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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】エレクトレット繊維シートの製造装置
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/05 20060101AFI20241107BHJP
   D06B 5/08 20060101ALI20241107BHJP
   B01D 39/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
D06M11/05
D06B5/08
B01D39/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023194288
(22)【出願日】2023-11-15
【審査請求日】2024-03-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501078915
【氏名又は名称】日本ノズル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】松村 大樹
(72)【発明者】
【氏名】宮川 大毅
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-017703(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0262134(US,A1)
【文献】特開2003-073971(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110299(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M11/05
D06B1/02
D06B5/08
D06B15/04
B01D39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維シートを搬送する搬送手段と、
水滴を発生する噴霧ノズルからなる水滴発生手段と、
前記搬送手段で搬送中の繊維シートの一方の面に対し、前記水滴発生手段で発生した水滴よりなる水を略均一に分散付着させる付着手段と、
前記繊維シートの他方の側の前記付着手段に対応する位置に設けられ、前記付着手段により前記繊維シートの一方の面に略均一に分散付着された水を吸引して該水を前記繊維シートに浸透し通過させる吸引手段とを備え、
前記噴霧ノズルが、発生させた水滴を前記繊維シートの前記一方の面に直接付着させる位置に設けられるとともに、
前記付着手段が、前記噴霧ノズルよりも前記繊維シートの搬送下流側に設けられ、前記繊維シートの前記一方の面に接触する接触体からなり、
該接触体により、前記一方の面に直接付着した水滴を該面上で押し広げ、略均一に分散付着させる
レクトレット繊維シートの製造装置。
【請求項2】
前記接触体が、前記繊維シートと同調して回転する回転ローラ、前記繊維シートと同期して移動する無端ベルト、または搬送方向上流側で一端支持され、下流側が前記繊維シートに摩擦接触する片持ち柔軟シートからなる、
請求項記載のエレクトレット繊維シートの製造装置。
【請求項3】
繊維シートを搬送する搬送手段と、
水滴を発生する噴霧ノズルからなる水滴発生手段と、
前記搬送手段で搬送中の繊維シートの一方の面に対し、前記水滴発生手段で発生した水滴よりなる水を略均一に分散付着させる付着手段と、
前記繊維シートの他方の側の前記付着手段に対応する位置に設けられ、前記付着手段により前記繊維シートの一方の面に略均一に分散付着された水を吸引して該水を前記繊維シートに浸透し通過させる吸引手段とを備え、
前記付着手段が、前記繊維シートの前記一方の面に接触し、且つ前記繊維シートと同調して回転する回転ローラからなり、
前記噴霧ノズルが、発生させた水滴を前記回転ローラの外周面に付着させる位置に設けられ、
該回転ローラにより、前記外周面に付着した水滴を前記繊維シートの前記一方の面上に接触転写させると同時に該面上で押し広げ、略均一に分散付着させる
レクトレット繊維シートの製造装置。
【請求項4】
繊維シートを搬送する搬送手段と、
水滴を発生する噴霧ノズルからなる水滴発生手段と、
前記搬送手段で搬送中の繊維シートの一方の面に対し、前記水滴発生手段で発生した水滴よりなる水を略均一に分散付着させる付着手段と、
前記繊維シートの他方の側の前記付着手段に対応する位置に設けられ、前記付着手段により前記繊維シートの一方の面に略均一に分散付着された水を吸引して該水を前記繊維シートに浸透し通過させる吸引手段とを備え、
前記付着手段が、前記繊維シートの前記一方の面に接触し、且つ前記繊維シートと同期して移動する無端ベルトからなり、
前記噴霧ノズルが、発生させた水滴を前記無端ベルトの外周面に付着させる位置に設けられ、
該無端ベルトにより、前記外周面に付着した水滴を前記繊維シートの前記一方の面上に接触転写させると同時に該面上で押し広げ、略均一に分散付着させる
レクトレット繊維シートの製造装置。
【請求項5】
繊維シートを搬送する搬送手段と、
水滴を発生する噴霧ノズルからなる水滴発生手段と、
前記搬送手段で搬送中の繊維シートの一方の面に対し、前記水滴発生手段で発生した水滴よりなる水を略均一に分散付着させる付着手段と、
前記繊維シートの他方の側の前記付着手段に対応する位置に設けられ、前記付着手段により前記繊維シートの一方の面に略均一に分散付着された水を吸引して該水を前記繊維シートに浸透し通過させる吸引手段とを備え、
前記噴霧ノズルが、発生させた水滴を前記繊維シートの前記一方の面に直接付着させる位置に設けられるとともに、
前記付着手段が、前記噴霧ノズルよりも前記繊維シートの搬送下流側に設けられ、前記繊維シートの前記一方の面にエアーを吹き付ける吹付け手段からなり、
該吹付け手段が吹き付けるエアーにより、前記一方の面に直接付着した水滴を該面上で押し広げ、略均一に分散付着させる
レクトレット繊維シートの製造装置。
【請求項6】
前記吹付け手段が、前記エアーとして前記繊維シートの幅方向に延びるフラットエアーを吹き付ける吹付けノズルからなる、
請求項記載のエレクトレット繊維シートの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトレット繊維シートの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高性能なフィルター濾材には、エレクトレット化させた繊維が使用されている。エレクトレット繊維シートを作る方法として、水を繊維シートに接触させてエレクトレット化する方法(以下、「ハイドロチャージ法」と称す。)がある。具体的には、たとえば水の噴流を十分な圧力で噴霧してエレクトレット化する方法や、ノズルで水を吸引することにより繊維シートに水を浸透させてエレクトレット化する方法、微小水滴を噴霧して吸引する方法などが提案されている(特許文献1~3参照)。
【0003】
しかしながら、繊維シートに強い圧力または吸引力で水を浸透させると、繊維が大きくダメージを受け、毛羽立ち等が生じてしまうという問題がある。また、微小水滴を噴霧して吸引するものは、噴霧量を多くしても繊維内部に水を十分に浸透し通過させることができず、十分なエレクとレット化が難しいという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表平9-501604号公報
【文献】特開2003-73971号公報
【文献】特開2018-84001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、繊維シートの繊維に大きなダメージを与えることなく、微小水滴を用いても十分なエレクとレット化が可能なエレクトレット繊維シートの製造装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、かかる現況に鑑み、鋭意検討した結果、図8に示すように、噴霧された水滴が繊維シート9の表面で凝集し(凝集水滴8)、吸引しても周囲の空気を吸うだけで繊維内部に入っていかないこと、また、このような凝集により、凝集水滴8の乗っている部分は、その他の部分に比べて吸引圧損が大きくなり、吸引されるのは凝集水滴8が存在しない部分のみとなって、凝集水滴8の下方の部分には水滴が通過せず、繊維シート9全体として水滴の分布が不均一となって十分なエレクとレット化ができなくなる(集塵効果が上がらない)ことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
【0008】
(1)繊維シートを搬送する搬送手段と、水滴を発生する噴霧ノズルからなる水滴発生手段と、前記搬送手段で搬送中の繊維シートの一方の面に対し、前記水滴発生手段で発生した水滴よりなる水を略均一に分散付着させる付着手段と、前記繊維シートの他方の側の前記付着手段に対応する位置に設けられ、前記付着手段により前記繊維シートの一方の面に略均一に分散付着された水を吸引して該水を前記繊維シートに浸透し通過させる吸引手段と、を備えるエレクトレット繊維シートの製造装置。
【0009】
(2) 前記噴霧ノズルが、発生させた水滴を前記繊維シートの前記一方の面に直接付着させる位置に設けられるとともに、前記付着手段が、前記噴霧ノズルよりも前記繊維シートの搬送下流側に設けられ、前記繊維シートの前記一方の面に接触する接触体からなり、該接触体により、前記一方の面に直接付着した水滴を該面上で押し広げ、略均一に分散付着させる、(1)記載のエレクトレット繊維シートの製造装置。
【0010】
(3) 前記接触体が、前記繊維シートと同調して回転する回転ローラ、前記繊維シートと同期して移動する無端ベルト、または搬送方向上流側で一端支持され、下流側が前記繊維シートに摩擦接触する片持ち柔軟シートからなる、(2)記載のエレクトレット繊維シートの製造装置。
【0011】
(4) 前記付着手段が、前記繊維シートの前記一方の面に接触し、且つ前記繊維シートと同調して回転する回転ローラからなり、前記噴霧ノズルが、発生させた水滴を前記回転ローラの外周面に付着させる位置に設けられ、該回転ローラにより、前記外周面に付着した水滴を前記繊維シートの前記一方の面上に接触転写させると同時に該面上で押し広げ、略均一に分散付着させる、(1)記載のエレクトレット繊維シートの製造装置。
【0012】
(5) 前記付着手段が、前記繊維シートの前記一方の面に接触し、且つ前記繊維シートと同期して移動する無端ベルトからなり、前記噴霧ノズルが、発生させた水滴を前記無端ベルトの外周面に付着させる位置に設けられ、該無端ベルトにより、前記外周面に付着した水滴を前記繊維シートの前記一方の面上に接触転写させると同時に該面上で押し広げ、略均一に分散付着させる、(1)記載のエレクトレット繊維シートの製造装置。
【0013】
(6) 前記噴霧ノズルが、発生させた水滴を前記繊維シートの前記一方の面に直接付着させる位置に設けられるとともに、前記付着手段が、前記噴霧ノズルよりも前記繊維シートの搬送下流側に設けられ、前記繊維シートの前記一方の面にエアーを吹き付ける吹付け手段からなり、該吹付け手段が吹き付けるエアーにより、前記一方の面に直接付着した水滴を該面上で押し広げ、略均一に分散付着させる、(1)記載のエレクトレット繊維シートの製造装置。
【0014】
(7) 前記吹付け手段が、前記エアーとして前記繊維シートの幅方向に延びるフラットエアーを吹き付ける吹付けノズルからなる、(7)記載のエレクトレット繊維シートの製造装置。
【発明の効果】
【0015】
以上にしてなる本発明にかかるエレクトレット繊維シートの製造装置によれば、付着手段により水滴を凝集水滴となることなく水滴または水の膜として繊維に略均一に付着させた状態で吸引することで、繊維内部に水を通過させることができ、繊維全体として通過する水の分布も均一となり、繊維に大きなダメージを与えることなく十分にエレクとレット化されたエレクトレット繊維シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明にかかるエレクトレット繊維シート製造装置の実施形態の全体構成を示す概略説明図。
図2】同じく製造装置の第1の実施形態を示す説明図。
図3】同じく第1の実施形態の他の例を示す説明図。
図4】同じく第1の実施形態のさらに他の例を示す説明図。
図5】第2の実施形態を示す説明図。
図6】第3の実施形態を示す説明図。
図7】第4の実施形態を示す説明図。
図8】凝集水滴を吸引する場合を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
本発明にかかるエレクトレット繊維シートの製造装置1は、図1に示すように、繊維シート9を搬送する搬送手段2と、水滴を発生する噴霧ノズル31からなる水滴発生手段3と、搬送手段2で搬送中の繊維シート9の一方の面9aに対し、水滴発生手段3で発生した水滴よりなる水を略均一に分散付着させる付着手段4と、繊維シート9の他方の側の付着手段4に対応する位置に設けられ、付着手段4により繊維シート9の一方の面9aに略均一に分散付着された水を吸引して該水を繊維シート9に浸透し通過させる吸引手段5とを備えている。
【0019】
繊維シート9としては、不織布や織物、編物などの公知の繊維シートを広く用いることができ、フィルターとして多用されるメルトブローン不織布が好適である。また、搬送手段2は、メッシュ状のコンベアベルトが好ましい。メッシュベルトは布や網など通気性のあるものであればとくに限定されない。
【0020】
また、通気性があれば、コンベアベルト以外の形態であってもよく、ローラコンベア等でもよい。吸引手段による吸引を可能とするものであればとくに限定されない。
【0021】
たとえば、繊維シート9としてメルトブローン不織布とする場合は、メルトブローン不織布製造装置のコンベアからなるコレクタを搬送手段としてもよいし、コレクタと巻き取り機との間の支持無しの空中搬送(たとえば途中に支持ローラを数個設けたもの等)であってもよい。このように繊維シートの製造ライン上に設けることで、効率よく連続生産できる。
【0022】
水滴発生手段3は、図1に示すように貯水槽に溜めた純水をポンプで噴霧ノズル31に送り出し、該噴霧ノズル31から霧状の水滴が噴霧される。噴霧ノズル31は、スプレーノズルや噴霧ノズル、超音波ネプライザー等の微小水滴を噴霧するものが好ましい。
【0023】
噴霧ノズル31は、繊維シート9の全幅にわたって互いに間隔をあけて複数設けられ、幅方向に均等に水滴を噴霧できるように構成されている。噴霧ノズル31から供給される水滴は繊維にダメージを与えず、均等に噴霧される。霧状の水滴であるので水は少量でよく、エネルギーロスが少なく、乾燥も容易となる。
【0024】
吸引手段5は、繊維シート9の他方の面9b(裏面)の側から、繊維シート9の一方の面9a上に上記分散付着された水を吸引する吸引ボックス50から構成されており、吸引ボックス50は真空ポンプ51で減圧され、繊維シート9の全幅にわたって延びる吸引スリット50dから繊維シート9上の上記水を吸引し、繊維シート9に浸透・通過させる。繊維シート9は、この水の付着、浸透および通過の過程で帯電する。
【0025】
付着手段4は、後述する各種接触体6やエアーの吹付け手段41などで構成され、水滴発生手段3で発生した水滴よりなる水を、略均一な厚みの水の膜として、又は大きく凝集してしまうことなく細かい水滴のまま略均一に分布した状態に、繊維シート9上に付着させるものであり、この状態で上記吸引手段5で吸引することにより、水が不織布全体に均一に分散・浸透し通過することとなる。付着手段4は、種々の実施形態が含まれる。まず、第1の実施形態について説明する。
【0026】
第1の実施形態は、図2図4に示すように、噴霧ノズル31が、発生させた水滴を繊維シート9の前記一方の面9aに直接付着させる位置に設けられる。そして、付着手段4は、噴霧ノズル31よりも繊維シート9の搬送下流側に設けられ、繊維シートの前記一方の面9aに接触する接触体6から構成されている。
【0027】
接触体6は、一方の面9aに直接付着した水滴を、凝集水滴となったものも含めて該面9a上で押し広げることにより、略均一に分散させた状態に付着させるものであり、この接触体6が接触している繊維シート面9aの位置に対応する裏面の位置に、吸引手段5(吸引スリット50d)が位置づけられ、上記押し広げている状態で裏から吸引するように構成されている。
【0028】
接触体6における繊維シート9の一方の面9aに接触する接触面6aは、親水性の層で構成されていることが好ましい。これにより一方の面9aに付着している水滴をより確実に捉え、これを上記略均一に分散した状態に押し広げることができる。
【0029】
接触体6は、より具体的には、種々の例が含まれるが、代表的なものとしては、図2に示すように繊維シート9と同調して回転する回転ローラ61としたものや、図3に示すように繊維シート9と同期して移動する無端ベルト62としたもの、図4に示すように、搬送方向上流側で一端支持され、下流側が繊維シート9に摩擦接触する片持ち柔軟シート63としたものが挙げられる。
【0030】
図2に示すような回転ローラ61で構成したものは、繊維シート9の全幅にわたって延びる回転ローラ61を繊維シート9の一方の面9aに接触するように設置したものである。繊維シート9との接触は幅方向に沿った線状の接触となる。この接触位置に対応する裏側(他方の面9b)の位置に吸引手段5の吸引スリット50dが位置づけられる。モータにより搬送手段2のメッシュベルトと同期して駆動されるものでもよいし、駆動せずフリーで回転自在に支持されたローラとし、繊維シート9との接触の摩擦力により同調して回転するように構成してもよい。
【0031】
駆動するものは繊維シート9との摩擦が少ない為、繊維シート9がダメージを受けやすいものであれば駆動するローラを用いる方が好ましい。ローラ表面は、多孔体であることが望ましく、材質は上記のとおり親水性であることがさらに良い。繊維シート9に押し付ける必要はなく、繊維シート上の水滴を押すことができればよいので、繊維シート9の厚みに応じた適宜な上下位置に回転軸が支持される。
【0032】
また、図3に示すような無端ベルト62で構成したものは、繊維シート9の幅と同等又はそれ以上の幅を有する無端ベルト62を、繊維シート9に対面する側のベルト外面を繊維シート9に面接触するように設置したものである。繊維シート9との接触は面接触となり、この接触領域に対応する裏側(他方の面9b)の適宜な位置に吸引手段5の吸引スリット50dが位置づけられる。無端ベルト62を支持する回転ローラをモータ駆動することにより、無端ベルト62を搬送手段2のメッシュベルトと同期して同じ方向に同じ速度で移動させるものでもよいし、駆動せずフリーのローラ間に支持させ、繊維シート9との接触の摩擦力により同調して移動するように構成してもよい。
【0033】
上記回転ローラ61の場合と同様、駆動するものは繊維シート9との摩擦が少ない為、繊維シート9がダメージを受けやすいものであれば駆動する無端ベルトを用いる方が好ましい。ベルト表面は、網、織布、不織布あるいは多孔体であることが望ましく、材質は上記のとおり親水性であることがさらに良い。
【0034】
また、図4に示すような片持ち柔軟シート63で構成したものは、繊維シート9の幅と同等又はそれ以上の幅を有する柔軟シート63を、搬送方向上流側の位置(且つ噴霧ノズル31よりも下流側の位置)で一端支持し、下流側を繊維シート9に摩擦しながら面接触するように設けたものである。柔軟シート63は、網、織布、不織布あるいは多孔体であることが望ましく、材質は上記のとおり親水性であることがさらに良い。
【0035】
繊維シート9上の水滴は、柔軟シート63の自重によって押し広げられ、略均一に分散付着する。このような柔軟シート63は、噴霧される水滴の量にもよるが、繊維シート9と面接触している下流側の部分に常に水の膜ができている状態となる。
【0036】
次に、第2の実施形態は、図5に示すように、付着手段4が、繊維シート9の一方の面9aに接触し、且つ繊維シート9と同調して回転する回転ローラ61からなり、噴霧ノズル31が、発生させた水滴を回転ローラ61の外周面61aに付着させる位置に設けられ、該回転ローラ61により、外周面61aに付着した水滴を繊維シート9の一方の面9a上に接触転写させると同時に該面上で押し広げ、略均一に分散付着させるものである。
【0037】
本例では、噴霧ノズル31から水滴が繊維シート9の一方の面9aに付着する前に、一旦、回転ローラ61の外周面61aに付着し、これを繊維シート9の前記面9aに転写し、押し広げ、分散付着させるものである。これによれば、一旦繊維シートの表面9aに水滴を付着させて凝集水滴となってから均一化させるものに比べて、繊維シートの種類にもよるが、より確実に分散付着させることが可能となる。
【0038】
回転ローラ61は、繊維シート9の全幅にわたって延び、繊維シート9の一方の面9aに接触するように設置される。繊維シート9との接触は幅方向に沿った線状の接触となる。この接触位置に対応する裏側(他方の面9b)の位置に吸引手段5の吸引スリット50dが位置づけられる。モータにより搬送手段2のメッシュベルトと同期して駆動されるものでもよいし、駆動せずフリーで回転自在に支持されたローラとし、繊維シート9との接触の摩擦力により同調して回転するように構成してもよい。ローラ表面は、多孔体であることが望ましく、材質は第1の実施形態と同様、親水性であることがさらに良い。
【0039】
次に、第3の実施形態は、図6に示すように、付着手段4が、繊維シート9の前記一方の面9aに接触し、且つ繊維シート9と同期して移動する無端ベルト62からなり、噴霧ノズル31が、発生させた水滴を無端ベルトの外周面62aに付着させる位置に設けられ、無端ベルト62により、外周面62aに付着した水滴を繊維シート9の前記一方の面9a上に接触転写させると同時に該面上で押し広げ、略均一に分散付着させるものである。
【0040】
本例も、上記第2の実施形態と同じように、一旦、水滴を無端ベルト62の外周面62aに付着させ、これを繊維シート9の前記面9aに転写し、押し広げ、分散付着させるものであり、一旦繊維シートの表面9aに水滴を付着させて凝集水滴となってから均一化させるものに比べて、繊維シートの種類にもよるが、より確実に分散付着させることが可能となる。
【0041】
繊維シート9との接触は面接触となり、この接触領域に対応する裏側(他方の面9b)の適宜な位置に吸引手段5の吸引スリット50dが位置づけられる。第1の実施形態と同様、無端ベルト62を支持する回転ローラをモータ駆動することにより、無端ベルト62を搬送手段2のメッシュベルトと同期して同じ方向に同じ速度で移動させるものでもよいし、駆動せずフリーのローラ間に支持させ、繊維シート9との接触の摩擦力により同調して移動するように構成してもよい。ベルト表面は、網、織布、不織布あるいは多孔体であることが望ましく、材質は上記のとおり親水性であることがさらに良い。
【0042】
次に、第4の実施形態は、図7に示すように、噴霧ノズル31が、発生させた水滴を繊維シート9の前記一方の面9aに直接付着させる位置に設けられるとともに、付着手段4が、噴霧ノズル31よりも繊維シート9の搬送下流側に設けられ、繊維シート9の前記一方の面9aにエアーを吹き付ける吹付け手段41からなり、該吹付け手段41が吹き付けるエアーにより、一方の面9aに直接付着した水滴を該面上で押し広げ、略均一に分散付着させるものである。このエアーが吹き付けられる繊維シートの表面9aの領域に対応する裏側(他方の面9b)の適宜な位置に吸引手段5の吸引スリット50dが位置づけられる。
【0043】
吹付け手段41は、エアーとして繊維シート9の幅方向に延びるフラットエアーを吹き付ける吹付けノズルを備えている。フラットエアーは、均一に吹き付けられるカーテン状であることが好ましい。本例によれば、エアのカーテンを作り、繊維シート9とともに送られてきた水滴をエアで押し広げて分散付着され、且つ上記吸引手段5の吸引力とともに当該水を繊維内に押し込み、効率よく通過させることができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0045】
1 エレクトレット繊維シートの製造装置
2 搬送手段
3 水滴発生手段
4 付着手段
5 吸引手段
6 接触体
6a 接触面
8 凝集水滴
9 繊維シート
9a、9b 面
31 噴霧ノズル
41 吹付け手段
42c 隙間
50 吸引ボックス
50d 吸引スリット
51 真空ポンプ
61 回転ローラ
61a 外周面
62 無端ベルト
62a 外周面
63 片持ち柔軟シート
【要約】
【課題】繊維に大きなダメージを与えることなく、十分なエレクとレット化が可能なエレクトレット繊維シートの製造装置を提供せんとする。
【解決手段】繊維シート9を搬送する搬送手段2と、水滴を発生する噴霧ノズル31からなる水滴発生手段3と、搬送手段2で搬送中の繊維シート9の一方の面9aに対し、水滴発生手段3で発生した水滴よりなる水を略均一に分散付着させる付着手段4と、繊維シート9の他方の側の付着手段4に対応する位置に設けられ、付着手段4により繊維シート9の一方の面9aに略均一に分散付着された水を吸引して該水を繊維シート9に浸透し通過させる吸引手段5とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8