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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】風力発電機ユニットおよびその集合設備
(51)【国際特許分類】
   F03D 9/25 20160101AFI20241107BHJP
【FI】
F03D9/25
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023561720
(86)(22)【出願日】2023-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2023013651
(87)【国際公開番号】W WO2024024171
(87)【国際公開日】2024-02-01
【審査請求日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2022118287
(32)【優先日】2022-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517221310
【氏名又は名称】コアレスモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(72)【発明者】
【氏名】古畑 隆
(72)【発明者】
【氏名】津田 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】大桃 修一
(72)【発明者】
【氏名】白木 学
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/105610(WO,A1)
【文献】特開2000-197392(JP,A)
【文献】特開2007-336777(JP,A)
【文献】特開2005-120865(JP,A)
【文献】国際公開第2011/114877(WO,A1)
【文献】特表2010-525217(JP,A)
【文献】特開2011-114938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 9/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風を受けて回転するブレードと、該ブレードを支持する回転軸を備えた発電機、該発電機を内蔵する構造物とを備え、
前記発電機は、少なくとも、非回転となる円筒状コイル体と、該円筒状コイル体に間隙を持って円筒状に対向配置されたヨークと、該ヨークの前記円筒状コイル体との対向面に配置された永久磁石を備え、
前記円筒状コイル体は複数の相のそれぞれが複数のコイル単位体を有する2つのコイル群を直列に接続して成り、
前記コイル群は、前記コイル単位体間の接続パターンが風速に伴う前記ブレードの回転力の違いによって直列、並列、直列及び並列の組み合わせから選択される複数段に切替えるコイル間切替装置を備えるコイル群Aと、1本の線で、かつ前記コイル群Aよりも細線で構成されたコイル群Bであり、前記コイル間切替装置は、風速に応じて得られる電力変化によって求められる下記式のシステム効率が最大値となるように自動で切り替えることを特徴とする風力発電機ユニット。
【数1】
【請求項2】
請求項1において、前記コイル群Aと前記コイル群Bとを隣接させた状態で円筒状に巻回したことを特徴とする風力発電機ユニット。
【請求項3】
風路と、該風路上に位置する発電機と、前記風路上でかつ前記発電機の外周回転部に取り付けられるブレードと、前記発電機並びに前記ブレードを納める枠体とを備え、
前記風路は前記枠体の正面部及び背面部を貫通することによって、前記発電機及び前記ブレードは該正面部と背面部を結ぶ貫通路上に位置し、
前記発電機はシャフトが前記枠体に固定されていて、少なくとも、非回転となる円筒状コイル体と、該円筒状コイル体に間隙をもって円筒状に対向配置されたヨークと、該ヨークの前記円筒状コイル体との対向面に配置された永久磁石とを備え、
前記円筒状コイル体は複数の相のそれぞれが複数のコイル単位体を有する2つのコイル群を直列に接続して成り、
前記コイル群は、前記コイル単位体間の接続パターンが風速に伴う前記ブレードの回転力の違いによって直列、並列、直列及び並列の組み合わせから選択されて複数段に切替るコイル間切替装置を備えるコイル群Aと、1本の線で、かつ前記コイル群Aよりも細線で構成されたコイル群Bであり、前記コイル間切替装置は、風速に応じて得られる電力変化によって求められる下記式のシステム効率が最大値となるように自動で切り替えることを特徴とする風力発電機ユニット。
【数1】
【請求項4】
請求項3において、前記コイル群Aと前記コイル群Bとを隣接させた状態で円筒状に巻回したことを特徴とする風力発電機ユニット。
【請求項5】
請求項3において、前記枠体は6面共に長方形で、前記正面部と前記背面部との距離は前記正面部及び背面部の各辺よりも短くすることにより、外観薄型の箱体であることを特徴とする風力発電機ユニット。
【請求項6】
請求項5において、前記箱体は骨組みで形成されており、前記正面部と前記背面部の四隅に直角三角形の三角板材を設けてなり、
前記三角板材は、直角を成す頂点が前記正面部及び前記背面部の四隅に位置するように配置されていることを特徴とする風力発電機ユニット。
【請求項7】
請求項3において、前記ヨークは、前記円筒状コイル体の内側に配置されたインナーヨークと、前記円筒状コイル体の外側に配置されたアウターヨークとを有し、前記ブレードが固定される前記発電機の外周回転部(周面)は発電機のケーシングを形成しており、該ケーシングは前記アウターヨークと一体化若しくは兼用していることを特徴とする風力発電機ユニット。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の風力発電機ユニットを大気に晒される領域に複数台を設置し、各前記風力発電機ユニットには当該ユニットの稼働状況を通信する無線LANの送受信機を付設し、各風力発電機ユニットの発電出力の搬送先となる蓄電設備とを備えることを特徴とする風力発電機ユニットの集合設備。
【請求項9】
請求項8において、設置領域は建物の屋上、ベランダ、バルコニー、塀、橋上、道路の中央分離帯、道路脇、空き地、農地、公園、鉄道線路脇、海岸から選ばれることを特徴とする風力発電機ユニットの集合設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風力発電機ユニットおよびその集合設備に係り、特に微風から強風までに対応できる円筒状コイル使用タイプの風力発電機ユニットでコンパクトな為に複数台連接を可能にした風力発電機ユニットおよびその集合設備に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンエネルギー源として風力や太陽光等の自然エネルギー(再生可能エネルギー)利用が実用されているが、風力は曇天・雨天でも発電機能するものの風力・風向が一定ではない難が知られている。そこで風力発電効率を高める為、従来から風力発電機におけるコイル回路の切替が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-197392号公報
【文献】特開2011-114938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1はバッテリー対応でコイル回路の切替を行っている。但しコアレスタイプの発電機ではなく、出力電圧の取り出し易さが望まれる。尚、切替が多段対応ではない。
【0005】
特許文献2はコアレスタイプの風力発電機と太陽光発電機を併用しており、その風力発電機の発電効率を上げる為に複数のDC-DCコンバータの切替を行っている。風力発電は微風から強風まで多様なので2段切替だけでは対応しきれないのでコイル回路切替に複数のDC-DCコンバータを併用している。これによって微風から強風まで対応して更に発電効率を最大化せんとしている。このように特許文献2も2段切替が前程であるし、複数のDC-DCコンバータのような昇圧設備が必要になっている。尚、この先例に示されたコイルは偏平タイプである。
【0006】
以上のように、風力は微風から強風まで多様であり、風を受ける装置側では増速機やブレーキによる制御で対応はしているが2段切替では多様な風への対応に限りがあった。
【0007】
そこで本発明では微風から強風迄効率よく風を電力に変換でき、かつバッテリー性能を向上させる風力発電機ユニットおよびその集合設備を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為、本発明の風力発電機ユニットは次の何れかを特徴とする。
(1)風を受けて回転するブレードと、該ブレードを支持する回転軸を備えた発電機と、該発電機を内蔵する構造物とを備え、前記発電機は、少なくとも、非回転となる円筒状コイル体と、該円筒状コイル体に間隙を持って円筒状に対向配置されたインナーヨークと、該インナーヨークの前記円筒状コイル体対向面に配置された永久磁石を備え、前記円筒状コイル体は複数のコイル単位体からなる相を複数積層して成り、更に、該コイル単位体間の接続パターンが風速に伴う前記ブレードの回転力の違いによって直列、並列、直列及び並列の組み合わせから選択される複数段に切替えるコイル間切替装置を備えてなることを特徴とする風力発電機ユニットである。
【0009】
(2)上記(1)において、前記コイル間切替装置は、風速に応じて得られる電力変化によって求められる下記式のシステム効率が最大値となるように切り替えることを特徴とする風力発電機ユニットである。
【数1】
また、前記円筒状コイルはコアレス、スロットレスから選ばれることを特徴とする風力発電機ユニットである。
【0010】
システム効率が最大値となるように切り替わる、ということは、換言すれば、発電機のコイル体を複数のコイルで形成してコイル体間の接続を3種以上切り替えるスイッチを備え、そのコイル間接続の切り替えによって、システム効率の異なる複数の発電システムを1台の風力発電機が兼ね備える、ということである。つまり本発明は、コイル間接続の切り替えにより3段以上のシステムに切り換わる発電機において、風速に対するシステム効率が最大になるシステムに切り替えることを特徴とする。これは風速が上がる方向でも下がる方向にも適用される。
【0011】
このような切替手法は、本発明者が発電効率の良いシステムを採用するに際してシステムの切り替えをどうするかの実験から見出したものである。更に本発明者は、システムを切り替えるタイミングにつき、電圧を一定にするのではなく発電効率を最大化するならば、システム効率最大を細かく切り替えることによりDC-DCコンバータの特性に近付き最終的にDC-DCコンバータをコイル間接続切替基盤で置き換えることも可能になることを見出した。特に3段以上の決め細かい風力発電切り換えをする中で見えた気付きに基づく発明である。
【0012】
(3)風路と、該風路上に位置する発電機と、前記風路上でかつ前記発電機の外周回転部に取り付けられるブレードと、前記発電機並びに前記ブレードを納める枠体とを備え、前記風路は前記枠体の正面部及び背面部を貫通することによって、前記発電機及び前記ブレードは該正面部と背面部を結ぶ貫通路上に位置し、前記発電機はシャフトが前記枠体に固定されていて、少なくとも、非回転となる円筒状コイル体と、該円筒状コイル体に間隙をもって円筒状に対向配置されたインナーヨークと、該インナーヨークの前記円筒状コイル体対向面に配置された永久磁石とを備え、前記円筒状コイル体は複数のコイル単位体からなる相を複数積層して成り、更に、該コイル単位体間の接続パターンが風速に伴う前記ブレードの回転力の違いによって直列、並列、直列及び並列の組み合わせから選択されて複数段に切替るコイル間切替装置を備えてなることを特徴とする風力発電機ユニットである。尚、枠体は上記(1)で発電機を納める構造物に該当する(以下、本願において同じ)。
【0013】
(4)上記(3)において、前記コイル間切替装置は、風速に応じて得られる電力変化によって求められる下記式のシステム効率が最大値となるように切り替える風力発電機ユニットである。
【数1】
他は前記(2)の通りである。
【0014】
(5)上記(3)又は(4)において、前記枠体は6面共に長方形で、前記正面部と前記背面部との距離は前記正面部及び背面部の各辺よりも短くすることにより、外観薄型の箱体となる。
【0015】
(6)上記(3)又は(4)において、前記正面部と背面部の高さが1~2mであり、前記各周面の幅が前記正面部の高さの半分以下である。
【0016】
(7)上記(3)又は(4)において、前記インナーヨークとは別に前記円筒状コイル体の外側に位置するアウターヨークを備え、前記ブレードが固定される前記発電機の外周回転部(周面)は発電機のケーシングを形成しており、該ケーシングは前記アウターヨークと一体化若しくは兼用している。
【0017】
(8)上記(3)~(7)のいずれかにおいて、前記正面部と前記背面部の両方に集風部が形成され、前記ブレードは前記風路の両開口部の両方向に向けてシンメトリーに形成されていることが望ましい。
【0018】
(9)上記(3)~(8)のいずれかにおいて、前記正面部と前記背面部の両方に集風部が形成され、前記ブレードは前記風路の両開口部の両方向に向けてシンメトリーに形成されていることが望ましい。また、前記ブレードは風洞内に配置されていれば略直方体の外観になり、飛び出し部がなくてスマートである。
【0019】
(10)尚、円筒状コイル使用タイプはコアレス型発電機に代表されるがスロットレス型発電機も該当する。どちらも円筒状コイルが非回転、永久磁石とマグネットヨークが回転する。ただしコアレス型はアウターヨーク(コイルヨークとも呼べる)も回転し、スロットレス型はアウターヨークが非回転である。いずれも中央に鉄心が無い、つまり空芯なのでインダクタンスが小さくなりサージ電流が小さくなる。
【0020】
ところで本願明細書で「コイル単位体」と記しているが、一つのコイル単位体は同仕様(材質、寸法及び径が同じということ)のコイルが一つでも良いし複数個が直列に繋がったものでも良い。但し、コイル単位体同士も構成するコイルの数が同数にする。例えば同じ巻き数のコイルがn個連なって一つのコイル単位体を作っているならば、コイル単位体が3つとなれば3×n個のコイルを使うことになる。
また、本発明の風力発電機ユニットの集合設備は、次の何れかを特徴とする。
【0021】
(11)上記(1)乃至(9)の風力発電機ユニットを大気に晒される領域に複数台を設置し、各前記風力発電機ユニットには当該ユニットの稼働状況を通信する無線LANの送受信機を付設し、各風力発電機ユニットの発電出力の搬送先となる蓄電設備とを備えること。
【0022】
(12)上記(11)において、設置領域は建物の屋上、ベランダ、バルコニー、塀、橋上、道路の中央分離帯、道路脇、空き地、農地、公園、鉄道線路脇、海岸から選ばれること。
【0023】
(13)上記(11)において、前記風力発電機ユニットは前記風洞の開口部が前記正面部の向きが合うように縦及び/又は横に連接するように配置すること。
尚、ブレ―ドの配置が縦型(垂直軸型)であれば箱型のユニットでは無く、発電機の回転軸を上方に延ばしてブレードを上方に増設する方法も有効である。
【0024】
尚、前記コイル部の前記各相は同数のコイル体で構成され、該複数コイル体はコイル体間の接続が直列、並列、直列及び並列の組み合わせから選択された切替によって3段以上の多段切替のパターンを有するコイル群Aと、該コイル群Aの構成コイル線材よりも細くて途中に接点が無い導線からなる細線Bとを備えて、コイル群Aに細線Bを接続して用いる場合と、細線Bを用いずコイル群Aのみを用いる場合との切り替えを行い、風速に従って自動的に3段以上の多段切替を行うことが極微風対応に特に有効である。
【0025】
また、前記コイル部は線材を前記各相ごとに複数ターン巻いたものを前記のコイル体とし、該コイル体を複数連ねたものを積層して円筒状に形成してコイル円筒体とし、前記コ イル体ごとに導線を引き出し、該導線をコイル切替基板に接続し、該コイル切替基板には スイッチ回路が設けられ、該スイッチ回路は前記コイル体の直列、並列、直列及び並列の組み合わせから選択された切替によって3段以上のパターンの多段切替を行うことが有効である。
【0026】
尚、前記コイル部の前記各相は同数のコイル体で構成され、該複数コイル体はコイル体間の接続が直列、並列、直列及び並列の組み合わせから選択された切替によって3段以上の多段切替のパターンを有するコイル群Aと、該コイル群Aの構成コイル線材よりも細くて途中に接点が無い導線からなる細線Bとを備えて、コイル群Aに細線Bを接続して用いる場合と、細線Bを用いずコイル群Aのみを用いる場合との切り替えを行い、風速に従って自動的に3段以上の多段切替を行うことが極微風対応に特に有効である。
【発明の効果】
【0028】
本発明はコイル単位体間の接続を3段以上に切り替えることによって常にシステム効率(=発電効率)が最大(つまり最良)のところを使えるという効果がある。これは発電機のコイル部を複数のコイル単位体で構成し、そのコイル単位体間の接続を3段以上に切り替えられるように構成したからこそ達成される。また、コイル部を円筒状に作れば前記コイルを配列し易く、形成し易くなる。加えて微風から強風までの幅広い風力に段階的に対応して発電効率の向上が図られ、微風においても充電でき、強風下では蓄電池の故障が回避できるという効果があり、ユニットの複数設置がし易くなる。更に、発電機とブレードが発電機の外周回転部に直結するならばユニットの薄型コンパクト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の風力発電機ユニットの構造例の説明図である。
図2】コアレス発電機とコアド発電機の比較特性図である。
図3】4コイルの接続パターンの説明図である。
図4】5コイルの接続パターンの説明図である。
図5】4コイル使用の場合のコイル切替による風力発電の特性図である。
図6】4コイル使用の場合の回路説明図である。
図7】本発明の発電機に用いる中空の円筒型コイルの一実施形態の概略構造を説明する一部を省略した斜視図である。
図8】円筒型コイルの周壁が軸方向から見たときに円筒型コイルの半径方向で3層の円筒状コイル体によって構成されることを説明する平面図である。
図9】コイル単体を形成する線材の断面構造の一例を表す図である。
図10図9図示の複合コイルを巻回する際にこの複合コイル線とは独立した細線を一緒に巻回する線材配置例を示す図である。
図11】コイル切替パターンの別の実施態様を示す説明図である。
図12】コイル切替パターンの更に別の実施態様を示す説明図である。
図13図12の実施態様で切替位置を変えた説明図である。
図14図12の実施態様で切替位置を変えた説明図である。
図15図12の実施態様で切替位置を変えた説明図である。
図16図12のコイル切替を用いた発電機ユニットの特性図である。
図17】コイル切替パターンの更に別の実施態様を示す説明図である。
図18】コイル切替パターンの更に別の実施態様を示す説明図である。
図19】コイル切替パターンの更に別の実施態様を示す説明図である。
図20図19の実施態様で切替位置を変えた説明図である。
図21図19の実施態様で切替位置を変えた説明図である。
図22図19の実施態様で切替位置を変えた説明図である。
図23図19の実施態様で切替位置を変えた説明図である。
図24】コイル切替パターンの更に別の実施形態を示す説明図である。
図25】コイル切替パターンの更に別の実施形態を示す説明図である。
図26図19図23の各システムの風速~回転数の関係の特性図である。
図27図19図23の各システムの風速~電流の関係の特性図である。
図28図19図23の各システムの風速~システム効率の関係の特性図である。
図29】本発明の風力発電機ユニットに用いる枠体例の構造図で、(a)は斜視図。(b)は上面図、(c)は正面図、(d)は側面図である。
図30】本発明の風力発電機ユニットに用いるブレード例の構造図で、(a)は正面図、(b)はブレード一枚の外観図である。
図31】本発明の風力発電機ユニットに用いる発電機例を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は斜視図である。
図32】本発明の風力発電機ユニットの外観を例示した斜視図で(a)は防護網の無い状態、(b)は防護網を付けた状態を示す。
図33】本発明の風力発電機ユニットを横並びに連接した例の斜視図である。
図34】本発明の風力発電機ユニットを塀などの土台上に横並びに配置する例の斜視図である。
図35】本発明の風力発電機ユニットを縦方向に連接した例を示し、(a)は3ユニットの縦重ね、(b)は6ユニットを2×3の配置で連接した斜視図である。
図36】本発明の風力発電機ユニットを2本の鉄骨(I又はH鋼)の間に嵌め込む工法の例示の説明図である。
図37】本発明の風力発電機ユニットを2本の鉄骨(I又はH鋼)の間に嵌め込む工法の例示の説明図である。
図38】本発明の発電機ユニットの別の構成例の説明図である。
図39】本発明の発電機ユニットの別の構成例の説明図である。
図40】本発明の風力発電機ユニットを建物の屋上に配置した例を示し、(a)は屋上の角部に限定配置した例、(b)はほぼ全周へ連接配置した例の斜視図である。
図41】本発明の風力発電機ユニットを住宅に適用した例の斜視図である。
図42】本発明の風力発電機ユニットを太陽光発電パネルの防風外壁に適用した例の斜視図である。
図43】本発明の風力発電機ユニットを海岸に設置する場合の説明図である。
図44】本発明の風力発電機ユニットを道路に設置する場合の説明図である。
図45】本発明の風力発電機ユニットを橋上に設置する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(風力発電機ユニットの装置構成例)
図1に本発明の風力発電機ユニット9の例を断面図混じりで説明する(外観としては図32も参照)。
【0031】
この例は薄型の略直方体の箱型を呈し、その外観を形成する筐体6は正面部61、背面部62、頂部64、底部65及び左右の側面部(本図では略。図32の符号68参照)から構成されており、正面部61と背面部62には大きな開口があって両部61~62に貫通する風路63となっている。この風路63は流路の中央に向かって絞まるように集風壁66が正面部61と背面部62の両方に形成されている(風レンズとも言う)。尚、頂部64、底部65、左右側面部は板状でも良いし、枠体のみ(骨組だけ)でも良い。
【0032】
風路63には略中央に発電機3が位置し、発電機3のシャフト36は筐体6に、正面部61及び背面部62夫々の開口出口に渡された梁部材(本図では図32の符号67参照)を介して固定されている。よってシャフト36は動かない(非回転)。
【0033】
このシャフト36を中心軸にして軸受34を介して発電機3のケーシング37が配置されており、ケーシング37は回転する。発電機3内は円筒状のコイル体31と、その円筒状コイル体31とは間隙を持って挟むように配置されたアウターヨーク32とインナーヨーク33並びにアウターヨーク32の円筒状コイル体31側に接合されて円筒状コイル体31と間隙を持って配置された永久磁石35を備え、更に後述するコイル間接続切替基板7を円筒状コイル体31のコイルと接続するようにして設けられている。円筒状コイル体31はシャフト36に固定されているので非回転であり、その円筒状コイル体31に接続されたコイル間接続切替基板7も非回転であるが、アウターヨーク32、インナーヨーク33はケーシング37と一体となり(特に本例ではアウターヨーク32がケーシング37を兼ねている)、従って回転する。永久磁石35もアウターヨーク32に接合されているので回転する。
【0034】
円筒状コイル体31はヨークの回転に対して静止状態(非回転)を保つ為に片持ち状態で内部に固定されている。円筒状コイル体31はロータの回転運動や磁力によって円形の捻じれ或いは位置ずれに対応できるように、円筒状コイル体31の片面若しくは両面にコイル補強層(例えば特開2021-97546号公報参照)が形成され、更に円筒状コイル体31の開放端側にコイル補強リング(例えば特開2021-97564号参照)が篏合されている。またコイル間接続切替基板7は円筒状コイル体31に接続されているので非回転であり、それに切替回路の配線とスイッチ(1乃至複数個の半導体素子及び/又はリレー)が搭載されている。尚、図示省略するが内部発熱の冷却の為、直接及び/又は間接に冷媒による冷却を図ることも有効である。
【0035】
複数枚のブレード1はケーシング37(本例ではアウターヨーク32が兼ねる)に固定されているので、ブレード1と発電機3は一体で回転する。尚、本例は正面部61と背面部62がシンメトリーであり、ブレード1は正面部61から流入する風にも背面部62から流入する風にも対応するようにシンメトリーに作られている。ブレード1とケーシング37(=本例ではアウターヨーク32)との固定は、ネジ止めでも溶接等の接合でも良いが、遠心力に耐える強固な手法にて固定する。
【0036】
更に正面部61、背面部62は防護網(本図では略。図32の符号69参照)で覆って良い。各面は板材をスケルトンにしても良い。
尚、軸受34等発電機3内部への異物侵入を防ぐべくオイルシールを併用するのが良い。
【0037】
発電機3には更に増速器やブレーキを付設しても良く、これらはコアレス型発電機3のインナーヨーク33の内側のスペースに納めても良い。増速器はギアを使って回転数を増やし回転速度を速めるが、1kW近辺の発電機では増速器は不要であるし、本発明が対象とするコイル間接続切替式のコアレス発電機においては本来必要ない。ブレーキ装置は暴風や点検時等において回転の抑制や停止を担う。但しブレーキ装置も必須ではない。
【0038】
伝達された回転はコアレス型発電機3で電力に変換する。コアレス型発電機3の内容については別項で説明するが、本例で採用するコアレス型発電機3内の円筒状コイル体31は円筒型に形成されている。発電された電力は、図示省略の出力ケーブル経由で、同じく図示省略の蓄電池(例えば鉛蓄電池)を経由し或いは直接に、出力ケーブルを通じて利用先へ配電される。尚、トランスを介して昇圧する場合も本発明に含むが、後述するように、コイル間接続切替基盤7を用いるならば、そのコイル間接続切替自体が電圧を上げるので、別途複雑な昇圧回路(DC―DCコンバータ)を使わなくとも良い。
【0039】
更に、図示は省略しているが、当該発電機ユニットには監視用に通信機(送受信装置、アンテナ、センサ付き。図34の符号11参照)と風向・風速計が付設されており、監視用通信機は監視センタ(図略)で 風向・風速並びに蓄電池の状況と共に監視している。
【0040】
(コアレス型発電機の特徴)
風力発電は風のエネルギーを風車で機械エネルギーに変換し、機械エネルギーを発電機で電気エネルギーに変換する。風車の最大変換効率は59.3%(約60%:ベッツの定理)だが、現状は理想的な風車で約40%、通常の風車で約30%程度になる。以上のことから風力発電システムの発電効率は、発電機の効率を80~90%とすれば、最良でも30~35%程度になる。一般に1kW発電機はブレード直径2m、面積が3.14m 2 で効率は31.8%に設計されている。ブレードタイプの周速比(風速とブレード先端 のスピードの比率)は一般に6(変換効率が高い)が選ばれ、定格時(風速12m/秒)のブレードの先端速度は259.2km/時、回転数は688rpmとなっている。
【0041】
風のエネルギーは風速の3乗に比例する。風の圧力(風圧)は風速の2乗に比例し、風のエネルギーは風速×圧力=風速の3乗になる。それ故、風速が小さいときはエネルギーが非常に小さく、反対に風速が大きくなれば急速にエネルギーが増加する。
【0042】
現状、一般に風力発電機の作動範囲は2.5m/秒以下では、発電できるエネルギーよりも制御回路を動作させるエネルギーの方が大きくなり、15m/秒以上では出力が大き過ぎて発電機や制御回路を破壊してしまう可能性が高いからである。以上のことからわかるように風力発電システムは微風から強風まで効率よく利用できるようにすることが最大の課題になる。
【0043】
一般に、小型風力発電機には永久磁石同期発電機が採用されている。永久磁石使用の発電機にはコアドタイプが多く実用されているが、本発明者の検討ではコアレスタイプの方が適している。
【0044】
図2のグラフに示すように、誘起電圧定数が等しい発電機の場合、コアレス発電機の方がコアド発電機(本願では円筒状コイルを用いず、鉄心を備えた発電機のことを示す。従ってスロットレスタイプは円筒状コイルを用いているので除外)よりも高い電圧を得ることができ、その結果、同一出力を得る場合には出力電流を小さくすることができる。その理由は、コアレス発電機(スロットレス発電機も同様)のインダクタンスが小さく、インダクタンスによる電圧降下2πfLIが小さくなる為である。そして円筒状コイル使用タイプ(円筒状コイルの内側に鉄心が無いタイプ。以下同じ)だからこそコギングレスになり、従って微風でも羽根が回転し易くなる。従来の風力発電機において微風対応を謳っているものは有ったとしても、肝心の発電機が円筒状コイル使用タイプで無ければコギングが有って微風では回転できなくなるから、実際には微風対応の効果は得難い。このように本発明は円筒状コイル使用タイプだからこそコギングレスであり、従って微風でも風力発電機の羽根は回転する。加えて円筒状コイル使用タイプだからこそインダクタンスが小さくなり、従って高速回転しても電圧降下が少ないので発電量が多くなる。これは風力発電機の小型軽量化に寄与する。
【0045】
更にコアレスタイプでは、別項で後述するコイル間接続切替原理との併用をし易い。そのコイル間接続切替のシステムを使用することで発電電圧の制御が可能になり、発電効率が向上して省エネルギー化を達成することができる。また、このシステムにより微風から強風時まで広範囲にわたって発電を充電可能になり充電効率が上がる。
【0046】
ところで、従来のコアレス発電機のコイルは、形状維持とコンパクト化を図って、通常は扁平である。これに対し本発明ではコイルを円筒状にし、従ってヨークやケーシングも円筒のものを用いるが、本発明者はこのヨークやケーシングにブレードを固定してホイールインモータのような構造にすることを発案した。従来の風力発電機は、ブレードと発電機が動力伝達軸で直列に連結したので、発電機ユニットとしては幅が広がってしまうが、本発明提案構造によって幅は圧縮されることになり、薄型のコアレス発電機ユニットが得られるのである。
【0047】
(複数コイルのコイル間接続の切替原理)
本発明では、複数のコイル単位体を単に直列、並列の2通りに切り替えるのでなく、直列・並列混用によって切替パターンのバリエーションを3種以上にし、つまり複数段切替を行うことを特徴としている。これにより風力に応じて3段階以上の多段切替が可能になるから、微風から強風にも対応できるようになる。
【0048】
発電機のコイル部は複数相、一般的にはU、V、Wの3相で構成されている。その各相ごとに、本発明ではコイル単位体を3つ以上用いる。そしてコイル単位体の接続を全部直列、全部並列の他、直列と並列の混用(シリーズパラ)にすることで3段以上の多段切替を可能にできる。典型的なのは図3に示す各相4コイル単位体(この例では各コイル単位体は使用コイルが一つ。よって使用コイルは全部で4つ)使用であり、尚、5コイル単位体(この例では各コイル単位体は使用コイルが一つ。よって使用コイルは全部で5つ)のパターンを図4で示す。
【0049】
図3図4でわかるようにコイル数を増やせば増やすほどコイル間接続の切替パターンのバリエーションは増えて風速への対応も細かくできるようになる。尚、全てのパターンを使う必要はなく、例えば図5に説明するように4コイル使用であれば全部直列(4S=1P-4S。1パラ)、全部並列(4P=4P-1S。4パラ)、2並列2つの直列(2P-2S。2パラ)の3パターンでも良い。その場合、全部直列なら風速の高速対応になり、全部並列なら風速の低速対応になり、2並列2つの直列なら中速対応になる。出力電圧30Vから発電可能なシステムの場合、コイル切替無し(従前のもの)であれば風速3mから発電可能であるが、本例の3段切替を採用すれば風速0.75mから発電可能になる。このことは 図5に纏めて図示している。図5は4コイル3段切り替えのグラフになる。3段切替を想定し、コイルは4つで、4S(1パラ)、2P-2S(2パラ)、4P(4パラ)の切替であり、表中の「低速」は風速の低い方で4S(1パラ)を使い、「中速」では2パラに切り替え、「高速」では4パラに切り替える(自動で切り替わるようにしている。尚、表1にて図5図示の場合の風速、回転数と出力電圧との関係を整理する。尚、コイル単位体間の切り換え(以下、コイル単位体間の切り換えをコイル切替と記す)は風速によって自動切替すれば良い。
【表1】
【0050】
次に4コイルを例にしてコイル間接続切替基盤7を図6にて説明する。図6はスイッチ回路にリレーを使っているが勿論半導体回路や半導体素子とリレーとの組み合わせで対応するのが実用的である。
【0051】
本実施形態に係る円筒状コイル体31(ステータコイルとも言う)は、1つの相に4つのコイル(合計12個)を用いた3相12極とされている。このような構成のコイル体では、各相を構成するコイル(第1コイルU1、第2コイルU2、3コイルU3、第4コイルU4、第1コイルV1、第2コイルV2、第3コイルV3、第4コイルV4、第1コイルW1、第2コイルW2、第3コイルW3、第4コイルW4)の間にそれぞれ、スイッチ回路部72(72U1、72U2、72U3、72V1、72V2、72V3、72W1、72W2、72W3)が設けられている。符号71は制御部である。制御部71とスイッチ回路72は半導体回路化してコイル間接続切替基板7に搭載されているので各コイルとコイル間接続切替基板7間には図示省略の接続線が有る。
【0052】
スイッチ回路部72の構成として、スイッチ回路部72U1、72U3、72V1、72V3、72W1、72W3については、入力側1ポート、出力側2ポートの切り替えスイッチが2つ(第1スイッチA、第2スイッチB)、並列に配置されて成る。第1スイッチAの入力側ポートには、第1コイルU1、V1、W1が夫々接続され、第2スイッチBの入力側ポートには、第1バイパス線が接続されている。第1スイッチAの出力側ポートには、aポート側に第2コイルU2、V2、W2が接続され、bポート側に第2バイパス線が接続されている。また、第2スイッチBの出力側ポートには、aポート側が開放(未接続)となっており、bポート側には、第2コイルU2、V2、W2からの分岐線が接続されている。
【0053】
一方、スイッチ回路部72U2、72V2、72W2については、第2スイッチBについて、入力ポートの数と出力ポートの数が第1スイッチAと逆となるように構成されている。このような構成にすると、U相、V相、W相のそれぞれにおいて、スイッチ回路部72U1~72W3について、それぞれ第1スイッチAと第2スイッチBをaポートに設定することで、第1コイルU1~第4コイルU4、第1コイルV1~第4コイルV4、第1 コイルW1~第4コイルW4がそれぞれ直列接続されることとなる(この状態を1パラと称す)。
【0054】
また、1パラの状態から回路部72U2、72V2、72W2の第1スイッチA と第2スイッチBをbポートに設定した場合、例えばU相では、第1コイルU1と第2コイルU2が直列、第3コイルU3と第4コイルU4が直列にそれぞれ接続され、第1コイルU1と第2コイルU2の組と、第3コイルU3と第4コイルU4の組がそれぞれ並列に接続されることとなる。なお、V相、W相においても各コイルが同様に接続される(この状態を2パラと称す)。
【0055】
更に、U相、V相、W相のそれぞれにおいて、回路部72U1~72W3について、それぞれ第1スイッチAと第2スイッチBをbポートに設定した場合には、第1コイルU1~第4コイルU4、第1コイルV1~第4コイルV4、第1コイル W1~第4コイルW4がそれぞれ並列接続されることとなる(この状態を4パラと称す)。ただし勿論コイル数は3つ以上、切替段数は3段以上であればコイル数、段数の限定はしない。
【0056】
(コイルの巻き方)
図7図10に円筒状コイル体31をリッツ線で編んでいく例を示すが、勿論、この製作方法には限定されない。
【0057】
本発明の実施例に採用するコイル体は銅板エッチングに依らず線材を巻いたものである。但し、複数相から成り、各相が複数のコイル単位体で形成されること、しかしながらコイル体としての厚みを抑えながら形状維持を図ることを狙って例えば本発明者の提案した特許第6989204号や特許第6948748号に記載の手法でも良いし、勿論これらの巻き方には限定されないし、上記切替思想を踏襲すれば線材ではなくて銅板を用いるなども本発明態様の範疇になる。
【0058】
この実施形態の中空の円筒状コイル体31は複数個のコイル単体312から形成されている。各コイル単体312は例えば10ターンのように複数回巻回されている。そして複数個のコイル単体312が、円筒状コイル体31の円周方向に連続的に配置されることで円筒状コイル体31の周壁31aが形成されている。尚、コイル単体とは一つのコイルのことであり、これが1乃至複数でコイル単位体になり、更に纏まって円筒状コイル体になっている。
【0059】
周壁31aは、図8のように、内側円筒状コイル体313と、円筒状コイル体31の半径方向で内側円筒状コイル体313の外側に配置される中間円筒状コイル体314と、円筒状コイル体311の半径方向で中間円筒状コイル体314の外側に配置される外側円筒状コイル体315とから構成されている。内側円筒状コイル体313、中間円筒状コイル体314、外側円筒状コイル体315は、いずれも、複数個のコイル単体312が円筒状コイル体31の円周方向に連続的に配置されて形成されている。尚、符号311は円筒状コイル体31の中心軸(仮想)である。円筒状コイル体313,314,315は夫々がU,V,W相を形成しても良いし、相互に混じる編み方になっていても良い。
【0060】
コイル単体312を形成する線材316は、周囲が絶縁処理されている導電性の線材である。図9にその一例を示す。図9図示の線材316は、所謂リッツ線を使用しており、外周をエナメル層318で覆われている銅細線317が複数本で束にされ、これがガラス繊維のような繊維状物319で覆われている。中空の円筒状コイル体31の円筒状の周壁31aを形成するようにコイル単体312が円筒状コイル体31の円周方向に連続的に配置される前のコイル単体312は、略平板状のコイル体である。以下コイルの巻き方は例えば前記の特許第6989204号や特許第6948748号の実施例記載の通りである。そしてこの巻き方で各相が形成されるが、内側円筒状コイル体313、中間円筒状コイル体314、外側円筒状コイル体315のそれぞれにおいて、コイル間接続切替の為に線材316が円筒状コイル体31の円筒から引き出されてコイル間接続切替スイッチが介在する。このスイッチは半導体回路を用いて図1のコイル間接続切替基板7に固定される。
【0061】
図9を用いて説明した線材316の繊維状物319をこれがガラス繊維のような加熱で溶融する部材にしておき、内側円筒状コイル体313、中間円筒状コイル体314、外側円筒状コイル体315となる平板状のコイル体をそれぞれ複数個のコイル単体312を用いて上述したように準備し、更に、内側円筒状コイル体313の半径方向外側に中間円筒状コイル体314、中間円筒状コイル体314の半径方向外側に外側円筒状コイル体315を、内側円筒状コイル体313、中間円筒状コイル体314、外側円筒状コイル体315が互いに円筒状コイル体31の円周方向に所定の変位量だけずらして配置し、その後に加熱し、繊維状物同士を熱融着させて周壁31aがコイル単体312の2層分相当の厚さで形成されている本実施形態の中空の円筒状コイル体31にすることができる。
【0062】
ところで、後述の図12図15図24及び図25の実施態様のように発電機対応として、本発明者はスイッチを介さない1本の細線320を前述の線材316巻回時に一緒に巻くことを提案する(図10参照 )。図9の構成線材は実質的に太さ、特性が同規格であるが、その構成線材の内の1本相当(或いは若干当該細線よりも太目で外径よりも細い導線)を一緒に巻き回す。但し、この細線320は線材316とは異なり細線320間でのスイッチが無く、その役割については後述する。細線1本だけであり、厚さの誤差範囲として構造上は扱える。例えばターン数が夫々10ターンとして細線320は線材316と一緒に巻いてもターン数は線材316と細線320で替えて良い。要するに微風時にだけ使う細線320を線材316作成時に一緒に巻いておけば製作工程が便利である。この項では通常のリッツ線に細線1本を併用する例を示したが、細線は1本とすることには限定されない(その事例は図24及び図25の事例で説明する)。
【0063】
上述した構造にしていることから、複数個のコイル単体312が円筒状コイル体31の円周方向に連続的に配置されて、内側円筒状コイル体313、中間円筒状コイル体314、外側円筒状コイル体315を形成し、更に、内側円筒状コイル体313の半径方向外側に中間円筒状コイル体314、中間円筒状コイル体314の半径方向外側に外側円筒状コイル体315が配置されて、円筒状コイル体31が形成される際に、コイル単体312が、円筒状コイル体31の半径方向で屈曲する大きさは、コイル単体312の厚さサイズを実質的に越えないことになる。
【0064】
そこで、コイル単体312を形成する線材316にかかるストレスを抑制することができる。また、円筒状コイル体31の周壁31aの半径方向の厚さはコイル単体312の厚さサイズの2倍相当の大きさで、少なくとも3倍を越えないものになる。
【0065】
本実施形態の円筒状コイル体31においては、周壁31aを構成している複数個のコイル単体312は、線材316が巻回軸の周りに巻回されている途中で線材316が巻回軸の半径方向外側に向かって屈曲する部分が存在しない構造になっている。このため、巻回軸の半径方向外側に向かってヘアピン型に膨出する膨出部を備えているコイル単体が使用される場合に比較すると、コイルの経路の観点から電気抵抗の増加を抑制できるものになる。そして、上述したように、円筒状コイル体31の半径方向で屈曲する大きさを小さくすることができるので、線材316が受ける機械的ストレスも小さくすることができる。
【0066】
(コイル切替の更なる実施態様1)
図11にコイル切替の更なる手法を説明する。この例では各相コイルは6つ使用している。6つ使用すると全部直列を含めて次の12パターンが選択できるがこの例ではその内の3パターンしか使わない。
【0067】
12パターンの内容は次の通り(Pは並列、Sは直列)。全部並列(6P)、5P+1S、4P+2P、4P+2S、3P+3P、3P+2P+1S、3P+3S、2P+2P +2P、2P+2P+2S、2P+4S、2P+3S(一つ不使用)、6S(全部直列)。
【0068】
図11の例で使うのはこの内、全部直列(6S。1コイルが1V、1Ωとすれば6Ω、6V)と、2P+2P+2Pのパターン(同じく1.5Ω、3Vのパターン)、3P+3P(同じく0.66Ω、2V)の3通りで。全部並列のパターンも不使用とする。そうすると図11のグラフに示すように3段階の最高回転数の幅が均等になる(尚、図の縦軸のkは係数。たとえばkが100なら6kは600回転)。このようにすると、12パターン分の細かい切替には至らないのでスイッチ数は図11右側の如く減らせて、しかも回転数の差が均等なので制御管理が容易になる。接点(スイッチ)が減らせるので原価低減になるだけでなく、切替最高回転数を1k、2k、3kの均等間隔にして3kを使用上限に設定しておけば6kまでの大きな差がなくなるので機械損傷を防げる(最高回転数の大きな急変が機械に与える負荷を防ぐことになる)。
【0069】
同様にして各相コイルを6つから12個に倍増しても似たような間引き効果が得られる(図18参照)。12コイルはコイル数が増えるが、スイッチ(半導体)ではコイル全数分は要らず、かつ、12コイルの直列時には大きなトルクが得られる。尚、図18の例では6P2Sと12Pを使わない(そもそも6P2Sと12Pができない)ので4段切替の回転数は0~1、1~2、2~3、3~4の範囲で均等になる。12コイル使用において、回転数は12k、6k、4k、3k、2k、1k(kは係数)の選択できるが4k以下なら間隔が全て1kで均等になり、つまり4k、3k、2k、1kの4択で切り替えれば上記6コイルの例と同様に切り替えショックによる機械損傷は防げる。尚、6kと4kの間は若干幅が広がるが12kと4kの間の幅よりは相当狭いので6kを採択してもショックによる機械損傷の抑制には効果があり、結果、12kは不使用にして6k、4k、3k、2k、1kの選択をしても良い。勿論、使用コイル数の割にはスイッチ数の激減になる。
【0070】
(コイル切替の更なる実施態様2)
図12から図15には図11の実施回路(6コイルのスイッチ間引き)を使って(この6コイル区間をコイル群Aと本例に限って表記する)、更に1本の細線で形成した部分(これをコイル群Bと本例に限って表記する)を直列に繋げるか遮断するかで微風から強風までの一層適した運用を図るものである。尚、コイル群Aは図10の線材316に相当して通常のコイル太さとするならば、コイル群Bは図10の細線320に相当している(図12図15では作図の都合上、コイル群AとBの太さが同じになっているが、実際は図10のように異なっている(細線320は相対的にもっと細くとも良い。尚、図10では細線320が複数見えるがこれはコイルに何ターンも巻いて為の表現に過ぎず、現物は1本の線である。
【0071】
接続には前出の図10の巻き方が有効であり、この図10における細線320がこのコイル群Bを担うことになる。つまり、コイルA群(線材316で製作)にはコイル間スイッチが図11に従って入るが、細線320には途中にスイッチが無く1本である。細線320区間のコイル群Bを使うか否かはスイッチCの切替で行う。この図の例ではコイル群Aの各コイルが10ターン巻かれており、6コイルだから60ターンになっており、コイルB群の細線も60ターンにし、図10のようにコイル群Aの線材316とコイル群Bの細線320は同じターン数なら一緒に巻いた方が作業効率は良い。
【0072】
図12の接続パターンではコイル群Aは全部直列状態で更にコイル群Bと接続されている。このコイル群B区間は細線なので抵抗が高くなるが、微風(例えば目安として風速4 m/s以下)のときに有効である。この細線区間(コイル群B)の使用は抵抗が上がるが4m/sのように超微風下であり、取り出せる電流は少ないから抵抗上昇の問題は気にしなくて良い。それよりも極微風(0を超えて4m/s以下)区間で少ない風量をしっかりキャッチして発電し充電することを重視したのが本態様である。
【0073】
図13図15はいずれもコイル群Aとコイル群Bとの接続が切り離されていてコイル群Bは不使用になっている。図13の接続パターンではコイル群Aが全部直列であり、図14の接続パターンではコイルA群が2P3Sを使用し、図15ではコイルA群が2S3Pを使用している。
以上は共通線で繋がっているU相、V層、W相とも同じである。
【0074】
図16にこの実施態様を用いた場合の風力発電特性図を説明する。一般的には風速が0から強風になるにつれ発電電圧は上昇する。ところで本例では発電電圧が所定になるとコイル接続切替によって発電電圧が下がる。この特性はパターン(1)、(2)、(3)、(4)と順次変わっていく。つまり微風のときはパターン(1)の細線接続利用を使うのはこの態様の特徴になる、コイル切替するごとに電圧は図示の如く下がる。また、図16が示す通りコイル間接続切替を行わない場合(風速と発電電圧の関係が比例)に対して風速8m/s以下の微風でも接続パターン(1)では発電電圧が8V以上を確保できている。つまり電圧上昇によって出力が取り出し易くなっており、蓄電もし易くなり、とりわけ鉛蓄電池の使用には重要なエネルギー獲得手法になる。
【0075】
実は本例でも用いる鉛蓄電池は通常8V~16Vが充電電圧である。8V以下では受電ができないし16V以上では電池が壊れてしまう。そこで16V以下で強風時にも対応できるようにコイル切替を行う。ところが一方、日常では微風状態の時間帯が最も多くなり、特に4m/s以上の風が吹く時間は年間通じて一般的に少ない。従って4m/s以下の微風(超微風)で使えなくなるのは自然エネルギー源としては非常に勿体ない。例えば日本においては一日の大半がこの超微風(極微風)状態にある。2.5m/s以下の状況も多い。本実施態様ではパターン(1)の採用によって超微風でもエネルギー源をキャッチできるようにしたことが第二の重要な特徴である。尚、この超微風でも逃さず風を捉えて 電力変換するには発電機構造特にブレードも小型・軽量にし、動力伝達軸も機械的抵抗を減らして滑らかに回動するよう軸自体の軽量化を図り、ベアリングも配置する。その風力発電機の小型・軽量化には、まさに鉄心の存在しないコアレス型が最適である。
【0076】
ところで本例ではコイル群Aとコイル群Bを繋げるパターンが直列に限定されているが、変形例として図17に示すようなコイルA群とコイルB群の並列もある。この図の例ではコイル群Aの各コイルが10ターン巻かれており、6コイルだから60ターンになって おり、コイルB群の細線も60ターンにしているが更にコイル群Bのターン数を増やして(例えば200ターンとか)にしても良い。並列を可能にする為、本図ではスイッチDを加えており、スイッチCによるコイル群Aとコイル群Bとの接続を切断した際、スイッチDを接続すればコイル群Aとコイル群Bが並列関係になる。コイル群B区間は細線なので抵抗が高くなり、この細線区間(コイル群B)の使用は抵抗が上がるが、4m/sのように極微風下であり、取り出せる電流は少ないから抵抗上昇の問題は気にしなくて良い。よって本例も超微風に適する。このようにコイルの多数段切替に加えて当該コイル線材よりも細い線によるスイッチレスコイルを併用することは超微風に適する。ところで、この実施態様におけるコイル間の各スイッチ(コイル群Aの範囲内の各スイッチとスイッチCとの両者)は風速ゼロ乃至極微風にて半導体スイッチに依らず機械式リレースイッチを用いても良い。つまり半導体スイッチと機械式リレースイッチの併用(選択切替)にする。これは実質無風状態においては半導体スイッチ駆動の為のバッテリー消費を防ぐ意図である。風速上昇に伴って電流が発生すれば電流検知できるので機械式リレースイッチから半導体スイッチに切り替えれば良い。つまり機械式リレースイッチは発電電圧が発生したときにOFFになる。
【0077】
(コイル切替の更なる実施態様3)
図18に各相12コイルを使用した場合の別のスイッチ配置例につき説明する。図示の通りスイッチは16個用いる。
【0078】
図中のグラフが示すように最高回転数1に相当するのは12Sとなり、2に相当するのは2P6Sとなり、3に相当するのは3P4Sとなり、4に相当するのは4P3Sとなり、6に相当するのは6P2Sとなる。12Sにするには図中のスイッチのf、g、h、i、jをつなげて他のスイッチを切る。2P6Sにするにはスイッチc、f、g、i、j、k、nをつなげて他のスイッチを切る。3P4Sはb、d、f、h、k、m、oをつなげて他を切る。4P3Sはa、c、e、g、i、k、l、n、pをつなげて他を切る。この図の例では2S6Pと12Pはできないが、発電機のニーズに応じてはこれらのスイッチ選択を使用する必要が無い。
【0079】
(コイル切替の更なる実施態様4)
使用するコイルを各相24個(コイルの材質、長さ、抵抗値が同じコイルを1単位分のコイルとすれば、24単位分のコイルを各相ごとに使うということ。本願説明において共通の考え方になる)とした場合の実施態様を図19図23に示す。
【0080】
この例は1段から5段の5段切替を示している。図19は1段目(以下、第1システムと呼ぶ)を示し。コイル一つが1Vとして20Vになる。図20(以下、第2システムと呼ぶ)は2段目で同じく16V、図21(以下、第3システムと呼ぶ)は3段で12V、図22(以下、第4システムと呼ぶ)は4段で8V、図23は5段(以下、第5システムと呼ぶ)で4Vになる。
【0081】
回転数当たりの発電電圧が大きいから(誘起電圧定数が大きいから)コイル数を増やすほど低回転数でも発電できる。つまり極微風でも発電できることになる。
【0082】
本態様では各図の左端のコイル接続に見られるように直列4コイルの区間に並列に直列4コイルを設けている(この並列追加部分を本願では補コイルと呼ぶ)。このような配置をすればコイル数を増やしてもスイッチ数は増やさなくて済む。尚、この第1~第5システムによる5段切替につき、切り換えのタイミングと効果は別項にて後述する((コイル間接続切替のタイミングと特性)の項参照)。
【0083】
(コイル切替の更なる実施態様5)
図24~25には24コイル使用の別の態様を示す。この例では同材質、同じ長さのコイルでありながら太いもの(通常使用するもの。本願明細書では太コイルと示す)と、細いもの(本明細書では細コイルと示す)の2種類を用いている。この太さの違いは例えばリッツ線利用なら使用細線の本数で調整できる。
図24の例では細コイルは14個が直列に繋がり、太コイルは5個ずつ直列に繋がったものが2組有り、太コイルのつながりと細コイルのつながりの間にスイッチAが設けられ、2組の太コイル群には図示のようにもスイッチBが3つ設けられ、更に細スイッチを通らない線上のスイッチCが設けられている。細コイルはこの例では14束のリッツ線を14コイル分、直列に繋げたもので、設定した風速未満(極微風)においてスイッチCが閉じてスイッチAが繋がることにより太コイルと直列に接続し、この設定風速以上ではスイッチAは遮断されてスイッチCが入り不使用状態になる。つまり所定風速以上では極微風対応の細コイルは使わない。一方、太コイルはこの例では40束のリッツ線を5コイル分2ユニット用意していてユニット間で直列、並列、直並列の切り替えを可能にしており、極微風でなければ細コイル不使用状態でも複数段階のコイル切替が可能になっている。尚、所定風速未満(極微風)においては細コイル側と直列に接続されると共に太コイルのユニット間も直列となり、つまり全24コイルが直列になる。尚、本例ではスイッチA、Cには防水タイプのリレーを使用し、スイッチBには半導体素子を用いている。
【0084】
図25も全24コイル使用で太コイルと細コイルの併用をしているが、細コイルが12個分、太コイルが6コイル分・2ユニットの計12個分という点が異なっている。スイッチA~Cは図25と同じで、警報ランプ70は細コイル使用状態に応じ、例えば所定風速未満であったり、スイッチAが遮断されているときに点灯する。
【0085】
この例も図24の例と同様に細コイルと太コイルの合計が24なので1コイルを1Vとすれば24コイル直列で24Vの発電になる。細コイルを遮断し(不使用とし)太コイルだけを全直列にすれば12V発電になり、細コイルを不使用にして太コイルの2ユニットを並列にすれば6Vになる。本例においても太コイルは細線径0.15mmの細線を40束にしたリッツ線でできたものを使っており、細コイルは同線径の細線を14束にしたリッツ線を用いている。
【0086】
細コイルと太コイルの併用は上記例に限らず、極微風に際してのみ細コイルを用い、それ以外は太コイル群内の接続切替で複数段切替を行って良い。
【0087】
(コイル間接続切替のタイミングと特性)
図19図23に例示した5段切替を例にして本発明の効果を検証する。この検証実験では正面が正方形枠体の1辺が1.5m、幅30cmのものにブレードの角度20°としたブレードを9枚設け、使用コイル数を各相12とし(図19図23の図示ではコイル数が24であるので、このコイル2つ分を一つとしたものがこの実験に用いたコイル体になる。従って、補コイルは図19図23では各相4つのコイルだが本検証では各相2コイルになる。故に第1システムは10コイルの直列、第2システムは8コイルの直列、第3システムは6コイルの直列、第4システムは4コイルの直列、第5システムは2コイルの直列になって、5段切替が行える。
【0088】
12V鉛バッテリーによる充電試験の結果は各システムにつき下表の通りになった。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0089】
以上のデータをグラフ化すると風速~回転数の関係は図26のようになり、風速~電流の関係は図27のようになり、風速~システム効率(=発電効率)の関係は図28のようになる。図27図28で第5システムが現れていないのは微風下における検証把握だからで、風速が10m/sを超えねば図に現れない為、省略しているに過ぎない。
【0090】
図28において、各風速におけるシステム効率が大きい方の段数システムに自動切替する。よって第1システムが第2システムを上回っている風速区間では第1システムを適用し、同じく第2システムが第3システムを上回っている風速区間では第2システムを、以下順次第3システム、第4システムに切り替えていく。こうして本発明の切替方法はブレードの能力を最大限に引き出している。尚、切り替えは自動の方が手動よりも実用的であるが、本発明は手動切り替えも該当する。また、切替はチャタリング防止の為に±0.5m/s程度のヒステリシスを設けるのが良い。すなわち、チャタリング防止の為に、風速が増す方向ではシステム切り換えは少し(例えば+5m/s)過ぎた風速で切り替え、逆に風速が下がる方向ではシステム切り換えは少し(例えば-5m/s)下がった風速にて切り替えることを推奨する。
【0091】
本発明者は各パラメータを検討してコイル接続状況毎にシステム効率が変わることを発見した。そしてコイル間切替装置の切り替えタイミングが、発電機のシステム効率の最大値となるようにすることがベストであることを発明した。風力発電機のシステム効率は下記式で求めることができるが、本願発明に紹介するコイル間切替装置はシステム効率の異なる3段以上の切り換えが可能となり、このシステム効率の切り換えで常にベストなシステム効率を提供できるようになる。
【0092】
システム効率は次式で得られる。
【数1】
【0093】
電流値で切り替える手順としては、例えば、各システムごとの風速変化に対するシステム効率のデータを取得しておけば各システムのシステム効率が最高になる電流値がわかるので、システム効率が最高になる様に電流値を検出し電流値で切り替えれば良い。更にチャタリングを防止するため切り替える電流値に最適なヒステリシスを設けて切り替えることが望ましい。電流値は発電機の出力側、つまり発電機と蓄電池の間に設ける。
【0094】
(風力発電ユニットの組み立て例)
図29に風力発電ユニットの枠体の構成例を示す。(a)は斜視図、(b)は上面図、(c)は正面図、(d)は側面図になる。本例では外観が薄型の直方体になるようにフレーム81で構成し正面及び背面については四隅に三角板材80を設けて枠体を補強し、正面及び背面は縦横に梁82を設け、その梁同士のクロスする中央部に後述の発電機シャフトが突き抜けるようにしている。この例では集風部を設けず構造簡単化を図っている。従って本例では集風部(風レンズ)が無いく、ユニットの各面が板材ではなくて骨組みの状態である。
【0095】
図30はブレード部を示し、(a)は正面図、(b)はブレード1枚の拡大図である。中央はシャフト36の位置、符号110はブレード1の回転範囲の仮想線、符号111は補強リブ、符号112、113は風向誘導部兼補強リブでブレード1端部を折り曲げた部分、符号114は発電機ユニットへの取り付け部である。本例ではブレード1が9枚あるが、寸法、形状、枚数はこれに拘らない。
【0096】
図31は発電機部分を示し、(a)正面図、(b)は側面図、(c)は斜視図になる。他の組み立て構造は図1の通りである。
【0097】
(本発明の風力発電機ユニットの設置例)
以上説明したように本発明によれば風力発電機ユニットの小型・軽量化に加えてブレードと発電機が一体化したホイールイン式となり薄型化が図れる。しかも極微風でも蓄電できるので設置場所が格段に広がる。
【0098】
図32図1の構造を用いて以下の各設置例向けに製作した風力発電機ユニット9の外観を示し、(a)は防護網無しの状態、(b)は防護網付きの状態の斜視図である。各符号は図1の説明に従うので省略する。図1に記載の無い符号67は発電機3のシャフトを筐体6に固定する為の梁であり、同じく符号69は防護網である。この図が示すように本発明の風力発電機ユニットは薄型の直方体(角に丸みはあるが)である。また、各風力発電機ユニットは発生電力を蓄える蓄電池(例えば鉛蓄電池)に導かれる。尚、以下の各設置例では防護網69の記載が無いが各図の煩雑化を防ぐためでありいずれも防護網69は前面部及び背面部の夫々に付設されている。
【0099】
(1)横並べ配置の例
図33に風力発電機ユニット9を横並べに3個連ねる例を示す。勿論設置の数に拘りはない。筐体は枠体だけでも良いし正面部、背面部を平板或いは湾曲の板状にして頂部、底部、両側面部は板が無くて骨だけでも良い。風洞を除く正・背面のほぼ全面は風レンズ(集風部66。図1図32参照)を形成するのが好ましい。また本例では図1に示したように正・背面どちらからの風も受けるようにしている。更に構成する各板材をスケルトンにするならば素通しで前方の景色を見ることが可能になる。この横並べ式は外壁に配置する若しくは外壁の一部を置き換えることで防風発電機として活用できる。尚、各風力発電機ユニットの高さは1~2mとし、幅はその高さの半分以下であれば塀、フェンス、垣根、柵(例えば鉄道柵)等の置き換えにも使えるし、遠方を見るときの視界を確保できる。各風力発電機ユニット9の寸法は縦及び横が150cm、幅が15cmとなっている。以下の各設置例に用いている風力発電機ユニット9の寸法にも共通している。
【0100】
(2)土台に乗せて配置する例
図34には風力発電機ユニット9を設置する土台10に横並び配置する例を示す。勿論、風力発電機ユニット9の個数は増やして良い。土台10の高さは例えば10cm、厚さは風力発電機ユニット9にほぼ合わせている。符号11は各風力発電機ユニット9に付設されて各ユニットの稼働状況を通信する無線LANの送受信機である。尚、各無線LAN装置11から得られるデータは蓄電池の状況と共に設置エリアにおいて監視できる。またこの例も他の例と同様にブレード1は両側からの風に対してシンメトリーであり、勿論正面部からも背面部からも風が流入する構造である。
【0101】
(3)縦積み配置の例
図35は縦積みの例で(a)は3つを縦積みに、(b)は6つを2×3の縦積みにしている。このように2段以上積み重ねることも可能である。符号12はこの縦積みの転倒防止用に支持機能のあるワイヤになるが、勿論転倒防止用指示手段は限定されない。
【0102】
(4)薄型発電機ユニットを2本のレール間に嵌め込む設置例
図36には薄型にした発電機ユニットの例を示し、図37にはそれをレール間に嵌め込んだ例を示す。この例ではユニットの幅は40cm、正面は略四角形で1辺が2m、梁94にてコアレス型発電機85とブレード86が孔部92内に納まるように配置されており、孔部92の中央直径が1.36mでその中央部の最狭孔部に向けて外枠側から次第に傾斜する集風部87にて風レンズを形成している。尚、符号88は動力伝達軸である。この発電機85自体は小型・軽量化に対応して軸方向の長さを縮めることができる。
【0103】
この薄型発電機ユニット95を道路側の傾斜面などの空間形成エリアに設置
する例を図37に示す。道路99の脇には山や台地、造成地の傾斜面、或いは空き地である箇所が多い。その場所に凹部97を形成したガイドレール96を地面に2本、互いに平行に差し込み、その凹部97間に薄型発電機ユニット95の両側面凸部98をブレード面が道路側(空間側)に向くように篏合させて設置する。これで土地の有効活用が図れる。尚、発電機ユニット95の背面から風を受けても良いし、前面から受けても良い。
【0104】
(5)いわゆるプロペラ型の設置例
図38に本発明の発電ユニットをいわゆるプロペラ型に用いた発電設備の他の設置例を示す。風の当たるエリア132に配置されてブレード120の後部にナセル123たるケーシング相当部が配置されている。ナセル123内に位置する発電機はブレード120に動力伝達軸129で繋がっている。ブレード120は風が当たると回転し、動力伝達軸129を通じてナセル123内に回転力が伝わる。ナセル123内には増速器を設けても良いが本発明装置では必須ではない。伝達された回転はコアレス型発電機127で電力に変換する。コアレス型発電機127内のコイルは円筒型に形成され(符号126)、内部の空間に前記の増速器やブレーキ装置128を納めることができる(図では説明簡単化の為、これら機器を直列に順次配列している)。ブレーキ装置128は暴風や点検時等において回転の抑制や停止を担う。但しブレーキ装置128は必須ではない。
【0105】
本例においては発電ユニットが支柱131上に設置されている。支柱131内は空洞になっていてケーブル類が通る。そしてコアレス型発電機127で変換された電気は支柱131内を出力ケーブル130経由で鉛蓄電池133を経由し或いは直接に出力ケーブル134を通じて利用先へ配電される。尚、トランスを介して昇圧する場合も本発明に含む。
【0106】
コアレス型発電機127の円筒状コイル体126には同軸上にコイル接続切替基板125が付設されていて、このコイル間接続切替基板125と円筒状コイル体126とは接続線124で接続されている。ナセル123には上面に監視用通信機122(送受信装置。アンテナ、センサ付き)と風向・ 風速計121が付設されており、監視用通信機122は地上(屋内)の監視センタ(図略)で 監視し、風向・風速計121の測定風速はブレーキ装置128及びコイル間接続切替基板125にも伝達される配線(図略)にしている。
【0107】
(6)いわゆる縦型式の設置例
本発明は上記の各設置例に見る水平軸タイプ(プロペラ式、オランダ式、多翼式等。水平軸を中心にブレードが回転するタイプ)でも垂直軸タイプ(サポニウス式、ダリウス式等、垂直軸を中心にブレードが回転するタイプ)のいずれにも適用できる。
【0108】
図39に縦型(ダリウス型)にブレード135を配置した事例を示す。図38と同じ符号は同じ部品を意味する。この例では発電機が支柱131内に納まっており風路に晒されていない。そして動力伝達軸129が発電機126の上方から上空に向けて飛び出した位置に複数枚のブレード135が例えば縦長になって風を横から受けて回転するように設けられている。若しユニットを増やしたければこのブレード135を高さ方向に追加設置することも可能である。
【0109】
(7)ビルの屋上に設置する例
図40はビル13の屋上に設置する例で(a)は屋上の角部に配置する例、(b)は屋上のほぼ全周に連設する例を示す。(a)のように角部に配置するときは図示のように2ユニットを90度配置することによって全方位の風を受けることができる。また(b)のようにすれば屋上のフェンス(転落防止柵)の代わりにもなる。
【0110】
(8)戸建て住宅へ設置する例
図41は戸建て住宅14への適用例であり、風力発電機ユニット9は塀の上に配列されて塀の一部を構成しているが、他にベランダにも設置されている。このようにベランダやバルコニーに設置することも有効である。尚、符号15はソーラーパネルであり、太陽の出ている間は太陽エネルギーを蓄電し、風の吹く間は風力エネルギーを蓄電するが、勿論両エネルギー同時蓄電にも対応可能である。
【0111】
(9)ソーラーパネルの防風外壁の利用例
図42はソーラーパネル15の防風外壁への利用例であり、このようにソーラーパネル15の群設置エリアの防風対策を兼ねてエリアを囲うように1~3段に連設することが有効である。
【0112】
(10)海岸への適用例
図43に海岸16への適用例を示し、海岸16においては防風林代わりになるが、更に道路17の海岸線の防風外壁にもなる。符号5は海岸地域に植えられた樹木であり、符号2は海からの風を示している。尚、砂は風洞に入っても通り過ぎる。用いるコアレス発電機の主軸にはオイルシールをして砂の混入を防いでいる。
【0113】
(11)道路への適用
図44に中央分離帯18に設置する例を示す。図が示すように風力発電機ユニット9には自然風2の他に自動車走行で生じる風4も入ってくる。符号19は蓄電設備であり、符号20は充電ステーションであり、風力発電機ユニット9から得られる電力を蓄電設備19に蓄えて利用できる。尚、これらの蓄電や充電にはワイヤレス電力伝送を用いても良い。
【0114】
ワイヤレス電力伝送の設備として、例えば電力ステーション20側に電源ユニット(電源を高周波に変換し、入力信号を受けて給電ヘッドに高周波を供給する装置)とその電源ユニットに接続された給電ヘッド(電磁結合方式により非接触で受電ヘッドに電力を伝送し、受電ヘッド(車等移動体側)からの各種信号を受信して電源ユニットに伝送する装置)を備え、移動体側に受電ヘッド(給電ヘッドからの電力を受電し、充電ユニットに電源を供給する装置で、充電ユニットから出力された各種信号を給電ヘッドに非接触で伝送する装置)とその受電ヘッドに接続された充電ユニット(移動体のバッテリーへの充電を行い、バッテリーの電圧をモニタリングしてその結果を受電ヘッド及びユニットに接続された外部制御機器に出力する装置)を備える。
【0115】
(12)橋への適用
図45に橋への適用例を示す。橋のタイプには限定されないが一般に橋のある場所は、風2の通り道になるので、本発明の風力発電機ユニット9設置に適している。この例では橋脚21上にかかっている主桁22の上面に床版23が敷かれて道路17を形成し、その床版23の両脇に横並びで風力発電機ユニット9が連設置されている。尚、符号24はタワー、符号25はワイヤでいずれも橋の構造物である。
【0116】
(総括)
以上の各例において用いた薄型風力発電機ユニットの高さは1.5mで設定しているがこの程度であれば大方の利用者の前方の視界を妨げない(スケルトンならば尚更)し、例えば日本の建築基準法で規定されるフェンス高さ(1.1m)超にも合致している。
【0117】
上記各例では昇圧回路も増速手段も使っていない。
上記各設置例のようにコイル間接続切替機能付きの風力発電機ユニットを同一エリアに複数設置することにより風力発電機ユニット毎の風の強さが異なっていても群としての発電電圧を揃えることができる。
【0118】
尚、本発明は極数切り替えではなく発電機の誘起電圧定数を切り替えるので、切り替え後も回転数が一定であれば出力電圧は変化するが周波数は変化しない。回転数が一定であれば出力電圧は出力電流により変化するが、周波数は出力電流によって変化しない。よって、周波数を検出することで発電機の回転数を知ることが可能である。ところでコアレスタイプの発電機は知られているがコイル切替を想定していなかった。その理由はコアレスタイプの発電機の大容量化は非常に難しく、大容量のコアレス発電機が開発されるまではコアレス発電機の端子切り替えの発想は生じなかったからである。
【0119】
コアドモータは微風対応を謳っていてもコギングがあるので微風領域では回転しない。それ故微風対応の為にモータ等の増速手段を併用することさえある(一般的に増速手段がある)。ところで一般に、風速の弱さに比例して電圧が低くなり、電圧が低いほど出力電流の取り出しがしにくい。そして蓄電池に蓄電できない(例えば鉛蓄電池は8V以下では蓄電できない)。コアレスモータならばコギングレスだから増速手段は不要だが、微風領域の電圧が低ければ電力を取り出しにくいことになるので昇圧回路が不可欠になってしまう。そこで発電機を構成するコイルを複数のコイル単位体で構成して、そのコイル単位体間の接続を直列、並列、直並列等の3段以上に切り替えることによって微風領域でも電圧を高める切替を可能にして微風領域でも電力取り出しができるようにしたのが本発明になる。コアドモータにおいてコイル接続切替をすることは知られているがコアドモータは増速手段を併用しなければコイル接続切替をしても微風領域に現実的には対応できないし、コアレスモータにおいて微風領域に対応できても昇圧回路の力を借りなければ発電電力を取り出せなかったのである。
【符号の説明】
【0120】
1‥‥ブレード、2‥‥風、3‥‥発電機、4‥‥風、5‥‥樹木、6‥‥筐体、7‥‥コイル間接続切替基板、9‥‥風力発電機ユニット、10‥‥土台、11‥‥無線LAN装置、12‥‥ワイヤ、13‥‥ビル、14‥‥住宅、15‥‥ソーラーパネル、16‥‥海岸、17‥‥道路、18‥‥中央分離帯、19‥‥蓄電設備、20‥‥充電ステーション、21‥‥橋脚、22‥‥主桁、23‥‥床版、24‥‥タワー、25‥‥ワイヤ、31‥‥円筒状コイル体、31a‥‥周壁、32‥‥アウターヨーク、33‥‥インナーヨーク、34‥‥軸受、35‥‥永久磁石、36‥‥シャフト、37‥‥ケーシング、61‥‥正面部、2‥‥背面部、63‥‥風路、64‥‥頂部、65‥‥底部、66‥‥集風部、67‥‥梁、68‥‥側面部、69‥‥防護網、71‥‥制御部、72‥‥スイッチ回路部、80……三角板材、81……フレーム、82……梁、311‥‥円筒状コイル体の仮想軸、312‥‥コイル単体、313‥‥内側円筒状コイル体、314‥‥中間円筒状コイル体、315‥‥外側円筒状コイル体、316‥‥線材、317‥‥銅細線、318‥‥エナメル層、319‥‥繊維状物、A、B‥‥コイル群、C、D‥‥スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図20
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図45