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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 35/04 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
H02K35/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020148679
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043419
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2022-10-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114710
【氏名又は名称】ヤマウチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 高良
【合議体】
【審判長】小宮 慎司
【審判官】大橋 達也
【審判官】中野 浩昌
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/73980号
【文献】特開平10-74426号公報
【文献】特開2019-213279号公報
【文献】特開2012-34475号公報
【文献】特開2011-217431号公報
【文献】特開2001-224088号公報
【文献】再表98-57761号公報
【文献】国際公開第98/57761号
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに固定して支持された外縁部と、上下方向に振動可能な内縁部とを有する弾性部材と、
中心穴を有し、前記弾性部材の内縁部に保持され、前記内縁部とともに上下方向に振動可能なボビンと、
前記ボビンに巻かれたコイルと、
前記ケースに固定され、前記ボビンの中心穴内に位置する磁石とを備え、
前記弾性部材は、平板状のゴムであり、
前記弾性部材の外縁部と内縁部との間には、リング状の隙間領域が設けられ、
前記隙間領域には、円周方向に沿って配置された複数の隙間と、隣接する前記隙間の間に、前記外縁部と前記内縁部とを連結する複数の連結部とが設けられており、
前記弾性部材の内縁部の中心には、貫通孔が設けられている、発電装置。
【請求項2】
前記ケースは、磁性材料で形成されている、請求項に記載の発電装置。
【請求項3】
前記ケースは、底壁と側壁とを有し、
前記底壁には、前記磁石を前記ボビンの中心穴内で支持するように上方に延びる第1支持部材が設けられている、請求項1または2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記ケースは、その上方を覆う覆い部をさらに含み、
前記覆い部には、前記磁石を支持するように下方に延びる第2支持部材が設けられている、請求項に記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、振動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電方式として、たとえば、電磁誘導を利用する方式、圧電素子を利用する方式、静電誘導を利用する方式などがある。電磁誘導を利用する方式は、振動によってコイルと磁石との相対的な位置を変化させて、コイルに生じる電磁誘導によって発電する方式である。このような技術として、たとえば特開2012-34475号公報(特許文献1)および特開2006-42425号公報(特許文献2)などが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、筒状部材の中央部に永久磁石が固定されており、永久磁石の周囲に沿ってボビンケースが弾性部材によって支持され、筒状部材を振り動かすことで、ボビンケースが上下に振動して発電する振動発電機が開示されている。特許文献2には、ケースの内壁に沿って永久磁石が固定されており、コイルがスプリングにより上下動可能に保持されている発電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-34475号公報
【文献】特開2006-42425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1,2の発電機は、発電するためにある程度の振動が必要であり、微弱振動では発電が容易ではなかった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、微弱振動で発電可能な発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る発電装置は、ケースと、ケースに固定して支持された外縁部と、上下方向に振動可能な内縁部とを有する弾性部材と、中心穴を有し、弾性部材の内縁部に保持され、内縁部とともに上下方向に振動可能なボビンと、ボビンに巻かれたコイルと、ケースに固定され、ボビンの中心穴内に位置する磁石とを備えている。
【0008】
好ましくは、弾性部材は、平板状のゴムである。
【0009】
好ましくは、弾性部材の外縁部と内縁部との間には、リング状の隙間領域が設けられ、隙間領域には、円周方向に沿って配置された複数の隙間と、隣接する隙間の間に、外縁部と内縁部とを連結する複数の連結部とが設けられている。
【0010】
好ましくは、ケースは、磁性材料で形成されている。
【0011】
好ましくは、ケースは、底壁と側壁とを有し、底壁には、磁石をボビンの中心穴内で支持するように上方に延びる第1支持部材が設けられている。
【0012】
好ましくは、ケースは、その上方を覆う覆い部をさらに含み、覆い部には、磁石を支持するように下方に延びる第2支持部材が設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、微弱振動で発電可能な発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態1に係る発電装置を概略的に示す端面図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る発電装置の分解斜視図である。
図3】弾性部材の平面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る発電装置の動作を示す断面図である。
図5】本発明の実施の形態2に係る発電装置を概略的に示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
<実施の形態1>
(構成について)
図1~3を参照して、実施の形態1に係る発電装置1について説明する。発電装置1は、微振動で発電することが可能な発電装置である。概略として、発電装置1は、ケース2と、弾性部材3と、ボビン4と、コイル5と、磁石6とを備える。なお、図1において、矢印Aで示す高さが上下方向であり、矢印Aに直行する方向が横方向である。
【0017】
ケース2は、たとえば上方が開放した中空の円柱形状であり、底壁20と側壁21とを有している。ケース2は、磁性材料で形成されている。磁性材料としては、硬磁性材料、軟磁性材料などが挙げられ、たとえば亜鉛メッキ鋼板、錫メッキ鋼板等を用いることができるが、これらに限定されない。
【0018】
底壁20の底面には、底壁20と同じ大きさであり、底壁20に重ねられるカバーゴム22が設けられている。後述するように、発電装置1は機械装置の上に載置されるが、カバーゴム22が設けられることで、機械装置の上で動くことを防止することができる。
【0019】
底壁20の上面には、平面視円形状のベース部70が設けられている。ベース部70の略中央部には、上方に延びる第1支持部材71が設けられている。第1支持部材71は、後述する磁石6を保持するものである。第1支持部材71は、側壁21の高さのおよそ3分の1程度の高さまで延びていることが好ましい。第1支持部材71は、たとえば棒状であり、後述するボビン4の中心穴43の内径よりも小さい。第1支持部材71は、非磁性材料で形成される。非磁性材料とは、強磁性体ではない物質で、常磁性体、反磁性体および反強磁性体を含む。非磁性体として、例えば、アルミニウムなどの金属、プラスチックなどの合成樹脂などが挙げられる。
【0020】
特に図2に示すように、ベース部70の外周側には、第1支持部材71と同様に上方に延びるピン部材72が一定間隔をあけて3本設けられている。ピン部材72は、後述する弾性部材3を保持するものである。ピン部材72は、たとえば棒状であるが、ケース2の側壁21に沿うように面状に設けられていてもよい。ピン部材72は、第1支持部材71と同様に、非磁性材料で形成される。
【0021】
弾性部材3は、その周囲がケース2に支持され、ケース2の上下方向に沿って弾性的に振動可能である。図2,3を特に参照して、弾性部材3は、典型的には平板状のゴムであることが好ましい。弾性部材3は、たとえばオゾン劣化等を考慮して、シリコンゴム等の合成ゴムであることが好ましい。弾性部材3は、ダイヤフラム(膜)のように薄い方が好ましく、その厚みは、たとえば、0.08mm以上であり、たとえば、0.5mm以下、好ましくは0.4mm以下である。また、弾性部材3の硬度は、デュロメータA硬度で40°以上70°以下であることが好ましい。弾性部材3は、ダイヤフラム(膜)であるため、発電装置1が振動を受けると、膜振動を繰り返す。
【0022】
図3に示すように、弾性部材3の外形は、たとえば平面視略円形状である。弾性部材3は、ケース2に固定して支持された外縁部30と、上下方向に振動可能な内縁部31とを有する。弾性部材3の外縁部30と内縁部31との間には、リング状の隙間領域33が設けられる。隙間領域33には、円周方向に沿って配置された複数の隙間34と、隣接する隙間34の間に、外縁部30と内縁部31とを連結する複数の連結部35とが設けられている。本実施の形態では、外縁部30と内縁部31との間には、たとえば12つの隙間34が設けられる。これにより、複数の連結部35は、放射線状に設けられる。
【0023】
弾性部材3に複数の隙間34および連結部35が設けられることで、後述するボビン4を内縁部31に取り付けた場合に、発電装置1が受けた振動が増幅されてボビン4に伝わる。さらに、連結部35は放射線状に設けられるため、発電装置1の振動が均等にボビン4に伝わるため、微振動でも上下に振動しやくなる。また、内縁部31の略中心には、貫通孔36が設けられている。この貫通孔36は、後述するボビン4の中心穴43と略同じか、それよりも大きいことが好ましい。
【0024】
図1,2に示すように、弾性部材3の外縁部30は、第1リング81と第2リング82とに挟まれている。さらに、第2リング82の下端は、3本のピン部材72の上端に接着固定されている。第1リング81と第2リング82は、略同一形状であり、いずれも非磁性体であり、典型的には合成樹脂で形成されている。さらに、内縁部31は、第3リング83と後述するボビン4の第1フランジ部41との間に挟まれている。これにより、ボビン4は、弾性部材3によりケース2の底壁20から浮いた(中吊り)状態で、ケース2の側壁21から離れて保持される。
【0025】
なお、図3に示すように、外縁部30には、周方向に沿って複数の第1穴部30aが設けられ、内縁部31には、周方向に沿って複数の第2穴部31aが設けられていてもよい。この場合、第1リング81および第2リング82にも穴部(図示せず)が設けられていて、外縁部30、第1リング81および第2リング82は、それらの穴部を貫通するネジ(図示せず)で固定されていてもよい。さらに、第3リング83および第1フランジ部41にも穴部(図示せず)が設けられていて、内縁部31、第3リング83および第1フランジ部41は、それらの穴部を貫通するネジで固定されていてもよい。
【0026】
ボビン4は、両端フランジ付の円筒形状である。具体的には、図1に示すように、ボビン4は、軸部40と、軸部40の上端の第1フランジ部41と、軸部40の下端の第2フランジ部42とを含む。ボビン4の軸部40には、上下に貫通する中心穴43が設けられている。第1フランジ部41、第2フランジ部42、および中心穴43は、平面視円形状である。ボビン4は、ケース2に固定されている弾性部材3の内縁部31に保持され、内縁部31とともに上下方向に振動可能である。具体的には、第1フランジ部41の上端は、弾性部材3の内縁部31の下端に接着固定されている。
【0027】
ボビン4の軸部40には、コイル5が巻かれている。具体的には、コイル5は、ボビン4の軸部40の外周に設けられている。コイル5は、たとえばソレノイドコイルである。
【0028】
磁石6は、ケース2に固定され、ボビン4の中心穴43内に位置している。具体的には、磁石6は、第1支持部材71の上端に支持されることで、ボビン4の中心穴43内で支持されている。磁石6は、典型的には永久磁石である。磁石6は、上下に移動する方向(軸方向)に着磁している。着磁(磁化)方法は特に限定されないが、たとえば、空芯コイルの中央にマグネット材料を固定し、パルス高電流を流して、軸方向に磁化する方法が挙げられる。また、永久磁石の材料は特に限定されないが、高い磁力を示す観点から、Nd‐Fe‐B焼結磁石を用いることが好ましい。また、本実施の形態の磁石6は、円柱形状であるが、磁石6の形状は限定されない。
【0029】
上述のように、本実施の形態の発電装置1は、ボビン4の中央穴43内に磁石6が配置されており、ボビン4は、弾性部材3によりケース2の底壁20から浮いた状態で支持されている。発電装置1に微振動が加わると、ボビン4は磁石6に対して小刻みに上下に振動(バウンド)を繰り返す。具体的には、ボビン4は、弾性部材3により上下方向の移動が許容されながらも、左右方向の移動は制限されるように保持されている。そのため、ボビン4が振動したとしても、磁石6に当たらない。
【0030】
(動作について)
続いて、主に図4(A)および図4(B)を参照して、本実施の形態の発電装置1の動作について説明する。
【0031】
図4(A)および図4(B)に示すように、発電装置1に微振動が加わると、弾性部材3の内縁部31に保持されているボビン4がその振動に伴って上下に振動する。これにより、コイル5には交流電流が発生する。
【0032】
本実施の形態の発電装置1は、弾性部材3の内縁部31にボビン4が保持され、ボビン4の中心穴43内に磁石6が配置されている。そのため、発電装置1に微振動が加わると弾性部材3は膜振動し、ケース2に固定されている磁石6に対して、ボビン4が上下に振動して発電することができる。さらに、弾性部材3は、平板状のゴムで形成され、ボビン4を保持する内縁部31は、連結部35を介して外縁部30に支持されている。そのため、発電装置1に微振動が加わると、その微振動は弾性部材3の連結部35により増幅されてボビン4に伝わり、ボビン4は大きく上下に振動するため、微細振動でも効率的に発電することができる。
【0033】
また、ケース2は磁性材料で形成されているため、閉回路となり、起電力をアップさせることができる。さらに、磁石6がケース2に固定されているため、ケース2に磁性材料を用いたとしても、磁石6とケース2との間隔を考慮する必要がない。
【0034】
なお、コイル5に発生した起電力は、コイル5の両端に接続された配線(図示せず)を介して整流部(図示せず)に伝達され、整流部によって、交流電流を整流して直流電源にする全波整流が行われてもよい。整流された電流は、電極(図示せず)を介して外部に出力される。外部に出力された電流は、外部装置の負荷に供給され、供給された電流によって駆動(稼働)する。
【0035】
このように、本実施の形態の発電装置1は、微振動で発電することができる。具体的な使用例としては、たとえば、ベアリングを用いた機械装置の上に本実施の形態の発電装置1を載置し、その機械装置の振動が大きくなると点灯するように設定したベアリングの寿命判定、および、ゴム練り用のニーダーの振動判定などが挙げられる。
【0036】
以下の実施の形態では、発電装置1の他の構成例について説明する。以下に実施の形態
1との相違点のみ詳細に説明する。
【0037】
<実施の形態2>
上記実施の形態1のケース2は、上方が開放していたが、実施の形態2のケース2Aは、覆い部23Aを含んでいてもよい。その他の構成は、実施の形態1と同様の構成であってもよい。
【0038】
図5を参照して、実施の形態2の発電装置1Aについて説明する。実施の形態2のケース2は、その上方を覆う覆い部23Aをさらに含んでいる。覆い部23Aは、蓋の役割を果たす。覆い部23Aには、磁石6を支持するように下方に延びる第2支持部材73Aが設けられている。
【0039】
覆い部23Aの内面には、平面視円形状のベース部72Aが設けられている。ベース部72Aの略中央部には、上方に延びる第2支持部材73Aが設けられている。第2支持部材73Aは、第1支持部材71とともに磁石6を保持するものである。具体的には、第2支持部材73Aは、磁石6の上端に向かって延びている。これにより、第1支持部材71および第2支持部材73Aは、磁石6の上下両端を挟んでいる。第2支持部材73Aは、上述した第1支持部材71と同様の構成である。
【0040】
このような構成により、本実施の形態2の発電装置1Aは、その内部にホコリやゴミが侵入することを防止することができる。さらに、磁石6を上下から挟むことができるため、磁石6を確実にケース2Aで保持することができる。
【0041】
なお、実施の形態1,2では、弾性部材3は、平板状のゴムであるとしたが、たとえば巻きばね、板バネなど他の弾性部材で構成されていてもよい。また、弾性部材3がゴムである場合であっても、上述した形状に限定されず、たとえばリング状の隙間領域33に小孔が無数に設けられる形状などであってもよい。
【0042】
また、実施の形態1,2では、弾性部材3の外縁部30は、ピン部材72に支持された第1,2リング81,82により支持されているとして説明したが、たとえばケース2の側壁21に直接固定されているなど、ケース2に固定されていればよく、固定箇所は限定されない。
【0043】
さらに、実施の形態1,2では、ボビン4は、弾性部材3の内縁部31の下端に取り付けられて吊り下げられていたが、ボビン4が弾性部材3により上下方向に振動可能に保持され、弾性部材3で浮かされている形状であれば、どのように弾性部材3により保持されていてもよい。
【0044】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1,1A 発電装置、2,2A ケース、3 弾性部材、4 ボビン、5 コイル、6 磁石、23A 覆い部、30 外縁部、31 中央部、32 リブ、33 隙間領域、34 隙間、35 連結部、43 中心穴、71 第1支持部材、73A 第2支持部材。
図1
図2
図3
図4
図5