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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】ドリップバッグ
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/06 20060101AFI20241107BHJP
   A47J 31/02 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
A47J31/06 160
A47J31/02
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023536294
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(86)【国際出願番号】 JP2021027334
(87)【国際公開番号】W WO2023002605
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】396015057
【氏名又は名称】大紀商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 充範
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/092122(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/092136(WO,A1)
【文献】特開2012-125406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/06
A47J 31/02
B65D 77/00
B65D 85/804
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通水濾過性シートで形成された袋本体と、袋本体の対向する2面の外表面に設けられた薄板状部材とを有するドリップバッグであって、
袋本体の対向する2面の各外表面において、薄板状部材は、袋本体の上辺に沿って袋本体に固定された上部貼着部、上部貼着部よりも袋本体の底辺側で袋本体に固定された中央部、中央部と連続し、袋本体から引き起こし可能に設けられた掛止部を有し、
上部貼着部が、該上部貼着部の幅の中心線と斜めに交叉する斜め折れ線を有するドリップバッグ。
【請求項2】
斜め折れ線が、上部貼着部の上辺及び下辺に達していない請求項1記載のドリップバッグ。
【請求項3】
斜め折れ線が切り込み線である請求項2記載のドリップバッグ。
【請求項4】
斜め折れ線の左右の一方の側に、斜め折れ線の上端部に沿った、上部貼着部の斜め上辺部又は上部貼着部の上辺から伸びた斜め切り込み部が設けられ、斜め折れ線の左右の他方の側に、斜め折れ線の下端部に沿った、上部貼着部の斜め下辺部又は上部貼着部の下辺から伸びた斜め切り込み部が設けられている請求項1~3のいずれかに記載のドリップバッグ。
【請求項5】
袋本体の対向する2面の各外表面において、掛止部は、中央部に連続するアーム部と、アーム部に連続する引っ掛け部を有し、
アーム部は、中央部から袋本体上辺側に伸び、中央部側の端部を固定端として袋本体から引き起こし可能であり、
引っ掛け部は、アーム部の上部と連続し、アーム部との連続部分から袋本体の底辺側へ伸びている請求項1~4のいずれかに記載のドリップバッグ。
【請求項6】
袋本体の対向する2面の各外表面において、アーム部が、上部貼着部の幅の中心線を挟んで互いに間隔をあけて並列している部分を有し、並列している部分の上部同士が連結して連結部となり、その連結部が引っ掛け部と連続している請求項5記載のドリップバッグ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のドリップバッグの袋本体に抽出材料が充填され、袋本体が封じられているドリップバッグ。
【請求項8】
袋本体の上辺に易開裂線が形成されており、袋本体の対向する2面の外表面の上部貼着部から延設された一対の開封用突出部が、袋本体の上辺から互い違いに突出している請求項7記載の開封用突出部付きドリップバッグ。
【請求項9】
請求項8記載の開封用突出付きドリップバッグであって、
薄板状部材の幅方向の中央部において、一対の開封用突出部の側辺と袋本体の上辺との交叉部で開封用突出部と袋本体が貼着しているドリップバッグ。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の開封用突出部付きドリップバッグであって、
上部貼着部の幅方向の中央部において、開封用突出部が延設されていない部分の上部貼着部の上辺を開封用突出部の基部へ伸ばした切り込み部が設けられているドリップバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップ等の容器の上部に掛止することにより、容易にドリップ式でコーヒー、紅茶、緑茶、漢方薬等の抽出液を得られるようにするドリップバッグに関する。
【0002】
従来、ドリップ式のコーヒーを手軽に楽しむことを可能とするドリップバッグとして、通水濾過性シートからなり、上端部が開口する袋本体の対向する2面の外表面に薄板状材料からなる掛止部が設けられており、掛止部を互いに反対方向に引っ張ることでカップの開口部壁に掛けられるようにしたものが広く普及している(特許文献1)。このようなドリップバッグにおいて、袋本体の上辺に沿って設けられた、薄板状材料からなる帯状の上部貼着部に一対の上下方向の縦折れ線が形成されていると、袋本体の開口形状は矩形となる。
【0003】
これに対し、袋本体の開口形状を円形に近づけて開口面積を広くするために、袋本体の開口部に沿って設けた薄板状材料からなる上部貼着部に一対の斜め折れ線を形成しておくことが提案されている(特許文献2)。
【0004】
一方、抽出材料が袋本体に封じられ、袋本体の対向する2面の外表面に薄板状材料からなる掛止部材が設けられているドリップバッグにおいて、抽出に際して袋本体の上端縁を容易に開口できるように、薄板状材料で形成した一対の開封用突出部を袋本体の上端縁から互い違いに突出させることが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4079041号公報
【文献】特許第5858172号公報
【文献】特許第5817881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載のドリップバッグによれば、ドリップバッグの一対の掛止部を反対方向に引っ張っただけで、袋本体の開口部に沿って設けられている薄板状材料からなる上部貼着部の一対の斜め折れ線が折れ曲がり、一対の掛止部をカップに掛けることで袋本体が自ずと略8角形の開口形状に開口する。そのため、開口形状が矩形の場合に比して開口面積を広げることができる。この場合、一対の斜め折れ線を折れ曲がり易く形成することが好ましく、そのため斜め折れ線をミシン目で形成する場合には、ミシン目のカットの長さに対してタイの長さをできるだけ短くし、タイの個数をできるだけ少なくし、一対の斜め折れ線の上端と上部貼着部の上辺とをできる限り近接させることが好ましい。
【0007】
しかしながら、一対の斜め折れ線の上端と上部貼着部の上辺とをできる限り近接させようとすると、ミシン目の形成位置のずれ等により上部貼着部の上辺が斜め折れ線の上端で破断することが懸念される。上部貼着部の上辺が破断した状態でドリップバッグをカップに掛けると、その破断した部分に袋本体を反対方向に引っ張る力が集中し、袋本体の開口形状が歪んでしまい、ドリップバッグへ注湯しにくくなる。
【0008】
そこで本発明は、ドリップバッグの袋本体の対向する2面の各外表面に薄板状部材が設けられ、該薄板状部材が掛止部と袋本体の上辺に沿った上部貼着部を有するドリップバッグにおいて、掛止部を互いに反対方向に引っ張ってドリップバッグをカップに掛けた場合に、上部貼着部の破断の虞をなくし、袋本体の開口面積を安定して拡大できるようにし、好ましくはこのようなドリップバッグであって抽出材料が封じられているものにおいて袋本体を容易に開口できるようにすること、より好ましくは、特許文献3に記載の開封用突出部を設けた場合に比してさらに容易に袋本体を開口できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ドリップバッグの袋本体の対向する2面の各外表面(以下、袋本体の表裏ともいう)に薄板状部材が設けられ、該薄板状部材が袋本体の上辺に沿った上部貼着部と袋本体から引き起こし可能な掛止部とを有するドリップバッグにおいて、上部貼着部に、該上部貼着部の幅の中心線と斜めに交叉する斜め折れ線を設けておくと、(i)袋本体の表裏の掛止部を互いに反対方向に引っ張った場合に、上部貼着部は斜め折れ線で捩れること、(ii)この捩れにより上部貼着部は剛性が高まり、丸みを持って折れ曲がることで撓んだ形状となること、(iii)しかもその撓み量は、袋本体の表裏の掛止部を互いに反対方向に引っ張る力の大きさが変わっても変わりにくく略一定となること、(iv)このため、例えば、ドリップバッグを開口径の小さいカップに掛けた場合に、袋本体の開口面の形状が、斜め折れ線に対応する角が丸い正6角形となるように斜め折れ線の大きさ等を調整すると、このドリップバッグを開口径が大きいカップにかけた場合にも、袋本体に対して掛止部は大きく引き起こされるが、袋本体の開口面の形状は角の丸い正6角形に維持されることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、通水濾過性シートで形成された袋本体と、袋本体の対向する2面の外表面に設けられた薄板状部材とを有するドリップバッグであって、
袋本体の対向する2面の各外表面において、薄板状部材は、袋本体の上辺に沿って袋本体に固定された上部貼着部、上部貼着部よりも袋本体の底辺側で袋本体に固定された中央部、中央部と連続し、袋本体から引き起こし可能に設けられた掛止部を有し、
上部貼着部が、該上部貼着部の幅の中心線と斜めに交叉する斜め折れ線を有するドリップバッグを提供する。
【0011】
また、本発明は上述のドリップバッグの袋本体に抽出材料が充填され、袋本体が封じられている態様を提供する。
【0012】
特に、上述の袋本体に抽出材料が充填され、袋本体が封じられているドリップバッグであって、袋本体の上辺に易開裂線が形成されており、袋本体の対向する2面の外表面の上部貼着部から延設された一対の開封用突出部が、袋本体の上辺から互い違いに突出している開封用突出部付きドリップバッグを提供する。
【0013】
加えて、上述の開封用突出部付きドリップバッグであって、薄板状部材の幅方向の中央部において、一対の開封用突出部の側辺と袋本体の上辺との交叉部で開封用突出部と袋本体が貼着している態様を提供する。
【0014】
また、上述の開封用突出部付きドリップバッグであって、上部貼着部の幅方向の中央部において、開封用突出部が延設されていない部分の上部貼着部の上辺を開封用突出部の基部へ伸ばした切り込み部が設けられている態様を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、袋本体の表裏の薄板状部材が袋本体の上辺に沿って設けられた上部貼着部を有し、上部貼着部は、該上部貼着部の幅の中心線と斜めに交叉する斜め折れ線を有するので、袋本体の表裏の掛止部を互いに反対方向に引っ張ることにより袋本体を開口させると、上部貼着部の中央部が斜め折れ線によって捩れ、捩れによって上部貼着部の剛性が高まるので上部貼着部は丸みを持って折れ曲がるように撓む。この撓み量は、掛止部を互いに反対方向に強く引っ張っても殆ど変わらず略一定となる。したがって、袋本体の表裏の掛止部を互いに反対方向に引っ張ることにより袋本体の表裏の上部貼着部の間に位置する袋本体の表裏の側部領域が直線状になり、そのときの袋本体の開口形状が正6角形になるように袋本体の側部領域の幅と上部貼着部の幅を調整し、斜め折れ線の袋本体幅方向の長さ、斜め折れ線の袋本体の幅の中心線に対する角度等により撓み量を調整しておくと、ドリップバッグをカップに掛けたときの袋本体の開口形状は、カップの開口径の大小によらず、上部貼着部の斜め折れ線に対応する角の丸い正6角形になる。よって、上部貼着部に縦折れ線を設けて開口形状を矩形にする場合よりも開口面積が拡大する。
【0016】
上述のように袋本体の開口形状において上部貼着部を丸く撓ませるために、斜め折れ線の上端を上部貼着部の上辺にぎりぎりまでは近接させないことが好ましい。これにより、斜め折れ線の上端で上部貼着部の上辺が破断する虞を低減させることができ、袋本体の開口面積を安定して広げることができる。
【0017】
また本発明において、上部貼着部の斜め折れ線の左右の一方の側に、斜め折れ線の上端部に沿った、上部貼着部の斜め上辺部又は上部貼着部の上辺から伸びた斜め切り込み部が設けられ、斜め折れ線の左右の他方の側に、斜め折れ線の下端部に沿った、上部貼着部の斜め下辺部又は上部貼着部の下辺から伸びた斜め切り込み部が設けられた態様では、袋本体を開口させた場合に斜め折れ線の周りの捩れが強くなり、この捩れにより上部貼着部はさらに折れ曲がり難くなるので、袋本体の表裏の掛止部が互いに反対方向に引っ張られたときの上部貼着部の曲率半径が大きくなり、袋本体の開口面の形状を円に近づけることができる。
【0018】
一方、袋本体に抽出材料が充填され、袋本体が封じられ、袋本体の上辺に易開裂線が形成され、袋本体の表裏の上部貼着部から延設された一対の開封用突出部が袋本体の上辺から互い違いに突出している開封用突出部付きの態様によれば、ドリップバッグを抽出に使用する際の袋本体の開封が容易となる。
【0019】
この場合に、一対の開封用突出部と袋本体の上辺との交叉部で開封用突出部と袋本体とが貼着していると、一対の開封用突出部を互いに反対方向に引っ張ることによる開封がより容易になる。
【0020】
また、上部貼着部の幅方向の中央部において、開封用突出部が延設されていない部分の上部貼着部の上辺を開封用突出部の基部へ伸ばした切り込み部が設けられていると、上部貼着部の袋本体上下方向の長さが、開封用突出部が設けられている部分で大きくなっているにもかかわらず、袋本体の開口形状においては、開封用突出部が設けられていない場合と同様に上部貼着部の中央部が丸く撓み、開口面の形状を角の丸い6角形にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A図1Aは、実施例のドリップバッグ1Aの平面図である。
図1B図1Bは、実施例のドリップバッグ1Aの領域Aの拡大図である。
図2図2は、実施例のドリップバッグ1Aの展開図である。
図3図3は、実施例のドリップバッグ1A’の変形態様の展開図である。
図4図4は、開口している実施例のドリップバッグ1Aをカップに掛けた状態の斜視図である。
図5A図5Aは、開口している実施例のドリップバッグ1Aをカップに掛けた状態の上面図である。
図5B図5Bは、開口している実施例のドリップバッグ1Aを、開口径の大きいカップに掛けた状態の上面図である。
図6図6は、実施例のドリップバッグ1Bの、袋本体の対向する2面の底辺を繋げた展開図である。
図7図7は、実施例のドリップバッグ1Bをカップに掛けた状態の上面図である。
図8A図8Aは、実施例のドリップバッグ1Cの平面図である。
図8B図8Bは、実施例のドリップバッグ1Cの領域Aの拡大図である。
図9図9は、開口している実施例のドリップバッグ1Cをカップに掛けた状態の斜視図である。
図10図10は、開口している実施例のドリップバッグ1Cをカップに掛けた状態の上面図である。
図11A図11Aは、実施例のドリップバッグ1Dの平面図である。
図11B図11Bは、実施例のドリップバッグ1Dの領域A1の拡大図である。
図12図12は、実施例のドリップバッグ1Dの側面図である。
図13A図13Aは、実施例のドリップバッグ1Dの展開図である。
図13B図13Bは、実施例のドリップバッグ1Dの展開図の領域A2の拡大図である。
図14図14は、開口している実施例のドリップバッグ1Dをカップに掛けた状態の斜視図である。
図15図15は、開口している実施例のドリップバッグ1Dをカップに掛けた状態の上面図である。
図16図16は、実施例のドリップバッグ1Dの領域A1を変形したドリップバッグ1Eの部分拡大平面図である。
図17図17は、実施例のドリップバッグ1Dの領域A1を変形したドリップバッグ1Fの部分拡大平面図である。
図18図18は、実施例のドリップバッグ1Dの領域A1を変形したドリップバッグ1Gの部分拡大平面図である。
図19図19は、実施例のドリップバッグ1Dの領域A1を変形したドリップバッグ1Hの部分拡大平面図である。
図20図20は、実施例のドリップバッグ1Dの領域A1を変形したドリップバッグ1Iの部分拡大平面図である。
図21図21は、実施例のドリップバッグ1Dの領域A1を変形したドリップバッグ1Jの部分拡大平面図である。
図22図22は、実施例のドリップバッグ1Kの平面図である。
図23図23は、実施例のドリップバッグ1Kをカップに掛けた状態の斜視図である。
図24図24は、実施例のドリップバッグ1Lの平面図である。
図25図25は、実施例のドリップバッグ1Lの掛止部を引き起こしている状態の斜視図である。
図26図26は、比較例のドリップバッグ1xの平面図である。
図27図27は、開口している比較例のドリップバッグ1xをカップに掛けた状態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ本発明を具体的に説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は同等の構成要素を表している。
【0023】
(ドリップバッグの全体構造)
図1Aは本発明の一実施例のドリップバッグ1Aの平面図である。同図において、斜めハッチングを付した部分は通水濾過性シート10と薄板状部材20との貼着領域を表している。なお、貼着領域は図示した態様に限られない。また、貼着領域は、薄板状部材20の不透明性により、通常は外観上視認することができない。
図1Bは、図1Aの領域Aの拡大図である。図2は、ドリップバッグ1Aの展開図であり、図4は、ドリップバッグ1Aを開口し、カップ100に掛けた状態の斜視図であり、図5Aはその上面図である。
【0024】
このドリップバッグ1Aは、通水濾過性シート10で形成された袋本体11と、袋本体11の対向する2面の外表面(即ち、袋本体11の表裏)に設けられた、薄板状材料で形成された薄板状部材20とを有する。
【0025】
ユーザーがドリップバッグ1Aを使用してコーヒー等の抽出材料を抽出する際に、袋本体11に抽出材料Mが入れられる(図5A)。このため、抽出に使用する前の袋本体11は上辺11aが開口し、両側辺11b及び底辺11cの3辺が閉じた平袋となっている(図1A)。
【0026】
一方、本発明においてはドリップバッグを、袋本体11内に抽出材料が充填され、袋本体11が封じられた抽出材料入りのドリップバッグとしてもよい。その場合には、抽出材料が封じられている袋本体11の上辺11aに沿って開封用ミシン目等の易開裂線(図示せず)を袋本体11に形成しておくなどにより袋本体11の上端を容易に開口できるようにする。
【0027】
本実施例のドリップバッグ1Aでは、図2に示す展開図において袋本体11の表裏の薄板状部材20が点対称に配置されている。なお、本発明においては、袋本体11の表裏の薄板状部材20が、図3に示すドリップバッグ1A’の展開図のように、線対称に配置されていてもよい。
【0028】
袋本体11の表裏の薄板状部材20は、それぞれ袋本体11の上辺11aに沿って袋本体11に固定された上部貼着部21、上部貼着部21よりも袋本体11の底辺11c側で袋本体11に固定された中央部22、中央部22と連続し、袋本体11から引き起こし可能に設けられた掛止部23を有し、掛止部23は、中央部22に連続するアーム部24と、アーム部24に連続する引っ掛け部25とを有する。
【0029】
上部貼着部21は袋本体11の幅方向の少なくとも中央部では帯状に形成され、袋本体11との貼着領域を有することにより袋本体11に固定されている。一方、上部貼着部21の左右両端部には、袋本体11の側辺11bに沿って下方へ伸びた補強部28が連続している。補強部28は本発明において必要に応じて設けられる。
【0030】
また、上部貼着部21を撓みやすくして袋本体11の開口面の形状に丸みをもたせるため、上部貼着部21の幅方向の中央部分において、上部貼着部21の下辺21bに隣接した位置には薄板状部材20と袋本体11との貼着領域を設けないことが好ましく、掛止部23を袋本体11から引き起こした状態で、上部貼着部21の幅方向の中央部分の下辺21bに隣接した位置には薄板状部材20が設けられていないことが好ましい(図4)。
【0031】
中央部22は上部貼着部21よりも袋本体11の底辺側で袋本体11に固定されているが、この固定のために中央部22に袋本体11との貼着領域を設けることは必ずしも必要ではない。中央部22の上側に連続する第1の中央貼着部26と中央部22の下側に連続する第2の中央貼着部27がそれぞれ袋本体11との貼着領域を有することにより中央部22が袋本体11に固定されていてもよい。
【0032】
アーム部24は、中央部22から袋本体上辺側に伸び、中央部22側の端部を固定端として袋本体11から引き起こし可能である。
【0033】
アーム部24の中央部22寄りの部分は二筋に分岐し、分岐したアーム部24a、24bが、上部貼着部21の幅の中心線Lcを挟んで互いに間隔をあけて並列し、並列している部分の上部同士が繋がってアーム部連結部24cとなり、アーム部連結部24cが引っ掛け部25に繋がっている。二筋のアーム部24a、24bの間の領域が、袋本体11と貼着した第1の中央貼着部26になり、アーム部24の左右両側に第2の中央貼着部27が形成されている。
【0034】
各アーム部24a、24bの固定端では、アーム部24a、24bの引き起こし可能部分の両側辺の下端同士を結んだ仮想線Lvが袋本体上下方向に対して傾斜している。これにより、袋本体11の表裏の掛止部23を互いに反対方向に引っ張ってドリップバッグ1Aをカップに掛けた場合に、その引張力によってアーム部24a、24bの付け根で薄板状部材20が折れ曲り、引張力が袋本体11の表裏の面を互いに反対方向に引っ張ることには作用しにくくなることを防止し、袋本体11が容易に開口するようにしている。
【0035】
また、各アーム部24a、24bの上部同士をアーム部連結部24cで繋げることにより、二筋に分岐したアーム部24a、24bを袋本体11から捩れなく引き起こすことができ、掛止部23をカップに掛けた状態が安定する。
【0036】
なお、袋本体11の表裏の掛止部23を互いに反対方向に引っ張る強さが、ドリップバッグ1Aをかけるカップの開口径に応じて変わっても、斜め折れ線L1による上部貼着部21の捩れにより上部貼着部21を略一定の撓み量で撓ませることができるという本発明の効果は、アーム部24を二筋に分岐させず、特許文献1に記載のように構成しても得ることができる。
【0037】
引っ掛け部25はアーム部24の上部と連続し、その連続部分からアーム部24の外側をアーム部24から離れて袋本体11の底辺側へ伸びることで左右一対形成され、引っ掛け部25とアーム部24の間の領域が、袋本体11と貼着した第2の中央貼着部27となっている。また、左右一対の引っ掛け部25は、それらの下端の連結部25aで連続している。
【0038】
このドリップバッグ1Aは、上部貼着部21が、該上部貼着部21の幅W2の中心線Lcと斜めに交叉する1本の斜め折れ線L1を有していることを特徴としている。
【0039】
斜め折れ線L1としては、切り込み、ミシン目、ハーフカット、筋押し等により形成することができる。中でも、上部貼着部21の中央部を丸く撓ませる効果を得やすくする点から、斜め折れ線L1は切り込み線とすることが好ましい。
なお、本実施例では、上部貼着部21の幅の中心線Lcは、袋本体11の幅の中心線Lc’と重なっている。
【0040】
袋本体11の表裏の掛止部23をそれぞれ引き起こし、それらを互いに反対方向に引っ張り、袋本体11の上辺11aで袋本体11を開口させると、図4に示すように、掛止部23をカップ100に掛けることができる。この場合、カップ100の開口径が小さくても袋本体11の表裏の掛止部23が互いに反対方向に引っ張られることにより、図5Aに示す上面視のように、上部貼着部21が斜め折れ線L1で捩れを起こして上部貼着部21が或る角度γ、撓み量δで丸みを持って撓む。この角度γや撓み量δは、後述するように、斜め折れ線L1が上部貼着部21の幅の中心線Lcとなす角度θ、斜め折れ線L1の袋本体11の幅方向の長さW1、上部貼着部21の幅W2、薄板状部材20の硬さや厚み等により定まり、例えば、角度γを120°とすることができる。ここで、袋本体11の表裏の上部貼着部21の間に位置する袋本体11の側部領域11sが図5Aに示したように直線状になっていると、袋本体11の開口面の形状は略正6角形となる。
【0041】
カップ100の開口径が大きいと袋本体11の表裏の掛止部23は互いに反対方向に強く引っ張られるが、上部貼着部21は斜め折れ線L1で捩れを起こしているので上部貼着部21の撓みによる角度γと撓み量δは変わりにくく、一方で、袋本体11に対する掛止部23の引き起こし角度(袋本体11から引き起こされた掛止部23のアーム部24と袋本体11とがなす角度)は掛止部23が互いに反対方向に強く引っ張られることで容易に大きくなる。このため、図5Bに示すようにドリップバッグ1Aを開口径の大きいカップ100’に掛けても、袋本体11の開口面における角度γや撓み量δは維持され、開口面の形状も略正6角形に維持される。
こうして、このドリップバッグ1Aによれば、カップ100の開口径の大小によらず、袋本体11の開口面の形状を略正6角形に維持することができる。
【0042】
なお、掛止部23を引っ張ることで袋本体11からアーム部24が引き起こされやすくするため、薄板状部材20と袋本体11との貼着領域B1、B2が斜め折れ線L1の真下に設けられていることが好ましい(図1A)。
【0043】
これに対し、特許文献1に記載のドリップバッグと同様に、図26に示すように、上部貼着部21に、袋本体11の幅の中心線Lc’に対して対称に袋本体上下方向の縦折れ線Lxを一対設けた比較例のドリップバッグ1xでは、それをカップ100に掛けることで袋本体11の表裏の上部貼着部21の間に位置する袋本体11の側部領域11sが直線状になる程に、袋本体11の表裏の掛止部23が互いに反対方向に引っ張られると、袋本体11の開口形状が図27に示すように矩形となる。図5Aに二点鎖線で示した矩形は、この比較例のドリップバッグ1xの開口形状である。また、上部貼着部21の中央部に斜め折れ線L1に代えて袋本体上下方向の縦折れ線を1本設けた比較例のドリップバッグ(図示せず)では、その縦折れ線で上部貼着部21の中央部が容易に角付けされるように折れ曲がるので、袋本体11の表裏の掛止部23が互いに反対方向に引っ張られると上部貼着部の中央部が鋭角に折れ曲がり、袋本体の開口形状は図5Aに破線で示したように扁平な6角形となる。なお、図5Aにおいて、二点鎖線で示した矩形の周長と、破線で示した扁平な6角形の周長は、実線で示したドリップバッグ1Aの角の丸い6角形の周長と等しくしてある。よって、これら比較例のドリップバッグに比して実施例のドリップバッグ1Aは開口面積が拡大し、注湯が容易になることがわかる。
【0044】
本発明のドリップバッグでは、斜め折れ線L1の両端部で上部貼着部21が破損することを防ぐため、図1Bに示したように斜め折れ線L1は上部貼着部21の上辺21aにも下辺21bにも達していないことが好ましい。特に斜め折れ線L1を切り込みで形成する場合には、斜め折れ線L1が上部貼着部21の上辺21aにも下辺21bにも達していないことが好ましい。
【0045】
また、袋本体11の開口面の形状を角が丸い6角形にするという斜め折れ線L1の効果を確実に得られるようにする点から、斜め折れ線L1が上部貼着部21の幅の中心線Lcとなす角度θは48~74°であることが好ましい。斜め折れ線L1の、袋本体11の幅方向の長さW1は、薄板状部材20の硬さや厚み等に応じて適宜設定することができるが、通常、薄板状部材20において袋本体11から引き起こされない部分の幅(本実施例では上部貼着部の幅W2)の15~30%が好ましい。
【0046】
さらに袋本体11の開口面の形状を正6角形に近づけるため、上部貼着部21の幅W2は、袋本体11の幅W4の54~80%とすることが好ましい。この場合に、袋本体11の左右一方の側部における上部貼着部21と袋本体の側辺11bとの距離W3aと、他方の側部における上部貼着部21と袋本体の側辺11bとの距離W3bとは互いに等しいことが好ましい。これにより袋本体11は、その底面と開口面とに捩れがない柱状形状となり、袋本体11の略正6角形の開口面の形状は、袋本体11の底辺11cに対して対称となる(図5A)。
【0047】
一方、図6に示した展開図のドリップバッグ1Bのように、上述のドリップバッグ1Aにおいて、袋本体11の左右両側部における上部貼着部21と袋本体の側辺11bとの距離W3a、W3bを異ならせてもよい。図7はこのドリップバッグ1Bをカップ100に掛止した場合の上面図である。この上面図のように、距離W3a、W3bの合計(W3a+W3b)を袋本体の11の幅W4の20~46%とすることにより袋本体11の開口面の形状を角の丸い略正6角形にすることができる。一方、距離W3aと距離W3bとを異ならせることにより、開口面の形状は袋本体11の底辺11cに対して対称ではなく、袋本体11は、その底部と開口面とが捩れたものとなる。
【0048】
(袋本体)
袋本体11は通水濾過性シートから形成される。
袋本体11を形成する通水濾過性シートとしては、例えば所定量のコーヒー粉、茶葉、漢方薬等の抽出材料を充填し、注湯した場合に抽出材料の浸出が可能であるものを種々使用することができる。一般に、浸出用シートとしては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ビニロン等の合成繊維、レーヨン等の半合成繊維、コウゾ、ミツマタ等の天然繊維の単独又は複合繊維からなる織布あるいは不織布、マニラ麻、木材パルプ、ポリプロピレン繊維等からなる混抄紙等、ティーバッグ原紙等の紙類が知られており、本発明においてもこれらを使用することができるが、ドリップバッグの使用後の廃棄性の点から、通水濾過性シート材料には生分解性繊維を含有させることが好ましい。生分解性繊維としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等をあげることができる。また、ドリップ時にコーヒー粉に適度な蒸らし効果も付与できるようにするため、これらの繊維材料から通水濾過性シートを製造するに際しては、繊維層の空隙率を調整することによりコーヒー粉に直接接することとなる層を「疎」とし、直接には接しない層を「密」とする疎密の複層構造とし、かつコーヒー粉に直接接することとなる層では疎水性繊維の含有率を高め、コーヒー粉に直接接しない層では疎水性繊維の含有率を下げることが好ましい(特許第3674486号)。
【0049】
袋本体11は、図1Aに示したドリップバッグ1Aでは平面視が矩形の3方シールの平袋であり、対向する2面を有している。なお、袋本体11内にコーヒー粉、茶葉、漢方薬等の抽出材料が充填され、袋本体内に封じられたドリップバッグにおいては、袋本体11の上辺11a又はその近傍に、該上辺11aに沿った開封誘導線を形成することができる。開封誘導線はミシン目、弱シール等により形成する。ミシン目としては、開封を容易にする点から、マイクロミシン目が好ましい。弱シールは、開口操作以外で不用意に剥離することはないが、袋本体11の表裏の掛止部23を互いに反対方向に引っ張ることにより容易にシールした部分が剥離するようにシール強度を調整したものである。なお、本発明において、袋本体11の底部や側部には必要に応じてマチを設けても良い。
【0050】
袋本体11の正味の平面寸法は、ドリップバッグを掛止するカップ又は容器の大きさに応じて適宜設定することができる。例えば、市販のコーヒーカップで使用できる大きさにすればよい。
【0051】
(薄板状部材)
薄板状部材20は、板紙、プラスチックシート等の薄板状材料の打ち抜き等により形成することがきる。薄板状材料も、ドリップバッグ1Aの使用後の廃棄性の点から、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート等の生分解性材料から形成したものが好ましい。
【0052】
(ドリップバッグの変形態様)
本発明のドリップバッグは種々の変形態様をとることができる。例えば、図8Aに示すドリップバッグ1Cは、上述のドリップバッグ1Aと同様に袋本体11と薄板状部材20で形成されているが、上部貼着部21の上辺21aは、図8Bに示すように、斜め折れ線L1の右側に、斜め折れ線L1と間隔をあけて斜め折れ線L1の上端部に沿って形成された斜め上辺部21pを有している。また、上部貼着部21の下辺21bは、斜め折れ線L1の左側に、斜め折れ線L1と間隔をあけて斜め折れ線L1の下端部に沿って形成された斜め下辺部21qを有している。このように上部貼着部21が斜め折れ線L1の左右の一方の側の上辺21aに斜め上辺部21pを有し、斜め折れ線L1の左右の他方の側の下辺21bに斜め下辺部21qを有することにより、上部貼着部21は斜め折れ線L1の周りで捩れがより強く起こり易くなり、かつ捩れた形状で安定するようになる。このため、図9に示したように袋本体11の表裏の掛止部23を互いに反対方向に引っ張ってドリップバッグ1Cをカップ100に掛けると、斜め折れ線L1の周りに強い捩れが発生し、その捩れによって、上部貼着部21に斜め折れ線L1のみが形成されている場合よりも上部貼着部21がより大きな曲率半径で湾曲し、その湾曲した状態で袋本体の開口状態が安定する。よって、ドリップバッグ1Cの開口面の形状は、図10に示すようにより丸みを帯び、カップ100の開口径に応じて袋本体11の側部領域11sが直線状になると丸みを帯びた正6角形となり円形に近づく。
【0053】
また、前述のドリップバッグ1Aのように上部貼着部21に斜め上辺部21pも斜め下辺部21qも形成されていない場合には、袋本体11の表裏の掛止部23を互いに反対方向に引っ張ったときに上部貼着部21にかかる力は、斜め折れ線L1の上端と上部貼着部の上辺21aに挟まれた狭領域と、斜め折れ線L1の下端と上部貼着部の下辺21bに挟まれた狭領域に集中しやすいが、図8Aに示したドリップバッグ1Cのように上部貼着部21の左右の一方の側に斜め上辺部21pがあり、他方の側に斜め下辺部21qがある場合には、袋本体11の表裏の掛止部23を互いに反対方向に引っ張ったときに上部貼着部21にかかる力はより広い領域に分散する。よって、袋本体11の表裏の掛止部23を互いに反対方向に強く引っ張っても上部貼着部21の斜め折れ線L1の上端近傍又は下端近傍が破断する虞を低減することができる。
【0054】
図11Aに示すドリップバッグ1Dは、上述のドリップバッグ1A~1Cと同様に袋本体11と薄板状部材20で形成されているが、袋本体11には抽出材料が封じられており、袋本体11の上辺11aは通水濾過性シートの折山となり、この折山にミシン目等により易開裂線11pが形成されている。また、袋本体11の表裏の上部貼着部21から延設された一対の開封用突出部30が袋本体11の上辺11aから互い違いに突出した開封用突出部付きドリップバッグとなっている。
【0055】
図11Bは、図11Aの部分拡大図であり、また図13Aは、この開封用突出部付きドリップバッグ1Dの袋本体11の上辺11aを形成する折山を平面に広げるようにしたドリップバッグ1Dの展開図であり、図13Bはその部分拡大図である。本発明のドリップバッグにおいて一対の開封用突出部を有する態様では、図13Aに示す展開図のように、袋本体11の表裏一対の薄板状部材20が点対称に配置されていることが好ましい。この展開図において表裏一対の薄板状部材20は隙間をあけずに当接し、一対の開封用突出部30は互い違いとなって重なっていない。よって、表裏一対の薄板状部材20を打ち抜きにより製造する場合の抜き滓を低減させることができる。
【0056】
また、上部貼着部21の幅の中心線Lc上に、一対の開封用突出部30の側辺30aと袋本体11の上辺11aとの交叉部Pがあり、交叉部Pで開封用突出部30と袋本体11とが貼着領域B3で貼着している。この貼着領域B3は、袋本体11の表裏の開封用突出部30に亘るように設けられているが、袋本体11の表裏の各面においては、上部貼着部21の幅の中心線Lcを跨がないように設けられている。(図13B)。
【0057】
この貼着領域B3で開封用突出部30と袋本体11とが貼着していることにより、袋本体11を開口させる場合に一対の開封用突出部30を互いに反対方向に引っ張ると、その力が効果的に交叉部Pに作用し、交叉部Pに位置する易開裂線から開裂が始まることで袋本体11を容易に開封し、開口させることができる。
【0058】
またドリップバッグ1Dには、上部貼着部21の幅方向中央部において、開封用突出部30が延設されていない部分の上部貼着部21の上辺21aを開封用突出部30の基部へ伸ばした切り込み部21tが設けられている。切り込み部21tは、斜め折れ線L1の上方を上部貼着部21の幅方向に、上部貼着部21の幅の中心線Lcを越えて伸びている。したがって、図12に示すように、袋本体11の開封時に袋本体11の表裏の開封用突出部30を互いに反対方向に引っ張ると、切り込み部21tが支点となってテコの原理により上述の交叉部Pに開封用突出部30を引っ張る力Fが作用し、一対の開封用突出部30が互いに反対方向に破線で示したように屈曲する。よって、切り込み部21tがあることによっても袋本体11を容易に開封することができる。
【0059】
次に、袋本体11の表裏の掛止部23を、互いに反対方向に引っ張り、図14に示すようにドリップバッグ1Dをカップ100にかけると、上部貼着部21の袋本体上下方向の長さが、開封用突出部30が設けられている部分で大きくなっているにもかかわらず、袋本体11の開口面の形状は開封用突出部が設けられていない前述のドリップバッグ1Cと略同様に角が丸い6角形となる。即ち、このドリップバッグ1Dでは、袋本体11の表裏の各面において上部貼着部21から延設された開封用突出部30が袋本体11の上辺11aから互い違いに突出しており、開封用突出部30の基部は上部貼着部21の幅の中心線Lcを跨いでいるが、切り込み部21tで上部貼着部21と開封用突出部30とが切り離され、また、貼着領域B3は上部貼着部21の幅の中心線Lcを跨がないように形成されているので、ドリップバッグ1Dをカップ100に掛けると、図14に示すように切り込み部21tの上に位置する開封用突出部30の端部30bが袋本体11の表面から浮きあがって該端部30bが袋本体の開口面の形状に影響しにくくなり、上部貼着部21から開封用突出部30が延設されていることにより袋本体の開口面の形状が歪むことを防止できる。
【0060】
また、斜め折れ線L1の左右一方の側には、斜め折れ線L1と間隔をあけて斜め折れ線L1の上端部に沿う斜め折り込み部21rが切り込み部21に連続して設けられ、斜め折れ線L1の左右の他方の側の上部貼着部21の下辺21bには、斜め折れ線L1と間隔をあけて斜め折れ線L1の下端部に沿う斜め下辺部21qが設けられている。したがって前述のドリップバッグ1Cと同様に、上部貼着部21は斜め折れ線L1の周りで強く捩れ、かつその捩れた状態が安定して維持されるので、上部貼着部21が大きな曲率半径で丸みを帯びて湾曲する。よって、図15に示すように、開口面の形状を角の丸い正6角形に近づけることができる。
【0061】
なお、本実施例では、切り込み部21tは、袋本体幅方向に直線的に形成されているが、これに限られない。例えば、切り込み部21tは袋本体11の幅方向に対して傾斜していてもよい。
【0062】
本発明においては、ドリップバッグ1Dにおいて、上述の領域A1(図11B)を図16に示すドリップバッグ1Eのように変形してもよい。このドリップバッグ1Eでは、斜め折れ線L1の上部右側の斜め切り込み部21rの上端が、切り込み線21tと繋がっている。
【0063】
上述の領域A1を図17に示すドリップバッグ1Fのように変形してもよい。このドリップバッグ1Fでは上部貼着部21が、斜め折れ線L1の上部左側に斜め切り込み部21rを有し、斜め折れ線L1の下部右側に斜め下辺部21qを有している。
【0064】
上述の領域A1を図18に示すドリップバッグ1Gのように変形してもよい。このドリップバッグ1Gでは上部貼着部21が、斜め折れ線L1の上部左側に斜め切り込み部21rを有し、斜め折れ線L1の下部右側に、斜め折れ線L1と間隔をあけて斜め折れ線L1の下端部に沿って形成された斜め切り込み部21sを有している。
【0065】
上述のドリップバッグ1D、1E、1F、及び1Gの中では、袋本体11の開口面の形状を、上部貼着部21の部分でより確実により丸く湾曲させやすい点からドリップバッグ1D、1E、1Fが好ましく、中でもドリップバッグ1Dが好ましい。
【0066】
上述のドリップバッグ1Dの領域A1を図19に示すドリップバッグ1Hのように変形してもよい。このドリップバッグ1Hでは、図11Bに示したドリップバッグ1Dに比して斜め折れ線L1の傾きが中心線Lcに対して反転し、斜め折れ線L1の上端の上方に開封用突出部30は形成されておらず、斜め折れ線L1の下端の上方に開封用突出部30が形成されている。また、斜め折れ線L1の上部左側に斜め切り込み部21rが設けられ、斜め折れ線L1の下部右側に斜め下辺部21qが設けられている。
【0067】
上述のドリップバッグ1Dの領域A1を図20に示すドリップバッグ1Iのように変形してもよい。このドリップバッグ1Iでは、図11Bに示したドリップバッグ1Dに比して斜め折れ線L1の傾きが中心線Lcに対して反転し、斜め折れ線L1の上部右側に斜め切り込み部21rが設けられ、斜め折れ線L1の下部左側に斜め下辺部21qが設けられている。
【0068】
上述の領域A1を図21に示すドリップバッグ1Jのように変形してもよい。このドリップバッグ1Jでは、図11Bに示したドリップバッグ1Dに比して斜め折れ線L1の傾きが中心線Lcに対して反転し、斜め折れ線L1の上部左側に斜め上辺部21pを設け、斜め折れ線L1の下部右側に斜め下辺部21qを設けている。なお、このドリップバッグ1Jにおいても、袋本体11の上辺11aを形成する折山を平面に広げた場合に、袋本体の表裏の薄板状部材は、開封用突出部30の側辺と袋本体11の上辺11aの交叉部Pに対して点対称に配置され、一対の開封用突出部30が互い違いとなって重ならず、かつ隙間をあけずに当接するように形成されている。
【0069】
ドリップバッグ1H、1I、及び1Jに示したように、斜め折れ線L1の上端の上方に開封用突出部30が形成されておらず、斜め折れ線L1の下端の上方に開封用突出部30が形成されているようにしてもよい。
【0070】
本発明のドリップバッグは、上部貼着部に該上部貼着部の幅の中心線と交叉する斜め折れ線L1が設けられている限り、掛止部の構成は種々の態様をとることができる。例えば、図22に示したドリップバッグ1Kは、袋本体11の表裏の薄板状部材20のそれぞれにおいて、上部貼着部21は、図11Aに示したドリップバッグ1Dと同様に、斜め折れ線L1、切り込み部21t、及び斜め切り込み部21rを有し、上部貼着部の下辺21bには斜め下辺部21qが形成されている。
【0071】
また、袋本体11の上辺11aにはミシン目等の易開裂線が形成されている。したがって、袋本体の表裏の開封用突出部30を互いに反対方向に引っ張ることにより袋本体の上辺11aが容易に開口する。
【0072】
一方、ドリップバッグ1Kの掛止部23は、ドリップバッグ1Dの掛止部23とは引き起こし方向が異なる。ドリップバッグ1Kの掛止部23としては、中央部22を固定端として袋本体11の側辺11b側から折れ線L2で蝶番の羽根のように引き起こされるものが、上部貼着部21の幅の中心線Lcを中心として左右対称に設けられている。このドリップバッグ1Kの掛止部23は、袋本体底辺側に開いた引っ掛け用凹部29を有し、凹部29の袋本体幅方向の外側が引っ掛け部25となっている。そこで、図23に示したように、引っ掛け部25をカップ100の開口部壁に掛けることができる。
【0073】
図24に示したドリップバッグ1Lは、袋本体の表裏の各薄板状部材20において、蝶番の羽根のように引き起こされる掛止部23が、上部貼着部21の幅の中心線Lcの左右の片側に1つのみ設けられている。図25に示したように、この掛止部23は中心線Lcを固定端として袋本体11から引き起こされる。
【0074】
このドリップバッグ1Lも、図11Aに示したドリップバッグ1Dと同様に袋本体の表裏の開封用突出部30を互いに反対方向に引っ張ることにより、袋本体の上辺11aが容易に開口する。
【0075】
本発明において、上述した変形部分は適宜組み合わせることができる。
本発明のドリップバッグは、特許文献2、3に記載されているドリップバッグと同様に、所定形状の薄板状部材が長尺の通水濾過性シートに所定間隔で貼付されているドリップバッグ製造用シートを用いて工業的に製造することができる。
【符号の説明】
【0076】
1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1I、1J、1K、1L ドリップバッグ
10 通水濾過性シート
11 袋本体
11a 上辺
11b 側辺
11c 底辺
11p 易開裂線
11s 側部領域
20 薄板状部材
21 上部貼着部
21a 上部貼着部の上辺
21b 上部貼着部の下辺
21p 斜め上辺部
21q 斜め下辺部
21r 斜め切り込み部
21s 斜め切り込み部
21t 切り込み部
22 中央部
23 掛止部
24 アーム部
24a、24b 分岐したアーム部
24c アーム部連結部
25 引っ掛け部
25a 連結部
26 第1の中央貼着部
27 第2の中央貼着部
28 補強部
29 引っ掛け用凹部
30 開封用突出部
30a 薄板状部材の幅方向中央部にある開封用突出部の側辺
30b 開封用突出部の端部
100 カップ
B1、B2、B3 貼着領域
Lc 上部貼着部の幅の中心線
Lc’ 袋本体の幅の中心線
L1 斜め折れ線
L2 折れ線
Lv 仮想線
Lx 縦折れ線
M 抽出材料
P 開封用突出部の側辺と袋本体の上辺との交叉部
θ 斜め折れ線L1が袋本体の幅の中心線Lcとなす角度
W1 斜め折れ線の、袋本体の幅方向の長さ
W2 上部貼着部の幅
W3a、W3b 上部貼着部と袋本体の側辺との距離
W4 袋本体の幅
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27