(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】抗腫瘍アレナウイルスおよびアレナウイルス変異体を生産するための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20241107BHJP
C07K 14/08 20060101ALI20241107BHJP
C12N 15/40 20060101ALI20241107BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241107BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241107BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241107BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241107BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241107BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241107BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
C12N7/01
C07K14/08
C12N15/40 ZNA
C12N1/15
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
A61K35/76
A61K48/00
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021514594
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2019074307
(87)【国際公開番号】W WO2020053324
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】102018215551.8
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521368898
【氏名又は名称】アバロス セラピューティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ラング カール
(72)【発明者】
【氏名】ハルト コーネリア
(72)【発明者】
【氏名】ベルガーハウゼン ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】バート ヒラル
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0124308(US,A1)
【文献】特表2014-502848(JP,A)
【文献】特表2012-503489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
A61K 35/76
A61P 48/00
A61P 35/00
REGISTRY/CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/Geneseq
Uniprot/Geneseq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスの変異体であって、該変異体が糖タンパク質をコードする核酸を含み、該糖タンパク質が、
(a)SEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質配列と比べて変異Arg 185→Trpを含み、かつSEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、または
(b)SEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質配列と比べて変異Ile 181→Metを含み、かつSEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質配列と少なくとも99%の配列同一性を有する、
変異体。
【請求項2】
前記変異体が、糖タンパク質をコードする核酸を含み、該糖タンパク質が、SEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質配列と比べて変異Arg 185→Trpを含み、かつSEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項1記載の変異体。
【請求項3】
前記変異体が、糖タンパク質をコードする核酸を含み、該糖タンパク質が、SEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質と比べて変異Arg 185→TrpおよびIle 181→Metを含む、請求項1または2記載の変異体。
【請求項4】
前記変異体が、糖タンパク質をコードする核酸を含み、該糖タンパク質が、SEQ ID NO: 18、26、34、42、50、および58のいずれか1つに示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するか、またはそれと同一である、請求項1~3のいずれか一項記載の変異体。
【請求項5】
前記変異体が、糖タンパク質をコードする核酸を含み、該核酸が、SEQ ID NO: 17、25、33、41、49、および57のいずれか1つに示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するか、またはそれと同一である、配列を含む、請求項1~4のいずれか一項記載の変異体。
【請求項6】
前記変異体が、Lタンパク質をコードする核酸を含み、該Lタンパク質が、SEQ ID NO: 16に示される野生型Lタンパク質配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項1~5のいずれか一項記載の変異体。
【請求項7】
前記変異体が、Lタンパク質をコードする核酸を含み、該Lタンパク質が、SEQ ID NO: 24、32、40、48、56、および64のいずれか1つに示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するか、またはそれと同一である、請求項1~6のいずれか一項記載の変異体。
【請求項8】
前記変異体が、Lタンパク質をコードする核酸を含み、
該Lタンパク質が、SEQ ID NO: 16に示される野生型Lタンパク質配列と比べて、以下の変異:
Lys 253→Arg、Lys 1512→Met、Lys 1513→Glu、Ser 1758→Phe、Phe 1995→Ser、Ile 2094→Val、Lys 2115→Glu、Thr 2141→Ala、Arg 2175→Lys、またはThr 2185→Ala
のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10を含む、
請求項1~7のいずれか一項記載の変異体。
【請求項9】
前記変異体が、Lタンパク質をコードする核酸を含み、
該Lタンパク質が、SEQ ID NO: 16に示される野生型Lタンパク質配列と比べて、以下の組の変異:
(a)Ser 1758→Phe;
(b)Phe 1995→Ser;およびIle 2094→Val;
(c)Phe 1995→Ser;およびThr 2141→Ala;
(d)Phe 1995→Ser;Ile 2094→Val;およびThr 2141→Ala;
(e)Lys 1513→Glu;およびPhe 1995→Ser;
(f)Lys 1513→Glu;Phe 1995→Ser;およびArg 2175→Lys;
(g)Lys 253→Arg;Lys 1512→Met;Lys 2115→Glu;およびThr 2185→Ala;
(h)Lys 253→Arg;Lys 1512→Met;Lys 2115→Glu;Thr 2141→Ala;およびThr 2185→Ala;
(i)Phe 1995→Ser;または
(j)Lys 2115→Glu
のうちの1つを含む、
請求項1~8のいずれか一項記載の変異体。
【請求項10】
前記変異体が、Lタンパク質をコードする核酸を含み、
該核酸が、
SEQ ID NO: 15、23、31、39、47、55、および63のいずれか1つに示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するか、またはそれと同一である、配列
に対して相補的である、
請求項1~9のいずれか一項記載の変異体。
【請求項11】
前記変異体が、核タンパク質をコードする核酸を含み、該核タンパク質が、SEQ ID NO: 12、20、28、36、44、52、および60のいずれか1つに示される核タンパク質と少なくとも95%の配列同一性を有するか、またはそれと同一である、請求項1~10のいずれか一項記載の変異体。
【請求項12】
前記変異体が、核タンパク質をコードする核酸を含み、
該核酸が、
SEQ ID NO: 11、19、27、35、43、51、および59のいずれか1つに示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するか、またはそれと同一である、配列
に対して相補的である、
請求項1~11のいずれか一項記載の変異体。
【請求項13】
前記変異体が、Zタンパク質をコードする核酸を含み、該Zタンパク質が、SEQ ID NO: 14、22、30、38、46、54、および62のいずれか1つに示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するか、またはそれと同一である、請求項1~12のいずれか一項記載の変異体。
【請求項14】
前記変異体が、Zタンパク質をコードする核酸を含み、
該核酸が、
SEQ ID NO: 13、21、29、37、45、53、および61のいずれか1つに示される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するか、またはそれと同一である、配列
を含む、
請求項1~13のいずれか一項記載の変異体。
【請求項15】
野生型リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス系統WEと比べて腫瘍細胞内でより強力に増殖する能力がある、請求項1~14のいずれか一項記載の変異体。
【請求項16】
癌の治療のための、請求項1~15のいずれか一項記載のリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体を含む、薬学的組成物。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか一項記載のリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体を含む、薬学的組成物。
【請求項18】
チェックポイントブロッカー、および/またはアポトーシス調整剤をさらに含む、請求項17記載の薬学的組成物。
【請求項19】
(a)SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 34、SEQ ID NO: 42、およびSEQ ID NO: 50からなる群より選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有し、かつ変異Arg 185→Trpを含む、または
(b)SEQ ID NO: 3およびSEQ ID NO: 58からなる群より選択される配列と少なくとも99%の配列同一性を有し、かつ変異Ile 181→Metを含む
アミノ酸配列を含
み、
SEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質と比べて改善された抗腫瘍特性を提供する、
タンパク質。
【請求項20】
核酸であって、
(a)該核酸が、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 33、SEQ ID NO: 41、およびSEQ ID NO: 49からなる群より選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列であるかまたはそれに対して相補的である、核酸配列を有し、かつ該核酸によりコードされるタンパク質が変異Arg 185→Trpを含む、または
(b)該核酸が、SEQ ID NO: 4およびSEQ ID NO: 57からなる群より選択される配列と少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列であるかまたはそれに対して相補的である、核酸配列を有し、かつ該核酸によりコードされるタンパク質が変異Ile 181→Metを含
み、
該核酸によりコードされる該タンパク質が、SEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質と比べて改善された抗腫瘍特性を提供する、
核酸。
【請求項21】
SEQ ID NO: 10に示される野生型リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)糖タンパク質配列と比べて、
(a)変異Arg 185→Trpを含み、SEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質配列と少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、または
(b)変異Ile 181→Metを含み、SEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質配列と少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
糖タンパク質。
【請求項22】
SEQ ID NO: 10に示される野生型LCMV糖タンパク質と比べて変異Arg 185→TrpおよびIle 181→Metの少なくとも1つを含む糖タンパク質をコードする核酸配列を含み、SEQ ID NO: 9またはそれぞれの相補配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する核酸配列を含む、核酸。
【請求項23】
請求項22記載の核酸を含む、遺伝子クラスターまたはオペロン。
【請求項24】
請求項22記載の核酸、または請求項23記載の遺伝子クラスターもしくはオペロンを含む、発現ベクター。
【請求項25】
請求項21記載の糖タンパク質を発現もしくは含有する、および/または請求項22記載の核酸を含有する、非ヒト生物。
【請求項26】
請求項21記載の糖タンパク質を発現もしくは含有する、および/または請求項22記載の核酸を含有する、ウイルス。
【請求項27】
請求項21記載の糖タンパク質を発現もしくは含有する、および/または請求項22記載の核酸を含有する、ベクター。
【請求項28】
請求項22記載の核酸を含有する、プラスミド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年9月12日に出願された独国特許出願DE 10 2018 215 551.8号の優先権の恩典を主張するものであり、その内容はすべて、あらゆる目的で、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明は、抗腫瘍アレナウイルス、アレナウイルス変異体、単離タンパク質またはペプチド、特に単離糖タンパク質、アレナウイルス、および対応するタンパク質またはペプチドをコードする核酸を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アレナウイルスは、ヒト病原性多形態性RNAウイルスの科に属する。これらのウイルスによる疾患は、それらが本来は動物、主にげっ歯類の体内に蓄えられているため、動物原性感染症に属する。動物原性感染症は、動物から人間へ、また反対に人間から動物へも感染し得る疾患である。
【0004】
少なくとも8種類のアレナウイルスが、人間の疾患、典型的には無菌性髄膜炎および出血熱の原因となることがわかっている。人間の疾患の原因となり得る公知のウイルスは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、グアナリトウイルス(GTOV)、フニンウイルス(JUNV)、ラッサウイルス(LASV)、ルジョウイルス(LUJV)、マチュポウイルス(MACV)、サビアウイルス(SABV)、およびホワイトウォーターアロヨウイルス(WWAV)である。
【0005】
マンマレナウイルス(mammarenavirus)属のアレナウイルスは、旧世界アレナウイルスと新世界アレナウイルスの2つのグループに分けられる。これらのグループは、地理学的および遺伝学的に異なる。リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスなどの旧世界アレナウイルスは、ヨーロッパ、アジア、およびアフリカの国々など、主に東半球で見つかった。一方、新世界アレナウイルスは、アルゼンチン、ボリビア、ベネズエラ、ブラジル、およびアメリカ合衆国など、西半球で見つかっている。
【0006】
アレナウイルスは、細胞内で複製してから、ビリオン(感染性粒子)として細胞外空間に侵入する。ビリオンは、多形態性の、たいていは丸い形状を有し、直径はだいたい110 nmから130 nm、最大50 nm~300 nmである。ビリオンのキャプシドは、二重脂質膜およびスパイク状に突き出すホモトライマーの糖タンパク(GP1およびGP2)からなるエンベロープタンパク質に囲まれている。GP1は外向きであり、感染の際に細胞受容体に結合する。GP2の向きは逆方向で、細胞との融合を仲介する。脂質層の下には環のようになっているZタンパク質があり、ヌクレオキャプシド内には、それぞれ短めのRNAセグメント(Sセグメント 3.5 kb)および長めのRNAセグメント(Lセグメント 7.2 kb)からなるリボ核タンパク質(RNP)複合体、ならびに核タンパク質がある。ウイルスポリメラーゼのLタンパク質が、RNP複合体と結合する。LおよびSセグメントは、遺伝情報を担持し、2種類のタンパク質をそれぞれコードする。一本鎖RNAは混合を有し(すなわちアンビセンス極性)、これらの3'非翻訳末端にその配列(およそ19~30 bp)がこのウイルス科においても保存されている。まず、核タンパク質およびLタンパク質のmRNAが転写され、次にZタンパク質および糖タンパク質前駆体の複製およびmRNA転写があり、最後にウイルスタンパク質が翻訳および修飾される。
【0007】
アレナウイルスがワクチン接種用ベクターとして使用されることは周知である。顕著な例が、アルゼンチン出血熱に対し用いられるワクチン接種用ウイルスCandid #1である。これは、フニンウイルスのワクチン接種用バリアントである。
【0008】
WO 2009/083210 A1(特許文献1)から、とりわけ黒色腫、前立腺癌、乳癌、および肺癌などの腫瘍性疾患の治療における、複製欠損すなわち遺伝子改変アレナウイルス粒子(ビリオン)の使用が知られる。発表論文「Development of replication-defective lymphocytic choriomeningitis virus vectors for the induction of potent CD8+ T cell immunity」(Nature Medicine, vol. 16, no. 3, March 2010, p. 339-345; doi: 10.1038/nm.2104)(非特許文献1)は、そのようなウイルス粒子癌免疫療法の可能な適用領域を記載している。
【0009】
さらにWO 2006/008074 A1(特許文献2)から、レトロウイルスおよびアレナウイルス-糖タンパク質シュードタイプのビリオンの両方を生産するパッケージング細胞の、固形腫瘍の遺伝子治療への使用が知られる。
【0010】
上記の腫瘍治療の従来の方法は、遺伝子工学的に作製するのが非常に複雑なウイルス粒子の使用に基づく。また、遺伝子治療法の場合、遺伝子改変ビリオンまたはビリオンを産生するパッケージング細胞では、満足のいく治療有効性のある腫瘍組織への形質導入が達成できないことが多い。
【0011】
しかし、WO 2016/166285 A1(特許文献3)からは、腫瘍の治療および/または予防のためのアレナウイルスが知られ、該アレナウイルスはゲノム外来性RNAを含まない。それに加えて、WO 2016/166285 A1(特許文献3)からは、腫瘍退行特性をもつアレナウイルスの生産法が知られる。
【0012】
とはいえ、腫瘍の治療および/または予防に使用される、特異的でかつ特に治療有効性のあるアレナウイルスに対する需要は、なおも存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】WO 2009/083210 A1
【文献】WO 2006/008074 A1
【文献】WO 2016/166285 A1
【非特許文献】
【0014】
【文献】「Development of replication-defective lymphocytic choriomeningitis virus vectors for the induction of potent CD8+ T cell immunity」(Nature Medicine, vol. 16, no. 3, March 2010, p. 339-345; doi: 10.1038/nm.2104)
【発明の概要】
【0015】
目的および解決
本発明の根底にある目的は、抗腫瘍特性および/または改善された抗腫瘍特性を有するアレナウイルスを生産することである。さらに、本発明の根底にある目的は、対応するアレナウイルス変異体、アレナウイルスの単離タンパク質またはペプチド、特に糖タンパク質および/またはLタンパク質、ならびにそれらをコードする核酸を提供することである。
【0016】
上記の目的は、独立請求項1のリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体、独立請求項15の方法、請求項22のリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体、請求項26の薬剤または薬学的組成物、請求項28の単離タンパク質またはペプチド、ならびに請求項29の単離核酸により、解決される。方法およびリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体の好ましい態様は、従属項の、および本明細書にとっての主題である。本発明の追加の局面を本明細書に開示する。全請求項の文言を、明示的参照により本明細書の内容に組み入れる。
[本発明1001]
リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスの変異体であって、
該変異体は、野生型リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス系統WEと比べて腫瘍細胞内でより強力に増殖する能力があり、該変異体は、糖タンパク質をコードする核酸を含み、該糖タンパク質は、SEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質配列と比べて変異Arg 185→TrpおよびIle 181→Metの少なくとも1つを含む、
リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスの変異体。
[本発明1002]
SEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質配列と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有する糖タンパク質をコードする核酸を含む、本発明1001の変異体。
[本発明1003]
前記変異体が、糖タンパク質をコードする核酸を含み、該糖タンパク質が、SEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質と比べて変異Arg 185→TrpおよびIle 181→Metを含む、本発明1001または1002の変異体。
[本発明1004]
前記変異体が、糖タンパク質をコードする核酸を含み、該糖タンパク質が、SEQ ID NO: 18、26、34、42、50、および58のいずれか1つに示される配列と少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するか、または好ましくはそれと同一である、先行本発明のいずれかの変異体。
[本発明1005]
前記変異体が、糖タンパク質をコードする核酸を含み、
該核酸が、
SEQ ID NO: 17、25、33、41、49、および57に示される配列と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するか、または好ましくはそれと同一である、配列
を含む、先行本発明のいずれかの変異体。
[本発明1006]
前記変異体が、Lタンパク質をコードする核酸を含み、該Lタンパク質が、SEQ ID NO: 16に示される野生型Lタンパク質配列と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有する、本発明1001の変異体。
[本発明1007]
前記変異体が、Lタンパク質をコードする核酸を含み、該Lタンパク質が、SEQ ID NO: 24、32、40、48、56、および64のいずれか1つに示される配列と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%、好ましくは少なくとも約99.8%、好ましくは少なくとも約99.9%の配列同一性を有するか、または好ましくはそれと同一である、先行本発明のいずれかの変異体。
[本発明1008]
前記変異体が、Lタンパク質をコードする核酸を含み、
該Lタンパク質が、SEQ ID NO: 16に示される野生型Lタンパク質配列と比べて、以下の変異:
Lys 253→Arg;Lys 1512→Met;Lys 1513→Glu;Ser 1758→Phe;Phe 1995→Ser;Ile 2094→Val;Lys 2115→Glu;Thr 2141→Ala;Arg 2175→Lys;Thr 2185→Ala
のうち1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10を含む、
先行本発明のいずれかの変異体。
[本発明1009]
前記変異体が、Lタンパク質をコードする核酸を含み、
該Lタンパク質が、SEQ ID NO: 16に示される野生型Lタンパク質配列と比べて、以下の組の変異:
(a)Ser 1758→Phe;
(b)Phe 1995→Ser;任意でIle 2094→Val;および任意でThr 2141→Ala;
(c)Lys 1513→Glu;Phe 1995→Ser;および任意でArg 2175→Lys;
(d)Lys 253→Arg;Lys 1512→Met;Lys 2115→Glu;任意でThr 2141→Ala;Thr 2185→Ala;
(e)Phe 1995→Ser;または
(f)Lys 2115→Glu
のうち1つを含む、
先行本発明のいずれかの変異体。
[本発明1010]
前記変異体が、Lタンパク質をコードする核酸を含み、
該核酸が、
SEQ ID NO: 17、25、33、41、49、および57に示される配列と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%、好ましくは少なくとも約99.8%、好ましくは少なくとも約99.9%の配列同一性を有するか、または好ましくはそれと同一である、配列
に対して相補的である、
先行本発明のいずれかの変異体。
[本発明1011]
前記変異体が、核タンパク質をコードする核酸を含み、該核タンパク質が、SEQ ID NO: 12、20、28、36、44、52、および60のいずれか1つに示される核タンパク質と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するか、または好ましくはそれと同一である、先行本発明のいずれかの変異体。
[本発明1012]
前記変異体が、核タンパク質をコードする核酸を含み、
該核酸が、
SEQ ID NO: 11、19、27、35、43、51、および59のいずれか1つに示される核タンパク質と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するか、または好ましくはそれと同一である、配列
に対して相補的である、
先行本発明のいずれかの変異体。
[本発明1013]
前記変異体が、Zタンパク質をコードする核酸を含み、該Zタンパク質が、SEQ ID NO: 14、22、30、38、46、54、および62のいずれか1つに示される配列と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するか、または好ましくはそれと同一である、先行本発明のいずれかの変異体。
[本発明1014]
前記変異体が、Zタンパク質をコードする核酸を含み、
該核酸が、
SEQ ID NO: 13、21、29、37、45、53、および61のいずれか1つに示される配列と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するか、またはそれと同一である、配列
を含む、
先行本発明のいずれかの変異体。
[本発明1015]
抗腫瘍アレナウイルスを、特に元のアレナウイルスよりも改善された抗腫瘍特性をもつアレナウイルスを生産する方法であって、該プロセスが、
(a)初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞を、栄養培地上におよび/または栄養培地中に播く工程、
(b)播いた初代腫瘍細胞または播いた細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞に、元のアレナウイルスを接種する工程、
(c)接種した初代腫瘍細胞または接種した細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞を、接種した初代腫瘍細胞または接種した細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞の少なくとも一部分を元のアレナウイルスに感染させるのに好適な条件で、インキュベートする工程、
(d)インキュベートした初代腫瘍細胞またはインキュベートした細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞を含有する細胞培養物から、アレナウイルス含有細胞培養上清を抽出する工程
を含み、
工程シーケンス(a)~(d)が複数回繰り返され、
工程シーケンス(a)~(d)の1回目の反復を実施するとき、工程(b)を実施するために、工程シーケンス(a)~(d)の1回目の反復の前に工程(d)を実施した際に抽出したアレナウイルス含有細胞培養上清またはその一部を、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞に接種し、かつ
工程シーケンス(a)~(d)のさらなる各反復を実施するとき、工程(b)を実施するために、工程シーケンス(a)~(d)の前の反復の工程(d)を実施した際に抽出したアレナウイルス含有細胞培養上清またはその一部を、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞に接種する、
方法。
[本発明1016]
工程(a)を実施する前に、初代腫瘍細胞を多くて1000回、特に多くて100回、好ましくは多くて10回継代することを特徴とする、本発明1015の方法。
[本発明1017]
工程(c)が、
1時間~1000時間、特に3時間~300時間、好ましくは12時間~96時間の時間内で、かつ/あるいは
温度4℃~50℃、特に20℃~42℃、好ましくは34℃~39℃で、かつ/あるいは
RPMI-1640、DMEM、およびIMDMからなる群より選択される栄養培地であって、特に追加でウシ胎仔血清もしくはヒト血清などの血清、ならびに/またはグルタミン酸および/もしくはグルタミンなどのアミノ酸、ならびに/または抗生物質を含む、栄養培地で、かつ/あるいは
0%~20%、特に2%~10%、好ましくは4%~6%の二酸化炭素雰囲気下で、
実施されることを特徴とする、本発明1015または1016の方法。
[本発明1018]
前記工程のシーケンスが、3~1000回、特に10~100回、好ましくは20~50回反復されることを特徴とする、本発明1015~1017のいずれかの方法。
[本発明1019]
初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞、ならびに/あるいは
元のアレナウイルスおよび/または抽出した細胞培養上清もしくはその一部に含有されるアレナウイルスを、工程(d)を実施する前に、少なくとも1つの化学療法剤で処理しかつ/または放射線処理に供すること、ならびに/あるいは
少なくとも1つの化学療法剤に耐性がある初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞を用いること、ならびに/あるいは
初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞、ならびに/あるいは元のアレナウイルスおよび/または抽出した細胞培養上清もしくはその一部に含有されるアレナウイルスを、工程(d)を実施する前に、少なくとも1つの抗ウイルス化合物で、特にアルファ-インターフェロンおよび/またはガンマ-インターフェロンで処理すること
を特徴とする、本発明1015~1018のいずれかの方法。
[本発明1020]
初代腫瘍細胞が、初代脈絡膜黒色腫細胞、初代肛門癌細胞、初代血管肉腫細胞、初代星状細胞腫細胞、初代基底細胞癌細胞、初代子宮頸癌細胞、初代軟骨肉腫細胞、初代絨毛癌細胞、初代皮膚扁平上皮癌細胞、初代小腸癌細胞、初代子宮内膜癌細胞、初代ユーイング肉腫細胞、初代線維肉腫細胞、初代胆嚢癌細胞、初代胆管癌細胞、初代グリオブラストーマ細胞、初代膀胱癌細胞、初代尿管癌細胞、初代尿道癌細胞、初代肝細胞癌細胞、初代精巣腫瘍細胞、初代下咽頭癌細胞、初代下垂体癌細胞、初代カポジ肉腫細胞、初代小細胞気管支癌細胞、初代結腸癌細胞、初代結腸直腸癌細胞、初代喉頭癌細胞、初代平滑筋肉腫細胞、初代脂肪肉腫細胞、初代胃癌細胞、初代悪性線維性組織球腫細胞、初代乳癌細胞、初代髄芽腫細胞、初代黒色腫細胞、初代口腔底癌細胞、初代副鼻腔癌細胞、初代上咽頭癌細胞、初代副腎皮質癌細胞、初代副甲状腺癌細胞、初代神経原性肉腫細胞、初代非小細胞気管支癌細胞、初代腎癌細胞、初代中咽頭癌細胞、初代骨肉腫細胞、初代卵巣癌細胞、初代膵臓腫瘍細胞、初代陰茎癌細胞、初代褐色細胞腫細胞、初代胸膜中皮腫細胞、初代前立腺癌細胞、初代直腸癌細胞、初代網膜芽細胞腫細胞、初代横紋筋肉腫細胞、初代甲状腺癌細胞、初代唾液腺癌細胞、初代食道癌細胞、初代扁桃腺癌細胞、初代膣癌細胞、初代外陰癌細胞、初代ウィルムス腫瘍細胞、神経内分泌腫瘍の初代細胞、および初代舌癌細胞からなる群より選択されることを特徴とする、本発明1015~1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
元のアレナウイルスとして野生型アレナウイルスを、特に野生型リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスを用いることを特徴とする、本発明1015~1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
少なくとも1つの変異を有する糖タンパク質であって、該少なくとも1つの変異が、該糖タンパク質の位置181のイソロイシンの、別のアミノ酸での、好ましくはメチオニンでのアミノ酸置換、および/または該糖タンパク質の位置185のアルギニンの、別のアミノ酸での、好ましくはトリプトファンでのアミノ酸置換である、糖タンパク質、ならびに/あるいは
少なくとも1つの変異を有するLタンパク質であって、該少なくとも1つの変異が、該Lタンパク質の位置1513のリジンの、別のアミノ酸での、好ましくはグルタミン酸でのアミノ酸置換、および/または該Lタンパク質の位置1995のフェニルアラニンの、別のアミノ酸での、好ましくはセリンでのアミノ酸置換、および/または該Lタンパク質の位置2094のイソロイシンの、別のアミノ酸での、好ましくはバリンでのアミノ酸置換、および/または該Lタンパク質の位置2141のスレオニンの、別のアミノ酸での、好ましくはアラニンでのアミノ酸置換、および/または該Lタンパク質の位置2175のアルギニンの、別のアミノ酸での、好ましくはリジンでのアミノ酸置換である、Lタンパク質
を含む、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体。
[本発明1023]
SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 34、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 58、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 32、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 48、SEQ ID NO: 56、またはSEQ ID NO: 64に記載のアミノ酸配列を有するか、またはそれからなるタンパク質またはペプチド、特に糖タンパク質またはLタンパク質を含むことを特徴とする、特に本発明1022の、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体。
[本発明1024]
アミノ酸配列SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 34、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 58、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 32、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 48、SEQ ID NO: 56、もしくはSEQ ID NO: 64を含むかもしくはそれらからなるタンパク質もしくはペプチドをコードする核酸を含むこと、および/または
SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 33、SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 49、SEQ ID NO: 57、SEQ ID NO: 23、SEQ ID NO: 31、SEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 55、もしくはSEQ ID NO: 63に記載の核酸配列であるかもしくはそれに対して相補的である核酸配列を有するかまたはそれからなる核酸を、含むこと
を特徴とする、特に本発明1022または1023の、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体。
[本発明1025]
医薬における使用のための、特に腫瘍の、好ましくは肛門癌、気管支癌、肺癌、子宮内膜癌、胆嚢癌、膀胱癌、肝細胞癌、睾丸癌、結腸癌、結腸直腸癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、睾丸癌、結腸癌、膀胱の腫瘍、膀胱癌、膀胱の腫瘍、肝細胞癌、肺癌、肺癌、子宮内膜癌、結腸直腸癌、直腸癌、喉頭癌、食道癌、胃癌、乳癌、腎癌、卵巣癌、膵癌、咽頭癌、中咽頭(opharyngeal)癌、前立腺癌、甲状腺癌、子宮頸癌、血管肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、悪性線維症組織球腫、リンパ腫、白血病、神経原性肉腫、骨肉腫および横紋筋肉腫からなる群より選択される腫瘍の治療および/または予防における使用のための、本発明1001~1014および1022~1024のいずれかのリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体。
[本発明1026]
本発明1001~1014および1022~1024のいずれかのリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体を含む、薬剤または薬学的組成物。
[本発明1027]
PD-1などのチェックポイントブロッカー、および/またはアポトーシス調整剤、特にSMAC模倣薬(mimeticum)などのアポトーシス阻害剤をさらに含むことを特徴とする、本発明1026の薬剤。
[本発明1028]
SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 34、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 58、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 32、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 48、SEQ ID NO: 56、またはSEQ ID NO: 64、SEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 28、SEQ ID NO: 36、SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 52、SEQ ID NO: 60、SEQ ID NO: 14、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 30、SEQ ID NO: 38、SEQ ID NO: 46、SEQ ID NO: 54、またはSEQ ID NO: 62に記載のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、単離タンパク質またはペプチド、特に糖タンパク質、Lタンパク質、核タンパク質、またはZタンパク質。
[本発明1029]
特に糖タンパク質、Lタンパク質、核タンパク質、またはZタンパク質をコードする、単離核酸であって、
SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 6またはSEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 33、SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 49、SEQ ID NO: 57、SEQ ID NO: 23、SEQ ID NO: 31、SEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 55、SEQ ID NO: 63、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 27、SEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 59、SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 29、SEQ ID NO: 37、SEQ ID NO: 45、SEQ ID NO: 53、またはSEQ ID NO: 61に記載の核酸配列であるかまたはそれに対して相補的である、核酸配列
を有するか、またはそれからなる、単離核酸。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、アレナウイルスの、特にリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の特定の変異体が、野生型ウイルスと比べて改善された抗腫瘍活性(altivites)を有し得る、という驚くべき知見に基づく。
【0019】
したがって、本発明は、広くは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスの変異体に、好ましくは系統WEの変異体に関する。
【0020】
変異体は、野生型リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスの系統WEと比べて、H1975細胞、HCC1954細胞、マウス膵癌細胞、またはヒト黒色腫細胞などの腫瘍細胞内で、より強力に増殖する能力があり得る。変異体はまた、LCMV-WE野生型よりも強力な自然免疫活性化をインビボで誘導する能力があり得る。変異体はまた、LCMV-WE野生型よりも強力な抗腫瘍効果をインビボで有する能力があり得る。変異体はまた、LCMV-WE野生型と比べて、腫瘍特異的CD8+ T細胞の増殖を増加させる能力があり得る。変異体はまた、腫瘍特異的CD8+ T細胞の機能を増加させる能力があり得る。変異体はまた、LCMV-WE野生型と比べて、腫瘍特異的T細胞を刺激するより高い能力を有し得る。
【0021】
本発明のリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスの変異体aは、糖タンパク質をコードする核酸を好ましくは含み、該糖タンパク質は、SEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質配列の位置181および185に対応する位置に、少なくとも1つ変異を含む。好ましい変異は、SEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質配列と比べて、Arg 185→Trpおよび/またはIle 181→Met(たとえばArg 185→Trpのみ、Ile 181→Metのみ、またはArg 185→TrpおよびIle 181→Met)、および/または該核酸にコードされるそれぞれのタンパク質である。本願の実施例は、該変異のいずれか1つの存在だけでも、野生型リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスよりも改善された機能を提供するのに十分であり得ることを実証しているが、記載の変異両方の存在はLCMVの機能をさらに改善することになり、それは相加的であり得、または相乗的でさえあり得る。したがって、好ましい態様では、本発明のLCMVに両方の変異が存在する。
【0022】
理論に縛られるものではないが、糖タンパク質に1つまたは2つの上述の変異が存在することで、LCMVの機能(たとえば上述したような腫瘍細胞における複製もしくは増殖、抗腫瘍活性、および/または免疫系刺激)を、LCMVのほかの変異、特にほかの遺伝子またはタンパク質におけるほかの変異の存在とは無関係に、改善することができるとさらに考えられる。この仮定の根拠は、ほかの変異には連続継代の間に現れては消えるもの、および/または種々の変異体系統で保存されないものがあるが、糖タンパク質における変異Arg 185→TrpおよびIle 181→Metはずっと保存されている、という知見である。この仮定のさらなる根拠は、LCMVの糖タンパク質はビリオンエンベロープ上にスパイクを形成するという事実であり、つまりそれらはウイルスが腫瘍細胞を感染させる能力において主要な役割を果たすと考えられる。
【0023】
本発明のLCMV変異体は、糖タンパク質をコードする核酸を含み得、該糖タンパク質は、SEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質配列と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有し、かつ/あるいは該核酸にコードされるそれぞれのタンパク質を含み得る。
【0024】
本発明のLCMV変異体は、糖タンパク質をコードする核酸を含み得、該糖タンパク質は、SEQ ID NO: 10に示される野生型糖タンパク質と比べて変異Arg 185→TrpおよびIle 181→Metを含む。
【0025】
本発明のLCMV変異体は、糖タンパク質をコードする核酸を含み得、該糖タンパク質は、SEQ ID NO: 18、26、34、42、50、および58のいずれか1つに示される配列と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するかまたは好ましくは該配列と同一であり、かつ/あるいは該核酸にコードされるそれぞれのタンパク質を含み得る。
【0026】
本発明のLCMV変異体は、糖タンパク質をコードする核酸を含み得、該核酸は、SEQ ID NO: 17、25、33、41、49、および57に示される配列と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するかまたは好ましくは該配列と同一である配列を含み、かつ/あるいは該核酸にコードされるそれぞれのタンパク質を含み得る。
【0027】
上述したように、LCMVの糖タンパク質はビリオンエンベロープ上にスパイクを形成し、ウイルスが腫瘍細胞を感染させる能力に主要な役割を果たすと考えられる。とはいえ、LCMVにはさらなるタンパク質も好ましくは存在している。
【0028】
本発明のLCMV変異体は、SEQ ID NO: 16に示される野生型Lタンパク質配列と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するLタンパク質をコードする核酸を含み得、かつ/あるいは該核酸にコードされるそれぞれのタンパク質を含み得る。
【0029】
本発明のLCMV変異体は、Lタンパク質をコードする核酸を含み得、該Lタンパク質は、SEQ ID NO: 24、32、40、48、56、および64のいずれか1つに示される配列と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%、好ましくは少なくとも約99.8%、好ましくは少なくとも約99.9%の配列同一性を有するか、または好ましくは該配列と同一であり、かつ/あるいは該核酸にコードされるそれぞれのタンパク質を含み得る。
【0030】
本発明のLCMV変異体は、Lタンパク質をコードする核酸を含み得、該Lタンパク質は、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、または10の変異を、SEQ ID NO: 16に示される野生型Lタンパク質配列の位置253、1512、1513、1758、1995、2094、2115、2141、2175、および2185に対応する位置に含む。これらの位置の変異の好ましい態様は、SEQ ID NO: 16に示される野生型Lタンパク質配列と比べて、Lys 253→Arg;Lys 1512→Met;Lys 1513→Glu;Ser 1758→Phe;Phe 1995→Ser;Ile 2094→Val;Lys 2115→Glu;Thr 2141>Ala;Arg 2175→Lys;Thr 2185→Alaであり、かつ/あるいは該核酸にコードされるそれぞれのタンパク質を含み得る。好ましくは、LCMV変異タンパク質は、前記の変異を1つ、2つ、3つ、4つ、または5つ含む。
【0031】
本発明のLCMV変異体は、Lタンパク質をコードする核酸を含み得、該Lタンパク質は、SEQ ID NO: 16に示される野生型Lタンパク質配列と比べて、次の組の変異:Ser 1758→Phe(変異体系統P42の変異に対応する);Phe 1995→Ser、任意でIle 2094→Val、および任意でThr 2141→Ala(位置2094および2141に関してオリゴクローナルである、変異体系統P52の変異に対応する);Lys 1513→Glu、Phe 1995→Ser、および任意でArg 2175→Lys(位置2175に関してオリゴクローナルである、変異体系統P91の変異に対応する);Lys 253→Arg;Lys 1512→Met;Lys 2115→Glu;Thr 2185→Ala(変異体系統P52-1の変異に対応する);Phe 1995→Ser(変異体系統P52-1.3の変異に対応する);またはLys 2115→Glu(変異体系統P52-2.1の変異に対応する)のうち1つを含み、かつ/あるいは該核酸にコードされるそれぞれのタンパク質を含み得る。
【0032】
本発明のLCMV変異体は、Lタンパク質をコードする核酸を含み得、該核酸は、SEQ ID NO: 17、25、33、41、49、および57に示される配列と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%、好ましくは少なくとも約99.8%、好ましくは少なくとも約99.9%の配列同一性を有するかまたは好ましくは該配列と同一である配列を、有するかあるいは好ましくはそれに対して相補的であり、かつ/あるいは該核酸にコードされるそれぞれのタンパク質を含み得る。
【0033】
本発明のLCMV変異体は、核タンパク質をコードする核酸を含み得、該核タンパク質は、SEQ ID NO: 12、20、28、36、44、52、および60のいずれか1つに示される核タンパク質と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するかまたは該核タンパク質と同一であり、かつ/あるいは該核酸にコードされるそれぞれのタンパク質を含み得る。
【0034】
本発明のLCMV変異体は、核タンパク質をコードする核酸を含み得、該核酸は、SEQ ID NO: 11、19、27、35、43、51、および59のいずれか1つに示される核タンパク質と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するかまたは該核タンパク質と同一である配列を、有するかあるいは好ましくはそれに対して相補的であり、かつ/あるいは該核酸にコードされるそれぞれのタンパク質を含み得る。
【0035】
本発明のLCMV変異体は、Zタンパク質をコードする核酸を含み得、該Zタンパク質は、SEQ ID NO: 14、22、30、38、46、54、および62のいずれか1つに示される配列と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するかまたは該配列と同一であり、かつ/あるいは該核酸にコードされるそれぞれのタンパク質を含み得る。
【0036】
本発明のLCMV変異体は、Zタンパク質をコードする核酸を含み得、該核酸は、SEQ ID NO: 13、21、29、37、45、53、および61のいずれか1つに示される配列と、少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するかまたは該配列と同一である配列を含み、かつ/あるいは該核酸にコードされるそれぞれのタンパク質を含み得る。
【0037】
本発明のLCMV変異体は、好ましくは本明細書に定義される糖タンパク質、好ましくは本明細書に定義されるLタンパク質、好ましくは本明細書に定義されるZタンパク質、および好ましくは本明細書に定義される核タンパク質を含み得る。本発明のLCMV変異体は、好ましくは本明細書に定義される糖タンパク質、好ましくは本明細書に定義されるLタンパク質、好ましくは本明細書に定義されるZタンパク質、および好ましくは本明細書に定義される核タンパク質をコードする、核酸を含み得る。
【0038】
本発明のLCMV変異体は、SEQ ID NO: 18、20、22、および24のタンパク質をコードする核酸、またはこれらの配列と少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するタンパク質を含み得る。糖タンパク質は、Ile 181→Met変異を含み得る。Lタンパク質は、Ser 1758→Phe変異を含み得る。本発明のLCMV変異体は、SEQ ID NO: 17および21に示される配列を含みかつSEQ ID NO: 19および23に示される配列に対して相補的な配列を含む、核酸を含み得る。
【0039】
本発明のLCMV変異体は、SEQ ID NO: 26、28、30、および32のタンパク質をコードする核酸、またはこれらの配列と少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するタンパク質を含み得る。糖タンパク質は、Ile 181→MetおよびArg 185→Trp変異を含み得る。Lタンパク質は、変異Phe 1995→Ser、任意でIle 2094→Val、および任意でThr 2141>Alaを含み得る。本発明のLCMV変異体は、SEQ ID NO: 25および29に示される配列を含みかつSEQ ID NO: 27および31に示される配列に対して相補的な配列を含む、核酸を含み得る。
【0040】
本発明のLCMV変異体は、SEQ ID NO: 34、36、38、および40のタンパク質をコードする核酸、またはこれらの配列と少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するタンパク質を含み得る。糖タンパク質は、Ile 181→MetおよびArg 185→Trp変異を含み得る。Lタンパク質は、変異Lys 1513→Glu、Phe 1995→Ser、および任意でArg 2175→Lysを含み得る。本発明のLCMV変異体は、SEQ ID NO: 33および37に示される配列を含みかつSEQ ID NO: 35および39に示される配列に対して相補的な配列を含む、核酸を含み得る。
【0041】
本発明のLCMV変異体は、SEQ ID NO: 50、52、54、および56のタンパク質をコードする核酸、またはこれらの配列と少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するタンパク質を含み得る。糖タンパク質は、Ile 181→MetおよびArg 185→Trp変異を含み得る。Lタンパク質は、変異Lys 253→Arg;Lys 1512→Met;Lys 2115→Glu;Thr 2185→Alaを含み得る。本発明のLCMV変異体は、SEQ ID NO: 41および45に示される配列を含みかつSEQ ID NO: 43および47に示される配列に対して相補的な配列を含む、核酸を含み得る。
【0042】
本発明のLCMV変異体は、SEQ ID NO: 58、60、62、および64のタンパク質をコードする核酸、またはこれらの配列と少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するタンパク質を含み得る。糖タンパク質は、Arg 185→Trp変異を含み得る。Lタンパク質は、Phe 1995→Ser変異を含み得る。本発明のLCMV変異体は、SEQ ID NO: 49および53に示される配列を含みかつSEQ ID NO: 51および55に示される配列に対して相補的な配列を含む、核酸を含み得る。
【0043】
本発明のLCMV変異体は、SEQ ID NO: 66、68、70、および72のタンパク質をコードする核酸、またはこれらの配列と少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するタンパク質を含み得る。糖タンパク質は、Ile 181→Met変異を含み得る。Lタンパク質は、Lys 2115→Glu変異を含み得る。本発明のLCMV変異体は、SEQ ID NO: 57および61に示される配列を含みかつSEQ ID NO: 59および63に示される配列に対して相補的な配列を含む、核酸を含み得る。
【0044】
本開示のLCMVは、SEQ ID NO: 10、12、14、および18のタンパク質をコードする核酸、またはこれらの配列と少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有するタンパク質を含み得る。本開示のLCMVは、SEQ ID NO: 10および14に示される配列を含みかつSEQ ID NO: 12および16に示される配列に対して相補的な配列を含む、核酸を含み得る。
【0045】
本発明はまた、広くは、治療に使用される本開示のLCMVに、特に本開示のLCMV変異体に関する。
【0046】
具体的には、本開示のLCMV変異体が用いられる場合、そのような使用は、野生型リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス系統WEの使用と比べて、腫瘍(細胞)におけるLCMV変異体のより強力な増殖を含み得る。そのような使用は、LCMV-WE野生型の使用と比べて、インビボでより強力な自然免疫活性化を誘導することも含み得る。そのような使用は、LCMV-WE野生型の使用と比べて、インビボでより強力な抗腫瘍効果を促進することも含み得る。そのような使用は、LCMV-WE野生型の使用と比べて、腫瘍特異的CD8+ T細胞の増殖を増加させることも含み得る。該使用は、腫瘍特異的CD8+ T細胞の機能を増加させることも含み得る。該使用は、LCMV-WE野生型と比べて、腫瘍特異的T細胞をより大幅に刺激することも含み得る。
【0047】
本開示のLCMV(変異体)は、腫瘍の治療および/または予防に使用され得る。腫瘍は、本明細書に開示されるどの腫瘍であってもよい。腫瘍は、好ましくは、癌腫、黒色腫、芽細胞腫、リンパ腫、および肉腫からなる群より選択される。
【0048】
第1の局面では、本発明は、抗腫瘍アレナウイルスを、すなわち腫瘍と闘うかまたは腫瘍を撃退するアレナウイルス(いわゆる腫瘍退行性アレナウイルス)を、特に元のアレナウイルスと比べて改善された抗腫瘍特性、すなわち改善された腫瘍と闘うかまたは腫瘍を撃退する特性をもつアレナウイルスを、生産する方法に関する。
【0049】
方法は、
(a)初代腫瘍細胞を栄養培地、好ましくは液体栄養培地に播く、あるいは細胞株H1975、C643、またはTramp-C2の細胞を栄養培地、好ましくは液体栄養培地におよび/またはその中に播く工程、
(b)播いた初代腫瘍細胞に元のアレナウイルスを接種する、あるいは播いた細胞株H1975、C643、またはTramp-C2の細胞に元のアレナウイルスを接種する工程、
(c)接種した初代腫瘍細胞をインキュベートする、あるいは接種した細胞株H1975、C643、またはTramp-C2の細胞をインキュベートする、すなわち、初代腫瘍細胞と元のアレナウイルスとを、あるいは細胞株H1975、C643、またはTramp-C2の細胞と元のアレナウイルスとを、接種した初代腫瘍細胞の少なくとも一部分、または接種した細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞の少なくとも一部分、特に接種した初代腫瘍細胞の一部のみ、または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の一部のみか、接種した全初代腫瘍細胞、または接種した細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の全細胞を、元のアレナウイルスに感染させるのに好適な条件で、インキュベートする工程、
(d)インキュベートした初代腫瘍細胞培養物からアレナウイルス含有細胞培養上清を抽出する、あるいはインキュベートした細胞株H1975、C643、またはTramp-C2細胞含有細胞培養物からアレナウイルス含有細胞培養上清を抽出する工程
を含み、
工程シーケンス(a)~(d)は複数回繰り返され、
工程シーケンス(a)~(d)の1回目の反復を実施するとき、工程(b)を実施するために、該1回目の工程シーケンス(a)~(d)の反復の前に工程(d)を実施した際に抽出した、アレナウイルス含有細胞培養上清またはその一部を、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞に接種し、
工程シーケンス(a)~(d)のさらなる各反復を実施するとき、工程(b)を実施するために、前の工程シーケンス(a)~(d)の反復の工程(d)を実施した際に抽出したアレナウイルス含有細胞培養上清またはその一部を、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞に接種する。
【0050】
工程シーケンス(a)~(d)の1回目の実施は、本発明の意味において「第1継代」と呼ぶこともできる。したがって、第1継代は、元のアレナウイルスを接種材料として実施する。そしてその後の各継代の実施には、その前の、好ましくは直前の継代の工程(d)で抽出したアレナウイルス含有細胞培養上清またはその一部を用いる。第2継代以降の実施については、その継代は、本発明の意味において「反復継代」と呼ばれ得る。
【0051】
「元のアレナウイルス」という用語は、本発明の文脈では、工程シーケンス(a)~(d)の1回目の反復の前、すなわち第1継代の初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞の接種(工程b)の前に用いられるアレナウイルスを意味すると理解され得る。「元のアレナウイルス」は、以下により詳しく記載するが、野生型アレナウイルスまたはその変異体を指し得る。具体的には、この用語は、抗腫瘍特性のない、または抗腫瘍特性のある、元のアレナウイルスを指し得る。
【0052】
「野生型アレナウイルス」という用語は、本発明の文脈では、自然界で遺伝的に正常な形態で生じるゲノムを有するアレナウイルスを意味すると理解すべきである。
【0053】
「初代腫瘍細胞」という用語は、本発明の文脈では、未継代または非継代腫瘍細胞、すなわち腫瘍組織から直接単離された腫瘍細胞、または工程(a)を実施する前に最大で1000回、特に最大で100回、好ましくは最大で10回継代されている、腫瘍組織から直接単離された腫瘍細胞、あるいは異なる細胞クローンを有することを特徴とする初代腫瘍細胞を意味すると理解すべきである。後者の場合、異なるタンパク質発現および異なるDNA配列により不均一性を実証することができる(遺伝子フィンガープリンティング)。
【0054】
「細胞株H1975」という用語は、本発明の文脈では、ヒト腺癌から単離され、かつATCC(アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関)にNCI-H1975(ATCC(登録商標)CRL-5908(登録商標))という名前で、アクセッション番号または寄託番号CVCL-1511で寄託されている細胞株を意味すると理解すべきである。
【0055】
「細胞株C643」という用語は、本発明の文脈では、ヒト組織非形成性甲状腺癌から単離され、C643という名前で、アクセッション番号または寄託番号CVCL-5969(ExPASy Cellosaurus)で寄託されている細胞株を意味すると理解すべきである。
【0056】
「細胞株Tramp-C2」という用語は、本発明の文脈では、マウス腺癌から単離され、Tramp-C2という名前で、アクセッション番号または寄託番号CVCL-3615(ExPASy Cellosaurus)で寄託されている細胞株を意味すると理解すべきである。
【0057】
「播く」という用語は、本発明の文脈では、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞を、培養培地、好ましくは液体培養培地に、および/またはその中に、播種または導入することを意味すると理解すべきである。換言すると、「播く」という用語は、本発明の意味では、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞を、培養培地、好ましくは液体培養培地で、および/またはその中で、培養、特に初回培養することを意味すると理解すべきである。
【0058】
「リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスWE系統」という用語は、Seiler, P., et al., J. Immunol. 162 (8), 4536-4541 (1999)に記載されるLCMV-WE系統を指し得る。「リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスWE系統」という用語は、本明細書で使用される場合、SEQ ID NO: 10の位置59~265および266~498の配列を有する糖タンパク質、SEQ ID NO: 12の配列を有する核タンパク質;SEQ ID NO: 14の配列を有するZタンパク質;および/またはSEQ ID NO: 16の配列を有するLタンパク質を含む、LCMVを好ましくは指す。「リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスWE系統」という用語は、本明細書で使用される場合、SEQ ID NO: 9、11、13、および/または15の配列であるか、またはそれに対して相補的な配列を含む、1つまたは複数の、好ましくは2つの核酸分子を含む、LCMVも好ましくは指す。
【0059】
「アレナウイルス変異体」または「アレナウイルスの変異体」という用語は、本発明の文脈では、そのゲノムおよび/またはプロテオームが、その野生型のゲノムおよび/またはプロテオームに対し相対的に、少なくとも1つの変異、特に少なくとも1つの点変異を有するアレナウイルスを意味すると理解すべきである。好ましくは、「アレナウイルス変異体」または「アレナウイルスの変異体」という用語は、タンパク質、特に糖タンパク質および/またはLタンパク質を有するアレナウイルスであって、対応する野生型アレナウイルスの対応するタンパク質、特に糖タンパク質および/またはLタンパク質に対し相対的に、少なくとも1つの変異を好ましくはアミノ酸置換の形態で有するアレナウイルスと、理解すべきである。
【0060】
したがって、「リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体」という用語は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスの変異体であって、そのゲノムおよび/またはプロテオームが、野生型リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスのゲノムおよび/またはプロテオームに対し相対的に、少なくとも1つの変異、特に少なくとも1つの点変異を有する変異体と理解すべきである。好ましくは、「リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体」という用語は、タンパク質、特に糖タンパク質および/またはLタンパク質を有するアレナウイルスであって、野生型リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスの対応するタンパク質、特に糖タンパク質および/またはLタンパク質に対して相対的に、少なくとも1つの変異を好ましくはアミノ酸置換の形態で有するアレナウイルスを意味すると理解すべきである。
【0061】
「糖タンパク質」という用語は、本発明の文脈では、タンパク質からなるマクロ分子を意味すると理解すべきであり、文脈によっては、タンパク質部分、または共有結合したタンパク質構成要素と1つもしくは複数の炭水化物基(糖基)、特に単糖基および/もしくはオリゴ糖基および/もしくは多糖基とを指す場合もある。
【0062】
「反復継代」または「反復継代すること」という用語は、本発明の文脈では、特に断らない限り、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞を、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞から産生されたアレナウイルスで処理する、単回または繰り返しのプロセスと理解すべきである。したがって、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞に、10%ウシ胎仔血清(FKS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン(1単位/mlペニシリン、100 μg/mlストレプトマイシン、および2 mM L-グルタミン当量)含有DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)などの培養培地を用いなければならない。非感染初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の非感染細胞を、好ましくは、接種工程(工程b)の0~7日前、特に1~7日前に播く。好ましくは、細胞播種に用いられる培養培地を、接種工程の前に、新鮮培養培地と交換する。場合によっては、接種工程(工程b)の1分後、10分後、または100分後に培養培地を抽出してもよく、それから新鮮培養培地と交換してもよい。24時間、48時間、72時間、または96時間のインキュベーション時間後、蓄積した変異アレナウイルスを含有する細胞培養上清を抽出する。この上清の一部を、新しい未感染の初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞に添加する。
【0063】
「核酸」という用語は、本明細書で使用される場合、広くDNAまたはRNAを指し得る。DNAとRNAは、とりわけそれらの核酸塩基に違いがある。DNAではアデニンの相補塩基はチミンであるが、RNAではウラシルである。簡略化のため、本明細書全体で、アデニンに対応する塩基を「t」とし、これは文脈に応じてチミン(DNAの場合)またはウラシル(RNAの場合)を指すことができる。
【0064】
「~をコードしている」または「~をコードする」という用語は、本明細書で核酸の文脈で使用される場合、その核酸にコードされる特定のアミノ酸配列へと翻訳され得る配列を有する核酸に関する。核酸配列は、コード鎖の配列を包含し得、かつコード鎖に対して相補的な鎖の配列も包含し得る。
【0065】
本明細書に開示される配列に関する「配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントが取得できるように必要に応じて配列を揃えたりギャップを導入したりした後の、かつ保存的置換を配列同一性の一部とはみなさない、候補配列のアミノ酸残基またはヌクレオチドが、参照配列のアミノ酸残基またはヌクレオチドと対として同一であるパーセンテージ、と定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定するためのアラインメントは、当技術分野におけるあらゆる方法、たとえばBLAST、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの一般公開されているコンピューターソフトウェアを用いて、実現することができる。当業者であれば、比較する配列の全長にわたり最大限のアラインメントを実現するのに必要な任意のアルゴリズムを含め、アラインメント測定用の適切なパラメーターを決定することができる。このことは、本明細書に開示されるヌクレオチド配列にも当てはまる。配列同一性の決定にあたり、ウラシル(たとえばRNAの場合)は、チミン(たとえばDNAの場合)と同じと考えてよい。
【0066】
本発明はまた、アレナウイルスに感染させた初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞の継代によって、抗腫瘍特性のあるアレナウイルス、具体的には用いられたアレナウイルスと比べて改善された抗腫瘍特性のあるアレナウイルスを生産することができる、という驚くべき知見に基づく。そのようなアレナウイルスの生産は、通常は野生型アレナウイルスである元のアレナウイルスは、初代腫瘍細胞または細胞株H1975の細胞において増殖しづらいという事実に基づく。細胞株C643およびTramp-C2でも、等しく限られた増殖が観察されている。この限られた増殖は、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞における感染および複製の際、アレナウイルスの増加した選択圧または適応圧を誘発する。初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞において増殖できた、ランダムに生じたウイルス変異体は、通常は野生型アレナウイルスである元のアレナウイルスを駆逐する。継代、特に反復継代(工程シーケンス(a)~(d)を複数回反復すること)により、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞に対して相対的に抗腫瘍効果のある、あるいは元のアレナウイルスと比べて改善された抗腫瘍特性を有するアレナウイルスが、好ましくも富化する結果になる。アレナウイルス変異体の抗腫瘍効果は、それが細胞をより感染させることができ、そして細胞内でより複製できるという事実に基づく。こうすれば、アレナウイルス変異体は、用いられる細胞において、元のアレナウイルスと比べてもっと成功裏に伝播することができ、また特に、増強された免疫活性化を促進することができる。多くの腫瘍細胞は抗ウイルス因子を特に持たず、そのため限られたウイルス耐性しか示さないので、本発明の方法は、抗腫瘍アレナウイルスの生産のみならず、腫瘍特異的アレナウイルスの生産にも、すなわち抗腫瘍および腫瘍特異的アレナウイルスの生産にも特に有利であり得る。
【0067】
初代腫瘍細胞、ならびに細胞株H1975、C643、およびTramp-C2の細胞は、驚くべきことに、アレナウイルスのわずかな複製しか許容せず、継代する過程でアレナウイルスの特に高い選択圧または適応強制を誘発する細胞であることが、本発明者らによって突き止められた。
【0068】
本発明のある態様では、工程(a)を実施する前に、初代腫瘍細胞は多くて1000回、特に多くて100回、好ましくは多くて10回継代される。「継代する」という用語は、この文脈では、細胞培養液に細胞を希釈すること、したがって、細胞を懸濁液に取り込み、一部の細胞(たとえば50%、10%、または1%)を新栄養培地に播くこと、と理解されたい。工程(a)の前に初代腫瘍細胞が継代される回数が少ないほど、細胞は患者の腫瘍細胞の特性により対応していることになる。具体的には、個々の初代腫瘍細胞間の形態、RNA発現パターン、タンパク質発現、およびDNA配列の大きな差(不均一性)が、腫瘍細胞をインビボで位置づける。それによって有利な方法でアレナウイルスを生産することができ、それは、それぞれの腫瘍患者の、特にその患者群の治療処置に特に好適である。
【0069】
具体的には、初代腫瘍細胞は、工程(a)の前に、継代に供さなくてもよい。換言すると、工程(a)を未継代で実施する、すなわち、継代していない初代腫瘍細胞を用いてもよい。そうすることで、元のアレナウイルスまたは抽出した細胞培養上清もしくはその一部に含有されるアレナウイルスを、患者の腫瘍細胞を代表する細胞に特に良好に適応させる。そうすれば、それぞれの腫瘍患者、特にその患者群の治療処置に特に適したアレナウイルスを作製することが可能になる。
【0070】
もう何度も継代した細胞株H1975、C643、およびTramp-C2の細胞も、インビトロで何年も継代したにもかかわらず、等しく好適な細胞であることが、本発明者らによって突き止められた。
【0071】
本発明のさらなる態様では、工程(c)を1時間~1000時間、特に3時間~300時間、好ましくは12時間~96時間の時間にわたり実施する。この段落に開示される時間は、接種した初代腫瘍細胞または接種した細胞株H1975、C643、またはTramp-C2の細胞の、元のアレナウイルスまたは抽出した細胞培養上清もしくはその一部に含有されるアレナウイルスとの高効率のインキュベーションに、ひいては感染に、特に有益であることが示された。
【0072】
本発明のさらなる態様では、工程(b)および/または工程(c)を、温度4℃~50℃、特に20℃~42℃、好ましくは34℃~39℃で実施する。この段落に開示される温度範囲は、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞に、元のアレナウイルスまたは抽出した細胞培養上清もしくはその一部に含有されるアレナウイルスを、高効率で接種すること、および/またはそれとインキュベーションすること(ひいては感染)に特に有利であることが見出された。
【0073】
本発明のさらなる態様では、工程(a)および/または工程(b)および/または工程(c)および/または工程(d)を、好ましくはRPMI-1640(Roswell Park Memorial Institute)、DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)、およびIMDM(イスコフ変法ダルベッコ培地)からなる群より選択される栄養培地で実施する。栄養培地は、ウシ胎仔血清および/もしくはヒト血清などの血清(0.1~20%)、ならびに/またはグルタミン酸および/もしくはグルタミンなどのアミノ酸、ならびに/または抗生物質を追加で含有し得る。培養培地は、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞の培養を可能にする。具体的には、培養培地は初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞の成長および/または細胞分裂に特にメリットを与える。この段落で言及した培養培地は、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞の培養に特に好適である。
【0074】
本発明のさらなる態様では、工程(a)および/または工程(b)および/または工程(c)を、0%~20%、特に0.1%~20%、好ましくは2%~10%、より好ましくは4%~6%の二酸化炭素雰囲気(CO2雰囲気)下で実施する。それによって、工程(a)および/または工程(b)および/または工程(c)に用いられる栄養培地のpHが一定に保たれる。これにより、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞の播種、および/あるいは元のアレナウイルス、抽出した細胞培養上清またはその一部に含有されるアレナウイルスそれぞれの接種、および/あるいはそれとのインキュベーション(ひいては感染)が、高効率になる。
【0075】
好ましくは、工程(a)および/または工程(b)および/または工程(c)をインキュベーター内で実施し、それによって初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞の成長および/または細胞分裂の制御下の外部条件を設けることができる。
【0076】
本発明のさらなる態様では、工程シーケンス(a)~(d)を、3回~1000回、特に10回~100回、好ましくは20回~50回反復する。特にこの段落に開示されるような、工程シーケンス(a)~(d)の複数回の反復は、抗腫瘍特性に関する有益な変異、特に点変異の発生、ひいては抗腫瘍アレナウイルスの産生に鑑み、特に有益であることを示した。
【0077】
本発明のさらなる態様では、工程(b)を実施する前に、栄養培地を新鮮または新栄養培地と交換する。この工程により、感染条件を有利に標準化することができる。
【0078】
本発明のさらなる態様では、工程(b)の後0.1分~600分、特に1分~30分、好ましくは5分~15分の時間内に、培養培地を新鮮または新培養培地と交換する。感染の時間が限られるので、この工程は感染の選択圧を有利に増加させる。
【0079】
本発明のさらなる態様では、栄養培地交換を複数回実施する。たとえば、工程(b)の前に、栄養培地を新鮮または新栄養培地と交換することができ、後者を工程(b)の実施後0.1分~600分、特に1分~30分、好ましくは5分~15分の時間内に新鮮または新栄養培地と交換することができる。
【0080】
本発明のさらなる態様では、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞、ならびに/あるいは元のアレナウイルスおよび/または抽出した細胞培養上清もしくはその一部に含有されるアレナウイルスを、工程(d)を実施する前、特に工程(c)を実施する前、特に工程(b)を実施する前、特に工程(a)を実施する前に、少なくとも1つの化学療法剤で処理する。そうすることで、化学療法剤で処理済みの腫瘍細胞をシミュレートすることができる。このことは、すでに化学療法で治療されている、かつ/またはすでにあらゆる治療オプションを受けたと考えられる腫瘍患者の治療に特に適したアレナウイルスの生産を有利に可能にする。
【0081】
本発明のさらなる態様では、元のアレナウイルスおよび/または抽出した細胞培養上清もしくはその一部に含有されるアレナウイルスを、工程(b)を実施する前に、少なくとも1つの化学療法剤で処理する。そうすることで、アレナウイルスの自然変異率を有利に増加させることができ、したがってその初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞への適応を加速することができる。
【0082】
少なくとも1つの化学療法剤は、特に、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗代謝剤、抗生物質、キナーゼ阻害剤、サリドマイド誘導体、細胞アポトーシス誘導剤、生物学的細胞分裂阻害剤などの生物学的治療剤、同位体含有化合物、ホルモン類、ホルモンアンタゴニスト、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、およびほかの細胞分裂阻害剤からなる群より選択され得る。
【0083】
アルキル化剤は、オキサザホスホリン、N-ロスト誘導体、アルキルスルホナート、ヒドラジン、白金含有物質、アントラサイクリン、および上記のアルキル化剤の少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。
【0084】
オキサザホスホリンは、たとえば、シクロホスファミド、イホスファミド、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0085】
N-ロスト誘導体は、クロランブシル、メルファラン、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0086】
アルキルスルホナートは、たとえばフスルファン(husulfan)であり得る。
【0087】
ヒドラジンは、たとえば、テモゾロミド、ダカルバジン、プロカルバジン、および上記のヒドラジンの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。
【0088】
白金含有物質は、たとえば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、および該白金含有物質の少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。
【0089】
アントラサイクリンは、たとえば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、エリルビシン(elirubicin)、および該アントラサイクリンの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。
【0090】
上述のトポイソメラーゼ阻害剤は、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤(エトポシド)、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0091】
たとえば、トポイソメラーゼI阻害剤は、イリノテカン、トポテカン、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0092】
トポイソメラーゼII阻害剤は、たとえばエトポシドであり得る。
【0093】
上述の有糸分裂阻害剤または抗代謝剤は、ビンカアルカロイド、タキサン、葉酸アンタゴニスト、ピリミジンアンタゴニスト、プリンアンタゴニスト、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤、および上述の有糸分裂阻害剤または抗代謝剤の少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。
【0094】
たとえば、ビンカアルカロイドは、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0095】
タキサンは、ドセタキセル、パクリタキセル、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0096】
たとえば、葉酸アンタゴニストは、メトトレキサート、ペメトレキセド、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0097】
ピリミジンアンタゴニストは、たとえば、シタラビン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン、カペシタビン、および該ピリミジンアンタゴニストの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。
【0098】
プリンアンタゴニストは、たとえば、5-アザシチジン、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、フルダラビン、および該プリンアンタゴニストの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。
【0099】
たとえば、リボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤はヒドロキシ尿素であり得る。
【0100】
上記の抗生物質は、ブレオマイシン、アクチノマイシンD、マイトマイシン、および上記の抗生物質の少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。
【0101】
上述のキナーゼ阻害剤は、アファチニブ、アレクチニブ、アキシチニブ、クリゾチニブ、コビメチニブ、ダサチニブ、ダブラフェニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、イキサゾミブ、レンバチニブ、ニロチニブ、オシメルチニブ、パルボシクリブ、パゾパニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、スニチニブ、ベムラフェニブ、トラメチニブ、エベロリムス、および該キナーゼ阻害剤の少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。
【0102】
上述のサリドマイド誘導体は、レナリドミド、ポマリドミド、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0103】
上述の細胞アポトーシス誘導剤は、メトキサール、ベネトクラクス、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0104】
上述の生物学的治療剤は、リツキシマブ、トラスツズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、イピリムマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、ニボルマブ、オララツマブ、ラムシルマブ、および上述の生物学的治療剤の少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。
【0105】
上述のホルモン類および/またはホルモンアンタゴニストは、ブセレリン、ゴセレリン、リュープロレリン、トリプトレリン、エストラムスチン(estramustin)、タモキシフェン、アロマターゼ阻害剤たとえばアナストロゾール、抗アンドロゲンたとえばエンザルタミド、フルタミド、ビカルタミド、プロゲスチン、たとえばメゲストロールアセタートおよびメドロキシプロゲステロンアセタート、グルココルチコイド、ならびに前記のホルモン類および/またはホルモンアンタゴニストの少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。
【0106】
上述のほかの細胞分裂阻害剤は、ベキサロテン、アファチニブ、クリゾチニブエルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、ダサチニブ、イマチニブ、ニロチニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、ソニデギブ、ヒドロキシカルバミド、トラメチニブ、トレチノイン、イソトレチノイン、アリトレチノイン、MAOP(5-アミノ-4-オキソペンタン酸メチルエステル)、およびこうしたほかの細胞分裂阻害剤の少なくとも2つの混合物からなる群より選択され得る。
【0107】
さらに、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞ならびに/あるいは元のアレナウイルスおよび/または抽出した細胞培養上清もしくはその一部に含有されるアレナウイルスを、工程(d)を実施する前、特に工程(c)を実施する前、特に工程(b)を実施する前、特に工程(a)を実施する前に、特に紫外(UV)線、特にUVA線および/またはUVB線、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、ならびにX線からなる群より選択される放射線で処理する場合がある。そうすることで、すでに治療放射線を受けた腫瘍細胞を有利にシミュレートすることができる。このことは、すでに放射線療法で治療されている腫瘍患者の治療に特に用いられ得るアレナウイルスの生産を有利に可能にする。
【0108】
さらに、元のアレナウイルスおよび/または抽出した細胞培養上清もしくはその一部に含有されるアレナウイルスを、工程(b)を実施する前に、特に紫外(UV)線、特にUVA線および/またはUVB線、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、ならびにX線からなる群より選択される放射線で処理する場合がある。そうすることで、アレナウイルスの自然変異率を、したがってその初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞への適応を有利に増加させることができる。
【0109】
本発明の別の態様では、少なくとも1つの化学療法剤に耐性がある初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞が用いられる。たとえば、パクリタキセルおよび/またはトラメチニブに耐性がある初代腫瘍細胞が用いられ得る。そうすることで、腫瘍治療の間、少なくとも1つの化学療法剤に耐性がある患者の腫瘍細胞を有利にシミュレートすることができる。この段落に記載される本発明の態様は、したがって、強力な抗腫瘍アレナウイルスを生産するさらなる可能性を示している。
【0110】
本発明のさらなる態様では、初代腫瘍細胞または細胞株H1975、C643、もしくはTramp-C2の細胞、ならびに/あるいは元のアレナウイルスおよび/または抽出した細胞培養上清もしくはその一部に含有されるアレナウイルスを、工程(d)を実施する前、特に工程(c)を実施する前、特に工程(b)を実施する前、特に工程(a)を実施する前に、少なくとも1つの抗ウイルス化合物で、特にアルファ-インターフェロンおよび/またはガンマ-インターフェロンで処理する。そうすることで、元のアレナウイルスまたは抽出した細胞培養上清もしくはその一部に含有されるアレナウイルスを抗ウイルス環境に有利に適応させることができ、そうすることで同時に耐性を示す抗腫瘍アレナウイルスを生産することができる。そのようなアレナウイルスは、ウイルス耐性を示し得る腫瘍組織との闘いに用いることもできるので、治療の観点から特に有効である。
【0111】
さらに、方法は、抽出した細胞培養上清またはその一部から、クローン化および/またはPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)および/またはシーケンシングにより、抗腫瘍アレナウイルス、具体的には元のアレナウイルスに対して相対的に改善された抗腫瘍特性を有するアレナウイルスを単離する、かつ/あるいは同定する、さらなる工程(e)を含み得る。
【0112】
好ましく使用される初代腫瘍細胞は、初代悪性腫瘍細胞、特に初代癌腫細胞、初代黒色腫細胞、初代芽細胞腫細胞、初代リンパ腫細胞、または初代肉腫細胞である。
【0113】
本発明のさらなる態様では、初代腫瘍細胞は、初代脈絡膜黒色腫細胞、初代肛門癌細胞、初代血管肉腫細胞、初代星状細胞腫細胞、初代基底細胞癌細胞、初代子宮頸癌細胞、初代軟骨肉腫細胞、初代絨毛癌細胞、初代皮膚扁平上皮癌細胞、初代小腸癌細胞、初代子宮内膜癌細胞、初代ユーイング肉腫細胞、初代線維肉腫細胞、初代胆嚢癌細胞、初代胆管癌細胞、初代グリオブラストーマ細胞、初代膀胱癌細胞、初代尿管癌細胞、初代尿道癌細胞、初代肝細胞癌細胞、初代精巣腫瘍細胞、初代下咽頭癌細胞、初代下垂体癌細胞、初代カポジ肉腫細胞、初代小細胞気管支癌細胞、初代結腸癌細胞、初代結腸直腸癌細胞、初代喉頭癌細胞、初代平滑筋肉腫細胞、初代脂肪肉腫細胞、初代胃癌細胞、初代悪性線維性組織球腫細胞、初代乳癌細胞、初代髄芽腫細胞、初代黒色腫細胞、初代口腔底癌細胞、初代副鼻腔癌細胞、初代上咽頭癌細胞、初代副腎皮質癌細胞、初代副甲状腺癌細胞、初代神経原性肉腫細胞、初代非小細胞気管支癌細胞、初代腎癌細胞、初代中咽頭癌細胞、初代骨肉腫細胞、初代卵巣癌細胞、初代膵臓腫瘍細胞、初代陰茎癌細胞、初代褐色細胞腫細胞、初代胸膜中皮腫細胞、初代前立腺癌細胞、初代直腸癌細胞、初代網膜芽細胞腫細胞、初代横紋筋肉腫細胞、初代甲状腺癌細胞、初代唾液腺癌細胞、初代食道癌細胞、初代扁桃腺癌細胞、初代膣癌細胞、初代外陰癌細胞、初代ウィルムス腫瘍細胞、神経内分泌腫瘍の初代細胞、または初代舌癌細胞である。
【0114】
特に好ましいのは、初代黒色腫細胞、初代肺癌細胞、初代膵癌細胞、初代結腸癌細胞、初代胃癌細胞、初代咽頭癌細胞、初代喉頭癌細胞、初代腎細胞癌細胞が、初代腫瘍細胞として特に好ましく、初代卵巣癌細胞、初代子宮内膜癌細胞、初代甲状腺癌細胞、初代前立腺癌細胞、初代肝臓癌細胞、または初代肉腫細胞、たとえば初代神経原性肉腫細胞、初代骨肉腫細胞、もしくは初代横紋筋肉腫細胞である。
【0115】
本発明のさらなる態様では、野生型アレナウイルス、すなわちいわゆる野生型アレナウイルスが、元のアレナウイルスとして用いられる。
【0116】
本発明のさらなる態様では、旧世界アレナウイルスが、元のアレナウイルスとして用いられる。旧世界アレナウイルスは、好ましくは、カタリナウイルス、Danfenongウイルス、Ippyウイルス(IP-PYV)、Kodokoウイルス、ラッサウイルス(LASV)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、Morogoroウイルス、Mobalaウイルス(MOBV)、Gairoウイルスおよびモペイアウイルス(MOPV)、Pinhalウイルス、Skinner Tankウイルスからなる群より選択される。
【0117】
元のアレナウイルスとしては、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、特に野生型のリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスが好ましい。たとえば、元のアレナウイルスとして、特にWE、Armstrong、クローン13(クローン13)、およびDocileからなる群より選択される系統のリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスを用いることができる。
【0118】
特に好ましいのは、野生型リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、すなわちSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるLタンパク質、および/またはSEQ ID NO: 8の核酸配列に対して相補的な核酸配列、特にリボ核酸配列、好ましくはL-リボ核酸配列を含むか、またはそれからなる核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸を含む野生型リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスである。
【0119】
さらに、元のアレナウイルスとして新世界アレナウイルスを用いることができる。新世界アレナウイルスは、好ましくは、Allpahuayoウイルス(ALLV)、アマパリウイルス(AMAV)、BearCanyonウイルス(BCNV)、チャパレウイルス、Cupixiウイルス(CPXV)、Flexalウイルス(FLEV)、グアナリトウイルス(GTOV)、フニンウイルス(JUNV)、Candid #1(Candid No.1).)、Latinoウイルス(LATV)、マチュポウイルス(MACV)、Oliverosウイルス(OLVV)、Paranaウイルス(PARV)、ピチンデウイルス(PICV)、Piritalウイルス(PIRV)、サビアウイルス(SABV)、Tacaribeウイルス(TCRV)、Tamiamiウイルス(TAMV)、およびホワイトウォーターアロヨウイルス(WWAV)からなる群より選択される。
【0120】
さらに、抗腫瘍特性のないアレナウイルスを元のアレナウイルスとして用いることができる。
【0121】
あるいは、抗腫瘍特性のある元のアレナウイルスを用いることができる。
【0122】
第2の局面では、本発明は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体、すなわち変異体のリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスに関する。
【0123】
リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体は、タンパク質またはペプチド、特に糖タンパク質を含む。タンパク質またはペプチドは、変異、特に点変異を含む。変異、特に点変異は、好ましくは配列AJ297484、AJ233196、および参照配列LCMV、(系統WE-Essen)とは異なる。
【0124】
好ましくは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体は、少なくとも1つの変異を有する糖タンパク質、特に糖タンパク質のタンパク質構成要素またはタンパク質部分を有し、該少なくとも1つの変異は、糖タンパク質の位置181のイソロイシンの、別のアミノ酸での、好ましくはメチオニンでのアミノ酸置換であり、かつ/または糖タンパク質の位置185のアルギニンの、別のアミノ酸での、好ましくはトリプトファンでのアミノ酸置換である。
【0125】
あるいは、または併せて、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体は、少なくとも1つの変異を有するLタンパク質を好ましくは含み、該少なくとも1つの変異は、Lタンパク質の位置1513のリジンの、別のアミノ酸での、好ましくはグルタミン酸でのアミノ酸置換であり、かつ/またはLタンパク質の位置1995のフェニルアラニンの、別のアミノ酸での、好ましくはセリンでのアミノ酸置換であり、かつ/またはLタンパク質の位置2094のイソロイシンの、別のアミノ酸での、好ましくはバリンでのアミノ酸置換であり、かつ/またはLタンパク質の位置2141のスレオニンの、別のアミノ酸での、好ましくはアラニンでのアミノ酸置換であり、かつ/またはLタンパク質の位置2175のアルギニンの、別のアミノ酸での、好ましくはリジンでのアミノ酸置換である。
【0126】
あるいは、または併せて、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体は、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 34、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 58、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 32、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 48、SEQ ID NO: 56、およびSEQ ID NO: 64のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、タンパク質またはペプチド、特に糖タンパク質、特に糖タンパク質のタンパク質構成要素もしくはタンパク質部分、またはLタンパク質を好ましくは含む。SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 34、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 50、およびSEQ ID NO: 58のアミノ酸配列は、好ましくはリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体の糖タンパク質のアミノ酸配列である。SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 32、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 48、SEQ ID NO: 56、およびSEQ ID NO: 64のアミノ酸配列は、好ましくはリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体のLタンパク質のアミノ酸配列である。
【0127】
あるいは、または併せて、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体は、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 34、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 58、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 32、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 48、SEQ ID NO: 56、またはSEQ ID NO: 64のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、タンパク質またはペプチド、特に糖タンパク質またはLタンパク質をコードする、核酸、特にリボ核酸を好ましくは含む。
【0128】
あるいは、または併せて、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体は、SEQ ID NO.2、SEQ ID NO.4、SEQ ID NO.6、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 33、SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 49、SEQ ID NO: 57、SEQ ID NO: 23、SEQ ID NO: 31、SEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 55、またはSEQ ID NO: 63の核酸配列に対して相補的な核酸配列、特にリボ核酸配列を含むか、または該核酸配列、特にリボ核酸配列からなる、核酸、特にリボ核酸を好ましくは含む。
【0129】
驚くべきことに、これまでの段落に記載されるリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスのそれぞれの変異体は、特に野生型のリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスに対して相対的に、初代腫瘍細胞または細胞株H1975の細胞における改善された複製能、ならびに抗腫瘍特性または改善された抗腫瘍特性を有することが見出された。
【0130】
さらに、糖タンパク質の位置181のイソロイシンのコドンが、別のコドン、好ましくはメチオニンのコドンで置換されることが好ましい。
【0131】
さらに、糖タンパク質の位置185のアルギニンのコドンが、別のコドン、好ましくはトリプトファンのコドンで置換されることが好ましい。
【0132】
さらに、糖タンパク質の位置155のヒスチジンのコドンが、別のコドン、好ましくはチロシンのコドンで置換されることが好ましい。
【0133】
さらに、糖タンパク質の位置358のアルギニンのコドンが、別のコドン、好ましくはリジンのコドンで置換されることが好ましい。
【0134】
さらに、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体が、変異を含む核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸を含むことも好ましく、該変異は、核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸の位置4537のアデニンの、グアニンでのヌクレオチド置換である。
【0135】
さらに、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体が、変異を含むLタンパク質をコードする核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸を含むことが好ましく、該変異は、Lタンパク質の位置1513のリジンの、別のアミノ酸での、好ましくはグルタミン酸でのアミノ酸置換である。
【0136】
さらに、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体が、変異を含むLタンパク質をコードする核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸を含むことが好ましく、該変異は、Lタンパク質の位置1995のフェニルアラニンの、別のアミノ酸での、好ましくはセリンでのアミノ酸置換である。
【0137】
さらに、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体が、変異を含む核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸を含むことも好ましく、該変異は、核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸の位置5984のチミンの、好ましくはヌクレオチドシトシンでのヌクレオチド置換である。
【0138】
さらに、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体が、変異を含むLタンパク質をコードする核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸を含むことも好ましく、該変異は、Lタンパク質の位置2094のイソロイシンの、別のアミノ酸での、好ましくはバリンでのアミノ酸置換である。
【0139】
さらに、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体が、変異を含む核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸を含むことが好ましく、該変異は、核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸のヌクレオチド位置6280のアデニンの、別のヌクレオチドでの、好ましくはグアニンでのヌクレオチド置換である。
【0140】
さらに、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体が、変異を含むLタンパク質をコードする核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸を含むことが好ましく、該変異は、Lタンパク質の位置2141のスレオニンの、別のアミノ酸での、好ましくはアラニンでのアミノ酸置換である。
【0141】
さらに、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体が、変異を含む核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸を含むことも好ましく、該変異は、核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸の位置6421のアデニンの、好ましくは別のヌクレオチドでの、好ましくはグアニンでのヌクレオチド置換である。
【0142】
さらに、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体が、変異を含むLタンパク質をコードする核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸を含むことも好ましく、該変異は、Lタンパク質の位置2175のアルギニンの、好ましくはリジンでのアミノ酸置換である。
【0143】
さらに、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体が、変異を含む核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸を含むことも好ましく、該変異は、核酸、特にリボ核酸、好ましくはL-リボ核酸の位置6524のグアニンの、ヌクレオチドアデニンでのヌクレオチド置換である。
【0144】
本発明の別の態様では、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体は、医薬において適用または使用される、本開示の任意のリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体を含めた、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体である。
【0145】
好ましくは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体は、腫瘍の治療および/または予防に適用または使用されるリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体である。
【0146】
腫瘍は、好ましくは、癌腫、黒色腫、芽細胞腫、リンパ腫、および肉腫からなる群より選択される。
【0147】
「癌腫」という用語は、本発明の文脈では、上皮由来の悪性腫瘍形成を意味すると理解すべきである。
【0148】
「肉腫」という用語は、本発明の文脈では、中胚葉由来の悪性腫瘍形成を意味すると理解すべきである。
【0149】
「黒色腫」という用語は、本発明の文脈では、メラニン細胞由来の悪性腫瘍形成を意味すると理解すべきである。
【0150】
「リンパ腫」という用語は、本発明の文脈では、リンパ球由来の悪性腫瘍形成を意味すると理解すべきである。
【0151】
「芽細胞腫」という用語は、本発明の文脈では、胚由来の悪性腫瘍形成を意味すると理解すべきである。
【0152】
癌腫は、好ましくは、肛門癌、気管支癌、肺癌、子宮内膜癌、胆嚢癌、膀胱癌、肝細胞癌、睾丸癌、結腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、喉頭癌、食道癌、胃癌、乳癌、腎癌、卵巣癌、膵癌、咽頭癌、中咽頭癌、前立腺癌、甲状腺癌、および子宮頸癌からなる群より選択される。
【0153】
肉腫は、血管肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、悪性線維性組織球腫、神経原性肉腫、骨肉腫、および横紋筋肉腫からなる群より選択され得る。
【0154】
さらに、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体は、局所、特に筋肉内、腹腔内、または皮下投与用に調製することができ、または用いることができる。
【0155】
あるいは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体は、全身、特に静脈内投与用に調製することができ、または用いることができる。
【0156】
リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体のさらなる特徴および利益については、以上および以下の記載をすべて参照する。
【0157】
第3の局面では、本発明は、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 34、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 58、SEQ ID NO: 66、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 32、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 48、SEQ ID NO: 56、またはSEQ ID NO: 64のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなるタンパク質またはペプチド、特に糖タンパク質またはLタンパク質を含むか、またはそれからなる、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体に関する。
【0158】
あるいは、または併せて、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体は、核酸、特にリボ核酸を含み、該核酸、特にリボ核酸は、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 33、SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 49、SEQ ID NO: 57、SEQ ID NO: 65、SEQ ID NO: 23、SEQ ID NO: 31、SEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 55、またはSEQ ID NO: 63の核酸配列であるかまたはそれに対して相補的な、核酸配列、特にリボ核酸配列を含むか、核酸配列、特にリボ核酸配列からなる。
【0159】
好ましくは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体は、医薬において適用または使用されるリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体である。
【0160】
リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体は、特に好ましくは、腫瘍の治療および/または予防に使用または適用されるリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体である。
【0161】
腫瘍は、好ましくは、癌腫、黒色腫、芽細胞腫、リンパ腫、および肉腫からなる群より選択される。
【0162】
「癌腫」という用語は、本発明の文脈では、上皮由来の悪性腫瘍形成を意味すると理解すべきである。
【0163】
「肉腫」という用語は、本発明の文脈では、中胚葉由来の悪性腫瘍形成を意味すると理解すべきである。
【0164】
「黒色腫」という用語は、本発明の文脈では、メラニン細胞由来の悪性腫瘍形成を意味すると理解すべきである。
【0165】
「リンパ腫」という用語は、本発明の文脈では、リンパ球由来の悪性腫瘍形成を意味すると理解すべきである。
【0166】
「芽細胞腫」という用語は、本発明の文脈では、胚由来の悪性腫瘍形成を意味すると理解すべきである。
【0167】
癌腫は、好ましくは、肛門癌、気管支癌、肺癌、子宮内膜癌、胆嚢癌、膀胱癌、肝細胞癌、睾丸癌、結腸癌、結腸直腸癌、直腸癌、喉頭癌、食道癌、胃癌、乳癌、腎癌、卵巣癌、膵癌、咽頭癌、中咽頭癌、前立腺癌、甲状腺癌、および子宮頸癌からなる群より選択される。
【0168】
肉腫は、血管肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、悪性線維性組織球腫、神経原性肉腫、骨肉腫、および横紋筋肉腫からなる群より選択され得る。
【0169】
さらに、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体が、局所、特に筋肉内、腹腔内、または皮下投与用に調製され得るか用いられ得る。
【0170】
あるいは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体が、全身、特に静脈内投与用に調製され得るか用いられ得る。
【0171】
リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体のほかの特徴および利点に関し、反復を避けるために、前述の記載もすべて、特に本発明の第2の局面の文脈での記述を参照する。そこに記載される特徴および利点は、特にリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体、タンパク質またはペプチド、特に糖タンパク質、および核酸、特にリボ核酸に関し、必要に応じて変更を加えて、本発明の第3の局面のリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体にも当てはまる。
【0172】
第4の局面では、本発明は、本発明の第2または第3の局面のリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体を含む薬物または薬剤に関する。
【0173】
薬物または薬剤は、PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)などのチェックポイントブロッカー、および/またはアポトーシス調整剤、特にアポトーシス阻害剤、たとえばSMAC模倣薬(LCL-161)をさらに含み得る。
【0174】
薬物または薬剤は、好ましくは、薬学的に許容される担体をさらに含む。担体は、水、生理食塩水溶液、緩衝水溶液、細胞培養培地、およびこうした担体の少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0175】
薬物または薬剤のさらなる特徴および利点に関し、反復を避けるために、前述の記載をすべて、特に本発明の第2および第3の局面の文脈での記述を参照する。そこに記載される特徴および利点は、特にリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体に関し、必要に応じて変更を加えて、本発明の第4の局面で言及した薬物または薬剤にも当てはまる。
【0176】
第5の局面では、本発明は、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 34、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 58、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 32、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 48、SEQ ID NO: 56、またはSEQ ID NO: 64のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、好ましくは単離タンパク質またはペプチド、特に糖タンパク質またはLタンパク質である、タンパク質またはペプチドに関する。本発明はまた、SEQ ID NO: 1、SEQ ID NO: 3、SEQ ID NO: 5、SEQ ID NO: 7、SEQ ID NO: 10、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 34、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 58、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 32、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 48、SEQ ID NO: 56、またはSEQ ID NO: 64と、少なくとも少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有する、単離タンパク質またはペプチドに関する。
【0177】
SEQ ID NO: 1およびSEQ ID NO: 3のアミノ酸配列は、好ましくはリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体の糖タンパク質の、特に糖タンパク質のタンパク質構成要素またはタンパク質部分のアミノ酸配列である。SEQ ID NO: 5のアミノ酸配列は、好ましくはリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体のLタンパク質のアミノ酸配列である。SEQ ID NO: 7のアミノ酸配列は、好ましくは野生型リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスのLタンパク質のアミノ酸配列である。
【0178】
本発明はまた、SEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 28、SEQ ID NO: 36、SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 52、SEQ ID NO: 60、SEQ ID NO: 14、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 30、SEQ ID NO: 38、SEQ ID NO: 46、SEQ ID NO: 54、またはSEQ ID NO: 62のアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる、好ましくは単離タンパク質またはペプチド、特に核タンパク質またはZタンパク質である、タンパク質またはペプチドに関する。本発明はまた、SEQ ID NO: 12、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 28、SEQ ID NO: 36、SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 52、SEQ ID NO: 60、SEQ ID NO: 14、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 30、SEQ ID NO: 38、SEQ ID NO: 46、SEQ ID NO: 54、またはSEQ ID NO: 62と、少なくとも少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有する単離タンパク質またはペプチドに関する。
【0179】
タンパク質またはペプチドのほかの特徴および利点に関し、反復を避けるために、前述の記載もすべて、特に本発明の第2および第3の局面での記述を参照する。そこに記載される利点および特徴は、特にタンパク質またはペプチド、特に糖タンパク質に関し、必要に応じて変更を加えて、本発明の第5の局面の単離タンパク質またはペプチドにも当てはまる。
【0180】
第6の局面では、本発明は、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 33、SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 49、SEQ ID NO: 57、SEQ ID NO: 23、SEQ ID NO: 31、SEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 55、またはSEQ ID NO: 63のまたはその相補的な核酸配列、特にリボ核酸配列を含むか、またはそれからなる、好ましくは単離核酸、特にリボ核酸である核酸に関する。本発明はまた、SEQ ID NO: 2、SEQ ID NO: 4、SEQ ID NO: 6、SEQ ID NO: 8、SEQ ID NO: 9、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 33、SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 49、SEQ ID NO: 57、SEQ ID NO: 23、SEQ ID NO: 31、SEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 55、またはSEQ ID NO: 63の配列もしくはそれぞれの相補配列と、少なくとも少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、好ましくは少なくとも約99.5%、好ましくは少なくとも約99.6%、好ましくは少なくとも約99.7%の配列同一性を有する、単離タンパク質またはペプチドに関する。
【0181】
本発明はまた、SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 27、SEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 59、SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 29、SEQ ID NO: 37、SEQ ID NO: 45、SEQ ID NO: 53、またはSEQ ID NO: 61のまたはその相補的な核酸配列、特にリボ核酸配列を含むか、またはそれからなる、好ましくは単離核酸、特にリボ核酸である核酸に関する。本発明はまた、好ましくは少なくとも SEQ ID NO: 11、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 27、SEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 59、SEQ ID NO: 13、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 29、SEQ ID NO: 37、SEQ ID NO: 45、SEQ ID NO: 53、もしくはSEQ ID NO: 61またはそれぞれの相補配列を少なくとも少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約96%、好ましくは少なくとも約97%、好ましくは少なくとも約98%、好ましくは少なくとも約99%、好ましくは少なくとも約99.1%、好ましくは少なくとも約99.2%、好ましくは少なくとも約99.3%、好ましくは少なくとも約99.4%、有する単離タンパク質またはペプチドに関する。
【0182】
SEQ ID NO: 2およびSEQ ID NO: 4の核酸配列はそれぞれ、好ましくは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体の糖タンパク質、特に糖タンパク質のタンパク質構成要素またはタンパク質部分をコードする。
【0183】
SEQ ID NO: 6の核酸配列は、好ましくは、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス変異体のLタンパク質をコードする。
【0184】
SEQ ID NO: 8の核酸配列は、好ましくは、野生型リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスのLタンパク質をコードする。
【0185】
単離核酸のさらなる特徴および利点に関し、反復を避けるために、前述の記載をすべて、特に本発明の第2および第3の局面の文脈での記述を参照する。そこに記載される特徴および利点は、特に核酸、特にリボ核酸に関し、必要に応じて変更を加えて、本発明の第6の局面の単離核酸にも当てはまる。
【0186】
第7の局面では、本発明は、本発明の第5の局面の少なくとも1つの核酸、特にリボ核酸を含有する単離遺伝子クラスターまたはオペロンに関する。
【0187】
遺伝子クラスターまたはオペロンのさらなる特徴および利点に関し、反復を避けるために、前述の記載もすべて、特に本発明の第6の局面の文脈での記述を参照する。そこに記載される特徴および利点は、特に核酸、特にリボ核酸に関し、必要に応じて変更を加えて、本発明の第7の局面の単離遺伝子クラスターまたはオペロンにも当てはまる。
【0188】
第8の局面では、本発明は、本発明の第6の局面の少なくとも1つの核酸、または本発明の第7の局面の遺伝子クラスターもしくはオペロンを含有する、発現ベクターに関する。
【0189】
発現ベクターのさらなる特徴および利点に関し、反復を避けるために、記載もすべて、特に本発明の第6および第7の局面での記述を参照する。そこに記載される特徴および利点は、特に核酸および遺伝子クラスターまたはオペロンに関し、必要に応じて変更を加えて、本発明の第8の局面の発現ベクターにも当てはまる。
【0190】
第9の局面では、本発明は、本発明の第5の局面のタンパク質またはペプチドを発現または含有する、かつ/あるいは本発明の第6の局面の核酸、特にリボ核酸を含有する、生物、ウイルス、ベクター、またはプラスミドに関する。
【0191】
生物は、宿主細胞、菌、または細菌であり得る。
【0192】
宿主細胞は、たとえば、真核生物または原核生物の細胞であり得る。さらに、宿主細胞は、生物および/またはベクターおよび/またはプラスミドの生産に用いられ得る細胞であり得る。
【0193】
細菌は、たとえば、ワクチンベクターまたは別の治療用細菌であり得る。
【0194】
ウイルスは、たとえば、ワクチンベクターまたは別の治療用ウイルスであり得る。
【0195】
宿主細胞のさらなる特徴および利点に関し、反復を避けるために、記載もすべて、特に本発明の第5および第6の局面での記述を参照する。そこに記載される特徴および利点は、特にタンパク質またはペプチド、特に糖タンパク質、および核酸、特にリボ核酸に関し、必要に応じて変更を加えて、本発明の第9の局面の宿主細胞にも当てはまる。
【0196】
以下の実施例の形態の好ましい態様、対応する図、および請求項の記載から、本発明のさらなる特徴および利点が得られる。以下に記載される態様は、本発明のさらなる記載およびよりよい理解を提供するという意図でしかなく、決して限定的なものと解釈してはならない。
【0197】
本発明はまた、本開示のLCMV、好ましくは本開示のLCMV変異体を含む薬学的組成物に関する。組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含み得る。薬学的組成物は、PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)などのチェックポイントブロッカー、および/またはアポトーシス調整剤、特にアポトーシス阻害剤、たとえばSMAC模倣薬(LCL-161)をさらに含み得る。薬学的組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含み得る。担体は、水、生理食塩水溶液、緩衝水溶液、細胞培養培地、およびこうした担体の少なくとも2つの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0198】
本開示はまた、薬剤製造のための本開示のLCMV、好ましくは本開示のLCMV変異体の使用に関する。薬剤は、腫瘍治療用であり得る。薬剤は、本発明の第4の局面の薬剤であり得る。
【0199】
本開示はまた、腫瘍を治療する方法に関し、それを必要とする対象に、有効量の本開示のLCMV、好ましくは本開示のLCMV変異体、または本開示の薬剤、または本開示の薬学的組成物を投与することを含む。
【0200】
特に明示しない限り、一連の要素の前の「少なくとも」という用語は、その一連の要素の一つひとつを指すものと理解される。当業者であれば、ルーチンの実験を行うだけで、本明細書に記載される本発明の特定の態様の多くの等価物を認識するか、確認することができよう。そのような等価物も本発明に包含されるものとする。
【0201】
「および/または」という用語は、本明細書で用いる場合はいずれも、「および」、「または」、および「その用語が接続する要素のすべてのまたは任意のその他の組み合わせ」を含む。
【0202】
「約」または「およそ」という用語は、本明細書で使用される場合、所与の値または範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。しかし具体的な数も含み、たとえば、約20は20も含む。
【0203】
本明細書および添付の請求項の全体で、特に文脈が否定しない限り、「含む(comprise)」ならびにその変化形の「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」などは、記述されている整数もしくは工程、または整数もしくは工程の群の含有を意味するが、その他の整数もしくは工程、または整数もしくは工程の群の排除を意味するものではない、と理解される。本明細書で使用する場合、「含むこと(comprising)」という用語は、「含有すること(containing)」もしくは「含むこと(including)」という用語と、または時には本明細書で使用する場合「有すること(having)」という用語と置き換えることができる。
【0204】
本明細書で使用する場合、「からなる(consisting of)」は、請求項の要素に明記されていない要素、工程、または成分を排除する。本明細書で使用する場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の基本的および新規の特徴に大きな影響のない材料または工程を排除しない。
【0205】
本明細書の各例では、「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」という用語はどれでも、ほかの2つのどちらと差し替えてもよい。たとえば、「含む」という用語は「から本質的になる」および「からなる」という用語の明示的な支持も提供するものであり、「から本質的になる」という用語は、「含む」および「からなる」の明示的な支持も提供するものであり、「からなる」という用語は「から本質的になる」および「含む」の明示的な支持も提供するものである。
【0206】
本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、材料、試薬、および物質などに制限されないこと、したがって変化し得ることを理解されたい。本明細書で用いられる術語は、特定の態様を説明する目的しかなく、また本発明の範囲を制限するものではなく、該範囲は請求項によってのみ定められる。
【0207】
本明細書の文面を通して引用されるあらゆる公報(特許、特許出願、科学論文、メーカー仕様書、取扱説明書その他をすべて含む)は、その全文が、参照により本明細書に組み入れられる。本明細書では、何ら、本発明が先行発明によりそのような開示に先立つ資格がないと認めるものと解釈されない。参照により組み入れられる資料が本明細書に矛盾するか一致しない場合、そのような資料よりも本明細書が有効である。
【実施例】
【0208】
1. 方法および材料
1.1 マウス
インビボの抗腫瘍分析には、WT動物(C57BL/6バックグラウンド)または適応免疫シストレイン(systrain)なしのNOD.SCIDマウスを用いた。OT-1マウスは、卵白アルブミン特異的MHC-I拘束性T細胞受容体を導入遺伝子として担持する。
【0209】
1.2 細胞株
MC57(CVCL_4985)はマウス線維芽細胞細胞株であり、アレナウイルスLCMVがよく増殖できる。C643(CVCL_5969)はヒト組織非形成性甲状腺癌細胞株である。H1975はヒト肺癌細胞株(CVCL_1511、ATCC、CRL-5908、腺癌)である。TrampC2はマウス腺癌細胞株(CVCL_3615)である。MOPCはマウス中咽頭細胞株である。CMT167(CVCL_2405)はマウス肺癌細胞株である。B16F10-OVAはマウス黒色腫細胞株(CVCL_0159)であり、卵白アルブミンをモデル抗原として発現する。UKE-Mel-13aはヒト黒色腫転移から単離した初代腫瘍細胞であり、100回未満継代されている。511950はトランスジェニックマウス膵癌から単離した初代腫瘍細胞であり(Mazur PK et al Nat Med. 2015 Oct;21(10):1163-71.)、20回未満継代されている。511950Rは511950細胞に由来し、MEK阻害剤トラメチニブで処置されて100回未満継代されている。
【0210】
1.3 ウイルス
LCMV系統WEをZinkernagel教授(実験免疫学、スイス国チューリッヒ)のラボから入手し、2008年からL929細胞またはBHK細胞内で増殖させた。クローンLCMV-P42、LCMV-P52、およびLCMV-P91を単離し、種々に継代した後、配列決定した。
【0211】
1.4 試薬
LCL161(Selleckchem)および抗PD1(BioXcell)をそれぞれLCMVおよびLCMV-P52と組み合わせ、抗腫瘍活性について試験した。
【0212】
1.5 免疫蛍光法によるLCMV感染細胞の決定
細胞内のLCMVを免疫蛍光法を用いて検出した。カバーガラスをそれぞれ収容する24ウェルプレートに細胞を播種した。24時間後に細胞をLCMVに感染させ、その24時間後に蛍光色素標識抗LCMV-NP抗体(クローンVL4)で染色し、蛍光顕微鏡で可視化し、一体型CCDカメラで撮影した。
【0213】
1.6 プラークアッセイによる上清中LCMVの決定
細胞のLCMV産生を決定するために、細胞を24ウェルプレートに播種し、24時間後にLCMVに感染させた。24時間後に上清を抽出した。上清を24ウェルプレートで滴定し、MC57細胞(15万個/穴)を添加した。4時間後にメチルセルロースを添加した。さらに48時間後、抗LCMV-NP抗体(クローンKL53)を用いて、細胞叢をLCMVプラークについて分析した。プラークを数えて、上清中の感染性粒子数/mlを決定した。
【0214】
1.7 ウイルスの継代
ウイルスを腫瘍に適応させるために、異なる初代腫瘍細胞または腫瘍細胞株をLCMV-WEに感染させた。細胞を24ウェルプレートに播いた(およそ10万個/ウェル、培地1 mL中)。24時間後、100 μL中、感染効率(MOI)=1のウイルスを添加した。セットアップに応じて最初の接種材料を1~30分で除去し、新培地を添加した。24時間、48時間、または72時間後、細胞培養上清を抽出し、さらなる分析用に凍結させた。新たに播いた細胞を、抽出上清100 μLにより感染させた。この手順を30~100回繰り返した。
【0215】
1.8 シーケンシング
ウイルスRNAの逆転写後、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で配列特異的プライマー対(オリゴヌクレオチド)を用いてcDNAを増幅した。PCR産物を精製し、サイクルシーケンシング(改変singer法)により配列決定し、産物をキャピラリー電気泳動により分離し、配列を電気泳動図として記録した。核酸配列を翻訳してタンパク質配列を得た。
【0216】
1.9 自然免疫活性化
マウスIFN-アルファELISA(ThermoFisher)を用いて、バイオマーカーIFN-アルファにより、LCMVが自然免疫系を活性化する能力を決定した。
【0217】
1.10 適応免疫活性化
活性化リンパ球のテトラマー染色(NIH, Tetramer Facility)により、LCMVが適応免疫系を活性化する能力を試験した。
【0218】
1.11 腫瘍成長および処置
抗腫瘍効果を測定するために、C57BL/6またはNOD.SCIDマウス(6~12週齢)の右または左の脇腹に、5 x 105個の腫瘍細胞(100 μL中)を皮下注射した。目に見える腫瘍が形成された後、動物を処置し、平均腫瘍直径または腫瘍体積を決定した。転移モデルにはB16F10-OVA細胞を静脈内適用した。
【0219】
1.12 卵白アルブミン(腫瘍)特異的CD8+ T細胞の単離および移植
腫瘍特異的CD8+ T細胞の分析のために、OT-1マウスの脾臓の細胞を卵白アルブミン発現腫瘍(B16F10-OVA)細胞を担持するC57BL/6マウスに移植した。脾臓を機械的に押しつぶした。濾過後、マウス1匹あたり107個の脾臓細胞を静脈注射した。
【0220】
1.13 腫瘍特異的CD8+ T細胞の測定
腫瘍特異的CD8+ T細胞の数を分析するために、血液由来の細胞を、蛍光卵白アルブミンテトラマー(ペプチドSIINFEKLを担持する連結した4つのH-2Kb MHC-I分子、NIH Tetramer Facility)および蛍光色素と連結した抗CD8抗体(eBioscience)とインキュベートし、洗浄してから、フローサイトメーターで分析した。T細胞機能の分析のため、脾臓細胞を機械的に押しつぶし、濾過してから、Brefeldin Aと、およびSIINFEKLペプチドと、またはSIINFEKLペプチドなしで、インキュベートした。6時間後に細胞を固定し、透過処理し、CD8(抗CD8、eBioscience)および細胞内インターフェロン-ガンマ(抗インターフェロン-ガンマ、eBioscience)に特異的な蛍光抗体で染色した。IFN-ガンマ産生細胞の頻度をフローサイトメトリーで分析した。
【0221】
1.14 統計学的分析
対応がない2標本のStudentのt検定を用いて、平均値を比較した。データを平均±SEMとして提示する。統計学的有意レベルはp<0.05と決定した。
【0222】
1.15 LCMV-P42の作製:
LCMV-WEを、初代腫瘍細胞培養物(UKE-Mel-13a)中42回継代した。42継代後、新ウイルス(LCMV-P42)中に機能的変異を検出した。LCMV-WEおよび変異体P42の核酸およびアミノ酸配列を
図25(AおよびB)に示す。
【0223】
1.16 LCMV-P91、LCMV-P52、およびそのサブクローンの作製:
LCMV-WEを腫瘍細胞株H1975中52回継代した。52継代後、新ウイルスの糖タンパク質中に変異I181M、R185Wを検出した。さらに、いくつかの、おそらくは非関連のかつ/またはオリゴクローナルな変異(疑似種)が見つかった。このウイルスを「LCMV-P52」と命名した。変異I181MおよびR185Wの安定性および重要性を決定するために、継代P52の上清をさらに39回継代した。この継代に由来するウイルスを「LCMV-P91」と命名し、これはなおも変異I181MおよびR185Wを含有する。ウイルスLCMV-P52を限界希釈によりサブクローン化した。このクローンウイルスを「LCMV-P52.1」と命名した。変異I181M、R185Wは安定していた。非関連と思われたかつ/またはオリゴクローナルな変異(疑似種)はいくらか変化を示した。単一変異I181MおよびR185Wの役割を決定するために、前の継代をいくつか分析した。継代P29は、単独のI181MおよびR185W変異を有するウイルスを含有した。継代P29からのウイルスを限界希釈によりサブクローン化した。単一変異R185Wを有する1つのサブクローンを「LCMV-P52-1.3」と命名し、単一変異I181Mを有する1つのサブクローンを「LCMV-P52-2.1」と命名した。LCMV変異体P52、P92、P52-1、P52-1.3、およびP52-2.1の核酸およびアミノ酸配列を
図25(C~G)に示す。LCMV-WEならびに変異体P42、P52、P92、P52-1、P52-1.3、およびP52-2.1の核酸およびアミノ酸配列のアラインメントを
図26(A~H)に示す。
【0224】
2. 研究調査
2.1 腫瘍細胞株MC57、C643、H1975、および初代腫瘍細胞培養物(UKEMel-13a)を、LCMV(系統WE、MOI 1)に感染させた。24時間後に複製を測定した(n=3)。
【0225】
それによって、LCMV(系統WE)が異なる伝播をすることが証明された。腫瘍細胞株MC57と比べて、細胞株C643およびH1975ならびに初代腫瘍細胞培養物(UKE-Mel-13a)では伝播が低下した。得られた結果を
図1に図示する。
【0226】
MC57、C643、H1975、およびUKE-Mel-13aの培養物中のLCMV感染細胞が白で示されている。
=感染なし、LCMV=LCMV感染。
【0227】
2.2 腫瘍細胞株MC57および初代腫瘍細胞培養物511950を、LCMV(系統WE、MOI 0,1)に感染させた(左グラフ)。腫瘍細胞株MC57、Tramp-C2、および初代腫瘍細胞培養物(511950および511950R)を、LCMV(系統WE、MOI 1)に感染させた(右グラフ)。24時間後、上清中の感染性ウイルス粒子の数を測定した。
【0228】
それによって、LCMV(系統WE)は、Tramp-C2細胞株ならびに初代腫瘍細胞培養物(511950および511950R)では、MC57腫瘍細胞株と比べて増殖が少ないことが証明された。結果を
図2に示す。
【0229】
図2は以下の凡例を有する。
縦座標:上清中の感染性LCMV粒子(PFU/mL)、
横座標:処置群;MC57、Tramp-C2、511950、511950R。
【0230】
2.3 LCMV-WEを、初代腫瘍細胞培養物(UKE-Mel-13a)中42回継代した。42継代後、新ウイルス(LCMV-P42)中に機能的変異を検出した。
【0231】
それによって、初代腫瘍細胞は、継代によりアレナウイルスを改変するのに好適であることが証明できた。実験手順を
図3に示す。
【0232】
2.4 LCMV-WEを腫瘍細胞株H1975中52回継代した。52継代後、新ウイルスLCMV-P52中に機能的変異を検出した。
【0233】
それによって、H1975の例を用いて、(細胞株MC57と比べて)LCMV複製が低下した腫瘍細胞株が、継代によりアレナウイルスを変化させるのに好適であることが証明された。実験手順を
図4に例示する。
【0234】
2.5 LCMV-P52を腫瘍細胞株H1975中39回継代した。39継代後、新ウイルスLCMV-P91中にさらなる機能的変異を検出した。
【0235】
それによって、H1975細胞が、継代によりアレナウイルスを変化させる能力があることが証明された。実験手順を
図5に図示する。
【0236】
2.6 細胞株H1975をLCMV-WEおよびLCMV-P52(MOI 1)に感染させた。12時間後、上清中のウイルスを決定した(n=6)。
【0237】
それによって、LCMV-P52がH1975細胞においてLCMV-WEよりもよく複製することが証明された。得られた結果を
図6に図示する。
【0238】
図6は以下の凡例を有する。
縦座標:上清中の感染性LCMV粒子(PFU/mL)、
横座標:処置群;LCMV-WEまたはLCMV-P52
【0239】
2.7 マウス骨髄由来樹状細胞を、LCMV-WEおよびLCMV-P52(MOI 1)に感染させた。24時間後、上清中のウイルスを決定した(n=3)。
【0240】
それによって、LCMV-P52が抗原呈示細胞においてLCMV-WEよりもよく複製することが証明された。得られた結果を
図7に図示する。
【0241】
図7は以下の凡例を有する。
縦座標:上清中の感染性LCMV粒子(PFU/mL)、
横座標:処置群;LCMV-WEまたはLCMV-P52
【0242】
2.8 腫瘍細胞株H1975を、LCMV-WEまたはLCMV-P52(MOI 1)に感染させた。24時間後、ウイルス伝播を免疫蛍光法により測定した。
【0243】
それによって、H1975の例を用いて、LCMV-P52が、腫瘍細胞株において、LCMV WEよりもよく伝播できることが証明された。得られた結果を
図8に図示する。
【0244】
白で示されているのは、LCMV-WEまたはLCMV-P52感染培養物のLCMV感染細胞である。
【0245】
2.9 初代腫瘍細胞(UKE-Mel-13a)を、LCMV-WEまたはLCMV-P52(MOI 1)に感染させた。24時間後、ウイルス伝播を免疫蛍光法により測定した。
【0246】
それによって、LCMV-P52が、初代腫瘍細胞において、LCMV-WEよりもよく伝播できることが証明された。得られた結果を
図9に図示する。
【0247】
LCMV-WEまたはLCMV-P52感染培養物のLCMV感染細胞を白で示す。
【0248】
2.10 C57BL/6マウスを、LCMV-WEまたはLCMV-P52(静脈内2x104 PFU)に感染させた。感染の1日後、自然免疫系の活性化を血清中IFN-アルファの測定により決定した。
【0249】
それによって、LCMV-P52が、LCMV-WEよりも強い自然免疫活性化をもたらすことが証明された。得られた結果を
図10に図示する。
【0250】
図10は以下の凡例を有する。
縦座標:IFN-アルファ濃度(ng/mL血清)
横座標:処置群;LCMV-WEまたはLCMV-P52感染動物。
【0251】
2.11 C57BL/6マウスを、LCMV-WEまたはLCMV-P52(静脈内2x104 PFU)に感染させた。適応免疫系の活性化を、(ウイルス特異的CD8+ T細胞を測定する)テトラマーを用いてフローサイトメトリーにより決定した。
【0252】
それによって、LCMV-P52が、LCMV-WEよりも強い適応免疫活性化を誘導することが証明された。得られた結果を
図11に図示する。
【0253】
図11は以下の凡例を有する。
縦座標:ウイルス特異的CD8+ T細胞(血液中全CD8+ T細胞に占める%)、
横座標:時間(感染後の日数)
【0254】
2.12 NOD.SCIDマウスを、5 x 105個のH1975細胞で皮下処置した(-7日目)。マウスを、2 x 104 PFUのLCMV-WEまたはLCMV-P52に、さらに腫瘍内感染(0日目)させた。腫瘍成長を分析した。
【0255】
それによって、LCMV-P52処置が、LCMV-WE処置よりも強い抗腫瘍効果を有したことが証明された。得られた結果を
図12に図示する。
【0256】
図12は以下の凡例を有する。
縦座標:平均腫瘍直径(cm)、
横座標:時間(LCMV処置後の日数)
【0257】
2.13 C57BL/6マウスを、5 x 105個のMOPC細胞で皮下処置した(-7日目)。マウスの1群を、2 x 104 PFUのLCMV-P52に、さらに静脈内感染させた(n=3、0日目)。腫瘍成長を分析した。
【0258】
それによって、LCMV-P52処置が強い抗腫瘍効果を有したことが証明された。結果を
図13に図示する。
【0259】
図13は以下の凡例を有する。
縦座標:腫瘍体積(mm
3)、
横座標:時間(LCMV処置後の日数)
【0260】
2.14 C57BL/6マウスを、5 x 105個のCMT167細胞で皮下処置した(-7日目)。マウスの1群を、2 x 104 PFUのLCMV-P52に、さらに静脈内感染させた(n=3、0日目)。腫瘍成長を分析した。
【0261】
それによって、LCMV-P52処置が強い抗腫瘍効果を有したことが証明された。結果を
図14に示す。
【0262】
図14は以下の凡例を有する。
縦座標:腫瘍体積(mm
3)、
横座標:時間(LCMV処置後の日数)
【0263】
それによって、LCMV-P52処置が、強い抗腫瘍効果を有したことが証明された。得られた結果を
図15に図示する。
【0264】
【0265】
2.15 C57BL/6マウスを、5 x 10
5個のB16F10-OVA細胞で静脈内処置した(-7日目)。OT-1マウスの脾臓から単離された腫瘍特異的CD8
+ T細胞を移植した(-4日目)。動物の1群を、LCMV-P52でさらに静脈内処置した(2x10
4 PFU、n=4)。9日目に肺を除去して撮影した。
=対照動物、各肺4つ; LCMV-P52=LCMV-P52処置、各肺4つ。
【0266】
2.16 C57BL/6マウスを、5 x 105個のB16F10-OVA細胞で静脈内処置した(-7日目)。OT-1マウスの脾臓から単離された腫瘍特異的CD8+ T細胞を移植した(-4日目)。動物の1群を、LCMV-P52でさらに静脈内処置した(2x104 PFU、n=4)。3日目に血液中の腫瘍特異的CD8+ T細胞の頻度を決定した。
【0267】
それによって、LCMV-P52処置が腫瘍特異的CD8+ T細胞の増殖を増加させることが証明された。得られた結果を
図16に図示する。
【0268】
図16は以下の凡例を有する。
縦座標:血液中の腫瘍特異的CD8
+ T細胞の頻度(全CD8+ T細胞に占める%)、
横座標:処置群
=感染なし、LCMV-P52=LCMV-P52処置
【0269】
2.17 C57BL/6マウスを、5 x 105個のB16F10-OVA細胞で静脈内処置した(-7日目)。OT-1マウスの脾臓から単離された腫瘍特異的CD8+ T細胞を移植した(-4日目)。動物の1群を、LCMV-P52でさらに静脈内処置した(2x104 PFU、n=4)。9日目に脾臓の腫瘍特異的CD8+ T細胞の機能をインビトロの再刺激により決定した。
【0270】
それによって、LCMV-P52処置が腫瘍特異的CD8+ T細胞の機能を増加させることが証明された。得られた結果を
図17に図示する。
【0271】
図17は以下の凡例を有する。
縦座標:IFN-ガンマ産生腫瘍特異的CD8+ T細胞の頻度(全CD8+ T細胞に占める%)、
横座標:処置群;
: LCMV-P52処置なし;LCMV-P52: LCMV-P52処置;凡例:-:抗原なし; +: 抗原で再刺激(SIINFEKLペプチド)。
【0272】
2.18 C57BL/6マウスを、5 x 105個のB16F10-OVA細胞で皮下処置した(-7日目)。動物の1群にはそれ以上処置をしなかった(n=3)。動物の1群を、0日目から阻害剤LCL-161(経口50 mg/kg体重)で週2回処置した。1群を0日目にLCMV-WEで腫瘍内処置した(2x104 PFU、n=4)。1群をLCL-161およびLCMVで処置した。腫瘍成長を分析した。
【0273】
それによって、LCMV-WE処置がLCL-161との相乗効果を有することが証明された。得られた結果を
図18に図示する。
【0274】
図18は以下の凡例を有する。
縦座標:腫瘍体積(mm
3)、
横座標:時間(LCMV投与後の日数)
【0275】
2.19 C57BL/6マウスを、5 x 105個のB16F10-OVA細胞で皮下処置した(-7日目)。動物の1群にはそれ以上処置をしなかった(n=3)。動物の1群を、0日目から阻害剤LCL-161(経口50 mg/kg体重)で週2回処置した。1群を、0日目にLCMV-WEで腫瘍内処置した(2x104 PFU、n=4)。1群を、LCL-161およびLCMVで処置した。動物の生存を分析した。
【0276】
LCMV-WE処置がLCL-161との相乗効果を有することを示すことができた。得られた結果を
図19に図示する。
【0277】
図19は以下の凡例を有する。
縦座標:動物の生存(%)、
横座標:時間(LCMV投与後の日数)
【0278】
2.20 C57BL/6マウスを、5 x 105個のB16F10-OVA細胞で皮下処置した(-9日目)。動物の1群にはそれ以上処置をしなかった(n=3)。1群を、0日目にLCMV-P52で腫瘍内処置した(2x104 PFU、n=6~8)。動物の1群を、1日目、5日目、および8日目に、チェックポイントブロッカー抗PD-1(200 μg、腹腔内)で処置した。1群を、チェックポイントブロッカー抗PD-1およびLCMV-P52で処置した。腫瘍成長を分析した。
【0279】
それによって、LCMV-P52処置がチェックポイントブロッカー(たとえば抗PD-1)との相乗効果を有することが証明された。得られた結果を
図20に図示する。
【0280】
図20は以下の凡例を有する。
縦座標:腫瘍体積(mm
3)、
横座標:時間(LCMV処置後の日数)
【0281】
本明細書に記載のアミノ酸および核酸配列は、以下の配列表に開示されるアミノ酸および核酸配列に対応する。
【0282】
2.21 10
5個のH1975細胞を24ウェルプレートに播種した。24時間後、細胞をウイルスLCMV-WE、LCMV-P52.1(I181M、R185W)、LCMV-P52-1.3(R185W)、およびLCMV-P52-2.1(I181M)に感染効率(MOI)0.1で感染させた。24時間後、上清中のウイルスを分析した。結果を
図21に示す(平均+SEM、n=6、
*p<0.05、t検定)。
【0283】
データは、変異I181MおよびR185Wが、腫瘍細胞においてウイルス増殖を別々に増加させることを示している。
【0284】
図21は以下の凡例を有する。
X軸:ウイルス各種
Y軸:上清中LCMV(log
10 PFU/ml)
【0285】
2.22 2.5x10
5個のHCC1954細胞を24ウェルプレートに播種し、次いでLCMV-WE、LCMV-P52.1(I181M、R185W)、LCMV-P52-1.3(R185W)、およびLCMV-P52-2.1(I181M)に感染効率(MOI)0.001で感染させた。48時間後、上清中のウイルスを分析した。結果を
図22に示す(エラーバーはSEMを示す、n=4、
**p<0.001、n.s.は有意差なしを表す、one-way ANOVAおよび追加でTukey事後検定を用いた)。
【0286】
データは、変異I181Mまたは変異185Wが、HCC1954腫瘍細胞においてウイルス増殖を増加させることを示している。
【0287】
図22は以下の凡例を有する。
X軸:ウイルス各種
Y軸:上清中LCMV(log
10 PFU/ml)
【0288】
2.23 マウス膵癌細胞(511950、4 x 10
5個)、ヒト黒色腫細胞(UKE118b、4 x 10
5個)、または(UKE118c、4 x 10
5個)を24ウェルプレートに播種し、次いでLCMV-WE(白いバー)またはLCMV-P42(I181M、黒いバー)に感染効率(MOI)0.1で感染させた。24時間後、上清中のウイルスを分析した。結果を
図23に示す(平均+SEM、n=3、
*p<0.05、t検定)。
【0289】
データは、変異I181Mが腫瘍細胞においてウイルス増殖の増加をもたらすことを示している。
【0290】
図23は以下の凡例を有する。
X軸:細胞各種
Y軸:上清中LCMV(log
10 PFU/ml)
【0291】
2.24 C57BL/6マウスを、2 x 10
4 PFUのLCMV-WE、LCMV-P52.1(I181M、R185W)、LCMV-P52-1.3(R185W)、およびLCMV-P52-2.1(I181M)のいずれかで、静脈内感染させた。8日目(白いバー)および10日目(黒いバー)に、フローサイトメトリーでテトラマーを用いて、LCMV-GP33特異的CD8
+ T細胞の頻度について血液を分析した。結果を
図24に示す(平均+SEM、n=6~12、4つの別々の実験からプール、
*p<0.05、t検定)。
【0292】
データは、変異I181MおよびR185Wが、LCMVが特異的T細胞を刺激する能力を増加させることを示している。変異I181MとR185Wとの併用は、初期T細胞刺激に対し相乗特性を有し得る。
【0293】
図24は以下の凡例を有する。
X軸:ウイルス各種
Y軸:テトラマー-GP33結合CD8
+ T細胞の頻度(全CD8
+ T細胞に占める%)。
【0294】
本明細書に例示的に記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素または制限がなくても好適に実施され得る。それに加えて、本明細書で使用する用語および表現は、制限のためではなく記載のために用いられており、そうした用語および表現の使用には、表示されかつ記載されている特徴の等価物またはその一部を排除する意図はなく、特許請求の本発明の範囲内でさまざまな変更形態が可能であることが認められる。したがって、本発明を例示的な態様および任意の特徴により具体的に開示してきたが、そこで具現化される本明細書に開示される本発明の変更形態および変化形態が当業者により利用され得ること、ならびにそのような変更形態および変化形態は本発明の範囲内とみなされることを、理解すべきである。
【0295】
本明細書では、本発明を広くかつ属名を用いて記載してきた。属の開示に含まれる下位または亜属の分類はいずれも本発明の一部を形成する。このことは、その属から任意の主題を除去する条件付きのまたはマイナスの限定を有する本発明の属の記載を含み、削除される材料が本明細書に明記されているかいないかには関係ない。
【配列表】