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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】走行システム及び走行装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20241107BHJP
   G05D 1/646 20240101ALI20241107BHJP
   G05D 1/69 20240101ALI20241107BHJP
【FI】
G05D1/43
G05D1/646
G05D1/69
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024145258
(22)【出願日】2024-08-27
【審査請求日】2024-08-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501041894
【氏名又は名称】チームラボ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】周 暁航
(72)【発明者】
【氏名】恩智 英治
(72)【発明者】
【氏名】林 拓武
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-128914(JP,A)
【文献】特開2012-40957(JP,A)
【文献】特許第7473273(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00-1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周回可能な既定の経路上で複数の走行装置を走行させるためのシステムであって、
前記経路上には複数の停車エリアが設けられており、
前記走行装置のそれぞれは、
前記停車エリアに属していることを検知するエリア検知部と、
前方の別の走行装置に近接していることを検知する装置検知部と、
前記停車エリアでの停止を指示するための無線信号を受信可能な通信部と、
所定のアルゴリズムに基づいて自己の走行装置の発進と停止を制御する制御部を有し、
前記制御部は、
前記無線信号の受信後に前記停車エリア内への進入を検知した場合には、当該停車エリアの終点で停止することを目標に設定し、
前記目標の設定後に当該停車エリアの終点に到達したときには、自己の走行装置を当該停車エリアの終点付近にて停止させ、
前記目標を設定した場合及び前記目標を設定していない場合のいずれの場合においても、自己の走行装置が前方の別の走行装置に近接したことを検知したときには自己の走行装置を一時停止させる
システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記無線信号の受信後から所定時間経過しても、前記エリア検知部により前記停車エリアに属していることを検知できない場合には、前記通信部から前記停車エリアに属していないことを報知するための無線信号を発信する
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記システムは、前記無線信号を発信可能な基地局を含み、
前記経路上を走行する前記走行装置の総数は、N台(Nは2以上の整数)であり、
前記停車エリアには、それぞれM台(Mは2以上の整数)の前記走行装置を停止させることが可能であり、
一度前記基地局から前記無線信号を発信してから前記複数の走行装置のすべてが停止するまでのアクションの試行回数Sは、(N/M)+1以上である
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記停車エリアは、前記走行装置に搭載されているバッテリを充電するための充電器を含む
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
複数の停車エリアが設けられた周回可能な既定の経路上を走行可能な走行装置であって、
前記停車エリアに属していることを検知するエリア検知部と、
前方の別の走行装置に近接していることを検知する装置検知部と、
前記停車エリアでの停止を指示する無線信号を受信可能な通信部と、
所定のアルゴリズムに基づいて自己の走行装置の発進と停止を制御する制御部を有し、
前記制御部は、
前記無線信号の受信後に前記停車エリア内への進入を検知した場合には、当該停車エリアの終点で停止することを目標に設定し、
前記目標の設定後に当該停車エリアの終点に到達したときには、自己の走行装置を当該停車エリアの終点付近にて停止させ、
前記目標を設定した場合及び前記目標を設定していない場合のいずれの場合においても、自己の走行装置が前方の別の走行装置に近接したことを検知したときには自己の走行装置を一時停止させる
走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行可能な複数の走行装置を既定の経路上に沿って走行させるためのシステムに関する。また、本発明は、自律走行可能な走行装置それ自体にも関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、以前より、予め敷設されたレーンを走行するモータ駆動の走行装置を提案している(特許文献1)。この特許文献1に記載の走行装置は、レーンの左右に設けられた側壁に接触しながら走行することが想定されている。
【0003】
また、従来から、走行面に描かれた軌道に沿って自律走行する走行玩具が知られている(例えば特許文献2)。特許文献2に記載の走行玩具は、走行面に描かれた軌道を検知するためのフォトセンサ(光学センサ)を備えており、このフォトセンサによって走行面からの反射光に基づいて軌道を光学的に検出するように構成されている。
【0004】
また、本願出願人は、複数の走行装置を既定の経路上で走行させるためのシステムにおいて、各走行装置を経路上の複数の停車エリア(例えば充電エリア)に分散して自律的に停止させることのできるアルゴリズムを提案している(特許文献3)。このアルゴリズムを走行装置のそれぞれに搭載しておくことで、上位の制御局(コントロールセンタ)からの制御に依らずに、各走行装置を適切に停車エリアに停止させることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第7365084号公報
【文献】特開2006-181241号公報
【文献】特許第7473273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献3によれば、一度の停止アクションにより複数の走行装置を複数の停車エリアに確実に分散停止させることができる。一方で、停止アクションの試行回数を増やしてでも、各走行装置を停車エリアに分散停止させる時間をさらに短縮したいという要望がある。
【0007】
そこで、本発明は、複数の走行装置を既定経路上の停車エリアに分散停止させる時間をより短縮することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、上記の問題を解決する手段について鋭意検討した結果、複数の走行装置を複数の停車エリアに分散して停止させるためのアルゴリズムを改良し、この改良されたアルゴリズムを走行装置のそれぞれに搭載しておくことで、各走行装置をより短時間で停車エリアに停止させることができるようになるという知見を得た。そして、本発明者は、このような知見に基づけば上記の問題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の第1の側面は、周回可能な既定の経路10上で複数の走行装置20を走行させるためのシステム100に関する。この経路10上には、複数の停車エリアARが設けられている。停車エリアARの一例は、走行装置20を充電するための充電エリアである。なお、この経路10は、経路10の左右両側に側壁を設けておき、走行装置20をこの側壁に接触させながら走行させるものであってもよいし、それに代えて、経路10上に誘導線を引いておき、この誘導線に沿って走行装置20を走行させるものであってもよい。複数の走行装置20は、エリア検知部、装置検知部、通信部、及び制御部を有する。エリア検知部は、停車エリアARに属していることを検知するための要素である。例えば停車エリアARが充電エリアである場合には、エリア検知部は走行装置20に搭載されたバッテリが充電されているときに、停車エリアARに属していることを検知する。装置検知部は、前方の別の走行装置20に近接していることを検知するための要素である。通信部は、停車エリアARでの停止を指示する無線信号を受信可能な要素である。この通信部は、走行装置20から無線信号を発信可能なものであってもよい。なお、この無線信号は、外部の基地局や、あるいは別の走行装置から発信されたものである。この無線信号は、これらの基地局等により自動的に発信されたものでもよいし、人間のオペレータが基地局等を操作して手動で発信されたものでもよい。制御部は、所定のアルゴリズムに基づいて自己の走行装置の発進と停止を制御する。具体的には、制御部は、無線信号の受信後に停車エリアAR内への進入を検知した場合には、当該停車エリアARの終点で停止することを目標に設定する。また、制御部は、この目標の設定後に当該停車エリアARの終点に到達したときには、自己の走行装置20を当該停車エリアARの終点付近にて停止させる。ただし、制御部は、この目標を設定した場合及びこの目標を設定していない場合のいずれの場合においても、自己の走行装置20が前方の別の走行装置20に近接したことを検知したときには自己の走行装置20を一時停止させる。このような条件で発進又は停止するアルゴリズムを各走行装置20に実装しておくことで、上位の制御局等によって各走行装置20を個別に制御しなくても、各走行装置20を自律的に既定経路10上の停車エリアARに分散して停止させることができる。また、このアルゴリズムによれば、各走行装置20を経路10上に停止させるアクションを複数回試行することで、各走行装置20を確実に停車エリアAR内に停止させることができる。さらに、このアルゴリズムによれば、例えば特許文献3に記載のシステムと比較して、複数の走行装置20を停車エリアAR内に停止させる時間を短縮することができる。
【0010】
本発明に係システム100において、制御部は、無線信号の受信後から所定時間経過しても、エリア検知部により停車エリアARに属していることを検知できない場合には、通信部から停車エリアARに属していないことを報知するための無線信号を発信することとしてもよい。このように、停車エリアARに属さない走行装置20がその旨を報知するための無線信号を発信した場合には、再びすべの走行装置20を発進させて、その後再び停車エリアARでの停止を指示するための無線信号を各走行装置20に受信させればよい。これにより、各走行装置20は停止アクションを再び実行することになる。このように停止アクションの試行回数を増やすことで、最終的にはすべての走行装置20を停車エリアAR内に停止させることができる。
【0011】
本発明に係るシステム100は、無線信号を発信可能な基地局30を含むこととしてもよい。ここで、経路10上を走行する走行装置20の総数を、N台(Nは2以上の整数)とする。また、停車エリアARには、それぞれM台(Mは2以上の整数)の走行装置20を停止させることが可能であるとする。この場合に、一度基地局30から無線信号を発信してから複数の走行装置20のすべてが停止するまでのアクションの試行回数Sは、(N/M)+1以上であることが好ましく、(N/M)+1とすることが特に好ましい。本発明におけるアルゴリズムによれば、(N/M)+1回の試行でほぼ確実にすべての走行装置20を停車エリアAR内に停止させることができる。
【0012】
本発明に係るシステム100において、停車エリアARは、走行装置20に搭載されているバッテリ25を充電するための充電器40を含むことが好ましい。充電器40は、有線又は無線のどちらでもよいが、走行装置20に充電用のケーブルを差し込む手間を省略するために、無線充電方式のものを採用することが好ましい。これにより、停車エリアARに停止中の走行装置20を充電することができる。
【0013】
本発明の第2の側面は、走行装置20そのものに関する。本発明に係る走行装置20は、複数の停車エリアARが設けられた周回可能な既定の経路10上を走行する。走行装置20は、停車エリアARに属していることを検知するエリア検知部と、前方の別の走行装置20に近接していることを検知する装置検知部と、停車エリアARでの停止を指示する無線信号を受信可能な通信部と、所定のアルゴリズムに基づいて自己の走行装置20の発進と停止を制御する制御部を有する。制御部は、無線信号の受信後に停車エリアAR内への進入を検知した場合には、当該停車エリアARの終点で停止することを目標に設定する。また、制御部は、目標の設定後に当該停車エリアARの終点に到達したときには、自己の走行装置20を当該停車エリアARの終点付近にて停止させる。また、制御部は、目標を設定した場合及び目標を設定していない場合のいずれの場合においても、自己の走行装置20が前方の別の走行装置20に近接したことを検知したときには自己の走行装置20を一時停止させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の走行装置を既定経路上の停車エリアに分散して停止させる時間をより短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、所定の経路上を自律走行する走行装置の例を示した模式図である。
図2図2は、経路の構成要素を示した分解斜視図である。
図3図3は、主に走行装置の構成要素の例を示したブロック図である。
図4図4は、走行装置に実装されたアルゴリズムの例を示したフロー図である。
図5図5は、調整走行開始から終了までのフローの例を示している。
図6図6は、調整走行時における各工程を模式的に示している。
図7図7は、調整走行時における各工程を模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0017】
図1は、本発明に係る走行システム100において、所定の経路10(レーン)の上を走行装置20が走行する様子を示している。走行装置20は、車体の駆動機構から推進力を得て経路10に沿って走行する。この経路10は、走行面の左右両側に側壁が設けられており、走行装置20の車体はこのレーンの側壁に接触しながら進行する。これにより、走行装置20はレーンの形状に沿って直進したりカーブしたりしながら前進することとなる。また、走行装置20には発光機構が備わっている。また、走行装置20は、車体の上部に取り付けられたドーム状のカバー29を備える。このカバー29は透明又は半透明であることから、カバー29内に設けられた発光機構が発光すると、その光はカバー29を透過して外部から視認される。
【0018】
次に、図2及び図3を参照して、走行装置20の構成例について説明する。図2に示されるように、走行装置20は、制御装置21と2つのモータ22を備える。各モータ22は、この電子基板等を介して制御装置21に電気的に接続されており、この制御装置21による制御を受ける。各モータ22には、それぞれ独立して駆動輪23が取り付けられている。バッテリ25から電力を供給して各モータ22を駆動させることで駆動輪23が回転し、これらの駆動輪23が経路10の路面に接することで走行装置20は推進力を得る。本実施形態において、走行装置20は、後輪駆動方式を採用しているため、各モータ22は走行装置20のシャーシの後方に搭載されている。図示した例では、走行装置20の進行方向を基準として、第1のモータ22(R)が右側の第1の駆動輪23(R)を回転させるものとなり、第2のモータ22(L)が左側の第2駆動輪23(L)を回転させるものとなる。なお、走行装置20は後輪駆動方式に限らず、前輪駆動方式としてもよい。
【0019】
各モータ22としては、公知のものを採用することができる。具体的には、各モータ22は、ステータ及びロータを含む回転部と、この回転部で得られた回転力を外部に出力するための出力軸(シャフト)を備える。また、各駆動輪23も、公知のものを採用することができる。具体的には、各駆動輪23は、金属製又はプラスチック製のホイール部材と、このホイール部材の外周に取り付けられた摩擦力の高いゴム製のタイヤ部材を備える。なお、タイヤ部材は、消耗品であることから、ホイール部材から取り外して適宜交換することが可能である。本実施形態では、各駆動輪23のホイール部材が、各モータ22の出力軸に直接固定されている。なお、ホイール部材と出力軸は、両者の間に生じる摩擦力で固定されていてもよいし、接着剤や溶接等の公知の固定手法を採用することとしてもよい。ただし、モータ22の出力軸と車輪のホイール部材は、ギアやシャフト等の中間部品を介在させることによって連動させることも可能である。
【0020】
また、走行装置20は、図2に示されるように、上記した各モータ22に固定された各駆動輪23に加えて、経路10の路面に接触する一又は複数の従動輪24を備える。この従動輪24は、モータ22等の駆動源には接続されておらず、走行装置20の走行を補助するための車輪である。本実施形態において、従動輪24は、走行装置20のシャーシの前方の左右二箇所に配置されている。なお、走行装置20の大きさ等に応じて従動輪24の数を増減することもできる。
【0021】
また、走行装置20は、バッテリ25を備える。バッテリ25は、一次電池であってもよいし、二次電池であってもよい。ただし、繰り返し充電可能とした方が運用効率が高いことから、バッテリ25としては二次電池を採用することが好ましい。特に、本実施形態では、バッテリ25を繰り返し自動的に充電することで、走行装置20を連続的に走行させることを想定している。バッテリ25の電力は、例えば制御装置21や、各モータ22や、センサ27、及び発光素子28に供給される。また、バッテリ25の充電残量は、プロセッサ21aにより監視することとしてもよい。
【0022】
また、走行装置20は、バッテリ25を充電するための無線受電器26を備える。無線受電器26は、受電用コイルと、この受電用コイルで受けた電力をバッテリ25に供給する回路を含む。受電用コイルは、外部からの電磁誘導によって電力を受け取ることができる。例えば、走行装置20が停車エリアARに停止したときに、この停車エリアARに設置された充電器40(無線送電器)が備える送電用コイルから、電磁誘導によって受電用コイルに電力が供給される。この受電用コイルで受け取った電力は、整流回路などを経由してバッテリ25へと供給され、バッテリ25は非接触式で充電される。このように、走行装置20受電用コイルによって外部機器からワイヤレスで電力を受け取ることができ、バッテリ25の充電が可能となる。また、バッテリ25の充電が開始されると、その信号が制御装置21(プロセッサ21a)に送出される。これにより、バッテリ25の充電状態/日充電状態は、プロセッサ21aにより監視されることになる。
【0023】
また、走行装置20は、図2に示されるように、センサ27として、NFC(近距離無全通信)センサ27aを備えることとしてもよい。例えば経路上の所定位置にはNFCタグを設置が設置されている。走行装置20のNFCセンサ27aは、経路上のNFCタグに近づいたときに、このNFCタグから発信される無線信号を検知して、その検知情報を制御装置21に伝達する。これにより、制御装置21は、NFCセンサ27aの検知情報に基づいて、走行装置20が経路上の所定位置に近接又は到達したと判断できる。後述するように、走行装置20は、停車エリアARの終点付近にて停止できる機能を有する必要がある。このため、停車エリアARの終点付近にNFCタグを設けておき、走行装置20がこのNFCセンサ27aによってNFCタグの存在を検知したときに、停車エリアARの終点付近であると判断し、そのNFCタグの設置個所にて停止することとしてもよい。
【0024】
ただし、走行装置20が停車エリアARの終点付近にて停止する方法は、これに限定されない。例えば、走行装置20は、経路上に描かれたマーカを読み取るための投光部と受光部を備えることとしてもよい。これらの投光部と受光部は、制御装置21に接続されており、検知情報を制御装置21に伝達する。経路上のマーカは、例えば特定波長の光を反射するものである。このため、投光部27と受光部27としては、特定波長の光をマーカに対して投光し、その反射光を受光することでマーカを検知することのできる光電センサを用いればよい。例えばマーカとして蛍光顔料が用いられている場合、投光部は、経路10の走行面に対して紫外光(ブラックライト)を照射し、受光部は、紫外光を受けてマーカの蛍光顔料から放射された可視光を受光する。受光部は、マーカの蛍光顔料から可視光を受光すると、受光部に対するマーカの相対位置などに関する情報を電気信号に変換して制御装置21に伝達する。また、その他、停車エリアARを検知するためのセンサとしては、音センサや、RFID、QRコード(登録商標)センサ、バーコードセンサ、IRマーカセンサ、画像認識センサ、UWBセンサ、磁石・Hallセンサなどの各種公知のセンサを利用することができる。
【0025】
また、走行装置20のセンサ27は、図2に示されるように、近接センサ27bをさらに含む。この近接センサ27bは、走行装置20の車体の前端部分に取り付けられている。近接センサ27bは、自己の走行装置20が、その前方の走行装置20に対して所定距離未満まで近接したことを検知する。近接センサ27bとしては、公知のものを用いることができる。近接センサ27bは、例えば、赤外線センサやミリ波レーダー、超音波センサ等を用いることができる。これらのセンサは、自己の走行装置20の前方に他の走行装置20が存在する場合、その距離を計測することが可能である。具体的には、赤外線センサは赤外線を送信してその反射光を計測する。ミリ波レーダーは電波を送信してその反射波を計測する。超音波センサは音波を送信してその反射音を計測する。このような遠隔計測センサを近接センサ27bとして用いて、前方の走行装置20との距離が所定距離未満に近づいたことを検知した場合、走行装置20間の衝突を防止するために、走行装置20は、前方の走行装置20に対して所定の車間距離を確保して自動的に停止する。一方で、この自動停止後、前方の走行装置20との距離が所定距離以上になったことを検知した場合、走行装置20は、再び発進して走行を継続する。
【0026】
また、走行装置20は、図2に示されるように、一又は複数の発光素子28をさらに備えていてもよい。複数の発光素子28は、電子基板等を介して制御装置21に電気的に接続されており、この制御装置21による制御を受ける。また、走行装置20のカバー29は、透明又は半透明であることから、発光素子28が発光すると、その光はカバー29を透過して外部から視認される。カバー29としては、例えば公知のポリカーボネート素材やシリコン素材を用いることができる。さらに、カバー29は、ハーフミラーによって構成されていてもよい。ハーフミラーは、その内部から外部へ向かう光を透過し、外部から内部へ向かう光は反射する。この場合、例えばシリコン部材からなるカバー29の内面にハーフミラーのフィルムを貼付すればよい。
【0027】
図3は、制御装置21を中心とした制御系を示したブロック図である。図3に示した例において、制御装置21は、プロセッサ21a、メモリ21b、無線モジュール21c、駆動制御回路21d、センサ制御回路21e、及び発光制御回路21fを含む。プロセッサ21aの例は、公知のCPUやその他の制御回路である。プロセッサ21aは、メモリ21bに記憶されている所定のアルゴリズム(プログラム)やデータに従って所定の演算処理を行い、その演算結果をメモリ21bの作業空間に書き出しながら各種の制御処理を実行する。メモリ21bは、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリや、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリから構成され、上記したプロセッサ21aによる演算処理に利用される。本実施形態において、プロセッサ21aは、メモリ21bに記憶されたプログラムを読み出し、このプログラムに従って、各モータ22を駆動させたり、各発光素子28を発光させるための処理を行う。
【0028】
無線モジュール21cは、基地局30との間で無線信号の送受信を行う。基地局30からは、例えば、走行装置20を停止させるための停止信号、走行装置20を発進させるための発進信号、及び、走行装置20の充電を開始するための充電信号が発信される。これらの基地局30から発信される無線信号(停止信号、発進信号、及び充電信号)は、経路上を走行する複数の走行装置20全体を対象としたものであり、すべての走行装置20に対して同じ指示内容の無線信号が発信されることとなる。すなわち、基地局30は、各走行装置20に対して個別に無線信号を送信して、その無線信号によって各走行装置20の停止や発進等を個別に制御するものではない。無線信号には、その信号による制御の対象となる走行装置20を特定するための情報は含まれない。各走行装置20は、走行中に基地局30から停止信号を受信すると、その場で停止する。また、各走行装置20は、停止中に基地局30から発進信号を受信すると、走行を開始する。また、各走行装置20は、走行中に基地局30から充電信号を受信すると、詳しくは後述する調整走行を開始する。基地局30が発信する電波は、2.4GHz、5GHz、又はSub1Ghzなどの公知の無線規格に準じたものとすればよい。また、各走行装置20は、無線モジュール21cを介して基地局30に対して所定の無線信号を発信することもできる。
【0029】
駆動制御回路21dは、プロセッサ21aの制御命令に基づいて、モータ22(R,L)が所定の回転条件(回転速度、回転方向等)で駆動するように、バッテリ25から電力を各モータ22に供給する回路である。なお、各モータ22の回転方向を切り替えることで、走行装置20の前進と後退を切り替えることもできる。また、この駆動制御回路21dは、第1のモータ22(R)及び第2のモータ22(R)をそれぞれ独立して制御することが可能である。
【0030】
センサ制御回路21eは、プロセッサ21aの制御命令に基づいて、バッテリ25から電力をセンサ27に供給してそのオンオフを制御したり、受光部27bや近接センサ27bにより得られた情報(電気信号)をプロセッサ21aに伝達する回路である。プロセッサ21aは、例えば、受光部27bによって検知された経路10上のマーカの位置情報に基づいて、モータ22を停止するための制御命令を生成し、駆動制御回路21dに出力する。また、プロセッサ21aは、例えば、近接センサ27bによって前方の走行装置20の近接状態が検知されたときに、モータ22を停止するための制御命令を生成し、駆動制御回路21dに出力する。また、プロセッサ21aは、近接センサ27bによって前方の走行装置20の離脱が検知されたときに、モータ22を再度駆動するための制御命令を生成し、駆動制御回路21dに出力する。
【0031】
発光制御回路21fは、プロセッサ21aの制御命令に基づいて、各発光素子28が所定の発光条件(発光色、明度等)で発光するように、バッテリ25から電力を各発光素子28に供給する回路である。この発光制御回路21fは、各発光素子28をそれぞれ独立して制御することが可能である。
【0032】
続いて、図4から図7を参照して、経路10上を走行する複数の走行装置20がそれぞれ独自にバッテリ充電用の停車エリアARで停止する判断を行うためのアルゴリズムについて説明する。図6及び図7に示されるように、経路10付近には基地局30が設けられており、この基地局30から経路10上の走行装置20全体を対象として無線信号が発信される。ただし、この基地局30からは、走行装置20のそれぞれに対して個別に停車や発進等に関わる制御命令が提供されているわけではない。複数の走行装置20は、基地局30からの無線信号を受けると、それぞれに実装されたアルゴリズムに基づいて停止や発進を行うことを独自に判断する。それにも関わらず、本実施形態では、最終的には、一つの停車エリアARの収容台数以上の走行装置20が集中して停止したり、走行装置20同士が経路10で衝突したりすることなく、すべての走行装置20を複数の停車エリアAR(バッテリ充電用)に分散して停止させることができる。図4及び図5は、これを実現するために各走行装置20に実装されたアルゴリズムの例を示している。また、図6及び図7は、経路10における複数の走行装置20の動作の一例を模式的に示している。
【0033】
図4に示すように、各走行装置20は、基本的には、経路10上において自由走行状態にある(ステップS1)。走行装置20は、例えば基地局30から発進信号を受けると、モータ22を駆動させて発進し、そのまま経路10での自由走行を継続する。なお、走行装置20は、自由走行状態においても、近接センサ27bにより前方の別の走行装置20が近接したことを検知したときには、その前方の走行装置20との距離が所定以上離間するまで一時停止する。この走行装置20の自由走行は、基地局30から停止信号を受信するか、充電信号を受信するまで継続する。すべての走行装置20は、基地局30から停止信号を受信した場合には、その場で停止する。また、すべての走行装置20は、基地局30から充電信号を受信した場合には、後述する調整走行へと移行する。ここでは、基地局30から充電信号が発信された場合について詳しく説明する。
【0034】
複数の走行装置20は、自由走行状態において、基地局30から充電信号を受信した場合(ステップS2)、充電用の停車エリアAR(以下「充電エリア」ともいう。)に分散停止するための調整走行を開始する(ステップS3)。調整走行開始後から終了までの詳細なフローは、図5を参照して後述する。
【0035】
各走行装置20は、自由走行状態において、基地局30から充電信号を受信して調整走行へと移行した場合、その時点において、充電エリア内に属しているかどうかを判断する(ステップS4)。例えば図6(a)に示すように、周回可能な経路10上には、複数の充電エリアが設けられている。各充電エリアには、走行装置20のバッテリ25を無線充電するための充電器40が複数台設けられている。各充電エリアは、収容可能な走行装置20の台数に制限があり、この制限台数以内の走行装置20であれば同時に無線充電が可能である。図6及び図7に示した例では、各充電エリアに収容可能な走行装置20の台数は3台となっている。各走行装置20は、経路10上の充電エリア内に入ると、充電エリアに設けられた充電器40から電力を受け取り、バッテリ25の無線充電が開始される。このため、各走行装置20は、バッテリ25が充電状態にあるときには充電エリア内に属していると判断し、バッテリ25が非充電状態にあるときには充電エリア内に属していないと判断する。
【0036】
その後、ステップS4において充電エリアに属さないと判断した走行装置20は、そのまま自由走行を継続することになるが、いずれは充電エリアに進入することとなる(ステップS5)。この場合、充電信号受信時点においては非充電状態であった走行装置20は、充電エリアに進入したことにより充電状態へと変化する。このように、調整走行を開始してから終了するまでの所定時間内に、充電信号の受信後に充電エリアに進入したことにより非充電状態から充電状態に変化した場合には、その走行装置20は、その充電エリアの終点に向けて目標停止走行を開始する(ステップS6)。目標停止走行とは、充電エリアの終点付近で停止することを目標にして走行することをいう。上記の条件を満たした走行装置20は、目標停止走行のフラグが立ち、目標停止走行状態特有の動作を行う。このように目標停止走行を行う走行装置20を、「目標停止走行車」という。なお、後述するように、目標停止走行車であっても、近接センサ27bにより前方の別の走行装置20が近接したことを検知したときには、その前方の走行装置20との距離が所定以上離間するまで一時停止する。また、調整走行が終了するまでの所定時間内に充電エリアに進入しなかった場合には、その走行装置20は目標停止走行を行わない。
【0037】
一方で、ステップS4において充電エリアに属すると判断した走行装置20は、そのまま充電エリア外に向けて自由走行を継続する(ステップS7)。走行装置20は、充電エリアから離脱すると充電状態から非充電に変化する。この走行装置20は、充電エリアを抜けた後もそのまま自由走行を継続する。ただし、近接センサ27bにより前方の別の走行装置20が近接したことを検知したときには、その前方の走行装置20との距離が所定以上離間するまで一時停止する。なお、充電信号受信時点において充電エリアに属していた走行装置20であっても、調整走行を開始してから終了するまでの所定時間内に、再び充電エリアに進入したことにより非充電状態から充電状態に変化した場合(ステップS5)には、その充電エリアの終点に向けて目標停止走行を開始することとなる(ステップS6)。
【0038】
図6(a)は、基地局30から充電信号が発信された時点での経路10上における走行装置20の配置例を模式的に示している。また、図6(b)は、調整走行中に、図6(a)に示した状態からある程度の時間が経過した後の走行装置20の配置例を示している。この例では、経路10上に7台の走行装置20(それぞれ1番~7番の番号で示している)が存在し、またこの経路10上の3箇所に充電エリア(それぞれA~Cの符号で示している)が設けられている。また、各充電エリアに収容可能な走行装置20の台数は3台である。図6(a)に示すように、経路10上を走行する7台の走行装置20のうち、充電信号の受信時点において充電エリアに属していないものは、1番、4番、及び7番の走行装置20である。また、これらの走行装置20のうち、図6(b)に示すように時間経過後に充電エリアに進入したものは、4番と7番の走行装置20である。このため、これらの4番と7番の走行装置20は、自らが目標停止走行車であると判断する。特に、4番の走行装置20は、充電エリアAに進入したことから、この充電エリアAの終点付近にて停止することを目標に設定する。また、7番の走行装置20は、充電エリアBに進入したことから、この充電エリアBの終点付近にて停止することを目標に設定する。なお、1番の走行装置20も充電エリアに進入した時点で目標停止走行車となる。他方で、経路10上を走行する7台の走行装置20のうち、充電信号の受信時点において充電エリアに属していたものは、2番、3番、5番、及び6番の走行装置20である。これらの走行装置20は、充電エリア外に向け走行し、充電エリアからの離脱後はそのまま自由走行を継続する。
【0039】
続いて、図5は、主に調整走行を開始してから調整走行が終了するまでのフローを示している。図4に示したフローと図5に示したフローは並行して実行される。
【0040】
図5に示されるように、各走行装置20の制御装置21は、充電信号を受信して調整走行を開始すると(ステップS3)、調整走行の開始時点からの経過時間の計測を開始する。なお、走行装置20は、経過時間の計測と共に、又は経過時間の計測に代えて、調整走行開始時点から走行した距離の計測を行うこととしてもよい。
【0041】
この各走行装置20の調整走行は、所定時間の経過により終了となる。このため、各走行装置20は、調整走行開始時から所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS8)。そして、各走行装置20は、所定時間が経過した場合には調整走行を終了させる(ステップS15)。一方で、各走行装置20は、所定時間が経過するまでは、以下に説明するステップS9~S14までの処理を行う。ここにいう「所定時間」は、例えば、経路10にて隣り合う2つの充電エリアのうち、先の充電エリアの始点から次の充電エリアの終点までの距離が最も長くなる区間を、走行装置20が走行し終えるのに要する時間を基準として決定すればよい。図6及び図7に示した例では、充電エリアAの始点から充電エリアBの終点までの区間が最長区間となる。すべての走行装置20はおよそ等速(±10%以内)で経路10を走行していることから、この最長区間を走行し終えるのに要する時間はどの走行装置20もおよそ同じとなる。走行装置20の走行速度に例えば±10%以上のバラつきがある場合には、経路10を同時に走行装置20の平均速度に基づいて、この最長区間の走行に要する時間(すなわち所定時間)を求めればよい。なお、走行装置20が調整走行開始時点からの走行距離を計測している場合には、ステップS8において上記した所定時間を経過したか否かを判断することに代えて、所定距離を走行したか否かを判断することもできる。この場合に、この所定距離は、上記した最長区間を基準として決定すればよい。
【0042】
調整走行開始後、所定時間が経過するまでの間、ステップS6において目標停止走行車に設定された走行装置20は、自己の目標とする充電エリアの終点に到達したか否かを判断する(ステップS9)。充電エリアの終点であるかどうかは、例えば、充電エリアの終点付近に設置されたNFCタグをNFCセンサ27aで読み取ることによって判断してもよい。また、例えば、充電エリアの全長は既知であることから、走行装置20は、充電エリアに進入してから走行距離の計測を開始し、その計測した走行距離が充電エリアの全長(つまり終点までの距離)に達したときに終点に到達したと判断してもよい。また、充電エリアの全長と走行装置20の走行速度は既知であることから、走行装置20は、充電エリアに進入してから走行している時間の計測を開始し、その計測した走行時間が充電エリアの全長を走行するのに要する時間に達したときに終点に到達したと判断してもよい。このようにして、目標停止走行車である走行装置20は、充電エリアの終点に到達できたと判断した場合には、その充電エリアの終点に付近にて停止する(ステップS10)。一方で、目標停止走行車である走行装置20は、充電エリアの終点に到達できていないと判断した場合には、次のステップ(ステップS11)へ移行する。なお、ステップS9とステップS10は、ステップS6において目標停止走行車に設定された走行装置20のみが行うものであり、他の走行装置20については、このステップS9とステップS10は省略される。
【0043】
次に、各走行装置20は、調整走行中、その前方の走行装置20に近接し、前方の走行装置20との間の間隔が所定距離未満となったか否かを判断する(ステップS11)。前方の走行装置20との間の間隔は、近接センサ27bの検知情報に基づいて制御装置21が測定する。なお、このステップS11の判断は、目標停止走行車であるか否かに関わらず、すべての走行装置20が行う。前方の走行装置20との間の間隔が所定距離となった場合に、走行装置20は、前方の走行装置20との間隔を空けながらその場に停止する(ステップS12)。一方で、前方の走行装置20との間の間隔が所定距離以上である場合、走行装置20は走行を継続し、所定時間が経過したか否か(ステップS8)、充電エリアの終点に到達したか否か(ステップS9、ただし目標停止走行車に限る)の判断を行う。
【0044】
次に、各走行装置20は、調整走行中、その前方の走行装置20に近接して一時停止した場合、前方の走行装置20が離間し、前方の走行装置20との間の間隔が所定距離以上となったか否かを判断する(ステップS13)。前方の走行装置20との間の間隔が所定距離以上となった場合に、走行装置20は、再び発進して経路10上での走行を継続する(ステップS14)。前方の走行装置20との間の間隔が所定距離未満である場合には、走行装置20は、その場での停止を継続する。その後、走行装置20は、所定時間が経過したか否か(ステップS8)、充電エリアの終点に到達したか否か(ステップS9、ただし目標停止走行車に限る)の判断を行う。
【0045】
各走行装置20は、上記したステップS9~S14までの処理を、調整走行開始時から所定時間が経過するまで継続して行う。そして、各走行装置20は、所定時間の経過したときに調整走行を終了させる(ステップS15)。所定時間の調整走行を行うことで、経路10上の走行装置20は、基本的にはステップS10又はステップS12により停止することになる。ただし、例外的に所定時間を経過しても停止していない走行装置20が存在する可能性もあることから、調整走行の終了時点にて各走行装置20は走行の停止を行う(ステップS15)。なお、すでに停止している走行装置20はそのまま停止し続ける。
【0046】
調整走行終了後に、各走行装置20は、自身が充電エリアに属しているか否かを判断する(ステップS17)。つまり、各走行装置20は、バッテリ25の充電が行われていれば充電エリアに属し、バッテリ25の充電が行われていなければ充電エリアに属していないと判断する。充電エリアに属していると判断した走行装置20は、そのまま充電エリアに停止することでバッテリ25の充電を行う。一方で、充電エリアに属していないと判断した走行装置20は、無線モジュール21cを介して、充電エリアに属していないことを知らせるための無線信号を基地局30に向けて発信する。基地局30は、走行装置20からの無線信号を受信する。調整走行の終了後、各走行装置20は、再び基地局30から発進信号が発信されるまでその場での待機を続けることとなる。
【0047】
図7は、図6に引き続き、調整走行中の各走行装置20の動作の一例を示している。図7(c)に示すように、4番、6番、及び7番の走行装置20は、調整走行中に、非充電状態から充電エリアへと進入することによって充電状態へと変化したため、目標停止走行車として設定されている。その結果、4番、6番、及び7番の走行装置20は、各充電エリアの終点付近にて停止することとなる。また、他の1番、2番、3番、及び5番の走行装置20は、前方の走行装置20との間の間隔が所定距離未満となったことを理由にその場で停止している。なお、これらの1番、2番、3番、及び5番の走行装置20の中には、調整走行中に、非充電状態から充電状態へと変化したため目標停止走行車として設定されたものも存在するが、それらの走行装置20はその前方に別の走行装置20が存在することが原因で、充電エリアの終点まで到達できていない。
【0048】
図7(c)に示した例では、各充電エリアは3台の走行装置20まで受け入れることができる。充電エリアAには、4番及び5番の走行装置20が属し、充電エリアBには7番、1番、及び2番の走行装置20が属し、充電エリアCには6番の走行装置20が属している。しかしながら、3番の走行装置20はいずれの充電エリアにも属することができない。充電エリアBにはすでに3台の走行装置20が属しており、3番の走行装置20は、その前方にて2番の走行装置20が停止していることから充電エリアBに進入できずにその手前で停止していることとなる。この場合、調整走行の所定時間を経過した時点で、3番の走行装置20は、充電エリアに属することができなかったことを知らせる無線信号を基地局30へと発信する。
【0049】
基地局30は、走行装置20のいずれかから充電エリアに属することができなかったことを知らせる無線信号を受信すると、各走行装置20に対して発進信号を発信し、それと同時又はその直後に再び調整走行を開始するための充電信号を発信する。すなわち、基地局30は、各走行装置20に対して発進信号を発信した後、走行装置20が充電エリアから離脱し始める前に充電信号を発信する。基地局30は自動的に発進信号及び充電信号を発信するようにプログラムされたものであってもよいし、オペレータが基地局30等を手動で操作してこれらの信号を基地局30から発信させることとしてもよい。各走行装置20は、基地局30から充電信号を受信すると、現在属している充電エリアから離脱し、次の充電エリアへ向けて走行することとなる。
【0050】
図7(d)は、図7(c)に示した状態で発進信号及び充電信号が基地局30から発信され、その後に各走行装置20が調整走行を終えて再び停止した状態を示している。図7(d)に示すように、充電エリアAでは、6番の走行装置20が先頭の目標停止走行車となり、その終点付近で停止している。充電エリアBでは、図7(c)に示した状態では充電エリアBに進入できなかった3番の走行装置20が先頭の目標停止走行車となり、その終点付近で停止している。また、充電エリアBには、3番の走行装置20に続き、4番及び5番の走行装置20が停止している。また、充電エリアCでは、7番の走行装置20が先頭の目標停止走行車となってその終点付近で停止し、これに続いて1番及び2番の走行装置20が停止している。そして、図7(d)に示した状態では、すべての走行装置20が充電エリア内に停止することに成功している。このように、調整走行を複数回繰り返すことで、いずれ必ずすべての走行装置20を充電エリア内に停止させることが可能となる。
【0051】
上記した例では、調整走行後に充電エリアに停止できなった走行装置20が無線信号を発信することで、再び調整走行を行うこととした。ただし、これに限らず、予め調整走行を繰り返す回数を定めおき、調整走行後に充電エリアに停止できなった走行装置20が存在するか否かに関わらず、所定回数の調整走行を行うようにしてもよい。具体的には、経路10上を走行する走行装置20の総数をN台(Nは2以上の整数)とし、充電エリアに一度に停止させることのできる走行装置20の許容数をM台(Mは2以上の整数)とする。この場合に、調整走行を繰り返す試行回数S(小数点以下切り捨て)は、(N/M)+1又はそれ以上とすればよい。例えば、図6及び図7に示した例では、走行装置20の総数Nは7台であり、充電エリアの許容数Mは3台である。この場合、調整走行の試行回数Sは、(7/3)+1であるため、3回となる。このように、図示した例では、調整走行を少なくとも3回繰り返し行うことで、理論上は必ずすべての走行装置20が充電エリア内にて停止することとなる。
【0052】
上記した各走行装置20に実装されたアルゴリズムに基づいて、各走行装置20が停止と発進を繰り返すことで、経路10上の複数の充電エリアに各走行装置20を分散して停止させることができる。また、本実施形態では基地局30から各走行装置20に対して無線信号(発進信号、停止信号、充電信号)を発信することとしているが、この無線信号は複雑な情報を含むものではないことから、各走行装置20に対して伝達しやすい。そして、本実施形態によれば、複数の走行装置20を既定経路10上の充電エリアに分散して停止させる時間をより短縮することができる。
【0053】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【0054】
例えば、前述した実施形態では、走行装置20の走行制御手段として、2つのモータ22を独立して制御することにより走行装置20の進行方向を調整するという手段を採用した。ただし、走行装置20の走行制御手段はこれに限られない。例えば、駆動輪23(後輪)を回転させるモータ22の他に、一又は複数の従動輪24(前輪)の向き(ヨー角)を回動させるための操舵用モータを設け、この操舵用モータで従動輪の向きを制御することにより、走行装置20全体の進行方向を調整することも可能である。走行装置20の進行方向は従動輪24の向きによって決まることとなる。なお、この場合、駆動輪23(後輪)を回転させる2つのモータ22を独立制御する必要はなく、単純に同じ回転数かつ同じ回転方向とすればよい。その他、走行装置20の走行制御手段は公知のものを採用することが可能である。
【0055】
また、例えば、前述した実施形態では、各停車エリアARに充電器40を設けることとしているが、必ずしも停車エリアARに充電器40を設ける必要はない。例えば、複数の走行装置20が経路10上を連続的走行していると、各走行装置20の速度差などによって部分的に走行装置20が密集したり、反対に走行装置20の間が離れすぎたりすることがある。このとき、本発明により、各走行装置20を一時停止させた後、経路10上に設けられた停車エリアARに分散させてそこで一時的に待機させることで、経路10上において走行装置20が走行する間隔を適度に調整することができる。
【符号の説明】
【0056】
10…経路 20…走行装置
21…制御装置 21a…プロセッサ
21b…メモリ 21c…無線モジュール
21d…駆動制御回路 21e…センサ制御回路
21f…発光制御回路 22…モータ
23…駆動輪 24…従動輪
25…バッテリ 26…無線受電器
27…センサ 27a…NFCセンサ
27b…近接センサ 28…発光素子
29…カバー 30…基地局
40…充電器 100…システム
AR…停車エリア(充電エリア)
【要約】
【課題】複数の走行装置を既定経路上の停車エリアに分散して停止させる時間をより短縮する。
【解決手段】周回可能な既定の経路10上で複数の走行装置20を走行させるためのシステムであって、走行装置20のそれぞれは、経路10上の停車エリアARに属していることを検知するエリア検知部と、前方の走行装置20に近接していることを検知する装置検知部と、停車エリアARでの停止を指示するための無線信号を受信する通信部と、走行装置20の発進と停止を制御する制御部を有する。各走行装置20は、無線信号の受信後に停車エリアARへの進入を検知した場合には、当該停車エリアARの終点で停止することを目標に設定し、目標の設定後に当該停車エリアARの終点に到達したときにはその場で停止し、目標を設定の有無に関わらず前方の走行装置20に近接したことを検知したときにはその場で一時停止する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7