、ボルト部8のネジ溝と電極玉20のネジ溝と間に薄膜を形成し、接続基部6と電極玉20との接点部分の電気抵抗を低減できるため、スムーズで安定した通電が可能となる。また、接続基部6と電極玉20との接点部分の酸化、腐食が防止される。
【0037】
本発明は、上記説明したバレルメッキ装置を用いて、メッキ槽内に貯留するメッキ液中の陽極から陰極に通電して被処理物に電気メッキ処理を施すリード線1のリサイクル方法である。以下、本発明のリサイクル方法の各工程について説明する。電気メッキ処理は、ニッケルメッキ、スズメッキ、亜鉛メッキ、合金メッキ等様々な種類のメッキを用いることができるが、以下の実施形態においては、ニッケルメッキによる電気メッキ処理により電極玉等にメッキ金属の塊が付着した場合におけるリード線1のリサイクル方法について説明する。
【0038】
まず本発明の前工程として、陰極の電極玉20にメッキ金属の塊が付着したリード線1をバレルメッキ装置から取り外し回収する。ある程度の時間メッキ作業を行うと、リード線1の電極玉20へのメッキ金属の塊の付着等により古い電極玉20を交換する必要があるが、そのためには性能維持又は性能向上させるリード線1のリサイクル作業を行いやすくするため、バレルメッキ装置から電極玉20にメッキ金属の塊が付着したリード線1を取り外す。例えば、リード線1の基端の端子13の端子穴13aにボルト、ナット等の締結具を介してバレルメッキ装置に固設されている場合は、締結具を緩めることによってバレルメッキ装置からリード線1を取り外すことができる。なお、取外しは、手作業又は器具を利用する。以降、本発明の各工程に入る。
【0039】
第1の工程は、リード線1のリード線本体2に螺設されている古い電極玉20を取り外す工程である(ST1)。古い電極玉20は接続基部6に螺設されているため、締結方向と反対方向にねじ回しすることによってリード線1の接続基部6からメッキ金属の塊が付着した古い電極玉20を取り外す。
【0040】
第2の工程は、リード線本体2の先端側に被覆されている古い被覆体10を取り外す工程である(ST2)。リード線本体2の先端側に被覆されている古い被覆体10にはメッキ作業中に擦り傷等が付着する場合があり、また、古い電極玉20のみならず、古い被覆体10にもメッキ金属の塊が付着することがあるため、古い被覆体10を取り外す。
【0041】
第3の工程は、リード線本体2の先端側に新しい被覆体10を被覆する工程である(ST3)。具体的には、リード線本体2の絶縁体5に被覆体10を被覆密着させる。被覆体10が熱収縮チューブの場合は、任意の熱を与えることによって、熱収縮チューブが熱収縮し、この熱収縮した熱収縮チューブがリード線1(絶縁体5)の先端側を被覆することとなる。接続基部6の本体部7の先端面7aまで被覆するのが望ましい(
図8等参照)。本体部7の先端面7aまで被覆することにより、電極玉20と接続基部6との気密性がより高められることとなる。
【0042】
第4の工程は、リード線本体2に新しい電極玉20を螺設して新しいリード線1とする工程である(ST4)。新しい電極玉20を接続基部6に螺設し、締め付ける。すなわち、新しい電極玉20を螺設緊締することによって新しいリード線1が完成する。電極玉20を螺設する際、電極玉20を強固に締め付けることによって、メッキ液の浸入を防止することができる。電極玉20の締め付けは、手作業であっても器具を利用してもよい。
【0043】
以上の工程を経ることによってリード線1をリサイクルすることができるが、工程の一部を他の工程に換えてもよい。例えば、リード線本体2の先端側に新しい被覆体10を被覆する工程(ST3)に換えて、リード線本体2の絶縁体5をコーティング材で被覆する工程としてもよい。コーティング材の材質は問わず、絶縁体5の全てを被覆してもよいし、先端側の一部を被覆してもよい。なお、接続基部6の本体部7の先端面7aをもコーティング材で被覆すると、電極玉20と接続基部6の間に緩衝材30を介在させなくてもよい場合がある。
【0044】
以上説明した工程の他、下記の工程を追加してもよい。なお、各工程を複数入れ込む場合は前後逆であってもよく、また、どの工程の間に入れ込んでもよい。
【0045】
例えば、バレルメッキ装置に新しいリード線1を固設する工程の前に、リード線1にリサイクル回数に応じたマーキング加工を施す工程をさらに含んでもよい。リード線本体2の交換時期を想定することができるが、マーキング加工はリード線1のどの箇所であってもよく、また、どのような加工であってもよい。例えば、端子13に印刷、刻印、マーキングペン等による書き込み、着色等が挙げられる。また、リード線本体2の後端側に被覆体10が被覆されている場合は、この被覆体10に切込みを入れることによるマーキング加工等でもよい。
【0046】
バレルメッキ装置に新しいリード線1を固設する工程の前に、新しいリード線1を加熱及び/又は冷却することによりクセ付けする工程をさらに含んでもよい。電極玉20が浮上させ難くするため、バレル容器の内部形状に合わせるため、電極玉20を被メッキ物に接触させるため等、新しいリード線1を形状合わせ(クセ付け)する工程等が挙げられる。リード線1の形状としては、U字状、L字状、クランク状等が挙げられる。なお、加熱温度、冷却温度は特に限定されず、また、クセ付けに関してもどのような方法で行ってもよい。
【0047】
リード線1の導線3に連接する接続基部6のボルト部8に古い緩衝材30が外嵌されている場合がある。このような場合、リード線1の導線3に連接する接続基部6のボルト部8に外嵌されている古い緩衝材30を取り外し、接続基部6のボルト部8に新しい緩衝材30を外嵌してもよい。ボルト部8の先端から挿入し、接続基部6のボルト部8に新しい緩衝材30を外嵌することによって、接続基部6と電極玉20との間に新しい緩衝材30が介在することとなる。
【0048】
接続基部6のボルト部8に通電グリスをなじませながら塗布する工程を追加してもよい。ボルト部8のネジ溝に通電グリスを満遍なくなじませながら塗布することにより、耐熱性、耐候性に優れ、酸化、腐食による導電性の低下を防止することができる。なお、新しい電極玉20を複数回ねじ回しすることによっても、接続基部6のボルト部8にグリスをなじませることができる。
【0049】
接続基部6のボルト部8に通電グリスをなじませながら塗布する工程の前に、回転ワイヤーブラシ等の装置を使用して、又は、金属ブラシ等を使用して手作業でボルト部8を研磨する工程を追加してもよい。この工程により、ボルト部8の錆、粉塵等を除去することができ、通電性能がさらに向上する。
【0050】
また、電極玉20の緩め防止、螺設をより強固にするために、接続基部6のボルト部8と電極玉20のネジ穴22との間に、ネジロック剤を塗布してもよい。
【0051】
新しいリード線1とした後、バレルメッキ装置にこの新しいリード線1を固設する工程の前に、新しいリード線1を抵抗測定する工程をさらに含んでもよい。
【0052】
そして、最終的には、各工程を経た新しいリード線1をバレルメッキ装置に固設することとなる。例えば、左右一対のリード線1をバレル容器内に配置する場合、電極玉20を正回転(右回し)させるとボルト部8に対して螺入するリード線1と、電極玉20を逆回転(左回し)させるとボルト部8に対して螺入するリード線1とを、バレルメッキ装置に固設する。
例えば、手前に向かって回転するバレル容器においてメッキ作業を行う場合は、正面視右側には正回転(時計回り)で螺入する電極玉20を螺設したリード線1を、正面視左側には逆回転(反時計回り)で螺入する電極玉20を螺設したリード線1を配置し固設することにより、バレル容器の回転(摩擦接触)により両電極玉20、20の緩みを防止して緊締状態を維持することができる。
【0053】
本発明のリサイクル方法の各工程を経て完成した新しいリード線1は、バレルメッキ装置から取り外す前のリード線1の製造事業者が一貫して行うのが望ましい。すなわち、本発明のバレルメッキ装置用リード線1のリード線本体2に螺設されている古い電極玉20を取り外す工程(ST1)、リード線本体2の先端側に被覆されている古い被覆体10を取り外す工程(ST2)、リード線本体2の先端側に新しい被覆体10を被覆する工程(ST3)、リード線本体2に新しい電極玉20を螺設して新しいリード線1とする工程(ST4)の全ての工程をリード線1の製造事業者(下請け業者も含む)が行うのが望ましい。
【0054】
発明の課題でも記載したが、電極部(電極玉20)を安易に交換すると、リード線1の通電力が低下することによりめっき効果が低下する等のおそれがある。したがって、リード線1の性能、機能、安全性、効果等について最も熟知しているリード線1の製造事業者が既述したリサイクルの各工程を行うことによって、新しいリード線1についても密閉性が高く、電気抵抗が低い等の高いパフォーマンスを発揮することができる。
【0055】
各工程の前後の工程、作業者の一例についても念のため説明する。メッキ金属の塊が付着したリード線1をバレルメッキ装置から取り外す工程をメッキ業者が行い、バレルメッキ装置から取り外したリード線1をディーラー(販売代理店等)が回収してリード線1の製造事業者に引き渡す。そして、リード線1の製造事業者が本発明の各工程を行った後、新しいリード線1をディーラーに引き渡し、ディーラーが新しいリード線1をメッキ業者に届け、メッキ業者がバレルメッキ装置に新しいリード線1を固設する。このような役割分担により業務効率の向上に資することができ、新しいリード線1に関し高いパフォーマンスを維持することができる。その他、メッキ業者がディーラーを介さず、メッキ金属の塊が付着したリード線1を直接リード線1の製造事業者に送付等し、このリード線1の製造事業者が新しいリード線1をメッキ業者に送付等してもよい。なお、各工程の前後の工程についてもリード線1の製造事業者が行ってもよい。
【0056】
以上、各実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、各実施例に記載の技術、又は、その他の公知や周知の技術を組み合わせるようにしてもよい。
【0057】
リード線1のリサイクル時期を判断するため、電極玉20に析出したメッキ金属の塊の析出量を測定する工程を追加してもよい。析出量の測定としては、例えば、メッキ作業後のメッキ金属の塊が付着した古い電極玉20の厚み(短手方向の幅)をノギス、ゲージ等で測定し、この古い電極玉20の厚みからメッキ金属の塊が付着していない電極玉20の厚み(短手方向の幅)を引いて、その差が一定の範囲を超過する場合には、リード線1のリサイクル時期であるとしてもよい。その他のリサイクル時期の判断としては、目視、単にバレルメッキ装置へのリード線1の設置時期等で判断してもよい。
【0058】
なお、メッキ液の種類によっては電極玉20の摩耗、電極玉20の溶解等が起ることがあるが、このような場合においても、本発明の各工程を経ることによって、新しい電極玉20等に取り換えて新しいリード線1とすることができる。すなわち、電極玉20等にメッキ金属の塊が付着した場合以外でも電極玉20等を交換して新しいリード線1としてもよい。
【0059】
新しいリード線1が固設されるバレルメッキ装置に関しては、水平な回転軸を有するバレルを備える水平型のバレルメッキ装置の他、傾斜した回転軸を有するバレルを備える傾斜型のバレルメッキ装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1:リード線
2:リード線本体
3:導線
5:絶縁体
6:接続基部
7:本体部
7a:先端面
8:ボルト部
10:被覆体
13:端子
13a:端子穴
15:絶縁体圧着部分
17:導線圧着部分
20:電極玉
22:ネジ穴
30:緩衝材
ST1:第1の工程
ST2:第2の工程
ST3:第3の工程
ST4:第4の工程
【要約】 (修正有)
【課題】バレルメッキ装置で電気メッキ処理を施す際に使用する、バレルメッキ装置用リード線の電極部を安易に交換すると通電力が低下することによりめっき効果が低下する等のおそれがあるため、リード線のリサイクル方法を提供するものである。
【解決手段】バレルメッキ装置のメッキ槽内に貯留するメッキ液中の陽極から陰極に通電して被処理物に電気メッキ処理を施すバレルメッキ装置用リード線のリサイクル方法であって、バレルメッキ装置用リード線のリード線本体に螺設されている古い電極玉を取り外す工程と、リード線本体の先端側に被覆されている古い被覆体を取り外す工程と、リード線本体の先端側に新しい被覆体を被覆する工程と、リード線本体に新しい電極玉を螺設して新しいリード線とする工程と、を備えたバレルメッキ装置用リード線のリサイクル方法を提供するものである。
【選択図】
図1