(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】製剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/742 20150101AFI20241107BHJP
A61K 35/744 20150101ALI20241107BHJP
A61K 35/745 20150101ALI20241107BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241107BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20241107BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241107BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20241107BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241107BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241107BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
A61K35/742
A61K35/744
A61K35/745
A61P1/04
A61K9/48
A61K9/14
A61K47/38
A61K47/32
A61K47/36
A61K47/26
(21)【出願番号】P 2024524394
(86)(22)【出願日】2023-11-16
(86)【国際出願番号】 JP2023041230
【審査請求日】2024-04-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114282
【氏名又は名称】ミヤリサン製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 典子
(72)【発明者】
【氏名】堀内 大杜
(72)【発明者】
【氏名】小林 優矢
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/146523(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/006935(WO,A1)
【文献】特開2018-021000(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0038655(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00-33/44
A61K47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
菌体と、
クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種の崩壊剤と、
賦形剤(ただし、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウ
ムを除く)と、を含む、カプセル剤用製剤組成物
(ただし、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む組成物を除く)であって、
前記菌体の含有量は、前記製剤組成物の全質量に対して、3.0質量%以上35.0質量%以下であり、
前記菌体の含有量が、前記製剤組成物の全質量に対して、3.0質量%以上29.5質量%以下である場合、前記崩壊剤の含有量は、前記製剤組成物の全質量に対して、5.0質量%以上14.0質量%以下であり、
前記菌体の含有量が、前記製剤組成物の全質量に対して、29.5質量%超35.0質量%以下である場合、前記崩壊剤の含有量は、前記製剤組成物の全質量に対して、10.0質量%以上14.0質量%以下である、カプセル剤用製剤組成物。
【請求項2】
前記菌体は、酪酸菌、乳酸菌およびビフィズス菌からなる群から選択される少なくとも1種の細菌の菌体である、請求項1に記載のカプセル剤用製剤組成物。
【請求項3】
前記菌体は、スプレードライまたは流動層造粒法により調製された乾燥物の形態である、請求項1に記載のカプセル剤用製剤組成物。
【請求項4】
前記賦形剤の含有量は、前記製剤組成物の全質量に対して、50.0質量%以上85.0質量%以下である、請求項1に記載のカプセル剤用製剤組成物。
【請求項5】
前記賦形剤は、乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方と、コーンスターチとを含む、請求項1に記載のカプセル剤用製剤組成物。
【請求項6】
前記乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方の含有量は、前記賦形剤の全質量
に対して、12.0質量%以上47.0質量%以下である、請求項5に記載のカプセル剤用製剤組成物。
【請求項7】
前記乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方に対する前記コーンスターチの質量比は、1.0以上6.4以下である、請求項5に記載のカプセル剤用製剤組成物。
【請求項8】
前記賦形剤は、結晶セルロースをさらに含む、請求項5に記載のカプセル剤用製剤組成物。
【請求項9】
前記乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方に対する前記結晶セルロースの質量比は、0.12以上0.80以下である、請求項8に記載のカプセル剤用製剤組成物。
【請求項10】
滑沢剤をさらに含む、請求項1に記載のカプセル剤用製剤組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のカプセル剤用製剤組成物を含む、カプセル剤
(ただし、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含むカプセル剤を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
製剤の形態の一つに固形製剤がある。固形製剤は、一般的に使用される剤形であり、カプセル剤、錠剤などの固体状態の製剤をいう。固形製剤には、薬効成分、有効成分などに加えて、賦形剤などの添加剤が含まれている。
【0003】
微生物は、製剤の薬効成分、有効成分などの一つとして注目されている。このような微生物として、「腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物」であるプロバイオティクスが利用されている。
【0004】
微生物を含む固形製剤では、状況に応じて固形製剤中の微生物の含有量を変化させることが行われている。しかし、微生物の含有量を高めた場合、固形製剤の崩壊性が低下するおそれがある。
【0005】
このような問題を解決するため、特開2022-031035号公報には、乳酸菌粉末と麦芽糖粉末と結着剤とを特定の比率で含有する錠剤が開示されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、固形製剤の崩壊性を改善し得る新たな製剤組成物を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者らは、驚くべきことに、菌体(微生物)の含有量に対する特定の崩壊剤の含有量を所定の範囲とすることにより、固形製剤の崩壊性を改善し得ることを見出した。そして、この知見に基づき、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一形態によれば、菌体と、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種の崩壊剤と、賦形剤(ただし、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムを除く)と、を含む製剤組成物であって、前記菌体の含有量は、3.0質量%以上35.0質量%以下であり、前記菌体の含有量が3.0質量%以上29.5質量%以下である場合、前記崩壊剤の含有量は、5.0質量%以上14.0質量%以下であり、前記菌体の含有量が29.5質量%超35.0質量%以下である場合、前記崩壊剤の含有量は、10.0質量%以上14.0質量%以下である、製剤組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】比較例1のカプセル剤の崩壊性試験の結果を示すグラフである。
【
図2】比較例2のカプセル剤の崩壊性試験の結果を示すグラフである。
【
図3】実施例4~5および比較例3~8のカプセル剤崩壊性試験の結果を示すグラフである。
【
図4】実施例6~8のカプセル剤の崩壊性試験の結果を示すグラフである。
【
図5】実施例9~10のカプセル剤の崩壊性試験の結果を示すグラフである。
【
図6】実施例3および11のカプセル剤の充填量の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一形態に係る実施の形態を説明する。本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
【0011】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
【0012】
<製剤組成物>
本発明の一形態は、菌体と、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種の崩壊剤と、賦形剤(ただし、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムを除く)と、を含む製剤組成物であって、前記菌体の含有量は、3.0質量%以上35.0質量%以下であり、前記菌体の含有量が3.0質量%以上29.5質量%以下である場合、前記崩壊剤の含有量は、5.0質量%以上14.0質量%以下であり、前記菌体の含有量が29.5質量%超35.0質量%以下である場合、前記崩壊剤の含有量は、10.0質量%以上14.0質量%以下である、製剤組成物に関する。かかる構成により、固形製剤の崩壊性を改善することができる。
【0013】
本明細書において、「クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種の崩壊剤」を単に「本発明に係る崩壊剤」とも称する。
【0014】
本明細書において、「クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウム」以外の崩壊剤が賦形剤としての用途を有する場合、これらの崩壊剤は、賦形剤として扱う。
【0015】
本明細書において、本発明に係る製剤組成物が菌体を菌末の形態で含む場合、菌末中の菌体以外の成分は、それぞれ対応する成分(崩壊剤、賦形剤、滑沢剤または他の成分)として扱う。
【0016】
本発明に係る製剤組成物は、菌体を含む。
【0017】
菌体としては、特に制限されず、製剤に使用される菌体を使用することができる。菌体は、好ましくは酪酸菌、乳酸菌およびビフィズス菌からなる群から選択される少なくとも1種の細菌の菌体である。
【0018】
酪酸菌としては、例えば病原性を有しないクロストリジウム(Clostridium)属に属する酪酸菌が挙げられる。酪酸菌の具体例としては、クロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)が挙げられる。酪酸菌は、公知であり、常法により入手可能である。
【0019】
クロストリジウム・ブチリカムの具体例としては、クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588(Clostridium butyricum MIYAIRI 588、FERM BP-2789)、クロストリジウム・ブチリカム・NIP1020(Clostridium butyricum NIP1020)、クロストリジウム・ブチリカム・NIP1021(Clostridium butyricum NIP1021)、クロストリジウム・ブチリカム(FERM P-11868)、クロストリジウム・ブチリカム(FERM P-11868)、クロストリジウム・ブチリカム(FERM P-11869)、クロストリジウム・ブチリカム(FERM P-11870)、クロストリジウム・ブチリカム・ATCC859(Clostridium butyricum ATCC859)、クロストリジウム・ブチリカム・NBRC3315(Clostridium butyricum NBRC3315)、クロストリジウム・ブチリカム・ATCC860(Clostridium butyricum ATCC860)、クロストリジウム・ブチリカム・ATCC19398(Clostridium butyricum ATCC19398)などが挙げられる。これらはいずれも独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに寄託・保管されている。クロストリジウム・ブチリカムは、好ましくはクロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588(Clostridium butyricum MIYAIRI 588、FERM BP-2789)、クロストリジウム・ブチリカム ミヤイリ 585(FERM BP-06815)、クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ595(FERM BP-06816)およびクロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ630(FERM BP-06817)からなる群より選択される1種以上であり、さらに好ましくはクロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588(Clostridium butyricum MIYAIRI 588、FERM BP-2789)である。クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588株は、1981年5月1日付で通商産業省工業技術院微生物工業技術研究所(現在の独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター)(〒292-0818 日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)にFERM BP-2789として寄託され、1990年3月6日付で、ブダペスト条約に基づく国際寄託機関に移管され、受託番号FERM BP-2789として寄託されている。
【0020】
乳酸菌としては、例えば病原性を有しないラクトバシラス(Lactobacillus)属およびエンテロコッカス(Enterococcus)属に属する乳酸菌が挙げられる。乳酸菌の具体例としては、ラクトバシラス・アシドフィラス(Lactobacillus aciddophilus)、ラクトバシラス・カセイ(Lactobacillus casei)、ラクトバシラス・パラカセイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバシラス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバシラス・バルガリカス(Lactobacillus buigericus)、ラクトバシラス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバシラス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバシラス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバシラス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバシラス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバシラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバシラス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバシラス・デルブリッキィ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバシラス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバシラス・サリバリウス(Lactobacillus salibarius)、ラクトバシラス・ファルシミニス(Lactobacillus farciminis)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、 エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)などが挙げられる。これらの乳酸菌は、公知であり、常法により入手可能である。
【0021】
ビフィズス菌としては、例えば病原性を有しないビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属するビフィズス菌が挙げられる。ビフィズス菌の具体例としては、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)などが挙げられる。これらのビフィズス菌は、公知であり、常法により入手可能である。
【0022】
本発明に係る製剤組成物において、菌体の含有量は、製剤組成物の全質量に対して、3.0質量%以上35.0質量%以下である。菌体の含有量は、製剤組成物の全質量に対して、4.0質量%以上34.0質量%以下、8.0質量%以上34.0質量%以下、20.0質量%以上34.0質量%以下、25.0質量%以上34.0質量%以下であってもよい。
【0023】
本発明に係る製剤組成物において、菌体は、好ましくは乾燥物の形態(菌末)であり、より好ましくはスプレードライまたは流動層造粒法により調製された乾燥物の形態である。菌体を乾燥物の形態にする方法(好ましくはスプレードライおよび流動層造粒法)は、特に制限されず、従来公知の手法を使用することができる。本明細書中、菌体の乾燥物中の賦形剤は、後述の賦形剤として取り扱う。菌体の乾燥物が崩壊剤、滑沢剤および他の成分をさらに含む場合、崩壊剤、滑沢剤および他の成分は、それぞれ後述の崩壊剤、滑沢剤および他の成分として取り扱う。
【0024】
本発明に係る製剤組成物は、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種の崩壊剤を含む。
【0025】
本発明に係る製剤組成物において、菌体の含有量が、製剤組成物の全質量に対して、3.0質量%以上29.5質量%以下である場合、崩壊剤の含有量は、製剤組成物の全質量に対して、5.0質量%以上14.0質量%以下であり、菌体の含有量が、製剤組成物の全質量に対して、29.5質量%超35.0質量%以下である場合、崩壊剤の含有量は、製剤組成物の全質量に対して、10.0質量%以上14.0質量%以下である。
【0026】
一実施形態では、
菌体の含有量が、製剤組成物の全質量に対して、4.0質量%以上29.5質量%以下である場合、崩壊剤の含有量は、製剤組成物の全質量に対して、5.0質量%以上14.0質量%以下、5.0質量%以上10.0質量%以下または10.0質量%以上14.0質量%以下であり;
菌体の含有量が、製剤組成物の全質量に対して、8.0質量%以上29.5質量%以下である場合、崩壊剤の含有量は、製剤組成物の全質量に対して、5.0質量%以上14.0質量%以下、5.0質量%以上10.0質量%以下または10.0質量%以上14.0質量%以下であり;
菌体の含有量が、製剤組成物の全質量に対して、20.0質量%以上29.5質量%以下である場合、崩壊剤の含有量は、製剤組成物の全質量に対して、5.0質量%以上14.0質量%以下、5.0質量%以上10.0質量%以下または10.0質量%以上14.0質量%以下であり;
菌体の含有量が、製剤組成物の全質量に対して、25.0質量%以上29.5質量%以下である場合、崩壊剤の含有量は、製剤組成物の全質量に対して、5.0質量%以上14.0質量%以下、5.0質量%以上10.0質量%以下または10.0質量%以上14.0質量%以下であり;
菌体の含有量が、製剤組成物の全質量に対して、29.5質量%超34.0質量%以下である場合、崩壊剤の含有量は、製剤組成物の全質量に対して、10.0質量%以上14.0質量%以下である。
【0027】
本発明に係る製剤組成物は、賦形剤(ただし、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムを除く)を含む。
【0028】
本発明に係る製剤組成物において、賦形剤の含有量は、菌体および崩壊剤の含有量に応じて適宜調整することができる。賦形剤の含有量は、製剤組成物の全質量に対して、好ましくは50.0質量%以上85.0質量%以下である。
【0029】
賦形剤としては、医薬品に使用される賦形剤であれば、特に制限されない。賦形剤の例としては、乳糖(乳糖水和物)、白糖、ショ糖、ブドウ糖、アメ粉、セルロース、マンニトールなどの糖類および糖アルコール;コムギデンプン、バレイショデンプン、コーンスターチなどのデンプン;シクロデキストリンなどのデキストリン;カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子化合物;タルク、軽質無水ケイ酸などの鉱物(成分);沈降炭酸カルシウムなどの無機塩などが挙げられる。
【0030】
好ましい実施形態では、本発明に係る製剤組成物は、賦形剤として、乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方と、コーンスターチとを含む。
【0031】
賦形剤が乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方と、コーンスターチとを含む場合、乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方の含有量は、賦形剤の全質量に対して、好ましくは12.0質量%以上47.0質量%以下である。コーンスターチの含有量は、賦形剤の全質量に対して、好ましくは47.0質量%以上78.0質量%以下である。前記乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方に対する前記コーンスターチの質量比は、好ましくは1.0以上6.4以下である。
【0032】
好ましい実施形態では、本発明に係る製剤組成物は、賦形剤として乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方とコーンスターチとに加えて、結晶セルロースをさらに含む。
【0033】
賦形剤が乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方とコーンスターチとに加えて、結晶セルロースをさらに含む場合、結晶セルロースの含有量は、賦形剤の全質量に対して、好ましくは5.9質量%以上9.8質量%以下である。前記乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方に対する結晶セルロースの質量比は、好ましくは0.12以上0.80以下である。
【0034】
賦形剤が乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方とコーンスターチと結晶セルロースとを含む場合、乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方とコーンスターチと結晶セルロースとの含有量は、賦形剤の全質量に対して、好ましくは95質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは98質量%以上100質量%以下であり、さらに好ましくは100質量%である。
【0035】
本発明に係る製剤組成物は、滑沢剤をさらに含むことができる。
【0036】
滑沢剤としては、ステアリン酸塩(例えばステアリン酸マグネシウム)、精製タルク、ホウ砂、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0037】
本発明に係る製剤組成物において、滑沢剤の含有量は、製剤組成物の全質量に対して、例えば0.1質量%以上2質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上1.5質量%以下である。
【0038】
本発明に係る製剤組成物は、上記成分に加えて、他の成分を含むことができる。他の成分としては、例えば添加剤、薬学的に許容される担体、補助成分などが挙げられる。
【0039】
添加剤としては、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、香料、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤、結合剤、増粘剤、分散剤、懸濁化剤、制菌剤、界面活性剤、崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムを除く)などが挙げられる。
【0040】
薬学的に許容される担体としては、デキストリン、セルロース等のバインダー;水、有機溶剤等の溶剤等が挙げられる。
【0041】
補助成分としては、抗生物質、ビタミン類(例えば、ビタミンC、ビタミンE)、アミノ酸類、ペプチド類、ミネラル類(例えば、亜鉛、鉄、銅、マンガンなど)、核酸、多糖類、脂肪酸類、生薬等が挙げられる。
【0042】
本発明に係る製剤組成物の製造方法は、特に制限されず、菌体、本発明に係る崩壊剤、賦形剤、ならびに必要に応じて滑沢剤および他の成分を混合する方法などが挙げられる。
【0043】
本発明に係る製剤組成物は、崩壊性に優れるため、固形製剤(経口固形製剤)の形態で用いられることが好ましい。固形製剤としては、カプセル剤、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、徐放剤などが挙げられる。本発明に係る製剤組成物は、崩壊性に加えて、充填量のばらつきを抑えることができるため、カプセル剤の形態であることが好ましい。よって、本発明の一実施形態は、本発明に係る製剤組成物を含む、カプセル剤に関する。
【0044】
固形製剤の製造方法は、特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、カプセル剤は、本発明に係る製剤組成物をカプセル充填機を用いてカプセルに充填することにより製造することができる。カプセルとしては、公知のカプセルを用いることができる。カプセルとしては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カプセル、ゼラチンカプセルなどが挙げられる。カプセルの大きさは、特に制限されず、充填する製剤組成物の量に応じて、適宜選択することができる。カプセル充填機は、特に制限されず、全自動カプセル充填機、卓上型カプセル充填機などを使用できる。本発明に係る製剤組成物は、充填量のばらつきを抑えることができるため、全自動カプセル充填機を用いることが好ましい。
【0045】
<実施形態>
本発明の実施形態を以下に例示する。
[1]菌体と、
クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種の崩壊剤と、
賦形剤(ただし、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムを除く)と、を含む製剤組成物であって、
前記菌体の含有量は、前記製剤組成物の全質量に対して、3.0質量%以上35.0質量%以下であり、
前記菌体の含有量が、前記製剤組成物の全質量に対して、3.0質量%以上29.5質量%以下である場合、前記崩壊剤の含有量は、前記製剤組成物の全質量に対して、5.0質量%以上14.0質量%以下であり、
前記菌体の含有量が、前記製剤組成物の全質量に対して、29.5質量%超35.0質量%以下である場合、前記崩壊剤の含有量は、前記製剤組成物の全質量に対して、10.0質量%以上14.0質量%以下である、製剤組成物。
[2]前記菌体は、酪酸菌、乳酸菌およびビフィズス菌からなる群から選択される少なくとも1種の細菌の菌体である、[1]に記載の製剤組成物。
[3]前記菌体は、スプレードライまたは流動層造粒法により調製された乾燥物の形態である、[1]または[2]に記載の製剤組成物。
[4]前記賦形剤の含有量は、前記製剤組成物の全質量に対して、50.0質量%以上85.0質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の製剤組成物。
[5]前記賦形剤は、乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方と、コーンスターチとを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の製剤組成物。
[6]前記乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方の含有量は、前記賦形剤の全質量に対して、12.0質量%以上47.0質量%以下である、[5]に記載の製剤組成物。
[7]前記乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方に対する前記コーンスターチの質量比は、1.0以上6.4以下である、[5]または[6]に記載の製剤組成物。
[8]前記賦形剤は、結晶セルロースをさらに含む、請求項[5]~[7]のいずれかに記載の製剤組成物。
[9]前記乳糖水和物およびマンニトールの少なくとも一方に対する結晶セルロースの質量比は、0.12以上0.80以下である、[8]に記載の製剤組成物。
[10]滑沢剤をさらに含む、[1]~[9]のいずれかに記載の製剤組成物。
[11][1]~[10]のいずれかに記載の製剤組成物を含む、カプセル剤。
【実施例】
【0046】
以下に具体例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれらの例に限定されない。なお、特記しない限り、作業は室温(25℃)で行った。
【0047】
<材料>
(菌末)
・クロストリジウム・ブチリカム・ミヤイリ 588(Clostridium butyricum MIYAIRI 588、FERM BP-2789)の菌末(調製方法:スプレードライ法、菌体の含有量:42.1質量%、賦形剤の含有量:57.9質量%)
(賦形剤)
・乳糖水和物(SheffieldTM Spray Dried 315、KERRY GROUP P.L.C.、Tralee)
・コーンスターチ(コーンスターチホワイト W-4P、日本コーンスターチ株式会社)
・結晶セルロース(セオラスPH-101、旭化成株式会社)
(崩壊剤)
・クロスカルメロースナトリウム(キッコレート ND-2HS、旭化成株式会社)
・クロスポビドン(Kollidon CL、BASF Japan Ltd.)
・デンプングリコール酸ナトリウム(Primojel、DFE Pharma GmbH&Co.KG、Goch)
(滑沢剤)
・ステアリン酸マグネシウム(ステアリン酸マグネシウム-S、日油株式会社)
(カプセル)
・ヒプロメロースカプセル3号(医療用HPMCカプセル QUALI-V、クオリカプス株式会社)。
【0048】
<カプセル剤の調製>
各材料を表1に示す質量%となるように袋に加え、2分間転倒混和して、製剤組成物を調製した。製剤組成物およびヒプロメロースカプセルをカプセル充填機(F-40、クオリカプス株式会社)に加え、カプセル剤(約246mg(内容物200mg)、長さ約15.8mm)を調製した。運転速度は、40,000cap/hに設定した。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
<崩壊性試験>
崩壊性試験は、第十八改正日本薬局方における6.09崩壊試験法のカプセル剤の崩壊試験法に従い、崩壊試験器(NT-610、富山産業株式会社、大阪府)を用いて実施した。試験には精製水を使用し、試験条件は、温度37±2℃、補助盤なしとした。崩壊時間は、カプセル剤またはその内容物が、試験器のステンレス網から完全に消失するのに要した時間とした。試験は、各検体1回実施し、6個のカプセル剤の崩壊時間の平均値を算出した。
【0053】
図1は、比較例1のカプセル剤(運転時間:15分)の試験結果を示し、
図2は、比較例2のカプセル剤(運転時間:0分)の試験結果を示す。また、表2は、実施例1~3のカプセル剤(運転時間:0分、5分または15分)の試験結果を示す。運転時間とは、カプセル剤が製造された時間帯を示す。運転時間0分とは、カプセル剤が製造開始後0秒から59秒の間に製造されたことを示し、運転時間5分とは、カプセル剤が製造開始後4分0秒から4分59秒の間に製造されたことを示し、運転時間15分とは、カプセル剤が製造開始後15分0秒から15分59秒の間に製造されたことを示す。
【0054】
図1および2に示すように、比較例1および2のカプセル剤は、日本薬局方の規格値(20分間)を超過することが分かる。
【0055】
一方、表2に示すように、実施例1~3のカプセル剤は、10質量%の崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム)を含むことにより、崩壊性が改善されたことが分かる。
【0056】
【0057】
図3は、実施例4~5および比較例3~8のカプセル剤(運転時間:5分)の試験結果を示す。
【0058】
図3に示すように、比較例3~6のカプセル剤(菌体含有量:0.8質量%または2.1質量%)では、10質量%の崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム)を添加することにより、崩壊時間が延長したことが分かる。
【0059】
また、実施例4~5および比較例7~8のカプセル剤(菌体含有量:4.2質量%または8.4質量%)では、実施例4~5が10質量%の崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム)を含むことにより、崩壊性が改善されたことが分かる。
【0060】
図4は、実施例6~8のカプセル剤(運転時間:0分または5分)の試験結果を示す。実施例6のカプセル剤は、崩壊剤としてクロスポピドンを含み、実施例7のカプセル剤は、崩壊剤としてデンプングリコール酸ナトリウムを含み、実施例8のカプセル剤は、崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウムを含む。
【0061】
図4に示すように、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムは、クロスカルメロースナトリウムと同様に崩壊性を改善しうることが分かる。
【0062】
図5は、実施例9~10のカプセル剤(運転時間:0分または5分)の試験結果を示す。
【0063】
図5に示すように、菌体の含有量が25.3質量%(実施例9)または29.5質量%(実施例10)である場合、5質量%の崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム)を含むことにより、崩壊性が改善されたことが分かる。
【0064】
表3は、実施例3および11ならびに比較例9のカプセル剤(運転時間:0分、5分、10分または15分(実施例3および比較例9)、運転時間:0分、5分または10分(実施例11))の試験結果を示す。
【0065】
表3に示すように、菌体の含有量が33.7質量%である場合、5質量%の崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム)の添加では、崩壊性の改善が十分ではないことが分かる(比較例9)。一方、10質量%(実施例3)および14質量%(実施例11)の崩壊剤(クロスカルメロースナトリウム)を添加することにより、崩壊性が改善されたことが分かる。
【0066】
【0067】
<充填量の測定>
10個のカプセル剤(実施例3および11)について、各カプセル剤(運転時間:0分、5分、10分または15分)の内容物の質量を電子天秤(GH-252、エー・アンド・デイ株式会社、東京都)を用いて測定し、平均値および標準偏差を算出した。結果を
図6に示す。
【0068】
図6に示すように、実施例3および11の製剤組成物を用いたカプセル剤は、充填量のばらつきを抑制できることが分かる。
【要約】
固形製剤の崩壊性を改善し得る新たな製剤組成物を提供する。菌体と、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1種の崩壊剤と、賦形剤(ただし、クロスカルメロースナトリウム、クロスポピドンおよびデンプングリコール酸ナトリウムを除く)と、を含む製剤組成物であって、前記菌体の含有量は、3.0質量%以上35.0質量%以下であり、前記菌体の含有量が3.0質量%以上29.5質量%以下である場合、前記崩壊剤の含有量は、5.0質量%以上14.0質量%以下であり、前記菌体の含有量が29.5質量%超35.0質量%以下である場合、前記崩壊剤の含有量は、10.0質量%以上14.0質量%以下である、製剤組成物。