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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】咀嚼性ソフトカプセル剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/48 20060101AFI20241107BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20241107BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
A61K9/48
A61K47/42
A61K47/36
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024545740
(86)(22)【出願日】2023-10-10
(86)【国際出願番号】 JP2023036685
(87)【国際公開番号】W WO2024080269
(87)【国際公開日】2024-04-18
【審査請求日】2024-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2022163224
(32)【優先日】2022-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000101651
【氏名又は名称】アリメント工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】若尾 陽平
(72)【発明者】
【氏名】小野 奈々子
(72)【発明者】
【氏名】杉本 章
(72)【発明者】
【氏名】三上 博己
(72)【発明者】
【氏名】下川 義之
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-525551(JP,A)
【文献】特開2017-039657(JP,A)
【文献】特表2021-518430(JP,A)
【文献】国際公開第2013/100013(WO,A1)
【文献】FALSHAW. R. et al.,Structure and performance of commercial kappa-2 carrageenan extracts: I. Structure analysis,Food Hydrocolloids,2001年,Vol.15,pp.441-452
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル皮膜とカプセル内容物を備える咀嚼性ソフトカプセル剤であって、カプセル皮膜が、次の成分(A)及び(B):
(A)ゼラチン 1~35質量%、
(B)アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体 3~25質量%、
を含有する、ソフトカプセル剤。
【請求項2】
(B)アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体が3,6-アンヒドロガラクトース・3,6-アンヒドロガラクトース-2-サルフェート共重合体である請求項1記載の咀嚼性ソフトカプセル剤。
【請求項3】
3,6-アンヒドロガラクトースと3,6-アンヒドロガラクトース-2-サルフェートの含有モル比(3,6-AG-2-S/3,6-AG)が25~50%である、請求項2記載の咀嚼性ソフトカプセル剤。
【請求項4】
(A)ゼラチンと(B)アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体の含有質量比[(A):(B)]が、1:25~13:1である、請求項1~3のいずれか1項記載の咀嚼性ソフトカプセル剤。
【請求項5】
カプセル皮膜中に可塑剤を含有する、請求項1~3のいずれか1項記載の咀嚼性ソフトカプセル剤。
【請求項6】
ロータリーダイ式ソフトカプセル製剤である、請求項1~3のいずれか1項記載の咀嚼性ソフトカプセル剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内で咀嚼可能なソフトカプセル剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ソフトカプセルの用途拡大を受け、グミキャンディと同様の食感及び触感を持たせたソフトカプセル剤の開発が試みられ、可塑剤を多く配合したり、澱粉や糖類などを配合することによりカプセルの皮膜を咀嚼できるようにしたソフトカプセルが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ゼラチンと増粘多糖類を含むゲル化剤と多価アルコール、水溶性多糖類、セルロース類、澱粉を含む経口用軟性組成物からなる皮膜を備えたソフトカプセル製剤が、食感、触感に優れ、且つ組成物同士の固結及び容器への付着が生じにくいことが開示されている。また、特許文献2には、ゼラチン剤皮に特定の可塑剤を通常用いられる量の数倍添加するとともに、水不溶性のセルロース類を配合して調製された咀嚼用ソフトカプセル剤が、ソフトで良好な噛み心地を有しながら、付着性の少ないことが開示されている。
しかしながら、カプセル同士の固結やカプセルの容器への付着の点では未だ十分ではなく、またカプセル皮膜が変色し易いなどの問題も懸念されていた。
【0004】
一方、カッパ-2カラゲニンはGigartinaceae algaeに属する海草中に含まれるカラギーナン様の増粘多糖類であり、カッパカラギーナンの構成単位の一部であるアンヒドロガラクトースとイオタカラギーナンの構成単位の一部である硫酸化アンヒドロガラクトースの共重合体であることが知られている。斯かるカッパ-2カラゲニンはゼラチンの代替品として、ソフトカプセルを製造するためのゲル化剤となり得ることが報告されているが(特許文献3)、ゼラチンと共にカプセル皮膜に使用された報告は全くなく、如何なる性状のソフトカプセルが成型できるかは不明であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-175740号公報
【文献】特許3261331号公報
【文献】特許4558721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、良好な食感を有し、且つカプセル同士の固着と容器への付着及び着色が抑制された、保存安定性に優れた咀嚼性ソフトカプセル剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、当該課題を解決すべく種々研究を重ねた結果、ゼラチンとアンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体を特定量含むカプセル皮膜を用いて成型されたソフトカプセル剤が、咀嚼した場合にグミキャンディと同様の食感を有し、且つ保存時において、カプセル同士の固着と容器への付着、及び変色が抑制されることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の1)~6)に係るものである。
1)カプセル皮膜とカプセル内容物を備える咀嚼性ソフトカプセル剤であって、カプセル皮膜が、次の成分(A)及び(B):
(A)ゼラチン 1~35質量%、
(B)アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体 3~25質量%、
を含有する、ソフトカプセル剤。
2)(B)アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体が3,6-アンヒドロガラクトース・3,6-アンヒドロガラクトース-2-サルフェート共重合体である1)の咀嚼性ソフトカプセル剤。
3)3,6-アンヒドロガラクトースと3,6-アンヒドロガラクトース-2-サルフェートの含有モル比(3,6-AG-2-S/3,6-AG)が25~50%である、2)の咀嚼性ソフトカプセル剤。
4)(A)ゼラチンと(B)アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体の含有質量比[(A):(B)]が、1:25~13:1である、1)~3)のいずれかの咀嚼性ソフトカプセル剤。
5)カプセル皮膜中に可塑剤を含有する、1)~3)のいずれかの咀嚼性ソフトカプセル剤。
6)ロータリーダイ式ソフトカプセル製剤である、1)~3)のいずれかの咀嚼性ソフトカプセル剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、グミキャンディ様の良好な食感を有する咀嚼可能なソフトカプセル剤を提供することができる。また、当該ソフトカプセル剤は、保存時におけるカプセル同士の固着や容器への付着、及び変色が抑制され、保存安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、カプセル皮膜の構成成分である(A)ゼラチンは、カプセル皮膜の基剤であり、牛、羊、豚、鶏、魚等の皮、骨、腱等の主タンパク成分であるコラーゲン由来原料を、酸やアルカリで処理したのち温水で抽出することにより得られるコラーゲンの変性体である。本発明において用いられるゼラチンとしては、コラーゲンの由来や、処理方法は特に限定されない。
また、本発明においては、ゼラチンの加水分解物や酸素分解物、コハク化ゼラチン、フタル化ゼラチン等の修飾ゼラチンを用いることもでき、どの種類のゼラチンも好ましく使用できる。
【0011】
カプセル皮膜中における(A)ゼラチンの含有量は、カプセルの成型性及び咀嚼性の観点から、カプセル皮膜組成物の総量中1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは6質量%以上であり、且つ35質量%以下、好ましくは25質量%以下、より好ましくは16質量%以下である。また、1~35質量%、好ましくは3~25質量%、より好ましくは6~16質量%である。
なお、カプセル皮膜組成物とは、カプセル成型前の皮膜溶液を構成する成分の合計量のことである。
【0012】
本発明に用いられる(B)アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体は、3,6-アンヒドロガラクトース(3,6-AG)と3,6-アンヒドロガラクトース-2-サルフェート(3,6-AG-2-S)の共重合体であり、3,6-アンヒドロガラクトースと3,6-アンヒドロガラクトース-2-サルフェートの含有モル比(3,6-AG-2-S/3,6-AG)が25~50%であるものを指す。
斯かるアンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体は、カッパ-2カラゲニンとも称されている(R.Falshaw,H.J.Bixler,K.Johndro,Food Hydrocolloids 15(2001)441-452;H.Bixler,K Johndro,R Falshaw,Food Hydrocolloids 15(2001)619-630)。
【0013】
アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体の分子量は、通常100,000ダルトン以上、好ましくは100,000~1,000,000ダルトン、より好ましくは100,000~450,000ダルトン、さらに好ましくは100,000~350,000ダルトンである。
【0014】
アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体は、たとえばGigartinaceae algae(Gigartina radula,Gigartina corymbifera,Gigartina skottsbergii,Iridaea cordata,Sarcothalia crispata,Mazzaella laminarioides等)等の類に属する海草種に含まれ、それらから分離回収、精製することにより取得できる。また、分離回収の際にアルカリ処理することによって3,6-AG-2-S部分を脱硫酸化して3,6-AGに変換し(変性処理)、適宜3,6-AGの比率を増加させることも可能である。
当該分離回収方法や変性処理方法は周知であり、前記したFalshaw,Bixler及びJohndro著の文献等に記載されている。たとえば、変性処理は、Giartinacean algaeからの回収中に、加温下でアルカリ処理することにより行うことができる。
なお、アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体は、「SEAGEL CAP101」(FMC社製)として市販されている。
【0015】
カプセル皮膜中における(B)アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体の含有量は、カプセルの成型性及び咀嚼性の点から、カプセル皮膜組成物の総量中3質量%以上、好ましくは6質量%以上、より好ましくは8質量%以上であり、且つ25質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは16質量%以下である。また、3~25質量、好ましくは6~20質量%、より好ましくは8~16質量%である。
【0016】
また、(A)ゼラチンと(B)アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体の含有質量比[(A):(B)]は、咀嚼性の点、保存安定性の点から、1:25~13:1が好ましく、1:12~6:1がより好ましく、3:5~5:3が更に好ましい。
【0017】
本発明のカプセル皮膜は、食感を向上すべく可塑剤を含有するのが好ましい。
可塑剤としては、グリセリン類(例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等)、糖アルコール(ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、シクリトール等)、グリコール類(プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等)、二糖類、オリゴ糖等が挙げられる。
カプセル皮膜中における可塑剤の含有量は、カプセル皮膜組成物の総量中好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、且つ好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。
【0018】
また、カプセル皮膜には、必要に応じて、さらに水溶性高分子、澱粉類、色素(天然色素、合成色素)、各種甘味料、防腐剤、水分活性低下剤、pH調整剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0019】
水溶性高分子としては、特に制限されないが、植物や海藻に由来する水溶性植物繊維が挙げられる。例えば、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、プルラン、フコイダン、マルトデキストリン、イソマルトデキストリン、ジェランガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム等が挙げられる。
【0020】
澱粉類としては、例えば、未変性澱粉、化工澱粉、澱粉分解物等が挙げられる。由来植物としては、小麦、米、大麦、もち米、もち大麦、そば、大豆、馬鈴薯、タピオカ、トウモロコシ等が挙げられる。
【0021】
カプセル皮膜中の水溶性高分子、澱粉類の含有量は、それぞれ固形分の総量中、6質量%以下であることが好ましい。
【0022】
なお、本発明において、カプセル皮膜は、(A)ゼラチンと(B)アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体を含有し、これらはゲル化剤として機能するが、カプセルの咀嚼性及び保存安定性に影響を与えない限り、他のゲル化剤が含有されることを妨げるものではない。ここで、他のゲル化剤としては、例えばカラギーナン、ローカストビーンガム、寒天、サイリウムシードガム、こんにゃく粉、ジェランガム、キサンタンガム等が挙げられる。
【0023】
本発明の咀嚼性ソフトカプセル剤は、ロータリーダイ式ソフトカプセル成型機を使用し、カプセル皮膜組成物から左右1対の回転ドラム上で延伸して皮膜用シートを形成したのち、皮膜用シート表面にセグメントで適切な温度を与え、回転するダイロールを用いて皮膜用シートを所定の形状に成型すると同時に皮膜用シートを接着させながら内容物が充填されるロータリーダイ式ソフトカプセル製剤でも、1対の平板金型の片方の平板金型の上に皮膜用シートを載せ、その上に内容物を載せ、更に皮膜用シートを被せ、最後にもう一方の金型を載せたのちに、プレスして所定の形に成型される平板式ソフトカプセル製剤、または、同芯円上に存在する二重ノズルから同時に吐出したカプセル皮膜組成物と内容液を一定速で流れる冷却液中に滴下して形成されるシームレス式ソフトカプセル製剤でもよいが、ロータリーダイ式ソフトカプセル製剤であることが、製造可能な内容液の範囲が広い点、形ならびに大きさの選択自由度が高い点、生産性の観点などから好ましい。
【0024】
ロータリーダイを用いてカプセル化するロータリーダイ式ソフトカプセル製剤は、シート状に形成したカプセル皮膜用シートの間に、液状物質、例えば油性液体、水性液体又は、油性液体に難油性粉末等の粉末が分散されたものを注入し、両側から圧縮成型することが好適に例示できる。
カプセル皮膜組成物は、(A)ゼラチンと(B)アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体、更に必要に応じて各種添加剤を水に攪拌・分散させて、70~98℃で攪拌・溶解させた後、真空脱泡すればよい。
【0025】
本発明の咀嚼性ソフトカプセル剤において、カプセルの内容物としては特に限定されず、内容物としては、医薬品、医薬部外品、化粧品、食品(健康食品、特定保健用食品、機能性表示食品、サプリメント等)として使用される各成分、調味料、香料等、一般的にカプセル中に充填され得る物質が挙げられる。内容物の形態は溶液状、懸濁液状、ペースト状、粉末状、顆粒状等いずれであってもよいが、好ましくは、溶液状、懸濁液状、ペースト状である。以下にカプセル内容物に配合し得るものを例示する。
【0026】
機能性油脂としては、例えば、DHA、EPA、α-リノレン酸等ω3系の多価不飽和脂肪酸、リノール酸、γ-リノレン酸等のω6系の多価不飽和脂肪酸、ω9系の一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸等が挙げられる。
また、その他の油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、サフラワー油、米油、コーン油、ヒマワリ油、綿実油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、ハト麦油、小麦胚芽油、シソ油、アマニ油、エゴマ油、サチャインチ油、クルミ油、キウイ種子油、サルビア種子油、パセリ種子油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、アーモンド油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、ボラージ油、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、やし油、パーム核油、カカオ脂、サル脂、シア油、藻油等の植物性油脂、魚油、ラード、牛脂、バター脂等の動物性油脂あるいはそれらのエステル交換油、水素添加油、分別油等の油脂類を挙げられる。
【0027】
その他サプリメントで利用される素材としては、例えば、イチョウ葉エキス、ホスファチジルセリン、GABA、鶏由来プラズマローゲン、アントシアニン含有ビルベリーエキスやカシスエキス、ルテイン・ゼアキサンチン含有マリーゴールド色素、アスタキサンチン含有ヘマトコッカス藻色素、クロセチン含有クチナシ色素、α-カロテン、β-カロテン、リコピン、β-クリプトキサン等のカロテノイド類、ビタミンK、コエンザイムQ10、PQQなどのキノン類、フラボノール、イソフラボン、タンニン、カテキン、ケルセチン、アントシアニン、フラバンジェノール、フラボノイド等のポリフェノール類、カンナビノイドのひとつであるカンナビジオール、プロポリス、キシリトール、ビタミンB1、B2、ナイアシン、パントテン酸、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD3、ビタミンE等のビタミン類、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、亜鉛、セレン、クロム、モリブデン、鉄及び銅等のミネラル類、L-92乳酸菌、プラズマ乳酸菌、乳酸菌シロタ株、ガセリ菌SP株、LG-21乳酸菌などの乳酸菌類、BB-536株、B-3株等のビフィズス菌類等が挙げられる。
【0028】
医薬品としては、例えば、塩酸メクリジン、スコポラミン臭化水素酸塩水和物、ロートエキス、タンニン酸ベルベリン、フッ化ナトリウム等が挙げられる。
【0029】
斯くして得られる咀嚼性ソフトカプセル剤は、保存安定性に優れ、瓶詰め包装、PTP包装、パウチ等の各種包装形態で包装されて保存され、流通する。
【実施例
【0030】
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらによって何等限定されるものではない。
実施例1~6、比較例1~9
1.原料
1)アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体:SEAGEL CAP101(FMC 社製)
2)ゼラチン(豚由来):BCN200S(新田ゼラチン社製)
3)ゼラチン(牛由来):NSC150(新田ゼラチン社製)
4)ジェランガム:ケルコゲルCG-LA(三晶社製)
5)ジェランガム(ネイティブ):ケルコゲルCG-HA(三晶社製)
6)可塑剤:グリセリン(阪本薬品工業社製)
7)カラギーナン(κとιの混合):GENUTINE 310-C(三晶社製)
8)カラギーナン(κ):GENUGELcarrageenan type WR-78―J(三晶社製)
9)カラギーナン(ι):GENUGELcarrageenan type CJ(三晶社製)
10)カラギーナン(λ):SATIAGEL(商標) BDC 20(ユニテックフーズ社製)
11)カルボキシメチルセルロースナトリウム:サンローズ SLD-FM(日本製紙社製)
12)デンプン:米澱粉(日本コーンスターチ社製)
13)こんにゃく粉:ファインスーパーマンナン(荻野商店社製)
14)イソマルトデキストリン:ファイバリクサ(登録商標)(林原社製)
15)砂糖:フロストシュガー FS-2(日新製糖社製)
16)ポリエチレングリコール:ポリエチレングリコール400/4000(富士フイルム和光純薬社製)
17)結晶セルロース:セオラス(旭化成社製)
【0031】
2.皮膜溶液の作製
2-1.実施例1~6、比較例3~5
所定の容器にグリセリンを量り取り、攪拌しながらアンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体を少量ずつ投入し均一に分散させることで、アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体分散液を得た。配合タンクに精製水とアンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体分散液を投入して攪拌しながら溶解させた。その後、ゼラチンと、実施例5、6ではジェランガムを投入し、攪拌しながら溶解させ、攪拌脱泡により脱気を行い、カプセル皮膜組成物を得た。
【0032】
2-2.比較例1
所定の容器にグリセリンの残りを入れ、攪拌しながらこんにゃく粉、カルボキシメチルセルロースナトリウム、米澱粉の順で少しずつ投入し、均一に分散するまで攪拌した分散液を得た。配合タンクに精製水、グリセリンの一部、イソマルトデキストリンを量り取り、攪拌しながら溶解させ、その後ゼラチンを投入して攪拌しながら完全に溶解させた。ここに、継続して攪拌しながら分散液を少しずつ投入して溶解させ、攪拌脱泡により脱気を行い、カプセル皮膜組成物を得た。
【0033】
2-3.比較例2
所定の容器に、精製水、グリセリン、砂糖を量り取り、攪拌して完全に溶解させた。その後、ポリエチレングリコールを加えて攪拌・溶解させ、さらに結晶セルロースを加え、分散させた。次にゼラチンを攪拌しながら加え、均一に溶解させてカプセル皮膜組成物を得た。
【0034】
2-4.比較例6~9
所定の容器にグリセリンを量り取り、攪拌しながらカラギーナンを少量ずつ投入し均一に分散させることで、カラギーナン分散液を得た。配合タンクに精製水とカラギーナン分散液を投入して攪拌しながら溶解させた。その後、ゼラチンを投入し、攪拌しながら溶解させ、攪拌脱泡により脱気を行い、カプセル皮膜組成物を得た。
【0035】
3.カプセル成型
上記2で調製したカプセル皮膜組成物をロータリーダイ式ソフトカプセル成型機のスプレッダーボックスに充填し、回転ドラム上に延伸して約0.8mmの薄膜にし、冷却することで皮膜シートを得た。
次いで、セグメントで皮膜用シート表面を加温して接着させながら打ち抜く直前に内容液としてMCTオイル(中鎖脂肪酸油)を充填し、打ち抜いて成型されたものを乾燥することによりソフトカプセル剤を製造した。
【0036】
4.乾燥
成型されたソフトカプセル剤は、ソフトカプセル成型機に連結されたタンブラードライヤーに送り込み、温度20~30℃、相対湿度5~50%で8~60時間かけて乾燥を行い、目的のソフトカプセル剤を得た。
【0037】
5.評価試験
(1)カプセルの成型性
カプセルの成型性については、ロータリーダイ式ソフトカプセル成型機を用いてソフトカプセルが成型できたかどうかで判断した。
○:成型できた
×:成型できなかった
【0038】
(2)咀嚼性
咀嚼性の評価は、専門家パネラー4名で実施し、「やわらかく、咀嚼可能」「咀嚼可能だが、やや硬い」「硬くて咀嚼できない」の3段階で評価した。
○:やわらかく、咀嚼可能
△:咀嚼可能だが、やや硬い
×:硬くて咀嚼できない
【0039】
(3)保存安定性
作製した各ソフトカプセル剤について、それぞれ60粒をガラス製ボトルに入れ、キャップをして、室温40℃、湿度75%の恒温恒湿槽に4カ月間保存し、ソフトカプセル剤の外観及び製剤同士または容器壁面への付着性を評価した。
【0040】
1)外観
外観の評価は、各サンプルを保存庫から取り出して室温下で24時間静置させ、目視にて色調変化(褐変)の有無を確認した。専門パネラー4名で評価を実施し、「変化なし」「やや変化あり」「かなり変化あり」の3段階で評価した。
〇:変化なし
△:やや変化あり
×:かなり変化あり
【0041】
2)付着性
付着性の評価は、各サンプルを保存庫から取り出して室温下で24時間静置させ、その後蓋を開けてボトルの中身のカプセルをアルミトレーへ広げた後、軽く振っただけでカプセルがすべて取り出せたものを「付着なし」、軽く振っただけでは少しボトル内に付着して残ってしまったものを「やや付着あり」、軽く振っただけではカプセルを取り出すことができなかったものを「かなり付着あり」とした。
〇:付着なし
△:やや付着あり
×:かなり付着あり
【0042】
【表1-1】
【0043】
【表1-2】
【0044】
表1-1及び表1-2より、実施例1~6の本発明のソフトカプセル剤は、カプセル成型性に優れ、咀嚼した場合に、柔らかい食感で、良好な咀嚼性を有していた。また、40℃、4カ月間保存後も外観に大きな変化は見られず、カプセル同士及びカプセルの容器への付着も認められず、保存安定性に優れていた。
一方、皮膜にデンプン等を含む比較例1は、カプセルの成型性及び咀嚼性は良好であったものの、40℃、4カ月保存後に皮膜が著しく褐変してしまい、カプセル同士の固結及びカプセルの容器への付着が見られ、保存安定性に問題があることが確認された。
皮膜に砂糖等を含む比較例2も、比較例1と同様、カプセルの成型性及び咀嚼性は良好であったが、保存安定性に問題があった。
アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体を3%、ゼラチンを39%配合する比較例3は、カプセルの成型性は良好であったものの、硬くて容易に噛むことができず、咀嚼性に問題があった。
アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体を30%、ゼラチンを30%配合する比較例4は、カプセル皮膜組成物作成時に溶液が固化してしまい、カプセルの成型性に問題があった。
アンヒドロガラクトース・硫酸化アンヒドロガラクトース共重合体を2%、ゼラチンを5%配合する比較例5は、カプセル皮膜組成物は作製できたものの、皮膜シートの強度が弱くカプセル成型時の皮膜同士の接着が悪く、カプセルの成型性に問題があった。
皮膜に、一般的に知られているカラギーナンを含む比較例6、7、8、9は、カプセル皮膜組成物作製時に溶液が固化してしまい、カプセルの成型性に問題があった。