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特許7583515TNFα拮抗薬を使用したドライアイ疾患の治療方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】TNFα拮抗薬を使用したドライアイ疾患の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241107BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20241107BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20241107BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALN20241107BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P27/04
G01N33/50 P
C12Q1/68 100Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2018566485
(86)(22)【出願日】2017-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 IB2017053625
(87)【国際公開番号】W WO2017221128
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】62/352,091
(32)【優先日】2016-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135943
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 規樹
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,ユンシェン
(72)【発明者】
【氏名】リースナー,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ワルド,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ワイスガーバー,ジョージ
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】冨永 みどり
【審判官】岡山 太一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/052140(WO,A1)
【文献】特表2015-525237(JP,A)
【文献】特表2013-544078(JP,A)
【文献】Invest Ophthalmol Vis Sci., 2013, Vol.54, pp. 7557-7566
【文献】Sci Transl Med. 2015 June 10; 7(291): 291ra93, pp. 1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TNFα抗体又はその抗原結合部分を含む、ドライアイ疾患(DED)を有する患者の治療のための組成物であって、前記患者がDED応答マーカーを有し、前記DED応答マーカーがrs1800693 C/Cアレルであり、前記抗TNFα抗体又はその抗原結合部分が、
a)配列番号8として示されるアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号7として示されるアミノ酸配列を含むVLドメイン;
b)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3として示される超可変領域を含むVHドメイン、並びに配列番号4、配列番号5、及び配列番号6として示される超可変領域を含むVLドメイン;又は
c)配列番号9の配列
を含む、組成物。
【請求項2】
TNFα抗体又はその抗原結合部分を含む、ドライアイ疾患(DED)を有する患者の治療のための組成物であって、
a)前記患者がDED応答マーカーを有することに基づき前記患者が前記TNFα抗体又はその抗原結合部分による治療のために選択され;及び
b)その後、治療有効量の前記TNFα拮抗薬が前記患者に投与され、
前記DED応答マーカーがrs1800693 C/Cアレルであり、前記抗TNFα抗体又はその抗原結合部分が、
a)配列番号8として示されるアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号7として示されるアミノ酸配列を含むVLドメイン;
b)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3として示される超可変領域を含むVHドメイン、並びに配列番号4、配列番号5、及び配列番号6として示される超可変領域を含むVLドメイン;又は
c)配列番号9の配列
を含む、組成物。
【請求項3】
TNFα抗体又はその抗原結合部分を含む、ドライアイ疾患(DED)を有する患者の治療のための組成物であって、
前記患者からの生体試料がDED応答マーカーを有し、
前記DED応答マーカーがrs1800693 C/Cアレルであり、
前記抗TNFα抗体又はその抗原結合部分が、
a)配列番号8として示されるアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号7として示されるアミノ酸配列を含むVLドメイン;
b)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3として示される超可変領域を含むVHドメイン、並びに配列番号4、配列番号5、及び配列番号6として示される超可変領域を含むVLドメイン;又は
c)配列番号9の配列
を含む、組成物。
【請求項4】
TNFα抗体又はその抗原結合部分を含む、ドライアイ疾患(DED)を有する患者の治療のための組成物であって、
a)前記患者からの生体試料がDED応答マーカーに関してアッセイされ;
b)前記患者からの前記生体試料が前記DED応答マーカーを有することに基づき前記TNFα抗体又はその抗原結合部分による治療のために前記患者が選択され;及び
c)治療有効量の前記TNFα抗体又はその抗原結合部分が前記患者に選択的に投与され、
前記DED応答マーカーがrs1800693 C/Cアレルであり、
前記抗TNFα抗体又はその抗原結合部分が、
a)配列番号8として示されるアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号7として示されるアミノ酸配列を含むVLドメイン;
b)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3として示される超可変領域を含むVHドメイン、並びに配列番号4、配列番号5、及び配列番号6として示される超可変領域を含むVLドメイン;又は
c)配列番号9の配列
を含む、組成物。
【請求項5】
前記アッセイが、前記生体試料を前記DED応答マーカーの核酸産物、前記DED応答マーカーのポリペプチド産物、又は前記DED応答マーカーの等価な遺伝子マーカーに関してアッセイすることを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記アッセイが、前記生体試料を前記DED応答マーカーのゲノム配列に関してアッセイすることを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
前記アッセイが、ノーザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、TaqManベースのアッセイ、ダイレクトシーケンシング、ダイナミックアレル特異的ハイブリダイゼーション、高密度オリゴヌクレオチドSNPアレイ、制限断片長多型(RFLP)アッセイ、プライマー伸長アッセイ、オリゴヌクレオチドリガーゼアッセイ、一本鎖コンホメーション多型分析、温度勾配ゲル電気泳動法(TGGE)、変性高速液体クロマトグラフィー、高分解能融解分析、DNAミスマッチ結合タンパク質アッセイ、SNPLex(登録商標)、キャピラリー電気泳動法、サザンブロット、イムノアッセイ、免疫組織化学、ELISA、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、HPLC、及び質量分析法からなる群から選択される技法を含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記生体試料が、滑液、血液、血清、糞便、血漿、尿、涙液、唾液、脳脊髄液、白血球試料及び組織試料からなる群から選択される、請求項3~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記DEDが中等度から重度である、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記TNFα抗体が組換え抗体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記TNFα抗体がLME636である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
ドライアイ疾患(DED)を有する患者がTNFα抗体又はその抗原結合部分による治療に応答するであろう可能性を予測する方法であって、前記患者からの生体試料をDED応答マーカーの存在又は非存在に関してアッセイすることを含み、前記DED応答マーカーの存在は、前記患者が前記TNFα抗体又はその抗原結合部分による治療に応答するであろう可能性の増加を示し、及び前記DED応答マーカーがrs1800693 C/Cアレルであり、前記抗TNFα抗体又はその抗原結合部分が、
a)配列番号8として示されるアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号7として示されるアミノ酸配列を含むVLドメイン;
b)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3として示される超可変領域を含むVHドメイン、並びに配列番号4、配列番号5、及び配列番号6として示される超可変領域を含むVLドメイン;又は
c)配列番号9の配列
を含む、方法。
【請求項13】
ドライアイ疾患(DED)を有する患者のTNFα抗体又はその抗原結合部分による治療への応答性を予測するための伝達可能な形態の情報を作成する方法であって、
a)前記患者からの生体試料中にDED応答マーカーが存在する場合に前記患者が前記TNFα抗体又はその抗原結合部分による治療に応答する可能性の増加を決定することであって、前記DED応答マーカーがrs1800693 C/Cアレルであること;及び
b)前記決定するステップの結果を伝達における使用のための有形媒体又は無形媒体の形態に記録すること
を含み、
前記抗TNFα抗体又はその抗原結合部分が、
a)配列番号8として示されるアミノ酸配列を含むVHドメイン、及び配列番号7として示されるアミノ酸配列を含むVLドメイン;
b)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3として示される超可変領域を含むVHドメイン、並びに配列番号4、配列番号5、及び配列番号6として示される超可変領域を含むVLドメイン;又は
c)配列番号9の配列
を含む方法。
【請求項14】
前記アッセイが、前記生体試料を前記DED応答マーカーの核酸産物、前記DED応答マーカーのポリペプチド産物、又は前記DED応答マーカーの等価な遺伝子マーカーに関してアッセイすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記アッセイが、前記生体試料を前記DED応答マーカーのゲノム配列に関してアッセイすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記アッセイが、ノーザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、TaqManベースのアッセイ、ダイレクトシーケンシング、ダイナミックアレル特異的ハイブリダイゼーション、高密度オリゴヌクレオチドSNPアレイ、制限断片長多型(RFLP)アッセイ、プライマー伸長アッセイ、オリゴヌクレオチドリガーゼアッセイ、一本鎖コンホメーション多型分析、温度勾配ゲル電気泳動法(TGGE)、変性高速液体クロマトグラフィー、高分解能融解分析、DNAミスマッチ結合タンパク質アッセイ、SNPLex(登録商標)、キャピラリー電気泳動法、サザンブロット、イムノアッセイ、免疫組織化学、ELISA、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、HPLC、及び質量分析法からなる群から選択される技法を含む、請求項12、1若しくは1に記載の方法。
【請求項17】
前記生体試料が、滑液、血液、血清、糞便、血漿、尿、涙液、唾液、脳脊髄液、白血球試料及び組織試料からなる群から選択される、請求項1216のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記DEDが中等度から重度である、請求項1217のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記TNFα抗体が組換え抗体である、請求項12~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記TNFα抗体がLME636である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、予測方法、個別化療法、キット、伝達可能な形態の情報及びドライアイ疾患を有する患者の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライアイ疾患(DED)は、眼表面炎症及び涙液膜のオスモル濃度の増加によって不快感、視力障害及び涙液膜不安定性の症状が引き起こされることを特徴とする涙液及びオキュラーサーフェスの一般的な多因子疾患である(Lienert JP,Tarko L,Uchino M,Christen WG,Schaumberg DA.(2016).Long-term Natural History of Dry Eye Disease from the Patient’s Perspective.Ophthalmology.123(2):425-33)。唯一利用可能な薬理学的治療は局所シクロスポリンであり、これは抗炎症剤で、涙液産生の増加に承認されている。ステロイド類もまたDEDの治療に使用されているが、副作用が理由で長期使用は禁忌である。より重症型のDEDには、血清点眼液及び強膜コンタクトレンズが推奨されている。しかしながら、これらの治療はいずれもDEDの根本原因に十分に対処するものではない(Marshall LL,Roach JM.(2016).Treatment of Dry Eye Disease.Consult Pharm.2016;31(2):96-106)。
【0003】
乾性角結膜炎とも称されるドライアイは、毎年何百万人もの人が罹患する一般的な眼科的障害である。この病態は特に、受胎能消失後のホルモン変化に起因して閉経後女性に広範に見られる。ドライアイは罹患者の重症度が様々であり得る。軽症例では、患者は、ヒリヒリする痛み、乾燥感、及び多くの場合に眼瞼と眼表面との間に挟まった小さい異物によって引き起こされるような持続的刺激を経験し得る。重症例では、実質的に視覚が損なわれ得る。シェーグレン症候群及び瘢痕性類天疱瘡などの他の疾患もまた、ドライアイ病態につながり得る。屈折矯正手術に伴う一過性のドライアイ症状が場合によっては術後6週間~6ヵ月以上続くことが報告されている。
【0004】
ドライアイは幾つもの無関係な発病原因によって引き起こされ得るものと見られるが、合併症の発現は全てが共通する効果、即ち、前眼部涙液膜の破綻、その結果として起こる眼表面の露出、水分喪失、及びサイトカイン産生を共有し、上記に概説した症状の多くを引き起こす(Lemp,Report of the National Eye Institute/Industry Workshop on Clinical Trials in Dry Eyes,The CLAO Journal,volume 21,number 4,pages 221-231(1995))。
【0005】
医師らはドライアイ治療に対して幾つかの手法を取っている。一つの共通する手法は、いわゆる人工涙液を一日中点眼することを用いて眼の涙液膜を補充し、安定化させることとなっている。他の手法には、涙液の保持を促進する眼内挿入物(例えば涙点プラグ)の使用又は内因性涙液産生の刺激が含まれる。
【0006】
代用涙液手法の例には、溶液を高粘性にして、ひいては眼から排出され難くする水溶性ポリマーを含有する緩衝等張生理食塩水、水溶液が含まれる。リン脂質及び油など、涙液膜の1つ以上の成分を供給することによる涙液膜の安定化もまた試みられている。リン脂質組成物はドライアイの治療に有用であることが示されている;例えば、McCulley and Shine,Tear film structure and dry eye,Contactologia,volume 20(4),pages 145-49(1998);及びShine and McCulley,Keratoconjunctivitis sicca associated with meibomian secretion polar lipid abnormality,Archives of Ophthalmology,volume 116(7),pages 849-52(1998)を参照のこと。
【0007】
別の手法には、人工涙液の代わりに潤滑物質を提供することが含まれる。例えば、米国特許第4,818,537号明細書(Guo)は潤滑性のリポソームベースの組成物を開示し、及び米国特許第5,800,807号明細書(Hu et al.)は、ドライアイの治療用のグリセリン及びプロピレングリコールを含有する組成物を開示している。
【0008】
これらの手法はある程度の成功を収めているが、それにも関わらずドライアイの治療における問題点は依然として残されており、というのも、代用涙液の使用は一時的には有効であるものの、概して患者が起きている間は繰り返し適用する必要があるからである。患者が人工涙液溶液を1日の間に10~20回適用しなければならないことも珍しくない。これをこなすのは厄介で時間がかかるのみならず、非常に高コストとなる可能性もある。
【0009】
ドライアイに伴う症状の対症的軽減を主な目的とする上記に記載される試みの他に、かかる症状を引き起こす生理的条件の治療を目的とする方法及び組成物もまた探究されている。例えば、米国特許第5,041,434号明細書(Lubkin)は、結合型エストロゲン類などの性ステロイド類を使用して閉経後女性のドライアイ病態を治療することを開示している;米国特許第5,290,572号明細書(MacKeen)は、微粉化したカルシウムイオン組成物を使用して前眼部涙液膜産生を刺激することを開示している。
【0010】
ドライアイの根本原因を治療しようとするかかる試みは、関連性のある眼組織の炎症及びマイボーム腺機能不全の治療に重点が置かれてきた。ドライアイ患者のかかる治療に向けた各種薬剤の使用が、ステロイド類(例えば米国特許第5,958,912号明細書;Marsh et al.,Topical nonpreserved methylprednisolone therapy for keratoconjunctivitis sicca in Sjoegren’s syndrome,Ophthalmology,106(4):811-816(1999);及びPflugfelder et al.,米国特許第6,153,607号明細書)、サイトカイン放出阻害薬(Yanni,J.M.;et.al.国際公開第00/03705 A1号パンフレット)、シクロスポリンA(Tauber,J.Adv.Exp.Med.Biol.1998,438(Lacrimal Gland,Tear Film,and Dry Eye Syndromes 2),969)、及び粘膜分泌促進薬(mucosecretatogue)、例えば15-HETE(Yanni et.al.,米国特許第5,696,166号明細書)を含め、開示されている。
【0011】
多くの研究で、罹患組織における腫瘍壊死因子α(TNF-α)を含めた炎症性サイトカインの上昇が報告されている(Massingale ML,Li X,Vallabhajosyula M,Chen D,Wei Y,et al.(2009).Analysis of inflammatory cytokines in the tears of dry eye patients.Cornea.28(9):1023-7;Chen Y,Zhang X,Yang L,Li M,Li B,et al.(2014).Decreased PPAR-γ expression in the conjunctiva and increased expression of TNF-α and IL-1β in the conjunctiva and tear fluid of dry eye mice.Mol Med Rep.9(5):2015-23)。涙液又は結膜組織におけるTNFαレベルとDEDの臨床的重症度との間の相関もまた観察されている(Lee SY,Han SJ,Nam SM,Yoon SC,Ahn JM,et al.(2013).Analysis of tear cytokines and clinical correlations in Sjoegren syndrome dry eye patients and non-Sjoegren syndrome dry eye patients.Am J Ophthalmol.156(2):247-253)。TNF-αは多面発現性サイトカインであり、その受容体への結合時における細胞輸送の調節、活性化、及び様々な病原体に対する宿主防御に関与する。抗TNF剤は、関節リウマチ及びクローン病を含めたヒト自己免疫疾患の治療において臨床的有効性を実証している。しかしながら、DEDに対する局所抗TNF療法は、DEDにおけるTNF-α関与のエビデンスがあるにも関わらず評価されていない(Ji YW,Byun YJ,Choi W,Jeong E,Kim JS,et al.(2013).Neutralization of ocular surface TNF-α reduces ocular surface and lacrimal gland inflammation induced by in vivo dry eye.Invest Ophthalmol Vis Sci.54(12):7557-66)。
【0012】
Hallakらによる最近の研究から、脳由来神経栄養因子(BDNF)遺伝子のVal66Met及びビタミンD受容体(VDR)遺伝子の2つのSNP、Fokl及びApalがDEDに関連している可能性があり得ることが示された(Hallak et al.,Investigative Ophthalmology & Visual Science September 2015,Vol.56,5990-5996)。しかしながら、TNFα拮抗作用によって利益を受ける可能性が最も高いDED患者を同定することのできる公知のSNPはない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本明細書には、ドライアイ疾患(DED)を有する患者向けの、TNFα拮抗薬による治療前に良好に応答する可能性のある患者を同定することによりこれらの集団においてTNFα拮抗作用の利益を最大化し、且つそのリスクを最小限に抑える新規予測方法及び個別化療法が提供される。この知見は、一部には、rs1800693応答アレルから選択されるDED応答マーカーを保因するDED患者が、このアレルを保因しないDED患者と比べてLME636への応答の改善を示すという決定に基づく。
【0014】
従って本発明者らは、TNFα拮抗作用(antagonsim)に応答する可能性が高いDED患者を同定することを含む種々の医薬製品及び方法において、及びTNFα拮抗薬(例えばLME636)をそれらの患者に処方するかどうか、又は代替療法レジメンを処方するかどうかについて医師の判断を助けることにおいて、対象をrs1800693応答アレルの存在に関して試験することが有用となり得ることを企図する。
【0015】
従って、本開示の一つの目的は、患者の生化学的プロファイルのある種の側面に基づき、治療有効量のTNFα拮抗薬、例えばLME636などのTNFα抗体を患者に投与することによりDEDを有する患者を治療する方法を提供することである。本開示の別の目的は、患者の生化学的プロファイルのある種の側面に基づき、TNFα拮抗薬、例えばLME636などのTNFα抗体による治療に応答する可能性が高いDEDを有する患者を同定する方法を提供することである。本開示の別の目的は、患者の生化学的プロファイルのある種の側面に基づき、DEDを有する患者がTNFα拮抗薬、例えばLME636などのTNFα抗体による治療に応答するであろう可能性を決定する方法である。
【0016】
本明細書には、DEDを有する患者を選択的に治療する様々な方法が開示される。一部の実施形態において、これらの方法は、患者からの生体試料を本開示のDED応答マーカーに関してアッセイすること;及びその後、患者が応答マーカーを有する場合、治療有効量のTNFα拮抗薬、例えばLME636などのTNFα抗体を患者に選択的に投与することを含む。
【0017】
本明細書にはまた、DEDを有する患者がTNFα拮抗薬、例えばLME636などのTNFα抗体による治療に応答するであろう可能性を予測する様々な方法も開示される。一部の実施形態において、これらの方法は、患者からの生体試料中にある本開示のDED応答マーカーを検出することを含み、ここで応答マーカーの存在が、患者がTNFα拮抗薬による治療に応答するであろう可能性の増加を示す。
【0018】
好ましい実施形態において、TNFα拮抗薬はTNFα結合分子、好ましくは抗体又はその抗原結合部分、最も好ましくはLME636である。一部の実施形態において、DED応答マーカーは、表1に示されるとおりの少なくとも1つのDED応答マーカーである。
【0019】
以下の説明及び添付の特許請求の範囲に追加の方法、使用、及びキットが提供される。当業者には、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から、本開示の更なる特徴、利点及び態様が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】rs1800693 CC遺伝子型を有する12人の患者(LME636による治療の4人の患者及び媒体による治療の8人)のベースラインから43日目までの症候変化を示す。
図2】LME636又は媒体で治療した全ての患者に関する26日目の全般的眼部不快感スコアのベースラインからの変化量を示すウォーターフォールプロットであり、治療及びrs1800693遺伝子型別の症候変化を可視化可能にする。
図3】LME636又は媒体で治療した全ての患者に関する27日目の全般的眼部不快感スコアのベースラインからの変化量を示すウォーターフォールプロットであり、治療及びrs1800693遺伝子型別の症候変化を可視化可能にする。
図4】LME636又は媒体で治療した全ての患者に関する28日目の全般的眼部不快感スコアのベースラインからの変化量を示すウォーターフォールプロットであり、治療及びrs1800693遺伝子型別の症候変化を可視化可能にする。
図5】LME636又は媒体で治療した全ての患者に関する29日目の全般的眼部不快感スコアのベースラインからの変化量を示すウォーターフォールプロットであり、治療及びrs1800693遺伝子型別の症候変化を可視化可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0021】
用語「~を含む(comprising)」は、「~を含む(including)」並びに「~からなる(consisting)」を包含し、例えばX「を含む(comprising)」組成物は、Xのみからなってもよく、又は追加の何か、例えばX+Yを含んでもよい。
【0022】
数値xに関して用語「約」は、文脈上特に指示がない限り±10%を意味する。
【0023】
本明細書で使用されるとき、用語「対象」及び「患者」には、任意のヒト又は非ヒト動物が含まれる。用語「非ヒト動物」には、あらゆる脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、雌ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類など、哺乳類及び非哺乳類が含まれる。
【0024】
用語「アッセイする」は、同定し、スクリーニングし、プロービングし、試験し、測定し、又は決定する行為を指して使用され、この行為はいかなる従来手段によって実施されてもよい。例えば、試料は特定の遺伝子又はタンパク質マーカーの存在に関して、ELISAアッセイ、ノーザンブロット、イメージング、血清型タイピング、細胞タイピング、遺伝子シーケンシング、表現型タイピング、ハプロタイピング、免疫組織化学、ウエスタンブロット、質量分析法等を用いることによりアッセイされ得る。用語「検出する」(など)は、所与のソースから特定の情報を抽出する行為を意味し、これは直接的であっても又は間接的であってもよい。本明細書に開示される予測方法の一部の実施形態では、所与の事物(例えばアレル、タンパク質レベル等)の存在が生体試料において間接的に、例えばデータベースに問い合わせることにより検出される。用語「アッセイする」及び「決定する」は、物質の変換、例えば、生体試料、例えば血液試料又は他の組織試料のある状態から別の状態への、当該試料を物理試験に供することによる変換を企図する。
【0025】
用語「入手する」は、調達すること、例えば何らかの方法で、例えば物理的介入(例えば生検、採血)又は非物理的介入(例えばサーバを介した情報の伝送)等によって所有物として獲得することを意味する。
【0026】
語句「生体試料をアッセイする……」などは、試料が所与のDED応答マーカーの存在のいずれかに関して(直接、或いは間接的に)試験され得ることを意味して使用される。物質の存在が1つの確率を意味し、及び物質の非存在が別の確率(probabiltity)を意味する状況では、かかる物質の存在又は非存在のいずれかが治療判断の指針として用いられ得ることは理解されるであろう。例えば、患者がDED応答マーカーを有するかどうかの決定は、患者に特定の応答アレルが実際に存在することを決定することによるか、又は患者に特定の応答アレルが存在しないことを決定することにより得る。かかる場合のいずれにおいても、患者がDED応答マーカーの存在を有するかどうかが決定されている。本開示の方法は、特に、特定の個体がDED応答マーカーを有するかどうかを決定することを含む。この決定は、患者が表1のDED応答マーカーを有するかどうかを同定することにより行われる。これらの決定の各々(即ち、存在又は非存在)は、そのままで患者のアレル状態を提供し、従ってこれらの決定(deterimination)の各々は、特定の個体がTNFα拮抗作用に更に良好に応答するか否かの指標を同様に提供する。
【0027】
【表1】
【0028】
表1は本開示の様々な応答アレルを示す。第1列は、第2列のSNPが存在する遺伝子を提供し、及び第3列は、当該遺伝子における当該SNPの概略位置を提供する。
【0029】
表1に挙げられるSNPは、所与の応答アレルのいずれかが存在する場合に(即ち、患者が所与の応答アレルに関してホモ接合又はヘテロ接合のいずれである場合にも)TNFα拮抗作用に関して予測的価値を有するが、以下の実施例で考察するとおり、CC遺伝子型の患者はCT又はTT遺伝子型の患者と比べてLME636への応答の改善が大きい傾向があった。
【0030】
用語「ドライアイ」は、乾性結膜炎又は乾性角結膜炎の別名でも知られ、前眼部涙液膜の破綻、その結果として起こる露出した眼の外表面の水分喪失を伴う一般的な眼科的障害である。特定の実施形態において、「ドライアイ」は中等度から重度として特徴付けられ、重症度は当業者により、例えば本明細書に記載されるとおりの全般的眼部不快感スコアに基づいて決定される。ドライアイの重症度の決定方法はまた、例えば、2007年国際ドライアイ研究会(2007 International Dry Eye Workshop)によるDEWS定義・分類ガイドライン(“The Ocular Surface”April 2007,Vol.5,No.2,pages 75-92を参照)にも記載され、又はSullivan et al.(Investigative Ophthalmology & Visual Science,December 2010,Vol.51,pg.6125-6130)により記載される方法である。
【0031】
用語「TNFα」は腫瘍壊死因子アルファ(カケクチンとしても知られる)を指し、これは、単球及びマクロファージを含め、多数の細胞型によりエンドトキシン又は他の刺激に応答して産生される天然に存在する哺乳類サイトカインである。TNFαは、炎症反応、免疫学的反応、及び病態生理学的反応の主要なメディエーターである(Grell,M.,et al.(1995)Cell,83:793-802)。「TNFα」には、様々な種(例えばヒト、マウス、及びサル)由来の野生型TNFα、TNFαの多型変異体、及びTNFαの機能的等価物が含まれる。本開示に係るTNFαの機能的等価物は、好ましくは野生型TNFα(例えばヒトTNFα)と少なくとも約85%、95%、96%、97%、98%、又は更には99%の全体的配列同一性を有し、且つ炎症反応、免疫学的反応、及び病態生理学的反応を媒介する能力を実質的に保持している。
【0032】
「TNFα拮抗薬」は、本明細書で使用されるとき、TNFα機能、発現及び/又はシグナル伝達に(例えばTNFαのTNFα受容体への結合を遮断することにより)拮抗する(例えばそれを低減する、阻害する、減少させる、遅延させる)能力を有する分子を指す。TNFα拮抗薬の非限定的な例としては、TNFα結合分子及びTNFα受容体結合分子が挙げられる。本開示の方法、レジメン、キット、プロセス、使用及び組成物の一部の実施形態では、TNFα拮抗薬が用いられる。
【0033】
「TNFα結合分子」とは、ヒトTNFα抗原に単独で、或いは他の分子と結び付いて結合する能力を有する任意の分子を意味する。結合反応は、例えば、TNFαのその受容体への結合の阻害を決定する結合アッセイ、競合アッセイ又はバイオアッセイを含めた標準方法(定性的アッセイ)又は任意の種類の結合アッセイにより、無関係な特異性の、但し理想的には同じアイソタイプの抗体、例えば抗CD25抗体を使用する陰性対照試験を基準として示されてもよい。TNFα結合分子の非限定的な例には、小分子、TNFα受容体デコイ、及びB細胞又はハイブリドーマによって産生されるとおりのTNFαに結合する抗体及びキメラ、CDRグラフト又はヒト抗体又はその任意の断片、例えばF(ab’)及びFab断片、並びに単鎖又はシングルドメイン抗体が含まれる。好ましくはTNFα結合分子はTNFα機能、発現及び/又はシグナル伝達に拮抗する(例えばそれを低減する、阻害する、減少させる、遅延させる)。本開示の方法、レジメン、キット、プロセス、使用及び組成物の一部の実施形態では、TNFα結合分子が用いられる。
【0034】
「TNFα受容体結合分子」とは、ヒトTNFα受容体に単独で、或いは他の分子と結び付いて結合する能力を有する任意の分子を意味する。結合反応は、例えば、TNFα受容体のTNFαへの結合の阻害を決定する結合アッセイ、競合アッセイ又はバイオアッセイを含めた標準方法(定性的アッセイ)又は任意の種類の結合アッセイにより、無関係な特異性の、但し理想的には同じアイソタイプの抗体を使用する陰性対照試験を基準として示されてもよい。TNFα受容体結合分子の非限定的な例には、小分子、TNFαデコイ、及びB細胞又はハイブリドーマによって産生されるとおりのTNFα受容体に対する抗体及びキメラ、CDRグラフト又はヒト抗体又はその任意の断片、例えばF(ab’)及びFab断片、並びに単鎖又はシングルドメイン抗体が含まれる。好ましくはTNFα受容体結合分子はTNFα機能、発現及び/又はシグナル伝達に拮抗する(例えばそれを低減する、阻害する、減少させる、遅延させる)。本開示の方法、レジメン、キット、プロセス、使用及び組成物の一部の実施形態では、TNFα受容体結合分子が用いられる。
【0035】
用語「抗体」には、本明細書において参照されるとき、全抗体及びその任意の抗原結合部分又は単鎖が含まれる。天然に存在する「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書ではVと省略する)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書ではVLと省略する)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLを含む。V及びV領域は、フレームワーク領域(FR)と称される一層高度に保存された領域が散在した超可変領域又は相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に更に細かく分けることができる。各V及びVは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並んだ3つのCDR及び4つのFRを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含め、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。本開示の方法、レジメン、キット、プロセス、使用及び組成物の一部の実施形態では、TNFα又はTNFα受容体に対する抗体、好ましくはTNFαに対する抗体、例えばLME636が用いられる。
【0036】
抗体の「抗原結合部分」という用語は、本明細書で使用されるとき、抗原(例えばTNFα)に特異的に結合する能力を保持している抗体の断片を指す。完全長抗体の断片によって抗体の抗原結合機能が果たされ得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に含まれる結合断片の例としては、V、V、CL及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)2断片;V及びCH1ドメインからなるFd断片;抗体の単一のアームのV及びVドメインからなるFv断片;VドメインからなるdAb断片(Ward et al.,1989 Nature 341:544-546);及び単離CDRが挙げられる。例示的抗原結合部位は、配列番号1~6(表2)に示されるとおりのLME636のCDR、好ましくは重鎖CDR3を含む。更に、Fv断片の2つのドメイン、V及びVは別個の遺伝子によりコードされるが、組換え方法を用いて合成リンカーによってつなぎ合わせて、それらが単一のタンパク質鎖として作られることを可能にすることができ、ここではV及びV領域が対を成して一価分子を形成する(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al.,1988 Science 242:423-426;及びHuston et al.,1988 Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883を参照のこと)。かかる一本鎖抗体もまた、用語「抗体」の範囲内に含まれることが意図される。一本鎖抗体及び抗原結合部分は当業者に公知の従来技術を用いて入手される。本開示の方法、レジメン、キット、プロセス、使用及び組成物の一部の実施形態では、TNFαに対する(例えばLME636)又はTNFα受容体に対する一本鎖抗体又は抗体の抗原結合部分が用いられる。
【0037】
「単離抗体」は、本明細書で使用されるとき、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、TNFαに特異的に結合する単離抗体は、TNFα以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、本明細書で使用されるとき、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。用語「ヒト抗体」は、本明細書で使用されるとき、フレームワーク領域及びCDR領域の両方がヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図される。「ヒト抗体」は、ヒト、ヒト組織又はヒト細胞によって作製される必要はない。本開示のヒト抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基(例えばインビトロでランダム又は部位特異的突然変異誘発によるか、インビボで抗体遺伝子の組換え中にジャンクションにおけるN-ヌクレオチド付加によるか、又はインビボで体細胞突然変異により導入される突然変異)を含んでもよい。本開示の方法、レジメン、キット、プロセス、使用及び組成物の一部の実施形態では、TNFα拮抗薬はヒト抗体、単離抗体、及び/又はモノクローナル抗体である。本開示の方法、レジメン、キット、プロセス、使用及び組成物の他の実施形態では、TNFα拮抗薬は組換え単鎖(scFv)抗体である。
【0038】
用語「K」は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことが意図される。用語「K」は、本明細書で使用されるとき、K対Kの比(即ちK/K)から求められる、且つモル濃度(M)として表される解離定数を指すことが意図される。抗体のK値は、当該技術分野で十分に確立されている方法を用いて決定することができる。抗体のKの決定方法は当該技術分野において公知であり、例えばBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを用いる。一部の実施形態において、TNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)又はTNFα受容体結合分子(例えばTNFα受容体抗体又はその抗原結合部分)はヒトTNFαに約5~250pMのKで結合する。
【0039】
用語「親和性」は、単一の抗原部位における抗体と抗原との間の相互作用強度を指す。各抗原部位の範囲内で、抗体「アーム」の可変領域は弱い非共有結合性の力によって多数の部位で抗原と相互作用する;相互作用が多いほど親和性が強くなる。様々な種のTNFαに対する抗体の結合親和性を判定する標準アッセイは当該技術分野において公知であり、例えばELISA、ウエスタンブロット及びRIAが挙げられる。抗体の結合反応速度(例えば結合親和性)はまた、Biacore解析によるなど、当該技術分野において公知の標準アッセイによっても評価することができる。
【0040】
当該技術分野において公知の及び本明細書に記載される方法論に従い決定されるとおりのこれらのTNFα機能特性(例えば生化学的、免疫化学的、細胞、生理学的又は他の生物学的活性など)の1つ以上を「阻害」する抗体は、抗体の非存在下で(又は無関係な特異性の対照抗体が存在する場合に)見られるものと比べた特定の活性の統計的に有意な減少に関係することが理解されるであろう。TNFα活性を阻害する抗体は、例えば測定されるパラメータの少なくとも約10%、少なくとも50%、80%又は90%の統計的に有意な減少に影響を及ぼし、及び本開示の方法、使用、プロセス、キット及び組成物の特定の実施形態では、使用されるTNFα抗体は95%、98%又は99%超のTNFα機能的活性を阻害し得る。
【0041】
用語「誘導体」は、特に指示されない限り、例えば指定される配列(例えば可変ドメイン)の本開示に係るTNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)又はTNFα受容体結合分子(例えばTNFα受容体抗体又はその抗原結合部分)のアミノ酸配列変異体、及び共有結合修飾(例えばペグ化、脱アミド、ヒドロキシル化、リン酸化、メチル化等)を定義して使用される。「機能的誘導体」は、本開示のTNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子と共通する定性的生物学的活性を有する分子を含む。機能的誘導体には、本明細書に開示されるとおりのTNFα拮抗薬の断片及びペプチド類似体が含まれる。断片は、例えば指定される配列の本開示に係るポリペプチドの配列内にある領域を含む。本明細書に開示されるTNFα拮抗薬の機能的誘導体(例えばLME636の機能的誘導体)は、好ましくは、本明細書に開示されるTNFα結合分子のV及び/又はV配列(例えば表2のV及び/又はV配列)と少なくとも約65%、75%、85%、95%、96%、97%、98%、又は更には99%の全体的配列同一性を有するV及び/又はVドメインを含み、且つヒトTNFαへの結合能力を実質的に保持している。
【0042】
語句「実質的に同一」は、関連性のあるアミノ酸又はヌクレオチド配列(例えばV又はVドメイン)が特定の参照配列と比較して同一である又は(例えば保存されたアミノ酸置換による)実質的でない差異しか有しないであろうことを意味する。実質的でない差異には、指定される領域(例えばV又はVドメイン)の5アミノ酸配列中1又は2個の置換(例えば、セリンのスレオニンとのスワッピングなどの保存的置換、又は抗体活性、構造の完全性、補体結合等に関与しない位置における置換)など、軽微なアミノ酸変化が含まれる。抗体の場合、第2の抗体は同じ特異性を有し、且つその親和性の少なくとも50%を有する。本明細書に開示される配列と実質的に同一な(例えば少なくとも約85%の配列同一性の)配列もまた、本開示の一部である。一部の実施形態において、誘導体TNFα抗体(例えばLME636の誘導体、例えばLME636バイオシミラー抗体)の配列同一性は、本開示の配列を基準として約90%以上、例えば90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれ以上であってもよい。
【0043】
天然ポリペプチド及びその機能的誘導体に関して「同一性」とは、本明細書では、最大のパーセント同一性が達成されるように、且ついかなる保存的置換も配列同一性の一部としては考慮せずに配列をアラインメントし、必要であればギャップを導入した後の、対応する天然ポリペプチドの残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。N末端又はC末端の伸長も挿入も、同一性を減じるとは解釈されないものとする。アラインメントの方法及びコンピュータプログラムは周知である。パーセント同一性は、標準的なアラインメントアルゴリズム、例えばAltshul et al.((1990)J.Mol.Biol.,215:403 410)によって記載されるベーシック・ローカル・アラインメント・サーチ・ツール(BLAST:Basic Local Alignment Search Tool);Needleman et al.((1970)J.Mol.Biol.,48:444 453)のアルゴリズム;又はMeyers et al.((1988)Comput.Appl.Biosci.,4:11 17)のアルゴリズムによって決定することができる。パラメータ一式は、Blosum 62スコアリング行列で、ギャップペナルティ12、ギャップ伸長ペナルティ4、及びフレームシフトギャップペナルティ5であってもよい。2つのアミノ酸又はヌクレオチド配列間のパーセント同一性はまた、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているE.Meyers and W.Miller((1989)CABIOS,4:11-17)のアルゴリズムを用いて、PAM120重み付け残基テーブル、ギャップ長ペナルティ12及びギャップペナルティ4を使用して決定することもできる。
【0044】
「アミノ酸」は、あらゆる天然に存在するL-α-アミノ酸を例えば指し、及びD-アミノ酸を含む。語句「アミノ酸配列変異体」は、本開示に係る配列と比較したときそのアミノ酸配列に何らかの違いがある分子を指す。例えば指定される配列の本開示に係るポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、なおもヒトTNFαへの結合能力を有している。アミノ酸配列変異体には、置換変異体(本開示に係るポリペプチドにおいて少なくとも1つのアミノ酸残基が取り除かれ、それに代えて同じ位置に別のアミノ酸が挿入されているもの)、挿入変異体(本開示に係るポリペプチドにおける特定の位置にあるアミノ酸に直接隣接して1つ以上のアミノ酸が挿入されているもの)及び欠失変異体(本開示に係るポリペプチドにおいて1つ以上のアミノ酸が取り除かれているもの)が含まれる。
【0045】
用語「薬学的に許容可能」は、1つ又は複数の活性成分の生物学的活性の有効性に干渉しない非毒性物質を意味する。
【0046】
化合物、例えばTNFα結合分子又は別の薬剤に関して用語「投与する」は、当該化合物を任意の経路によって患者に送達することを指して使用される。
【0047】
本明細書で使用されるとき、「治療有効量」は、患者(ヒトなど)への単回又は複数回用量投与時に、障害又は再発性障害を治療し、予防し、その発症を予防し、治癒し、遅延させ、その重症度を低減し、その少なくとも1つの症状を改善するのに有効な、又はかかる治療がない場合に予想される生存を超えて患者の生存を延長させるのに有効なTNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)又はTNFα受容体結合分子(例えばTNFα受容体抗体又はその抗原結合部分)の量を指す。単独で投与される個別の活性成分(例えばTNFα拮抗薬、例えばLME636)に適用される場合、この用語は当該成分単独を指す。併用に適用される場合、この用語は、併用投与か、逐次投与か、それとも同時投与かに関わらず、治療効果をもたらす活性成分の総量を指す。
【0048】
用語「治療」又は「治療する」は、疾患に罹るリスクがある又は疾患に罹っていると疑われる患者並びに病気の又は疾患若しくは病状に罹患していると診断された患者の治療を含め、予防的又は防御的治療(場合による)並びに治癒的又は疾患修飾的治療の両方を指し、及び臨床的再発の抑制を含む。治療は、障害又は再発性障害を予防し、治癒し、その発症を遅延させ、その重症度を低減し、又はその1つ以上の症状を改善するため、又はかかる治療がない場合に予想される生存を超えて患者の生存を延長させるため、医学的障害を有する又は最終的に障害に後天的に罹ることになり得る患者に投与されてもよい。
【0049】
語句「治療に応答する」は、特定の治療、例えばTNFα結合分子(例えばLME636)の送達時に患者が前記治療からの臨床的に有意味な利益を示すことを意味して使用される。DEDの場合、かかる基準には、例えば全般的眼部不快感スコアの改善が含まれる。かかる基準の全てが、患者が所与の治療に応答しているかどうかの許容される尺度である。語句「治療に応答する」は、絶対的な応答というよりむしろ比較的に解釈されることが意図される。例えば、DED応答マーカーを有するDED患者は、DED応答マーカーを有しないDED患者と比べてTNFα拮抗薬による治療からの利益をより多く有すると予測される。これらのDED応答マーカー保因者はTNFα拮抗薬による治療に更に良好に応答し、単にTNFα拮抗薬による「治療に応答する」と言われ得る。
【0050】
語句「データを受け取る」は、例えば口頭で、電子的に(例えば電子メールにより、ディスケット又は他の媒体上に符号化されて)、書面によるなど、任意の利用可能な手段によって情報を所有物として入手することを意味して使用される。
【0051】
本明細書で使用されるとき、患者に関して「選択する」及び「選択される」は、特定の患者がより大きい患者集団から、その特定の患者が所定の基準を有すること、例えばその患者がDED応答マーカーを有することに基づき(それに起因して)特別に選ばれることを意味して使用される。同様に、「選択的に治療する」は、DEDを有する患者に治療を提供することを指し、ここで当該の患者はより大きい患者集団から、その特定の患者が所定の基準を有することに基づき特別に選ばれ、例えばDED患者は、その患者がDED応答マーカーを有することに起因して治療に特別に選ばれる。同様に、「選択的に投与する」は、より大きい患者集団から、その特定の患者が所定の基準、例えば特定の遺伝子マーカー又は他の生物学的マーカーを有することに基づき(それに起因して)特別に選ばれる患者に薬物を投与することを指す。選択する、選択的に治療する、及び選択的に投与するとは、患者がDEDを有することのみに基づき標準治療レジメンが送達されるというよりむしろ、患者の特定の生物学に基づき患者に個別化療法が送達されることを意味する。本明細書で使用されるときの治療方法に関して選択するとは、DED応答マーカーを有する患者の偶然の治療を指すのでなく、むしろ、患者がDEDI応答マーカーを有することに基づき患者にTNFα拮抗薬を投与する慎重な選択を指す。従って、選択的治療は、そのアレル状態に関わらず全ての患者に特定の薬物を送達する標準治療とは異なる。
【0052】
本明細書で使用されるとき、「予測する」は、DEDを有する個体がTNFα結合分子による治療に応答するであろう可能性又はそれに更に良好に応答するであろう可能性を医療提供者が決定できるようにするための情報が本明細書に記載される方法により提供されることを示す。これは100%の精度で応答を予測可能であることを指すものではない。代わりに、当業者は、これが確率の増加を指すことを理解するであろう。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「可能性」及び「可能性がある」は、あるイベントが起こることがどの程度確からしいかの尺度である。これは「確率」と同義的に使用されてもよい。可能性は、推測を超えるが確信には至らない確率を指す。従って、常識、訓練又は経験を用いる合理的な人が、状況を所与として、あるイベントが確からしいと結論付ける場合に、イベントは可能性がある。一部の実施形態において、可能性が確かめられると、患者はTNFα結合分子で治療されてもよく(又は治療が継続される、又は治療が投薬量増加に移る)、又は患者は治療されなくてもよい(又は治療が中断される、又は治療がより低用量に移る)。
【0054】
語句「可能性の増加」は、あるイベントが起こるであろう確率の増加を指す。例えば、本明細書における一部の方法では、患者がTNFα結合分子による治療に応答する可能性の増加又はDED応答マーカーを有しないDED患者と比較してTNFα結合分子による治療により良く応答する可能性の増加を示すかどうかの予測が可能である。
【0055】
本明細書で使用されるとき「SNP」は「一塩基多型」を指す。一塩基多型は、ゲノム(又は他の共有される配列)中の単一のヌクレオチドが生物学的種のメンバー間又は個体における対を成す染色体間で異なる場合に起こるDNA配列変異である。ほとんどのSNPはアレルを2つのみ有し、通常は集団中で一方がより多く見られる。SNPは、遺伝子のエクソン又はイントロン、遺伝子の上流又は下流非翻訳領域、又は単なるゲノム位置(即ち転写されない)に存在し得る。SNPが遺伝子のコード領域に存在するとき、SNPは遺伝子コードの冗長性に起因してサイレントであることもあり(即ち、同義多型)、又はSNPはコードされたポリペプチドの配列に変化をもたらすこともある(即ち、非同義多型)。本開示では、SNPはその一塩基多型データベース(dbSNP)rs番号、例えば「rs1800693」によって識別される。dbSNPは、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI:National Center for Biotechnology Information)が国立ヒトゲノム研究所(NHGRI:National Human Genome Research Institute)と共同で開発及び運営する様々な種内及び種間の遺伝的変異に関する無料の公的アーカイブである。
【0056】
SNPなどの多型部位は、通常は目的集団のゲノムにおいてその前後に保存配列があり、従って多型部位の位置は、往々にして、SNPの場合に一般に「SNPコンテクスト配列」と称される、多型部位を取り囲むコンセンサス核酸配列(例えば30~60ヌクレオチド)に基づき決めることができる。本明細書に開示されるSNPのコンテクスト配列については、www.ncbi.nlm.nih.gov/snpで利用可能なNCBI SNPデータベースを参照し得る。或いは、多型部位の位置は、遺伝子、mRNA転写物、BACクローンの始端に対する、又は更にはタンパク質翻訳の開始コドン(ATG)に対する参照配列(例えばGeneBank寄託物)上のその位置によって同定されてもよい。当業者は、目的集団中の各個体において特定の多型部位の位置が、コンセンサス配列又は参照配列と比較したときの当該個体のゲノムにおける1つ以上の挿入又は欠失の存在に起因して参照配列又はコンテクスト配列の正確に同じ位置に存在しないこともあることを理解する。検出しようとする多型部位における選択的アレルのアイデンティティと、その多型部位が存在する参照配列又はコンテクスト配列の一方又は両方とが当業者に提供されたとき、任意の所与の個体における多型部位の選択的アレルを検出するためのロバストで特異的且つ正確なアッセイを設計することは、当業者にとってルーチンである。従って、当業者は、参照配列又はコンテクスト配列における(又はかかる配列の開始コドンに対する)特定の位置を参照することにより本明細書に記載される任意の多型部位の位置を特定することは単に便宜上であること、及び字義通りの任意の具体的に挙げられるヌクレオチド位置が、本明細書に記載される遺伝子タイピング方法又は当該技術分野において公知の他の遺伝子タイピング方法のいずれかを用いて本発明の遺伝子マーカーに関して試験される任意の個体の同じ遺伝子座に同じ多型部位が実際に位置するいかなるヌクレオチド位置も含むことを理解するであろう。
【0057】
SNPに加えて、遺伝子多型には、遺伝子エンハンサー、エクソン、イントロン、プロモーター、5’UTR、3’UTR等に生じる転座、挿入、置換、欠失等が含まれる。
【0058】
本明細書で使用されるとき「rs1800693」は、腫瘍壊死因子受容体1(TNFR1)としても知られるヒト腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー、メンバー1A(TNFRSF1A)遺伝子(GenBank受託番号NM_001065.3)の6番目のイントロンの範囲内にあるT/C SNPを指す。TNFRSF1Aタンパク質は主要なTNFα受容体のうちの1つであり、NF-κB経路に関与し、アポトーシスを媒介し、及び炎症を調節する。rs1800693多型部位は染色体12:6330843に位置する。語句「rs1800693応答アレル」は、本明細書で使用されるとき、rs1800693多型部位にある「C」アレル(非コード鎖の場合Gアレル)又は「T」アレル(非コード鎖の場合Aアレル)を指す。本開示の方法、使用、及びキットの一部の実施形態では、患者は少なくとも1つのrs1800693応答アレルを有する。
【0059】
前述の応答アレルは、TNFα拮抗作用に対するDED患者の応答の予測に有用である。一部の実施形態において、CC、CT、又はTT遺伝子型を有するDED患者は、TNFα拮抗薬、例えばLME636などのTNFα抗体による治療に応答する可能性があると見なされる。
【0060】
当業者が認識するとおり、特定のSNPを含む核酸試料は相補的二本鎖分子であってもよく、従ってセンス鎖上の特定の部位への言及は、同様に相補的アンチセンス鎖上の対応する部位への言及である。同様に、染色体の一方の鎖の両方のコピー上のSNPについて得られる特定の遺伝子型への言及は、他方の鎖の両方のコピー上の同じSNPについて得られる相補的な遺伝子型と等価である。従って、例えばコード鎖上のrs1800693多型部位についてのT/C遺伝子型は、非コード鎖上の当該多型部位についてのA/G遺伝子型と等価である。
【0061】
本明細書で使用されるとき、「ゲノム配列」はゲノムに存在するDNA配列を指し、アレル内の一領域、アレルそれ自体、又は目的のアレルを含む染色体(chromsome)のより大きいDNA配列を含む。
【0062】
DED応答マーカーの産物には、核酸産物及びポリペプチド産物が含まれる。「ポリペプチド産物」は、DED応答マーカー(marke)によってコードされるポリペプチド及びその断片を指す。「核酸産物」は、DED応答マーカーの任意のDNA(例えばゲノムDNA、cDNA等)又はRNA(例えばプレmRNA、mRNA、miRNA等)産物及びその断片を指す。
【0063】
「等価な遺伝子マーカー」は、目的のアレルと相互に関連のある遺伝子マーカーを指し、例えばそれは目的のアレルと連鎖不平衡(LD)を示すか、又は遺伝子連鎖している。患者がDED応答マーカーを有するかどうかの決定は、患者からの生体試料をアレルそれ自体に関して直接調べるよりむしろ、等価な遺伝子マーカーが用いられてもよい。特定のSNPに関するLDの決定を支援する様々なプログラムが存在し、例えば、HaploBlock(bioinfo.cs.technion.ac.il/haploblock/で利用可能)、HapMap、WGA Viewerがある。
【0064】
用語「プローブ」は、別の物質、例えばDED応答マーカーに関連する物質を特異的に検出するのに有用な任意の物質組成物を指す。プローブは、DED応答マーカー、又はDED応答マーカーの核酸産物のゲノム配列に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(コンジュゲートオリゴヌクレオチドを含む)であってもよい。コンジュゲートオリゴヌクレオチドとは、受容体分子(例えばその抗原に特異的な抗体)に対して高度に特異的なリガンド(例えば抗原)を含む発色団又は分子に共有結合的に結合したオリゴヌクレオチドを指す。プローブはまた、DED応答マーカー内の特定の領域を増幅させるための、例えば別のプライマーと一緒のPCRプライマーであってもよい。更に、プローブは、これらのアレルのポリペプチド産物に特異的に結合する抗体であってもよい。更に、プローブは、DED応答マーカーの等価な遺伝子マーカーを検出する(例えば結合する又はハイブリダイズする)能力を有する任意の物質組成物であってもよい。好ましい実施形態において、プローブは目的のアレルの核酸配列(好ましくはゲノムDNA)に特異的にハイブリダイズするか、又はポリペプチド配列に特異的に結合する。
【0065】
語句「特異的にハイブリダイズする」は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でのハイブリダイゼーション(hybrization)を指して使用される。ストリンジェントな条件は当業者に公知であり、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1-6.3.6を参照することができる。当該文献には水性及び非水性方法が記載されており、いずれを用いることもできる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中約45℃でのハイブリダイゼーション、続いて0.2×SSC、0.1%SDS中50℃での少なくとも1回の洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の第2の例は、6×SSC中約45℃でのハイブリダイゼーション、続いて0.2×SSC、0.1%SDS中55℃での少なくとも1回の洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の別の例は、6×SSC中約45℃でのハイブリダイゼーション、続いて0.2×SSC、0.1%SDS中60℃での少なくとも1回の洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の更なる例は、6×SSC中約45℃でのハイブリダイゼーション、続いて0.2×SSC、0.1%SDS中65℃での少なくとも1回の洗浄である。高ストリンジェントな条件には、0.5Mリン酸ナトリウム、7%SDS中65℃でのハイブリダイゼーション、続いて0.2×SSC、1%SDS中65℃での少なくとも1回の洗浄が含まれる。
【0066】
語句「核酸の一領域」は、大きい核酸配列内にある小さい配列を指して使用される。例えば、遺伝子は染色体の一領域である、エクソンは遺伝子の一領域である、などである。
【0067】
ポリペプチドの文脈で用語「特異的に結合する」は、プローブが望ましくないポリペプチドにランダムに結合するのでなく、むしろ所与のポリペプチド標的(例えばDED応答マーカーのポリペプチド産物)に結合することを意味して使用される。しかしながら、「特異的に結合する」は、プローブが所与のポリペプチド標的の存在の有用な測定をもたらす能力を当該の交差反応性が妨げない限り、望ましくないポリペプチドとの何らかの交差反応性を除外しない。
【0068】
用語「能力を有する」は、所与の結果を実現可能であることを意味して使用され、例えば特定の物質の存在を検出する能力を有するプローブとは、そのプローブを使用して特定の物質を検出し得ることを意味する。
【0069】
「オリゴヌクレオチド(oliogonucelotide)」は、短い、例えば2~100塩基のヌクレオチド配列を指す。
【0070】
用語「生体試料」は、本明細書で使用されるとき、同定、診断、予測、又はモニタリングに用いられ得る患者からの試料を指す。好ましい試料としては、滑液、血液、血液由来産物(バフィーコート、血清、及び血漿など)、リンパ液、尿、涙液、唾液、毛球細胞、脳脊髄液、頬側スワブ、糞便、滑液、滑膜細胞、喀痰、又は組織試料(例えば軟骨試料)が挙げられる。加えて、当業者は、一部の試料が分画又は精製手順後、例えば全血からのDNAの単離後であればより容易な分析となり得ることを理解するであろう。
【0071】
TNFα拮抗薬
開示される様々な医薬組成物、レジメン、プロセス、使用、方法及びキットは、TNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)又はTNFα受容体結合分子(例えばTNFα受容体抗体又はその抗原結合部分)を利用する。
【0072】
一実施形態において、TNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)は、超可変領域CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む少なくとも1つの重鎖可変ドメイン(V)を含み、前記CDRH1はアミノ酸配列 配列番号1を有し、前記CDRH2はアミノ酸配列 配列番号2を有し、及び前記CDRH3はアミノ酸配列 配列番号3を有する。一実施形態において、TNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)は、超可変領域CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む少なくとも1つの軽鎖可変ドメイン(V)を含み、前記CDRL1はアミノ酸配列 配列番号4を有し、前記CDRL2はアミノ酸配列 配列番号5を有し、及び前記CDRL3はアミノ酸配列 配列番号6を有する。
【0073】
一実施形態において、TNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)はVドメイン及びVドメインを含み、ここで:a)Vドメインは(例えば配列中に):i)超可変領域CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含み、前記CDRH1はアミノ酸配列 配列番号1を有し、前記CDRH2はアミノ酸配列 配列番号2を有し、及び前記CDRH3はアミノ酸配列 配列番号3を有し;及びb)Vドメインは(例えば配列中に)超可変領域CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含み、前記CDRL1はアミノ酸配列 配列番号4を有し、前記CDRL2はアミノ酸配列 配列番号5を有し、及び前記CDRL3はアミノ酸配列 配列番号6を有する。
【0074】
一実施形態において、TNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)は、a)配列番号8として示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(V);b)配列番号10として示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(V);c)配列番号8として示されるアミノ酸配列を含むVドメイン及び配列番号10として示されるアミノ酸配列を含むVドメイン;d)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3として示される超可変領域を含むVドメイン;e)配列番号4、配列番号5及び配列番号6として示される超可変領域を含むVドメイン;又はf)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3として示される超可変領域を含むVドメイン及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6として示される超可変領域を含むVドメインを含む。
【0075】
参照し易いように、LME636 scFv抗体の超可変領域のアミノ酸配列を以下の表2に提供する。
【0076】
【表2】
【0077】
一部の実施形態において、TNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)は配列番号7の軽鎖を含む。他の実施形態において、TNFα拮抗薬は配列番号8の重鎖を含む。他の実施形態において、TNFα 7拮抗薬は配列番号7の軽鎖及び配列番号8の重鎖を含む。一部の実施形態において、TNFα拮抗薬は配列番号7の3つのCDRを含む。他の実施形態において、TNFα拮抗薬は配列番号8の3つのCDRを含む。他の実施形態において、TNFα拮抗薬は配列番号7の3つのCDR及び配列番号8の3つのCDRを含む。配列番号7及び配列番号8のCDRは表2に示す。他の実施形態において、TNFα拮抗薬は配列番号9の配列を含む:
【化1】
【0078】
超可変領域はあらゆる種類のフレームワーク領域を伴い得るが、好ましくはヒト起源のものである。好適なフレームワーク領域は、Kabat E.A.et al,前掲に記載される。好ましい重鎖フレームワークは、配列番号10に示されるとおりのLME636抗体の重鎖フレームワークである:
【化2】
【0079】
好ましい軽鎖フレームワークは、配列番号11に示されるとおりのLME636抗体の軽鎖フレームワークである:
【化3】
【0080】
配列番号10及び配列番号11の配列中で使用されるとき、(X)n=3-50はCDRを表す。
【0081】
一実施形態において、TNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)は、a)配列中に超可変領域CDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む第1のドメイン(前記CDRH1はアミノ酸配列 配列番号1を有し、前記CDRH2はアミノ酸配列 配列番号2を有し、及び前記CDRH3はアミノ酸配列 配列番号3を有する);及びb)超可変領域CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む第2のドメイン(前記CDRL1はアミノ酸配列 配列番号4を有し、前記CDRL2はアミノ酸配列 配列番号5を有し、及び前記CDRL3はアミノ酸配列 配列番号6を有する);及びc)第1のドメインのN末端の端及び第2のドメインのC末端の端又は第1のドメインのC末端の端及び第2のドメインのN末端の端のいずれかに結合するペプチドリンカーを含む抗原結合部位を含む単鎖結合分子から選択される。
【0082】
或いは、本開示の方法に用いられるTNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分)は、本明細書において配列(sequnence)によって示されるTNFα結合分子の誘導体(例えばペグ化バージョンのLME636)を含んでもよい。或いは、本開示の方法に用いられるTNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分)のV又はVドメインは、本明細書に示されるV又はVドメイン(例えば配列番号8及び7に示されるもの)と実質的に同一のV又はVドメインを有してもよい。本明細書に開示される抗TNFα抗体は、配列番号8として示されるものと実質的に同一の重鎖及び/又は配列番号7として示されるものと実質的に同一の軽鎖を含んでもよい。本明細書に開示される抗TNFα抗体は、配列番号8を含む重鎖及び配列番号7を含む軽鎖を含んでもよい。本明細書に開示される抗TNFα抗体は、a)配列番号8に示されるものと実質的に同一のアミノ酸配列を有する可変ドメイン及びヒト重鎖の定常部分を含む1つの重鎖;及びb)配列番号7に示されるものと実質的に同一のアミノ酸配列を有する可変ドメイン及びヒト軽鎖の定常部分を含む1つの軽鎖を含んでもよい。或いは、本開示の方法に用いられるTNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分)は、本明細書に示される参照TNFα結合分子のアミノ酸配列変異体であってもよい。かかる誘導体及び変異体例の全てにおいて、TNFα拮抗薬は、約50nM以下、約20nM以下、約10nM以下、約5nM以下、又はより好ましくは約3nM以下の前記分子の濃度で約1nM(=30ng/ml)のヒトTNFαの活性を50%阻害する能力を有し、前記阻害活性は、例えば、Chiu et al.,2011,PLoS ONE,Vol 6,issue 1,e16373に記載されるとおりL929細胞のTNFα細胞傷害性の中和に関してアッセイすることにより測定される。
【0083】
本開示はまた、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、CDRL3、又はフレームワークのアミノ酸残基のうちの1つ以上、典型的には僅か数個(例えば1~4つ)が、例えば対応するDNA配列の突然変異、例えば部位特異的突然変異誘発によって変化しているTNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)も含み得る。本開示は、かかる変化したTNFα拮抗薬をコードするDNA配列を含む。
【0084】
本開示はまた、ヒトTNFαに対して結合特異性を有するTNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)、詳細にはTNFαのその受容体への結合を阻害する能力を有するTNFα抗体及び約50nM以下、約20nM以下、約10nM以下、約5nM以下、又はより好ましくは約3nM以下の前記分子の濃度で1nM(=30ng/ml)のヒトTNFαの活性を50%阻害する能力を有するTNFα抗体(前記阻害活性は、L929細胞のTNFα細胞傷害性の中和に関してアッセイすることにより測定される)も含む。
【0085】
好ましい実施形態において、本開示の方法、使用、キット等に用いられる抗TNFα抗体はLME636であり、これは配列番号9の配列を含む。LME636は、ヒトTNFαを阻害する、且つ標準的な発現技術によって大腸菌(E.coli)で組換え産生される254アミノ酸(分子質量:26.7kDa)からなるヒト化モノクローナルscFv抗体断片である。この分子は、グリシン及びセリンからなる可動性アミノ酸配列によって共有結合的に連結された、モノクローナルウサギ抗ヒトTNFα抗体の軽鎖及び重鎖可変領域配列からの相補性決定領域(CDR)及び特定のフレームワーク残基をヒト軽鎖及び重鎖可変領域フレームワークにグラフトすることにより遺伝子操作された。
【0086】
一実施形態において、発現ベクターにおける開始コドンに由来するメチオニンが、それが翻訳後に切断されなかった場合には最終的なタンパク質に存在する。その場合、LME636は配列番号12の配列を有する:
【化4】
【0087】
本開示の方法、キット及び使用に用いられる他の好ましいTNFα抗体は、国際公開第2009/155723号パンフレット及び国際公開第2012/051734号パンフレットに示されるものである。
【0088】
アッセイ技法、診断方法及び伝達可能な形態の情報の作成方法
本開示の方法は、DEDの治療又は改善、並びにTNFα拮抗薬、例えばLME636による治療に対するDED患者の応答可能性の予測に有用である。これらの方法は、特に、患者からの試料中に患者がDED応答マーカーを有するかどうかを決定することを用いる。
【0089】
患者からの生体試料は、任意の適用可能な従来手段によりDED応答マーカーの存在に関してアッセイされてもよく、手段は特定のマーカーがエクソン、イントロン、mRNAの非コード部分又は非コード(non-conding)ゲノム配列のいずれの範囲内にあるかに応じて選択されることになる。
【0090】
数多くの生体試料、例えば、血液、滑液、バフィーコート、血清、血漿、リンパ液、糞便、尿、涙液、唾液、脳脊髄液、頬側スワブ、喀痰、又は組織を使用して、アレル又はタンパク質の存在、遺伝子又はタンパク質の発現レベル、及びタンパク質の活性が同定され得る。本開示の方法においては生体試料内の様々なソースを使用することができ、例えば生体試料から得られたゲノムDNAをアッセイしてDED応答マーカーを検出してもよく、又は生体試料から得られたDED応答マーカーの産物、例えば核酸産物(例えばDNA、プレmRNA、mRNA、マイクロRNA等)及びポリペプチド産物(例えば発現したタンパク質)をアッセイしてもよい。
【0091】
本発明者らは、表1の様々なSNPアレルが特定の患者のTNFα拮抗作用による(例えばLME636を使用した)治療への応答性を予測するのに有用であることを決定した。好ましい実施形態において、対象がDED応答マーカーを有するかどうかを決定するため、DED応答マーカーのゲノム配列が分析される。
【0092】
実施例に記載するとおり、本発明者らの最新の知見は、SNP rs1800693に関連する遺伝子型の存在がDEDに対するTNFα拮抗作用(例えばLME636)への応答の向上を予測するのに有用であり得るという結論につながる。DED応答マーカーの存在は、種々の遺伝子タイピング技法によって検出し得る。典型的には、かかる遺伝子タイピング技法は、目的の多型部位(例えばSNP)を含む領域、又はそれに隣接する領域に相補的な1つ以上のオリゴヌクレオチドを利用する。目的とする特定の多型部位の遺伝子タイピングに使用するオリゴヌクレオチドの配列は、典型的にはコンテクスト配列又は参照配列に基づき設計される。
【0093】
DED応答マーカーの存在の同定には、数多くの方法及び装置が利用可能である。当該技術分野において周知の方法、例えばフェノール/クロロホルム抽出、GentAS Systems(Qiagen、CA)からのPUREGENE DNA(登録商標)精製システムにより、生体試料からSNP検出用のDNA(ゲノムDNA及びcDNA)を調製することができる。DNA配列の検出には、当該領域内にあるセンス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかに位置する1つ又は複数のヌクレオチドを調べることが含まれ得る。患者における多型の存在は、配列特異的プローブ、例えば、Taqmanからの加水分解プローブ、Beacons、Scorpions;又はマーカー若しくは多型を検出するハイブリダイゼーションプローブを使用したPCRにより得られたDNA(ゲノムDNA又はcDNA)から検出されてもよい。多型の検出には、配列特異的プローブは、それが目的のアレルのゲノムDNA、又はある場合には目的のRNAに特異的にハイブリダイズするように設計され得る。多型部位(例えばSNP)のプライマー及びプローブは、www.ncbi.nlm.nih.gov/snpで利用可能なNCBI SNPデータベースに収載されているコンテクスト配列に基づき設計されてもよい。これらのプローブは、直接検出のため標識されてもよく、又はプローブに特異的に結合する二次的な検出可能分子を接触させてもよい。PCR産物もまたDNA結合剤によって検出することができる。次に前記PCR産物は、続いて当該技術分野で利用可能な任意のDNAシーケンシング方法によりシーケンシングすることができる。或いは、アレルの存在は、限定はされないが、サンガー法ベースのシーケンシング、パイロシーケンシング又は次世代シーケンシングなど、任意のシーケンシング方法を用いてシーケンシングすることにより検出し得る(Shendure J.and Ji,H.,Nature Biotechnology(1998),Vol.26,Nr 10,pages 1135-1145)。SNPに最適化されたアレル識別アッセイは、Applied Biosystems(Foster City、California、USA)から購入してもよい。
【0094】
特定の多型(例えばSNP)を調べるため、例えば、ハイブリダイゼーションベースの方法、例えばダイナミックアレル特異的ハイブリダイゼーション(DASH)遺伝子タイピング、分子ビーコンによる多型部位(例えばSNP)検出(Abravaya K.,et al.(2003)Clin Chem Lab Med.41:468-474)、Luminex xMAP技術(登録商標)、Illumina Golden Gate(登録商標)技術及び市販の高密度オリゴヌクレオチドSNPアレイ(例えば、Affymetrix Human SNP5.0 GeneChip(登録商標)は、500,000を超えるヒトSNPを遺伝子タイピングすることのできるゲノムワイドアッセイを実施する)、IlluminaからのBeadChip(登録商標)キット、例えばHuman660W-Quad及びHuman 1.2M-Duo);酵素ベースの方法、例えば制限断片長多型(RFLP)、PCRベースの方法(例えばテトラプライマーARMS-PCR)、インベーダーアッセイ(Olivier M.(2005)Mutat Res.573(1-2):103-10)、様々なプライマー伸長アッセイ(検出フォーマット、例えばMALDI-TOF質量分析法、電気泳動法、ブロッティング法、及びELISA様方法に組み込まれる)、TaqMan(登録商標)アッセイ、及びオリゴヌクレオチドリガーゼアッセイ;及び他の増幅後方法、例えば一本鎖コンホメーション多型分析(Costabile et al.(2006)Hum.Mutat.27(12):1163-73)、温度勾配ゲル電気泳動(temperaure gradient gel electrophoresis)(TGGE)、変性高速液体クロマトグラフィー、高分解能融解分析、DNAミスマッチ結合タンパク質アッセイ(例えばサーマス・アクアチカス(Thermus aquaticus)のMutSタンパク質は異なる単一ヌクレオチドミスマッチに異なる親和性で結合し、キャピラリー電気泳動法に使用すると6組全てのミスマッチセットを区別することができる)、SNPLex(登録商標)(Applied Biosystemsから入手可能な専売のSNP検出システム)、キャピラリー電気泳動法、質量分析法、及び様々なシーケンシング方法、例えばパイロシーケンシング及び次世代シーケンシング等を含め、様々な技法を適用することができる。SNP遺伝子タイピングの市販キットとしては、例えば、Fluidigm Dynamic Array(登録商標)IFC(Fluidigm)、TaqMan(登録商標)SNP遺伝子タイピングアッセイ(Applied Biosystems)、MassARRAY(登録商標)iPLEX Gold(Sequenom)、Type-it Fast(登録商標)SNPプローブPCRキット(Quiagen)等が挙げられる。
【0095】
一部の実施形態において、患者における多型部位(例えばSNP)の存在は、ハイブリダイゼーションアッセイを用いて検出される。ハイブリダイゼーションアッセイでは、遺伝子マーカーの存在は、試料からの核酸が相補核酸分子、例えばオリゴヌクレオチドプローブにハイブリダイズする能力に基づき決定される。種々のハイブリダイゼーションアッセイが利用可能である。一部では、目的の配列に対するプローブのハイブリダイゼーションが、結合したプローブの可視化、例えばノーザン又はサザンアッセイにより直接検出される。これらのアッセイでは、DNA(サザン)又はRNA(ノーザン)が単離される。次にDNA又はRNAが、ゲノムにおいて低頻度で切断し、且つアッセイされるマーカーのいずれの近傍でも切断しない一連の制限酵素で切断される。次にDNA又はRNAが例えばアガロースゲル上で分離され、膜に転写される。1つ又は複数の標識プローブ、例えばラジオヌクレオチド(radionucleotide)又は結合剤(例えばSYBR(登録商標)グリーン)を取り込むことによるものを、低い、中程度の又は高いストリンジェンシー条件下で膜に接触させる。未結合プローブが取り除かれ、標識プローブの可視化により結合の存在が検出される。一部の実施形態では、アレイ、例えばMassARRAY(登録商標)システム(Sequenom、San Diego、California、USA)を使用して対象が遺伝子タイピングされてもよい。
【0096】
従来の遺伝子タイピング方法がまた、遺伝子タイピングでの使用のため修正されてもよい。かかる従来方法としては、例えば、PCR及びその変法などのDNA増幅技法、ダイレクトシーケンシング、Luminex xMAP(登録商標)技術と組み合わせたSSOハイブリダイゼーション、SSPタイピング、及びSBTが挙げられる。
【0097】
配列特異的オリゴヌクレオチド(SSO:Sequence-Specific Oligonucleotide)タイピングは、PCRターゲット増幅、ビーズ上に固定化した配列特異的オリゴヌクレオチドのパネルへのPCR産物のハイブリダイゼーション、発色によるプローブ結合増幅産物の検出と、続くデータ解析を用いる。当業者であれば、記載される配列特異的オリゴヌクレオチド(SSO)ハイブリダイゼーションが、One Lambda,Inc.(Canoga Park、CA)により提供されるもの又はLifecodes HLAタイピングキット(Tepnel Life Sciences Corp.)をLuminex(登録商標)技術(Luminex、Corporation、TX)と組み合わせるなど、様々な市販のキットを使用して実施されてもよいことを理解するであろう。LABType(登録商標)SSOは、配列特異的オリゴヌクレオチド(SSO)プローブ及び色別のミクロスフェアを使用してHLAアレルを同定する逆SSO(rSSO)DNAタイピングソリューションである。標的DNAがポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅され、次にビーズプローブアレイとハイブリダイズする。このアッセイは96ウェルPCRプレートの単一のウェルで行われる;従って、96の試料を一度に処理することができる。
【0098】
配列特異的プライマー(SSP:Sequence Specific Primers)タイピングはPCRベースの技法であり、DNAベースのタイピング用の配列特異的プライマーを使用する。SSP方法は、制御されたPCR条件下では、標的配列と完全に一致する配列を有するプライマーのみが増幅産物をもたらすという原理に基づく。アレル配列特異的プライマー対が、単一のアレル又はアレル集団に特異的な標的配列を選択的に増幅するように設計される。PCR産物はアガロースゲル上で可視化することができる。全ての試料中に存在する非アレル配列と一致する対照プライマー対が、PCR増幅効率を確かめるための内部PCR標準として働く。当業者であれば、記載される配列特異的プライマータイピングによる低い、中程度の及び高い分解能の遺伝子タイピングが、Olerup SSP(商標)キット(Olerup、PA)若しくは(Invitrogen)又はAllset and(商標)Gold DQA1低分解能SSP(Invitrogen)など、様々な市販のキットを使用して実施されてもよいことを理解するであろう。
【0099】
配列ベースタイピング(SBT:Sequence Based Typing)は、PCRターゲット増幅と、続くPCR産物のシーケンシング及びデータ解析に基づく。
【0100】
ある場合には、RNA、例えば成熟mRNA、プレmRNAもまた、特定の多型の存在を決定するのに使用することができる(表1を参照)。所与の遺伝子から転写されたmRNAの配列の分析は、限定はされないが、ノーザンブロット分析、ヌクレアーゼ保護アッセイ(NPA)、インサイチュハイブリダイゼーション、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、RT-PCR ELISA、TaqManベースの定量的RT-PCR(プローブベースの定量的RT-PCR)及びSYBRグリーンベースの定量的RT-PCRを含めた、当該技術分野における任意の公知の方法を用いて実施することができる。一例において、mRNAレベルの検出には、単離したmRNAと、DED応答マーカーによってコードされるmRNAにハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドとを接触させることが含まれる。核酸プローブは、典型的には、例えば完全長cDNA、又は少なくとも7、15、30、50、又は100ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドなど、ストリンジェントな条件下でmRNAに特異的にハイブリダイズするのに十分なその一部分であってもよい。mRNAとプローブとのハイブリダイゼーションは、問題のマーカーが発現していることを示す。あるフォーマットでは、RNAを固体表面に固定化し、例えばアガロースゲルに単離RNAを流してmRNAをゲルからニトロセルロースなどの膜に転写することにより、プローブと接触させる。増幅プライマーとは、遺伝子の5’又は3’領域(それぞれプラス鎖及びマイナス鎖、又はその逆)にアニールして、間に短い領域を含むことができる一対の核酸分子であると定義される。一般に、増幅プライマーは約10~30ヌクレオチド長であり、約50~200ヌクレオチド長の領域に隣接する。適切な条件下及び適切な試薬によれば、かかるプライマーは、そのプライマーに隣接するヌクレオチド配列を含む核酸分子を増幅することが可能である。PCR産物は、限定はされないが、ゲル電気泳動及びDNA特異的染色剤による染色又は標識プローブへのハイブリダイゼーションを含め、任意の好適な方法によって検出することができる。
【0101】
ある場合には、患者における多型の存在は、DED応答マーカーのポリペプチド産物を分析することにより決定し得る(表1を参照のこと)。ポリペプチド産物の検出は、限定はされないが、免疫細胞化学的染色、ELISA、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、分光測定法、HPLC、及び質量分析法を含めた、当該技術分野における任意の公知の方法を用いて実施することができる。
【0102】
試料中のポリペプチド産物を検出する一つの方法は、マーカータンパク質と特異的に相互作用する能力を有する結合タンパク質(例えば抗体)であるプローブを用いるものである。好ましくは、標識抗体、その結合部分、又は他の結合パートナーが使用され得る。抗体は、モノクローナル又はポリクローナル由来であることができ、又は生合成的に作製されてもよい。結合パートナーはまた、天然に存在する分子であっても、又は合成的に作製されてもよい。複合体化したタンパク質の量は、当該技術分野において記載される標準的なタンパク質検出方法を用いて決定される。免疫学的アッセイ設計、理論及びプロトコルの詳細なレビューについては、Practical Immunology,Butt,W.R.,ed.,Marcel Dekker,New York,1984を含め、当該技術分野における数多くのテキストを参照することができる。標識抗体によるタンパク質の検出には、種々のアッセイが利用可能である。直接標識には、抗体に付加された蛍光又は発光タグ、金属、色素、放射性核種(radionucleides)などが含まれる。間接的標識には、アルカリホスファターゼ、水素ペルオキシダーゼなど、当該技術分野において周知の様々な酵素が含まれる。一段階アッセイでは、存在する場合にポリペプチド産物を固定化し、標識抗体と共にインキュベートする。固定化された標的分子に標識抗体が結合する。洗浄して未結合分子を取り除いた後、試料が標識に関してアッセイされる。
【0103】
タンパク質又はポリペプチドに特異的な固定化抗体の使用もまた、本開示によって企図される。抗体は、磁性又はクロマトグラフ用マトリックス粒子、アッセイ場所の表面(マイクロタイターウェルなど)、固体基板材料片(プラスチック、ナイロン、紙など)など種々の固体支持体上に固定化することができる。固体支持体上に抗体又は複数の抗体をアレイ状にコーティングすることにより、アッセイストリップを調製することができる。次にこのストリップを試験試料に浸漬し、次に洗浄及び検出ステップを通じて速やかに処理すると、呈色したスポットなど、計測可能なシグナルが生成され得る。
【0104】
二段階アッセイでは、固定化されたDED応答マーカーのポリペプチド産物が非標識抗体とインキュベートされてもよい。次に、存在する場合には非標識抗体複合体が、その非標識抗体に特異的な二次標識抗体に結合する。試料が洗浄され、標識の存在に関してアッセイされる。抗体の標識に使用されるマーカーの選択は、適用に依存して異なることになる。しかしながら、マーカーの選択は、当業者には容易に決定可能である。抗体は、放射性原子、酵素、発色団又は蛍光部分、又は比色タグで標識されてもよい。タグ付加用標識の選択はまた、所望の検出限界にも依存することになる。酵素アッセイ(ELISA)は、典型的には、酵素タグが付加された複合体と酵素基質との相互作用によって形成された呈色産物の検出を可能にする。放射性原子の一部の例としては、32P、125I、H、及び14Pが挙げられる。酵素の一部の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼが挙げられる。発色団部分の一部の例としては、フルオレセイン及びローダミンが挙げられる。抗体は、当該技術分野において公知の方法によりこれらの標識にコンジュゲートされてもよい。例えば、酵素及び発色団分子は、ジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミドなどのカップリング剤を用いて抗体にコンジュゲートされてもよい。或いは、コンジュゲーションはリガンド-受容体対によって行われてもよい。一部の好適なリガンド-受容体対としては、例えばビオチン-アビジン又は-ストレプトアビジン、及び抗体-抗原が挙げられる。
【0105】
一態様において、本開示は、生体試料中のポリペプチド産物の検出にサンドイッチ技法の使用を企図する。この技法には、目的のタンパク質への結合能を有する抗体が2つ必要である:例えば、1つは固体支持体上に固定化され、及び1つは溶液中に遊離しているが、何らかの容易に検出可能な化学的化合物で標識されている。二次抗体に用いられ得る化学的標識の例としては、限定はされないが、放射性同位体、蛍光化合物、及び酵素又はその他の、反応物質又は酵素基質への曝露時に呈色した若しくは電気化学的に活性な産物を生成する分子が挙げられる。ポリペプチド産物を含有する試料をこのシステムに入れると、ポリペプチド産物は固定化抗体及び標識抗体の両方に結合する。この結果が、支持体表面上の「サンドイッチ」免疫複合体である。未結合の試料成分及び過剰な標識抗体を洗い流し、支持体表面上のタンパク質と複合体化した標識抗体の量を計測することにより、複合体化したタンパク質が検出される。サンドイッチイムノアッセイは高度に特異的で極めて高感度であり、但し適切な検出限界の標識が使用されるものとする。
【0106】
好ましくは、試料中のポリペプチド産物の存在は、放射免疫測定法又は酵素結合免疫測定法、競合的結合酵素結合免疫測定法、ドットブロット、ウエスタンブロット、クロマトグラフィー、好ましくは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、又は当該技術分野において公知の他のアッセイにより検出される。タンパク質又はポリペプチドへの抗体の特異的免疫学的結合は、直接又は間接的に検出することができる。
【0107】
ドットブロッティングは、抗体をプローブとして使用して所望のタンパク質を検出するため当業者によってルーチンで行われている(Promega Protocols and Applications Guide,Second Edition,1991,Page 263,Promega Corporation)。ドットブロット装置を使用して試料が膜に適用される。膜と共に標識プローブがインキュベートされ、タンパク質の存在が検出される。
【0108】
ウエスタンブロット分析は当業者に周知である(Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,1989,Vol.3,Chapter 18,Cold Spring Harbor Laboratory)。ウエスタンブロットでは、試料がSDS-PAGEによって分離される。ゲルが膜に転写される。膜が標識抗体と共にインキュベートされて、所望のタンパク質が検出される。
【0109】
上記に記載されるアッセイは、限定はされないが、イムノブロッティング、免疫拡散法、免疫電気泳動法、又は免疫沈降などのステップを含む。一部の実施形態では、自動分析器を使用してDED応答マーカーの存在が決定される。
【0110】
本明細書には、患者からの生体試料中におけるDED応答マーカーの存在又は非存在を検出することを含む、DEDを有する患者がTNFα拮抗薬による治療に応答するであろう可能性を予測する方法が開示され、ここで:a)DED応答マーカーの存在は、患者がTNFα拮抗薬による治療に応答するであろう可能性の増加を示し;及びb)DED応答マーカーの非存在は、患者がTNFα拮抗薬による治療に応答するであろう可能性の減少を示す。
【0111】
一部の実施形態において、本方法は、患者から生体試料を入手するステップを更に含み、ここで入手するステップはアッセイステップの前に実施される。
【0112】
一部の実施形態において、DED応答マーカーは、生体試料をDED応答マーカーの核酸産物、DED応答マーカーのポリペプチド産物、又はDED応答マーカーの等価な遺伝子マーカーに関してアッセイすることにより検出される。一部の実施形態において、DED応答マーカーは、生体試料をDED応答マーカーのゲノム配列に関してアッセイすることにより検出される。一部の実施形態において、生体試料は、滑液、血液、血清、糞便、血漿、尿、涙液、唾液、脳脊髄液、白血球試料及び組織試料からなる群から選択される。
【0113】
一部の実施形態において、DED応答マーカーの存在は、ノーザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、TaqManベースのアッセイ、ダイレクトシーケンシング、ダイナミックアレル特異的ハイブリダイゼーション、高密度オリゴヌクレオチドSNPアレイ、制限断片長多型(RFLP)アッセイ、プライマー伸長アッセイ、オリゴヌクレオチドリガーゼアッセイ、一本鎖コンホメーション多型分析、温度勾配ゲル電気泳動法(TGGE)、変性高速液体クロマトグラフィー、高分解能融解分析、DNAミスマッチ結合タンパク質アッセイ、SNPLex(登録商標)、キャピラリー電気泳動法、サザンブロット、イムノアッセイ、免疫組織化学、ELISA、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、HPLC、及び質量分析法からなる群から選択される技法によって検出される。
【0114】
本開示の方法及び使用の一部の実施形態において、TNFα拮抗薬はTNFα結合分子又はTNFα受容体結合分子である。一部の実施形態において、TNFα結合分子又はTNFα受容体結合分子はTNFα結合分子である。一部の実施形態において、TNFα結合分子はTNFα抗体又はその抗原結合部分である。
【0115】
本開示の方法及び使用の一部の実施形態において、TNFα抗体は組換えヒト化抗体である。本開示の方法及び使用の一部の実施形態において、組換えヒト化TNFα抗体はLME636である。
【0116】
治療方法及びTNFα拮抗薬の使用
本開示の方法によれば、臨床医はDED患者に個別化療法を提供することが可能であり、即ち、本方法によれば、患者をTNFα拮抗薬(例えばLME636)で選択的に治療すべきかどうか又は患者を市販の治療若しくは局所シクロスポリンで選択的に治療すべきかどうかを決定することが可能である。このように、臨床医は、DEDに罹患している患者集団全体におけるTNFα拮抗作用(antagnoism)の利益を最大化し、且つそのリスクを最小限に抑えることができる。TNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)又はTNFα受容体結合分子(例えばTNFα受容体抗体又はその抗原結合部分)が、特にDED応答マーカーを有する患者において、本明細書に開示されるとおりのDEDの治療、予防、又は軽減(例えば徴候と症状及び構造変化、眼部不快感の改善等)に有用であることは理解されるであろう。
【0117】
TNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)又はTNFα受容体結合分子(例えばTNFα受容体抗体又はその抗原結合部分)は、インビトロ、エキソビボで使用され、又は医薬組成物中に配合されてインビボで個体(例えばヒト患者)に投与されることにより、例えばDED応答マーカーを有する患者において、DEDを治療、軽減、又は予防し得る。医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように製剤化されることになる(例えば、経口組成物は概して不活性希釈剤又は食用担体を含む)。投与経路の他の非限定的な例としては、非経口(例えば静脈内)、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜、及び直腸投与が挙げられる。意図される各経路に適合する医薬組成物は当該技術分野において周知である。
【0118】
TNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)又はTNFα受容体結合分子(例えばTNFα受容体抗体又はその抗原結合部分)は、薬学的に許容可能な担体と組み合わせたとき医薬組成物として使用され得る。かかる組成物は、TNFα拮抗薬に加えて、担体、様々な希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、及び当該技術分野において周知の他の材料を含有し得る。担体の特性は投与経路に依存することになる。本開示の方法に用いられる医薬組成物はまた、特定の標的となる障害の治療用の追加の治療剤も含有し得る。例えば、医薬組成物はまた、他の抗炎症剤も含み得る。かかる追加の因子及び/又は薬剤は、TNFα結合分子との相乗効果を生じさせるため、又はTNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)又はTNFα受容体結合分子(例えばTNFα受容体抗体又はその抗原結合部分)によって引き起こされる副作用を最小限に抑えるために本医薬組成物中に含まれ得る。
【0119】
本開示の方法に用いられる医薬組成物は従来方式で製造されてもよい。一実施形態において、医薬組成物は凍結乾燥形態で提供される。即時投与には、医薬組成物は好適な水性担体、例えば滅菌注射用水又は滅菌緩衝生理食塩水中に溶解される。ボーラス注射よりむしろ注入による投与用に大容積の溶液を作ることが望ましいと考えられる場合、製剤化時点でヒト血清アルブミン又は患者自身のヘパリン処理血液を生理食塩水に配合することが有利であり得る。かかる生理学的に不活性なタンパク質が過剰に存在すると、注入溶液と共に使用される容器及び管類の壁への吸着による抗体の損失が防止される。アルブミンが使用される場合、好適な濃度は生理食塩水の重量基準で0.5~4.5%である。他の製剤には、液体又は凍結乾燥製剤が含まれる。
【0120】
抗体、例えばTNFαに対する抗体は、典型的には、即時非経口投与可能な水性形態で製剤化されるか、又は投与前に好適な希釈剤で再構成する凍結乾燥物として製剤化されるかのいずれかである。本開示の方法及び使用の一部の実施形態において、TNFα拮抗薬、例えばTNFα抗体、例えばLME636は凍結乾燥物として製剤化される。好適な凍結乾燥製剤は、少量の液体容積(例えば2ml以下)で再構成して皮下投与を可能にすることができ、且つ抗体凝集レベルが低い溶液を提供することができる。
【0121】
適切な投薬量は、当然ながら、例えば、利用される詳細なTNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)又はTNFα受容体結合分子(例えばTNFα受容体抗体又はその抗原結合部分)、宿主、投与様式並びに治療下の病態の性質及び重症度に依存して、及び患者が受けた前治療の性質に依存して異なることになる。最終的には、各個別の患者を治療するためのTNFα拮抗薬の量は、担当の医療提供者が判断することになる。一部の実施形態において、担当の医療提供者は低用量のTNFα拮抗薬を投与し、患者の応答を観察してもよい。他の実施形態において、患者に投与されるTNFα拮抗薬の1つ又は複数の初期用量は高く、次に再発の徴候が現れるまで漸減される。より高用量のTNFα拮抗薬が投与されてもよく、ここでその患者についての最適な治療効果が達成されると、投薬量は概してそれ以上増量されない。
【0122】
本開示の治療方法又は使用の一部の実施において、治療有効量のTNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)又はTNFα受容体結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分)が患者、例えば哺乳類(例えばヒト)に投与される。本開示の方法は、DED応答マーカーの存在に依存した患者(即ち、DEDを有する患者)の選択的な治療を提供することが理解されるが、これは、患者が最終的にTNFα拮抗薬で治療される場合に、かかるTNFα拮抗薬療法が必ず単剤療法であることを除外するものではない。実際、患者がTNFα拮抗薬による治療に選択される場合、本開示の方法によりTNFα拮抗薬(例えばLME636)が単独で投与されても、又は患者のDEDの治療用の他の療法薬と併用して投与されても、いずれでもよい。1つ以上の追加の療法薬と共投与されるとき、TNFα拮抗薬は他の療法薬と同時に投与されても、又は逐次的に投与されても、いずれでもよい。逐次的に投与される場合、TNFα拮抗薬と併用する他の療法薬との適切な投与順序、並びに共送達に適切な投薬量は、主治医が判断することになる。
【0123】
TNFα拮抗薬は、好都合には、非経口的に、静脈内に、例えば肘前静脈又は他の末梢静脈内に、筋肉内に、又は皮下に投与することができる。本開示の医薬組成物を使用した静脈内(i.v.)療法の継続期間は、治療下の疾患の重症度並びに各個別の患者の状態及び個人的応答に依存して異なることになる。また、本開示の医薬組成物を使用した皮下(s.c.)療法も企図される。本開示の医薬組成物を使用したi.v.又はs.c.療法の適切な継続期間及び療法の投与タイミングは、医療提供者が判断することになる。
【0124】
特定の実施形態において、TNFα拮抗薬、例えばLME636は、眼窩周囲、結膜、テノン嚢下、前房内、硝子体内、眼内、網膜下、結膜下、球後、又は小管内注射など、眼組織注射により;カテーテル又はその他、多孔質、非多孔質、又はゼラチン質材料を含む網膜ペレット、眼内挿入物、サポジトリー又はインプラントなどの留置装置を使用した眼への直接適用により;局所点眼薬又は軟膏により;又は結膜嚢にある又は強膜に隣接して(経強膜的)若しくは強膜に(強膜内)若しくは眼の範囲内に植え込まれる徐放装置により、眼に直接送達することができる。小管内注射は、シュレム管を排出させる静脈集合管内、又はシュレム管内であってもよい。
【0125】
眼送達には、本発明の抗体を眼科学的に許容可能な保存剤、共溶媒、界面活性剤、粘度促進剤、浸透促進剤、緩衝液、塩化ナトリウム、又は水と共に組み合わせて水性滅菌眼科用懸濁剤又は溶液を形成してもよい。局所眼科用製剤は、例えば複数回投与形態で包装されてもよい。従って使用中の微生物汚染を防ぐための保存剤が必要となり得る。好適な保存剤としては、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、ポリクオタニウム-1、又は当業者に公知の他の薬剤が挙げられる。かかる保存剤は、典型的には0.001~1.0%w/vのレベルで利用される。本発明の単位用量組成物は無菌であり得るが、典型的には防腐処理されていない。従ってかかる組成物は、概して保存剤を含有しない。
【0126】
特定の実施形態において、眼への局所投与が意図される組成物は点眼薬又は眼軟膏として製剤化され、ここで抗体の総量は約0.1~10.0%(w/w)であり得る。好ましくは、TNFα拮抗薬、例えばLME636の量は約5.0~約10.0%(w/w)、最も好ましくは約6.0%(w/w)である。
【0127】
特定の状況における本発明の組成物は、局所投与用溶液として投与されることになる。製剤化の簡便さ、並びに患者が罹患した眼に1~2滴の溶液を滴下することによりかかる組成物を容易に投与可能であることに基づき、水溶液が概して好ましい。しかしながら、本組成物はまた、懸濁液、粘性又は半粘性ゲル、又は他のタイプの固体又は半固体組成物であってもよい。
【0128】
製剤中に存在する抗体の治療有効量は、例えば、所望の用量容積及び1つ又は複数の投与様式を考慮することにより決定される。約1.0mg/ml~約100mg/ml、好ましくは約5.0mg/ml~約80mg/ml及び最も好ましくは約10.0mg/ml~約60mg/mlが、製剤中の例示的抗体濃度である。
【0129】
全身投与の一般的な提案として、投与されるTNFα拮抗薬、例えばLME636の治療有効量は、1回又はそれより多い投与によるかに関わらず、約0.1~約100mg/kg患者体重の範囲であってもよく、使用される抗体の典型的な範囲は、例えば、約0.3~約20mg/kg、より好ましくは約0.3~約15mg/kgが1日に投与されるものである。しかしながら、他の投薬量レジメンが有用であり得る。この療法の進捗は従来技術によって容易にモニタされる。
【0130】
本明細書には、a)患者がDED応答マーカーを有することを基準として治療有効量のTNFα拮抗薬を患者に選択的に投与することのいずれかを含む、DEDを有する患者を選択的に治療する方法が開示され、ここでDED応答マーカーはrs1800693応答アレルである。
【0131】
一部の実施形態において、本方法は、患者から生体試料を入手するステップを更に含み、ここで入手するステップはアッセイステップの前に実施される。
【0132】
本開示の方法及び使用の一部の実施形態において、DED応答マーカーは、生体試料をDED応答マーカーの核酸産物、DED応答マーカーのポリペプチド産物、又はDED応答マーカーの等価な遺伝子マーカーに関してアッセイすることにより検出される。
【0133】
本開示の方法及び使用の一部の実施形態において、DED応答マーカーは、生体試料をDED応答マーカーのゲノム配列に関してアッセイすることにより検出される。
【0134】
本開示の方法及び使用の一部の実施形態において、生体試料は、滑液、血液、血清、糞便、血漿、尿、涙液、唾液、脳脊髄液、白血球試料及び組織試料からなる群から選択される。
【0135】
本開示の方法及び使用の一部の実施形態において、DED応答マーカーは、ノーザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、TaqManベースのアッセイ、ダイレクトシーケンシング、ダイナミックアレル特異的ハイブリダイゼーション、高密度オリゴヌクレオチドSNPアレイ、制限断片長多型(RFLP)アッセイ、プライマー伸長アッセイ、オリゴヌクレオチドリガーゼアッセイ、一本鎖コンホメーション多型分析、温度勾配ゲル電気泳動法(TGGE)、変性高速液体クロマトグラフィー、高分解能融解分析、DNAミスマッチ結合タンパク質アッセイ、SNPLex(登録商標)、キャピラリー電気泳動法、サザンブロット、イムノアッセイ、免疫組織化学、ELISA、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、HPLC、及び質量分析法からなる群から選択される技法によって検出される。
【0136】
キット
本発明はまた、患者からの生体試料(試験試料)中のDED応答マーカーを検出するキットも包含する。かかるキットを使用して、DEDを有する患者がTNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)又はTNFα受容体結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分)による治療に応答する(又はより高い応答性を有する)可能性があるかどうかを予測することができる。例えば、本キットは、生体試料中のDED応答マーカー、それらのアレルの産物及び/又はそれらのアレルの等価な遺伝子マーカーを検出する能力を有するプローブ(例えば、オリゴヌクレオチド(oligonucleotode)、抗体、標識化合物又は他の薬剤)を含むことができる。本キットはまた、患者がTNFα拮抗薬による治療に応答するであろう可能性の予測の提供に関する説明書も含み得る。
【0137】
プローブは、ゲノム配列、核酸産物、又はポリペプチド産物に特異的にハイブリダイズし得る。例示的プローブは、表1の応答アレルに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド又はコンジュゲートオリゴヌクレオチド(例えば、DNA、cDNA、mRNA等からの);プライマー伸長オリゴヌクレオチド、アレル特異的プライマー、アレル特異的プライマーとアレル特異的(specfic)プローブとプライマー伸長プライマーとの組み合わせ等である。任意選択で、本キットは、内部標準アレルを標的とするプローブを含むことができ、これは一般集団が呈する任意のアレルであってよい。内部標準アレルの検出は、キットの性能を保証するように設計される。本開示のキットはまた、例えば、緩衝剤、保存剤、又はタンパク質安定化剤も含むことができる。本キットはまた、検出可能な薬剤の検出に必要な構成要素(例えば酵素又は基質)も含むことができる。本キットはまた、アッセイして、含まれる試験試料と比較することのできる対照試料又は一系列の対照試料も含むことができる。キットの各構成要素は、通常、個別の容器内に封入され、様々な容器の全てが使用説明書と共に単一のパッケージ内にある。
【0138】
かかるキットはまた、TNFα拮抗薬、例えばTNFα結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分、例えばLME636)又はTNFα受容体結合分子(例えばTNFα抗体又はその抗原結合部分)(例えば液体又は凍結乾燥形態)又はTNFα拮抗薬(上記に記載される)を含む医薬組成物も含み得る。このように、かかるキットは、TNFα拮抗薬(例えばLME636)を使用したDEDの選択的な治療に有用である。加えて、かかるキットはTNFα拮抗薬の投与手段(例えば、シリンジ及びバイアル、プレフィルドシリンジ、プレフィルドペン)及び使用説明書を含んでもよい。これらのキットは、例えば同封されたTNFα拮抗薬、例えばLME636と併用して送達されるDED治療用の追加の治療剤(上記に記載される)を含んでもよい。
【0139】
語句「投与手段」は、限定はされないが、プレフィルドシリンジ、バイアル及びシリンジ、注射ペン、自動注入装置、静脈内点滴及びバッグ、ポンプ等を含めた、薬物を患者に全身投与するための任意の利用可能な実施手段を指して使用される。かかるアイテムを用いて、患者が薬物を自己投与してもよく(即ち、薬物を自ら投与してもよく)、又は医師が薬物を投与してもよい。
【0140】
概要
上記の添付の説明に、本開示の1つ以上の実施形態の詳細を示している。本開示の実施又は試験においては本明細書に記載されるものと同様の又は等価な任意の方法及び材料を使用し得るが、ここでは好ましい方法及び材料を記載する。本開示の他の特徴、目的、及び利点は、この説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。本明細書及び添付の特許請求の範囲においては、単数形は、文脈上特に明確に指示されない限り複数の指示対象を含む。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に引用される全ての特許及び刊行物は参照によって援用される。以下の実施例は、本開示の好ましい実施形態を更に詳しく例示するために提供される。これらの例は、決して添付の特許請求の範囲により定義されるとおりの本開示の特許(patient)事項の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【実施例
【0141】
実施例1-CLME636X2202A研究:LME636はドライアイ疾患の徴候及び症状を改善する
CLME636X2202Aは、重症ドライアイ疾患(DED)の患者においてLME636による局所眼治療の有効性及び安全性を判定する概念実証(PoC)研究であった。本PoC研究の主要目的は、治療29日目の全般的眼部不快感スコアによって決定されるとおりの眼症状の低減における局所投与LME636のLME636媒体と比べた有効性を実証することであった。重要な副次的目的は、全般的眼部不快感スコアの改善>20の患者のパーセンテージを判定することであった(レスポンダー解析)。書面によるインフォームドコンセントが得られた患者からDNA試料を収集し、予備的薬理遺伝学的解析を行うことにより、LME636治療への応答に影響を与え得る遺伝因子を同定した。薬理遺伝学的解析については実施例2に記載する。
【0142】
治療段階で、69人の患者はLME636の投与を受け、及び65人はLME636媒体の投与を受けるように無作為化した。LME636及びLME636媒体でそれぞれ67人及び64人の患者がこの研究を完了し、パープロトコル解析の一部とした。人口統計学的特性及びベースライン特性は、以下のパラメータを含め、これらの2群間で十分に均衡がとれていた(LME636対LME636媒体):平均年齢61.7対58.8歳;女性患者61人対54人;ベースライン時の平均全般的眼部不快感77.9対80.3。
【0143】
主要有効性エンドポイントについて、全般的眼部不快感スコアのベースラインからの変化量は(LME636対LME636媒体):29日目に-7.9[1.45SE]対-3.6[1.49SE](主要タイムポイント及びパープロトコル・アナリシス・セット)及び43日目に-10.5[1.74SE]対-5.4[1.77SE](フル・アナリシス・セットによる予備的タイムポイント)であった。29日目におけるベースラインからの変化量の差の90%信頼区間は-7.7~-0.8であった。
【0144】
LME636対LME636媒体について、29日目に20単位以上の全般的眼部不快感のベースラインからの改善を達成した患者数は12人(17.9%)対3人(4.7%)であり、カイ二乗検定及びワルド区間に基づくp値は0.018であった(レスポンダー解析)。
【0145】
結論として、これらの結果は主要解析の予め指定した基準を満たし、レスポンダー解析によって更に裏付けられた。改善は29日目から43日目まで持続した。
【0146】
実施例2:薬理遺伝学的(PG)解析の材料及び方法
実施例2.1:試料及び処理
合計127例の患者試料を収集した。以下の基準を全て満たす患者を本薬理遺伝学的解析に組み入れた:
・書面による薬理遺伝学的研究へのインフォームドコンセントを提出した。
・DNAの抽出及び遺伝子タイピングに成功した。
・臨床試験全体の解析に含まれた。
【0147】
同意を得た患者から血液試料を個別の試験施設で採取し、次にPharmaceutical Product Development(Wilmington、NC 28401)に発送した。Covance(Indianapolis、IN 46214)によって血液から各患者のゲノムDNAが抽出され、及びClinical Reference Laboratory(Lenexa、KS 66215)によりTaqMan技術を用いて遺伝子タイピングデータが生成された。9つのSNPのうち、8つが発色に成功し、1つ(rs115575857)は局所DNA配列の複雑さに起因して発色しなかった。これらの8つのSNPについて、127例のDNA試料のうち126例の遺伝子タイピングに成功した。1例の患者試料はDNAのクオリティに問題があり、遺伝子タイピングに失敗した。クオリティコントロールとして2つのデュプリケート試料を含めた。
【0148】
薬物標的(TNF-α)又はその受容体(TNFR1)にあること、又はシェーグレン症候群に高度に関連する遺伝的変異であることに基づき、PG解析に幾つかの候補遺伝子及び一塩基多型(SNP)を選択した(表1を参照のこと)。
【0149】
【表3】
【0150】
実施例2.2:統計的分析
主要有効性エンドポイント
主要有効性エンドポイントは、治療29日目における全般的眼部不快感スコアのベースラインからの変化量であった。有効性解析にはパー・プロトコル・セットを使用した。
【0151】
LME636で治療した患者における遺伝子型効果の検定には:ベースライン全般的不快感スコア、遺伝子型、治療日数、遺伝子型×治療日数の相互作用、年齢及び人種を項とする混合モデル反復測定解析を実施した。遺伝子型群間における全般的不快感のベースラインからの平均変化量の差の推定値及び関連する90%信頼区間を提示した。
【0152】
治療29日目における遺伝子型と治療との間の相互作用の検定には:ANCOVAモデルを使用し、ベースライン全般的不快感スコア、年齢及び人種を共変量として含めた。遺伝子型群間における全般的不快感のベースラインからの平均変化量の差の推定値及び関連する90%信頼区間を提示した。
【0153】
統計的検定は全て両側であった。多重検定を調整するためボンフェローニ補正を適用した。多重検定調整後にp≦0.1を達成した任意の遺伝的効果について、個々の患者データを表示する散布図又はウォーターフォールプロットが提示されることになる。
【0154】
重要な副次的有効性エンドポイント
重要な副次的有効性エンドポイントは、ベースラインから治療29日目までの全般的眼部不快感スコアの改善>20の患者(レスポンダーとして決定される)のパーセンテージであった。有効性解析にはパー・プロトコル・セットを使用した。
【0155】
フィッシャーの正確確率検定を使用した。主要エンドポイントと関連付けられた遺伝子型のみを解析した。遺伝子型群間で全般的眼部不快感スコアの改善>20の患者のパーセンテージを提示した。
【0156】
実施例3:PG解析結果
実施例3.1:PG及び全試験集団の比較
8つのSNPについて、合計126例の患者試料を遺伝子タイピングすることに成功した。クオリティコントロール用に導入した2つのデュプリケートは8つのSNP遺伝子型の100%の一致を示した。遺伝子型データを有する126人の患者のうち、88人が治療に入った。遺伝子型データを有し、且つ治療に入ったそれらの88人の患者のうち、86人がパープロトコル・アナリシス・セット中にあった。対照的に、全試験はパープロトコル・アナリシス・セットに131人の患者を有した。表3は、それぞれPG集団及び全試験における人口統計学的特徴、ベースライン時の全般的眼部不快感スコア、及び治療による奏効率を要約する。PG集団は、これらの変数、特にベースライン時の全般的眼部不快感スコアによって決定するとき、全試験と同様に見えた。
【0157】
【表4】
【0158】
実施例3.2:主要有効性エンドポイント解析-初期関連性検定
総合的臨床試験と同様に、混合モデル反復測定解析を用いて、遺伝子型と治療29日目における全般的眼部不快感スコアのベースラインからの変化量との間の関連性を検定した。検定した8つのSNPの中で、rs1800693のみがLME636への応答に関してボンフェローニ補正後に有意な効果を示した(p<0.0001)(表4)。SNP rs1800629は、臨床エンドポイントと名目上の有意な関連性を示したが(p=0.0159)、ボンフェローニ補正後にこの有意性は消失した(p=0.1272)。
【0159】
【表5】
【0160】
表5に示されるとおり、症候改善に対するrs1800693の遺伝子型効果はLME636で治療した患者にのみに現れ、媒体で治療した患者にはなかった。CC遺伝子型の患者はCT又はTT遺伝子型の患者よりも改善が大きい傾向があった。
【0161】
【表6】
【0162】
実施例3.3:主要有効性エンドポイント解析-治療と遺伝子型との間の相互作用
次に、本発明者らは、治療と遺伝子型との間に相互作用があるかどうかを共分散分析(ANCOVA)モデルを用いて検定した。初期混合モデル解析と同様に、治療29日目にrs1800693のみが有意な相互作用を示した(p=0.0076)(表6)。相互作用はボンフェローニ補正後も有意なままであった(p=0.0608)。
【0163】
【表7】
【0164】
【表8】
【0165】
相互作用検定は治療29日目についてのみであった。しかしながら、個々の治療日に欠損値があった。治療とrs1800693との間の相互作用の理解向上のため、本発明者らは、23日目~28日目の相互作用について更に検定した。表7に示されるとおり、23~29日目にも相互作用について同様の傾向が観察された。
【0166】
【表9】
【0167】
【表10】
【0168】
実施例3.4:重要な副次的有効性エンドポイント解析
副次的有効性エンドポイント解析は遺伝子型群間の奏効率に焦点を置いた。rs1800693は主要有効性エンドポイントと関連性がある唯一のSNPであるため、rs1800693のみを解析した。フィッシャーの正確確率検定によって示されるとおり、奏効率はCT又はTT遺伝子型の患者と比べてCC遺伝子型の患者ではるかに高かった(表8)。これらの結果は主要有効性エンドポイント解析を裏付けるものである。しかしながら、レスポンダー数が少ないため、慎重に解釈することが望ましい。
【0169】
【表11】
【0170】
【表12】
【0171】
実施例3.5:個々の患者データの可視化
この薬理遺伝学的解析は、12人のCC遺伝子型の患者とした。症候変化を可視化して治療間で比較するため、これらの12人のCC遺伝子型患者の全般的眼部不快感スコアのベースラインからの変化量をベースラインから43日目まで治療日に対してプロットした。図1に示されるとおり、LME636で治療した4人の患者中3人が時間の経過に伴い大きい症候改善を有した。対照的に、媒体で治療した8人の患者の中で、一貫して10単位より高い症候改善を示した患者はいなかった。治療29日目におけるLME636と媒体との間の症候改善の差は、ANCOVA分析により有意であった(p<0.0001)。
【0172】
全ての患者の全般的眼部不快感スコアのベースラインからの変化量をウォーターフォールプロットによって更に図示し、治療及び遺伝子型別の症候変化の可視化を可能にした(図2図5)。興味深いことに、CC遺伝子型の患者では最小限の媒体応答のみが見られた一方、CT及びTT群内では>10の媒体応答が起こった。このデータから、CC遺伝子型の患者は、単に媒体では軽減されない可能性が高いある種のドライアイ疾患を有し得ることが示唆された。
【0173】
結論
この予備的な薬理遺伝学的解析では、候補遺伝子手法を用い、LME636の作用機構と関連性のある遺伝子及びシェーグレン症候群と関連付けられる遺伝子に焦点を置いた。標本サイズが小さいため、解析には8つのSNPのみを含めて、多重検定の調整の負荷を軽減した。TNF-α遺伝子の3つのSNPが、関節リウマチなどの自己免疫疾患の患者における抗TNF剤への応答に関連することが報告された(Julia A,Fernandez-Nebro A,Blanco F,Ortiz A,Canyete JD,et al.(2016).A genome-wide association study identifies a new locus associated with the response to anti-TNF therapy in rheumatoid arthritis.Pharmacogenomics J.16(2):147-50)。主に多発性硬化症(MS)に関連するTNFR1遺伝子の1つのSNPはエクソン6のスキッピングを引き起こし、可溶性TNFR1(sTNFR1)の産生をもたらす(De Jager PL,Jia X,Wang J,de Bakker PI,Ottoboni L,et al.(2009).Meta-analysis of genome scans and replication identify CD6,IRF8 and TNFRSF1A as new multiple sclerosis susceptibility loci.Nat Genet.41(7):776-82;Gregory AP,Dendrou CA,Attfield KE,Haghikia A,Xifara DK,et al.(2012).TNF receptor 1 genetic risk mirrors outcome of anti-TNF therapy in multiple sclerosis.Nature.23;488(7412):508-11)。DED患者においてシェーグレン症候群リスクアレルがLME636への応答に及ぼす潜在的影響を調べるため、シェーグレン症候群に強く関連する4つのSNPをこの解析に含めた(Lessard CJ,Li H,Adrianto I,Ice JA,Rasmussen A,Grundahl KM,et al.(2013).Variants at multiple loci implicated in both innate and adaptive immune responses are associated with Sjoegren’s syndrome.Nat Genet.45(11):1284-92)。
【0174】
sTNFR1は、TNF-α変換酵素によって細胞膜から構成的に放出され、シェーグレン症候群、ぶどう膜炎及び緑内障を含めた様々なヒト疾患の経過中にそのレベルが増加する(Touchard E,Bloquel C,Bigey P,Kowalczuk L,Jonet L,et al.(2009).Local ocular immunomodulation resulting from electrotransfer of plasmid encoding soluble TNF receptors in the ciliary muscle.Gene Ther.16(7):862-73;Sakimoto T,Yamada A,Sawa M.(2009).Release of soluble tumor necrosis factor receptor 1 from corneal epithelium by TNF-alpha-converting enzyme-dependent ectodomain shedding.Invest Ophthalmol Vis Sci.50(10):4618-21;Sakimoto T,Ohnishi T,Ishimori A.(2014).Significance of ectodomain shedding of TNF receptor 1 in ocular surface.Invest Ophthalmol Vis Sci.55(4):2419-23)。対照的に、sTNFR1産生プロセスを損なう突然変異は、自己炎症性障害である周期性症候群を引き起こす(Magnotti F,Vitale A,Rigante D,Lucherini OM,Cimaz R,et al.(2013).The most recent advances in pathophysiology and management of tumour necrosis factor receptor-associated periodic syndrome(TRAPS):personal experience and literature review.Clin Exp Rheumatol.31(3 Suppl 77):141-9)。従って、sTNFR1産生の不均衡がヒト疾患の病因に寄与し得る。一部の機構研究からは、sTNFR1はTNF-α活性の生理学的アテニュエーターとして働き得るか、又はTNF-αの効果を増進させる緩衝システムとして機能し得ることが示唆された(Aderka D,Engelmann H,Maor Y,Brakebusch C,Wallach D.(1992).Stabilization of the bioactivity of tumor necrosis factor by its soluble receptors.J Exp Med.175(2):323-9;Gregory AP,Dendrou CA,Attfield KE,Haghikia A,Xifara DK,et al.(2012).TNF receptor 1 genetic risk mirrors outcome of anti-TNF therapy in multiple sclerosis.Nature.23;488(7412):508-11)。rs1800693はsTNFR1産生の新規機構と考えられる。最近の研究では、rs1800693 CC遺伝子型がTNF-αへのシグナル伝達の増加と相関したこと、及びこのシグナル伝達の変化が細胞内でのsTNFR1の局在変化に起因し得ることが実証された(Housley WJ,Fernandez SD,Vera K,Murikinati SR,Grutzendler J,et al.(2015).Genetic variants associated with autoimmunity drive NFκB signaling and responses to inflammatory stimuli.Sci Transl Med.10;7(291):291ra93)。
【0175】
1000人ヒトゲノムデータベースに報告されるとおり、CCの保因率は白人及びアフリカ人でそれぞれ19.9%及び12.7%である。対照的に(In contract)、CCの保因率は、LME636X2202研究においては、白人及びアフリカ人でそれぞれ11.5%(11/96)及び12.7%(2/19)である。文献にはドライアイ疾患に関するゲノムワイドな遺伝的関連性研究は報告されていない。rs1800693がドライアイ疾患リスクに対して影響を有するかどうかは不明である。
【0176】
本発明者らは、特に、DEDにおけるTNFα拮抗作用、例えばTNFα抗体、例えばLME636への応答の予測となる特定の遺伝的変異を同定した。本明細書に開示される知見は、特定のSNPが患者のDEDを発症する可能性の増加に関連し得るという事実のみに基づいたのでは予測し得なかったであろう。本明細書に開示される知見は、SNPが研究された特定の遺伝子のみに基づいたのでは予測し得なかったであろう。実際、試験した8つのSNPのうち4つはTNFα経路に関連することが知られ、4つはシェーグレン症候群に関連することが知られていたが、TNFR1遺伝子に位置するrs1800693のみがLME636治療への応答に対して有意な効果を示した。CC遺伝子型の患者はCT又はTT遺伝子型の患者と比べて症状に関してはるかに大きい改善を有する傾向があった。そのため、患者が薬物にどの程度応答するかは、当該の患者が特定の疾患状態に関連するアレルを保因するかどうか、又は患者が特定の遺伝子にSNPを保因するかどうかのみに基づいて予測することはできない。
【0177】
本発明者らは、本明細書に開示される予測方法及び個別化療法が、LME636などのTNFα拮抗薬による治療前に応答する可能性がある患者を同定することにより、DEDを有する患者においてTNFα拮抗作用の利益を最大化し、且つそのリスクを最小限に抑えるのに有用であると結論付ける。
また、本発明は以下を提供する。
[1]
ドライアイ疾患(DED)を有する患者を選択的に治療する方法であって、前記患者がDED応答マーカーを有することに基づき治療有効量のTNFα拮抗薬を前記患者に選択的に投与することを含み、前記DED応答マーカーがrs1800693応答アレルである、方法。
[2]
ドライアイ疾患(DED)を有する患者をTNFα拮抗薬で選択的に治療する方法であって、
a)前記患者がDED応答マーカーを有することに基づき前記TNFα拮抗薬による治療に前記患者を選択すること;及び
b)その後、治療有効量の前記TNFα拮抗薬を前記患者に投与すること
を含み;
前記DED応答マーカーがrs1800693応答アレルである、方法。
[3]
ドライアイ疾患(DED)を有する患者をTNFα拮抗薬で選択的に治療する方法であって、
a)前記患者からの生体試料をDED応答マーカーに関してアッセイすること;及び
b)その後、前記患者からの前記生体試料が前記DED応答マーカーを有することに基づき治療有効量のTNFα拮抗薬を前記患者に選択的に投与すること
を含み;
前記DED応答マーカーがrs1800693応答アレルである、方法。
[4]
ドライアイ疾患(DED)を有する患者をTNFα拮抗薬で選択的に治療する方法であって、
a)前記患者からの生体試料をDED応答マーカーに関してアッセイすること;
b)その後、前記患者からの前記生体試料が前記DED応答マーカーを有することに基づき前記TNFα拮抗薬による治療に前記患者を選択すること;及び
c)その後、治療有効量の前記TNFα拮抗薬を前記患者に投与すること
を含み;
前記DED応答マーカーがrs1800693応答アレルである、方法。
[5]
前記アッセイするステップが、前記生体試料を前記DED応答マーカーの核酸産物、前記DED応答マーカーのポリペプチド産物、又は前記DED応答マーカーの等価な遺伝子マーカーに関してアッセイすることを含む、[3]又は[4]に記載の方法。
[6]
前記アッセイするステップが、前記生体試料を前記DED応答マーカーのゲノム配列に関してアッセイすることを含む、[5]に記載の方法。
[7]
前記生体試料が、滑液、血液、血清、糞便、血漿、尿、涙液、唾液、脳脊髄液、白血球試料及び組織試料からなる群から選択される、[3]~[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]
前記アッセイするステップが、ノーザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、TaqManベースのアッセイ、ダイレクトシーケンシング、ダイナミックアレル特異的ハイブリダイゼーション、高密度オリゴヌクレオチドSNPアレイ、制限断片長多型(RFLP)アッセイ、プライマー伸長アッセイ、オリゴヌクレオチドリガーゼアッセイ、一本鎖コンホメーション多型分析、温度勾配ゲル電気泳動法(TGGE)、変性高速液体クロマトグラフィー、高分解能融解分析、DNAミスマッチ結合タンパク質アッセイ、SNPLex(登録商標)、キャピラリー電気泳動法、サザンブロット、イムノアッセイ、免疫組織化学、ELISA、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、HPLC、及び質量分析法からなる群から選択される技法を含む、[3]~[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9]
ドライアイ疾患(DED)を有する患者の治療における使用のためのTNFα拮抗薬において、前記患者がDED応答マーカーを有することに基づき治療有効量の前記TNFα拮抗薬が前記患者に投与されることになり、前記DED応答マーカーがrs1800693応答アレルであることを特徴とする、TNFα拮抗薬。
[10]
ドライアイ疾患(DED)を有する患者の治療における使用のためのTNFα拮抗薬において、
a)前記患者がDED応答マーカーを有することに基づき前記患者が前記TNFα拮抗薬による治療に選択されることになり;及び
b)その後、治療有効量の前記TNFα拮抗薬が前記患者に投与されることになり、
前記DED応答マーカーがrs1800693応答アレルであることを特徴とする、TNFα拮抗薬。
[11]
ドライアイ疾患(DED)を有する患者の治療における使用のためのTNFα拮抗薬において、
a)前記患者からの生体試料がDED応答マーカーに関してアッセイされることになり;及び
b)前記患者からの前記生体試料が前記DED応答マーカーを有することに基づき治療有効量の前記TNFα拮抗薬が前記患者に選択的に投与されることになり、
前記DED応答マーカーがrs1800693応答アレルであることを特徴とする、TNFα拮抗薬。
[12]
ドライアイ疾患(DED)を有する患者の治療における使用のためのTNFα拮抗薬において、
a)前記患者からの生体試料がDED応答マーカーに関してアッセイされることになり;
b)前記患者からの前記生体試料が前記DED応答マーカーを有することに基づき前記TNFα拮抗薬による治療に前記患者が選択され;及び
c)治療有効量の前記TNFα拮抗薬が前記患者に選択的に投与されることになり、
前記DED応答マーカーがrs1800693応答アレルであることを特徴とする、TNFα拮抗薬。
[13]
ドライアイ疾患(DED)を有する患者がTNFα拮抗薬による治療に応答するであろう可能性を予測する方法であって、前記患者からの生体試料をDED応答マーカーの存在又は非存在に関してアッセイすることを含み、前記DED応答マーカーの存在は、前記患者が前記TNFα拮抗薬による治療に応答するであろう可能性の増加を示し、及び前記DED応答マーカーがrs1800693応答アレルである、方法。
[14]
前記患者から前記生体試料を入手するステップを更に含み、前記入手するステップが検出するステップより前に実施される、[13]に記載の方法。
[15]
前記アッセイするステップが、前記生体試料を前記DED応答マーカーの核酸産物、前記DED応答マーカーのポリペプチド産物、又は前記DED応答マーカーの等価な遺伝子マーカーに関してアッセイすることを含む、[11]~[13]のいずれか一項に記載の方法。
[16]
前記アッセイするステップが、前記生体試料を前記DED応答マーカーのゲノム配列に関してアッセイすることを含む、[15]に記載の方法。
[17]
前記生体試料が、滑液、血液、血清、糞便、血漿、尿、涙液、唾液、脳脊髄液、白血球試料及び組織試料からなる群から選択される、[11]~[16]のいずれか一項に記載の方法。
[18]
前記アッセイするステップが、ノーザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、TaqManベースのアッセイ、ダイレクトシーケンシング、ダイナミックアレル特異的ハイブリダイゼーション、高密度オリゴヌクレオチドSNPアレイ、制限断片長多型(RFLP)アッセイ、プライマー伸長アッセイ、オリゴヌクレオチドリガーゼアッセイ、一本鎖コンホメーション多型分析、温度勾配ゲル電気泳動法(TGGE)、変性高速液体クロマトグラフィー、高分解能融解分析、DNAミスマッチ結合タンパク質アッセイ、SNPLex(登録商標)、キャピラリー電気泳動法、サザンブロット、イムノアッセイ、免疫組織化学、ELISA、フローサイトメトリー、ウエスタンブロット、HPLC、及び質量分析法からなる群から選択される技法を含む、[11]~[17]のいずれか一項に記載の方法。
[19]
ドライアイ疾患(DED)を有する患者のTNFα拮抗薬による治療への応答性を予測するための伝達可能な形態の情報を作成する方法であって、
a)前記患者からの生体試料中のDED応答マーカーの存在に基づき前記患者が前記TNFα拮抗薬による治療に応答する可能性の増加を決定することであって、前記DED応答マーカーがrs1800693応答アレルであること;及び
b)前記決定するステップの結果を伝達における使用のための有形媒体又は無形媒体の形態に記録すること
を含む方法。
[20]
前記DEDが中等度から重度である、[1]~[19]のいずれか一項に記載の方法又は使用。
[21]
前記DED応答マーカーがrs1800693 C/Cアレルである、[1]~[20]のいずれか一項に記載の方法又は使用。
[22]
前記TNFα拮抗薬がTNFα結合分子又はTNFα受容体結合分子である、[1]~[21]のいずれか一項に記載の方法又は使用。
[23]
前記TNFα拮抗薬がTNFα結合分子である、[22]に記載の方法又は使用。
[24]
前記TNFα結合分子がTNFα抗体又はその抗原結合部分である、[23]に記載の方法又は使用。
[25]
a)配列番号8として示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン(V );
b)配列番号7として示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン(V );
c)配列番号8として示されるアミノ酸配列を含むV ドメイン及び配列番号7として示されるアミノ酸配列を含むV ドメイン;
d)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3として示される超可変領域を含むV ドメイン;
e)配列番号4、配列番号5及び配列番号6として示される超可変領域を含むV ドメイン;
f)配列番号1、配列番号2、及び配列番号3として示される超可変領域を含むV ドメイン及び配列番号4、配列番号5及び配列番号6として示される超可変領域を含むV ドメイン;及び
g)配列番号9の配列
を含むTNFα抗体である、[24]に記載の方法又は使用。
[26]
前記TNFα抗体が組換え抗体である、[25]に記載の方法又は使用。
[27]
前記TNFα抗体がLME636である、[26]に記載の方法又は使用。
【0178】
配列表
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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