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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】抗体-薬物コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20241107BHJP
   A61K 38/05 20060101ALI20241107BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241107BHJP
   C07K 16/32 20060101ALN20241107BHJP
   C07K 5/062 20060101ALN20241107BHJP
   C07K 5/065 20060101ALN20241107BHJP
   C07K 5/087 20060101ALN20241107BHJP
   C07K 5/083 20060101ALN20241107BHJP
   C07K 5/103 20060101ALN20241107BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K38/05
A61P35/00
C07K16/32 ZNA
C07K5/062
C07K5/065
C07K5/087
C07K5/083
C07K5/103
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022562980
(86)(22)【出願日】2021-04-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(86)【国際出願番号】 CN2021087513
(87)【国際公開番号】W WO2021209007
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/084880
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522403848
【氏名又は名称】シェンチェン・エンデュアリング・バイオテック・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Shenzhen Enduring Biotech, Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】ウー,デチュン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シューミン
(72)【発明者】
【氏名】イン,シューチアン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン,ユィ
【審査官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-533847(JP,A)
【文献】特表2019-537572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/68
A61K 38/05
A61P 35/00
C07K 16/32
C07K 5/062
C07K 5/065
C07K 5/087
C07K 5/083
C07K 5/103
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ib):
【化1】
[式中、
Pは、非免疫原性ポリマーであり、該非免疫原性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)であり、そして、該PEGの総分子量は、10,000~80,000ダルトンであり;
Mは、H、または、C1-50アルキルおよびアリールから選択される末端キャッピング基であり、ここで、前記アルキルの1つ以上の炭素は、ヘテロ原子で任意に置き換えられていてもよく;
yは、1~10から選択される整数であり;
Aは、抗体の抗原結合フラグメントであり;
Tは、ヒドロキシル、アミノ、ヒドラジニル、アジド、アルケン、アルキン、カルボキシル(アルデヒド、ケトン、エステル、カルボン酸、酸無水物、ハロゲン化アシル)、チオール、ジスルフィド、ニトリル、エポキシド、イミン、ニトロ、およびハライドから独立して選択される3つの官能基を有する分子に由来する三官能性リンカーであり、そして、Tと(Lとの間の結合およびTと(Lとの間の結合は、同一または異なり;
およびLは、それぞれ独立して、ヘテロまたはホモ二官能性リンカーであり;
aおよびbは、それぞれ、0~10から選択される整数であり;
Bは、分岐リンカーであり、ここで、各分枝は、自壊スペーサーに連結されたアミノ酸配列または炭水化物部分を有していて、酵素によるアミノ酸配列または炭水化物部分の切断により自壊メカニズムが誘発されて、Dが放出されるか、あるいは、各分枝は、ジスルフィド結合または切断可能な結合を有していて、ジスルフィド結合または切断可能な結合の切断により、Dが放出され、そして、該分岐リンカーBは、伸長スペーサー、トリガーユニット、自壊スペーサー、またはそれらの任意の組み合わせを含み、場合により、該トリガーユニットは、カテプシンB、プラスミン、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、β-グルクロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼなどの酵素によって切断可能な、アミノ酸配列またはβ-グルコロニドまたはβ-ガラクトシドのトリガー部分;酸性pH条件で薬物Dを放出できるpH感受性リンカー;または、グルタチオン、チオレドキシンファミリーメンバー(WCGH/PCK)またはチオレダクターゼによって薬物Dを放出できるジスルフィド結合リンカー、である、
Dは、それぞれ独立して、細胞傷害性小分子であり;および、
nは、2~25から選択される整数である。]
で示される、化合物。
【請求項2】
Tが、リジンであるか、またはリジンに由来するものである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(Ic):
【化2】
[式中、
Pは、直鎖PEGであり、該PEGの総分子量は、10,000~80,000ダルトンであり;
Aは、抗体の抗原結合フラグメントであり;
およびLは、それぞれ独立して、二官能性リンカーであり;
aおよびbは、それぞれ、0~10から選択される整数であり;
Bは、分岐リンカーであり、ここで、各分枝は、自壊スペーサーに連結されたアミノ酸配列または炭水化物部分を有していて、酵素によるアミノ酸配列または炭水化物部分の切断により自壊メカニズムが誘発されて、Dが放出されるか、あるいは、各分枝は、ジスルフィド結合または切断可能な結合を有していて、ジスルフィド結合または切断可能な結合の切断により、Dが放出され、そして、該分岐リンカーBは、伸長スペーサー、トリガーユニット、自壊スペーサー、またはそれらの任意の組み合わせを含み、場合により、該トリガーユニットは、カテプシンB、プラスミン、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、β-グルクロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼなどの酵素によって切断可能な、アミノ酸配列またはβ-グルコロニドまたはβ-ガラクトシドのトリガー部分;酸性pH条件で薬物Dを放出できるpH感受性リンカー;または、グルタチオン、チオレドキシンファミリーメンバー(WCGH/PCK)またはチオレダクターゼによって薬物Dを放出できるジスルフィド結合リンカー、である、
Dは、それぞれ独立して、細胞傷害性小分子であり;
nは、2~25から選択される整数である。]
で示される、化合物。
【請求項4】
のリンカー末端の官能基が、Aとの部位特異的コンジュゲーションが可能であり、そして、チオール、マレイミド、2-ピリジルジチオ変異体、芳香族スルホンまたはビニルスルホン、アクリレート、ブロモまたはヨードアセトアミド、アジド、アルキン、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)、カルボニル、2-アミノベンズアルデヒドまたは2-アミノアセトフェノン基、ヒドラジド、オキシム、アシルトリフルオロホウ酸カリウム、O-カルバモイルヒドロキシルアミン、trans-シクロオクテン、テトラジン、トリアリールホスフィン、ボロン酸、およびヨウ素、からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
抗体が、単一特異性または多重特異性の、一本鎖抗体、単一特異性または多重特異性のナノボディ(nanobody)、または、単一特異性または多重特異性のそれらの抗原結合ドメインである、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
Aが、二重特異性抗体フラグメント、例えば二重特異性一本鎖抗体、であり、
二重特異性抗体フラグメントの2つの結合ドメインが、同じ腫瘍関連抗原(TAA)に結合するか、2つの異なるTAAに結合するか、または、TAA、およびT細胞またはNK細胞上で発現される抗原(例えば、T細胞受容体の成分)に結合する、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
Aが、抗Her2II×抗Her2IV一本鎖二重特異性抗体である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Aが、配列番号1または配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する、請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
二重特異性一本鎖抗体の2つの結合ドメインが、リンカーを介して連結され、そして、該リンカーが、抗体のLへの部位特異的コンジュゲーションのための非天然アミノ酸残基またはシステインを含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
非天然アミノ酸が、遺伝的にコードされたアルケンリジン(例えば、N6-(ヘキサ-5-エノイル)-L-リジン)、2-アミノ-8-オキソノナン酸、mまたはp-アセチル-フェニルアラニン、β-ジケトン側鎖を有するアミノ酸(例えば、2-アミノ-3-(4-(3-オキソブタノイル)フェニル)プロパン酸)、(S)-2-アミノ-6-(((1R,2R)-2-アジドシクロペンチルオキシ)カルボニルアミノ)ヘキサン酸、アジドホモアラニン、ピロリシン類似体N6-((プロパ-2-イン-1-イルオキシ)カルボニル)-L-リジン、(S)-2-アミノ-6-ペンタ-4-インアミドヘキサン酸、(S)-2-アミノ-6-((プロパ-2-インイルオキシ)カルボニルアミノ)ヘキサン酸、(S)-2-アミノ-6-((2-アジドエトキシ)カルボニルアミノ)ヘキサン酸、p-アジドフェニルアラニン、パラ-アジドフェニルアラニン、Nε-アクリロイル-1-リジン、Nε-5-ノルボルネン-2-イルオキシカルボニル-1-リジン、N-ε-(シクロオクタ-2-イン-1-イルオキシ)カルボニル)-L-リジン、N-ε-(2-(シクロオクタ-2-イン-1-イルオキシ)エチル)カルボニル-L-リジン、遺伝的にコードされたテトラジンアミノ酸(例えば、4-(6-メチル-s-テトラジン-3-イル)アミノフェニルアラニン)、から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Dが、DNA架橋剤、微小管阻害剤、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
Dが、MMAE、MMAF、SN38、DM1、DM4、カリケアマイシン、ピロロベンゾジアゼピン、デュオカルマイシン、またはそれらの誘導体、またはそれらの組み合わせから選択されるか、または、
Dが、ビンカアルカロイド、ラウリマリド、タキサン、コルヒチン、ツブリシン(tubulysin)、クリプトフィシン(Cryptophycin)、ヘミアステリン(Hemiasterlin)、セマドチン(Cemadotin)、リゾキシン(Rhizoxin)、ディスコデルモライド(Discodermolide)、タッカロノリド(taccalonolide)AまたはBまたはAFまたはAJ、タッカロノリド(taccalonolide)AI-エポキシド、CA-4、エポチロンAおよびB、ラウリマリド、パクリタキセル、ドセタキセル、ドキソルビシン、カンプトテシン、iSGD-1882、センタナマイシン(centanamycin)、PNU-159682、ウンシアラマイシン(uncialamycin)、インドリノベンゾジアゼピン二量体、β-アマニチン、アマトキシン、タイランスタチン(thailanstatin)、またはそれらの類似体、またはそれらの組み合わせから選択される、
請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
PEGが、直鎖PEG、または分岐PEGであり、
ポリエチレングリコールの少なくとも1つの末端が、メチルまたは低分子量アルキルでキャッピングされている、請求項1~2または4~12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
PEGが、永続的な結合または切断可能な結合を介して、T(例えば、リジン)に結合している、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
PEGの総分子量が、20,000~40,000である、請求項1~14のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
およびLが、それぞれ独立して、
-(CHXY(CH-、
-X(CHO(CHCHO)(CHY-、
-(CH)ヘテロシクリル-、
-(CHX-、
-X(CHY-、
-W-(CHC(O)NR(CHO(CHCHO)(CHC(O)-、
-C(O)(CHO(CHCHO)(CHC(O)(CHNR-、
-W-(CHC(O)NR(CHO(CHCHO)(CHC(O)(CHC(O)-、
[式中、a、b、c、d、およびeは、それぞれ、0~25から独立して選択される整数であり;XおよびYは、それぞれ、C(=O)、NR、S、O、CR、または不存在から独立して選択され;RおよびRは、独立して、水素、C1-10アルキル、または(CH1-10C(=O)を表し;Wおよび/またはWは、マレイミドをベースとした部分に由来し、Wは、トリアゾリルまたはテトラゾリル含有基を表し;ヘテロシクリル基は、マレイミド由来の部分またはテトラゾリルをベースとした部分またはトリアゾリルをベースとした部分から選択される。]
から選択される、請求項1~15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
(Lおよび(Lが、それぞれ独立して、
【化3】
[式中、nおよびmは整数であり、0~20から独立して選択される。]
から選択される、請求項1~16のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
分岐リンカーBが、
【化4】
[式中、
a、b、c、d、e、およびfは、それぞれ整数であり、1~25から独立して選択され;
(A)は、Val-Cit、Val-Ala、Val-Lys、Phe-Lys、Phe-Cit、Phe-Arg、Phe-Ala、Ala-Lys、Leu-Cit、Ile-Cit、Trp-Cit、D-Phe-LPhe-Lys、Phe-Phe-Lys、D-Phe-Phe-Lys、Gly-Phe-Lys、Gly-Phe-Leu-Gly、またはAla-Leu-Ala-Leuなどの、アミノ酸配列のトリガーユニットであり;
PABは、パラ-アミノベンジルアルコールであり;
Exは、それぞれ、
-NR(CHO(CHCHO)(CHC(O)-、
-C(O)(CHNR-、
-NR(CHO(CHCHO)(CHNR-、
-NR(CHNR-、
-NR(CHO(CHCHO)(CHO-、
-O(CHNR-、
-C(O)(CHO-、
-O(CHO(CHCHO)(CHC(O)-、
-C(O)(CHO(CHCHO)(CHC(O)-、
-C(O)(CHC(O)-、または、
不存在、
(式中、x、y、およびzは、それぞれ整数であり、0~25から独立して選択され;そして、RおよびRは、独立して、水素またはC1-10アルキル基を表す。)
から独立して選択されるリンカー鎖を含む伸長スペーサーである。]
から選択される、請求項1~17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
分岐リンカーBが、
【化5】
から選択される、請求項1~18のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
下記の式:
【化6】
【化7】

【化8】
から選択される、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項21】
下記の式:
【化9】
から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項22】
乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、胃癌、結腸癌、大腸癌、唾液腺癌、甲状腺癌、および子宮内膜癌からなる群から選択される癌の治療のための医薬製剤であって、有効量の請求項1~21のいずれか1項に記載の化合物および薬学的に許容される塩、担体または賦形剤を含む、医薬製剤。
【請求項23】
乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、胃癌、結腸癌、大腸癌、唾液腺癌、甲状腺癌、および子宮内膜癌からなる群から選択される癌の治療に使用する医薬の製造のための、請求項1~21のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年4月15日に出願されたPCT出願:PCT/CN2020/084880の出願日の利益を主張し、その全内容はすべての目的のために参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)(antibody-drug conjugate)、特に部位特異的コンジュゲーションにより製造され、効力が高く毒性が低い均一なコンジュゲートを提供する、多重特異性抗体-薬物コンジュゲート、に関する。特に、本発明は、単一特異性抗体または二重特異性抗体へのPEG化薬物コンジュゲートの部位特異的コンジュゲーションによって製造される、長時間作用型PEG化単一特異性または二重特異性一本鎖抗体薬物コンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0003】
癌治療は、手術(1800年代後半)から放射線療法(1900年代前半)、化学療法とホルモン療法(1900年代半ば)から標的薬(1990年代)、標的薬と化学療法およびホルモン療法との組み合わせ(2000年代前半)から近年の抗体-薬物コンジュゲート(ADC)などへと、ゆっくりと進歩してきた。ADCで癌を治療するという概念は、50年以上前に遡ることができ(Decarvalho, S. et al. Nature, 1964, 202, 255-258)、担体として抗体を使用して、非常に強力な物質を腫瘍細胞に直接送達するものである。初期のADCは、それ自体が取得と操作が困難な抗原性のベータ放出放射性核種ペイロードである非ヒト化抗体と、細胞毒性ペイロードを早い時期に放出する不安定なリンカーを使用していた。今日のADC技術は、ヒト化抗体、細胞毒性の高い有機ペイロード、および、標的に到達してADC分子全体が細胞内に取り込まれるまで細胞殺傷剤の完全性を維持するように設計された比較的安定したリンカーを用いている。
【0004】
米国ではFDAによって承認されたADCが10種類あり、そのすべてが、癌治療用であり、現在100を超えるADCの候補が臨床試験で使用中である(Beacon Targeted Therapies|hansonwadeによる研究報告)。承認された10種類のADCはすべて、治療中に深刻な悪影響を示した。実際のところ、承認された10種のADCのうち8種は、黒色枠囲み警告ラベルを表示する必要があり、さまざまな癌の適応症への適用が制限されている。今日のIgGベースのADCの最大の課題は、治療の利益を示すために最大耐用量(MTD)に非常に近い用量で投与する必要があることであり、その結果、治療域を非常に狭くしている(Beck, A. et al. Nat. Rev. Drug Discov., 2017, 16, 315-337; Vankemmelbeke, M. et al. Ther. Deliv., 2016, 7, 141-144; Tolcher A. W. et al. Ann. Oncol., 2016, 27, 2168-2172)。さらに、これらのADCで見つかった毒性プロファイルは、細胞毒性ワーヘッドに関連する用量制限毒性を伴って、標準治療化学療法の毒性プロファイルと同等である(Coats, S. et al. Clin. Cancer Res., 2019, 25, 5441-5448)。臨床試験で打ち切られた約80種の伝統的なADCのうち、打ち切られたものの大半は、既存の治療法と比較した場合、治療域または指数が不十分であることが原因であった。コンジュゲーション部位およびリンカー/薬物疎水性が、ADCの安定性、有効性および治療指数に大きな影響を与え、親水性リンカーによる細胞毒性分子の抗体への部位特異的コンジュゲーションが治療指数を向上できることが十分に報告されている(Junutula, J. R. et al. Nat. Biotechnol., 2008, 26, 925-932; Lyon, R. P. et al. Nat. Biotechnol., 2015, 33, 733-735)。しかしながら、現在臨床開発中または市場に出ている多くのADCでは、高いDARを得るために、全長の抗体の2つ以上の鎖間ジスルフィド結合を切断する必要がある。残念ながら、このアプローチは、タンパク質の不安定化につながる可能性がある。二重特異性抗体は非天然の抗体であり、DARの高いFcを有するBsADCの製造はさらに困難であるため、前記事項は、特にFcを有するBsADCに当てはまる。開発中または承認済みの他の多くのADCは、抗体のシステイン残基またはリジン残基のいずれかでランダムにコンジュゲーションして製造されており、本質的に異種であるため、臨床環境での正確な投与と分析は困難である。さらに、完全長の抗体から作製されたADC分子は、大きすぎて、密度のある固形腫瘍に深く浸透して中期から後期の癌を治療することができないと考えられている。さらに、Fcを有するすべての伝統的なADCは、巨核球(MK)上のFcγRIIaへの該Fcの結合と、その後のインターナリゼーションとそれに続くMKの死滅により、最終的に血小板産生の停止と血小板減少をもたらす、固有の毒性を有しており(Uppal, H. et al. Clin Cancer Res; 21(1) January 1, 2015)、そして、抗体-薬物コンジュゲートで観察される多くのオフターゲット毒性も、ADCのFc成分に直接関連するマンノース受容体の取り込みによって引き起こされる(Gorovits, B. et.al. 2013, Cancer Immunol Immunother 62, 217-223)。
【0005】
したがって、強力な効力および改善した毒性プロファイルを有する新規なADC技術が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、部位特異的コンジュゲーションのために調製された部位(例えばシステイン)を有する、単一特異性または多重特異性の抗体フラグメント;または、単一特異性または多重特異性の一本鎖抗体に対する、ポリマー修飾された(例えばPEG化された)薬物コンジュゲートの部位特異的コンジュゲーションによって製造される、非免疫原性ポリマー修飾抗体薬物コンジュゲートを提供することにより、上述の満たされていないニーズに対処する。抗体フラグメントまたは一本鎖抗体は、抗原に対して一価または多価であり得る。
【0007】
一態様において、本発明は、式Ia:
【化1】
で示されるポリマー抗体薬物コンジュゲート分子を提供する。Pは、非免疫原性ポリマーであり得る。Tは、多官能性(例えば三官能性)小分子リンカー部分であり得、単一特異性または多重特異性の抗体またはタンパク質への部位特異的コンジュゲーションが可能な少なくとも1つの官能基を有し得る。Aは、単一特異性または多重特異性の抗体またはタンパク質であり得る。Dは、細胞傷害性小分子またはペプチドであり(n≧1)、各Dは、同一であるか異なり得る。
【0008】
特に、本発明の一態様は、式Ib:
【化2】
式Ib
[式中、
Pは、非免疫原性ポリマーであり得;
Mは、H、または、C1-50アルキルおよびアリールから選択される末端キャッピング基であり得、ここで、前記アルキルの1つ以上の炭素は、ヘテロ原子で置き換えられていてもよく;
yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10から選択される整数であり得;
Tは、三官能性または四官能性または他の環式または非環式の多官能性部分(例えば、リジン)を含むがこれらに限定されない、2つ以上の官能基を有する多官能性リンカーであり得、ここで、Tと(Lの間の結合、および、Tと(Lの間の結合は、同一であるか異なることができ;
およびLは、それぞれ独立して、二官能性リンカーであり得;
aおよびbは、それぞれ、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9および10から選択される整数であり得;
Bは分岐リンカーであり得、ここで、各分岐は、伸長スペーサー、トリガーユニット、自壊スペーサー、またはその任意の組み合わせを含んでよく、ここで、トリガーユニットは、酵素によって切断可能なトリガー部分またはアミノ酸配列;酸性pH条件で薬物Dまたはその誘導体を放出できるpH感受性リンカー;または、化学的または酵素的切断によって薬物Dまたはその誘導体を放出できるジスルフィド結合リンカー;または、特定の切断メカニズムによって薬物Dを放出できる切断可能な結合であり得;
Aは、抗原に対して一価または多価であり得る、抗体フラグメント、一本鎖抗体、ナノボディ(nanobody)、または抗原結合フラグメントを含む、単一特異性または多重特異性の抗体または抗原結合タンパク質であり得;
Dは、細胞傷害性小分子またはペプチドまたはそれらの誘導体であり得、そして、酵素的切断および/または自壊メカニズム、または自壊メカニズムを伴うまたは伴わないpH誘導加水分解のいずれかを介してBから放出されることができ;各Dは、同一であるか異なることができ;
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24および25から選択される整数であり得る。]
で示されるコンジュゲート、を提供する。
【0009】
本発明の別の態様は、式Ic:
【化3】
式Ic
[式中、各可変部分は、式Ibについて定義したとおりである。]
で示されるコンジュゲート、を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態において、Bの各分岐は、トリガー部分を含み、これは、例えば、カテプシンB、プラスミン、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、グルタチオン、チオレドキシン、チオレダクターゼ(Arunachalam, B. et. al. 2000, PNAS, 97 (2) 745-750)によって切断され得る、薬物Dに自壊スペーサーを介して接続されるか、または薬物Dに直接接続された、アミノ酸配列またはジスルフィド部分またはβ-グルコロニドまたはβ-ガラクトシド、である。自壊スペーサーとしては、これに限定されるものではないが、例えば、下記のものが挙げられる。
【化4】
式中、R、R、R、Rは、H、またはC1-10アルキルであり得る。そのような実施形態において、Dは、活性なOまたはNまたはSの官能基を含む任意の小分子またはペプチドまたはその誘導体であり得る。
【0011】
いくつかの実施形態において、Bの各分枝は、腫瘍部位および/または腫瘍細胞内の酸性pH条件で薬物Dまたはその誘導体を放出できる、pH感受性リンカーであり得る。酸性に感受性のあるリンカーとしては、これに限定されるものではないが、例えば、下記の式のものが挙げられる。
-CR=N-NR-、-CR=N-O-、-CR=N-NR-CO-、
-N=N-CO-、-OCOO-、-NR-COO-
【0012】
いくつかの実施形態において、Bの各分岐は、グルタチオン、チオレドキシンファミリーメンバー(WCGH/PCK)またはチオレダクターゼなどの、化学的または酵素的な切断によって、腫瘍部位および/または腫瘍細胞内で薬物Dまたはその誘導体を放出できる、ジスルフィド結合リンカーであり得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、Aは、抗原に対して一価または二価である単一特異性抗体であり、例えば、抗原に対して一価または二価の単一特異性一本鎖抗体である。
【0014】
いくつかの実施形態において、Aは、多重特異性抗体であり、例えば、二重特異性一本鎖抗体である。
【0015】
いくつかの実施形態において、二重特異性抗体の2つの結合ドメインは、同じ腫瘍関連抗原(TAA)分子の2つに、2つの異なるエピトープで結合するか、または2つの異なるTAA分子に結合する。
【0016】
さらなる実施形態において、Aは、癌細胞で発現されるHer2に結合する、一本鎖抗Her2×抗Her2抗体(SCAHer2×SCAHer2)である。SCAHer2×SCAHer2抗体の2つの結合ドメインは、2つのHer2分子の同じエピトープに、または2つのHer2分子の2つの異なるエピトープに結合し得る。いくつかの実施形態において、抗体は、配列番号1または配列番号2に示される、アミノ酸配列を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、一本鎖抗体の2つの結合ドメインは、リンカーを介して連結され、リンカーは、Lへの抗体の部位特異的コンジュゲーションのための非天然アミノ酸残基またはシステインなどの部分を含み得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、Dは、任意のDNA架橋剤、微小管阻害剤、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、またはそれらの組み合わせから選択され得る。
【0019】
いくつかの実施形態において、Dは、MMAE、MMAF、SN38、DM1、DM4、カリケアマイシン、ピロロベンゾジアゼピン、デュオカルマイシン、またはそれらの誘導体、またはそれらの組み合わせなどから選択され得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、Dは、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、細胞分裂抑制薬もしくはその誘導体、またはSN38、強力なトポイソメラーゼI阻害剤もしくはその誘導体、またはそれらの組み合わせである。
【0021】
さらなる実施形態において、Dは、MMAEであり、4-アミノベンジルアルコール(PAB)などの自壊スペーサーおよびバリン-シトルリンなどのトリガー部分に結合される。
【0022】
上記の態様および実施形態のいずれかにおいて、非免疫原性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、炭水化物ポリマー、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピル-メタクリルアミド(HPMA)、およびそれらのコポリマーからなる群から選択され得る。好ましくは、非免疫原性ポリマーは、PEGであり、例えば、分岐PEGまたは直鎖PEGである。PEGの総分子量は、5000~100,000ダルトンの範囲、例えば、5000~80,000、10,000~60,000、および20,000~40,000ダルトンの範囲であり得る。PEGは、永続的な結合または切断可能な結合のいずれかを介して、多官能性部分Tに結合することができる。
【0023】
(LとプロテインAとの間の結合を形成する部位特異的コンジュゲーションのための官能基は、チオール、マレイミド、2-ピリジルジチオ変異体、芳香族スルホンまたはビニルスルホン、アクリレート、ブロモアセトアミドまたはヨードアセトアミド、アジド、アルキン、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)、カルボニル、2-アミノ-ベンズアルデヒドまたは2-アミノ-アセトフェノン基、ヒドラジド、オキシム、アシルトリフルオロホウ酸カリウム、O-カルバモイルヒドロキシルアミン、トランス-シクロオクテン、テトラジン、トリアリールホスフィン、ボロン酸、ヨウ素などからなる群から選択され得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、(Lの1つは、アジドとアルキンから、またはマレイミドとチオールから形成される結合(リンケージ)を含み得る。いくつかの実施形態において、アルキンは、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)であり得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、Tはリジンであり得、PはPEGであり得、yは1であり得、アルキンはジベンゾシクロオクチル(DBCO)であり得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、Aは、抗体フラグメント、一本鎖抗体、ナノボディ、もしくは任意のその抗原結合フラグメント、またはそれらの組み合わせを含む、アジドが付けられた単一特異性抗体または多重特異性抗体または抗原結合タンパク質、に由来することができ、アジドは、それぞれの(Lでアルキンに結合し得る。他の実施形態において、プロテインAは、抗体フラグメント、一本鎖抗体、ナノボディもしくは任意のその抗原結合フラグメント、またはそれらの組み合わせを含む、チオールが付けられた単一特異性抗体または多重特異性抗体または抗原結合タンパク質、に由来することができ、チオールは、それぞれの(Lでマレイミドに結合し得る。
【0027】
上記の抗体薬物コンジュゲートは、(i)抗体またはタンパク質またはその改変形態に部位特異的コンジュゲートが可能な末端官能基を有する、高担持非免疫原性ポリマー薬物コンジュゲートを製造すること;および、(ii)非免疫原性ポリマー薬物コンジュゲートを、抗体またはタンパク質またはその改変構造に部位特異的にコンジュゲートさせて、式Ia、式Ibまたは式Icの化合物を形成すること、を含む方法によって、製造することができる。いくつかの例では、コンジュゲートの工程の前に、抗体またはタンパク質を小分子リンカーで修飾することができる。
【0028】
本発明はまた、上記の抗体薬物コンジュゲート、例えば、抗原に対して一価または多価であるPEG化単一特異性または二重特異性一本鎖抗体薬物コンジュゲート、および、薬学的に許容される担体、を含む、医薬製剤を提供する。
【0029】
本発明はさらに、有効量の上記の抗体薬物コンジュゲート、例えば、抗原に対して一価または多価であるPEG化単一特異性または二重特異性一本鎖抗体薬物コンジュゲート、を投与することを含む、それを必要とする対象において疾患を治療する方法を提供する。
【0030】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、図面、明細書、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0031】
本開示はさらに、以下の実施形態を提供する。
実施形態1
式(Ib):
【化5】
[式中、
Pは、非免疫原性ポリマーであり;
Mは、H、または、C1-50アルキルおよびアリールから選択される末端キャッピング基であり、ここで、前記アルキルの1つ以上の炭素は、ヘテロ原子で任意に置き換えられていてもよく;
yは、1~10から選択される整数、例えば、1~5、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10、であり;
Aは、抗体、またはその抗原結合フラグメントであり;
Tは、多官能性小分子リンカー部分であり;
およびLは、それぞれ独立して、ヘテロまたはホモ二官能性リンカーであり;
aおよびbは、それぞれ、0~10から選択される整数、例えば、0~5、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、であり;
Bは、分枝リンカーであり、ここで、各分枝は、自壊スペーサーに連結されたアミノ酸配列または炭水化物部分を有していて、酵素によるアミノ酸配列または炭水化物部分の切断により自壊メカニズムが誘発されて、Dが放出されるか、あるいは、各分枝は、ジスルフィド結合または切断可能な結合を有していて、ジスルフィド結合または切断可能な結合の切断により、Dまたはその誘導体が放出され;
Dは、それぞれ独立して、細胞傷害性小分子またはペプチドであり;および、
nは、1~25から選択される整数、例えば、1~20、1~15、1~10、1~5、5~25、5~20、5~15、5~10、10~25、10~20、10~15、15~25、15~20、または20~25、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、である。]
で示される、化合物。
実施形態2
Tが、ヒドロキシル、アミノ、ヒドラジニル、アジド、アルケン、アルキン、カルボキシル(アルデヒド、ケトン、エステル、カルボン酸、無水物、ハロゲン化アシル)、チオール、ジスルフィド、ニトリル、エポキシド、イミン、ニトロ、およびハライドから独立して選択される3つの官能基を有する分子に由来する三官能性リンカーであり、そして、Tと(Lとの間の結合およびTと(Lとの間の結合は、同一または異なる、実施形態1に記載の化合物。
実施形態3
Tが、リジンであるか、またはリジンに由来するものである、実施形態2に記載の化合物。
実施形態4
のリンカー末端の官能基が、Aとの部位特異的コンジュゲーションが可能であり、そして、チオール、マレイミド、2-ピリジルジチオ変異体、芳香族スルホンまたはビニルスルホン、アクリレート、ブロモまたはヨードアセトアミド、アジド、アルキン、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)、カルボニル、2-アミノベンズアルデヒドまたは2-アミノアセトフェノン基、ヒドラジド、オキシム、アシルトリフルオロホウ酸カリウム、O-カルバモイルヒドロキシルアミン、trans-シクロオクテン、テトラジン、トリアリールホスフィン、ボロン酸、およびヨウ素、からなる群から選択される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態5
抗体が、単一特異性または多重特異性の、完全長抗体、一本鎖抗体、ナノボディ(nanobody)、またはそれらの抗原結合ドメインである、実施形態1~4のいずれか1つに記載の化合物。
【0032】
実施形態6
抗体が、単一特異性一本鎖抗体である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態7
単一特異性一本鎖抗体が、Her2などの腫瘍関連抗原(TAA)に結合する、実施形態6に記載の化合物。
実施形態8
単一特異性一本鎖抗体が、Her2に結合する2つの結合ドメインを有する、実施形態7に記載の化合物。
実施形態9
単一特異性一本鎖抗体が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態8に記載の化合物。
実施形態10
抗体が、二重特異性抗体、例えば二重特異性一本鎖抗体、である、実施形態1~5のいずれか1つに記載の化合物。
【0033】
実施形態11
二重特異性抗体の2つの結合ドメインが、同じ腫瘍関連抗原(TAA)に結合するか、2つの異なるTAAに結合するか、または、TAA、およびT細胞またはNK細胞上で発現される抗原(例えば、T細胞受容体の成分)に結合する、実施形態10に記載の化合物。
実施形態12
抗体が、抗Her2×抗Her2一本鎖二重特異性抗体である、実施形態11に記載の化合物。
実施形態13
抗体が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態12に記載の化合物。
実施形態14
単一特異性一本鎖抗体の2つの結合ドメインが、リンカーを介して連結され、そして、該リンカーが、抗体のLへの部位特異的コンジュゲーションのための非天然アミノ酸残基またはシステインなどの部分を含む、実施形態6~9のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態15
二重特異性一本鎖抗体の2つの結合ドメインが、リンカーを介して連結され、そして、該リンカーが、抗体のLへの部位特異的コンジュゲーションのための非天然アミノ酸残基またはシステインなどの部分を含む、実施形態10~13のいずれか1つに記載の化合物。
【0034】
実施形態16
非天然アミノ酸が、遺伝的にコードされたアルケンリジン(例えば、N6-(ヘキサ-5-エノイル)-L-リジン)、2-アミノ-8-オキソノナン酸、mまたはp-アセチル-フェニルアラニン、β-ジケトン側鎖を有するアミノ酸(例えば、2-アミノ-3-(4-(3-オキソブタノイル)フェニル)プロパン酸)、(S)-2-アミノ-6-(((1R,2R)-2-アジドシクロペンチルオキシ)カルボニルアミノ)ヘキサン酸、アジドホモアラニン、ピロリシン類似体N6-((プロパ-2-イン-1-イルオキシ)カルボニル)-L-リジン、(S)-2-アミノ-6-ペンタ-4-インアミドヘキサン酸、(S)-2-アミノ-6-((プロパ-2-インイルオキシ)カルボニルアミノ)ヘキサン酸、(S)-2-アミノ-6-((2-アジドエトキシ)カルボニルアミノ)ヘキサン酸、p-アジドフェニルアラニン、パラ-アジドフェニルアラニン、Nε-アクリロイル-1-リジン、Nε-5-ノルボルネン-2-イルオキシカルボニル-1-リジン、N-ε-(シクロオクタ-2-イン-1-イルオキシ)カルボニル)-L-リジン、N-ε-(2-(シクロオクタ-2-イン-1-イルオキシ)エチル)カルボニル-L-リジン、遺伝的にコードされたテトラジンアミノ酸(例えば、4-(6-メチル-s-テトラジン-3-イル)アミノフェニルアラニン)、から選択される、実施形態14~15のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態17
Dが、DNA架橋剤、微小管阻害剤、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、またはそれらの組み合わせから選択される、実施形態1~16のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態18
Dが、MMAE、MMAF、SN38、DM1、DM4、カリケアマイシン、ピロロベンゾジアゼピン、デュオカルマイシン、またはそれらの誘導体、またはそれらの組み合わせから選択される、実施形態17に記載の化合物。
実施形態19
Dが、ビンカアルカロイド、ラウリマリド、タキサン、コルヒチン、ツブリシン(tubulysin)、クリプトフィシン(Cryptophycin)、ヘミアステリン(Hemiasterlin)、セマドチン(Cemadotin)、リゾキシン(Rhizoxin)、ディスコデルモライド(Discodermolide)、タッカロノリド(taccalonolide)AまたはBまたはAFまたはAJ、タッカロノリド(taccalonolide)AI-エポキシド、CA-4、エポチロンAおよびB、ラウリマリド、パクリタキセル、ドセタキセル、ドキソルビシン、カンプトテシン、iSGD-1882、センタナマイシン(centanamycin)、PNU-159682、ウンシアラマイシン(uncialamycin)、インドリノベンゾジアゼピン二量体、β-アマニチン、アマトキシン、タイランスタチン(thailanstatin)、またはそれらの誘導体もしくは類似体、またはそれらの組み合わせから選択される、実施形態17に記載の化合物。
実施形態20
非免疫原性ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の化合物。
【0035】
実施形態21
PEGが、直鎖PEG、または分枝PEGである、実施形態20に記載の化合物。
実施形態22
ポリエチレングリコールの少なくとも1つの末端が、メチルまたは低分子量アルキルでキャッピングされている、実施形態20~21のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態23
PEGの総分子量が、100~80000である、実施形態20~22のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態24
PEGが、永続的な結合または切断可能な結合を介して、三官能性または四官能性または他の環式または非環式の多官能性部分T(例えば、リジン)に結合している、実施形態20~23のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態25
式(Ic):
【化6】
[式中、
Pは、直鎖PEGであり;
Aは、抗体、またはその抗原結合フラグメントであり;
およびLは、それぞれ独立して、二官能性リンカーであり;
aおよびbは、それぞれ、0~10から選択される整数、例えば、0~5、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、であり;
Bは、分枝リンカーであり、ここで、各分枝は、自壊スペーサーに連結されたアミノ酸配列または炭水化物部分を有していて、酵素によるアミノ酸配列または炭水化物部分の切断により自壊メカニズムが誘発されて、Dが放出されるか、あるいは、各分枝は、ジスルフィド結合または切断可能な結合を有していて、ジスルフィド結合または切断可能な結合の切断により、Dまたはその誘導体が放出され;
Dは、それぞれ独立して、細胞傷害性小分子またはペプチドであり;
nは、1~25から選択される整数、例えば、1~20、1~15、1~10、1~5、5~25、5~20、5~15、5~10、10~25、10~20、10~15、15~25、15~20、または20~25、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、である。]
で示される、化合物。
【0036】
実施形態26
のリンカー末端の官能基が、Aとの部位特異的コンジュゲーションが可能であり、そして、チオール、マレイミド、2-ピリジルジチオ変異体、芳香族スルホンまたはビニルスルホン、アクリレート、ブロモまたはヨードアセトアミド、アジド、アルキン、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)、カルボニル、2-アミノベンズアルデヒドまたは2-アミノアセトフェノン基、ヒドラジド、オキシム、アシルトリフルオロホウ酸カリウム、O-カルバモイルヒドロキシルアミン、trans-シクロオクテン、テトラジン、トリアリールホスフィン、ボロン酸、およびヨウ素、からなる群から選択される、実施形態25に記載の化合物。
実施形態27
抗体が、単一特異性または多重特異性の、完全長抗体、一本鎖抗体、ナノボディ(nanobody)、またはその抗原結合ドメインである、実施形態25~26のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態28
抗体が、単一特異性一本鎖抗体であり、場合により該単一特異性一本鎖抗体がHer2などの腫瘍関連抗原(TAA)に結合してもよい、実施形態27に記載の化合物。
実施形態29
単一特異性一本鎖抗体が、Her2に結合する2つの結合ドメインを有する、実施形態28に記載の化合物。
実施形態30
単一特異性一本鎖抗体が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態29に記載の化合物。
【0037】
実施形態31
抗体が、二重特異性抗体、例えば二重特異性一本鎖抗体、である、実施形態27に記載の化合物。
実施形態32
二重特異性抗体の2つの結合ドメインが、同じ腫瘍関連抗原(TAA)に結合するか、2つの異なるTAAに結合するか、または、TAA、およびT細胞またはNK細胞上で発現される抗原(例えば、T細胞受容体の成分)に結合する、実施形態31に記載の化合物。
実施形態33
抗体が、抗Her2×抗Her2一本鎖二重特異性抗体である、実施形態32に記載の化合物。
実施形態34
抗体が、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する、実施形態33に記載の化合物。
実施形態35
単一特異性一本鎖抗体の2つの結合ドメインが、リンカーを介して連結され、そして、該リンカーが、抗体のLへの部位特異的コンジュゲーションのための非天然アミノ酸残基またはシステインなどの部分を含む、実施形態28~30のいずれか1つに記載の化合物。
【0038】
実施形態36
二重特異性一本鎖抗体の2つの結合ドメインが、リンカーを介して連結され、そして、該リンカーが、抗体のLへの部位特異的コンジュゲーションのための非天然アミノ酸残基またはシステインなどの部分を含む、実施形態31~34のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態37
抗体のLへの部位特異的コンジュゲーションのための非天然アミノ酸残基が、遺伝的にコードされたアルケンリジン(例えば、N6-(ヘキサ-5-エノイル)-L-リジン)、2-アミノ-8-オキソノナン酸、mまたはp-アセチル-フェニルアラニン、β-ジケトン側鎖を有するアミノ酸(例えば、2-アミノ-3-(4-(3-オキソブタノイル)フェニル)プロパン酸)、(S)-2-アミノ-6-(((1R,2R)-2-アジドシクロペンチルオキシ)カルボニルアミノ)ヘキサン酸、アジドホモアラニン、ピロリシン類似体N6-((プロパ-2-イン-1-イルオキシ)カルボニル)-L-リジン、(S)-2-アミノ-6-ペンタ-4-インアミドヘキサン酸、(S)-2-アミノ-6-((プロパ-2-インイルオキシ)カルボニルアミノ)ヘキサン酸、(S)-2-アミノ-6-((2-アジドエトキシ)カルボニルアミノ)ヘキサン酸、p-アジドフェニルアラニン、パラ-アジドフェニルアラニン、Nε-アクリロイル-1-リジン、Nε-5-ノルボルネン-2-イルオキシカルボニル-1-リジン、N-ε-(シクロオクタ-2-イン-1-イルオキシ)カルボニル)-L-リジン、N-ε-(2-(シクロオクタ-2-イン-1-イルオキシ)エチル)カルボニル-L-リジン、遺伝的にコードされたテトラジンアミノ酸(例えば、4-(6-メチル-s-テトラジン-3-イル)アミノフェニルアラニン)、から選択される、実施形態35~36のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態38
Dが、DNA架橋剤、微小管阻害剤、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、またはそれらの組み合わせから選択される、実施形態25~37のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態39
Dが、MMAE、MMAF、SN38、DM1、DM4、カリケアマイシン、ピロロベンゾジアゼピン、デュオカルマイシン、またはそれらの誘導体、またはそれらの組み合わせから選択される、実施形態38に記載の化合物。
実施形態40
Dが、ビンカアルカロイド、ラウリマリド、タキサン、コルヒチン、ツブリシン(tubulysin)、クリプトフィシン(Cryptophycin)、ヘミアステリン(Hemiasterlin)、セマドチン(Cemadotin)、リゾキシン(Rhizoxin)、ディスコデルモライド(Discodermolide)、タッカロノリド(taccalonolide)AまたはBまたはAFまたはAJ、タッカロノリド(taccalonolide)AI-エポキシド、CA-4、エポチロンAおよびB、ラウリマリド、パクリタキセル、ドセタキセル、ドキソルビシン、カンプトテシン、iSGD-1882、センタナマイシン(centanamycin)、PNU-159682、ウンシアラマイシン(uncialamycin)、インドリノベンゾジアゼピン二量体、β-アマニチン、アマトキシン、タイランスタチン(thailanstatin)、またはそれらの誘導体もしくは類似体、またはそれらの組み合わせから選択される、実施形態38に記載の化合物。
【0039】
実施形態41
PEGの総分子量が、100~80000である、実施形態25~40のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態42
およびLが、それぞれ独立して、
-(CHXY(CH-、
-X(CHO(CHCHO)(CHY-、
-(CH)ヘテロシクリル-、
-(CHX-、
-X(CHY-、
-W-(CHC(O)NR(CHO(CHCHO)(CHC(O)-、
-C(O)(CHO(CHCHO)(CHC(O)(CHNR-、
-W-(CHC(O)NR(CHO(CHCHO)(CHC(O)(CHC(O)-、
[式中、a、b、c、d、およびeは、それぞれ、0~25から独立して選択される整数であり、例えば、0~20、0~15、0~10、0~5、5~25、5~20、5~15、5~10、10~25、10~20、10~15、15~25、15~20、または20~25、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、であり;XおよびYは、それぞれ、C(=O)、NR、S、O、CR、または不存在から独立して選択され;RおよびRは、独立して、水素、C1-10アルキル、または(CH1-10C(=O)を表し;Wおよび/またはWは、マレイミドをベースとした部分に由来し、Wは、トリアゾリルまたはテトラゾリル含有基を表し;ヘテロシクリル基は、マレイミド由来の部分またはテトラゾリルをベースとした部分またはトリアゾリルをベースとした部分から選択される。]
から選択される、実施形態1~41のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態43
(Lおよび(Lは、それぞれ独立して、
【化7】
[式中、nおよびmは整数であり、0~20から独立して選択され、例えば、0~15、0~10、0~5、5~20、5~15、5~10、10~20、10~15、または15~20、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20、である。]
から選択される、実施形態1~41のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態44
分岐リンカーBが、伸長スペーサー、トリガーユニット、自壊スペーサー、またはそれらの任意の組み合わせを含み、場合により、該トリガーユニットは、カテプシンB、プラスミン、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、β-グルクロニダーゼ、β-ガラクトシダーゼなどの酵素によって切断可能な、アミノ酸配列またはβ-グルコロニドまたはβ-ガラクトシドのトリガー部分;酸性pH条件で薬物Dまたはその誘導体を放出できるpH感受性リンカー;または、グルタチオン、チオレドキシンファミリーメンバー(WCGH/PCK)またはチオレダクターゼによって薬物Dまたはその誘導体を放出できるジスルフィド結合リンカー、である、実施形態1~43のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態45
分岐リンカーBが、
【化8】
[式中、
a、b、c、d、e、およびfは、それぞれ整数であり、1~25から独立して選択され、例えば、1~20、1~15、1~10、1~5、5~25、5~20、5~15、5~10、10~25、10~20、10~15、15~25、15~20、または20~25、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、であり;
(A)は、Val-Cit、al-Ala、Val-Lys、Phe-Lys、Phe-Cit、Phe-Arg、Phe-Ala、Ala-Lys、Leu-Cit、Ile-Cit、Trp-Cit、D-Phe-LPhe-Lys、Phe-Phe-Lys、D-Phe-Phe-Lys、Gly-Phe-Lys、Gly-Phe-Leu-Gly、またはAla-Leu-Ala-Leuなどの、アミノ酸配列のトリガーユニットであり;
PABは、パラ-アミノベンジルアルコールであり;
Exは、それぞれ、
-NR(CHO(CHCHO)(CHC(O)-、
-C(O)(CHNR-、
-NR(CHO(CHCHO)(CHNR-、
-NR(CHNR-、
-NR(CHO(CHCHO)(CHO-、
-O(CHNR-、
-C(O)(CHO-、
-O(CHO(CHCHO)(CHC(O)-、
-C(O)(CHO(CHCHO)(CHC(O)-、
-C(O)(CHC(O)-、または、
不存在、
(式中、x、y、およびzは、それぞれ整数であり、0~25から独立して選択され、例えば、0~20、0~15、0~10、0~5、5~25、5~20、5~15、5~10、10~25、10~20、10~15、15~25、15~20、または20~25、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、であり;そして、RおよびRは、独立して、水素またはC1-10アルキル基を表す。)
から独立して選択されるリンカー鎖を含む伸長スペーサーである。]
から選択される、実施形態44に記載の化合物。
【0040】
実施形態46
分岐リンカーBが、
【化9】
から選択される、実施形態1~43のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態47
下記の式:
【化10】
【化11】
【化12】
から選択される、実施形態1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
実施形態48
下記の式:
【化13】
から選択される、実施形態25に記載の化合物。
実施形態49
実施形態1~48のいずれか1つに記載の化合物を製造する方法であって、
a)部位特異的コンジュゲーションのための遊離官能基を有する非免疫原性修飾された(例えばPEG化された)薬物コンジュゲートを製造する工程;
b)非免疫原性修飾された(例えばPEG化された)薬物コンジュゲートを抗体に部位特異的にコンジュゲートさせて、式(Ib)または式(Ic)の化合物を提供する工程、
を含む、方法。
実施形態50
有効量の実施形態1~48のいずれか1つに記載の化合物、および薬学的に許容される塩、担体または賦形剤を含む、医薬製剤。
【0041】
実施形態51
乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、胃癌、結腸癌、大腸癌、唾液腺癌、甲状腺癌、および子宮内膜癌からなる群から選択される癌の治療に使用するための、実施形態1~48のいずれか1つに記載の化合物。
実施形態52
乳癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、膀胱癌、胃癌、結腸癌、大腸癌、唾液腺癌、甲状腺癌、および子宮内膜癌からなる群から選択される癌の治療において、有効量の別の抗癌剤、免疫抑制剤と組み合わせて使用するための、実施形態1~48のいずれか1つに記載の化合物。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、実施例1に記載の分岐リンカー中間体化合物7を製造する反応スキームを模式的に示す。
図2図2は、実施例1に記載の化合物14 Val-Cit-PAB-MMAEを製造する反応スキームを模式的に示す。
図3図3は、実施例1に記載の化合物19 30kmPEG-Lys(Mal)-(Val-Cit-PAB-MMAE)を製造する反応スキームを模式的に示す。
図4図4は、実施例3に記載の化合物20 30kmPEG-Lys(SCAHer2/SCAHer2)-(Val-Cit-PAB-MMAE)を製造する反応スキームを模式的に示す。
図5図5は、実施例4における化合物7 Val-Cit-PABC-MMAEを製造する反応スキームを模式的に示す。
図6図6は、実施例5における化合物13(2×MMAEを有する分岐リンカーB)を製造する反応スキームを模式的に示す。
図7図7は、実施例6における化合物18(2×MMAEを有する分岐リンカーB)を製造する反応スキームを模式的に示す。
図8図8は、実施例7における化合物22(4×MMAEを有する分岐リンカーB)を製造する反応スキームを模式的に示す。
図9図9は、実施例8における化合物27(4×MMAEを有する分岐リンカーB)を製造する反応スキームを模式的に示す。
図10図10は、実施例9における化合物32(30kmPEG(マレイミド)-2MMAE)を製造する反応スキームを模式的に示す。
図11図11は、実施例10における化合物35(20kmPEG(マレイミド)-4MMAE)を製造する反応スキームを模式的に示す。
図12図12は、実施例11における化合物39(マレイミド-20mPEG-4MMAE)を製造する反応スキームを模式的に示す。
図13図13は、実施例12における化合物41(DBCO-20mPEG-4MMAE)を製造する反応スキームを模式的に示す。
図14図14は、実施例13における精製された化合物42(SCAHer2II×SCAHer2IV)のSDS-PAGEおよびSEC-HPLC分析である。
図15図15は、実施例14における化合物43[30kmPEG-(SCAHer2II/SCAHer2IV)-2MMAE]を製造する反応スキーム、およびSDS-PAGE分析を模式的に示す。
図16図16は、実施例15における化合物44[SCAHer2II/SCAHer2IV-20kPEG-4MMAE]を製造する反応スキーム、およびSDS-PAGE分析を模式的に示す。
図17図17は、実施例16において、化合物43(JY201)が強力なインビトロ細胞毒性を有することを示している。
図18-1】図18-1は、実施例16において、同等のペイロードを有する化合物44(JY201b)が、腫瘍細胞に対するインビトロでの細胞毒性の誘導において、T-DM1より強力であることを示している。
図18-2】図18-2は、図18-1の続きであり、実施例16において、同等のペイロードを有する化合物44(JY201b)が、腫瘍細胞に対するインビトロでの細胞毒性の誘導において、T-DM1より強力であることを示している。
図19図19は、実施例14において、PEG化BsADC 43(JY201)が、標的細胞によるインターナリゼーションの増加を示すことを示している。
図20図20は、実施例15において、PEG化BsADC 43(JY201)が、インターナリゼーション後に標的細胞に保持されることを示す。
図21図21は、実施例16において、PEG化BsADC 43(JY201)が、巨核球に対して毒性を示さないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明では、PEG化された単一特異性または多重特異性の抗体薬物コンジュゲートが提供される。本発明では、高いDARを得るために抗体の2つ以上のジスルフィド結合を破壊する必要がなく、同種のADCを実現でき、これは、毒性、有効性、調整管理、および製造、特に多重特異性ADCの製造の点で、異種のADCよりも大きな利点がある。
【0044】
さらに、本発明は、巨核球または他の正常細胞に対して毒性を示さず、治療域を増加させるだけでなく、インターナリゼーションの増加、および固形腫瘍への深い浸透を達成するための比較的小さなサイズの一本鎖抗体分子によって、コンジュゲートの抗腫瘍効果を増強させた、PEG化単一特異性または二重特異性一本鎖抗体薬物コンジュゲートの新規な構造形式を提供する。したがって、本発明は、現在のADC技術における問題に対処し、新規なPEG化単一特異性または多重特異性一本鎖抗体薬物コンジュゲートを用いて癌治療を向上する。
【0045】
I.コンジュゲート
本発明の一態様において、式(Ia):
【化14】
式(Ia)
で示される化合物が提供される。
上記化合物において、Pは非免疫原性ポリマーであり得る。Tは、三官能性小分子リンカー部分などの多官能性部分であり得、抗体またはタンパク質との部位特異的コンジュゲーションが可能な少なくとも1つの官能基を有する。Aは、完全長抗体、一本鎖抗体、ナノボディ(nanobody)、またはその任意の抗原結合フラグメント、またはそれらの組み合わせなど、任意の単一特異性または多重特異性抗体またはタンパク質であり得る。Dは、任意の細胞傷害性小分子またはペプチド(n=1~25)であり、各Dは、同じでも異なっていてもよい。
【0046】
特に、本発明の一態様は、式IbまたはIc:
【化15】
式Ib
【化16】
式Ic
で示されるコンジュゲートを提供する。
式Ibまたは式Icのコンジュゲートにおいて、Pは、PEGなどの非免疫原性ポリマーであり得;
Mは、H、または、C1-50アルキルおよびアリールから選択される末端キャッピング基であり得、ここで、前記アルキルの1つ以上の炭素は、ヘテロ原子で置き換えられていてもよく;
yは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10から選択される整数であり得;
Tは、2つ以上の官能基を有する部分であり得、ここで、Tと(Lとの間の結合、およびTと(Lとの間の結合は、同じであっても異なっていてもよく;
およびLは、それぞれ、独立して、二官能性リンカーであり得;
aおよびbは、それぞれ、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10から選択される整数であり得;
Bは、分岐リンカーであり得、ここで、各分岐は、伸長スペーサー、トリガーユニット、自壊スペーサーまたはそれらの任意の組み合わせを含むことができ、ここで、トリガーユニットは、カテプシンB、プラスミン、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、β-グルクロニダーゼ、またはβ-ガラクトシダーゼなどの酵素によって切断可能な、アミノ酸配列またはβ-グルコロニドまたはβ-ガラクトシドトリガー部分;酸性pH条件で薬物Dまたはその誘導体を放出できる、pH感受性リンカー;または、グルタチオン、チオレドキシンファミリーメンバー(WCGH/PCK)またはチオレダクターゼによって薬物Dまたはその誘導体を放出できる、ジスルフィド結合リンカー、であり得る。
Aは、抗原に対して一価または多価である、抗体フラグメント、一本鎖抗体、ナノボディ(nanobody)、または抗原結合フラグメントを含む、単一特異性または多重特異性抗体または抗原結合タンパク質であり得;
Dは、細胞傷害性小分子またはペプチドまたはそれらの誘導体であり得、そして、酵素的切断および/または自壊メカニズム、またはpH誘導加水分解のいずれかを介してBから放出されることができ;各Dは、同じでも異なっていてもよく;
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、および25から選択される整数である。
【0047】
いくつかの実施形態において、Bの各分岐は、トリガー部分、例えば、自壊スペーサーを介して薬物Dに結合するか、または薬物Dに直接結合する、アミノ酸配列またはジスルフィド部分またはβ-グルコロニドまたはβ-ガラクトシド、を含む。自壊スペーサーとしては、これに限定されるものではないが、例えば、下記のものが挙げられる。
【化17】
式中、R、R、R、Rは、H、またはC1-10アルキルであり得る。そのような実施形態において、Dは、活性なOまたはNまたはS官能基を含む任意の小分子またはペプチド薬物またはその誘導体であり得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、Bの各分枝は、腫瘍部位および/または腫瘍細胞内の酸性pH条件で薬物Dまたはその誘導体を放出できる、pH感受性リンカーを含み得る。酸性感受性リンカーとしては、これに限定されるものではないが、例えば、以下の式のものが挙げられる。
-CR=N-NR-、-CR=N-O-、-CR=N-NR-CO-、
-N=N-CO-、-OCOO-、-NR-COO-
【0049】
いくつかの実施形態において、Bの各分枝は、薬物Dまたはその誘導体を、腫瘍部位および/または腫瘍細胞内部において、酵素切断によって、例えば、グルタチオン、チオレドキシンファミリーメンバー(WCGH/PCK)またはチオレダクターゼによって、放出することができる、ジスルフィド結合リンカーを含み得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、Aは、2つのHer2抗原上の2つの異なるエピトープに結合(SCAHer2II×SCAHer2IV)することができる、一本鎖二重特異性抗体である。
【0051】
いくつかの実施形態において、SCAHer2II×SCAHer2IVのアミノ酸配列は、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVSIGVAWYQQKPGKAPKLLIYSASYRYTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYYIYPYTFGQGTKVEIKRTGGSGGSGGSGGSGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFTDYTMDWVRQAPGKGLEWVADVNPNSGGSIYNQRFKGRFTLSVDRSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARNLGPSFYFDYWGQGTLVTVSSGCGSGGSGGSGGSGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSGGSGGSGGSGGSGGDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTHHHHHH(配列番号1)、であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、Aは、2つのHer2抗原上の2つの同じエピトープに結合することができる、一本鎖抗Her2×抗Her2単一特異性抗体である。
【0053】
いくつかの実施形態において、SCAHer2IV/SCAHer2IVのアミノ酸配列は、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTGGSGGSGGSGGSGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSGCGSGGSGGSGGSGGDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTGGSGGSGGSGGSGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSHHHHHH(配列番号2)、であり得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、Aは、2つの異なる抗原Her2およびHer3に結合(SCAHer2×SCAHer3)することができる、一本鎖二重特異性抗体であり得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、SCAHer2IV×SCAHer3のアミノ酸配列は、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTGGSGGSGGSGGSGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSGCGSGGSGGSGGSGGQVQLQQWGAGLLKPSETLSLTCAVYGGSFSGYYWSWIRQPPGKGLEWIGEINHSGSTNTNPSLKSRVTISVETSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARDKWTWYFDLWGRGTLVTVSSGGSGGSGGSGGSGGDIEMTQSPDSLAVSLGERATINCRSSQSVLYSSSNRNYLAWYQQNPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQYYSTPRTFGQGTKVEIKHHHHHH(配列番号3)、であり得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、Aは、Met1およびMet2に結合(SCAc-Met1×SCAc-Met2)する、一本鎖二重特異性抗体である。
【0057】
いくつかの実施形態において、SCAc-Met1×SCAc-Met2のアミノ酸配列は、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSVSSSVSSIYLHWYQQKPGKAPKLLIYSTSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCIQYSGYPLTFGGGTKVEIKGGSGGSGGSGGSGGQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYYMHWVRQAPGQGLEWMGRVNPNRGGTTYNQKFEGRVTMTTDTSTSTAYMELRSLRSDDTAVYYCARTNWLDYWGQGTTVTVSGCGSGGSGGSGGSGGQVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYIFTAYTMHWVRQAPGQGLEWMGWIKPNNGLANYAQKFQGRVTMTRDTSISTAYMELSRLRSDDTAVYYCARSEITTEFDYWGQGTLVTVSSGGSGGSGGSGGSGGDIVMTQSPDSLAVSLGERATINCKSSESVDSYANSFLHWYQQKPGQPPKLLIYRASTRESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQSKEDPLTFGGGTKVEIKRHHHHHH(配列番号4)、であり得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、Dは、酵素および/または自壊メカニズムまたはPH誘導加水分解のいずれかによって、腫瘍部位または腫瘍細胞内部のいずれかに、放出され得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、Dは、DNA架橋剤、微小管阻害剤、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、またはそれらの組み合わせ、から選択することができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、Dは、アウリスタチン(auristatin)(MMAE、MMAF)、ビンカアルカロイド、ラウリマリド、タキサン、コルヒチン、メイタンシン(DM1、DM4)、ツブリシン(tubulysin)、クリプトフィシン(Cryptophycin)、ヘミアステリン(Hemiasterlin)、セマドチン(Cemadotin)、リゾキシン(Rhizoxin)、ディスコデルモライド(Discodermolide)、タッカロノリド(taccalonolide)AまたはBまたはAFまたはAJ、タッカロノリド(taccalonolide)AI-エポキシド、CA-4、エポチロンAおよびB、ラウリマリド、パクリタキセル、ドセタキセル、ピロロベンゾジアゼピン、デュオカルマイシン、ドキソルビシン、カリケアマイシン、カンプトテシン、SN38、iSGD-1882、センタナマイシン(centanamycin)、PNU-159682、ウンシアラマイシン(uncialamycin)、インドリノベンゾジアゼピン二量体、β-アマニチン、アマトキシン、タイランスタチン(thailanstatin)、またはそれらの誘導体もしくは類似体、またはそれらの組み合わせ、から選択することができる。
【0061】
いくつかの実施形態において、Dは、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、細胞分裂抑制薬もしくはその誘導体、またはSN38、強力なトポイソメラーゼI阻害剤もしくはその誘導体、またはそれらの組み合わせである。
【0062】
さらなる実施形態において、Dは、4-アミノベンジルアルコール(PAB)などの自壊スペーサー、および、バリン-シトルリンなどのトリガー部分、に結合して、Val-Cit-PAB-Dを形成する。
【0063】
本発明の一態様において、抗体フラグメントまたは一本鎖単一特異性または多重特異性抗体を含む抗体またはタンパク質に、部位特異的にコンジュゲートすることができる、PEG化薬物コンジュゲートを製造する方法、が提供される。本発明の別の態様において、PEG化一本鎖BsADCを製造する方法が提供される。
【0064】
PEG化一本鎖BsADCを合成するために、1~5価の単一特異性一本鎖抗体または一本鎖二重特異性抗体のコード配列またはコード配列を保有するベクターを合成し、例えばCHO発現系に導入することができる。タンパク質は、以前に記載されているように発現および精製することができる(WO2018075308)。
【0065】
部位特異的コンジュゲーション官能基を有する側鎖を有するPEG化薬物コンジュゲートの合成では、ヒドロキシル基やカルボキシル基などのPEGの末端官能基を活性化し、BocまたはFmoc保護リジンなどの三官能性小分子部分とコンジュゲートさせて、末端分岐ヘテロ二官能性PEGを形成することができる。新たに形成されたカルボキシル基は、分岐スペーサーとカップリングして、PEG-Lys(Boc)-Bを形成することができる。カップリング後、保護基を除去することができ、保護されていないPEG化分岐リンカーを、マレイミドやDBCOなどの部位特異的コンジュゲーション官能基を有する低分子リンカーとカップリングさせて、PEG-Lys(Mal)-B、またはPEG-Lys(DBCO)-B、を形成することができる。PEG化薬物コンジュゲート、例えば、PEG-lys(Mal)-B-(Val-Cit-PAB-MMAE)、またはPEG-lys(DBCO)-B-(Val-Cit-PAB-MMAE)など(ここで、nは整数であり、例えば2である)は、PEG-Lys(Mal)-B、またはPEG-Lys(DBCO)-Bと、Val-Cit-PAB-MMAEとのカップリング反応によって製造することができる。合成の最終ステップは、PEG化薬物コンジュゲートを、チオールまたはアジドが付けられた一本鎖二重特異性抗体に、部位特異的にコンジュゲートさせることである。
【0066】
あるいは、部位特異的コンジュゲーション官能基を有する側鎖を有するPEG化薬物コンジュゲートの合成では、ヒドロキシル基やカルボキシル基などのPEGの末端官能基を活性化し、BocやFmoc保護リジンなどの三官能性小分子部分とコンジュゲートさせて、末端分岐ヘテロ二官能性PEGを形成し、続いて、保護基を除去することができる。脱保護後のPEG化合物を、マレイミドやDBCOなどの部位特異的コンジュゲーション官能基を有する低分子リンカーとカップリングさせて、PEG-Lys(Mal)-OH、またはPEG-Lys(DBCO)-OH、を形成することができる。次いで、PEG-Lys(Mal)-OHまたはPEG-Lys(DBCO)-OHを、各分岐が、伸長スペーサー、トリガーユニットおよび/または自壊スペーサー介して薬物Dと結合した分岐部分と、カップリングさせて、PEG化薬物コンジュゲート、例えば、PEG-lys(Mal)-B-(Val-Cit-PAB-MMAE)、またはPEG-lys(DBCO)-B-(Val-Cit-PAB-MMAE)など(ここで、nは整数であり、例えば2である)を形成することができる。合成の最終段階は、式IaおよびIbの化合物を形成するために、チオールまたはアジドが付けられた一本鎖二重特異性抗体に、PEG化薬物コンジュゲートを部位特異的にコンジュゲートさせることである。あるいは、PEG化薬物コンジュゲートは、式Icの化合物を形成するために、同様の手法を用いて、商業的に利用可能なヘテロ二官能性PEGから合成することができる。
【0067】
II.PEGリンカー
本発明の一実施形態において、PEGは、式:
【化18】
で示されるものであり得る。
上記の式において、nは、1~約2300の整数であり得、好ましくは、5000~40000の総分子量、または所望によりそれ以上の総分子量を有するポリマーを提供し得る。Mは、H、メチル、または他の低分子量のアルキルであり得る。Mとしては、これに限定されるものではないが、例えば、H、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、またはF(CHCHが挙げられる。FおよびFは、独立して、ヒドロキシル、カルボキシル、チオール、ハライド、アミノ基などの、末端官能基であり得、官能化、活性化、および/または小分子スペーサーまたはリンカーへのコンジュゲートが可能である。qおよびmは、0~10の任意の整数であり得る。
【0068】
本発明の別の実施形態において、方法は、別の分岐PEGを用いて実施され得る。分岐PEGは、下記の式:
【化19】
で示されるものであり得る。
この式において、PEGは、ポリエチレングリコールである。mは、2~10の整数であり得、好ましくは、5000から80000の総分子量、または所望によりそれ以上の総分子量を有する、分枝PEGを提供する。Mは、メチル、または他の低分子量のアルキルであり得る。Lは、2つ以上のPEGが結合する官能性リンケージ部分であり得る。そのようなリンケージ部分としては、これに限定されるものではないが、例えば、アミノ酸、例えば、グリシン、アラニン、リジン、または1,3-ジアミノ-2-プロパノール、トリエタノールアミン、結合される3つ以上の官能基を有する5員または6員の芳香族環または脂肪族環が挙げられる。Sは、任意の切断不可能なスペーサーである。Fは、ヒドロキシル、カルボキシル、チオール、アミノ基などの末端官能基であり得る。iは、0または1である。iが0の場合、式は、下記:
【化20】
で示されるものとなる。
上記の式中、PEG、m、M、またはLの各可変基は、上記と同じ定義を有する。
【0069】
本発明の方法はまた、その末端基を官能化または活性化することができる、デキストラン、炭水化物ポリマー、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、または他の同様の非免疫原性ポリマーなどの、代替的なポリマー物質を用いて実施することもできる。前記のリストは、単なる例示であり、本明細書での使用に適した非抗原性ポリマーの種類を限定することを意図するものではない。
【0070】
III.三官能性リンカーT
Tは、P、(Lおよび(Lと結合する、三官能性リンカーを表す。Tは、3つの官能基の任意の組み合わせを有する分子から誘導することができ、官能基は、これに限定されるものではないが、例えば、ヒドロキシル、アミノ、ヒドラジニル、アジド、アルケン、アルキン、カルボキシル(アルデヒド、ケトン、エステル、カルボン酸、無水物、ハロゲン化アシル)、チオール、ジスルフィド、ニトリル、エポキシド、イミン、ニトロ、およびハライド、が挙げられる。三官能性リンカーの官能基は、同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、官能基の1つまたは2つを保護して、他の反応パートナーと選択的にコンジュゲーションを行うことができる。さまざまな保護基が当技術分野で知られており、例えば、MarchによるAdvanced Organic Chemistry (Third Edition, 1985, Wiley and Sons, New York)に示されるものなどが挙げられる。官能基はまた、Tと別の反応パートナーとの間の反応の前または後に、他の基に変換され得る。例えば、ヒドロキシル基は、メシレート基またはトシレート基に変換され得る。ハライドは、アジド基で置き換えられ得る。Tの酸性官能基は、末端アルキンを有するアミノ基とカップリングすることにより、アルキン官能基に変換され得る。
【0071】
例示的な実施形態において、Tは、リジン、1,3-ジアミノ-2-プロパノール、またはトリエタノールアミンに由来するものである。これらの分子上の官能基の1つ以上は、選択的反応のために、保護され得る。いくつかの実施形態において、Tは、Boc保護リジンに由来する。
【0072】
IV.二官能性リンカーLおよびL
リンカーLおよびLは、ともに、-(CHXY(CH-、-X(CHO(CHCHO)(CHY-、-(CHヘテロシクリル-、-(CHX-、および、-X(CHY-から独立して選択され得るリンカー鎖を含み、ここで、a、b、およびcは、それぞれ、すべてのサブユニットを含めて、0~25から選択される整数であり;XまたはYは、C(=O)、NR、S、O、CRまたは不存在から独立して選択され;および、R、R、およびRは、水素、C1-10アルキル、または(CH1-10C(=O)を表す。
【0073】
リンカーLおよびL内のヘテロシクリルリンケージ基(それが内部位置または末端位置にあるかどうかにかかわらず)は、マレイミドをベースとした部分に由来し得る。適切な前駆体としては、これに限定されるものではないが、例えば、N-スクシンイミジル4-(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、N-スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロエート)(LC-SMCC)、κ-マレイミドウンデカン酸N-スクシンイミジルエステル(KMUA)、γ-マレイミド酪酸N-スクシンイミジルエステル(GMBS)、ε-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N-(α-マレイミドアセトキシ)-スクシンイミドエステル(AMAS)、スクシンイミジル-6-(β-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、N-スクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)-ブチレート(SMPB)、およびN-(p-マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)、が挙げられる。
【0074】
いくつかの他の例示的な実施形態において、これに限定されるものではないが、各リンカーユニットは、N-スクシンイミジル-4-(ヨードアセチル)-アミノベンゾエート(SIAB)、N-スクシンイミジルヨードアセテート(SIA)、N-スクシンイミジルブロモアセテート(SBA)、または、N-スクシンイミジル3-(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)から選択される、ハロアセチルベースの部分に由来することもできる。
【0075】
あるいは、リンカーのヘテロシクリルリンケージ基は、DBCOおよびアジドなどの異なるリンカー部分のコンジュゲーションから形成される、テトラゾリルまたはトリアゾリルであってもよい。したがって、ヘテロシクリル基は、リンケージポイントとして機能する。
【0076】
いくつかの実施形態において、(Lおよび(Lは、それぞれ、
-X-(CHC(O)NR(CHO(CHCHO)(CHC(O)-、または
-C(O)(CHO(CHCHO)(CHC(O)(CHNR-、または、
-X-(CHC(O)NR(CHO(CHCHO)(CHC(O)(CHC(O)-、を含んでよく、
ここで、X、X、およびXは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立して、ヘテロシクリル基を表し;
a、b、c、dおよびeは、それぞれ、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25から選択される整数であり;および、
Rは、水素、またはC1-10アルキルを表す。
【0077】
いくつかの実施形態において、Xおよび/またはXは、マレイミドをベースとした部分に由来する。いくつかの実施形態において、Xは、トリアゾリルまたはテトラゾリル含有基を表す。いくつかの実施形態において、Rは、水素を表す。いくつかの実施形態において、a、b、c、dおよびeは、それぞれ独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10から選択される。
【0078】
いくつかの例示的な実施形態において、(Lおよび(Lは、下記から選択され得る。
【化21】
ここで、nおよびmは整数であり、独立して、0~20から選択される。
【0079】
V.分岐リンカーB
分岐リンカーBは、分岐ユニット、伸長スペーサー、トリガーユニット、自壊スペーサー、またはそれらの任意の組み合わせ、を含み得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、分岐ユニットは、下記から独立して選択され得る構造を含む。
【化22】
【0081】
他の実施形態において、分岐ユニットは、下記から独立して選択され得る構造を含む。
【化23】
【0082】
いくつかの実施形態において、各分枝の伸長スペーサーは、下記:
-X(CHO(CHCHO)(CHY-、
-X(CHY-、
またはその組み合わせ、
から独立して選択され得るリンカー鎖を含み、ここで、a、b、およびcは、それぞれ、0~25から選択される整数であり、これにはすべてのサブユニットが含まれ;XおよびYは、NR、NR、C(O)、O、または不存在から独立して選択され得;RおよびRは、独立して、水素、またはC1-10アルキル基を表す。
【0083】
他の実施形態において、トリガーユニットは、アミノ酸配列または炭水化物部分またはジスルフィド、または、酵素的または化学的に切断することができる切断可能結合、を含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、自壊スペーサーは、下記から選択され得る構造を含む。
【化24】
ここで、R、R、R、およびRは、独立して、水素、またはC1-10アルキルを表し;XおよびYは、NH、またはOまたはSであり得、cは、1または2から選択される。
【0085】
いくつかの実施形態において、自壊スペーサーは、
【化25】
である。
【0086】
いくつかの実施形態において、分岐リンカーBは、下記から選択され得る。
【化26】

【化27】

【化28】
ここで、
a、b、c、d、eおよびfは、それぞれ、1~25から選択される整数であり;
(A)は、アミノ酸配列のトリガーユニットであり、各Aは、独立してアミノ酸であり、nは、1~25の整数であり;
PABは、パラ-アミノベンジルアルコールであり;
Exは、下記:
-NR(CHO(CHCHO)(CHC(O)-、
-C(O)(CHNR-、
-NR(CHO(CHCHO)(CHNR-、
-NR(CHNR-、
-NR(CHO(CHCHO)(CHO-、
-O(CHNR-、
-C(O)(CHO-、
-O(CHO(CHCHO)(CHC(O)-
-C(O)(CHO(CHCHO)(CHC(O)-、
-C(O)(CHC(O)-、
または、不存在、
から独立して選択され得るリンカー鎖を含む伸長スペーサーであり;
ここで、a、b、およびcは、それぞれ、0~25から選択される整数であり、これにはすべてのサブユニットが含まれ;および、RおよびRは、独立して、水素、またはC1-10アルキル基を表す。
【0087】
いくつかの他の実施形態において、アミノ酸配列のトリガーユニットは、Val-Cit、al-Ala、Val-Lys、Phe-Lys、Phe-Cit、Phe-Arg、Phe-Ala、Ala-Lys、Leu-Cit、Ile-Cit、Trp-Cit、D-Phe-LPhe-Lys、Phe-Phe-Lys、D-Phe-Phe-Lys、Gly-Phe-Lys、Gly-Phe-Leu-Gly、または、Ala-Leu-Ala-Leu-;またはそれらの保護された形態、であり得る。
【0088】
好ましい実施形態として、アミノ酸配列は、Val-Cit、Phe-Lys、または、Val-Lys、であり得る。
【0089】
いくつかの例示的な実施形態において、分枝リンカーBは、下記から選択され得る。
【化29】
【0090】
VI.リンケージ基
本発明のコンジュゲートの異なる部分は、様々な化学的リンケージを介して結合することができる。例えば、これに限定されるものではないが、アミド、エステル、ジスルフィド、エーテル、アミノ、カルバメート、ヒドラジン、チオエーテル、およびカーボネートが挙げられる。例えば、PEG部分(P)の末端ヒドロキシル基を活性化し、次いで、リジン(T)とカップリングさせて、式Iaまたは式IbにおけるPとTとの間に目的のリンケージポイントを提供することができる。TとLの間、またはTとLの間、またはLとBの間の、リンケージ基は、リンカーLのアミノ基とリジン(T)のカルボキシル基の間、またはLのカルボキシル基とTのアミノ基の間、またはLのカルボキシル基とBのアミノ基の間の、反応から生じるアミドであり得る。コンジュゲートの所望の特性に応じて、抗体部分(A)と隣接するリンカーLとの間、または任意の2つのアミノ酸の間、またはアミノ酸とパラ-アミノベンジルアルコールとの間に、適切なリンケージ基が組み込まれてもよい。
【0091】
いくつかの実施形態において、コンジュゲートの異なる部分間のリンケージ基は、互いに固有の化学的親和性または選択性を有する一対の官能基のカップリングに由来し得る。これらのタイプのカップリングまたは環形成により、タンパク質または抗体部分の導入のための部位特異的コンジュゲーションが可能になる。部位特異的コンジュゲーションをもたらすこれらの官能基としては、これに限定されるものではないが、例えば、チオール、マレイミド、2’-ピリジルジチオ変異体、芳香族またはビニルスルホン、アクリレート、ブロモまたはヨードアセトアミド、アジド、アルキン、ジベンゾシクロオクチル(DBCO)、カルボニル、2-アミノ-ベンズアルデヒドまたは2-アミノ-アセトフェノン基、ヒドラジド、オキシム、アシルトリフルオロホウ酸カリウム、O-カルバモイルヒドロキシルアミン、トランス-シクロオクテン、テトラジン、およびトリアリールホスフィン、ボロン酸、アルキン、が挙げられる。
【0092】
VII.細胞傷害性化合物D
いくつかの実施形態において、Dとしては、これに限定されるものではないが、メイタンシノイド(DM1、DM4)(US5208020;US5416064;EP0425235)、アウリスタチン誘導体、例えば、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)およびF(MMAF)(US5635483;US5780588;US7498298)、ピロロベンゾジアゼピン、セマドチン(Cemadotin)、SN38、ディスコデルモライド、タッカロノリド(taccalonolide)AまたはBまたはAFまたはAJ、タッカロノリドAI-エポキシド、CA-4、ビンカアルカロイド、iSGD-1882、インドリノベンゾジアゼピンダイマー、ウンシアラマイシン(uncialamycin)、センタナマイシン(centanamycin)、ラウリマライド(laulimalide)、ドラスタチン(dolastatin)、タイランスタチン(thailanstatins)、アマトキシン(Amatoxins)、β-アマニチン(amanitin)、ヘミアステリン(Hemiasterlin)、デュオカルマイシン(duocarmycins)、PNU-159682、コルヒチン、ツブリシン(tubulysins)、カリケアマイシンまたはそれらの誘導体(US5712374;US5714586;US5739116;US5767285;US5770701;US5770710;US5773001;US5877296;Hinman, L. M. et al. Cancer Res., 1993, 53, 3336-3342; Lode, H. N. et al. Cancer Res., 1998, 58, 2925-2928)、アントラサイクリン、例えば、ダウノマイシンまたはドキソルビシン(Kratz, F. et al. Curr. Med. Chem., 2006, 13, 477-523; Jeffrey, S. C. et al. Bioorg. Med. Chem. Lett., 2006, 16, 358-362; Torgov, M. Y. et al. Bioconjug. Chem., 2005, 16 717-721; Nagy, A. et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97, 829-834; Dubowchik, G. M. et al. Bioorg. Med. Chem. Lett., 2002, 12, 1529-1532; King, H. D. et al. J. Med. Chem., 2002, 45, 4336-4343; US6630579)、メトトレキサート、ビンデシン、タキサン、例えば、ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル(larotaxel)、テセタキセル(tesetaxel)およびオルタタキセル(ortataxel)、トリコテセン、CC-1065、を挙げることができる。
【0093】
他の実施形態において、Dは、酵素的に活性な毒素またはそのフラグメントであり得、これに限定されるものではないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン(sarcin)、シナアブラギリ(aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン(crotin)、サボンソウ(saponaria officinalis)阻害剤、ゲロニン(gelonin)、マイトジェリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、およびエノマイシン(enomycin)、が挙げられる。
【0094】
さらにいくつかの他の実施形態において、Dは、放射性原子であり得る。放射性コンジュゲートの製造には、さまざまな放射性同位元素が利用できる。例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、および、Luの放射性同位元素が挙げられる。放射性コンジュゲートを検出に用いる場合、シンチグラフィ研究用の放射性原子、例えば、Tc99またはI123、または磁気共鳴画像法(MRI)用のスピン標識、例えば、I123、I131、In111、F19、C13、N15、O17、ガドリニウム、マンガン、または鉄などが挙げられる。
【0095】
いくつかのさらなる実施形態において、Dとしては、アルキル化剤、例えば、チオテパ、およびシクロホスファミド;アルキルスルホン酸塩、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、ピポスルファン;アジリジン、例えば、ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メトレドーパ(meturedopa)、およびウレドーパ(uredopa);エチレンイミンおよびメチルアメラミン(methylamelamines)、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミドおよびトリメチロールメラミン;アセトゲニン(特にブラタシンとブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(その合成類似体、アドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシンを含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189およびCBI-TMIを含む);エレウテロビン(eleutherobin);パンクラチスタチン(pancratistatin);サルコディクチン(sarcodictyin);スポンギスタチン(spongistatin);ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、クロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質、例えば、カリケアマイシン(Nicolaou, K. C. et al. Agnew Chem. Intl. Ed., 1994, 33, 183-186)、ダイネマイシン(dynemicin)、エスペラマイシン(esperamicin)、ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オートラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、およびデオキシドキソルビシン(deoxydoxorubicin)を含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗剤、例えば、メトトレキサート、および5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU;アンドロゲン、例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン(dromostanolone propionate)、エピチオスタノール(epitiostanol)、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎物質(anti-adrenals)、例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補給剤、例えば、フロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルホルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダミン;メイタンシノイド(maytansinoids)、例えば、メイタンシン(maytansine)およびアンサマイトシン(ansamitocins);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(商標);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン(sizofuran);スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2トキシン、ベラクリンA、ロリジンA、アングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(arabinoside);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル(TAXOL(商標))、およびドキセタキセル(TAXOTERE(商標));クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;プラチナ類似体、例えば、シスプラチン、およびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤 ルビテカン(9-ニトロカンプトテシンまたはRFS-2000);ジフルオロメチルオルニチン;レチノイン酸;カペシタビン;および、上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体、を挙げることができる。この定義には、腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤も含まれ、、例えば、抗エストロゲン剤として、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストン(onapristone)、およびトレミフェン(toremifene);抗アンドロゲン剤として、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド(leuprolide)、およびゴセレリン;および、上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体、が挙げられる。
【0096】
VIII.抗体および標的
細胞表面分子および/またはそれらのリガンドに対して指向する多くの治療用抗体が知られている。これらの抗体は、単一特異性または多重特異性ADCにおけるオーダーメイドの特異的認識結合部分の選択および構築に使用することができる。例としては、ブリナツモマブ/BLINCYTO(CD3/CD19)、リツキサン/MabThera/リツキシマブ(CD20)、H7/オクレリズマブ(CD20)、ゼヴァリン/イブリツモマブ(CD20)、Arzerra/オファツムマブ(CD20)、HLL2/エプラツズマブ、イノツズマブ(CD22)、Zenapax/ダクリズマブ、Simulect/バシリキシマブ(CD25)、ハーセプチン/トラスツズマブ、ペルツズマブ(Her2/ERBB2)、Mylotarg/ゲムツズマブ(CD33)、Raptiva/エファリズマブ(Cd11a)、アービタックス/セツキシマブ(EGFR、上皮成長因子受容体)、IMC-1121B(VEGF受容体2)、タイサブリ/ナタリズマブ(α4β1およびα4β7インテグリンのα4サブユニット)、レオプロ/アブシキシマブ(gpIIb-gpIIaおよびαvβ3-インテグリン)、Orthoclone OKT3/ムロモナブ-CD3(CD3)、ベンリスタ/ベリムマブ(BAFF)、Tolerx/オテリキシマブ(Oteliximab)(CD3)、Soliris/エクリズマブ(C5補体タンパク質)、Actemra/トシリズマブ(IL-6R)、Panorex/エドレコロマブ(EpCAM、上皮細胞接着分子)、CEA-CAM5/ラベツズマブ(Labetuzumab)(CD66/CEA、癌胎児性抗原))、CT-11(PD-1、プログラム死-1 T細胞阻害受容体、CD-d279)、H224G11(c-Met受容体)、SAR3419(CD19)、IMC-A12/シクツムマブ(Cixutumumab)(IGF-1R、インスリン様成長因子1受容体)、MEDI-575(PDGF-R、血小板由来成長因子受容体)、CP-675、206/トレメリムマブ(細胞傷害性Tリンパ球抗原4)、RO5323441(胎盤成長因子またはPGF)、HGS1012/マパツムマブ(Mapatumumab)(TRAIL-R1)、SGN-70(CD70)、ベドチン(SGN-35)/ブレンツキシマブ(CD30)、およびARH460-16-2(CD44)、が挙げられる。
【0097】
本明細書に開示される単一特異性または多重特異性ADCは、腫瘍性疾患、心血管疾患、感染性疾患、炎症性疾患、自己免疫性疾患、代謝性(例えば、内分泌)疾患、または神経性(例えば、神経変性)疾患の治療のための医薬品の製造に使用することができる。これらの疾患の例としては、これに限定されるものではないが、例えば、アルツハイマー病、非ホジキンリンパ腫、B細胞急性および慢性リンパ性白血病、バーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、有毛細胞白血病、急性および慢性骨髄性白血病、T細胞リンパ腫および白血病、多発性骨髄腫、神経膠腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、癌(例えば、口腔癌、消化管癌、結腸癌、胃癌、肺管癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮癌、子宮内膜癌、子宮頸部癌、膀胱癌、膵臓癌、骨肉腫、肝臓癌、胆嚢癌、腎臓癌、皮膚癌、および精巣癌)、黒色腫、肉腫、神経膠腫、および皮膚癌、急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性疾患症候群、類天疱瘡、糖尿病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、連鎖球菌後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓性血管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、強皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛症、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、乾癬、または線維化性肺胞炎、が挙げられる。
【0098】
多くの細胞表面マーカーとそのリガンドが知られている。例えば、癌細胞は、以下の細胞表面マーカーおよび/またはリガンドの少なくとも1つを発現することが報告されており、これに限定されるものではないが、炭酸脱水酵素IX、α-フェトプロテイン、α-アクチニン-4、A3(A33抗体に特異的な抗原)、ART-4、B7、Ba-733、BAGE、BrE3-抗原、CA125、CAMEL、CAP-1、CASP-8/m、CCCL19、CCCL21、CD1、CD1a、CD2、CD3、CD4、CDS、CD8、CD1-1A、CD14、CD15、CD16、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD29、CD30、CD32b、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD45、CD46、CD54、CD55、CD59、CD64、CD66a-e、CD67、CD70、CD74、CD79a、CD80、CD83、CD95、CD126、CD133、CD138、CD147、CD154、CDC27、CDK-4/m、CDKN2A、CXCR4、CXCR7、CXCL12、HIF-1-α、結腸特異抗原-p(CSAp)、CEA(CEACAM5)、CEACAM6、c-met、DAM、EGFR、EGFRvIII、EGP-1、EGP-2、ELF2-M、Ep-CAM、Flt-1、Flt-3、葉酸受容体、G250抗原、GAGE、GROB、HLA-DR、HM1.24、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(HCG)およびそのサブユニット、HER2/neu、HMGB-1、低酸素誘導因子(HIF-1)、HSP70-2M、HST-2または1a、IGF-1R、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、IL-2、IL-4R、IL-6R、IL-13R、IL-15R、IL-17R、IL-18R、IL-6、IL-8、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-25、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、KC4-抗原、KS-1-抗原、KS1-4、Le-Y、LDR/FUT、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、MAGE、MAGE-3、MART-1、MART-2、NY-ESO-1、TRAG-3、mCRP、MCP-1、MIP-1A、MIP-1B、MIF、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、MUM-1/2、MUM-3、NCA66、NCA95、NCA90、膵臓癌ムチン、胎盤増殖因子、p53、PLAGL2、前立腺酸性ホスファターゼ、PSA、PRAME、PSMA、P1GF、ILGF、ILGF-1R、IL-6、IL-25、RS5、RANTES、T101、SAGE、5100、サバイビン、サバイビン-2B、TAC、TAG-72、テネイシン、TRAIL受容体、TNF-α、Tn抗原、トムソン・フリーデンライヒ抗原、腫瘍壊死抗原、VEGFR、ED-Bフィブロネクチン、WT-1、17-1A抗原、補体因子C3、C3a、C3b、C5a、C5、血管新生マーカー、bcl-2、bcl-6、Kras、c-Met、癌遺伝子マーカーおよび癌遺伝子産物(Sensi, M. et al. Clin. Cancer Res., 2006, 12, 5023-5032; Parmiani, G. et al. J. Immunol., 2007, 178, 1975-1979; Castelli, C. et al. Cancer Immunol. Immunother., 2005, 54, 187-207)、が挙げられる。したがって、そのような特異的細胞表面受容体またはそれらのリガンドを認識する抗体は、本発明の単一特異性または多重特異性ADCにおける特異的かつ選択的な認識結合部分に使用することができ、疾患に関連する多数の細胞表面マーカーまたはリガンドを標的にして結合することができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、癌/腫瘍の治療のために、Herbermanの「Immunodiagnosis of Cancer」、Fleisher編、「The Clinical Biochemistry of Cancer」ページ347 (American Association of Clinical Chemists, 1979)、および、US4150149;US4361544;US4444744において報告されているような、腫瘍関連抗原(TAA)を標的として、単一特異性または多重特異性ADCが使用される。
【0100】
腫瘍関連抗原に関する報告としては、Mizukami et al., Nature Med. 2005 11, 992-997; Hatfield et al., Curr. Cancer Drug Targets 2005, 5229-248; Vallbohmer et al., J. Clin. Oncol. 2005, 23, 3536-3544; および Ren et al., Ann. Surg. 2005, 242, 55-63、が挙げられ、これらそれぞれは、確認されるTAAに関して参照により本明細書に組み込まれる。疾患が、リンパ腫、白血病、または自己免疫疾患に関連する場合、標的となる抗原は、CD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD54、CD67、CD74、CD79a、CD80、CD126、CD138、CD154、CXCR4、B7、MUC1または1a、HM1.24、HLA-DR、テネイシン、VEGF、P1GF、ED-Bフィブロネクチン、癌遺伝子、癌遺伝子産物(c-MetまたはPLAGL2など)、CD66a-d、壊死抗原、IL-2、T101、TAG、IL-6、MIF、TRAIL-R1(DR4)、およびTRAIL-R2(DR5)からなる群から選択され得る。
【0101】
上記の抗原に対する抗体を結合ドメインまたは部分として用いて、本発明のADCまたはBsADCを製造することができる。2つの異なる標的に対して、さまざまなBsADCを製造することができる。
【0102】
抗原のペアの例としては、CD19/CD3、BCMA/CD3、組み合わせによるHERファミリーの異なる抗原(EGFR、HER2、HER3)、IL17RA/IL7R、IL-6/IL-23、IL-1-β/IL-8、IL-6またはIL-6R/IL-21またはIL-21R、ANG2/VEGF、VEGF/PDGFR-β、VEGF2/CD3、PSMA/CD3、EPCAM/CD3;VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3、FLT3、c-FMS/CSF1R、RET、c-Met、EGFR、Her2/neu、HER3、HER4、IGFR、PDGFR、c-KIT、BCR、インテグリン、およびMMPからなる群から選択される抗原と、VEGF、EGF、PIGF、PDGF、HGF、およびアンジオポエチンからなる群から選択される水溶性リガンドの組み合わせ、ERBB-3cC-Met、ERBB-2/c-Met、EGF受容体1/CD3、EGFR/HER3、PSCA/CD3、c-Met/CD3、ENDOSIALIN/CD3、EPCAM/CD3、IGF-1R/CD3、FAPALPHA/CD3、EGFR/IGF-1R、IL17A/F、EGF受容体1/CD3、およびCD19/CD16、が挙げられる。二重特異性ADCのさらなる例は、(i)ルイスx構造、ルイスb構造、およびルイスy構造、Globo H構造、KH1、Tn抗原、TF抗原、およびムチンなどの炭水化物構造、CD44、糖脂質およびスフィンゴ糖脂質、例えば、Gg3、Gb3、GD3、GD2、Gb5、Gm1、Gm2、およびシアリルテトラオシルセラミド(sialyltetraosylceramide)、からなる群から選択される抗原のグリコエピトープを指向する第1の特異性、および、(ii)EGFR、HER2、HER3、HER4からなる群から選択されるErbB受容体チロシンキナーゼを指向する第2の特異性、を有し得る。第2の抗原結合部位と組み合わせたGD2は、Tリンパ球、NK細胞、Bリンパ球、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、間葉系幹細胞、神経幹細胞からなる群から選択される免疫細胞と関係をもてる。
【0103】
単一特異性または二重特異性抗体は、本明細書に開示された方法を用いて別の単一特異性または二重特異性抗体と一緒に結合させて、多重特異性ADCを製造することができる。上記の治療用抗体など、すでに入手可能な単一特異性または二重特異性治療用結合物質を使用することにより、必要な多重特異性結合分子を迅速かつ容易に生成することができる。2つ以上の異なるエピトープへの同時ターゲティングと結合のために2つ以上の単一治療分子を組み合わせることにより、このオーダーメイドの多重特異性ADCを生成することで、単一ターゲティングADCと比較して、相加/相乗効果を期待することができる。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明の多重特異性ADCは、以下の標的ペアに対して、特異的に相互作用し、測定可能な親和性を示す、抗体ペアを使用して、製造される。
【0105】
【表1】
【0106】
いくつかの実施形態において、BsADCは二重特異性一本鎖抗体を含み、ここで、二重特異性一本鎖抗体の2つの結合ドメインは、リンカーを介して連結される。いくつかの実施形態において、リンカーは、抗体を、非免疫原性ポリマー薬物コンジュゲート、例えば、PEG化薬物コンジュゲートに、部位特異的にコンジュゲートさせるために使用できる、システインまたは非天然アミノ酸残基などの部分を含む。いくつかの他の実施形態において、二重特異性一本鎖抗体の2つの結合ドメインの一方または両方が、抗体を、非免疫原性ポリマー薬物コンジュゲート、例えば、PEG化薬物コンジュゲートに、部位特異的にコンジュゲートさせるために使用できる、システインまたは非天然アミノ酸残基を含む。
【0107】
好ましい実施形態において、BsADCは、Her2の2つの異なるエピトープに対して、特異的に相互作用し、測定可能な親和性を示す、2つの抗体またはその抗原結合フラグメント(例えば、Fab、scFvなど)のコンジュゲートである。
【0108】
IX.合成
所望のPEGのサイズおよび分岐の数を選択したあと、ヒドロキシル基、カルボキシル基などのPEGの末端官能基を、任意の技術的に知られた方法を用いて、末端分岐ヘテロ二官能基に変換することができる(WO2018075308)。大まかに言えば、末端分枝ヘテロ二官能性PEGは、末端ヒドロキシル基の場合には、ジ(N-スクシンイミジル)カーボネート(DSC)、トリホスゲンなどの試薬を使用して、あるいは、末端カルボキシル基の場合には、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)などのカップリング試薬を使用して、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ピリジンなどの塩基の存在下で、N-ヒドロキシスクシンイミドによってPEGの末端ヒドロキシル基またはカルボキシル基を活性化して、活性化PEGを形成することによって、製造することができる。
【0109】
次に、活性化したPEGを、ジイソプロピルアミン(DIPEA)などの塩基の存在下で、リジン誘導体H-Lys(Boc)-OHなどの三官能性小分子と反応させて、遊離カルボキシル基およびBoc保護アミノ基を有する末端分岐ヘテロ二官能性PEG PEG-Lys(Boc)-COOHを形成することができる。当業者が理解するように、ハライド、アミノ、チオール基などのPEGの他の末端官能基、および、-NH、-NHNH、-COOH、-OH、-C(O)X(X=ハライド)、-N=C=O、-SH、無水物、ハライド、マレイミド、C=C、C≡Cなどやまたはそれらの保護体のリストうちの3つの官能基の任意の組み合わせを含む他の三官能性小分子を、必要に応じて、同じ目的の代替として、使用することができる。
【0110】
TFAによりBocの除去し、NHS-PEG-マレイミドなどのマレイミドが付いたスペーサーとの反応により、PEG-Lys(Mal)-COOHが生成される。
【0111】
これとは別に、トリガー(例えば、val-cit)および自壊スペーサー(例えば、PABC)で連結された細胞傷害薬(例えば、MMAE)を、EDC/HOBTなどのカップリング試薬で分岐ユニットにカップリングさせて、B-D(例えば、下記)を生成する。
【化30】
【0112】
目的の生成物は、PEG-Lys(Mal)-COOHを、DCCなどのカップリング試薬を使用して、B-Dとカップリングさせ、PEG化薬物コンジュゲート PEG-Lys(Mal)-(Val-Cit-PAB-MMAE)を形成することによって、形成することができる。
【0113】
抗原に対して二価である単一特異性の抗体、またはSCAHer2II×SCAHer2IVなどの二重特異性の抗体は、発現系の遺伝子操作によって製造することができる。例えば、二重特異性scFvをコードするDNAを合成し、発現系(例えば、CHO細胞)に導入することができる。次いで、目的のタンパク質を発現させ、クロマトグラフィー技術によって精製する。
【0114】
抗原に対して二価であるPEG化一本鎖ADC、またはBsADCを製造するために、官能基マレイミドまたはDBCOを有するPEG化薬物コンジュゲートを、遺伝子的に挿入されるかまたは誘導体化された、SCAHer2IV×SCAHer2IVまたはSCAHer2II×SCAHer2IVなどの二官能性抗体の遊離チオールまたはアジド官能基と、部位特異的に反応させて、PEG-Lys(SCAHer2IV×SCAHer2IV)-(Val-Cit-PAB-MMAE)、または、PEG-Lys(SCAHer2II×SCAHer2IV)-(Val-Cit-PAB-MMAE)を形成することができる。
【0115】
PEG化多重特異性抗体は、単一特異性抗体または二重特異性抗体の代わりに多重特異性抗体を使用することにより、同様に製造することができる。
【0116】
本発明で例示されるチオール/マレイミドまたはDBCO/アジドの部位特異的コンジュゲーション基ペアに加えて、当業者が理解するように、他の既知の部位特異的コンジュゲーション基ペア、例えば、トランス-シクロオクテン/テトラジンペア;カルボニル/ヒドラジド;カルボニル/オキシム;鈴木・宮浦クロスカップリング試薬ペア;薗頭クロスカップリング試薬ペア;シュタウディンガーライゲーション試薬ペア;クネーフェナーゲル(Knoevenagel)-Intraマイケル付加試薬ペア、活性アミン/アクリレートペアなど、を同様に設計し、必要に応じて同じ目的のための代替物として、使用することができる。部位特異的コンジュゲーション基ペアの上記に列挙したものは、単なる例示であり、本明細書での使用に適した部位特異的コンジュゲーション基ペアの種類を限定することを意図するものではない。
【0117】
X.組成物
本発明はまた、薬学的に許容される担体と共に製剤化された、本発明の化合物を含有する組成物、例えば医薬組成物、を提供する。例えば、本発明の医薬組成物は、Her2受容体の2つの異なるエピトープに結合する化合物(例えば、二重特異性抗体-薬物コンジュゲート)を含むことができる。
【0118】
本発明の治療製剤は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、所望の純度を有する単一特異性または多重特異性分子の薬物コンジュゲートを、任意の生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することによって、製造することができる。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用される用量および濃度で被験者に対して非毒性であり、例えば、緩衝剤、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸およびメチオニン;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール、メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3-ペンタノール、およびm-クレゾール);低分子量(アミノ酸残基が約10未満)のタンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン;単糖類、二糖類、およびその他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール;塩形成カウンターイオン、例えば、ナトリウム;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);および/または、非イオン性界面活性剤、例えば、Tween、Pluronics、またはPEG、が挙げられる。
【0119】
製剤はまた、治療される特定の徴候にとって必要な場合、好ましくは互いに悪影響を及ぼさない補完的な活性を有する、1つ以上の活性化合物を含み得る。例えば、製剤は、別の抗体または多重特異性抗体、細胞傷害剤、化学療法剤、またはADCをさらに含んでもよい。そのような分子は、意図する目的に有効な量で組み合わせられて、適切に存在する。
【0120】
活性成分はまた、例えばコアセルベーション技術または界面重合によって製造されたマイクロカプセルによって封入されていてもよく、例えば、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)、またはマクロエマルジョンにおいて、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセル、およびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルが挙げられる。そのような技術は、RemingtonのPharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980) に開示されている。
【0121】
持続放出性製剤が製造されてもよい。持続放出性製剤の適切な例として、単一特異性分子または多重特異性分子を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは、成形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態である。持続放出性マトリックスとしては、例えば、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(US3773919)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、Lupron Depot(乳酸-グリコール酸コポリマーとリュープロレリン酢酸塩で構成される注射用マイクロスフェア)、およびポリ-d(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸などのポリマーは、100日を超える分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルはより短い期間でタンパク質を放出する。カプセル化された抗体が長期間体内に留まると、37℃の湿気にさらされる結果として変性または凝集し、その結果、生物活性が失われ、免疫原性が変化する可能性がある。関連するメカニズムに応じて、安定化のために合理的な戦略を立てることができる。例えば、凝集メカニズムが、チオジスルフィド交換による分子間S-S結合形成であることが判明した場合、安定化は、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液からの凍結乾燥、水分含有量の制御、適切な添加剤の使用、および特定のポリマーマトリックス組成の開発によって、達成することができる。
【0122】
本発明の医薬組成物は、併用療法で、すなわち他の薬剤と組み合わせて、投与することができる。併用療法で使用できる治療薬の例は、以下に、より詳細に記載されている。
【0123】
インビボ投与に使用する製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜による濾過によって容易に行うことができる。滅菌注射溶液は、必要に応じて、上記に列挙した成分の1つまたは組み合わせを有する適切な溶媒に、必要量の活性化合物を混合し、続いて滅菌精密ろ過を行うことによって、製造することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、ベースとなる分散媒体および上記に列挙したものからの必要な他の成分を含む無菌ビヒクルに混合することによって、製造される。滅菌注射溶液の製造のための滅菌粉末の場合、好ましい製造方法は、真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)であり、これにより、事前に滅菌濾過された溶液からの任意の追加の所望の成分が加わった、活性成分の粉末が得られる。
【0124】
XI.投与量
単一剤形を製造するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、処置される対象、および特定の投与方法に応じて変化する。単一剤形を製造するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果をもたらす組成の量である。一般に、この量は、100パーセントのうち、薬学的に許容される担体との組み合わせにおいて、活性成分が約0.01%~約99%の範囲であり、好ましくは約0.1%~約70%であり、さらに好ましくは活性成分が約1%~約30%の範囲である。
【0125】
投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように、調整される。例えば、単回ボーラスで投与されてもよいし、時間をかけて数回に分けた用量が投与されてもよいし、治療状況の緊急性で示されるように、用量を比例的に減少または増加させてもよい。投与を容易にし、用量を均一にするために、非経口組成物を単位剤形で製剤化することが特に有利である。本明細書において、単位剤形は、治療する対象に対する単位投与量として適した物理的に別個となった単位を意味し、各単位は、必要な薬学的担体と関連して、所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性化合物を含んでいる。本発明の単位剤形は、その仕様が、(a)活性化合物の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに(b)個体の感受性の処置のためにそのような活性化合物を配合する技術に固有の制限、によって決定され、それに直接依存する。
【0126】
本発明の単一特異性または多重特異性分子薬物コンジュゲートの投与では、投与量は、被験者の体重1kgあたり約0.0001~100mg/kg、さらに通常、0.01~50mg/kgの範囲である。例えば、投与量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重、または10mg/kg体重、あるいは、1~10mg/kgの範囲内であり得る。例示的な治療レジメンは、毎日、週に2回、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月に1回、または3~6ヶ月に1回の投与である。本発明の単一特異性または多重特異性薬物コンジュゲートの好ましい投与レジメンとしては、静脈内投与による1mg/kg体重または3mg/kg体重の投与が挙げられ、単一特異性または多重特異性薬物コンジュゲートは、以下の投与スケジュール:(i)4週間ごと6回の投与、その後は3か月ごと、(ii)3週間ごと、(iii)3mg/kg体重を1回、その後3週間ごとに1mg/kg体重、のいずれかを用いて与えられる。
【0127】
あるいは、単一特異性または多重特異性薬物コンジュゲートを持続放出性製剤として投与することができ、この場合、必要な投与頻度は少なくなる。用量および頻度は、患者における単一特異性または多重特異性薬物コンジュゲートの半減期によって異なる。一般に、ヒト抗体の半減期が最も長く、次いでヒト化抗体、キメラ抗体、そして非ヒト抗体と続く。投与量と投与頻度は、処置が予防的か治療的かによって異なる。予防用途では、比較的低用量が、長期間にわたって比較的頻度が少ない間隔で投与される。一部の患者は、生涯にわたって処置を受け続ける。治療用途では、疾患の進行が軽減または終了するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔での比較的高用量が、必要となる場合がある。その後、患者は予防療法を受けることができる。
【0128】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、患者に対して毒性がなく、特定の患者、組成物、および投与方法に対して所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るために、変化し得る。選択される用量レベルは、使用される本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄速度、処置の期間、使用する特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または物質、治療する患者の年齢、性別、体重、状態、一般的な健康状態および以前の病歴、ならびに医療分野でよく知られている要因、を含む、様々な薬物動態的要因に依存する。
【0129】
本発明の単一特異性または多重特異性分子の「治療有効量」は、好ましくは、疾患症状の重症度の低下、疾患症状のない期間の頻度および時間の増加、または疾患の苦痛による機能低下または障害の防止をもたらす。例えば、腫瘍の治療の場合、「治療有効量」は、好ましくは、細胞増殖または腫瘍増殖または転移を、治療をしない対象と比較して、少なくとも約20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらに好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約80%、阻害する。腫瘍増殖を阻害する薬剤または化合物の能力は、ヒト腫瘍における有効性を予測する動物モデル系によって、評価することができる。あるいは、組成物のこの特性は、当業者に知られているアッセイによるインビトロでの阻害など、阻害する化合物の能力を調べることによって、評価することができる。治療有効量の治療用化合物は、対象において、腫瘍サイズ、転移を低減させ、あるいは、症状を改善することができる。当業者は、対象のサイズ、対象の症状の重症度、および選択された特定の組成物または投与経路などの要因に基づいて、その量を決定することができるものである。
【0130】
XII.投与
本発明の組成物は、当技術分野で知られている様々な方法の1つ以上を用いて、1つ以上の投与経路を介して、投与することができる。当業者によって理解されるように、投与の経路および/または方法は、目的とする結果に応じて変化する。本発明の抗体薬物コンジュゲートの好ましい投与経路としては、例えば、注射または注入による、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄、または他の非経口経路の投与が挙げられる。本明細書において、「非経口投与」という語句は、通常は注射による、経腸および局所投与以外の投与方法を意味し、これに限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内の、注射および注入が挙げられる。あるいは、本発明の単一特異性または多重特異性分子薬物コンジュゲートは、例えば、鼻腔内、経口、膣内、直腸内、舌下、または局所などの、局所、表皮または粘膜の投与経路などの非経口でない経路を介して、投与することができる。
【0131】
活性化合物は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤など、化合物を急速な放出から保護する担体とともに、製造され得る。エチレンビニルアセテート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤を製造するための多くの方法は、特許され、当業者に一般的に知られている。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0132】
治療用組成物は、当技術分野で知られている医療装置で投与することができる。例えば、本発明の治療用組成物は、US5399163、US5383851、US5312335、US5064413、US4941880、US4790824、およびUS4596556に開示されている装置などの無針皮下注射装置を用いて投与することができる。本発明に有用な既知のインプラントおよびモジュールとしては、例えば、US4487603、US4486194、US4447233、US4447224、US4439196、およびUS4475196に記載されているものが挙げられる。これらの特許は、参照により本明細書に組み込まれる。多くの他のそのようなインプラント、送達システム、およびモジュールは、当業者に知られている。
【0133】
XIII.治療方法
一態様において、本発明は、癌の腫瘍の増殖および/または転移を阻害するための、上記の単一特異性または多重特異性分子薬物コンジュゲートを用いた、インビボでの被験体の治療に関する。一実施形態において、本発明は、治療有効量の単一特異性または多重特異性分子薬物コンジュゲートを対象に投与することを含む、対象において腫瘍細胞の増殖を阻害するおよび/または転移拡散を制限する方法を提供する。
【0134】
治療に好ましい癌(がん)としては、これに限定されるものではないが、例えば、慢性または急性白血病、例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、リンパ球性リンパ腫、乳癌、卵巣癌、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎臓癌(例えば、明細胞癌)、前立腺癌(例えば、ホルモン抵抗性前立腺癌)、結腸癌、および肺癌(例えば、非小細胞肺癌)が挙げられる。さらに、本発明には、本発明の抗体を使用して増殖を抑制することができる、難治性または再発性の悪性腫瘍が含まれる。本発明の方法を用いて治療できる他の癌としては、例えば、骨肉腫、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内の悪性黒色腫、子宮癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎腫瘍、悪性軟部腫瘍、尿道癌、陰茎癌、小児の固形腫瘍、膀胱癌、腎臓または尿管の癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、中枢神経系原発悪性リンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍(spinal axis tumor)、脳幹グリオーマ、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、アスベストによって引き起こされるものを含む環境的に誘発された癌、およびこれらの癌の組み合わせ、が挙げられる。
【0135】
本明細書において、「対象」との用語は、ヒトおよびヒト以外の動物を含むことを意図している。ヒト以外の動物には、すべての脊椎動物が含まれ、例えば、哺乳類および非哺乳類、例えば、ヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、および爬虫類などが挙げられるが、ヒト以外の霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシおよびウマなどの哺乳類が好ましい。好ましい対象には、免疫応答の増強を必要とするヒト患者が含まれる。この方法は、免疫応答を増強することによって治療できる障害を有するヒト患者を治療するのに特に適している。
【0136】
上記の治療は、標準的な癌治療と組み合わせることもできる。例えば、化学療法レジメンと効果的に組み合わせることができる。その場合、投与する化学療法薬の用量を減らすことが可能となり得る(Mokyr, M. et al. Cancer Res., 1998, 58, 5301-5304)。
【0137】
ホスト免疫応答性を活性化するために使用できる他の抗体は、本発明の多重特異性分子薬物コンジュゲートにおいて、またはそれと共に、使用することができる。これらには、DC機能と抗原提示を活性化する樹状細胞の表面を標的とする分子が含まれる。例えば、抗CD40抗体は、T細胞ヘルパー活性を効果的に置き換えることができ(Ridge, J. et al. Nature, 1998, 393, 474-478)、本発明の多重特異性分子薬物コンジュゲートと組み合わせて使用することができる(Ito, N. et al. Immunobiology, 2000, 201, 527-540)。同様に、T細胞共刺激分子、例えば、CTLA-4(US5811097)、CD28(Haan, J. et al. Immunol. Lett., 2014, 162, 103-112)、OX-40(Weinberg, A. et al. J. Immunol., 2000, 164, 2160-2169)、4-1BB(Melero, I. et al. Nature Med., 1997, 3, 682-685)、および、ICOS(Hutloff, A. et al. Nature, 1999, 397, 262-266)、を標的とする抗体、または、PD-1(US8008449)およびPD-L1(US7943743;US8168179)を標的とする抗体も、T細胞の活性化レベルの増加をもたらす可能性がある。別の例では、本発明の単一特異性または多重特異性分子薬物コンジュゲートは、RITUXAN(リツキシマブ)、HERCEPTIN(トラスツズマブ)、BEXXAR(トシツモマブ)、ZEVALIN(イブリツモマブ)、CAMPATH(アレムツズマブ)、LYMPHOCIDE(エプラツズマブ)、AVASTIN(ベバシズマブ)、TARCEVA(エルロチニブ)などの抗腫瘍性抗体と組み合わせて、使用することができる。
【0138】
用語の定義
本明細書において、「アルキル」との用語は、典型的には長さが約1~25原子の範囲の炭化水素鎖を意味する。このような炭化水素鎖は、好ましくは飽和しているがそうでなくてもよく、分岐鎖でも直鎖でもよいが、典型的には直鎖が好ましい。C1-10アルキルとの用語には、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10個の炭素を有するアルキル基が含まれる。同様に、C1-25アルキルには、1~25個の炭素を有するすべてのアルキルが含まれる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、n-ブチル、n-ペンチル、2-メチル-1-ブチル、3-ペンチル、3-メチル-3-ペンチルなどが挙げられる。本明細書において、「アルキル」には、3つ以上の炭素原子が参照される場合、シクロアルキルが含まれる。特に断りのない限り、アルキルは置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。
【0139】
本明細書において、「官能基」との用語は、有機合成の通常の条件下で、それが結合している実体と、典型的にはさらなる官能基を有する別の実体との間の共有結合を形成するために使用され得る基を意味する。「二官能性リンカー」とは、コンジュゲートの他の部分を介して2つの結合を形成する2つの官能基を有するリンカーを意味する。
【0140】
本明細書において、「誘導体」との用語は、新しい官能基を導入するため、または元の化合物の特性を調整するために、追加の構造部分を有する、化学的に修飾された化合物を意味する。
【0141】
本明細書において、「保護基」との用語は、特定の反応条件下で分子内の特定の化学反応性官能基の反応を防止または遮断する部分を意味する。様々な保護基が当技術分野でよく知られており、例えば、T. W. Greene and G. M. Wuts, Protecting Groups in Organic Synthesis, Third Edition, Wiley, New York, 1999、および、P. J. Kocienski, Protecting Groups, Third Ed., Thieme Chemistry, 2003、および、そこに引用された参考文献に記載されている。
【0142】
本明細書において、「PEG」との用語は、ポリエチレングリコールを意味する。本発明で使用するためのPEGは、典型的には、-(CHCHO)-の構造を含む。PEGは、さまざまな分子量、構造、または幾何形状を有し得る。PEG基は、典型的な合成反応条件下で容易に化学変換を受けないキャッピング基を含んでいてもよい。キャッピング基としては、例えば、-OC1-25アルキル、または-Oアリールが挙げられる。
【0143】
本明細書において、「PEG化」との用語は、ポリエチレングリコールによる化学修飾を意味する。
【0144】
本明細書において、「リンカー」との用語は、抗体およびポリマー部分などの相互接続部分を連結するために使用される、原子または原子の集合を意味する。リンカーは、切断可能であり得るか、または切断不可能であり得る。コンジュゲートのためのさまざまなリンカーの製造は、文献に記載されており、例えば、Goldmacher et al., Antibody-drug Conjugates and Immunotoxins: From Pre-clinical Development to Therapeutic Applications, Chapter 7, in Linker Technology and Impact of Linker Design on ADC properties, Edited by Phillips GL; Ed. Springer Science and Business Media, New York (2013) が挙げられる。切断可能なリンカーには、特定の生物学的または化学的条件下で切断され得る基または部分が組み込まれている。例としては、酵素的に切断可能なジスルフィドリンカー、1,4-または1,6-ベンジル脱離、トリメチルロックシステム、ビシン(bicine)ベースの自己切断システム、酸に不安定なシリルエーテルリンカー、およびその他の光に不安定なリンカーが挙げられる。
【0145】
本明細書において、「連結基」または「リンケージ基」との用語は、化合物またはコンジュゲートの異なる部分を接続する官能基または部分を意味する。リンケージ基としては、これに限定されるものではないが、例えば、アミド、エステル、カルバメート、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、ヒドラゾン、オキシム、およびセミカルバジド、カルボジイミド、酸に不安定な基、光に不安定な基、ペプチダーゼに不安定な基、およびエステラーゼに不安定な基が挙げられる。例えば、リンカー部分およびポリマー部分は、アミドまたはカルバメートのリンケージ基を介して互いに結合され得る。
【0146】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」との用語は、ポリマー中のアミノ酸残基の配置を説明するために、本明細書において交換可能に使用される。ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、希少アミノ酸および合成アミノ酸類似体に加えて、標準的な20個の天然アミノ酸から構成される。それらは、長さや翻訳後修飾(例えばグリコシル化やリン酸化など)に関係なく、任意のアミノ酸鎖であり得る。
【0147】
「組換え」ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、組換えDNA技術によって産生された、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を意味し、それは、すなわち、目的のペプチドをコードする外因性DNA構築物によって形質転換された細胞から生成される。「合成」のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、化学合成によって製造された、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を意味する。「組換え」との用語は、例えば、細胞、または核酸、タンパク質、またはベクターを述べることに使用される場合、細胞、核酸、タンパク質、またはベクターが、異種の核酸またはタンパク質の導入によって、または天然の核酸またはタンパク質の改変によって、改変されていること、または細胞がそのように改変された細胞に由来すること、を意味する。本発明の範囲内には、前述の配列および異種配列の1つ以上を含む融合タンパク質が含まれる。異種ポリペプチド、核酸、または遺伝子は、外来種に由来するものであるか、または、同じ種に由来する場合、元の形態から実質的に改変されたものである。2つの融合ドメインまたは配列は、天然に存在するタンパク質または核酸において互いに隣接していない場合、互いに異種である。
【0148】
「単離」されたペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、天然に関連する他のタンパク質、脂質、および核酸から分離された、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質を意味する。ポリペプチド/タンパク質は、精製された調製物の乾燥重量で、少なくとも10%(すなわち、10%~100%の任意のパーセンテージ、例えば、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、および99%)を構成することができる。純度は、例えば、カラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析などの任意の適切な標準方法によって、測定することができる。本発明で説明される単離されたポリペプチド/タンパク質は、組換えDNA技術によって、または化学的方法によって生成された天然源から精製することができる。
【0149】
「抗原」とは、免疫学的反応を誘発するか、またはその反応の生成物に結合する物質を意味する。「エピトープ」との用語は、抗体またはT細胞が結合する抗原の領域を意味する。
【0150】
本明細書において、「抗体」との用語には、抗体全体および任意の抗原結合フラグメントまたはその単鎖が含まれる。抗体全体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重鎖(H)と2つの軽鎖(L)を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(V)と重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、C1、C2、およびC3の3つのドメインで構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(V)と軽鎖定常領域(C)から構成され、軽鎖定常領域は1つのドメインで構成されている。VおよびV領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、超可変性の領域に、さらに細分化することができ、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が散在する。各VおよびVは、アミノ末端からカルボキシ末端まで、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された、3つのCDRおよび4つのFRから構成される。重鎖可変領域のCDRおよびFRは、HFR1、HCDR1、HFR2、HCDR2、HFR3、HCDR3、HFR4である。軽鎖可変領域のCDRおよびFRは、LFR1、LCDR1、LFR2、LCDR2、LFR3、LCDR3、LFR4である。重鎖と軽鎖の可変領域には、抗原と相互作用する結合ドメインが含まれる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(CI)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0151】
本明細書において、「抗体フラグメント」は、一般に、完全な(無傷の)抗体の抗原結合領域および/または可変領域、および/または、FcR結合能力を保持する抗体のFc領域を含む、完全な抗体の一部を含み得る。抗体フラグメントとしては、例えば、線状抗体(linear antibodies);一本鎖抗体分子;および、抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体、が挙げられる。
【0152】
抗体の「抗原結合フラグメントまたは部分」(または単に「抗体フラグメントまたは部分」)との用語は、本明細書において、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つまたは複数のフラグメントを意味する。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントによって実施され得ることが示されている。抗体の「抗原結合フラグメントまたは部分」との用語に包含される結合フラグメントの例としては、(i)V、V、CおよびCIのドメインからなる一価フラグメントである、Fabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントである、F(ab’)フラグメント、;(iii)本質的にヒンジ領域の一部を有するFabである、Fab’フラグメント、;(iv)VおよびCIドメインからなる、Fdフラグメント;(v)抗体の単一アームのVおよびVドメインからなる、Fvフラグメント;(vi)VHドメインからなる、dAb;(vii)単離された、相補性決定領域(CDR);および、(viii)単一の可変ドメインおよび2つの定常ドメインを含む重鎖可変領域である、ナノボディ(nanobody)、が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるVとVは別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を用いて、V領域とV領域がペアになって一価分子(一本鎖Fv(scFv)として知られる)を形成する単一のタンパク質鎖としてそれらを作成できるようにする合成リンカーによって、結合することができる;例えば、Bird et al. Science 1988, 242, 423-426; and Huston et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988, 85, 5879-5883を参照されたい。このような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合フラグメントまたは部分」との用語の範囲内に包含されることが意図される。これらの抗体フラグメントは、当業者に知られている従来の技術を用いて得られ、フラグメントは、完全な抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0153】
本明細書において、「Fcフラグメント」または「Fc領域」との用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。
【0154】
本明細書において、「モノクローナル抗体」との用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味するものであり、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る天然に存在する可能性のある変異体を除いて、同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位を指向する。さらに、異なる決定基(エピトープ)を指向する異なる抗体を典型的に含む従来型(ポリクローナル)抗体の調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基を指向する。修飾語句「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、KohlerおよびMilsteinによって最初に記載されたハイブリドーマ法(Kohler, G. et al. Nature, 1975, 256, 495-497)(これは参照により本明細書に組み込まれる)によって作製することができ、あるいは、組換えDNA法(US4816567)(これは参照により本明細書に組み込まれる)によって作製することができる。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clackson et al., Nature, 1991, 352, 624-628、および、Marks et al., J Mol Biol, 1991, 222, 581-597(これらのそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる)に記載の技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0155】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、具体的には、「キメラ」抗体を含み、これは、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であるが、鎖の残部が、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であり、所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体のフラグメントも含まれる(米国特許第4,816,567号; Morrison et al., Proc Natl Acad Sci USA, 1984, 81, 6851-6855; Neuberger et al., Nature, 312, 1984, 604-608; Takeda et al., Nature, 1985, 314, 452-454; 国際特許出願PCT/GB85/00392を参照。これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0156】
非ヒト(例えばマウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、ここで、レシピエントの超可変領域の残基は、所望の特異性、親和性、および能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、またはヒト以外の霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域の残基によって置き換えられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体の性能をさらに向上させるために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインのすべてを実質的に含み、ここで、超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト免疫グロブリンのループに対応しており、FR残基のすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリン配列の残基である。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部を、任意に含む。さらなる詳細については、Jones et al., Nature, 1986, 321, 522-525; Riechmann et al., Nature, 1988, 332, 323-329; Presta, Curr Op Struct Biol, 1992, 2, 593-596; 米国特許第5,225,539号を参照されたい(これらのそれぞれは参照により本明細書に組み込まれる)。
【0157】
「ヒト抗体」は、ヒトハイブリドーマ、ヒトファージディスプレイライブラリー、またはヒト抗体配列を発現するトランスジェニックマウスから得ることができるような、完全ヒト配列を有する任意の抗体を意味する。
【0158】
「医薬組成物」との用語は、活性剤、および、組成物をインビボまたはエクスビボにおいて診断または治療の用途に特に適したものにする活性なまたは不活性な担体の組み合わせを意味する。
【0159】
本明細書において、「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合するあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤などが含まれる。「薬学的に許容される担体」は、対象に投与された後、望ましくない生理学的作用を引き起こさない。医薬組成物中の担体は、活性成分と適合し、それを安定化できる可能性があるという意味でも、「許容可能」でなければならない。1つ以上の可溶化剤を、活性剤の送達のための薬学的担体として利用することができる。薬学的に許容される担体としては、これに限定されるものではないが、例えば、剤形として使用可能な組成物を達成するための、生体適合性を有する、ビヒクル、アジュバント、添加剤、および希釈剤が挙げられる。他の担体としては、例えば、コロイド状酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、およびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。さらなる適切な薬学的担体および希釈剤、ならびにそれらの使用のために必要な薬学的成分は、Remington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮の投与(例えば、注射または注入による)に適している。治療用化合物は、1つ以上の薬学的に許容される塩を含み得る。「薬学的に許容される塩」とは、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、望ましくない毒物学的影響を与えない塩を意味する(例えば、Berge, S. M., et al. J. Pharm. Sci. 1997, 66, 1-19を参照)。
【0160】
本明細書において、「治療する」または「治療」とは、障害を有するかまたは障害を発症するリスクがある対象に対して、障害、障害の症状、障害に続発する疾患状態、または障害に対する素因について、治癒、緩和、軽減、治療、発症の遅延、予防、または改善を目的として、化合物または薬剤を投与することを意味する。
【0161】
「有効量」とは、治療対象に治療効果を与えるのに必要な活性化合物/薬剤の量を意味する。当業者によって認識されるように、有効な用量は、治療される病気の種類、投与経路、賦形剤の使用、および他の治療処置の併用の可能性に応じて、変化する。新生物の疾患を治療するための組み合わせの治療有効量は、例えば、未処置の動物と比較して、腫瘍サイズの減少、腫瘍病巣数の減少、または腫瘍増殖の遅延を引き起こす量である。
【0162】
本明細書に開示されるように、多くの数値の範囲が提供されている。範囲の上限と下限の間の、下限の単位の10分の1までの各介在値も、文脈上明確な断りがない限り、具体的に開示されていることが理解される。記載された値または記載された範囲内の介在値と、その記載された範囲内の他の記載されたまたは介在する値との間のそれぞれのより小さい範囲は、本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立してその範囲に含まれても、または除外されてもよく、そして、より小さい範囲にいずれかまたは両方の制限が含まれないまたは含まれる各範囲も、記載された範囲において特に除外される制限に従って、本発明に包含される。記載された範囲が制限の一方または両方を含む場合、含まれる制限のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0163】
「約」との用語は、一般に、示された数値のプラスマイナス10%を意味する。例えば、「約10%」は9%~11%の範囲を示すことができ、「約1」は0.9~1.1を意味し得る。「約」の他の意味は、四捨五入など、文脈から明らかであり、例えば「約1」は、0.5~1.4を意味することもあり得る。
【実施例
【0164】
以下の実施例は、本発明のさらなる理解のために提供されるものであるが、本発明の有効な範囲を制限することを決して意味するものではない。
【0165】
実施例1. 30kmPEG-Lys(Mal)-(Val-Cit-PAB-MMAE)の製造
分岐リンカー中間体化合物7の製造(図1
1(3.1g、10mmol)の乾燥CHCl(50mL)溶液に、アルゴン下、室温で、2(2.6g、12mmol、1.2当量)、EDCI(2.87g、15mmol、1.5当量)、およびHOBt(0.27g、2mmol、0.2当量)を加える。TLCにより完全な変換が観察されるまで、混合物を撹拌する。反応が完了した後、混合物をCHClで抽出し、有機層を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮する。粗反応混合物をシリカゲルのクロマトグラフィーで精製して、生成物3を得る。
【0166】
3(2.6g、5mmol)のTHF(50mL)溶液に、アルゴン下、室温で、1MのLiOH(20mL、20mmol、4.0当量)を加える。TLCにより完全な変換が観察されるまで、混合物を撹拌する。反応が完了した後、混合物をCHClで抽出し、有機層を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮する。粗反応混合物をシリカゲルのクロマトグラフィーで精製して、生成物4を得る。
【0167】
4(2.3g、5mmol)の乾燥CHCl(50mL)溶液に、アルゴン下、室温で、5(1.6g、6mmol、1.2当量)、EDCI(1.4g、7.5mmol、1.5当量)、およびHOBt(0.14g、1mmol、0.2当量)を加える。TLCにより完全な変換が観察されるまで、混合物を撹拌する。反応が完了した後、混合物をCHClで抽出し、有機層を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、真空で濃縮する。粗反応混合物をシリカゲルのクロマトグラフィーで精製して、生成物6を得る。
【0168】
6(0.97g、1.0mmol)のDMF(10ml)溶液に、ジエチルアミン(1.0ml)を加え、反応を室温で1.5時間進行させる。ジエチルアミンおよび溶媒を、30℃を超えない浴温で真空除去する。残渣をエーテル(25ml)でトリチュレーションにかける。沈殿した固体を収集し、濾過し、エーテルで2回洗浄し(2×20ml)、真空で乾燥させて、生成物7を得る。
【0169】
化合物14 Val-Cit-PAB-MMAEの製造(図2
Fmoc-Val-OH 8(3.4g、10mmol、1.0当量)、N-ヒドロキシスクシンイミド(1.5g、13mmol、1.3当量)を、CHCl(60ml)とTHF(20ml)の混合液に0℃で溶解させ、この溶液に、EDCI(2.5g、13mmol、1.3当量)を加える。次いで、溶液を室温までゆっくり温める。反応が完了するまで、反応混合物を室温で撹拌する。次いで、反応混合物を減圧下で濃縮する。濃縮した残渣をTHFで溶解し、濾過してEDUを除去する。ろ液を濃縮し、n-ヘプタンにより、5~10℃で12時間再スラリー化する。固体を濾過し、洗浄し、真空下で乾燥して、Fmoc-Val-OSuを得る。
【0170】
Fmoc-Val-OSu(4.4g、10mmol、1.0当量)を、室温でアセトニトリル(50mL)に溶解し、続いて炭酸ナトリウム(1.2g、11mmol、1.1当量)とL-シトルリン(1.9g、11mmol、1.1当量)の水溶液(50ml)を加える。反応が完了するまで、反応混合物を35℃で数時間撹拌する。混合物を20℃に冷却し、15%クエン酸(150mL)でクエンチし、EtOAc/i-PrOH(9:1)(200mL×2)で抽出する。合わせた有機相を、水(140mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濃縮する。残渣をメチルtert-ブチルエーテルで洗浄して、Fmoc-Val-Cit-OH 9を得る。
【0171】
Fmoc-Val-Cit-OH 9(3.0g、6.0mmol、1.0当量)、および4-アミノベンジルアルコール(1.5g、12.1mmol、2.0当量)を、CHCl(70mL)とMeOH(30mL)の溶液に溶解する。EEDQ(3.0g、12.1mmol、2.0当量)を加え、溶液を室温で1日撹拌する。追加のEEDQ(1.5g、6.0mmol、1.0当量)を加え、溶液を12時間継続して撹拌する。反応混合物を濃縮し、残渣をメチルtert-ブチルエーテルで洗浄して、Fmoc-Val-Cit-PAB-OH 10を得る。
【0172】
Fmoc-Val-Cit-PAB-OH 10(2.0g、3.3mmol、1.0当量)のDMF(20mL)溶液に、p-ニトロベンゾイルクロリド11(1.2g、6.6mmol、2.0当量)およびピリジン(0.4mL、5.0mmol、1.5当量)を加える。混合物を室温で12時間撹拌し、次いで濃縮する。残渣をEtOAc/メチルtert-ブチルエーテルで洗浄して、生成物12を得る。
【0173】
12(1.3g、1.7mmol、1.0当量)のDMF(3.4mL)溶液に、室温で、HOBt(376mg、2.78mmol、1.6当量)およびピリジン(0.85mL)を加え、次いで、MMAE(1.0g、1.39mmol)を加える。溶液を室温で24時間撹拌する。反応混合物を濃縮し、残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーで精製して、生成物Fmoc-Val-Cit-PAB-MMAE 13を得る。
【0174】
Fmoc-Val-Cit-PAB-MMAE 13(1.4g、1.1mmol)のDMF(20mL)溶液に、EtNH(5mL)を加え、溶液を室温で12時間撹拌する。反応混合物を濃縮し、残渣をEtOAc/メチルtert-ブチルエーテルで洗浄して、生成物14を得る。
【0175】
化合物19 30k mPEG-Lys(Mal)-(MMAE)の製造(図3
H-Lys(boc)-OH(369mg、1.5mmol、3.0当量)を100mLの無水DMFに加え、続いて、DIEA(5.0mmol、10.0当量)、化合物15(15g、0.5mmol、1.0当量)、および150mLの無水CHClを加える。混合物を、アルゴン下、室温で一晩撹拌する。不溶性物質を濾過する。溶媒を除去し、残渣をCHCl/メチルtert-ブチルエーテルから再結晶させる。単離された固体を、ACN/2-プロパノールから再び再結晶させる。生成物を、真空下、40℃で4時間乾燥させて、生成物16を得る。
【0176】
16(15g、0.5mmol)の乾燥CHCl(150mL)溶液に、アルゴン下、室温で、7(1.1g、1.5mmol、3.0当量)、EDCI(0.58g、3.0mmol、6.0当量)、およびHOBt(0.61g、4.5mmol、9.0当量)を加える。混合物を、アルゴン下、室温で、一晩撹拌する。溶媒を除去し、残渣をCHCl/メチルtert-ブチルエーテルから再結晶させる。沈殿した固体を、ACN/2-プロパノールから再び再結晶させる。生成物を、真空下、40℃で4時間乾燥させて、生成物17を得る。
【0177】
17(9.0g、0.3mmol)をCHCl(90mL)に溶解し、続いて、TFA(45mL)を加える。混合物を室温で1時間撹拌する。溶媒を、真空下、<35℃で可能な限り除去する。残渣をCHCl/メチルtert-ブチルエーテルから2回再結晶させる。生成物を真空下、40℃で乾燥して、中間体を生成する。次いで、乾燥した中間体(6.0g、0.2mmol、1.0当量)を、アルゴン下で無水CHCl(60mL)に溶解する。溶液を0~5℃に冷却し、DIPEA(517mg、4mmol、20当量)、およびNHS-PEG-Mal(0.22g、0.5mmol、2.5当量)を0~5℃で加える。混合物を0~5℃で2時間撹拌し、次いで、ゆっくりと室温まで温め、アルゴン下で一晩室温に保つ。反応後、溶媒を除去し、残渣をCHCl/メチルtert-ブチルエーテルから再結晶させる。沈殿した固体を、ACN/2-プロパノールから再び再結晶させる。単離した生成物を、真空下、40℃で4時間乾燥させて、生成物18を得る。
【0178】
18(3.0g、0.1mmol)の乾燥CHCl(30mL)溶液に、アルゴン下、室温で、14(0.9g、0.8mmol、8.0当量)、EDCI(0.46g、2.4mmol、24当量)、およびHOBt(0.49g、3.6mmol、36当量)を加える。混合物を、アルゴン下、室温で一晩撹拌する。溶媒を除去し、残渣をCHCl/メチルtert-ブチルエーテルから再結晶させる。沈殿した固体を、ACN/2-プロパノールから再び再結晶させる。単離した生成物を、真空下、40℃で4時間乾燥させて、生成物19を得る。
【0179】
実施例2. SCAHer2×SCAHer2の製造
抗Her2(SCAHer2)-1および抗Her2(SCAHer2)-2の二重特異性一本鎖抗体(SCA)フラグメントは、哺乳動物細胞(例えば、EasySelectTMを使用したCHO)、または酵母(例えば、pPICZベクターを含むピキア酵母(Pichia pastori)発現キット)による組換えDNA技術によって調製することができる。以下のアミノ酸配列(配列番号1)に対応するSCAHer2-1×SCAH2-2のDNA配列を合成し、発現ベクターにクローニングし、宿主細胞に形質転換する。発現したタンパク質は、Ni-キレートレジンまたはプロテインLレジンで精製される。その後のコンジュゲートを容易にするために、部位特異的コンジュゲーション官能基チオールが、組換えDNA技術を介して、2つのHer2 SCA間のリンカーに挿入される。
【0180】
SCAHer2II×SCAHer2IVのアミノ酸配列(配列番号:1)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVSIGVAWYQQKPGKAPKLLIYSASYRYTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYYIYPYTFGQGTKVEIKRTGGSGGSGGSGGSGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFTDYTMDWVRQAPGKGLEWVADVNPNSGGSIYNQRFKGRFTLSVDRSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARNLGPSFYFDYWGQGTLVTVSSGCGSGGSGGSGGSGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFNIKDTYIHWVRQAPGKGLEWVARIYPTNGYTRYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCSRWGGDGFYAMDYWGQGTLVTVSSGGSGGSGGSGGSGGDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTHHHHHH
【0181】
実施例3. 30kmPEG-(SCAHer2×SCAHer2)-(Val-Cit-PAB-MMAE)の製造(図4
タンパク質SCAHer2/SCAHer2を、室温で30分間、PBSバッファー(pH=7.4)中、還元剤TCEP-HClによって処理し、500mMのリン酸ナトリウムのpH=4.12のストック溶液で、pH6.8に調整する。処理したタンパク質を5mg/mLに濃縮し、PEG化する。SCAHer2/SCAHer2のPEG化は、5~10モル当量の化合物19[30k mPEG-Lys(Mal)-(Val-Cit-PAB-MMAE)]を用いて、室温で3時間行う。室温で10分間、10mMのL-シスチンで反応をクエンチする。最終生成物PEG-Lys(SCAHer2/SCAHer2)-(Val-Cit-PAB-MMAE)を、20mMのリン酸緩衝液中、pH6.5で、陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(CM Fast Flow)により精製する。目的の化合物20は、SEC-HPLCおよび細胞ベースの活性アッセイによって確認される。
【0182】
実施例4. Val-Cit-PABC-MMAEの製造(図5
Fmoc-Val-OSu(化合物2)
Fmoc-Val-OH(20.3g、60.0mmol)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(9.0g、78.0mmol)を、CHCl(120mL)およびTHF(40mL)の混合液に溶解した。別途、EDCI(13.8g、72.0mmol)をCHCl(200mL)に溶解し、溶液を0~5℃に冷却した。次いで、Fmoc-Val-OH/NHS溶液を、EDCI溶液に加え、続いて、反応混合物を室温まで暖めた。反応が完了するまで、反応混合物を室温で撹拌した。次いで、反応混合物を減圧下で可能な限り濃縮し、残留CHClをTHF(2×100mL)で除いた。濃縮した残渣をTHF(800mL)に溶解し、濾過してEDUを除去した。濾液を減圧下で濃縮し、残渣をn-ヘプタン(800mL)により、5~10℃で12時間、スラリー化した。固体を濾過し、洗浄し、真空下で乾燥して、Fmoc-Val-OSu(2)(23.8g、91%)を白色粉末として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C24H24N2O6Na [M+Na]+ 459.1532, 検出値 459.1523.
【0183】
Fmoc-Val-Cit(化合物3)
Fmoc-Val-Osu(9.8g、22.5mmol)を、室温でDME(150mL)に溶解した。別途、重炭酸ナトリウム(2.1g、24.7mmol)を室温で水(150mL)に溶解し、続いて、L-シトルリン(4.3g、24.7mmol)を加えて、均一な透明溶液を得た。次いで、調製したL-シトルリン溶液を、Fmoc-Val-Osu溶液に加えた。THF(75mL)を加え、反応が完了するまで反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を15%クエン酸(200mL)で酸性化し、Rotavaporで濃縮した。残渣を水(500mL)に2時間懸濁させた後、濾過し、真空下で乾燥させた。乾燥した固体をメチルtert-ブチルエーテル(500mL)に再懸濁し、12時間撹拌した後、濾過、洗浄、真空下で乾燥して、Fmoc-Val-Cit(3)(6.8g、61%)を白色粉末として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C26H33N4O6 [M+H]+ 497.2400, 検出値 497.2388.
【0184】
Fmoc-Val-Cit-PABOH(化合物4)
化合物3(4.96g、10.0mmol)および4-アミノベンジルアルコール(2.46g、20.0mmol)のCHCl(350mL)およびMeOH(150mL)の溶液に、EEDQ(4.95g、20.0mmol)を加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌した。追加のEEDQ(2.5g、10.0mmol)を反応物に加え、混合物をさらに24時間撹拌した。反応が完了した後、溶媒を減圧下で除去し、得られた残渣をメチルtert-ブチルエーテル(800mL)で12時間スラリー化した。固体を濾過し、洗浄し、真空下で乾燥させて、化合物4(4.1g、69%)を白色粉末として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C33H40N5O6 [M+H]+ 602.2979, 検出値 602.2969.
【0185】
Fmoc-Val-Cit-PABC-PNP(化合物5)
化合物4(5.2g、8.6mmol)およびビス(4-ニトロフェニル)カーボネート(4.9g、16.1mmol)のDMF(52mL)溶液に、室温で、DIPEA(2.5mL、15.0mmol)を加えた。反応が完了するまで、反応混合物を、室温で5時間撹拌した。無水酢酸エチル(250mL)およびメチルtert-ブチルエーテル(250mL)を加えることにより、生成物を沈殿させた。懸濁液を0℃に冷却し、30分間撹拌した。固体を濾過により単離し、洗浄し、真空下で乾燥させて、Fmoc-Val-Cit-PABC-PNP(5)(4.7g、72%)を淡黄色の粉末として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C40H43N6O10 [M+H]+ 767.3041, 検出値 767.3045.
【0186】
Fmoc-Val-Cit-PABC-MMAE(化合物6)
化合物MMAE(2.0g、1.8mmol)およびFmoc-Val-Cit-PABC-PNP(5)(2.8g、3.6mmol)を、DMF(20mL)に溶解した。次いで、HOBt(0.75g、5.6mmol)およびピリジン(1.7mL)を加え、反応混合物を室温で24時間撹拌した。反応が完了した後、反応混合物を0℃に冷却し、続いて、メチルtert-ブチルエーテル(180mL)を加えて、生成物を沈殿させた。スラリーを3~5時間撹拌し、濾過し、洗浄し、真空下で乾燥させた。粗生成物をカラム精製により精製して、Fmoc-Val-Cit-PABC-MMAE(6)(3.0g、80%)を黄色粉末として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C73H105N10O14 [M+H]+ 1345.7812, 検出値 1345.7820.
【0187】
Val-Cit-PABC-MMAE(化合物7)
化合物6(3.0g、2.2mmol)を無水DMF(40mL)に懸濁し、均一な懸濁液が形成されるまで、室温で撹拌した。次いで、ジエチルアミン(10mL)を加え、反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応が完了した後、メチルtert-ブチルエーテル(100mL)および酢酸エチル(50mL)を60分かけて加えた。得られた混合物を0℃で4時間撹拌した。固体を濾過し、真空下で乾燥させて、Val-Cit-PABC-MMAE(7)(2.3g、92%)を淡黄色の粉末として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C58H95N10O12 [M+H]+ 1123.7131, 検出値 1123.7142.
【0188】
実施例5. 化合物13(2×MMAEを有する分岐リンカーB)の製造(図6
化合物10
化合物8(0.62g、2.0mmol)の乾燥CHCl(15mL)溶液に、アルゴン下、室温で、ジ-tert-ブチル3,3’-アザンジイルジプロピオネート(9)(0.62mL、2.2mmol)、EDCI(0.58g、3.0mmol)、およびHOBt(54mg、0.4mmol)を加えた。混合物を室温で撹拌し、TLCで監視した。反応が完了した後、混合物をCHCl(30mL×2)で抽出し、有機層を合わせ、塩水(20mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させた。溶液をRotavaporで濃縮した。粗反応混合物をシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製して、化合物10(1.1g、96%)を無色の油として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C32H43N2O7 [M+H]+ 567.3070, 検出値 567.3062.
【0189】
化合物11
化合物10(5.2g、9.2mmol)をCHCl(100mL)に溶解し、続いて、TFA(25mL)を加えた。混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を、真空下、<35℃で可能な限り除去した。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製して、化合物11(3.4g、83%)を無色の油として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C24H27N2O7 [M+H]+ 455.1818, 検出値 455.1824.
【0190】
化合物12
化合物11(41mg、0.091mmol)を乾燥CHCl(2mL)およびDMF(2mL)中で撹拌した溶液に、アルゴン下、室温で、Val-Cit-PABC-MMAE(7)(224mg、0.2mmol)、EDCI(52mg、0.27mmol)、およびHOBt(5mg、0.04mmol)を加えた。混合物を室温で撹拌し、TLCで監視した。反応が完了した後、混合物を真空中で濃縮した。残渣を、Welch Ultimate XB-C18カラムを用いた分取HPLC(溶離液:A=0.1%TFA水、B=MeCN)により精製して、化合物12(74mg、31%)を淡黄色の固体として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C140H212N22O29 [M+2H]2+ 1333.2912, 検出値 1333.2907.
【0191】
化合物13
ジエチルアミン(0.6ml)を、化合物12(73mg)のDMF(3ml)溶液に加えた。反応を室温で4時間進行させた。反応混合物をRotavaporで濃縮し、Welch Ultimate XB-C18カラム(溶離液:A=0.1%TFA水、B=MeCN)を用いた分取HPLCにより残渣を精製して、化合物13(71mg、99%)を淡黄色の固体として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C125H202N22O27 [M+2H]2+ 1222.2572, 検出値 1222.2560.
【0192】
実施例6. 化合物18(2×MMAEを有する分岐リンカーB)の製造(図7
化合物15
化合物14(0.68g、2.0mmol)の乾燥CHCl(10mL)溶液に、アルゴン下、室温で、ジ-tert-ブチル3,3’-アザンジイルジプロピオネート(9)(0.64mL、2.2mmol)、EDCI(0.58g、3.0mmol)、およびHOBt(54mg、0.4mmol)を加えた。混合物を室温で撹拌し、TLCで監視した。反応が完了した後、混合物をCHCl(2×30mL)で抽出し、合わせた有機層を塩水(20mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、Rotavaporで濃縮した。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製して、化合物15(1.2g、99%)を無色の油として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C34H47N2O7 [M+H]+ 595.3383, 検出値 595.3380.
【0193】
化合物16
化合物15(0.5g、0.84mmol)をCHCl(6.0mL)に溶解し、続いて、TFA(3.0mL)を加えた。混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を、真空下、<35℃で可能な限り除去した。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製して、化合物16(0.34g、85%)を無色の油として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C26H31N2O7 [M+H]+ 483.2131, 検出値 483.2127.
【0194】
化合物17
化合物16(185mg、0.383mmol)の、乾燥CHCl(8mL)およびDMF(8mL)の混合溶液に、アルゴン下、室温で、Val-Cit-PABC-MMAE(7)(947mg、0.843mmol)、EDCI(238mg、1.23mmol)、およびHOBt(26mg、0.19mmol)を加えた。混合物を室温で撹拌し、HPLCで監視した。反応が完了した後、混合物をRotavaporで濃縮した。残渣を、Welch Ultimate XB-C18カラム(溶離液:A=0.1%TFA水、B=MeCN)を用いた分取HPLCにより精製して、化合物17(0.56g、54%)を淡黄色の固体として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C142H216N22O29 [M+H]+ 2694.6137, 検出値 2694.6146.
【0195】
化合物18
ジエチルアミン(2.0ml)を、化合物17(0.62g)のDMF(5ml)溶液に加えた。混合物の反応を室温で2時間進行させた。反応混合物をRotavaporで濃縮し、Welch Ultimate XB-C18カラム(溶離液:A=0.1%TFA水、B=MeCN)を用いた分取HPLCにより残渣を精製して、化合物18(0.51g、89%)を淡黄色の固体として得た。。
HRMS (ESI) 計算値 C127H205N22O27 [M+H]+ 2471.5378, 検出値 2471.5369; 計算値 C127H206N22O27 [M+2H]2+ 1236.2728, 検出値 1236.2744.
【0196】
実施例7. 化合物22(4×MMAEを有する分岐リンカーB)の製造(図8
化合物20
化合物19(0.76g、2.0mmol)の乾燥CHCl(10mL)溶液に、アルゴン下、室温で、ジ-tert-ブチル3,3’-アザンジイルジプロピオネート(9)(0.64mL、2.2mmol)、EDCI(0.58g、3.0mmol)、およびHOBt(54mg、0.4mmol)を加えた。混合物を室温で撹拌し、TLCで監視した。反応が完了した後、混合物をCHCl(2×30mL)で抽出し、合わせた有機層を塩水(20mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、Rotavaporで濃縮した。粗反応混合物をシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製して、化合物20(1.2g、99%)を無色の油として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C29H55N4O11 [M+H]+ 635.3867, 検出値 635.3860.
【0197】
化合物21
化合物20(0.3g、0.47mmol)をCHCl(4.0mL)に溶解し、続いて、TFA(2.0mL)を加えた。混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を、真空下、<35℃で可能な限り除去した。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製して、化合物21(0.34g、85%)を無色の油として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C21H39N4O11 [M+H]+ 523.2615, 検出値 523.2607.
【0198】
化合物22
化合物21(39mg、0.076mmol)を乾燥CHCl(2mL)とDMF(2mL)の混合液中で撹拌した溶液に、アルゴン下、室温で、化合物18(0.41g、0.17mmol)、EDCI(43mg、0.23mmol)、およびHOBt(4.0mg、0.03mmol)を加えた。反応混合物を室温で撹拌し、HPLCで監視した。反応が完了した後、混合物をRotavaporで濃縮した。残渣を、Welch Ultimate XB-C18カラムを用いた分取HPLC(溶離液:A=0.1%TFA水、B=MeCN)により精製して、化合物22(81mg、20%)を淡黄色の固体として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C275H445N48O63 [M+3H]3+ 1810.1053, 検出値 1810.1061; 計算値 C275H446N48O63 [M+4H]4+ 1357.8310, 検出値 1357.8346.
【0199】
実施例8. 化合物27(4×MMAEを有する分岐リンカーB)の製造(図9
化合物24
化合物21(0.57g、1.1mmol)の乾燥CHCl(10mL)溶液に、アルゴン下、室温で、化合物23(0.51g、2.4mmol)、EDCI(0.67g、3.5mmol)、HOBt(74mg、0.55mmol)、およびDIPEA(0.78mL、4.4mmol)を加えた。混合物を室温で撹拌し、TLCで監視した。反応が完了した後、混合物をCHCl(2×30mL)で抽出し、合わせた有機層を塩水(20mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、Rotavaporで濃縮した。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製して、化合物24(0.7g、79%)を無色の油として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C39H73N6O13 [M+H]+ 833.5236, 検出値 833.5231.
【0200】
化合物25
化合物24(0.52g、0.62mmol)をCHCl(5.0mL)に溶解し、続いて、TFA(2.0mL)を加えた。混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を、真空下、<35℃で可能な限り除去した。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィーにより精製して、化合物25(0.42g、93%)を無色の油として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C31H57N6O13 [M+H]+ 721.3984, 検出値 721.3997.
【0201】
化合物26
化合物25(77mg、0.11mmol)のDMF(5mL)溶液に、アルゴン下、室温で、化合物18(0.58g、0.24mmol)、EDCI(82mg、0.43mmol)、およびHOBt(14mg、0.11mmol)を加えた。混合物を室温で撹拌し、HPLCで監視した。反応が完了した後、混合物をRotavaporで濃縮した。粗反応混合物を、Welch Ultimate XB-C18カラム(溶離液:A=0.1%TFA水、B=MeCN)を用いた分取HPLCにより精製して、化合物26(0.23g、38%)を淡黄色の固体として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C285H463N50O65 [M+3H]3+ 1876.4854, 検出値 1876.4851; 計算値 C285H464N50O65 [M+4H]4+ 1407.6160, 検出値 1407.6158.
【0202】
化合物27
リンドラー触媒(130mg、5重量%)を、アジド26(180mg、0.03mmol)をメタノール(10mL)中で撹拌した溶液に加えた。反応フラスコを排気し、水素ガスでフラッシュした。反応混合物を、水素雰囲気下(バルーン)、室温で5時間撹拌した。反応の完了後、触媒をセライトのパッドを通して濾過し、ケーキをメタノール(10mL)で洗浄し、濾液を減圧下で濃縮した。残渣を、Welch Ultimate XB-C18カラム(溶離液:A=0.1%TFA水、B=MeCN)を用いた分取HPLCにより精製して、化合物27(130mg、74%)を淡黄色の固体として得た。
HRMS (ESI) 計算値 C285H465N48O65 [M+3H]3+ 1867.8219, 検出値 1867.8217; 計算値 C285H466N48O65 [M+4H]4+ 1401.1184, 検出値 1401.1181.
【0203】
実施例9. 化合物32(30kmPEG(マレイミド)-2MMAE)の製造(図10
化合物29
H-Lys(boc)-OH(369mg、1.5mmol)を無水DMF(100mL)に加え、続いて、DIPEA(0.83mL、5.0mmol)、化合物28(15g、0.5mmol)、および無水CHCl(150mL)を加えた。混合物を、アルゴン下、室温で一晩撹拌した。不溶物を濾別した。溶媒を除去し、残渣をCHCl/メチルtert-ブチルエーテル(45mL/300mL)から再結晶させた。単離した固体をMeCN/2-プロパノール(30mL/450mL)から再結晶させた。生成物を、真空下、40℃で4時間乾燥させて、化合物29(13.6g、91%)を白色粉末として得た。
13C-NMR (126 MHz, CDCl3) δ 172.74, 155.65, 155.55, 78.41, 70.13 (PEG), 63.66, 58.55, 52.99, 39.90, 31.70, 29.17 , 28.08, 21.97.
【0204】
化合物30
TFA(29.5mL)を、化合物29(5.7g、0.19mmol)の無水CHCl(57mL)溶液に加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。真空下、<35℃で可能な限り溶媒を除去した。残渣をCHCl/メチルtert-ブチルエーテル(14.5mL/115mL)から2回再結晶させた。単離された生成物を、真空下、40℃で乾燥させて、化合物30(4.7g、84%)を白色粉末として得た。
【0205】
化合物31
DIPEA(473mg、3.6mmol)を、化合物30(5.5g、0.18mmol)を無水CHCl(55mL)中で撹拌した溶液に、0℃で加え、続いて、NHS-PEG-Mal(0.2g、0.47mmol)を加えた。混合物を、0℃で1.5時間撹拌した。溶液を0℃から室温までゆっくり温め、次いで、アルゴン雰囲気下で一晩撹拌した。溶媒を除去し、残渣をCHCl/メチルtert-ブチルエーテル(13.8mL/110mL)から再結晶させた。単離された固体をMeCN/2-プロパノール(11mL/165mL)から再び再結晶させた。固体を真空下で乾燥させて、化合物31(5.0g、90%)を白色粉末として得た。
13C-NMR (126 MHz, CDCl3) δ 172.76, 171.46, 170.01, 169.94, 155.55, 133.82, 71.37, 70.01 (PEG), 69.05, 68.92, 66.49, 63.53, 58.44, 52.92, 38.65, 36.01, 33.84, 33.71, 31.36, 28.21, 21.85.
【0206】
化合物32
化合物31(0.76g、0.025mmol)をDMF/CHCl(5mL/5mL)混合溶媒中で撹拌した溶液に、アルゴン下、室温で、化合物13(0.12g、0.05mmol)、DCC(31mg、0.15mmol)、およびDMAP(28mg、0.23mmol)を加えた。反応混合物を室温で撹拌し、HPLCで監視した。反応が完了した後、混合物をRotavaporで濃縮した。残渣を、Phenomenex Jupiter(登録商標)C18カラム(溶離液:A=0.1%TFA水、B=MeCN)を用いた分取HPLCにより精製して、化合物32(0.36g、47%)を白色の固体として得た。
MS (MALDI-TOF) m/z 33863.
【0207】
実施例10. 化合物35(20kmPEG(マレイミド)-4MMAE)の製造(図11
化合物33
化合物33の合成については、化合物31の製造を参照されたい。
【0208】
化合物34
化合物33(2.0g、0.1mmol)を無水CHCl(20mL)中で撹拌した溶液に、アルゴン下、室温で、DBCO-NH(83mg、0.3mmol)、EDCI(115mg、0.6mmol)、およびHOBt(122mg、0.9mmol)を加えた。混合物を室温で撹拌し、HPLCで監視した。溶媒を除去し、残渣をCHCl/メチルtert-ブチルエーテル(5mL/40mL)から再結晶させた。単離された固体をMeCN/2-プロパノール(4mL/60mL)から再び再結晶させた。固体を、真空下、40℃で4時間乾燥させて、化合物34(1.9g、89%)を白色粉末として得た。
13C-NMR (214 MHz, CDCl3) δ 171.12, 171.08, 170.05, 169.75, 155.64, 150.59 (d, J = 21.4 Hz), 147.54 (d, J = 6.6 Hz), 133.82, 131.69 (d, J = 13.8 Hz), 128.70, 128.27 (d, J = 11.3 Hz), 127.93 (d, J = 5.4 Hz), 127.79, 127.39 (d, J = 8.3 Hz), 126.66, 125.04 (d, J = 6.0 Hz), 122.46 (d, J = 4.9 Hz), 121.85 (d, J = 11.3 Hz), 114.21 (d, J = 9.8 Hz), 107.38 (d, J = 33.6 Hz), 70.06 (PEG), 66.59, 63.64 (d, J = 7.3 Hz), 58.50, 54.97 (d, J = 13.3 Hz), 54.23 (d, J = 59.1 Hz), 38.61, 38.40, 36.31, 34.86 (d, J = 18.0 Hz), 34.05 (d, J = 20.8 Hz), 33.89, 33.78, 31.76 (d, J = 40.2 Hz), 28.31 (d, J = 9.8 Hz), 21.99 (d, J = 17.1 Hz).
【0209】
化合物35
化合物34(147mg、0.007mmol)を無水MeOH(3mL)に溶解し、続いて、化合物22(40mg、0.007mmol)を加えた。反応混合物を、室温で24時間撹拌した。混合物をRotavaporで濃縮し、残渣を、Phenomenex Jupiter(登録商標)C18カラム(溶離液:A=0.1%TFA水、B=MeCN)を用いた分取HPLCにより精製して、化合物35(41mg、22%)を白色の固体として得た。
MS (MALDI-TOF) m/z 25963.
【0210】
実施例11. 化合物39(マレイミド-20mPEG-4MMAE)の製造(図12
化合物37
アミン-PEG20k-COH(36)(1.0g、0.05mmol)を無水CHCl(10mL)中で撹拌した溶液に、0℃で、DIPEA(83μL、0.5mmol)を加え、続いて、6-マレイミドヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(46mg、0.15mmol)を加えた。混合物を0℃で1.5時間撹拌した。溶液を0℃から室温までゆっくり温め、アルゴン雰囲気下で一晩撹拌した。溶媒を除去し、残渣をCHCl/メチルtert-ブチルエーテル(2.5mL/20mL)から再結晶させた。単離された固体をMeCN/2-プロパノール(2mL/30mL)から再び再結晶させた。残渣を真空下で乾燥させて、化合物37(0.95g、95%)を白色粉末として得た。
【0211】
化合物38
化合物37(0.9g、0.045mmol)を無水CHCl(9mL)中で撹拌した溶液に、アルゴン下、室温で、DBCO-NH(37mg、0.14mmol)、EDCI(52mg、0.27mmol)、およびHOBt(55mg、0.41mmol)を加えた。混合物を室温で撹拌し、HPLCで監視した。溶媒を除去し、残渣をCHCl/メチルtert-ブチルエーテル(2.5mL/20mL)から再結晶させた。単離された固体をMeCN/2-プロパノール(2mL/30mL)から再び再結晶させた。生成物を、真空下、40℃で4時間乾燥させて、化合物38(0.86g、89%)を白色粉末として得た。
【0212】
化合物39
化合物38(166mg、0.008mmol)を無水MeOH(3mL)に溶解し、続いて、化合物22(30mg、0.006mmol)を加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌した。溶媒をRotavaporで除去し、残渣を、Phenomenex Jupiter(登録商標)C18カラム(溶離液:A=0.1%TFA水、B=MeCN)を用いた分取HPLCにより精製して、化合物39(37mg、27%)を白色の固体として得た。HRMS (ESI) または NMR
【0213】
実施例12. 化合物41(DBCO-20kPEG-4MMAE)の製造(図13
化合物40
アミン-PEG20k-COH(36)(1.0g、0.05mmol)を無水CHCl(10mL)中で撹拌した溶液に、0℃で、DIPEA(83μL、0.5mmol)を加え、続いて、DBCO-NHS(60mg、0.15mmol)を加えた。混合物を0℃で1.5時間撹拌した。溶液を0℃から室温までゆっくり温め、アルゴン雰囲気下で一晩撹拌した。溶媒を除去し、残渣をCHCl/メチルtert-ブチルエーテル(2.5mL/20mL)から再結晶させた。単離された固体をMeCN/2-プロパノール(2mL/30mL)から再び再結晶させた。残渣を真空下で乾燥させて、化合物40(0.91g、91%)を白色粉末として得た。
【0214】
化合物41
アルゴン雰囲気下で、化合物40(120mg、0.006mmol)をCHCl/DMF(2mL/2mL)の混合溶媒に溶解し、続いて、化合物27(50mg、0.009mmol)、EDCI(6.9mg、0.036mmol)、およびHOBt(7.3mg、0.054mmol)を順次に加えた。得られた反応混合物を室温で24時間撹拌した。反応混合物をRotavaporで濃縮し、残渣を、Phenomenex Jupiter(登録商標)C18カラム(溶離液:A=0.1%TFA水、B=MeCN)を用いた分取HPLCにより精製して、化合物41(53mg、36%)を白色の固体として得た。
MS (MALDI-TOF) m/z 25450 Da.
【0215】
実施例13. SCAHer2II×SCAHer2IV(化合物42)の製造(図14
配列番号1のアミノ酸配列を有するSCAHer2II×SCAHer2IVを、実施例2に記載のとおり、調製し、精製した。特に、SCAHer2II×SCAHer2IVを発現する宿主細胞の培養培地の約1.6Lの上清を、遠心分離後に収集し、50mMのリン酸ナトリウム、100mMのNaCl、pH7.0の液で、予め平衡化したNi充填カラム(2.6cm×13cm)(Cat#AA207311、BestChrome、上海、中国)にロードした。タンパク質を、50mMのリン酸ナトリウム、250mMのイミダゾール、100mMのNaCl、pH7.0のバッファーで溶出し、15mLチューブに分画した。得られた82mgの捕捉されたタンパク質を、CaptoLカラム(Cat#17-5478-02、GE Healthcare、NJ)でさらに精製した。CaptoLカラム(1.6cm×8cm)は、50mMのリン酸ナトリウム、100mMのNaCl、pH7.0の液で予め平衡化され、タンパク質を、75mMの酢酸、pH3.0、で溶出し、58.3mgのタンパク質(プロテイン)を得た。図14は、精製された化合物42(SCAHer2II×SCAHer2IV)のSDS-PAGEおよびSEC-HPLC分析を示す。
【0216】
実施例14. 30kmPEG-(SCAHer2II×SCAHer2IV)-2MMAE(化合物43、JY201)の製造(図15
タンパク質SCAHer2II×SCAHer2IV(42)を、PBSバッファー(pH=7.4)中、還元剤TCEP-HClにより、室温で30分間処理し、次いで、500mMのリン酸ナトリウムのpH=4.12のストック溶液で、pHを6.8に調整した。処理したタンパク質を、コンジュゲーションの前に、5mg/mLに濃縮した。SCAHer2II×SCAHer2IVのコンジュゲーションを、5~10モル当量の化合物32(30kmPEG(マレイミド)-2MMAE)を用いて、室温で3時間行った。反応物を、室温で10分間、10mMのL-シスチンでクエンチした。最終生成物30kmPEG-(SCAHer2II×SCAHer2IV)-2MMAE、JY201を、陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(CM Fast Flow、Cat#17-0719-01、GE Healthcare、NJ)を用いて、20mMのリン酸緩衝液中、pH6.5で、精製した。図15Aは、化合物43を製造する反応スキームを模式的に示し、得られた化合物43は、SDS-PAGE(図15B)によって確認された。
【0217】
実施例15. SCAHer2II×SCAHer2IV-20kPEG-4MMAE(化合物44、JY201b)の製造(図16
タンパク質SCAHer2II×SCAHer2IV(42)を、PBSバッファー(pH=7.4)中、還元剤TCEP-HClにより、室温で30分間処理し、次いで、500mMのリン酸ナトリウムのpH=4.12のストック溶液で、pHを6.8に調整した。処理したタンパク質を、コンジュゲーションの前に、5mg/mLに濃縮した。SCAHer2II×SCAHer2IVのコンジュゲーションを、5~10モル当量の化合物41(DBCO-20kPEG-4MMAE)を用いて、室温で3時間行った。反応物を、室温で10分間、10mMのL-シスチンでクエンチした。最終生成物を、サイズ排除クロマトグラフィーカラム、HiPrepTM 16/60、SephacrylTM S-300HR(Cat#17-1167-01、GE Healthcare、NJ)を用いて、20mMのリン酸緩衝液中、pH6.5で、精製した。図16Aは、化合物44(SCAHer2II×SCAHer2IV-20kPEG-4MMAE、JY201b)を製造する反応スキームを模式的に示し、最終化合物44は、SDS-PAGE(図16B)によって確認された。
【0218】
実施例16. 化合物43(JY201)および化合物44(JY201b)のインビトロ細胞傷害性(図17、18)
PEG化BsADC、JY201およびJY201bのインビトロ細胞傷害性(毒性)に対するPEG化の効果を評価するために、化合物43(JY201)または化合物44(JY201b)、または対照(コントロール)を用いて、細胞のインキュベーションをした後、細胞生存率アッセイを行った。具体的には、4×10細胞/ウェルを平底96ウェルプレートに播種して、細胞を接着させた。6時間後、細胞を、所定の用量のJY201で、37℃で72時間処理し、続いて、製造元のプロトコルに従って、各ウェルに20μlのMTSを加えた。次いで、OD490nmでの吸光度を検出し、細胞傷害性のパーセンテージを計算した。
【0219】
図17は、SKBR-3細胞およびHCC-827細胞に対するJY201のEC50が、それぞれ、2.23nMおよび75.55nMであることを示している。HCC827細胞は、SKBR-3よりもはるかに低いレベルのHer2を発現するため(Kayatani, H. et al. 2020, Biochem Biophys Res Commun 532, 341-346)、これらの結果は、JY201が、非常に低いHer2発現の腫瘍細胞に強力な細胞毒性を誘導できることを実証した。さらに、図17の左パネルの結果から、一本鎖抗体Her2II×Her2IVが、SKBR-3に対して検出可能な傷害性を誘発せず、したがって、JY201の細胞傷害性が、ペイロードされたMMAEによって引き起こされたことが示された。
【0220】
上記と同じ方法を用いて、JIMT-1細胞に対するJY201のインビトロ細胞傷害性を試験し、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)と比較した。驚くべきことに、図18Aの結果から、DAR(薬物と抗体の比率)は、JY201ではわずか2であるのに対し、T-DM1ではDARが4であるにも関わらず、JY201のEC50が、T-DM1のEC50と非常に類似していることが示された(それぞれ、3.29μg/mlおよび3.74μg/ml)。これらの結果は、腫瘍細胞へのインビトロ細胞傷害性の誘導において、2つのペイロードのみを有するPEG化BsADC JY201の効力が、4つのペイロードを有するT-DM1と同等であることを示した。
【0221】
JY201bのインビトロ細胞傷害性(DARが4である)を試験するために、さらなる実験を行い、JY201およびT-DM1と比較した(図18B、C、DおよびE)。結果は、4つのペイロードを有するPEG化BsADC JY201bが、2つのペイロードを有するJY201よりも強力であり(図18AおよびD)、試験された所定の濃度において腫瘍細胞株のパネル全体にわたって、T-DM1と同等またはより強力であることを示した。試験されたサンプルの濃度の下限サブセットでは、標的の抗原の発現が低い腫瘍細胞に対する強力な細胞傷害性の誘導において、JY201bが、T-DM1よりもはるかに優れていたことは注目に値する(Her2発現レベル:SKBR-3>JIMT-1>ZR75-1、以下の表を参照)。このメリットは、より優れた傷害性プロファイルとともに、JY201bにより、現在の治療法を利用できないHer2の発現が低い癌患者を治療する大きな希望をもたらす。
【表2】
【0222】
実施例17. 標的の細胞によるJY201のインターナリゼーション(図19
実施例16で実証された細胞傷害性効果の機序を調べるために、SKBR-3細胞によるPEG化BsADC JY201のインターナリゼーションを、Matsuzaki(Matsuzaki, S. et al. 2018, International Journal of Cancer 142, 1056-1066)に記載されたフローサイトメトリー法によって調べた。トリプシン処理後、SKBR-3細胞を洗浄し、2%FBSを含むPBSで1×10/mLの濃度に再懸濁した。細胞懸濁液を100μl/チューブに分配した。SKBR-3細胞を、10μg/mlのFlour647標識T-DM1またはJY201を用い、4℃で一晩処理した。予め冷却したPBSで2回洗浄した後、T-DM1およびJY201をインターナリゼーションさせるために、細胞を、37℃で所定の時間、インキュベートした。インキュベートした細胞を、3×200μlのFACSバッファーで洗浄した。最後の洗浄後、100μlのFACSバッファーを加え、フローサイトメトリー分析のために細胞を再懸濁させた。インターナリゼーション率は、次の式を用いて計算した。
(4℃の総MFI-37℃の総MFI)/4℃の総MFI × 100 %
【0223】
図19の結果から、標的に対するJY201の親和性はT-DM1よりもはるかに弱いにもかかわらず(データは示していない)、SKBR-3細胞によるJY201のインターナリゼーション率は、試験したすべての時点で、T-DM1よりも約2倍高かったことが示された。この結果は、従来のFcを有するADCが採用する動的インターナリゼーションおよび流出メカニズムが、本明細書に開示されるPEG化ADCには当てはまらない可能性があることを示唆した。注目すべきことに、例えば正常組織または細胞上のFcγRまたはマンノース受容体に、従来のADCのFc成分が結合することに関するインターナリゼーションメカニズムは、多くの場合、ADC薬のオフターゲット傷害性または用量制限傷害性にさえ寄与している(Krop IE, et. al. J Clin Oncol, 30, 3234-41, 2012; Uppal, H. et al. 2015, Clin Cancer Res 21, 123-133; Gorovits, B. e. al. 2013, Cancer Immunol Immunother 62, 217-223)。
【0224】
実施例18. JY201のインターナリゼーション後の標的細胞からの非流出(図20
インターナリゼーション後の標的細胞からの流出は、Fcを有するAdcで一般的に見られる。これにより、標的外の毒性(障害性)、有効性の低下、および薬剤耐性が生じる可能性がある。この現象は、FcRnを介したリサイクリングに起因するとされている(Junghans, R. P. et. al. 1996, Proc Natl Acad Sci U S A 93, 5512-5516; Ryman, J. T. et. al. 2017, CPT Pharmacometrics Syst Pharmacol 6, 576-588)。インターナリゼーションされたトラスツズマブの50%が、インターナリゼーションの5分以内に標的細胞から流出し、この数は、インターナリゼーションの30分以内に85%に増加したことが報告されている(Barok, M., Joensuu, et. al. 2014, Breast Cancer Res 16, 209-209)。
【0225】
JY201がインターナリゼーション後に標的細胞から流出するかどうかを調べるために、HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)を、製造元提供のプロトコルに従ってJY201にコンジュゲートさせた。3×10個のSK-BR3細胞を、平底96ウェルプレートに一晩播種し、細胞を接着させた。2日目に、細胞を洗浄し、0.25μg/mLのJY201とともに室温で18時間インキュベートした。完全培地で3回洗浄した後、細胞をさらに37℃でインキュベートした。細胞溶解物および上清を異なる時点で収集した。細胞溶解物および細胞上清中のJY201-HRPの含有量を、50μl/ウェルのTMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)溶液を加えることによって、試験した。50μl/ウェルの0.2M硫酸によって反応を終了させた後、マイクロプレートアナライザーにより、OD450を得た。0.25μg/mlのT-DM1-HRPを細胞とともに4時間インキュベートし、続いて、洗浄し、培地を交換し、さらに2時間および24時間インキュベートすることを行って、T-DM1について同様の実験を行った。
【0226】
図20Aにより、0時間と比較して、上清中のJY201は、さらに3時間および6時間インキュベートしても有意に増加しなかったことが示された。一方、細胞溶解物内のJY201は、3時間および6時間で減少しなかった(図20B)。さらに、0時間での細胞溶解物のOD450は、上清のOD450よりも少なくとも2倍高かった。JY201が内部に取り込まれ、取り込まれたJY201は上清に流出していないことがわかる。
【0227】
比較のために、上清中のT-DM1のレベルも測定したところ、2時間のインキュベーション後に有意に増加した(p<0.001)(図20C)。さらに、24時間のインキュベーション後のT-DM1のレベルは、2時間のインキュベーションよりも有意に高く、T-DM1の流出が続いていることを示した。それと一致するように、細胞溶解物中のT-DM1は、24時間で有意に減少した(p<0.001)(図20D)。T-DM1の流出メカニズムにより、臨床効果が低下し、薬物の毒性が増加する可能性がある。
【0228】
全体として、図20のデータは、JY201についてのリサイクリングまたは流出メカニズムがないという驚くべき結果を示しており、これは、おそらくJY201のFc成分の欠如によるものである。
【0229】
実施例19. JY201は巨核球に対して細胞毒性を示さない(図21
血小板数の低下を特徴とする血小板減少症は、ADCで治療される癌患者における主要な有害事象であり(Uppal, H. et al. 2015, Clin Cancer Res 21, 123-133; Donaghy, H. 2016, MAbs 8, 659-671; de Goeij, B. E. et. al. 2016, Curr Opin Immunol 40, 14-23)、これは、T-DM1の用量制限毒性の原因になる(Krop IE, et. al. J Clin Oncol, 30, 3234-41, 2012)。血小板減少症に関するJY201の細胞毒性を調べるため、DAMI(最終分化血小板の親細胞である巨核球の細胞株(Lev, P. R. et al. 2011,Platelets 22, 28-38))に対するJY102の結合性および細胞毒性を試験した。
【0230】
結合の実験のために、DAMI細胞を収集し、2%FBSを含む氷冷PBSで、約5×10細胞/mlの濃度に再懸濁した。次いで、細胞をJY201または対照と共にインキュベートし、実施例17に記載したのと同じ方法を用いて、フローサイトメトリー分析にかけた。実施例16に記載したのと同じ方法を用いて、DAMI細胞に対するインビトロ細胞毒性(傷害性)を評価した。
【0231】
図21Cに示すように、結果、PEG化BsADC JY201は、驚くべきことに、50μg/mlの高濃度でさえDAMI細胞に対して細胞毒性を誘発しなかったのに対し、T-DM1は、試験濃度で有意な薬物特異的細胞毒性を誘発したことを示した。予想外の結果は、図21Aおよび図21Bの結果と一致しており、FITC標識T-DM1は、DAMI細胞に結合するが、JY201は、おそらくFc領域が存在しないために、それに結合しなかった。
【0232】
要約すると、現在のデータは、JY201の細胞傷害性(毒性)が組織特異的であり、巨核球ではなく腫瘍細胞に対してのみ細胞傷害性を発揮することを示唆している。JY201の予想外の優れた特性は、ADC誘発性血小板減少症やその他の臨床で引き起こされるいくつかの主要な有害事象に対処する絶好の機会をもたらす。
【0233】
前述の実施例および好ましい実施形態の説明は、特許請求の範囲によって定義される本発明を限定するものではなく、説明するものとして解釈されるべきである。容易に理解されるように、特許請求の範囲に記載された本発明から逸脱することなく、上述の特徴の多数の変形および組み合わせを利用することができる。そのような変形は、本発明の範囲からの逸脱とは見なされず、そのような変形はすべて、特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18-1】
図18-2】
図19
図20
図21
【配列表】
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