(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】浮遊型消波装置
(51)【国際特許分類】
E02B 3/06 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
E02B3/06 302
(21)【出願番号】P 2024040685
(22)【出願日】2024-03-15
【審査請求日】2024-08-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596175326
【氏名又は名称】ヤマト発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109368
【氏名又は名称】稲村 悦男
(72)【発明者】
【氏名】金子 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】古沢 圭介
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-178816(JP,U)
【文献】特開2001-164536(JP,A)
【文献】特開2001-164537(JP,A)
【文献】特開2002-309541(JP,A)
【文献】特開2004-051051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04 - 3/14
B63B 22/00 - 22/28
A63K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
競艇場等の波を減衰するのに使用する浮遊型消波装置において、
網状体で構成されその網目を透過させて波を減衰させる外筒と、
網状体で構成され
前記外筒の前記網目を透過した波を自己の網目を透過させて減衰させる複数の内筒
から成り前記外筒内に束となって収納される複数の内筒群と、
複数の前記内筒内に挿入される棒状のフロート部材と、
前記外筒の長手方向に沿って前記外筒内に束となった前記内筒群と交互に配設される複数のフロートと、
複数の前記内筒及び前記フロートが内部に収納された状態の前記外筒の端部がそれぞれ嵌合される開口を備えて他面を閉じた有底中空円筒形状を呈する一対のエンドカバーと、
網状体で構成され前記外筒及び前記内筒の前記網目を透過した波を自己の網目を透過させて減衰させるものであって、前記外筒内に
該外筒の長手方向に直交する断面視において前記競艇場等の水面と平行の並びを列とした場合の同列で並設された
一の前記内筒及び他の前記内筒と、この並設された2つの前記一の前記内筒と前記他の前記内筒の間の上方に位置する前記内筒とについて、前記一の前記内筒と
前記上方に位置する前記内筒とに及び
前記他の前記内筒と
前記上方に位置する前記内筒とにそれぞれ外方から跨った状態で複数の固定部材により固定され、それぞれ押し寄せる波側の
前記水面と成す角度が
初めに波が透過する一方が鈍角でありこの一方を前記波が透過した後に透過する他方が鋭角であって前記外筒の長手方向に直交する断面視がハの字形状を呈する一対の透過波減衰部材とを備えたことを特徴とする浮遊型消波装置。
【請求項2】
競艇場等の波を減衰するのに使用する浮遊型消波装置において、
網状体で構成されその網目を透過させて波を減衰させる外筒と、
網状体で構成され
前記外筒の前記網目を透過した波を自己の網目を透過させて減衰させる複数の内筒
から成り前記外筒内に束となって収納される複数の内筒群と、
複数の前記内筒内に挿入される棒状のフロート部材と、
前記外筒の長手方向に沿って前記外筒内に束となった前記内筒群と交互に配設される複数のフロートと、
複数の前記内筒及び前記フロートが内部に収納された状態の前記外筒の端部がそれぞれ嵌合される開口を備えて他面を閉じた有底中空円筒形状を呈する一対のエンドカバーと、
網状体で構成され前記外筒及び前記内筒の前記網目を透過した波を自己の網目を透過させて減衰させるものであって、前記外筒内に
該外筒の長手方向に直交する断面視において前記競艇場等の水面と平行の並びを列とした場合の同列で隣り合って並設される2本の前記内筒の上に1本の前記内筒を載置した状態で、一方を
前記並設された前記2本の前記内筒のうちの一方の前記内筒の表面部と
前記載置した前記内筒の表面部とに、他方を
前記並設された前記2本の前記内筒のうちの他方の前記内筒の表面部と前記載置した前記内筒の表面部とにそれぞれ外方から跨った状態で複数の固定部材により固定され、それぞれ押し寄せる波側の
前記水面と成す角度が
初めに波が透過する一方が鈍角でありこの一方を前記波が透過した後に透過する他方が鋭角であって前記外筒の長手方向に直交する断面視がハの字形状を呈する一対の透過波減衰部材とを備えたことを特徴とする浮遊型消波装置。
【請求項3】
競艇場等の波を減衰するのに使用する浮遊型消波装置において、
網状体で構成されその網目を透過させて波を減衰させる外筒と、
網状体で構成され
前記外筒の前記網目を透過した波を自己の網目を透過させて減衰させる複数の内筒
から成り前記外筒内に束となって収納される複数の内筒群と、
複数の前記内筒内に挿入される棒状のフロート部材と、
前記外筒の長手方向に沿って前記外筒内に束となった前記内筒群と交互に配設される複数のフロートと、
複数の前記内筒及び前記フロートが内部に収納された状態の前記外筒の端部がそれぞれ嵌合される開口を備えて他面を閉じた有底中空円筒形状を呈する一対のエンドカバーと、
網状体で構成され前記外筒及び前記内筒の前記網目を透過した波を自己の網目を透過させて減衰させるものであって、
前記外筒の長手方向に直交する断面視において前記競艇場等におけるそれぞれ押し寄せる波側の水面と成す角度が初めに波が透過する一方の斜面が鈍角でありこの一方を前記波が透過した後に透過する他方の斜面が鋭角であって底面が前記水面と平行である略三角形状を呈し、
前記競艇場等の前記水面と平行の並びを列とした場合の複数列の前記内筒を包む透過波減衰部材とを備えたことを特徴とする浮遊型消波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、競艇場、プール、その他河岸、湖、貯水池、海などに設置される浮遊型消波装置、即ち競艇場等の波を減衰するのに使用する浮遊型消波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、競艇場(ボートレース場)等に設置される浮遊型消波装置は、例えば特許文献1などに開示されているが、網状体で構成された外筒内に、同じく網状体で構成された複数の内筒を収納させた浮遊型消波装置であり、競走艇により発生した波を前記外筒内を透過させることにより減衰させ、更に複数の前記内筒内を透過させることにより減衰させる構造が提案されている(特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-164536号公報
【文献】特開2004-51051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、水面を遮蔽していないことから、減衰しきれなかった波が透過波として反対側へ通じてしまうと考えられ、またこの浮遊型消波装置は浮力体であって、構造上、この浮遊型消波装置は揺動することで透過波が生じているとも考えられる。前述したように、波を減衰させても、減衰がまだ十分といえるものではなかった。
【0005】
そこで、本発明は波をより多く減衰させることができるようにした構造にして、極力揺動しないようにし、特に競艇場に設置された場合には衝突しても極力競走艇(レース艇)が傷つかないようにした浮遊型消波装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため第1の発明は、競艇場等の波を減衰するのに使用する浮遊型消波装置において、
網状体で構成されその網目を透過させて波を減衰させる外筒と、
網状体で構成され前記外筒の前記網目を透過した波を自己の網目を透過させて減衰させる複数の内筒から成り前記外筒内に束となって収納される複数の内筒群と、
複数の前記内筒内に挿入される棒状のフロート部材と、
前記外筒の長手方向に沿って前記外筒内に束となった前記内筒群と交互に配設される複数のフロートと、
複数の前記内筒及び前記フロートが内部に収納された状態の前記外筒の端部がそれぞれ嵌合される開口を備えて他面を閉じた有底中空円筒形状を呈する一対のエンドカバーと、
網状体で構成され前記外筒及び前記内筒の前記網目を透過した波を自己の網目を透過させて減衰させるものであって、前記外筒内に該外筒の長手方向に直交する断面視において前記競艇場等の水面と平行の並びを列とした場合の同列で並設された一の前記内筒及び他の前記内筒と、この並設された2つの前記一の前記内筒と前記他の前記内筒の間の上方に位置する前記内筒とについて、前記一の前記内筒と前記上方に位置する前記内筒とに及び前記他の前記内筒と前記上方に位置する前記内筒とにそれぞれ外方から跨った状態で複数の固定部材により固定され、それぞれ押し寄せる波側の前記水面と成す角度が初めに波が透過する一方が鈍角でありこの一方を前記波が透過した後に透過する他方が鋭角であって前記外筒の長手方向に直交する断面視がハの字形状を呈する一対の透過波減衰部材とを備えたことを特徴とする。
【0007】
第2の発明は、競艇場等の波を減衰するのに使用する浮遊型消波装置において、
網状体で構成されその網目を透過させて波を減衰させる外筒と、
網状体で構成され前記外筒の前記網目を透過した波を自己の網目を透過させて減衰させる複数の内筒から成り前記外筒内に束となって収納される複数の内筒群と、
複数の前記内筒内に挿入される棒状のフロート部材と、
前記外筒の長手方向に沿って前記外筒内に束となった前記内筒群と交互に配設される複数のフロートと、
複数の前記内筒及び前記フロートが内部に収納された状態の前記外筒の端部がそれぞれ嵌合される開口を備えて他面を閉じた有底中空円筒形状を呈する一対のエンドカバーと、
網状体で構成され前記外筒及び前記内筒の前記網目を透過した波を自己の網目を透過させて減衰させるものであって、前記外筒内に該外筒の長手方向に直交する断面視において前記競艇場等の水面と平行の並びを列とした場合の同列で隣り合って並設される2本の前記内筒の上に1本の前記内筒を載置した状態で、一方を前記並設された前記2本の前記内筒のうちの一方の前記内筒の表面部と前記載置した前記内筒の表面部とに、他方を前記並設された前記2本の前記内筒のうちの他方の前記内筒の表面部と前記載置した前記内筒の表面部とにそれぞれ外方から跨った状態で複数の固定部材により固定され、それぞれ押し寄せる波側の前記水面と成す角度が初めに波が透過する一方が鈍角でありこの一方を前記波が透過した後に透過する他方が鋭角であって前記外筒の長手方向に直交する断面視がハの字形状を呈する一対の透過波減衰部材とを備えたことを特徴とする。
【0008】
第3の発明は、競艇場等の波を減衰するのに使用する浮遊型消波装置において、
網状体で構成されその網目を透過させて波を減衰させる外筒と、
網状体で構成され前記外筒の前記網目を透過した波を自己の網目を透過させて減衰させる複数の内筒から成り前記外筒内に束となって収納される複数の内筒群と、
複数の前記内筒内に挿入される棒状のフロート部材と、
前記外筒の長手方向に沿って前記外筒内に束となった前記内筒群と交互に配設される複数のフロートと、
複数の前記内筒及び前記フロートが内部に収納された状態の前記外筒の端部がそれぞれ嵌合される開口を備えて他面を閉じた有底中空円筒形状を呈する一対のエンドカバーと、
網状体で構成され前記外筒及び前記内筒の前記網目を透過した波を自己の網目を透過させて減衰させるものであって、前記外筒の長手方向に直交する断面視において前記競艇場等におけるそれぞれ押し寄せる波側の水面と成す角度が初めに波が透過する一方の斜面が鈍角でありこの一方を前記波が透過した後に透過する他方の斜面が鋭角であって底面が前記水面と平行である略三角形状を呈し、前記競艇場等の前記水面と平行の並びを列とした場合の複数列の前記内筒を包む透過波減衰部材とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、波をより多く減衰させることができるようにした構造にして、極力揺動しないようにし、特に競艇場に設置された場合には衝突しても極力競走艇(レース艇)が傷つかないようにした浮遊型消波装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】浮遊型消波装置を競艇場に設置した状態を示すための前記競艇場の概略平面図である。
【
図2】範囲AAは何も破断せず、範囲BBは外筒を破断し、範囲CCは前記外筒及び一部の内筒を破断し、範囲DDは前記外筒を破断した浮遊型消波装置の正面図である。
【
図4】浮遊型消波装置を
内筒群が収納された位置で
外筒の長手方向に直交する方向から縦断面した縦断側面図である。
【
図5】一部破断せる浮遊型消波装置の一端部の正面図である。
【
図6】ターンマークを連結した浮遊型消波装置の一端部の正面図である。
【
図7】小回り防止ブイを連結した浮遊型消波装置の一端部の正面図である。
【
図10】他の透過波減衰部材の実施形態を示すものであって、浮遊型消波装置を
内筒群が収納された位置で
外筒の長手方向に直交する方向から縦断面した縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ、競艇場、プール、その他河岸、湖、貯水池、海などに設置されるが、例えば前記競艇場(ボートレース場)KBに本発明に係る浮遊型消波装置1を設置した場合の好適な実施形態について、詳細に説明する。
【0012】
図1において、競走艇(レース艇)RB
において起されるひき波を減衰する消波機能を有する2つの前記浮遊型消波装置1を夫々前記競艇場KBに所定間隔を存した状態で設置する。即ち、前記競走艇RBにより発生する波の進行方向と直交するように、前記2つの前記浮遊型消波装置1を前記競艇場KBに浮遊させた状態で設置する。2は周囲を警告色である赤と白を横方向に交互に着色した概ね円錐形のターンマークで、前記浮遊型消波装置1の一端側に浮遊した状態で連結される。また、
図1において、右の前記浮遊型消波装置1の端部には連結しないが、左の前記浮遊型消波装置1の端部には前記競走艇KBの小回り防止用の球状の小回り防止ブイ3が浮遊した状態で連結される。
【0013】
そして、ボートレースにおける前記競走艇RBがピットPTから出て、スタートラインSLからホームストレッチ(2つのターンマーク2A、2Bを軸として、正面スタンドST寄り側)を通過した先には第1ターンマーク2Aが前記スタンドSTから右手に見える位置に設置される。また、前記第1ターンマーク2Aを旋回してバックストレッチ(2つのターンマーク2A、2Bを軸にして前記正面スタンドSTの反対側)を通過した先には第2ターンマーク2Bが前記スタンドSTから左手に見える位置に設置される。この場合、前記第1ターンマーク2Aと前記第2ターンマーク2Bとの間隔は競走水面に300mの間隔を存するように相対して、両ターンマーク2A、2Bが外方に位置するように設置される。
【0014】
次に、
図2及び
図3において、前記各浮遊型消波装置1は、主に外筒5と、この外筒5内に収納され前記外筒5の網目を透過(「通過」と同意、以下同じ。)した波を自己の網目を透過させて減衰させる複数の内筒6
から成り前記外筒5内に束となって収納される複数の内筒6群と、前記外筒5の長手方向に沿って前記外筒5内に収納される複数のフロート7と、複数の
内筒6群及び前記フロート7が内部に収納された状態の前記外筒5の端部がそれぞれ嵌合される開口を備えて他面を閉じた有底中空円筒形状(中空円筒部分8Aと球面を有する抜け止め部分8Bと有する。)を呈するエンドカバー8とで構成されている。例えば、この浮遊型消波装置1の両端部の前記外筒5内には前記フロート7が配設され、この
両端部のフロート間7には
4つの前記内筒6群と3つのフロート7が配設される。即ち、前記外筒5内には5つの前記フロート7と4つの前記内筒6群とが
前記外筒5の長手方向に沿って交互に配設される。以下、前記浮遊型消波装置1について詳述する。
【0015】
先ず、前記外筒5は約20mの長さで、内径が例えば約60cm程度の多孔性円筒であり、所要の厚みを有するメッシュ、ネット等の網状体の円筒体である。この外筒5内には複数本、本実施形態では
前記外筒5の長手方向に直交する断面視において前記競艇場KBの水面WLと平行の並びを列とした場合の
上下六列の27本の前記内筒6がその長手方向が前記外筒5の長手方向と平行に収納され
(図4参照。)、この内筒6は夫々約4m程度の長さで、外径が例えば約10cmの多孔性円筒であり、所要の厚みを有するメッシュ、ネット等の網状体の円筒体である。
【0016】
そして、網状体の前記外筒5の網目の大きさは、同じく網状体の前記内筒6の網目の大きさより小さくする。即ち、前記外筒の網目5の大きさは、前記内筒6の網目の大きさ未満である。これにより、より一層優れた消波効果(波を減衰する効果)が得られる。
【0017】
前記外筒5及び前記内筒6は共に伸縮性、弾力性を有し、前記内筒6の束が芯材として機能するため、前記浮遊型消波装置1全体として十分な強度を保持しつつ、高い緩衝機能を発揮する。よって、前記競走艇RBが前記浮遊型消波装置1に衝突した場合の安全性(前記競走艇RBの破損防止や、出場選手のケガ防止効果等)が高い。また、ゴミなどの浮遊物が前記外筒5の網目を通過することによる該外筒5内への侵入が難く、これにより、高い消波効果を持続することができる。
【0018】
特に、前記外筒5の1つの網目の開孔面積(開口面積)をS1、前記内筒6の1つの網目の開孔面積(開口面積)をS2としたとき、開孔面積比S1/S2が0.05以上~0.9以下程度であるのが好ましく、0.08以上~0.75以下程度であるのがより好ましく、0.15以上~0.65以下程度であるのが更に好ましい。開孔面積比がこの範囲であると、上記各効果、特に波を減衰する効果及び前記浮遊物が前記外筒5内に侵入し難いという効果がより顕著に発揮される。
【0019】
前記外筒5の1つの網目の開孔面積S1は、特に限定されないが、0.8cm2以上~40cm2以下程度であるのが好ましく、1.6cm2以上~30cm2以下程度であるのがより好ましく、2.8cm2以上~25cm2以下程度であるのが更に好ましい。この開孔面積S1が大き過ぎると前記遊物の侵入を阻止する効果が少なくなり、また、開孔面積S1が小さ過ぎると、開孔率が小さい場合に、消波効果が減少することがある。なお、前記外筒5内へのゴミなどの侵入を防止するために、その両端は閉じられていないが、閉じられたものでもよい。閉じられた場合には、前記外筒5は前記両端の端面においても消波効果を発揮する。
【0020】
そして、前記外筒5の網目の開孔率(開口率)は、特に限定されないが、40%以上~93%以下程度であるのが好ましく、50%以上~90%以下程度であるのがより好ましく、55%以上~80%以下程度であるのがさらに好ましい。開孔率が小さ過ぎると、消波効果が低下し、開孔率が大き過ぎると、強度が低下し、緩衝効果が低下する。
【0021】
網状体の前記内筒6の1つの網目の開孔面積S2は、特に限定されないが、1.2cm2以上~64cm2以下程度であるのが好ましく、2cm2以上~50cm2以下程度であるのがより好ましく、3.5cm2以上~38cm2以下程度であるのが更に好ましい。開孔面積S2がこのような範囲で、特に優れた消波効果を発揮する。
【0022】
そして、前記内筒6の網目の開孔率(開口率)は、特に限定されないが、35%以上~91%以下程度であるのが好ましく、44%以上~85%以下程度であるのがより好ましく、50%以上~75%以下程度であるのが更に好ましい。この内筒6の開孔率が小さ過ぎると、消波効果が低下し、開孔率が大き過ぎると、前記内筒6の外径が大きい場合等に、前記内筒6の強度が低下し、緩衝効果が低下する。
【0023】
なお、前記外筒5の網目の形状と、前記内筒6の網目の形状とは、同一でも、異なるものでもよいが、消波効果の向上のために、これらの網目の形状は、異なるものであるのが好ましい。例えば、本実施形態では、前記外筒5の網目の形状は、略六角形(正六角形、その他の六角形)、前記内筒6の網目の形状は、略四角形(正方形、長方 形、菱形、平行四辺形等)である。また、これらの網目の形状は、多角形と円形、多角形と楕円形、円形と楕円形の組み合わせ等でもよく、或いは非相似形状の四角形同士又は六角形同士でもよく、両網目の形状の組み合わせは、これに限定されるものではない。
【0024】
前記外筒5及び前記内筒6は、合成樹脂材料で構成されているのが好ましく、この合成樹脂材料は、錆や腐食の問題がなく、軽量で適度な浮力を有し、取り扱い性、耐久性に優れ、筒状の網材に成形すると、変形に対する復元力を有するため、優れた緩衝機能を発揮する。
【0025】
即ち、前記外筒5及び前記内筒6を構成する合成樹脂材料としては、夫々、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、或いはこれらのうちの少なくとも1種を含む共重合体、ポリマーブレンド等が挙げられる。なお、前記外筒5の構成材料と前記内筒6の構成材料とは、必ずしも同一でなくともよい。
【0026】
このような合成樹脂材料により形成された前記外筒5及び前記内筒6において、網目を構成する枠体(フレーム)の交差部位が溶融により固着又は一体化されているものが好ましい。これにより、網目の目崩れが生じず、破損防止、耐久性の向上が図れるとともに、変形に対する優れた復元力が得られるので、耐衝撃性が優れると共に、高い緩衝機能が得られる。
【0027】
前記外筒5及び前記内筒6の径は、特に限定されないが、前記外筒5の内径をD1、前記内筒6の外径をD2としたとき、外径比D2/D1が0.01以上~0.5以下程度であるのが好ましく、0.04以上~0.39以下程度であるのがより好ましく、0.06以上~0.34以下程度であるのが更に好ましい。この外径比が小さ過ぎると、前記S1/S2を適正な範囲に設定することが困難となり、またこの外径比が大き過ぎると、前記外筒5内に挿入される前記内筒6の本数が少なくなり、消波効果の向上が少なくなることがある。
【0028】
なお、本実施形態では、前記外筒5及び前記内筒6は、略円筒状をなしているが、これに限らず、前記外筒5及び前記内筒6の断面形状は、それぞれ、例えば、四角形、六角形、八角形等の多角形、楕円形、半円形等、円形以外の形状であってもよい。また、前記外筒5内に、直径(寸法)や、形状や、網目の大きさや開孔率の異なる複数種の内筒を挿入することもできる。
【0029】
前記外筒5内の一部の前記内筒6の内部、具体的には前記外筒5の下半分に位置する前記内筒6の内部には、所望の隙間を存して丸棒状の、例えば発泡ポリエチレン製のフロート部材9が挿入されている(
図4及び
図5参照。)。前記フロート部材9の数、即ち前記フロート部材9を挿入する前記内筒6の増減により、前記浮遊型消波装置1はその浮力を適度に調整することができる。
【0030】
そして、前記内筒6群は、複数の箇所で、形状が安定するように保持する、例えばビニロンやポリエチレン製のロープ10により束ねられて一体化されている(
図2参照)。この場合、隣り合う前記ロープ10同士の間隔は、例えば約0.8mである。なお、前記内筒6群を束ねる方法は、ロープに限らず、他の手段により束ねてもよい。
【0031】
また、前記各フロート7に対応する前記外筒5の外周には、前記フロート7の数に対応して5個のステンレス製の係留バンド11が前記浮遊型消波装置1を固定するための夫々巻きつけられている(
図2参照)。
【0032】
なお、前記浮遊型消波装置1は、前記水面WL下に没している部分が多いと、前記競走艇RBが該浮遊型消波装置1に衝突した際の緩衝効果が少なくなる。逆に、前記水面WLより上に露出している部分が多いと、前記競走艇RBが衝突した際の緩衝効果は高まる。従って、このように、前記内筒6内に前記フロート部材9を収納することにより、消波効果と緩衝効果を有すると共に当該浮遊型消波装置1の浮力を調整する。
【0033】
本実施形態では、前記各内筒6は前記外筒5の長手方向に直交する断面視において前記競艇場KBの前記水面WLと平行の並びを列とした場合の上下に六列配設するが、前記外筒5内の上位三列の前記内筒6には前記フロート部材9を挿入収納しないで、このフロート部材9は一部の前記内筒6を除いて前記外筒5の下半分に位置する下の三列に配列される前記内筒6群に挿入される。
【0034】
そして、下の三列のうちの最上位に位置する前記内筒6群のうちの両端の直内側に位置する両内筒6(
図4における左右から2番目の前記内筒6)には前記フロート部材9を挿入しないが、前記浮遊型消波装置1の組立時の前記外筒5の曲がりや、ねじれを抑制して前記外筒の形状を保持するように、例えば硬質の塩化ビニル等の合成樹脂材料で作製された円筒形状の形状保持体14を挿入する。以上のような構成にすることにより、前記フロート部材9を挿入した前記内筒6群が芯材として機能するが、これと同様に前記形状保持部材14を挿入した前記内筒群も芯材として機能し、前記外筒5の形状、延いては前記浮遊型消波装置1の形状を強固に保持することができる。
【0035】
そして、前述したフロート7は、1つの所望の大きさの円柱状の、例えば発泡スチロールや発泡ウレタンを袋状の、例えばポリエチレンやポリ塩化ビニル等の合成樹脂材料製の巾着袋内に入れて、開口端部を閉じることにより作製し、このフロート7の外径は前記エンドカバー8の内径と略同じであるが、僅か小さい。これにより、前記発泡スチロールの表面は前記巾着袋により保護されると共に、前述したように、前記各内筒6の内部に挿入した前記フロート部材9と同様に前記浮遊型消波装置1の浮力を適度に調整することができる。
【0036】
そして、前記外筒6の両端部は該外筒5が、例えば繊維強化プラスチック(FRP)製の前記エンドカバー内に嵌合した状態で夫々前記エンドカバー8に結束バンドや針金の固定部材13により固定される。即ち、前記エンドカバー8の前記中空円筒部分8Aに開設された複数の各取付け孔12と前記外筒5の網目の開孔部とに、前記固定部材13を挿通させて抜けないようにして、前記外筒5の端部と前記エンドカバー8とは夫々固定され、これにより、前記外筒5と両エンドカバー8とが夫々一体化される。
【0037】
なお、
図4に示すように、前記外筒5内に収納された
前記各内筒6群において、前記外筒5内の上から三列目の前記内筒6の中央部位に位置する前記内筒6及び前記フロート7には、
前記外筒5の形状を保持するために直径が約9mm程度の鋼鉄製のワイヤロープ15が挿通され、4つの前記内筒6群及び5つの
フロート7を挿通したこのワイヤロープ15の両端部は前記各エンドカバー8の前記抜け止め部分8Bの中央部位の凹部8Cに開設した開孔8Dを介して約1.2mほど外方へ引き出されている。
【0038】
そして、前述したように、前記内筒6群や
前記各フロート7が密接するようにして、前記外筒5内の両端部の前記各フロート7から外方に引き出された前記ワイヤロープ15は折り返し端部に円形(丸型)の取付部15Aが形成されて折り返され、
図5に示すように、記ワイヤロープ15の前記取付部15Aの首部と折り返し中間部と引き出された根元部位には夫々ワイヤクリップ16が取付けられて、前記内筒6群と
前記各フロート7との密接が解除されないように、また前記外筒5の両端部と前記各エンドカバー8との嵌合が解除されないように固定される。なお、
図5では一方の前記エンドカバー8より外方に引き出された前記ワイヤロープ15の一端部のみ図示しているが、他方の前記エンドカバー8より外方に引き出された前記ワイヤロープ15の一端部も同様であり、ここでは説明を省略する。
【0039】
また、前記フロート部材9を前記外筒5の長手方向に直交する断面視において前記競艇場KBの前記水面WLと平行の並びを列とした場合の上下に列状に配置された複数の前記内筒6のうちの前記フロート部材9が挿入された前記内筒6や、前記形状保持体14が挿入された前記内筒6が芯材として機能(強度が高まり)し、前記浮遊型消波装置1が波を受けたときでも、この浮遊型消波装置1の曲がりや、ねじれを防止し、優れた消波効果を発揮する。
【0040】
なお、前記フロート部材9をそのまま(前記内筒6内に挿入せずに)前記外筒5内に収納し、前記内筒6と一緒に束ねることも可能であるが、前記内筒6内に挿入したことにより、スペース効率が高まり、同じスペースでより多くの前記内筒6を前記外筒5内に収納することができるので、消波効果の向上に寄与する。
【0041】
前記フロート部材9としては、浮力を与えることができるものであれば、特に材質は限定されず、例えば発泡ポリエチレン、発泡スチロール、発泡ポリウレタン等の発泡体が挙げられる。また、前記フロート部材9は、棒状に限らず、中空体であってもよいし、棒状にした前記フロート部材9は、縦断面形状が円形をなしている(丸棒)が、この形状に限定されるものではない。また、1本の前記内筒6内に、複数本のフロート部材9を挿入させてもよい。更に、前記フロート部材9の長さは、前記内筒6の内部に全域に亘って収納して配設され、それが挿入される前記内筒6の長さとほぼ等しい長さであるが、僅か短いものでもよい。また、前記内筒6内に、長さの短い前記フロート部材9を複数連結して挿入してもよい。
【0042】
以上のように浮遊型消波装置1を構成すると、あらゆる種類、あらゆる条件の波に対しても、優れた消波効果を発揮するが、特に高速(例えば、時速85km程度)で走行する競艇用の前記競走艇RBが起こす特殊な波、即ち波長が0.8m以上~5m以下程度(特に、1m以上~3.5m以下程度)、振幅(波高)が10mm以上~150mm以下程度(特に、20mm以上~100mm以下程度)の波を減衰させるのに適している。このようなことから、本発明の前記浮遊型消波装置1は、前記競艇場KBに設置されるのに適している。前記競艇場KBにおける設置位置は、特に限定されず、前記競走艇RBの周回コースSKの外周部と岸KSとの間や、前記周回コースSK内中央部など、消波や緩衝を必要とするあらゆる箇所に設置することができる。
【0043】
更に、波をより多く減衰させることが求められて、前記外筒5及び幾つかの前記内筒6を透過した波をより減衰させて極力揺動しないように、以下のような構成とする。即ち、前述した外筒5及び内筒6と同様なポリエチレン等の合成樹脂材料で網の交差部位が溶融により固着又は一体化されて作製された網状体で構成され
前記外筒5の長手方向に直交する断面視がハの字形状を呈する一対の透過波減衰部材18を、前記外筒5内に設けられる4つの前記内筒6群においてそれぞれ以下に示すように固定する
(図4参照。)。
【0044】
具体的には、前記フロート部材9が配設された下三列のうちの最上位の列(上から4列目で、前記内筒6が6本配設される)。の中央部位に前記外筒5内に該外筒5の長手方向に直交する断面視において前記競艇場KBの前記水面WLと平行の並びを列とした場合の同列で隣り合って並設される2本の前記内筒6A、6Bとこれら2本の前記内筒6A、6Bに下部が接して載置する直上位(直ぐ上の列である、前記外筒5内の上から3列目)の前記内筒6Cとの間に、詳述すると、前記内筒6A表面部と前記内筒6C表面部との間に及び前記内筒6B表面部と前記内筒6C表面部との間に、外方から跨って固定部材である結束バンドや針金で前記透過波減衰部材18を構成する透過波減衰部材18A、18Bを複数箇所において夫々固定する。即ち、同一物である各透過波減衰部材18A、18Bは平面視長方形状を呈しその長手方向の長さが前記内筒6の長手方向の長さと略同長で、その短手方向の上下端部が前記内筒6A表面部と前記内筒6C表面部、前記内筒6B表面部と前記内筒6C表面部とに外方向から接した状態で所望の間隔を存して複数箇所において前記固定部材により夫々固定される。
【0045】
詳述すると、一方の前記透過波減衰部材18Aの下部の網目の開孔部と該透過波減衰部材18Aが接する前記内筒6Aの開孔部とに前記固定部材を挿通させると共に前記透過波減衰部材18Aの上部の網目の開孔部と前記透過波減衰部材18Aが接して載置する前記内筒6Cの開孔部とに前記固定部材13と同様な結束バンド等の前記固定部材(図示せず)を挿通させ、また他方の前記透過波減衰部材18Bの下部の網目の開孔部と該透過波減衰部材18Bが接する前記内筒6Bの開孔部とに前記固定部材を挿通させると共に前記透過波減衰部材18Bの上部の網目の開孔部と前記透過波減衰部材18Bが接する前記内筒6Cの開孔部とに前記固定部材13と同様な結束バンド等の前記固定部材(図示せず)を挿通させた後に、前記各透過波減衰部材18Aは前記内筒6A、6Cに固定されると共に前記各透過波減衰部材18Bは前記6B、6Cに固定される。
【0046】
この場合、前記透過波減衰部材18A、18Bの外形は長方形の形状を呈しており、その長手方向の横の長さは前記各内筒6A、6B、6Cの長手方向の長さと同じ長さか略同じ長さであり、その短手方向の縦の長さは前記内筒6A表面部と前記内筒6C表面部との間に外方から跨って延びる長さ(又は前記内筒6B表面部と前記内筒6C表面部との間に外方から跨って延びる長さ)であり、前記固定部材による前記透過波減衰部材18A、18Bと前記各内筒6A、6B、6Cとの固定は、前記透過波減衰部材18Aが前記内筒6A及び6Cと接する箇所、及び前記透過波減衰部材18Bが前記内筒6B及び6Cと接する箇所かその近傍において、前記長手方向において所望の間隔を存して複数箇所行われる。
【0047】
なお、本実施形態では、前記透過波減衰部材18A、18Bは、夫々
図4に示すように、
例えば図4の紙面左側から押し寄せる波側の前記水面WLと成す角度が
初めに波が透過する一方の前記透過波減衰部材18Aが鈍角(例えば約120度程度)であり、この一方の前記透過波減衰部材18Aを前記波が透過した後に透過する他方の前記透過波減衰部材18Bが鋭角(例えば約60度程度)となるように、各内筒6A、6C及び6B、6Cに取付けるが、
前記一方の前記透過波減衰部材18Aの前記鈍角については前述した約120度程度の角度に限らず110度以上~130度
程度以下が望ましい
し、前記他方の前記透過波減衰部材18Bの前記鋭角については前述した約60度程度の角度に限らず50度以上~70度程度以下が望ましい。この場合、前記内筒6の外径の大きさを選択することにより、前記角度が決定される。
【0048】
なお、現実に前記周回コースSKに設置した場合に、前記外筒5、前記内筒6及び前記透過波減衰部材18により、効率良く、波を減衰できるように、前記水面WLが前記浮遊型消波装置1の前記透過波減衰部材18A、18Bの中間位置となるように、該浮遊型消波装置1の浮力が設定されるが、この点については、後述する。
【0049】
このように、前記透過波減衰部材18A、18Bを前記外筒5内部の中央部に夫々設けたのは、前記浮遊型消波装置1の
表側(図4の紙面左側)からの波と
裏側(図4の紙面右側)からの波とを同程度に減衰できるからであり、しかも前記浮遊型消波装置1自体をコンパクトにできるからであり、前記外筒5の外表面に設けたのでは前記透過波減衰部材18が波の衝撃や、前記競走艇RBの衝突の衝撃により前記外筒5から外れたりすることが起こるのを防止することができるからである。
【0050】
なお、本実施形態では、隣り合って並設する2本の前記内筒6A、6Bとこれら2本の前記内筒6A、6Bに下部が接して載置する直上位の前記内筒6Cとの間に、外方から跨って固定部材で前記透過波減衰部材18A、18Bを複数箇所において夫々固定したが、これに限らず、前記外筒5内に該外筒5の長手方向に直交する断面視において前記競艇場KBの前記水面WLと平行の並びを列とした場合の同列ではあるが隣り合わないで並設された前記内筒6とこの内筒6の上方に位置する前記内筒6(内筒6Cに限らない。)とにそれぞれ外方から跨って前記透過波減衰部材18を前記外筒5の長手方向に直交する断面視がハの字形状に固定してもよい。
【0051】
即ち、前記外筒5内に並設された一の前記内筒6とその上方に位置する
内筒とに外方から跨った状態で複数の固定部材により固定すると共に、同じく前記外筒5内に前記一の前記内筒6と同列ではあるが隣り合わないで並設された他の
内筒とその上方に位置する前記内筒6とに外方から跨った状態で複数の固定部材により固定し、それぞれ押し寄せる波側
(図4の紙面左側又は紙面右側)の前記水面WLと成す角度が
初めに波が透過する一方が鈍角でありこの一方を前記波が透過した後に透過する他方が鋭角であって前記外筒5の長手方向に直交する断面視がハの字形状を呈する一対の
透過波減衰部材を構成してもよい。
【0052】
この網状体で作製された前記透過波減衰部材18の1つの網目の開孔面積S3は、特に限定されないが、0.6cm2以上~20cm2以下程度であるのが好ましく、1.2cm2以上~15cm2以下程度であるのがより好ましく、1.7cm2以上~13cm2以下程度であるのが更に好ましい。開孔面積S3がこのような範囲で、特に優れた消波効果を発揮する。即ち、前記透過波減衰部材18A、18Bの1つの網目の開孔面積S3をこのような範囲に小さくするのは、前記外筒5及び前記内筒6の網目を透過した波の前記透過波減衰部材18A、18Bの網目を透過する量を適度に減らしてこの透過波減衰部材18A、18Bの網目を構成する枠体(フレーム)に当たって反射する量を適度に増やして、それぞれ押し寄せる波側の前記水面WLと成す角度が初めに波が透過する一方の前記透過波減衰部材18Aが鈍角でありこの一方の前記透過波減衰部材18Aを前記波が透過した後に透過する他方の前記透過波減衰部材18を鋭角としたことと相まって、この作用については後述するように、この反射した波が次に来る波に当たってこの次に来る波をより確実に緩和減衰させるためである。
【0053】
この場合、前記透過波減衰部材18A、18Bの1つの網目の開孔面積S3は、前記内筒6の1つの網目の前記開孔面積S2より小さい前記外筒5の1つの網目の前記開孔面積S1よりも小さい。言い換えると、前記外筒5、前記内筒6、前記透過波減衰部材18A、18Bの網目を構成する前記枠体の外径(太さ)を同じくした場合に、前記内筒6の網目が一番粗く、次いで前記外筒5の網目が前記内筒の網目より細かくなり、前記透過波減衰部材18A、18Bの網目が一番細かい。即ち、単位面積当たりの前記透過波減衰部材18A、18Bの網目の総開孔面積は一番狭く、前記外筒5の網目の総開孔面積は前記透過波減衰部材18A、18Bの網目の総開孔面積より広く、前記内筒6の網目の総開孔面積が一番広い。
【0054】
そして、前記内筒6の前記網目を透過した波を自己の網目を透過させて減衰させる前記透過波減衰部材18の網目の開孔率(開口率)は、特に限定されないが、20%以上~80%以下程度であるのが好ましく、23%以上~75%以下程度であるのがより好ましく、25%以上~70%以下程度であるのがさらに好ましい。開孔率が小さ過ぎると消波効果が低下し、開孔率が大き過ぎると前記透過波減衰部材18A又は18Bと前記水面WLとの成す角度によってこの透過波減衰部材18A又は18Bにより反射した波が次に来る波に当たってこの次に来る波をより確実に緩和減衰させる効果が低下するためである。
【0055】
従って、前記競走艇RBにより発生した前記ホームストレッチ側(前記周回コースSKの前記スタンドST側)からの波が減衰されて前記外筒5や複数の前記内筒6を透過した波は更に減衰されながら前記浮遊型消波装置1を透過する。
【0056】
即ち、先ず前記ホームストレッチ側からの波は前記外筒5及び前記内筒6Cと同列の2本の前記内筒6の網目を構成する前記枠体に当たってその抵抗により減衰され、この枠体に当たらない残りの波は前記外筒5や前述した2本の前記内筒6の網目を透過して、一方の傾斜した前記透過波減衰部材18Aの網目(前記外筒5や前記内筒6より網目が細かい。)を構成する前記枠体に当たってその抵抗により減衰されると共に当たることにより一部反射した波は次に来た波と当たって減衰される。そして、前記透過波減衰部材18Aの網目から透過した残りの波は前記内筒6Cや他方の前記透過波減衰部材18B、更にはこの透過波減衰部材18Bに隣接する(
図4における右方の)前記フロート部材9が配設されていない2本の前記内筒6及び前記バックストレッチ側の前記外筒5周面により減衰されながら透過する。
【0057】
このため前述したように、前記競走艇RBにより発生した前記ホームストレッチ側からの波は前記外筒5、前記内筒6及び前記浮遊型消波装置1により減衰されて透過し、この透過した波が前記バックストレッチを通過する前記競走艇RBに与える影響は少なくなる。
【0058】
また、逆に前記バックストレッチ側からの波は前記外筒5及び前記内筒6Cと同列の2本の前記内筒6の網目を構成する前記枠体に当たってその抵抗により減衰され、この枠体に当たらない残りの波は前記外筒5や前述した2本の前記内筒6の網目を透過して、他方の傾斜した前記透過波減衰部材18Bの網目(前記外筒5や前記内筒6より網目が細かい。)を構成する前記枠体に当たってその抵抗により減衰されると共に当たることにより一部反射した波は次に来た波と当たって減衰される。そして、前記透過波減衰部材18Bの網目から透過した残りの波は前記内筒6Cや一方の前記透過波減衰部材18A、更にはこの透過波減衰部材18Aに隣接する(
図4における左方の)前記フロート部材9が配設されていない2本の前記内筒6及び
前記ホームストレッチ側の前記外筒5周面により減衰されながら透過する。
【0059】
このため前述したように、前記競走艇RBにより発生した前記バックストレッチ側からの波は前記外筒5、前記内筒6及び前記浮遊型消波装置1により減衰されて透過し、この透過した波が前記ホームストレッチを通過する前記競走艇RBに与える影響は少なくなる。
【0060】
従って、前記外筒5及び複数の前記内筒6に加えて、前記透過波減衰部材18の存在により、波をより多く減衰させることができるようにして極力揺動しないようにし、特に前記浮遊型消波装置1が前記競艇場KBに設置された場合には衝突しても極力前記競走艇RBや前記浮遊型消波装置1が傷つかないようにすることができる。
【0061】
以上のように、前記透過波減衰部材18は、前述したように、一方の斜面の前記透過波減衰部材18Aと他方の斜面の前記透過波減衰部材18Bを有するので、前記競艇場KBにおけるホームストレッチ側からの波やバックストレッチ側からの波を減衰させることができる。従って、このことは前記競艇場KBにおける前記岸KSにより反射された波が前記競走艇RBに与える影響も少なくすることができることをも意味する。更に付け加えると、このことは競艇場KBに限らず、プール、その他河岸、湖、貯水池、海などに設置することにより、その岸の近くに設置して、この岸により反射された岸側からの波も前記浮遊型消波装置1は減衰できるものである。
【0062】
そして、前記スタンドSTから
見て右手に見える位置に設置される前記浮遊型消波装置1の外端部には前記ワイヤロープ15の前記取付部15Aに一端が連結した連結部材(ロープやチェーン等)20を介して前記第1ターンマーク2Aを連結するが、内端部には前記小回り防止ブイ3を連結しない
(図1、図5及び図6参照。)。また、前記スタンドSTから
見て左手に見える位置に設置される前記浮遊型消波装置1の外端部には前記ワイヤロープ15の前記取付部15Aに一端が連結した前記連結部材20を介して前記第2ターンマーク2Bを連結すると共に内端部には同じく前記連結部材20を介して前記小回り防止ブイ3を連結する(
図1、
図6及び
図7参照)。
【0063】
次に、締結体である前記係留バンド11について、
図8及び
図9に基づいて説明する。このステンレス製の係留バンド11は、
図2に示すように、前記外筒5内の5個の前記フロート7のうち、両端部と真ん中に位置する前記フロート7に対応する位置において外側から前記外筒5を包囲するようにして、前記外筒5を外側から確実に締結する。
【0064】
具体的には、前記係留バンド11は所要の幅と厚みとを有する一対の半円形状の締結体11Aの一端を蝶番11Bにより連結して回動可能に枢支し、他端に貫通孔(図示せず。)を開設したフランジ11Cを有しており(
図8参照。)、前記外筒5を包囲した状態にして一対の前記締結体11Aの前記フランジ11Cを合わせ、前記貫通孔内にボルト21を貫通させてナット22を螺合して締結し、前記外筒5を外側から包囲して確実に締結する
(図9参照。)。
【0065】
そして、前記締結体11Aの前記フランジ11Cより少し上位には夫々ステンレス製の前記アイナット23が夫々溶接されており、また前記競艇場KBの湖沼の底WBに設置された2つのシンカー24に夫々ステンレス製のアイナット25が夫々溶接されており、潜水した作業者が夫々両端部に連結された各シャックル26を介して係留用の前記各チェーン27の上下を前記各アイナット23、25に夫々連結し、結果として前記浮遊型消波装置1を前記シンカー24に繋ぎ止めて所要位置に浮遊させる(
図9参照。)。
【0066】
なお、前述したように前記水面WLが前記浮遊型消波装置1の前記透過波減衰部材18A、18Bの中間位置となるように、設定されている。具体的には、水面が
図4に示すような前記水面WLより低い位置になるように前記浮遊型消波装置1自体の浮力は設定されているが、前述したように、係留用の前記各チェーン27の長さを調整することにより、前記水面WLが前記透過波減衰部材18A、18Bの中間位置、例えば前記透過波減衰部材18A、18Bの上下方向の略中央位置となるように構成される。
【0067】
次に、前記浮遊型消波装置1の組み立て作業について、以下説明する。先ず、前述したように、13本の前記内筒6に前記フロート部材9を夫々挿入収納する。そして、前記フロート部材9が挿入収納された隣り合って並設される2本の前記内筒6Aと6Bとの上に、後に前記ワイヤロープ15が挿入される前記内筒6Cを載置した状態で、一方の前記透過波減衰部材18Aを前記内筒6A表面部と前記内筒6C表面部とに、また他方の前記透過波減衰部材18Bを前記内筒6B表面部と前記内筒6C表面部とに複数の前記固定部材(図示せず。)で夫々固定する。
【0068】
この場合、前記浮遊型消波装置1を前記内筒6が収納された位置で前記
外筒5の長手方向に直交する方向から縦断面した縦断側面図である図4からも理解できるように、一方の前記透過波減衰部材18Aの縦断面した切り口の形状が前記内筒6Aの円と前記内筒6Cの円との接線となるように、また他方の前記透過波減衰部材18Bの縦断面した切り口の形状が前記内筒6Bの円と前記内筒6Cの円との接線となるように、前記固定部材で一対の前記透過波減衰部材18を前記内筒6Aと6Cとに、また前記内筒6Bと6Cとに複数個所においてそれぞれ固定する。
【0069】
次いで、
図4から理解できるように、
前記外筒5の長手方向に直交する断面視において前記競艇場KBの前記水面WLと平行の並びを列とした場合の
上下六列のうちの下二列に前記フロート部材9を夫々挿入収納した9本の前記内筒6を配置し、この上の列(下から三列目)には
図4の最左(前記スタンドSTから見て正面側の最前)に前記フロート部材9を挿入収納した前記内筒6を、またその
右隣に空の前記内筒6を配置すると共にその内側に
前記内筒6A、6Bを配置し、この内筒6Bの
右隣に空の前記内筒6及びこの空の前記内筒6の
右隣に前記フロート部材9を挿入収納した前記内筒6を配置する。そして、更に下から四列目には中央部位の前記内筒6Cを挟んで前記正面側
(前記ホームストレッチ側でもある。)に2本の空の前記内筒6と前記スタンドSTから見て背面側
(前記バックストレッチ側でもある。)に2本の空の前記内筒6を配列し、下から五列目には空の前記内筒6を4本配列し、下から六列目である最上列には空の前記内筒6を3本配列し、これらの
複数の前記内筒6を前記ロープ10で包んで括る。そして、このように、前記ロープ10で包んで束にした前記内筒6群を4つ作製する。
【0070】
そして、前記外筒5内に、先ず1つの前記フロート7及び1つの前記内筒6群を入れて(収納して)前記形状保持体14を夫々挿通させるが、その挿通させる位置は前記フロート7を経て前記内筒6群のうちの下から三列目の前記正面側から2本目の前記内筒6及び前記背面側から2本目の前記内筒6内に前記形状保持体14を夫々挿通させる。
【0071】
この1つ目の前記フロート7及び前記内筒6群を挿通した前記各形状保持体14に、すこし太径にした連結部14Aを介して次の前記各形状保持体14を継ぎ足す。そして、この継ぎ足した前記各形状保持体14を前述したように、2つ目の前記フロート7及び前記内筒6群を挿通させ、この挿通した前記各保持体14にその次の前記各形状保持体14を継ぎ足す。このような作業を順次繰り返して、5個の前記フロート7及び4つの前記内筒6群内に各形状保持体14を挿通する(
図4参照。)。この形状保持体14を挿通することにより、前記浮遊型消波装置1を組立てる際の前記外筒5の曲がりや、ねじれを抑制して前記外筒の形状が保持される。
【0072】
次に、前記外筒5内に前記各形状保持体14を挿通した5個の前記フロート7及び4つの前記内筒6群を収納した後に、この外筒5の両端部に前記各エンドカバー8を夫々取付け固定する。
【0073】
その前記各エンドカバー8の取付け作業について、以下説明する。先ず、案内紐(図示せず。)を前記外筒5内の5個の前記フロート7及び4つの前記内筒6群を貫通させて、取り付ける前の一方の前記エンドカバー8を挿通した前記ワイヤロープ15に前記案内紐の一端を連結し、当該紐を引きながら、前記ワイヤロープ15を順次前記フロート7及び前記内筒6群を貫通させて、前記外筒5の全域に亘って前記5個の前記フロート7及び4つの前記内筒6群を貫通させる。
【0074】
この場合、既に前記ワイヤロープ15を順次前記フロート7及び前記内筒6群を貫通させる前に、一方の前記エンドカバー8の前記抜け止め部分8B中央に形成された前記凹部8Cの中央に前記開孔8Dが開設されており、この開孔8Dに前記ワイヤロープ15の一端が貫通する貫通孔が開設されたボルト30が外側からワッシャー31を介して挿通されてあり、前記エンドカバー8の内側にはワッシャー31、32を介してナット33が螺合してある。
【0075】
なお、前記ナットを貫通していない約1.2mほどの部分の前記ワイヤロープ15の前記一端部には前記取付部15Aが形成されて折り返えされて、
図5に示すように、前記ワイヤロープ15の一方の前記エンドカバー8に当接する位置と折り返し部の2ケ所に計3個の前記ワイヤクリップ16が取付けられている。
【0076】
そして、前述したように、前記5個の前記フロート7及び4つの前記内筒6群を貫通した前記ワイヤロープ15の他端部を他方のエンドカバー8を貫通させた後に、前記一端部に作製したものと同様に折り返し部を作製するが、作製する前に、前記エンドカバー8の内側には前記ワッシャー32及び前記ナット33を配置した状態で外側には前記ワッシャー31及び前記ボルト30を配置した状態で前記ワイヤロープ15を前記ボルト30の前記貫通孔を貫通させて、この貫通して突出した部位に前記一端部に作製したものと同様に前記取付部15A及び前記折り返し部を作製し、前記ワイヤロープ15の他方の前記エンドカバー8に当接する位置及び折り返し部の2ケ所に前記ワイヤクリップ16が取付けられる。
【0077】
このようにして、5個の前記フロート7及び4つの前記内筒6群を前記外筒5の内部に収納した状態で、両端部に夫々前記エンドカバー8が取り付けられるが、特に内方の前記ワイヤクリップ16により前記各内筒6群と前記各フロート7との密接が解除されないように、また前記外筒5の両端部と前記各エンドカバー8との嵌合が解除されないように固定される。
【0078】
この後、前記外筒5内の5個の前記フロート7のうちの両端側と中央の合計3個の前記フロート7に対応する前記外筒5の外周に、前記係留バンド11を夫々巻きつけ、前記外筒5を包囲し外側から締結する。即ち、前記蝶番11Bにより開いた状態から前記外筒5包囲して、前記フランジ11C同志を合わせた状態で前記貫通孔内にボルト21を貫通させてナット22を螺合して確実に締結する。
【0079】
図1の右の前記浮遊型消波装置1にはその外端部に前記第1ターンマーク2Aを、また左の前記浮遊型消波装置1にはその外端部に前記第2ターンマーク2Bを、更に前記第2ターンマーク2Bの内端部に前記小回り防止ブイ3を連結する。具体的には、
図6に示すように、左右の前記浮遊型消波装置1とも、前記連結部材20を介して一端側の前記ワイヤロープ15の前記取付部15Aと前記第1、第2ターンマーク2A、2Bとを連結し、また
図7に示すように、左の前記浮遊型消波装置1にあっては前記連結部材20を介して他端側の前記ワイヤロープ15の前記取付部15Aと前記小回り防止ブイ3とを連結する。
【0080】
しかる後、潜水した作業者が夫々両端部に連結された各シャックル26を介して前記各チェーン27の上下を前記各シンカー24に固定された前記アイナット25及び前記係留バンド11に固定された前記アイナット23に夫々連結し、結果として前記浮遊型消波装置1を所要位置まで吊り下げる。
【0081】
即ち、前記各チェーン27が前記各シャックル26を介して前記各シンカー24に固定された前記各アイナット25に連結していない場合には、前記浮遊型消波装置1は浮力で
図4に示す前記水面WLより高い位置に浮いていて、連結した場合には前記浮遊型消波装置1は低められて、前記水面WLは
図4に示す位置となる。
【0082】
次に、前記浮遊型消波装置1の作用について説明する。例えば、前記浮遊型消波装置1の長手方向に対し直交する方向、即ち前記ホームストレッチ側からきた波は、先ず前記外筒5に当たり、その網目を通過する際に、減衰される。次に、前記外筒5の網目を通過して該外筒5内に侵入した波は、束である前記各内筒6群に接触し、前記各内筒6群を構成する2本の前記内筒6の網目を通過する際に、大幅に減衰される。このとき、一方の前記透過波減衰部材18Aの網目を通過する際に、更に減衰される。そして、更に前記一方の前記透過波減衰部材18Aの網目を通過して特に前記内筒6C内に前記スタンドSTから見て前記正面側から侵入した波は前記内筒6C外に出て該内筒6Cの前記スタンドSTから見て背面側の網目を通過し、他方の前記透過波減衰部材18Bの網目を通過する際にも減衰される。また、他方の前記透過波減衰部材18Bにより減衰されて透過し、前記フロート部材9が配設されていない並設された2本の前記内筒6及び前記外筒5の前記バックストレッチ側の周面により減衰されて透過し前記浮遊型消波装置1外へと移動する。
【0083】
詳述すると、前記ホームストレッチ側からの波(
図4の紙面左側からの波)は前記外筒5の網目を構成する前記枠体に当たってその抵抗により減衰されると共にこの枠体に当たらない残りの波は前記外筒5の網目を透過し、前記内筒6Cと
同列で左隣の前記フロート部材9が配設されていない
図4の上から3列目の2本の前記内筒6の網目を構成する前記枠体に当たってその抵抗により減衰されると共にこの枠体に当たらない残りの波は前述した2本の前記内筒6の網目を透過して、
前記一方の傾斜した前記透過波減衰部材18Aの網目を構成する前記枠体に当たってその抵抗により減衰されると共に当たることにより一部反射した波は次に来た波と当たって減衰される。
【0084】
そして、このように
前記一方の傾斜した前記透過波減衰部材18Aの網目を構成する前記枠体により押し寄せる波を一部反射させるが、前記透過波減衰部材18A、18Bを網状体で構成しているので、前記透過波減衰部材18Aの網目から透過した残りの波は前記内筒6Cや
前記他方の前記透過波減衰部材18B、更にはこの透過波減衰部材18Bに隣接する(
図4における
右隣の)前記フロート部材9が配設されていない2本の前記内筒6及び前記バックストレッチ側の
前記外筒5の周面の網目を構成する前記枠体に当たっては減衰されながらそれらの網目を透過し、前記浮遊型消波装置1外へと移動する。
【0085】
この場合、波は昇降しながら進行するので、前記ホームストレッチ側からの波が前記外筒5及び前記内筒6群の前記内筒6の網目を透過した波も昇降しながら進行して前記一方の傾斜した前記透過波減衰部材18Aの網目を構成する前記枠体に斜め上方に上昇しながら当たって斜め上方へ向けて反射したり又は斜め下方に下降しながら当たって斜め下方へ向けて反射したりするが、この斜め上方に向けて反射した波は、昇降しながら次に来た波の斜め下方へと進行する波と当たって緩和減衰されると共に、また斜め下方に向けて反射した波は、同じく次に来た波の斜め上方へと進行する波と当たって確実に緩和減衰されることとなる。このように、網状体で構成した前記透過波減衰部材18Aの1つの網目の開孔面積S3を前述したような好適な範囲にしたり前記透過波減衰部材18Aを押し寄せる波側の前記水面WLとの成す角度を鈍角としたことと相まって、反射した波が次に来る波に当たってこの次に来る波をより確実に緩和減衰させることができる。
【0086】
なお、前記バックストレッチ側を走行する前記競走艇RBからの波や、前述したように前記ホームストレッチ側からきた波が前記浮遊型消波装置1を透過し該消波装置1外へと移動して前記岸KSにより反射された波についても前述したような前記ホームストレッチ側からきた波と同様に減衰できる。
【0087】
即ち、前記バックストレッチ側からの波(
図4の紙面右側からの波)は前記外筒5の網目を構成する前記枠体に当たってその抵抗により減衰されると共にこの枠体に当たらない残りの波は前記外筒5の網目を透過し、前記内筒6Cと
同列で右隣の前記フロート部材9が配設されていない
図4の上から3列目の2本の前記内筒6の網目を構成する前記枠体に当たってその抵抗により減衰されると共にこの枠体に当たらない残りの波は前述した2本の前記内筒6の網目を透過して、
前記他方の傾斜した前記透過波減衰部材18Bの網目を構成する前記枠体に当たってその抵抗により減衰されると共に当たることにより一部反射した波は次に来た波と当たって減衰される。
【0088】
そして、このように
前記他方の傾斜した前記透過波減衰部材18Bの網目を構成する前記枠体により押し寄せる波を一部反射させるが、前記透過波減衰部材18A、18Bを網状体で構成しているので、前記透過波減衰部材18Bの網目から透過した残りの波は前記内筒6Cや
前記一方の前記透過波減衰部材18A、更にはこの透過波減衰部材18Aに隣接する(
図4における
左隣の)前記フロート部材9が配設されていない2本の前記内筒6及び前記ホームストレッチ側の
前記外筒5の周面の網目を構成する前記枠体に当たっては減衰されながらそれらの網目を透過し、前記浮遊型消波装置1外へと移動する。
【0089】
この場合、波は昇降しながら進行するので、前記バックストレッチ側からの波が前記外筒5及び前記内筒6群の前記内筒6の網目を透過した波も昇降しながら進行して前記他方の傾斜した前記透過波減衰部材18Bの網目を構成する前記枠体に斜め上方に上昇しながら当たって斜め上方へ向けて反射したり又は斜め下方に下降しながら当たって斜め下方へ向けて反射したりするが、この斜め上方に向けて反射した波波は、昇降しながら次に来た波の斜め下方へと進行する波と当たって緩和減衰されると共に、また斜め下方に向けて反射した波は、同じく次に来た波の斜め上方へと進行する波と当たって確実に緩和減衰されることとなる。このように、網状体で構成した前記透過波減衰部材18Bの1つの網目の開孔面積S3を前述したような好適な範囲にしたり、前記透過波減衰部材18Bを押し寄せる波側の前記水面WLとの成す角度を鈍角としたことと相まって、反射した波が次に来る波に当たってこの次に来る波をより確実に緩和減衰させることができる。
【0090】
以上のように、前記ホームストレッチ側から又はバックストレッチ側からの波は前記外筒5及び前記内筒6群の前記内筒6の網目を何回も通過すると共に前記透過波減衰部材18A、18Bの網目をも通過するため、優れた消波効果が発揮される。また、前記外筒5、前記内筒6、前記透過波減衰部材18の網目の大きさや形状等を異なるようにすることにより、消波効果を高くでき、また波長(周期)や振幅 (波高)が異なる波であっても、効果的に減衰することができる。また、前記浮遊型消波装置1に前記競走艇RBが衝突した場合、前記外筒5と前記内筒6とが、弾力性を有し、衝撃を効果的に吸収することができ、前記競走艇RBに乗船していた選手の安全が確保される。
【0091】
以上の実施形態は、前記透過波減衰部材18を一対の前記透過波減衰部材18A及び18Bで構成した例であるが、これに限らず、
図10に示すような透過波減衰部材18Cとしてもよい。
【0092】
即ち、透過波減衰部材18Cを18A、18Bと同じような材質、開孔の形状・大きさの網状体で構成した前記外筒5及び前記内筒6の前記網目を透過した波を自己の網目を透過させて減衰させるものであって、隣り合って前記外筒5内に並設される2本の前記内筒6A、6Bの上に1本の前記内筒6Cを載置した状態で、
前記競艇場KBの前記水面と平行の並びを列とした場合の複数列のこれら3本の内筒6A、6B、6Cをその長手方向の全域に亘って包むように配設し、
前記外筒の長手方向に直交する断面視においてそれぞれ押し寄せる波側の前記水面WLと成す角度が
初めに波が透過する一方の斜面が鈍角でありこの一方の斜面を前記波が透過した後に透過する他方の斜面が鋭角であって底面が前記水面と平行である角部が丸い略三角形状を呈する構造としてもよい。なお、
例えば図10の紙面左側から押し寄せる波側の前記水面WLと
一方の斜面18C1との成す角度は、
鈍角であり例えば約120度(この角度に限らず110度以上~130度以下が望ましい。)程度であり、
この一方の前記斜面18C1を前記波が透過した後に透過する他方の斜面18C2が鋭角(例えば約60度程度)であって、前記各斜面18C1、18C2の役割や作用は前述した透過波減衰部材18A、18Bと同様であり、それらの説明は省略する。
【0093】
この場合、前記透過波減衰部材18Cと前記内筒6A、6B、6Cとは、所望の箇所にて、所望の間隔を存して、前述したような結束バンド等の固定部材により固定されるが、側方から見て略三角形状を呈する前記透過波減衰部材18Cは当初より一体で構成されたものでもよいし、一体でないものを連結部材(図示せず)にて一体化させた構成でもよい。
【0094】
また、前記透過波減衰部材18Cは前記3本の内筒6A、6B、6Cを包むようにする場合に限らず、
前記外筒5の長手方向に直交する断面視において図10の紙面左側又は右側から押し寄せる波側の前記水面WLと成す角度が鈍角である2つの斜面を備えればよいので、前記水面WLと平行の並びを列とした場合の上下2列の3本の前記内筒6に限らず(
図10参照。)、例えば上下3列の6本の前記内筒6や、上下4列の10本の前記内筒6を包むようなものであってもよい。
【0095】
なお、前述したように組み立てられた前記浮遊型消波装置1を前記周回コースSK内に設置する場合に限らず、前記周回コースSKの直線コースに対向する前記競艇場KBの前記岸KSに係留装置34を介して係留して設置してもよい(
図1参照)。この場合、複数の前記浮遊型消波装置1を連結部材であるボルトとナットにより連結する。
【0096】
即ち具体的には、隣り合う前記浮遊型消波装置1の前記エンドカバー8から外方へ突出した前記ワイヤロープ15の前記取付部15A同志を重ねてこの両取付部15Aに前記ボルトの軸部を挿入して前記ナットを螺合させて、前記軸部と前記ナットとで重ねた前記両取付部15Aで挟むようにして連結し、前記周回コースSKの直線コースに対向する前記競艇場KBの前記岸KSに前記係留装置34を介して係留して設置してもよい(
図1参照)。これにより、前記岸KSからの反射波を減衰させることができる。
【0097】
以上本発明の実施態様について説明したが、上述の説明に基づいて当業者にとって種々の代替例、修正又は変形が可能であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で前述の種々の代替例、修正又は変形を包含するものである。
【符号の説明】
【0098】
1 浮遊型消波装置
5 外筒
6 内筒
6A、6B、6C 内筒
7 フロート
8 エンドカバー
9 フロート部材
18 透過波減衰部材
18A、18B、18C 透過波減衰部材
【要約】
【課題】波をより多く減衰させることができるようにした構造にして、極力揺動しないようにし、特に競艇場に設置された場合には衝突しても極力競走艇が傷つかないようにした浮遊型消波装置の提供。
【解決手段】ホームストレッチ側からきた波は外筒5に接触し、その網目を通過する際に減衰されて通過して該外筒5内に侵入した波は、束である内筒6群に接触し、複数の内筒6の網目を通過する際に大幅に減衰される。このとき、一方の透過波減衰部材18Aの網目を通過する際に更に減衰され、一方の透過波減衰部材18Aの網目を通過して特に内筒6C内に正面側から侵入した波は内筒6C外に出て背面側の網目を通過して他方の透過波減衰部材18Bの網目を通過する際にも減衰されて透過し、フロート部材9が配設されていない内筒6及び外筒5のバックストレッチ側の周面により減衰されて透過し浮遊型消波装置1外へと移動する。
【選択図】
図4