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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】紐体を用いた連結体
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/20 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
D04B21/20 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024015446
(22)【出願日】2024-02-05
【審査請求日】2024-05-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114606
【氏名又は名称】モリト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】小萩沢 研一郎
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-105816(JP,A)
【文献】特開2013-146119(JP,A)
【文献】特開2001-193344(JP,A)
【文献】特開2013-019074(JP,A)
【文献】実開昭57-192987(JP,U)
【文献】実開昭62-015591(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0197294(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 21/20
F16B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一平面上で平行となり少なくとも一対で構成される第1の紐と、隣接し対となる前記第1の紐に互いに交互に交差しながらそれぞれの前記第1の紐に編まれる一対の第2の紐とが結着して紐部本体を構成するとともに、前記紐部本体の編成方向における両端部の位置において、前記第2の紐が互いの前記第1の紐に交差して編まれることなく、いずれか一方の前記第1の紐に沿って編まれることで該第1の紐と第2の紐が結着せずにスリット状に形成される長手方向の両端部の穴部を有している紐と、
前記紐体の長手方向一方の端部に固定され、先端にフック形状のフック部(31)を備えた一方の固定部材(30)と、
前記紐体の長手方向他方の端部に固定され、紐体が取り付けられる被取付部に固定される固定片(22)備えた他方の固定部材(20)と、
を具備し、
前記一方の固定部材(30)は、前記フック部(31)の基部に一体に設けられる収容基部(33)と収納基部(33)の上部に着脱自在に係合して設けられる収納蓋(34)とを有し、収納蓋(34)の内部における収納基部(33)の上面にはボス部(32)が立設され、収納蓋(34)には収納基部(33)との係合位置において前記ボス部(32)の先端が係合挿通される挿通孔(35)が形成され、ボス部(32)には、一方の固定部材(30)の内部に挿入された紐体の長手方向一方の端部の穴部が貫通係合されていることを特徴とする連結体
【請求項2】
前記他方の固定部材(20)は、収容基部と収納基部の上部に着脱自在に係合して設けられる収納蓋とを有し、収納蓋の内部における収納基部の上面にはボス部が立設され、ボス部には、他方の固定部材の内部に挿入された紐体の長手方向他方の端部の穴部が貫通係合され
他方の固定部材(20)の外壁には、一方の固定部材(30)との重ね位置において、前記一方の固定部材(30)の前記フック部(31)の先端を挿入し収納できる収納口(21)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の連結体。
【請求項3】
前記第1の紐は、伸縮性を有する素材よりなることを特徴とする請求項1又は2に記載の連結体
【請求項4】
請求項1または2に記載の連結体に用いる紐体は、
同一平面上で平行となり複数対で構成される第1の紐と、隣接し対となる前記第1の紐に互いに交互に交差しながらそれぞれの前記第1の紐に編まれる一対の第2の紐と、前記第2の紐に編まれる前記一対の第1の紐を除く各第1の紐に編まれる第3の紐と、前記第1の紐のそれぞれに渡る幅長となり前記第2の紐と第3の紐とともに編まれる一対の第4の紐が結着して紐部本体を構成するとともに、
前記紐部本体の編成方向における少なくとも一部の位置において、前記第2の紐と前記第4の紐が隣り合う一対の前記第1の紐に交差して編まれることなく、該第2の紐はいずれか一方の前記第1の紐に沿って編まれ、該第4の紐は編み幅を縮めることで、該第1の紐と第2の紐及び第4の紐が結着せずにスリット状の穴部を形成していることを特徴とする連結体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紐体を用いた連結体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、両端部に固定部材を備えたロープ状部材がある。例えば、図10に示すように、車のトランクの床下収納部の蓋を持ち上げ、その状態を保持するため、ロープ本体の一方の端部が蓋の底部と接続される固定部材を備え、他方の端部が車内の任意の部品と係合できるように形成される係止部材が設けられるロープ状部材が知られている。
【0003】
このロープ状部材は、端部の固定部材や係止部材が、例えば樹脂素材とされ、これとは異素材のロープ本体の端部に対し固定されるが、その固定構造は、ロープ本体端部を芯にしたインサート成形などの樹脂一体化成形や、固定部材等を分割構造としてロープ本体端部を挟み、熱溶着や接着剤にて一体化固定とされている。さらに、固定部材等に対して強固にロープ本体を連結固定させるために、ロープ本体端部に結び目を作りロープ本体より太く成形したり、ロープ本体にカシメカンやカシメ爪などの金属製部材をかしめて固定する、或いはロープ本体の端部を折り返して縫製し輪を設けるなど、固定部材等からの抜け止め構造を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-191816号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように金属製部品をかしめたり、縫製する、結ぶ、などの工程やインサート成形や接着剤を用いる工程などがあるため、ロープ状部材の製作は煩雑であり、完成までに時間を要する欠点を有し、部品点数が増えることによる製造コストが嵩むなどの問題があった。また、上記した工程でのかしめ具合にバラつきが発生する、結び目の位置が定まらないなど、ロープ状部材としての品質が一定に保てないなどの問題点があった。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、簡単な構造で製作を容易としコストダウンを図るとともに、強固な耐久性を持つ高品質な、固定部材を備えた連結体とそれを構成する紐体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の連結体に用いる紐体1は、同一平面上で平行となり少なくとも一対で構成される第1の紐11と、隣接し対となる前記第1の紐11に互いに交互に交差しながらそれぞれの前記第1の紐11に編まれる一対の第2の紐12とが結着して紐部本体を構成するとともに、
前記紐部本体の編成方向における少なくとも一部の位置において、前記第2の紐12が互いの前記第1の紐11に交差して編まれることなく、いずれか一方の前記第1の紐11に沿って編まれることで該第1の紐11と第2の紐12が結着せずにスリット状に形成される穴部13を有していることを特徴とする。
【0008】
この紐体10では、その長手方向の少なくとも一部の位置において、編み方向となるスリット状の穴部13が形成されて編成される。すなわち穴部13を備えた紐体10となる。
この紐体10によれば、穴部13を用いることで、紐体10自体を非取付体に対して掛止を可能とし、例えば物を引っ掛けるような使用用途として用いることができ、さらには、この穴部13に対してネジやその他の締結部材を挿通して使用することで、紐体10の固定を可能とする。
【0009】
本発明の連結体に用いる紐体10は、上記の紐体10であって、
前記第1の紐は、伸縮性を有する素材よりなることを特徴とする。
【0010】
この紐体10では、例えばポリウレタンや天然ゴムなどの素材を第1の紐11として構成することで、紐体10が伸縮性を有することとなる。これにより、紐体10の両端の距離が伸縮自在となって、その伸縮を利用するような用途に適する部材となる。
【0011】
本発明の連結体に用いる紐体10は、上記の紐体10であって、
前記穴部13は、前記紐部本体の長手方向の両端部にそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0012】
この紐体10では、穴部13を紐体10の両端に備える構成となることで、例えば伸縮性を有する第1の紐11であるとすれば、その両端の穴部13の間隔距離が伸縮自在となって、その伸縮を利用するような用途に適する部材となる。
【0013】
本発明の紐体を用いた連結体は、上記の紐体10を用いた連結体1であって、
前記穴部13に挿通されるボス部32を備え、前記穴部13の周囲を覆い、前記紐部本体の一部に固着される固定部材20,30を備え、
前記紐体10が取り付けられる被取付部に対し、前記固定部材20,30にて固定されることを特徴とする。
【0014】
この紐体を用いた連結体1では、紐体10自体に形成される穴部13を用いて固定部材が取り付けられ、固定部材のボス部32を穴部13に挿通することから、従来のような金属製部品のかしめや縫製などを不要とし、また結び目などを形成することもなく、紐体10に対して穴部13にて掛止となり、且つ抜け止めとなって、紐体10に固定部材が取り付けられることになる。これにより、連結体1の製作が容易なものとなり、コスト減を実現できる。
【0015】
本発明紐体を用いた連結体は、上記の紐体10を用いた連結体であって、
前記穴部13に挿通されるボス部32を備え、前記穴部13の周囲を覆い、前記紐部本体の一部に固着される固定部材20,30を備え、
前記紐体10が取り付けられる被取付部に対し、前記固定部材20,30にて固定されることを特徴とする。
【0016】
この紐体を用いた連結体1では、紐体10の両端に形成される各穴部13のそれぞれに固定部材20,30が取り付けられ、固定部材のボス部32を穴部13に挿通することから、従来のような金属製部品のかしめや縫製などを不要とし、また結び目などを形成することもなく、紐体10に対して穴部13にて掛止となり、且つ抜け止めとなって、紐体10に固定部材が取り付けられることになる。これにより、連結体1の製作が容易なものとなり、コスト減を実現できる。そして、両端に固定部材20,30が設けられることで、例えば両端にフック形状の固定部材が設けられる構成とされれば、両端がそれぞれに掛止可能な部位を備えた連結体1となり、様々な用途での掛け止めや連結、結束などを可能とする部材とすることができる。
【0017】
本発明の紐体を用いた連結体は、上記の紐体を用いた連結体であって、
前記固定部材20,30の一方が、先端にフック形状のフック部31を備えたことを特徴とする。
さらに、前記固定部材20,30の他方が、上記紐体が取り付けられる被取付部に固定される固定片22を備えたことを特徴とする。
【0018】
この紐体を用いた連結体では、一方の固定部材の形状をフック状としており、紐体10の端部をいずれの個所にも引っ掛けて、連結や結束などを容易に可能とする。例えば、自動車Mの後部に構成されるトランク4内における床下収納部の蓋板2の持ち上げ保持用ロープとすることができる。
【0019】
本発明の紐体を用いた連結体は、上記の紐体を用いた連結体であって、
前記穴部13は、前記紐部本体の端部において、間隔をあけて2ヶ所形成されており、
前記端部における当該2ヶ所の穴部13を重ねて挿通されるボス部53を備え、前記両穴部13の周囲を覆い、前記紐部本体の一部に固着される固定部材50を備え、
前記紐部本体の端部が折り返されて前記固定部材50にて輪62が形成されていることを特徴とする。
【0020】
この紐体を用いた連結体では、間隔をあけて2ヶ所に穴部13が形成され、それら穴部13を重ねて固定部材50にて覆われ固定される。重ねられた2つの穴部13は、固定部材50のボス部53が貫通し、この1つのボス部53に2つの穴部13が通されて一体化となる。これにより紐体10の端部は、2つの穴部13の間が折り返し部61となり、固定部材50よりも外側に輪62が形成される。従来では、このような形状を縫製などの工程を経ることで得ていたが、本発明では2つの穴部13を編成することで構成させることが可能となる。
【0021】
本発明の連結体に用いる紐体10Aは、同一平面上で平行となり複数対で構成される第1の紐11と、隣接し対となる前記第1の紐11に互いに交互に交差しながらそれぞれの前記第1の紐11に編まれる一対の第2の紐12と、前記第2の紐12に編まれる前記一対の第1の紐11を除く各第1の紐11に編まれる第3の紐14と、前記第1の紐11のそれぞれに渡る幅長となり前記第2の紐12と第3の紐14とともに編まれる一対の第4の紐15が結着して紐部本体を構成するとともに、
前記紐部本体の編成方向における少なくとも一部の位置において、前記第2の紐12と前記第4の紐15が隣り合う一対の前記第1の紐11に交差して編まれることなく、該第2の紐12はいずれか一方の前記第1の紐11に沿って編まれ、該第4の紐15は編み幅を縮めることで、該第1の紐11と第2の紐12及び第4の紐15が結着せずにスリット状の穴部13を形成していることを特徴とする。
【0022】
この紐体10Aでは、第3の紐14と第4の紐15とを増設することで、幅広の紐体10Aを得ることができる。そして上記紐体10と同様に、第2の紐12の交差して編まれない個所があることで、スリット状の穴部13を形成でき、すなわち穴部13を備えた紐体10Aが得られる。
【0023】
本発明の連結体に用いる紐体10Aは、上記の紐体10Aであって、
前記第1の紐11は、伸縮性を有する素材よりなることを特徴とする。
【0024】
この紐体10Aでは、第1の紐11を伸縮性を有する素材としたことで、紐体10Aとしても伸縮性を有するものとなる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、第2の紐の編み方にて、紐体の一部に、編み方向となるスリット状の穴部を形成することができる。
これにより、紐体自体に別構成の部材を固定することで穴を設けることなく、紐体自体に穴部を備えており、例えばこの穴部を固定部分として利用したり、単体での利用範囲が広がる効果が得られるものである。
【0026】
また、第1の紐を伸縮性のある素材で構成することで、紐体が長手方向に伸縮自在となる。これにより、穴部に固定部材などを設ける構成とすることで、例えば紐体の一端に固定部材を備える構成であれば、その固定部材に対して伸縮し、物品の結束などを容易に行うことが可能となる。
【0027】
さらに、紐体の両端に穴部を設けることができ、これら穴部を用いて非取付体に取り付け、例えばビス止めなどを行うことができる。
【0028】
また、本発明の紐体を用いた連結体によれば、連結体を構成する固定部材には、紐体の穴部を貫通するボス部を備えたことで、紐体に対する取り付けを容易なものとすることができ、従来のようなカシメや接着、結び目、縫製などの煩雑な工程や別部品を不要として一体固定でき、製造工程の手間を省略化することが可能となるという製作の容易さ、そして、従来品に比べて大幅なコストダウンを可能とすることができる。
【0029】
さらに、紐体を用いた連結体によれば、穴部に固定部材のボス部を貫通するのみという簡素な構造ながら、強固に固定できる。
【0030】
また、固定部材の部品点数も少なく、紐体ともに簡易な構造であることから、誰でもどこでも製造・加工ができる。
【0031】
さらに、本発明の紐体を用いた連結体によれば、穴部を間隔をあけて2ヶ所に設けて、それら穴部を重ねて固定部材にて覆って固定し構成することができ、これにより紐体の端部は、2つの穴部の間が折り返し部となり、固定部材よりも外側に輪が形成される構造を得られる。従来では、このような形状を縫製などの工程を経ることで得ていたが、本発明では2つの穴部を編成することで構成させることが可能となり、製造工程の手間の省略化が可能となり、すなわち編み方で様々な形態の紐体を得られ、それを用いる様々な利用形態が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明に係る連結体に用いる紐体の全体図を(a)に、紐体の一部であるA部分を拡大し紐体を構成する各紐の概念図を(b)に示した図である。
図2】紐体の編み方の概念図を説明する拡大平面図である。
図3】(a)は紐体の表面、(b)は紐体の裏面を示し、それぞれ穴部の形成される紐体の端部を拡大した写真である。
図4】紐体の変形例を示す拡大平面図である。
図5】変形例の紐体の編み方の概念図を説明する拡大平面図である。
図6】(a)は紐体の表面、(b)は紐体の裏面を示し、それぞれ穴部の形成される紐体の端部を拡大した写真である。
図7】本発明に係る紐体を用いた連結体の斜視図である。
図8】連結体の分解斜視図である。
図9】固定部材の固定方法を説明する断面図である。
図10】連結体を自動車に採用した使用状態を示す斜視図である。
図11】連結体の使用状態の拡大斜視図である。
図12】紐体の他の実施形態を示す斜視図である。
図13】他の実施形態の紐体を用いた連結体の斜視図である。
図14】他の実施形態の紐体を用いた連結体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明に用いる紐体の全体図を(a)に、紐体の一部であるA部分を拡大し紐体を構成する各紐の概念図を(b)に示した図、図2は、紐体の編み方の概念図を説明する拡大平面図である。
紐体10は、任意の長さで、その両端に穴部13が形成されるものであり、好ましくは長手方向に伸縮自在とされる。
この紐体10をより詳細に説明すると、同一平面上に複数の平行な第1の紐11が一定間隔をおいて配置され、隣接する一対の第1の紐11,11に編まれるそれぞれの第2の紐12が互いに交差しながら隣接側の第1の紐11に編まれた後、再び互いに交差して元の第1の紐11に編まれることで、第1の紐11と第2の紐12とが結着することにより構成されている。すなわち、一対の第1の紐11に、一対の第2の紐12を絡ませ編む込み、これら合計4本の紐を組み合わせることで、紐体10が形成される。
【0034】
図2は、紐体10が編み機で形成される際の概念図である。紐体10は、対となる2本の第1の紐11及び2本の第2の紐12が組み合わさることで、紐体10が形成されることを示している。図2中、黒の点は編み針を表したものであり、縦列で各紐11,12の各編み針への推移を示し、各縦列のうちの2列が実際の紐体10としての編み位置となる。図2に示す両側のA列(A1)とB列(B1)の各第1の紐11が芯となり、図中A1~A3とB1~B3とは同じ編み針を示すもので、紐毎、編み位置毎を分解したものを示しており、A列(A1,A2,A3)に左側第1の紐11と左側第2の紐12の左方、B列(B1,B2,B3)に右側第1の紐11と右側第2の紐の右方、そして左右の第2の紐12は、A列とB列とを跨がって(図中A2とB3及びB2とA3)交差しながら、一対の第1の紐11に対して一対の第2の紐12が編まれることとなって一本の紐体10となる。
【0035】
この紐体10の編成において、任意の個所となる、少なくとも1ヶ所には、対となる左右の第2の紐12が、隣接する互いの第1の紐11、11に交差して編まれることなく、つまり上記したA列とB列とに渡らずに、一方の第1の紐11に沿って編まれることで、第1の紐11と第2の紐12とが結着しないことでスリット状の穴部13が形成される。すなわち、図2において、第2の紐12がA列とB列に跨がらず編み方向である縦一列に沿う個所を設け、第2の紐12同士が互いに交差しない箇所が穴部13となる。
図1に示す本実施形態では、穴部13が紐体10の長手方向の両端部に形成されている。
【0036】
なお、紐体10は、第1の紐11の素材により、伸縮性を持たせたり、持たせなかったりすることが可能となる。伸縮性を持たせたい場合には、例えば第1の紐11にポリウレタンや天然ゴムなどの伸縮自在の素材を好適に使うことができる。また、第2の紐12には、ポリエステル、ナイロン、マルチフィラメント、ポリプロピレン、アラミド繊維、ポリエチレンなどの非伸縮性素材を好適に使うことができる。紐体10として伸縮性を持たせたくない場合には、第1の紐11に、第2の紐12に用いる素材と同様のポリエステル、ナイロン、マルチフィラメント、ポリプロピレン、アラミド繊維、ポリエチレンなどの非伸縮性素材を使用する。
【0037】
この実施形態の紐体10を図3の写真で示す。図3(a)は紐体10の表面、図3(b)は紐体10の裏面を示し、それぞれ穴部13の形成される紐体10の端部を拡大したものである。
【0038】
この紐体10によれば、編成方向のいずれか一部において、第2の紐12の編み方を交差させないことで、穴部13を形成することができ、紐に穴部13を備えたものが得られる。また、穴部13は、いずれの位置であってもよく、上記したような端部の他、中途位置にあってもよく、両端にそれぞれ設けてもよく、さらには複数個所に設けられることとしてもよい。
【0039】
図4は、紐体の変形例を示す拡大平面図である。
紐体は、紐の組み数を増やすことで、広幅に形成することが可能である。
図4に示すように、第1の紐11を複数対、第2の紐12を一対、そして第3の紐14として第1の紐の数から第2の紐を減じた数、さらに第4の紐15を一対用い、第1,第3の紐の編成本数を横に増やすことで編まれる幅長を増加させ、紐体10Aとしてテープ状或いは帯状の広幅に形成することができる。
【0040】
図5に示すように、この変形例における紐体10Aにおいても、穴部13の形成は上記同様であり、対となる第2の紐12の交差しない個所を設けることで得られる。また、第3の紐14は、縦一列に編まれ(図中A、B、E、F)、芯となる第1の紐11と重なることで紐体としての幅構造を形成することが可能となる。
そして、第4の紐15が各縦列A~Fを横断することにより、第1、第2、第3の各紐を束ねるように編成し、この第4の紐15が対となって交互に左右方向へ編まれることで幅広構造の紐体10Aとして形作られる。なお、図5に示す通り、第4の紐15は、穴部13となる位置においては互いに交差しないように、この穴部13の位置を避けて編み幅を縮められている。
【0041】
この図5における各縦列は、同じ符号、例えばAであれば各Aが同一の縦列を示し、本実施形態では、A~Fで付した6列の幅の紐体となる。各縦列は上述と同様に編み針の列である。
この変形例においても、第1の紐11の素材を伸縮性のある素材とすることで、紐体10Aに製作された状態で伸縮性のある構成となり、伸縮性のない素材とすれば伸縮を起こさない紐体10Aとなる。
【0042】
この変形例の紐体10Aを図6の写真で示す。図6(a)は紐体10Aの表面、図6(b)は紐体10Aの裏面を示し、それぞれ穴部13の形成される端部を拡大したものである。
【0043】
この紐体10Aによれば、編成方向のいずれか一部において、第2の紐12の編み方を交差させないことで、穴部13を形成することができ、所定幅のテープ状に編まれる紐に穴部13を備えたものが得られる。また、穴部13は、いずれの位置であってもよく、複数個所に設けられることとしてもよい。
【0044】
なお、上記した紐体10,10Aの編成は、編み機を用いて得られるが、編み機は左右横方向に多数の編み針を配設して構成されていることから、同時に多数の紐体10,10Aを編むことが可能となっている。
【0045】
次に、上述した紐体10を用いた連結体1について説明する。
図7は、連結体の斜視図である。
連結体1は、上述した紐体10を用い、紐体10の両端に穴部13が形成され、この紐体10の両端に固定部材20,30をそれぞれに設けた構造とされる。具体的には両端の2つの穴部13を挿通する備品を介して、かつ穴部13を被覆するかたちで、固定部材20及び30がそれぞれ固着されている。
本実施形態では、一方の固定部材30がフック形状をなし、他方の固定部材20が羽根板形状をなしている。
【0046】
図8は、連結体1の分解斜視図、図9は、固定部材の固定方法を説明する断面図である。
以下、一方の固定部材30であるフック形状の固定部材30について説明する。
連結体1は、上述した紐体10の端部に形成された穴部13に固定部材30を組み付けた構造とされる。
固定部材30は、J字状に形成されたフック部31を備えた収容基部33と、この収容基部33に固着される収納蓋34とで略構成され、これら収容基部33と収納蓋34とで略円柱状に構成されるように、半割り形状をなしている。
【0047】
収容基部33は、略中央に柱状のボス部32が立設される。また、収容基部33のフック部31が延設される方向と反対方向に挿通溝39が形成される。収納蓋34は、ボス部32の先端が挿通される挿通孔35が形成される。また収納蓋34には一対の爪36が突設され、収容基部33に形成される一対の係合溝38に係合するようになっている。さらに収納蓋34にも挿通溝39が形成される。
【0048】
収容基部33のボス部32が、紐体10の穴部13を貫通することで、紐体10は抜け止めとなって、互いが取り付け状態となる。そして、紐体10が取り付けられた状態で収納蓋34が収容基部33に取り付けられ、ボス部32の先端が挿通孔35に挿通され、各爪36が係合溝38に嵌入し係合片37に係合することで、収容基部33と収納蓋34とは一体化される。紐体10は、それぞれの挿通溝39,39を貫通し延出する。
【0049】
これにより紐体10の端部に、固定部材30が取り付けられる。
なお、収容基部33と収納蓋34とは、上記のように爪36と係合片37との係合状態で一体化されるが、さらに接着などを行うことで強固に固定することとしてもよい。
【0050】
固定部材20は、紐体10との固定方法が上記固体部材30の固定方法と同様であるため、その説明は省略する。固体部材20は、外形状として上記J字状のフック部31に代えて、一対の羽根状に形成される固体片22を備える。これら固定片22には、取付部に対してネジ固定を可能とするための挿通孔23を有した構成とされる。
なお、この固定部材20は、後述するが、上記固定部材30のフック部31先端が装着可能な凹溝状の収納口21を有している。
【0051】
図10は、連結体1を採用した使用状態を示す斜視図、図11は、連結体1の使用状態の拡大斜視図である。
上記連結体1は、具体的な使用例として、自動車Mの後部に構成されるトランク4内における床下収納部の蓋板2の持ち上げ保持用ロープとされる。
【0052】
連結体1は、トランク4内の蓋板2の底面に取り付けられ、具体的には、紐体10の一方の端部に接続されている一対の固定片22を備えた固定部材20が、ネジ24にて非取付部である蓋体2の底面へ固定されており、紐体10の他方の端部に接続されているフック形状の固定部材30が、後部座席5のヘッドレスト支柱3に係着される。図10,11は、蓋体2が開放されて持ち上げられた状態を示し、連結体1によって、その開放状態を保持されるようになっている。なお、紐体10は、伸縮自在な素材を使用することで、固定側である固定部材20に対し、係着側である固定部材30が延長し、容易にフック部31を支柱3に掛けることが可能となっている。
【0053】
固定部材20には、固定部材30のフック部31の先端が収納できるよう、収納口21が形成されていて、連結体1の未使用時には、収納口21にフック部31の先端を挿入し、収納できるようになっている。このとき紐体10はその長さが縮んだ状態であり、蓋板2の底面側に収納状態で配置される。
【0054】
固定部材20及び30の材質は、軽量性、生産容易性、耐久性、コスト面からポリアセタール(POM)樹脂を代表とする樹脂で構成するのが望ましい。
【0055】
また、樹脂を使うことで、インサート成型による固定部材20及び30の紐体10への固定も可能となり、この場合成型時に穴部13にも樹脂が回り込み、抜け強度が大幅に向上して一体化される。
【0056】
なお、上述した固体部材20,30の形状は、上述した形状には限定されず、様々な形状とすることが可能であり、紐体10に対してその両端にフックを備える構成や、両端に翼状の固定片を備えた構成など、紐体10の穴部13に貫通する部位を備え、この穴部13を被覆するかたちを備えた部材であれば、その部材と紐体10との連結固定は容易なものであり、紐体10との一体化構造、すなわち連結体1を容易に得ることが可能である。
【0057】
次に、本発明の他の実施形態について、図12図14を参照しながら説明する。
この実施形態は、図12にあるように、穴部13が紐体10の一方の端部に、間隔をあけて2カ所形成されている。そして、図13にあるように、当該紐体10の端部を折り返して輪状にし、固定部材50によって固定することにより、当該紐体10の端部に折り返し部61を形成して輪62を形成する。すなわち、固定部材50は、図14に示すように、基体51と蓋体52から構成され、基体51の略中央部に設けられた突起状のボス部53に、当該2カ所の穴部13、13をそれぞれ貫通させた後、基体51に蓋体52が装着されることにより、固定部材50がロープ本体10の端部と固着される。蓋体52は、ツメ部54を備え、ツメ部54は基体51内に形成された係合溝55及び係合片56に係合するようになっていて、基体51と蓋体52とが固着されるようになっている。紐体10は、基体51及び蓋体52の上下両端にそれぞれ形成された挿通口57を通して固定部材50から外に延出するようになっている。
【0058】
この実施形態では、輪62が形成された紐体10の端部を、例えば自動車後部のハッチバック内部上方に設けられたフック状の係合器具(図示せず)などに係合させることにより、床収納庫の蓋が上方に開けられた状態で保持する等の使用形態で用いることができる。
或いは、輪62を紐体10の両端に形成するように固体部材51を設けることで、この両端の輪62にて掛止することができ、且つ連結することが可能となり、様々な用途への連結部品とすることができ、さらには、携帯型端末のストラップとして、すなわち手首などへの装着のための輪部なども構成することが可能である。
【0059】
以上、本発明の各実施形態について、自動車のトランクの床下収納部の蓋の持ち上げ保持用ロープを例にとって説明したが、その用途は多岐にわたり、固定部材を備えたロープが必要な様々な分野での応用利用が可能である。また、固定部材の形状や紐体10に対する位置についても上記した形状に限定されることはなく、上述したフック状や羽根板状の他に、円形や四角形のリング形状や板状、カラビナなどの部材など紐体10のいずれかの位置に編成によって形成される穴部13を貫通する部位を備える部材であれば、どのような形状であっても良い。
【0060】
また、固定部材20,30,50を備えない紐体10の単体としても、穴部13を備えた可撓性の長尺体であり、その穴部13を利用して、非取付体に対してビス固定やボルト固定などが可能であり、また穴部13の補強をパイプスペーサなどを挿着して行うことも可能であって、穴部13の位置で固定され、その固定位置から紐体が延長するような構造物など、様々な利用用途が考えられる。
【符号の説明】
【0061】
1…連結体
10,10A…紐体
11…第1の紐
12…第2の紐
13…穴部
14…第3の紐
15…第4の紐
20,30,50…固定部材
32,53…ボス部
62…輪
【要約】
【課題】簡単な構造で製作を容易としコストダウンを図るとともに、強固な耐久性を持つ高品質な、固定部材を備えた連結体とそれを構成する紐体を提供する。
【解決手段】同一平面上で平行となり少なくとも一対で構成される第1の紐11と、隣接し対となる第1の紐11に互いに交互に交差しながらそれぞれの第1の紐11に編まれる一対の第2の紐12とが結着して紐部本体を構成するとともに、紐部本体の編成方向における少なくとも一部の位置において、第2の紐12が互いの第1の紐11に交差して編まれることなく、いずれか一方の第1の紐11に沿って編まれることで第1の紐11と第2の紐12が結着せずにスリット状に形成される穴部13を有している。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14