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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】静電塗装用スプレーガン
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/025 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
B05B5/025 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020191671
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080542
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇祐
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特公昭43-025667(JP,B1)
【文献】特開昭48-084130(JP,A)
【文献】特表2001-505125(JP,A)
【文献】特開2019-058862(JP,A)
【文献】特開2008-049293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 5/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を噴霧するためのノズルと、
塗料の供給源から供給された塗料が導入される第1塗料供給経路と、
前記第1塗料供給経路の下流側の端部が接続され、前記ノズル側へ延びて前記第1塗料供給経路から供給された塗料を前記ノズル側へ供給する第2塗料供給経路と、を備え、
前記第2塗料供給経路の延伸方向において前記ノズル側とは反対側の端部に位置する端壁面部は、前記第2塗料供給経路の延伸方向において前記第1塗料供給経路と前記第2塗料供給経路との接続部と同位置又は前記接続部よりも前記ノズル側とは反対側に位置しており
前記第2塗料供給経路の内面のうち前記接続部に対向する領域であって前記第1塗料供給経路から前記第2塗料供給経路に入った塗料の一部が衝突する塗料衝突領域は、平面又は前記第2塗料供給経路の最大内径を直径とする円の曲率よりも小さい曲率の曲面で形成されている、
静電塗装用スプレーガン。
【請求項2】
前記端壁面部は、前記第2塗料供給経路の延伸方向に対して直角方向に延びる面を構成している、
請求項1に記載の静電塗装用スプレーガン。
【請求項3】
内部に前記第2塗料供給経路を形成する塗料供給経路部品を更に備え、
前記塗料供給経路部品は、
前記第2塗料供給経路の全長に亘って前記第2塗料供給経路の内面の少なくとも一部を形成する本体部材と、
前記本体部材に取り付けられ前記第2塗料供給経路の内面のうち少なくとも前記塗料衝突領域を形成し、前記本体部材とは異なる材質で構成された衝突部材と、
を有している、
請求項に記載の静電塗装用スプレーガン。
【請求項4】
前記本体部材は、前記第1塗料供給経路の下流側でかつ前記接続部を内部に有しており、
前記塗料供給経路部品は、内部に前記第1塗料供給経路を有し前記本体部材における前記第1塗料供給経路側に接続される導入部材を更に有している、
請求項に記載の静電塗装用スプレーガン。
【請求項5】
塗料を噴霧するためのノズルと、
塗料の供給源から供給された塗料が導入される第1塗料供給経路と、
前記第1塗料供給経路の下流側の端部が接続され、前記ノズル側へ延びて前記第1塗料供給経路から供給された塗料を前記ノズル側へ供給する第2塗料供給経路と、を備え、
前記第2塗料供給経路の延伸方向において前記ノズル側とは反対側の端部に位置する端壁面部は、前記第2塗料供給経路の延伸方向において前記第1塗料供給経路と前記第2塗料供給経路との接続部と同位置又は前記接続部よりも前記ノズル側とは反対側に位置しており、
前記第2塗料供給経路は、外部に連通した開口部を有し、
前記開口部に着脱可能に構成されて前記開口部に装着された場合に前記開口部を閉塞して前記端壁面部を構成する栓部材を更に備えている、
電塗装用スプレーガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静電塗装用スプレーガンに関する。
【背景技術】
【0002】
静電塗装用スプレーガンは、塗料タンク等の供給源から供給された塗料をノズルに供給するための塗料供給経路を備える。従来構成の静電塗装用スプレーガンにおいて、塗料供給経路の一部は、例えばL字状に湾曲した合成樹脂製の管材によって形成される。このため、塗料が塗料供給経路中の湾曲した部分を通過する際に生じる塗料の付着や部材の摩耗が問題とされていた。
【0003】
塗料供給経路内の塗料の付着や部材の摩耗に対する対処法としては、塗料が付着しにくい材質を選定することで塗料の付着を抑える又は部材の肉厚を局所的に厚くすることで部材の早期摩耗を抑える等が行われていた。しかしながら、それらの対処法では、問題とされている塗料の付着と部材の摩耗との両者に対する十分な対策とはなっていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-56411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗料供給経路内の塗料の付着及び部材の摩耗を抑制することができる静電塗装用スプレーガンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の静電塗装用スプレーガンは、塗料を噴霧するためのノズルと、塗料の供給源から供給された塗料が導入される第1塗料供給経路と、前記第1塗料供給経路の下流側の端部が接続され、前記ノズル側へ延びて前記第1塗料供給経路から供給された塗料を前記ノズル側へ供給する第2塗料供給経路と、を備え、前記第2塗料供給経路の延伸方向において前記ノズル側とは反対側の端部に位置する端壁面部は、前記第2塗料供給経路の延伸方向において前記第1塗料供給経路と前記第2塗料供給経路との接続部と同位置又は前記接続部よりも前記ノズル側とは反対側に位置している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態による静電塗装用スプレーガンを用いた塗装システムの電気的構成の一例を模式的に示す図
図2】一実施形態による静電塗装用スプレーガンの構成の一例を示す図
図3】一実施形態による静電塗装用スプレーガンの一例について、本体部材に対して栓部材が取り外された状態を示す断面図
図4】一実施形態による静電塗装用スプレーガンの一例について、塗料供給経路部品の外観を示す斜視図
図5】一実施形態による静電塗装用スプレーガンの一例について、図2の矢印X5部分を拡大して示す図
図6】一実施形態による静電塗装用スプレーガンの一例について、図5のX6-X6線に沿って示す断面図
図7】一実施形態による静電塗装用スプレーガンの一例について、図5のX7-X7線に沿って示す断面図
図8】一実施形態による静電塗装用スプレーガンの一例について、図5のX8-X8線に沿って示す断面図
図9】一実施形態による静電塗装用スプレーガンの他の例を示す図6相当図
図10】一実施形態による静電塗装用スプレーガンの他の例を示す図7相当図
図11】従来構成における静電塗装用スプレーガンの塗料供給経路の一例を示す図
図12】従来構成における静電塗装用スプレーガンの塗料供給経路の一例について、図11のX12-X12線に沿って示すもので、塗料供給経路の内周壁に沿って塗料が流れる状態を示す断面図
図13】従来構成における静電塗装用スプレーガンの塗料供給経路の一例について、図11のX13-X13線に沿って示すもので、塗料供給経路の内周壁に塗料が付着した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
まず、本実施形態の静電塗装用スプレーガン10を用いた塗装システムの全体構成について、図1を参照して説明する。静電塗装用スプレーガン10は、例えば粉体塗料や液体塗料等の塗料を静電塗装によって噴霧し、これにより被塗装物100に塗料を塗布することができる静電塗装用スプレーガンである。なお、以下の説明では、静電塗装用スプレーガン10を単にスプレーガン10と称する。
【0009】
スプレーガン10は、本体11、塗料バルブ12、エアバルブ13、塗料供給経路14、エア供給経路15、ノズル16、トリガー17、高電圧出力部18、及び高電圧発生器19を備えている。塗料バルブ12は、塗料供給経路14を介して、塗料ポンプ81及び塗料タンク82に接続されている。塗料の供給源である塗料タンク82内には、液体又は粉体の塗料が貯蔵されている。塗料タンク82内の塗料は、塗料ポンプ81によって、塗料供給経路14を通り塗料バルブ12へ供給される。
【0010】
エアバルブ13は、エア供給経路15を介してコンプレッサ83に接続されている。コンプレッサ83で生じた圧縮空気は、エア供給経路15を通りエアバルブへ供給される。また、塗料バルブ12及びエアバルブ13は、作業者によるトリガー17の引き操作によって開放される。
【0011】
ノズル16は、被塗装物100に対して塗料を所定のパターンに噴霧するためのものであり、本体11の先端部に設けられている。ノズル16の内部には、詳細は図示しないが、塗料供給口や、霧化エア孔及びパターン形成エア孔が設けられている。トリガー17が作業者によって引き操作されて塗料バルブ12及びエアバルブ13が開放されると、ノズル16には、塗料供給経路14及び塗料バルブ12を介して塗料が供給されるとともに、エア供給経路15及びエアバルブ13を介して圧縮空気が供給される。塗料が液体である場合、ノズル16に供給された液体塗料は、霧化エア孔から吐出される圧縮空気によって微粒子化されるとともに、パターン形成エア孔から突出される圧縮空気によって塗装に適した形状つまり塗装パターンに形成されて噴霧される。
【0012】
また、スプレーガン10は、静電コントローラ20に対してケーブルで接続されている。静電コントローラ20は、スプレーガン10に対して交流電圧を供給する。そして、高電圧発生器19は、静電コントローラ20から入力される交流電圧に比例した直流の高電圧を出力する。本実施形態において、高電圧発生器19は、外部から入力された入力電圧を5000~6000倍程度に昇圧して出力する。
【0013】
高電圧発生器19は、入力トランス191、昇圧回路192、及び出力抵抗193を有している。入力トランス191の入力側つまり1次側は、静電コントローラ20に接続されている。一方、入力トランス191の出力側つまり2次側は、例えば金属線によって昇圧回路192の入力側に接続されている。このようにして、入力トランス191は、静電コントローラ20と昇圧回路192との間を電気的に絶縁し、静電コントローラ20から供給される交流電圧Vacを昇圧回路192の入力側へ出力する。
【0014】
昇圧回路192は、例えばコッククロフト・ウォルトン型の昇圧整流回路で構成されている。昇圧回路192は、入力トランス191から入力された交流電圧Vacを昇圧及び整流して直流の高電圧に変換する。昇圧回路192の出力側は、例えば金属線によって出力抵抗193に接続されている。
【0015】
出力抵抗193は、例えば板状に構成された抵抗体であり、昇圧回路192と高電圧出力部18との間に設けられている。昇圧回路192から出力された直流の高電圧は、出力抵抗193を介して高電圧出力部18に供給され、高電圧出力部18から直流の出力電圧Vdcとして出力される。高電圧出力部18は、例えばピン形状の金属電極で構成され、ノズル16の近傍に設けられている。これにより、ノズル16から噴霧された塗料の微粒子には、高電圧出力部18から出力される直流の出力電圧Vdcが印加される。
【0016】
なお、昇圧回路192は、回路内の図示しないダイオードの向きを変えることにより、出力電圧の極性を接地電位に対して正又は負のいずれかに設定することができる。例えば昇圧回路192の出力電圧の極性は、接地電位に対して負になるように構成されている。この場合、ノズル16から噴霧された塗料の微粒子は負の極性に荷電される。なお、本明細書中において、出力電圧Vdcの値は、便宜上、正負の区別なく絶対値で表している。
【0017】
本実施形態の場合、静電コントローラ20は、例えば12V~20Vの交流電圧をスプレーガン10の入力トランス191の1次側に供給する。入力トランス191は、静電コントローラ20から供給された交流電圧を2次側において2kV~4kV程度の交流電圧に変換して、昇圧回路192へ出力する。昇圧回路192は、入力トランス191から供給された交流電圧を60kV~100kVの高電圧の直流電圧に昇圧して高電圧出力部18に供給する。そして、高電圧出力部18は、高電圧発生器19から供給された高電圧をノズル16の近傍に出力し、ノズル16から噴霧された塗料を高電圧に帯電させる。これにより、被塗装物100に対して静電塗装が行われる。
【0018】
次に、スプレーガン10の内部構成の詳細について、図2図8を参照して説明する。
本体11は、スプレーガン10の外殻を構成している。本体11は、例えば電気絶縁性を有するポリアセタール樹脂やフッ素樹脂などの合成樹脂によって構成されている。本体11は、全体として拳銃型つまりハンドガン型であり、バレル部111及びグリップ部112を有している。作業者は、グリップ部112を把持してスプレーガン10を操作することができる。
【0019】
ノズル16は、バレル部111の先端部に設けられている。そして。塗料供給経路14及びエア供給経路15は、グリップ部112の下端部分から本体11内に入り、バレル部111の先端部のノズル16付近まで通っている。
【0020】
なお、本実施形態では、図2における紙面の左側が塗料の噴霧側であってスプレーガン10の前側とし、前側とは反対側つまり塗料の噴霧側の反対側をスプレーガン10の後側とする。そして、図2におけるスプレーガンの前後方向に対する直角方向を、スプレーガン10の上下方向とする。
【0021】
スプレーガン10は、塗料供給経路部品30を備えている。塗料供給経路部品30は、本体11に内蔵されており、その内部に第1塗料供給経路141及び第2塗料供給経路142を有している。第1塗料供給経路141及び第2塗料供給経路142は、塗料供給経路14の一部を構成する。第1塗料供給経路141は、一方の端部つまり上流側の端部が塗料ポンプ81を介して塗料タンク82に接続されており、塗料タンク82から供給された塗料が導入される。一方、第1塗料供給経路141の他方の端部つまり下流側の端部は、接続部143を介して第2塗料供給経路142に接続している。つまり、第1塗料供給経路141は、塗料タンク82内の塗料を第2塗料供給経路142に供給する機能を有する。
【0022】
第2塗料供給経路142は、ノズル16からの塗料の吐出方向と同一方向に延びている。第2塗料供給経路142は、第1塗料供給経路141の下流側の端部が接続され、ノズル16側へ延びて第1塗料供給経路141から供給された塗料をノズル16側へ供給する。この場合、第1塗料供給経路141は、第2塗料供給経路142に対して傾斜状に接続されている。そのため、第1塗料供給経路141から供給された塗料は、第2塗料供給経路142の延伸方向へ向かって円滑に塗料の流れを変換することができる。
【0023】
また、塗料供給経路部品30は、図4に示すように、導入部材40、本体部材50、衝突部材60、及び栓部材70を有している。導入部材40、本体部材50、衝突部材60、及び栓部材70は、例えばいずれも電気絶縁性を有する合成樹脂で形成されている。導入部材40は、例えば円筒状又は矩形状に形成されている。導入部材40は、第1塗料供給経路141の一部を形成する部分である。また、導入部材40は、ノズル16からの塗料の吐出方向に対して傾斜して設けられている。
【0024】
本体部材50は、第2塗料供給経路142の全長に亘って第2塗料供給経路142の内面の少なくとも一部を形成する。また、本体部材50は、第1塗料供給経路141の下流側でかつ接続部143を内部に有する。更に、導入部材40は、本体部材50における第1塗料供給経路141側に接続される。
【0025】
また、本体部材50は、胴部51、継手部52、絞り部53、及び流出部54を有しており、全体として略T字状に構成されている。胴部51は、ノズル16からの塗料の吐出方向と同一方向に延びており、一方の端部が継手部52と接続され、他方の端部が開口部511を介して外部に連通している。すなわち、本体部材50は、胴部51のノズル16側とは反対側の端部に設けられた開口部511によって、外部に連通している。
【0026】
また、胴部51は、図6等に示すように、上面部512、側面部513、及び底面部514を有している。上面部512は、胴部51の上面を構成し、水平状に形成されている。側面部513は、胴部51の側面を構成し、平面状に形成されている。そして、一対の側面部513は、互いに平行に設けられている。この場合、一対の側面部513は、上面部512に対して直交して延びている。さらに、上面部512と側面部513との間の角部は、直角に形成されている。なお、上面部512と側面部513との間の角部は、直角に限らず、鋭角又は鈍角で形成されていても良い。底面部514は、胴部51の底面を構成し、円弧状に形成されている。そして、胴部51は、上面部512、一対の側面部513、及び底面部514によって全体として筒状に構成されている。
【0027】
継手部52は、図4及び図5に示すように、胴部51の底面部514から突出するように設けられている。継手部52は、一方の端部が胴部51の底面部514の一部に形成された開口部分に接続され、他方の端部が導入部材40の下流側の端部に接続されている。この場合、継手部52の内径は、導入部材40の外形と略同一の寸法で形成されている。そして、導入部材40と継手部52とが接続することによって、連続した塗料の流路が形成される。
【0028】
また、継手部52は、胴部51の長手方向に対してノズル16とは反対側へ向かって傾斜して設けられている。つまり、導入部材40は、継手部52を介して胴部51の長手方向に対してノズル16とは反対側へ向かって傾斜状に接続されている。なお、継手部52は、胴部51の長手方向に対して傾斜して設けられる構成に限らず、胴部51の長手方向に対して直交するように設けられる構成であっても良い。
【0029】
絞り部53は、図4に示すように、胴部51の前方側つまりノズル16側に配置され、上面がノズル16側へ向かって内径を縮小する方向に傾斜して延びている。すなわち、絞り部53は、塗料の供給方向へ向かって塗料の流路断面積が縮小されるように形成されている。
【0030】
流出部54は、絞り部53と連結して接続されており、本体部材50の前端側つまりノズル16側の端部に設けられている。流出部54は、図2等に示すように、本体部材50の先端側つまりノズル16側の端部に設けられており、本体11内にある接続経路144が内部に挿入されている。そのため、本体部材50は、接続経路144と塗料バルブ12を介してノズル16に接続されている。流出部54は、例えば円筒状で長手方向において内径が変化しない形状によって構成されている。また、絞り部53の後端側つまりノズル16とは反対側の端部の内径は、胴部51前端側つまりノズル16側の端部の内径と同一に形成されている。更に、絞り部53の前端側つまりノズル16側の端部の内径は、流出部54の内径と同一に形成されている。
【0031】
衝突部材60は、例えばインサート成型によって胴部51と一体的に形成されている。この場合、衝突部材60は、図5及び図7に示すように、導入部材40から継手部52を介して胴部51に入った塗料の一部が衝突する部分に配置されている。具体的には、衝突部材60は、図5に示すスプレーガン10の断面視において、少なくとも胴部51の底面部514に設けられた継手部52と重なる位置に配置されている。これにより、衝突部材60は、導入部材40から供給された塗料の一部を受けて、その塗料の流れを導入部材40からの供給方向とは異なる方向に変換する機能を有する。なお、衝突部材60は、胴部51とインサート成型によって一体に形成される構成に限らず、例えばねじ部材や接着剤等によって一体的に固定される構成であっても良い。
【0032】
衝突部材60は、胴部51つまり本体部材50とは異なる材質で形成されている。ここで、異なる材質とは、例えば摩擦係数や表面硬度等の耐付着性や耐摩耗性に関する機械的特性が異なることを意味する。この場合、衝突部材60は、例えばポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂などの合成樹脂によって形成されている。一般的に、部材に対する塗料の付着のしやすさ又は摩耗のしやすさは、塗装に使用する塗料の硬度等の物性によって異なる。そのため、使用する塗料に応じて衝突部材60の材質を選定することによって、衝突部材60の耐久性を高めることができる。
【0033】
また、衝突部材60は、図4及び図6に示すように、平面部61と、起立部62とを有している。平面部61は、全体として平板状に構成されている。起立部62は、平面部61の幅方向の外縁を立ち上げて構成されている。このようにして、衝突部材60は、全体として蓋形状に形成されている。そして、衝突部材60は、胴部51の上面部512及び側面部513の一部を構成している。
【0034】
この場合、平面部61の厚さは、胴部51の上面部512の厚さと同じ寸法で形成されている。また、起立部62の厚さは、胴部51の側面部513の厚さより小さい寸法で形成されている。したがって、平面部61は、胴部51の内周面に露出するが、起立部62は、胴部51の内周面に露出することがない。更に、平面部61と上面部512との厚さが同じ寸法であるため、胴部51における衝突部材60と衝突部材60以外の部分との内周面に段差が生じることがない。これにより、胴部51内部において塗料の流れが乱れることを抑制することができる。
【0035】
栓部材70は、図2及び図3に示すように、本体部材50の内部に着脱可能に設けられている。具体的には、栓部材70は、胴部51の開口部511に着脱可能に設けられている。そして、栓部材70は、開口部511に装着された場合に端壁面部711によって開口部511を閉塞する。この場合、栓部材70の端壁面部711は、第2塗料供給経路142の端壁面部として機能する。
【0036】
また、栓部材70は、筒状部71と、操作部72とを有している。筒状部71は、開口部511に装着された場合に胴部51の内部に収容されるように構成されている。この場合、筒状部71の外周形状は、胴部51の内周形状と同じ形状で形成され、かつ、幅寸法及び高さ寸法がやや小さい寸法で形成されている。
【0037】
また、栓部材70が胴部51つまり本体部材50の内部に装着された場合に、図5に示すスプレーガン10の断面視において、筒状部71の端壁面部711は、衝突部材60とは重ならない位置に配置される。更に、端壁面部711は、第2塗料供給経路142の延伸方向において第1塗料供給経路141と第2塗料供給経路142との接続部143と同位置又は接続部143よりもノズル16側とは反対側に位置している。
【0038】
具体的には、端壁面部711は、図5に示すように、第2塗料供給経路142の延伸方向において第1塗料供給経路141と第2塗料供給経路142との接続部143よりもノズル16側とは反対側に位置している。すなわち、端壁面部711は、少なくとも接続部143のノズル16側とは反対側の端部よりもノズル16側つまり前方には設けられていない。
【0039】
また、端壁面部711は、本体部材50の延伸方向に対して直角方向に延びている。つまり、端壁面部711は、第2塗料供給経路142の延伸方向に対して直角方向に延びる面を構成している。この場合、直角とは、厳密に90°である必要はない。つまり、開口部511を閉鎖する壁として機能出来る程度の角度であれば良く、例えば製造時に生じる寸法誤差などは許容される。なお、筒状部71の端壁面部711寄りの部分には、図示しない例えばゴム製の環状のシール部材が設けられている。このため、筒状部71の外周面と胴部51の内周面との間に生じる隙間から塗料が漏れることがない。
【0040】
操作部72は、筒状部71の後端側に接続されている。操作部72は、栓部材70を本体部材50内へ着脱する際の操作に用いられる。例えば、栓部材70を本体部材50内に装着する場合、ユーザは、操作部72を把持することによって栓部材70を本体部材50の開口部511内に挿入し、所定の位置まで押し込むことによって栓部材70が本体部材50内に装着することができる。一方、栓部材70を本体部材50内から脱着する場合、ユーザは操作部72を把持して栓部材70を水平方向に引き抜くことによって栓部材70を本体部材50内から脱着することができる。
【0041】
また、操作部72は、図4に示すように、例えば円形状に形成されており、その外周形状は、胴部51の外周形状よりも大きく構成されている。したがって、操作部72が胴部51内に入り込むことがない。そして、栓部材70を本体部材50の内部に装着する場合、操作部72を胴部51の後端部つまりノズル16側とは反対側の端部に接触させることによって、本体部材50内における栓部材70の前方方向つまりノズル16側への移動が規制される。すなわち、栓部材70の本体部材50内に対する前後方向の位置決めは、操作部72を胴部51の後端部に接触させることによって行うことができる。
【0042】
次に、本実施形態における塗料供給経路14の詳細について説明する。
本実施形態では、塗料供給経路14は、上述したように、第1塗料供給経路141及び第2塗料供給経路142を有して構成されている。この場合、第1塗料供給経路141は、導入部材40及び継手部52の内部に形成される。第2塗料供給経路142は、胴部51、絞り部53、及び流出部54の内部に形成される。更に、第2塗料供給経路142は、開口部511を介して外部に連通している。この場合、図5に示すように、胴部51の底面部514と継手部52との接続箇所は、第1塗料供給経路141と第2塗料供給経路142との接続部143に相当する。
【0043】
また、塗料供給経路42は、塗料衝突領域Cを有する。塗料衝突領域Cは、図6等に示すように、第2塗料供給経路142の内面のうち接続部143に対向する領域であって、第1塗料供給経路141から第2塗料供給経路142に入った塗料の一部が衝突する領域である。この場合、塗料衝突領域Cの全域にわたって衝突部材60が設けられている。つまり、衝突部材60は、第2塗料供給経路142の内面のうち少なくとも塗料衝突領域Cを形成している。
【0044】
本実施形態では、塗料衝突領域Cは、衝突部材60の平面部61によって平面で形成されている。このため、例えば塗料衝突領域Cが湾曲面で構成されている場合に比べて、第2塗料供給経路142の経路幅における表面積が小さい。よって、塗料衝突領域Cに衝突する塗料との接触面積を極力小さくすることができる。これにより、塗料衝突領域Cにおける塗料の付着や部材の摩耗を抑制することができる。
【0045】
このように、第1塗料供給経路141から接続部143を通過して第2塗料供給経路142に流入した塗料の一部は、塗料衝突領域Cに衝突して、第2塗料供給経路142の延伸方向に塗料の流れが変換される。その後、絞り部53を通過する際に、塗料の流れが整流化される。更に、絞り部53において塗料の流路断面積が絞られていることによって流速が高まるため、塗料は滞留することなく円滑に供給部85内部に供給される。そして、供給部85内部を通過した塗料は、接続経路144や塗料バルブ12を介してノズル16内へ供給される。
【0046】
更に、塗料衝突領域Cは、図9及び図10に示すように、第2塗料供給経路142の最大内径を直径とする円の曲率よりも小さい曲率の曲面で形成された構成とすることができる。この場合、図9及び図10の例では、第2塗料供給経路142の最大内径を直径とする円の仮想線を一点鎖線で示している。この構成において、塗料衝突領域Cは、第2塗料供給経路142の最大内径を直径とする円の第2塗料供給経路142の経路幅における表面積に比べて小さい表面積とすることができる。
【0047】
これにより、塗料衝突領域Cに衝突する塗料との接触面積を極力小さくすることができる。したがって、塗料衝突領域Cにおける塗料の付着や部材の摩耗を抑制することができる。また、塗料衝突領域Cを湾曲させることによって、塗料衝突領域Cが平面で構成されている場合に比べて、第2塗料供給経路142内における塗料衝突領域C付近の流路断面積を大きくすることができる。これにより、第1塗料供給経路141から供給される塗料をより円滑にノズル16側に供給することができる。
【0048】
以上説明した実施形態によれば、スプレーガン10は、ノズル16、第1塗料供給経路141、及び第2塗料供給経路142を備えている。ノズル16は、塗料を噴霧するためのものである。第1塗料供給経路141は、塗料の供給源から供給された塗料が導入される。第2塗料供給経路142は、第1塗料供給経路141の下流側の端部が接続され、ノズル16側へ延びて第1塗料供給経路141から供給された塗料をノズル16側へ供給する。
【0049】
ここで、従来構成におけるスプレーガンの塗料供給経路14aの一部は、図11に示すように、例えばL字状に湾曲した合成樹脂製の管材によって形成されていた。そのため、塗料が塗料供給経路14a中の湾曲した部分を通過する際に生じる塗料の付着や部材の摩耗が問題とされていた。本願発明者は、図12及び図13に示すように、当該湾曲した部分つまり塗料の進行方向が切り替わる箇所を通過する塗料の一部が壁面に沿って流れることに着目し、塗料供給経路の形状を工夫することによって、塗料の付着や部材の摩耗を抑制できることを見出した。なお、図11から図13では、塗料供給経路14a内に付着した塗料の一例を点線のハッチングで示している。
【0050】
そこで、本実施形態の場合、第2塗料供給経路142の延伸方向においてノズル16側とは反対側の端部に位置する端壁面部711は、第2塗料供給経路142の延伸方向において第1塗料供給経路141と第2塗料供給経路142との接続部143と同位置又は接続部143よりもノズル16側とは反対側に位置している。
【0051】
これによれば、端壁面部711は、第1塗料供給経路141と第2塗料供給経路142との接続部143つまり塗料の進行方向が切り替わる箇所に配置されていない。これにより、第1塗料供給経路141から供給された塗料が端壁面部711の壁面に沿って流れながら塗料の供給方向が切り替わることを抑制することができる。よって、端壁面部711における塗料の接触面積を減らすことができるため、塗料の付着や部材の摩耗の発生を抑えることができる。その結果、塗料供給経路の耐久性が向上し、塗装品質の向上や塗装作業の効率化を図ることができる。
【0052】
また、端壁面部711は、第2塗料供給経路142の延伸方向に対して直角方向に延びる面を構成している。これによれば、端壁面部711の表面積を最小にすることができるため、端壁面部711付近を通過する塗料が接触する領域を減らして塗料の付着を低減することができる。
【0053】
また、第2塗料供給経路142は、塗料衝突領域Cを有する。塗料衝突領域Cは、第2塗料供給経路142の内面のうち接続部143に対向する領域であって第1塗料供給経路141から第2塗料供給経路142に入った塗料の一部が衝突する。更に、塗料衝突領域Cは、平面又は第2塗料供給経路142の最大内径を直径とする円の曲率よりも小さい曲率の曲面で形成されている。
【0054】
これによれば、塗料衝突領域Cは、少なくとも第2塗料供給経路142の最大内径を直径とする円の第2塗料供給経路142の経路幅における表面積よりも小さい表面積とすることができる。これにより、塗料衝突領域Cに衝突する塗料との接触面積を極力小さくすることができる。したがって、塗料衝突領域Cにおける塗料の付着や部材の摩耗を抑制することができる。
【0055】
更に、スプレーガン10は、塗料供給経路部品30を更に備える。塗料供給経路部品30は、内部に第2塗料供給経路142を形成する。また、塗料供給経路部品30は、本体部材50と、衝突部材60と、を有する。本体部材50は、第2塗料供給経路142の全長に亘って第2塗料供給経路142の内面の少なくとも一部を形成する。衝突部材60は、本体部材50に取り付けられ第2塗料供給経路142の内面のうち少なくとも塗料衝突領域Cを形成し、本体部材とは異なる材質で構成されている。
【0056】
これによれば、例えば硬度が低い塗料は、付着しやすいが摩耗は発生しにくい。一方、硬度が高い塗料は、付着しにくいが摩耗は発生しやすい。このように、使用する塗料の特性によって、塗料供給経路14を構成する部品に要求される耐付着性や耐摩耗性等の性能が異なる。そこで、使用する塗料に応じて、衝突部材60の材質を適宜選択することによって、効率的に塗料の付着及び部材の摩耗の低減を図ることができる。また、衝突部材60のみを変更することで、塗料供給経路14の構造を容易に変更することができるため、用途に応じた柔軟な対応を図ることができる。
【0057】
また、本体部材50は、第1塗料供給経路141の下流側でかつ接続部143を内部に有している。更に、塗料供給経路部品30は、導入部材40をさらに有する。導入部材40は、内部に第1塗料供給経路141を有し本体部材50における第1塗料供給経路141側に接続される。
【0058】
ここで、第2塗料供給経路142は、塗料衝突領域Cを有するため、塗料の付着や部材の摩耗が第1塗料供給経路141に比べて多く発生する。そのため、第2塗料供給経路142を主体として形成する本体部材50は、第1塗料供給経路141を主体として形成する導入部材40に比べてメンテナンスや交換の頻度が多くなる。そこで、本実施形態において、塗料供給経路部品30は、導入部材40と本体部材50とが別部材で構成されている。これによれば、本体部材50を交換する場合、塗料供給経路部品30全体を交換する必要がない。また、使用する塗料に応じて導入部材40と本体部材50とを異なる材質で構成する等、より柔軟な対応を行うことができる。その結果、スプレーガン10の利便性を向上することができる。
【0059】
また、第2塗料供給経路142は、外部に連通した開口部511を有する。更に、スプレーガン10は、栓部材70を更に備える。栓部材70は、開口部511に着脱可能に構成されて開口部511に装着された場合に開口部511を閉塞して端壁面部711を構成する。
【0060】
従来構成において、塗料供給経路14内の清掃を行うためには、塗料供給経路14を構成する部材を本体11から取り外す必要があり、多くの労力と時間とを要していた。そこで、本実施形態において、第2塗料供給経路142は、外部に連通した開口部511を有する構成としている。そして、栓部材70は、開口部511に装着した場合に開口部511を閉塞して端壁面部711として機能する。
【0061】
そして、栓部材70は、第2塗料供給経路142内のメンテナンスを行う場合、開口部511を介して第2塗料供給経路142内から脱着することができる。これによれば、栓部材70の取り外し作業のみによって、第2塗料供給経路142内の清掃作業を行うことができる。その結果、スプレーガン10のメンテナンス性を向上することができる。
【0062】
以上説明した、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、上記し且つ図面に記載した各実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0063】
10…静電塗装用スプレーガン、16…ノズル、141…第1塗料供給経路、142…第2塗料供給経路、143…接続部、30…塗料供給経路部品、40…導入部材、50…本体部材、511…開口部、60…衝突部材、70…栓部材、711…端壁面部、C…塗料衝突領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13