(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】β-ヒドロキシ-β-メチルブチレート(HMB)およびプロバイオティックを使用する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A23L 33/12 20160101AFI20241107BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20241107BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20241107BHJP
A61K 31/22 20060101ALI20241107BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20241107BHJP
A61K 35/742 20150101ALI20241107BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241107BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
A23L33/12
A23L33/135
A61K31/19
A61K31/22
A61K31/365
A61K35/742
A61P21/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2019521016
(86)(22)【出願日】2017-10-20
(86)【国際出願番号】 US2017057549
(87)【国際公開番号】W WO2018075867
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-01
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-11
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512157966
【氏名又は名称】メタボリック・テクノロジーズ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ラスメイチャー,ジョン
【合議体】
【審判長】植前 充司
【審判官】天野 宏樹
【審判官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-520050(JP,A)
【文献】特開2010-132585(JP,A)
【文献】パーフェクト・スムージー・プロテイン(登録商標)ストロベリー&キウイ風味,株式会社ボディフィット,2015年3月4日更新,検索日2021年7月5日,URL:<https://www.bodyfit-mpn.com/shopdetail/000000000011/>
【文献】Jay R.Hoffman,et al.,“β-Hydroxy-β-methylbutyrate attenuates cytokine response during sustained military training”,NUTRITION RESEARCH,ELSEVIER Inc.,2016年6月1日,vol.36,No.6,p.553-563
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23, A61
CAplus/REGISTRY/FSTA/EMBASE/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5g~30gのβ-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)と、吸収増進剤として少なくとも1種のプロバイオティックとを含む、必要とする動物におけるHMBの
吸収を改善するための方法に用いる組成物であって、
当該組成物は動物に投与され、
吸収増進剤とHMBの投与は、HMBを単独で投与した場合に比べてHMBの
吸収を改善する、
プロバイオティックが、バチルス・コアグランスであり、
改善されたHMBの
吸収が、
大腿直筋の筋肉の完全性の改善
をもたらす、
前記組成物。
【請求項2】
前記HMBが、その遊離酸の形態、その塩、そのエステルおよびそのラクトンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記HMBが、カルシウム塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記HMBが、遊離酸の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
0.5g~30gのβ-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)と、吸収増進剤として少なくとも1種のプロバイオティックとを含む、必要とする動物におけるHMBの
血中濃度を増加させるための方法に用いる組成物であって、
当該組成物は動物に投与され、
吸収増進剤とHMBの投与は、HMBを単独で投与した場合に比べてHMBの
血中濃度を増加させる、
プロバイオティックが、バチルス・コアグランスであり、
増加したHMBの
血中濃度が、
大腿直筋の筋肉の完全性の改善
をもたらす、
前記組成物。
【請求項6】
前記HMBが、その遊離酸の形態、その塩、そのエステルおよびそのラクトンからなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記HMBが、カルシウム塩である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記HMBが、前記遊離酸の形態である、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)と、吸収増進剤として少なくとも1種のプロバイオティックとを含む、HMBの
吸収を改善するための方法に用いる組成物であって、
当該組成物は有効量で投与され、
吸収増進剤とHMBの投与は、HMBを単独で投与した場合に比べてHMBの
吸収を改善する、
プロバイオティックが、バチルス・コアグランスであり、
改善されたHMBの
吸収が、
大腿直筋の筋肉の完全性
の改善をもたらす、
前記組成物。
【請求項10】
前記HMBが、その遊離酸の形態、その塩、そのエステルおよびそのラクトンからなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記HMBが、カルシウム塩である、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記HMBが、遊離酸の形態である、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)と、吸収増進剤として少なくとも1種のプロバイオティックとを含む、HMBの血中濃度を増加させるための方法に用いる組成物であって、
当該組成物は有効量で投与され、
吸収増進剤とHMBの投与は、HMBを単独で投与した場合に比べてHMBの血中濃度を増加させる、
プロバイオティックが、バチルス・コアグランスであり、
増加されたHMBの血中濃度が、大腿直筋の筋肉の完全性の改善をもたらす、
前記組成物。
【請求項14】
前記HMBが、その遊離酸の形態、その塩、そのエステルおよびそのラクトンからなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
発明の背景
本出願は、2016年10月21日付けで出願された米国仮特許出願第62/411,200号の優先権を主張し、この仮出願は参照により本明細書に組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、β-ヒドロキシ-β-メチルブチレート(HMB)およびプロバイオティックを含む組成物、ならびに炎症性サイトカインマーカーを減弱するおよび/または筋肉の完全性を維持するための該組成物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
HMB
アルファ-ケトイソカプロエート(KIC)は、ロイシンの第1の主要で活性な代謝産物である。KIC代謝の少ない方の生成物は、β-ヒドロキシ-β-メチルブチレート(HMB)である。HMBは、様々な用途に関して有用であることが見出されている。具体的には、米国特許第5,360,613号(Nissen)において、HMBは、総コレステロールおよび低密度リポタンパク質コレステロールの血中レベルを低下させることに関して有用であるとして記載されている。米国特許第5,348,979号(Nissenら)において、HMBは、ヒトにおける窒素保持を促進することに関して有用であるとして記載されている。米国特許第5,028,440号(Nissen)は、動物における除脂肪組織の発達を増加させるためのHMBの実用性を論じている。また米国特許第4,992,470号(Nissen)において、HMBは、哺乳動物の免疫応答の強化においても有効であると記載されている。米国特許第6,031,000号(Nissenら)は、疾患関連の衰弱を処置するためのHMBおよび少なくとも1種のアミノ酸の使用を記載している。
【0004】
タンパク質分解を抑制するためのHMBの使用は、ロイシンがタンパク質を節約する特徴を有するという観察に端を発する。必須アミノ酸であるロイシンは、タンパク質合成に使用されるか、またはα-ケト酸(α-ケトイソカプロエート、KIC)にアミノ基転移されるかのいずれかであり得る。1つの経路では、KICをHMBに酸化することができ、この酸化は、ロイシン酸化のおよそ5%を占める。HMBは、筋肉の量と強度の強化においてロイシンより優れている。HMBの最適な作用は、HMBのカルシウム塩として与えられる場合、3.0グラム/日、または0.038g/kg体重/日で達成することができるが、ロイシンの最適な作用は30.0グラム/日より多くを必要とする。
【0005】
HMBは、一旦生産または摂取されたら、2つの運命をたどると考えられる。第1の運命は、単純な尿への排出である。HMBが供給された後、尿中濃度が増加し、その結果として尿へのおよそ20~50%のHMB損失が生じる。別の運命は、HMBのHMB-CoAへの活性化に関する。一旦HMB-CoAに変換されたら、さらなる代謝により、HMB-CoAが脱水されてMC-CoAになるか、またはHMB-CoAがHMG-CoAに直接変換されるかのいずれかが起こる可能性があり、それにより細胞内コレステロール合成の基質が生じる。数々の研究から、HMBは、コレステロール合成経路に取り込まれ、傷害を負った細胞膜の再生に使用される新しい細胞膜のための源になり得ることが示されている。ヒトでの研究によれば、激しい運動後の筋肉の傷害が、上昇した血漿CPK(クレアチンホスホキナーゼ)で測定した場合、48時間以内の最初のHMB補給により低減されることが示されている。HMBの保護的作用は、毎日の使用を続ける場合、3週間まで続く。多数の研究から、HMBの有効量は、CaHMB(カルシウムHMB)として3.0グラム/日(約38mg/kg体重/日)であることが示されている。HMBは、安全性に関して試験されており、健康な若いまたは年配の成人において副作用はないことが示されている。またHMBとL-アルギニンおよびL-グルタミンとの組合せは、AIDSおよびがん患者に補給した場合、安全であることも示されている。
【0006】
近年、HMBの新しい送達形態であるHMB遊離酸が開発された。この新しい送達形態は、CaHMBより迅速に吸収され、CaHMBより大きい組織クリアランスを有することが示されている。新しい送達形態は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許公報第20120053240号に記載されている。
【0007】
HMBは、高い強度の運動からの回復を強化し、それによる筋肉の傷害を減弱することが実証されている。HMBは、TNF-アルファとのタンパク質合成の低下を減弱させ、TNFに関連するタンパク質分解を減少させる。
【0008】
例えば長期の戦闘作戦の間に兵士が遭遇するものなどの、回復が最小限の激しい身体活動を調査する研究によれば、HMB補給の使用は、この身体的ストレスに関連する有害な作用を和らげることができる。長期の軍事作戦中の兵士において、体重、体の強度および体力の著しい減少が報告されている。これらのストレスは、炎症性サイトカインマーカーの著しい上昇にも関連する。近年の現地調査から、模擬戦闘を含む激しい訓練中の3週間にわたり、兵士にHMBを補給したところ、炎症性応答は減弱され、それに伴って、拡散テンソル画像化により決定したところ、筋肉の完全性を維持したことが実証された。これらの結果は、短い(例えば4日)および長い(例えば12週)持続時間のHMB補給は、筋肉に傷害を与えるプロトコールに対するサイトカイン応答を減弱できることを報告する他の調査と一致した。
【0009】
プロバイオティック
食事サプリメントとしてのプロバイオティックの使用は、過去数年にわたり、様々な疾患の予防および処置のために非常に人気が高まりつつある。プロバイオティックとは、炎症を減少させながら消化器系の健康および免疫機能を改善することに関して有益であることが示唆されている生細菌のことである。バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)などのプロバイオティックは、消化管中での食物の酵素消化を強化することができ、その結果として、より多くの栄養素が吸収されるようになると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第5,360,613号
【文献】米国特許第5,348,979号
【文献】米国特許第5,028,440号
【文献】米国特許第4,992,470号
【文献】米国特許第6,031,000号
【文献】米国特許公報第20120053240号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
驚くべきことに、かつ意外なことに、HMBとプロバイオティックとの組合せは、炎症性サイトカインマーカーを減弱し、筋肉の完全性を維持することが発見された。激しい訓練に対するサイトカイン応答の低減は、高い強度の訓練からのより好都合な回復を示すのに使用されることが多い。HMBとプロバイオティックとの組合せは、HMBの吸収を強化し、循環中のHMBがHMB単独の投与と比較して増加することから、このような組合せは相乗的である。このHMBとプロバイオティックとの相乗作用は、単独で投与した場合のHMBの作用と比較して改善された炎症性サイトカインマーカーの減弱および筋肉の完全性によって実証される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の1つの目的は、筋肉の完全性を維持するのに使用するための組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、炎症性サイトカインマーカーの減弱において使用するための組成物を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、筋肉の完全性を維持するのに使用するための組成物を投与する方法を提供することである。
本発明の追加の目的は、炎症性サイトカインマーカーの減弱で使用するための組成物を投与する方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、HMBを含有する組成物にプロバイオティックを添加することによってHMBの吸収を改善する方法を提供することである。
本発明の追加の目的は、HMBを含有する組成物にプロバイオティックを添加することによって、HMBが血流中に存在する時間を増加させる方法を提供することである。
【0015】
本発明のこれらの目的および他の目的は、以下の明細書、図面、および特許請求の範囲を参照すれば当業者には明らかになると予想される。
本発明は、これまでに遭遇した困難を克服することを目的とする。その目的のために、HMBとプロバイオティックとを含む組成物が提供される。本組成物は、それらを必要とする対象に投与される。全ての方法は、HMBおよびプロバイオティックを動物に投与することを含む。本発明に包含される対象としては、ヒト、およびヒト以外の哺乳動物が挙げられる。本組成物は、それを必要とする対象によって消費される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、40日の補給後の、激しい軍事訓練に対する炎症性サイトカイン応答の変化を示す。
【
図2】
図2は、40日の補給後のDTI測定値の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
驚くべきことに、かつ意外なことに、プロバイオティックおよびHMBは、相乗的な関係を有することが発見された。HMBとプロバイオティックとを含有する組成物の使用は、炎症性サイトカインマーカーの減弱および筋肉の完全性の維持をもたらし、これらの作用は、HMB単独の投与より多くの量で見られる。HMBとプロバイオティックとの組合せは、HMBの吸収を強化し、循環中のHMBがHMB単独の投与と比較して増加することから、このような組合せは相乗的である。
【0018】
HMB
β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸、またはβ-ヒドロキシ-イソ吉草酸は、その遊離酸の形態で、(CH3)2(OH)CCH2COOHとして表すことができる。用語「HMB」は、その遊離酸および塩の形態の両方での前述の化学式を有する化合物、ならびにそれらの誘導体を指す。本発明に関してHMBのあらゆる形態を使用できるが、好ましくは、HMBは、遊離酸、塩、エステル、およびラクトンを含む群から選択される。HMBエステルとしては、メチルおよびエチルエステルが挙げられる。HMBラクトンとしては、イソバレリルラクトン(isovalaryl lactone)が挙げられる。HMB塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、クロム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルカリ金属塩、および土類金属塩が挙げられる。
【0019】
HMBおよびその誘導体を生産するための方法は、当業界において周知である。例えば、HMBは、ジアセトンアルコールの酸化によって合成することができる。1つの好適な手順は、Coffmanら、J. Am. Chem. Soc. 80:2882~2887(1958)によって記載されている。そこに記載されるように、HMBは、ジアセトンアルコールのアルカリ性次亜塩素酸ナトリウムの酸化によって合成される。生成物は遊離酸の形態で回収され、これは、塩に変換することができる。例えば、HMBは、Coffmanら(1958)の手順に類似した手順によって、そのカルシウム塩として調製することができ、その手順において、HMBの遊離酸は、水酸化カルシウムで中和され、エタノール水溶液からの結晶化により回収される。HMBのカルシウム塩は、メタボリックテクノロジー(Metabolic Technologies、アイオワ州エームズ)から市販されている。
【0020】
カルシウムβ-ヒドロキシ-β-メチルブチレート(HMB)の補給
20年以上前、HMBのカルシウム塩は、ヒトのための栄養サプリメントとして開発された。研究から、体重1kg当たり38mgのCaHMBが、平均的な人の有効な投薬量であると考えられることが示された。
【0021】
HMBがタンパク質の破壊を減少させタンパク質合成を増加させる分子メカニズムが報告されている。Eleyらが行ったインビトロでの研究では、HMBがmTORリン酸化を介してタンパク質合成を刺激することが示された。他の研究から、タンパク質分解誘導因子(proteolysis inducing factor:PIF)、リポ多糖(LPS)、およびアンギオテンシンIIによって筋肉のタンパク質異化が刺激されるとき、HMBが、ユビキチン-プロテオソームのタンパク質分解経路誘導の減弱を介してタンパク質分解を減少させることが示された。さらに他の研究から、HMBが、カスパーゼ-3およびカスパーゼ-8プロテアーゼの活性化も減弱することが実証された。
【0022】
HMBの遊離酸の形態
ほとんどの場合、臨床研究で利用され、筋力増強促進物質として販売されるHMBは、カルシウム塩の形態であった。近年の進歩により、HMBを、栄養サプリメントとして使用するために遊離酸の形態で製造することが可能になっている。近年、HMBの新しい遊離酸の形態が開発され、これは、CaHMBより迅速に吸収され、その結果として、より迅速でより高いピークの血清HMBレベルおよび改善された組織への血清クリアランスがもたらされることが示された。
【0023】
それゆえにHMBの遊離酸は、特に激しい運動の前に直接投与される場合、カルシウム塩の形態より有効なHMB投与方法であり得る。しかしながら当業者は、この本発明は、あらゆる形態でHMBを包含することを認識しているものと予想される。
【0024】
あらゆる形態のHMBが、約0.5グラムのHMBから約30グラムのHMBの典型的な投薬量範囲がもたらされるような様式で、送達および/または投与形態に取り込ませることができる。
【0025】
HMBのあらゆる好適な用量を、本発明に関して使用することができる。適した用量を計算する方法は当業界において周知である。HMBの投薬量は、対応するCa-HMBのモル量を単位として表すことができる。HMBを経口的または静脈内に投与できる投薬量範囲は、24時間につき体重1キログラム当たり0.01~0.2グラムのHMB(Ca-HMB)の範囲内である。成人の場合、約100~200ポンド(約45~91kg)の体重と仮定すると、HMB(Ca-HMBベース)の経口または静脈内の投薬量は、0.5~30グラム/対象/24時間の範囲であってもよい。
【0026】
プロバイオティック
プロバイオティック、例えばバチルス・コアグランス(BC30)は、消化器系の健康および免疫機能を改善すること、ならびに炎症を減少させることなどの多くの健康上の利益を有する。加えて、以前の研究から、BC30はタンパク質吸収を強化できることが示唆されている。あらゆるプロバイオティックが、本明細書に記載される組成物で使用するのに好適である。バチルス・コアグランスの適切な量は、当業者によって理解されていると予想される。本発明の典型的な組成物は、1グラムの投薬製剤中に、2×105~1010コロニー形成単位の生存可能な細菌または細菌胞子(バチルス・コアグランスの場合)を含有する。他の実施態様において、細菌の量は、約1×104~約1×1012個の生存可能な細菌の濃度でプロバイオティックを包含する。バチルス・コアグランス細菌は、胞子、栄養細胞、またはそれらの組合せの形態である。実験の実施例ではバチルス・コアグランスを使用したが、本発明は、この特定のバチルス種に限定されない。あらゆる種のプロバイオティック細菌を本発明の組成物および方法で使用することができる。
【0027】
本組成物が食用の形態で経口投与される場合、本組成物は、好ましくは、食事サプリメント、食料品または医薬品の媒体の形態であり、より好ましくは食事サプリメントまたは食料品の形態である。本組成物を含むあらゆる好適な食事サプリメントまたは食料品が、本発明に関して利用することができる。当業者であれば、本組成物は、形態(例えば食事サプリメント、食料品または医薬品の媒体)に関係なく、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂肪、糖、無機物質および/または微量元素を包含していてもよいことを理解しているものとする。
【0028】
本組成物を食事サプリメントまたは食料品として調製するために、本組成物は、一般的に、本組成物が食事サプリメントまたは食料品中に実質的に均一に分散するような方法で合わせたりまたは混合したりすると予想される。代替として、本組成物は、液体中に、例えば水中に溶解させることができる。
【0029】
食事サプリメントの組成物は、粉末、ゲル、液体であってもよいし、または平板状であってもよいし、もしくはカプセル化されていてもよい。
本組成物を含むあらゆる好適な医薬品媒体を本発明に関して利用できるが、好ましくは、本組成物は、好適な医薬担体、例えばデキストロースまたはスクロースと組み合わされる。
【0030】
さらに、医薬品媒体の組成物は、あらゆる好適な方式で静脈内投与することができる。静脈内注入を介した投与の場合、本組成物は、好ましくは水溶性の非毒性の形態である。静脈内投与は、静脈内(IV)療法を受けている入院患者に特に好適である。例えば、本組成物は、患者に投与されるIV溶液(例えば、生理食塩水またはグルコース溶液)中に溶解させることができる。また本組成物は、栄養IV溶液に添加することもでき、このような栄養IV溶液は、アミノ酸、グルコース、ペプチド、タンパク質および/または脂質を包含していてもよい。静脈内投与される本組成物の量は、経口投与で使用されるレベルに類似していてもよい。静脈内注入は、経口投与より高度に制御され、正確であり得る。
【0031】
本組成物が投与される頻度を計算する方法は当業界において周知であり、本発明に関してあらゆる好適な投与頻度(例えば、1回の6g用量/日または2回の3g用量/日)を、あらゆる好適な期間にわたり使用することができる(例えば、単回用量を、5分の期間または1時間の期間にわたり投与してもよいし、または代替として、複数回用量を長期にわたり投与してもよい)。本組成物は、長期にわたり、例えば数週間、数ヶ月または数年にわたり投与することができる。
【0032】
本発明に関して、HMBおよびプロバイオティックのあらゆる好適な用量を使用することができる。適した用量を計算する方法は当業界において周知である。
特許請求された方法を実行するために、HMBとプロバイオティックとは、同じ組成物中で投与されないことが当業者には理解されるものと予想される。別の言い方をすれば、特許請求された方法を行うために、プロバイオティックとHMBとの別々のカプセル、丸剤、混合物などが対象に投与されてもよい。
【0033】
投与すること、または投与という用語は、哺乳動物に組成物を提供すること、組成物を消費すること、およびそれらの組合せを包含する。
【実施例】
【0034】
以下の実施例で、本発明をさらに詳細に例示する。本発明の組成物は、一般的に本明細書の実施例で記載および例示されているように、様々な製剤および剤形で合成できることが容易に理解されると予想される。したがって、以下に記載される本発明の方法、製剤および組成物の目下好ましい実施態様のより詳細な説明は、特許請求された本発明の範囲を限定することを意図しているのではなく、単に本発明の目下好ましい実施態様の代表を示したに過ぎない。
【0035】
方法
参加者
イスラエル国防軍(IDF)の精鋭戦闘部隊からの26人の男性兵士が、この二重盲検並列設計研究への参加を志願した。全ての手順、リスクおよび利益を説明した後、各参加者は、研究に参加するための自身のインフォームドコンセントを提供した。IDF医療隊(IDF Medical Corp)の、および医療倫理委員会によるヘルシンキ委員会、ならびにソロカメディカルセンター(Soroka Medical Center)のヘルシンキ委員会が、この調査研究を承認した。参加者は、いかなる追加の食事補給の使用も許可されず、さらに、いかなるアンドロゲンまたは他の運動能力向上薬も消費しなかった。運動能力向上薬の使用および追加の補給に関するスクリーニングは、参加者の補給中に記入された健康調査票を介して達成された。兵士は同じ部隊に属しており、2つのグループ:BC30使用のCaHMB(CaHMBBC30;n=9;20.5±0.8y;1.75±0.09m;75.4±9.6kg)またはプラセボ使用のCaHMB(CaHMBPL、n=9;19.1±3.4y;1.73±0.05m;71.4±6.4kg)のうち一方にランダムに振り分けられた。同じ部隊からの、研究への参加に関心を示したがサプリメントの消費に関心がない参加者の第3のグループは、対照グループとして協力することに同意した(CTL;n=8;20.4±0.7y;1.73±0.05m;68.6±5.3kg)。
【0036】
研究プロトコール
40日の介入期間中、全ての参加者に同じ毎日のプロトコールを施した。
最初の28日間、兵士を基地に駐留させ、
戦闘技術の開発と週5回の90分の激しい接近戦(クラヴマガ)訓練を含む調整を含む同じ高度な軍事訓練の職務に参加させた。身体訓練は、1週間当たり平均して2回の5km走を包含していた。5週目および6週目に、兵士は、野外で、およそ35kg(参加者の体重のおよそ40%に等しい)の装備を背負って難しい地形を一晩当たり25km~30kmを行軍した。この行軍訓練の持続時間は、一晩当たり5~8時間であった。訓練の最後の夜間に(40日目)、兵士はまた、行軍訓練後に追加の5kmのストレッチャー運搬も実行した。訓練の最後の2週間中、兵士の睡眠時間は、一晩当たり5~8時間であった。全ての評価(採血および磁気共鳴映像法[MRI])は、最後のサプリメント消費(40日目)の前(PRE)およびそのおよそ12時間後(POST)の1日で実行された。全ての評価は、PREおよびPOSTの両方で、同じ順番で実行された。
【0037】
補給プロトコール
CaHMBBC30およびCaHMBPL両方における参加者は、1.0gのCaHMBを、3gの1日の合計消費量で、3回/日で摂取した。各一回分は、4個のカプセル(250mgのCaHMB)からなっており、朝食、昼食および夕食中に消費された。CaHMBを、メタボリックテクノロジー社(米国アイオワ州エームズ)から得た。プロバイオティックサプリメント(バチルス・コアグランスGBI-30、6086)は、ガネデンバイオテック社(Ganeden Biotech, Inc、米国オハイオ州メイフィールドハイツ)によって提供された。各一回分は、2.0×1010コロニー形成単位を含有していた。参加者は、1日当たり一回分(朝食)を1つ消費した。プラセボは、製造元によって提供され、その外観、重量および味を、被験製品と一致させた。プラセボと被験製品はどちらも粉末形態で提供され、摂取前に、水(約250ml)中に混合した。CaHMBBC30およびCaHMBPLの参加者に、HMBおよびPLの2回の20日の供給が提供された。20日の期間それぞれの最後に、参加者は、全ての使用済みおよび未使用の小袋を返却することが求められた。
【0038】
血液測定
各試験セッションの前に、安静時の血液サンプルを得た。全ての血液サンプルを、15分の平衡期間後に得た。これらの血液サンプルを、Vacutainer(登録商標)チューブホルダー(ベクトンディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州フランクリンレイクス)を備えた20ゲージの使い捨ての針を使用して肘前の腕の静脈から得た。一晩断食後の各セッション中の日の同じ時に各参加者の血液サンプルを得た。全ての血液サンプルを、2つのVacutainer(登録商標)チューブに収集した。ここで1つのチューブは、抗凝固剤非含有であり、第2のチューブはK2EDTA含有であった。最初のチューブ中の血液を室温で30分凝固させ、その後、第2のチューブからの残存する全血と共に3,000×gで15分遠心分離した。得られた血漿および血清を、別個の1.8mlのマイクロ遠沈管に入れ、後の分析のために-80℃で凍結した。
【0039】
生化学的分析
クレアチンキナーゼ(CK)および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の血清濃度を、市販の反応速度アッセイ(セキスイダイアグノスティックス(Sekisui Diagnostics、シャーロットタウン、PE、カナダ;シグマ-アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、米国ミズーリ州セントルイス)を製造元の説明書に従って使用して分析した。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、フラクタルキン(CX3CL1)、インターフェロン-ガンマ(INF-γ)、インターロイキン-1ベータ(IL-1β)、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-10(IL-10)、および腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)を包含するサイトカインおよびケモカインの血漿濃度を、ヒトサイトカイン/ケモカインパネルの一つ(EMDミリポア(EMD Millipore)、米国マサチューセッツ州ビレリカ)を使用したマルチプレックスアッセイを介して分析した。加えて、血漿HMB濃度を、ガスクロマトグラフィー質量分析によって分析した。これは、メタボリックテクノロジー社によってこれまでに記載された方法を使用して実行された。全てのサンプルを一旦融解させ、CKおよびLDH濃度についてはBioTek Eon分光光度計(BioTek、米国バーモント州ウィヌースキ)、およびサイトカインおよびケモカイン濃度についてはMagPix(EMDミリポア)を使用して、同じ技術者によって2連で分析した。全てのアッセイの平均のアッセイ間変動は10%未満であった。
【0040】
磁気共鳴映像法(MRI)
大腿直筋(RF)および外側広筋(VL)の筋肉の完全性における変化をMRIを使用して評価した。ロジスティックな考察(時間の要素)により、事前に、研究の主な焦点は、CaHMBと共に投与されるBC30の作用をCaHMB単独と比較することであることが決定されたことから、CaHMBBC30およびCaHMBPLの兵士のみをMRIで評価した。筋肉の完全性を拡散テンソル画像化(densor tensor imaging:DTI)を介して決定した。DTIは、筋肉損傷の無症状の徴候を評価するための高感度のMRI技術である。DTI評価は、細胞膜および他の水の拡散を制約する構造に基づく。水の動きは、固有ベクトルと呼ばれる水拡散の3つの直交方向と、固有値と呼ばれるそれらの強度を決定することによって評価することができる。3つの固有値(λ1、λ2およびλ3)から、異方性度(FA)および見かけの拡散係数(ADC)などのパラメーターを計算して、ボクセルにおける水拡散の特徴を評価することができる。これらの測定は、骨格筋の完全性に関する情報を提供することが実証されている。
【0041】
3.0テスラの全身撮像装置(Ingenia、フィリップス・メディカル・システムズ(Philips Medical Systems)、ベスト、オランダ)を使用してMRIデータを得た。各測定中、参加者をスキャナー中であおむけにし、フェーズドアレイ表面コイルを使用して画像化した。膝蓋骨より20cm上の位置を画像の中心として選び、オイルカプセルを使用してマークした。全てのスキャンを、軸方向に計画し、足から頭にかけて160mmごとの幅4mmの40の断面、および290×280mm(RL×AP)の視野で構成した。3回の画像獲得を実行した。T1w DIXONを解剖学的な参照として使用し、T2wターボスピン-エコー(T2w Turbo spin-echo)を筋肉に対するあらゆる構造的な傷害を評価するために使用し、拡散テンソル画像化(DTI)シーケンスを筋線維を追跡するために使用した。使用したシーケンスパラメーターは、これまでに公開された通りである。
【0042】
T2-TSEおよびDTIスキャンのために、脂肪抑制(SPAIR-スペクトル選択的な断熱反転回復(spectrally selective adiabatic inversion recovery))を使用した。DTIシーケンスは、2つのパッケージで画像化された2D-EPIシーケンスであった。b値は400秒/mm2であり、15の固有な方向で画像化された。筋線維の追跡分析を、フィリップス(Philips)の「FiberTrak」ソフトウェアを使用して計算した。断面15および25においてRFおよびVLのROI(関心領域)を手描きした。次いでソフトウェアにより、FAが0.1未満の場合、角度の変化が27°より大きい場合、または線維の長さが10mm未満の場合にトラックを消去するアルゴリズムを使用して、筋線維を描いた。全ての評価を同じ研究員が実行した。
【0043】
統計分析
共分散分析(ANCOVA)を使用して、全てのMRIおよび血液の従属変数(筋肉傷害のマーカーおよびサイトカイン)を分析した。PREおよびPOST値を、それぞれ共変量および従属変数として使用した。f比が有意の場合、LSD事後ペアワイズ比較を使用して、グループ間の差を調査した。またANCOVAの結果も、PREからの変化に変換した。全ての比較につき、p≦0.05のアルファレベルを統計学的に有意とみなした。全てのデータは、別段の規定がない限り平均±SDとして報告される。SPSS(ウィンドウズ(登録商標)用のIBM統計、バージョン23.0;ニューヨーク州アーモンク:IBM社)を用いて統計的分析を実行した。
【0044】
結果
この試験に参加した26人の兵士のうち、25人が介入を完了した。研究から離脱したのは、訓練中にけがをした参加者のみであった。研究中に報告された補給に関連する副作用はなかった。CaHMBおよびBC30消費(返却されたカプセルおよびBC-30の小袋の数によって決定した)に基づいて、補給に関するコンプライアンスは2つのCaHMBグループ間で95.0±3.0%であった。両方のサプリメントグループにおける参加者のPREおよびPOSTにおける血漿HMB濃度を分析することによって、研究のコンプライアンスのための追加の測定を実行した。PRE(3.28±0.73nmol・L-1)からPOST(34.1±43.9nmol・L-1)の評価にかけて血漿HMB濃度の有意な上昇(p=0.010)を記録した。
【0045】
血液データ
炎症性サイトカインの循環中の濃度は、表1で観察することができる。加えて、グループ間のPREからの変化の比較を
図1に示す。循環中のTNF-α濃度における変化に関して有意な相互作用が観察された(F=6.48、p=0.006)。CaHMBBC30およびCaHMBPLに関して、POSTにおける血漿TNF-α濃度はCTLより有意に低かった(それぞれp=0.019およびp=0.002)。しかしながら、CaHMBBC30とCaHMBPLとの間に差は記録されなかった(p=0.290)。血漿CX3CL1濃度における変化に関しても、グループ間に有意な相互作用は記録されなかった(F=4.70、p=0.025)。CaHMBBC30およびCaHMBPLに関して、CX3CL1濃度の変化はCTLより有意に低かった(それぞれp=0.044およびp=0.011)。CaHMBBC30とCaHMBPLとの間にCX3CL1濃度における差は記録されなかった(P=0.687)。血漿IL-1β濃度における変化に関して、有意な相互作用を記録した(F=6.93、p=0.006)。CaHMBBC30およびCaHMBPLの両方に関して、IL-1β濃度がCTLと比較して有意に減弱した(それぞれp=0.005およびp=0.004)。CaHMBBC30とCaHMBPLとの間に差は観察されなかった(p=0.878)。血漿IL-2濃度に関して、有意な相互作用も見出された(F=4.96、p=0.019)。POSTにおけるCaHMBBC30およびCaHMBPLに関する循環中のIL-2濃度がCTLと比較して有意に減弱した(それぞれp=0.007およびp=0.029)。CaHMBBC30とCaHMBPLとの間に差は記録されなかった(p=0.584)。血漿IL-6濃度における変化でも、有意な相互作用が観察された(F=7.99、p=0.005)。CaHMBBC30およびCaHMBPLにおいて、血漿IL-6濃度がCTLと比較して有意に減弱した(それぞれp=0.002およびp=0.018)。CaHMBBC30とCaHMBPLとの間に、POSTでのIL-6応答における差は記録されなかった(p=0.467)。血漿IL-10濃度における変化でも、有意な相互作用が観察された(F=3.72、p=0.041)。CaHMBBC30とCTLとの間で有意差が見られた(p=0.013)。他の有意差は記録されなかった。INF-γ(F=1.25、p=0.31)、IL-8(F=1.49、p=0.25)またはGM-CSF(F=0.71、p=0.50)濃度における変化に関して、有意な相互作用は観察されなかった。
【0046】
【0047】
CaHMBBC30=カルシウムHMBおよびバチルス・コアグランス;CaHMBPL=カルシウムHMBおよびプラセボ;CTL=対照。全てのデータは、平均±SDとして報告される。ANCOVA試験を使用して、グループ間の差を評価した。
【0048】
筋肉傷害のマーカーの分析から、血漿LDH(F=0.15、p=0.86)またはCK濃度(F=0.17、p=0.84)に関してグループ間に有意な相互作用がないことが解明された。合わせたグループにおいて、PRE(537.7±86.1IU・L-1)からPOST(567.5±87.4IU・L-1)までのLDH濃度における変化は記録されなかった。加えて、合わせたグループにおいて、PRE(225.4±79.8IU・L-1)からPOST(377.6±230.2IU・L-1)までのCK濃度において変化は記録されなかった。
【0049】
DTI
CaHMBBC30とCaHMBPLとの間のFAおよびADC評価の比較は、表2で観察することができる。
【0050】
【0051】
加えて、
図2に、グループ間のPREからの変化の比較を示す。RFにおいてCaHMBBC30とCaHMBPLとの間にFAの有意差は観察されなかったが(F=0.315、p=0.587)、グループ間で急落している場合、PREからPOSTにかけて有意な減少を記録した。RFにおいて、グループ間でADCの有意差(F=7.198、p=0.023)を記録した。CaHMBBC30の参加者は、ADCの減少を経験したが、CaHMBPLの参加者は増加を経験した。FA(F=2.95、p=0.117)またはADC(F=1.886、p=0.200)のいずれに関しても、グループ間でVLの有意差は記録されかった。
【0052】
この研究の結果は、40日のバチルス・コアグランス有りおよび無しのHMB補給が、極めて激しい軍事訓練中に炎症性サイトカインマーカーを減弱できることを示す。この組合せは、対照と比較してIL-10応答を減弱するようであった。加えて、CaHMBおよびBC30の組合せは、大腿直筋(RF)に関する見かけの拡散係数(ADC)の減少で示されたように、筋肉の完全性の維持において、CaHMB単独と比較して有意な利益をもたらした。
【0053】
CaHMBPC30、CaHMBPLおよびCTLの血漿HMBは、それぞれ50.6±15.6nmol・L-1、15.6±28.0nmol・L-1および3.3±0.9nmol・L-1であった。CaHMBBC30に関して観察されたHMB濃度がより大きいことは、BC30が強化された吸収能力を有することを示す。
【0054】
筋肉の完全性の測定をDTIによって実行した。ここでDTIは、筋肉損傷の無症状の徴候を評価する高感度方法とみなされる。DTIは、3次元の筋肉微細構造における水分子の拡散およびその動きの方向を測定する。健康な組織では、構造の完全性が、拡散に対するバリアとなる。異方性度(FA)は、外傷後の組織への拡散率の増加を表し、一方で見かけの拡散係数(ADC)は、筋肉の各方向における拡散の程度をその軸の長さによって反映する。FAの減少およびADCの増加は、筋肉の完全性の崩壊を表し、これはすなわち、より大きい拡散を示す。これまでに本発明者らが報告した、プラセボグループのみにおけるRFと半腱様筋の両方におけるFAの有意な減少、および補給グループにおけるVLのADC増加の可能性から、遊離酸の形態で提供されたHMBは、激しい軍事訓練中に筋肉の完全性を強化できることが示される。しかしながら、CaHMBへのBC30の添加は、筋肉の完全性の維持に関して相乗効果をもたらし、結果として、CaHMB単独によって提供されるものより大きい程度の筋肉保護をもたらすことがデータから示される。
【0055】
前述の説明および図面は、本発明の例示的な実施態様を含む。前述の実施態様および本明細書に記載される方法は、当業者の能力、経験、および選択に基づき変更することができる。単に方法の工程を特定の順番で列挙しているが、方法の工程に対するいかなる限定ともみなされない。前述の説明および図面は単に本発明を説明および例示するものであり、特許請求の範囲によってそのように限定される場合を除いて、本発明はそれらに限定されない。当業者は、事前に本開示を知ることで、そこに本発明の範囲から逸脱することなく改変およびバリエーションをなすことができると予想される。
【0056】
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