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特許7583529骨材の品質推定方法およびコンクリート製造方法
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  • 特許-骨材の品質推定方法およびコンクリート製造方法 図1
  • 特許-骨材の品質推定方法およびコンクリート製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】骨材の品質推定方法およびコンクリート製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/38 20060101AFI20241107BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20241107BHJP
   C04B 14/06 20060101ALI20241107BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G01N33/38
C04B28/02
C04B14/06 Z
B28C7/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020032219
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021135199
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】早野 博幸
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-182182(JP,A)
【文献】特開2019-181813(JP,A)
【文献】特開2017-189940(JP,A)
【文献】特開平10-048203(JP,A)
【文献】特開平09-145348(JP,A)
【文献】特開2014-162015(JP,A)
【文献】特開2008-268051(JP,A)
【文献】特開2017-185752(JP,A)
【文献】特開2019-188718(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0382309(US,A1)
【文献】特開2021-117625(JP,A)
【文献】特開2021-022198(JP,A)
【文献】岩下 将也、大塚 義一,深層学習を用いた土の粒度分布推定法の基礎的研究,奥村組技術研究年報,2019年09月01日,No.45,p.12
【文献】松崎 和敏 他,骨材搬送ベルトコンベアにおける骨材粒径自動判定システムの開発,土木学会第71回年次学術講演会講演概要集,Vol.71st,2016年08月01日,p.33-34,CS7-017
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00-33/46
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
B28C 1/00- 9/04
B02C 1/00- 7/18
B02C 15/00-17/24
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予測モデルを用いて骨材の品質を推定する骨材の品質推定方法であって、
予測モデル作成部が、前記予測モデルを、少なくとも骨材が映るようにカメラで撮影された画像データを含む学習用入力データと骨材の表面水率に関する学習用出力データとの組み合わせである学習データを複数用いた機械学習によって、作成する工程と、
画像取得部が、品質を推定する対象の骨材が撮影された画像を取得して、当該骨材が撮影された画像データを、前記予測モデルに入力する工程と、
制御部が、前記予測モデルを用いて、前記骨材が撮影された画像データを解析する工程と、
出力部が、前記解析された画像データ内の骨材の表面水率を、前記撮影した骨材の物性値として出力する工程と、を含むことを特徴とする骨材の品質推定方法。
【請求項2】
前記画像データは、コンクリート混練前の骨材の表面を撮影した画像から特定の範囲で切り出した画像データであることを特徴とする請求項1記載の骨材の品質推定方法。
【請求項3】
前記画像データは、コンクリート混練前の骨材の表面を連続的に撮影した複数の画像から特定の範囲で切り出した複数の画像データであって、
前記画像取得部は、前記複数の画像データを、前記予測モデルに入力し、
前記制御部は、前記予測モデルを用いて、前記複数の撮影した骨材の物性値の平均値を算出し、
前記出力部は、前記算出された平均値を出力することを特徴とする請求項1または請求項2記載の骨材の品質推定方法。
【請求項4】
前記物性値は、前記骨材の粒度に関する情報をさらに含み、
前記予測モデル作成部は、前記学習用入力データと骨材の粒度に関する学習用出力データとの組み合わせである学習データを複数用いた機械学習を行ない、
前記出力部は、前記解析された画像データ内の骨材の粒度をさらに含む物性値を出力することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の骨材の品質推定方法。
【請求項5】
前記請求項1から請求項4のいずれかに記載の骨材の品質推定方法で推定された物性値を用いたコンクリート製造方法であって、
前記推定された骨材の物性値に基づき、骨材、セメント、水、混和剤、混和材を含む各コンクリート材料の計量する工程と、
前記計量した各材料を混練する工程と、を含むことを特徴とするコンクリート製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨材の品質推定方法およびコンクリート製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生コンクリート工場でのコンクリート製造工程において、骨材の表面水率は、コンクリートの混練後のコンクリートの品質に大きく影響を与えることが知られている。つまり、骨材の表面水率を適切に管理しないと、強度性状や流動性に大きな影響を及ぼす。
【0003】
そのため、例えば、表面水率に関しては、JIS Q 1011:2019適合性評価 - 日本工業規格への適合性の認証 - 分野別認証指針(レディーミクストコンクリート)では、製造工程の管理として、再骨材の表面水率は、1回以上/午前、1回以上/午後、粗骨材の表面水率は必要の都度、測定することと記載がされている。しかしながら、表面水率は、ばらつきが大きく、連続的に計測することが望ましい。
【0004】
特許文献1、2および非特許文献1には、水分計により骨材の表面水率を測定し、表面水率に対応させてミキサに注水する骨材量及び練り混ぜ水量を変化させる技術が開示されている。また、特許文献3には、骨材の画像データを取得し、取得した画像データから表面水率を算出し、セメント製造時に配合する水分量を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-268839号公報
【文献】特開2002-301713号公報
【文献】特開平10-048204号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】http://www.liberty-kobe.co.jp/products/cong-ii
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
表面水率の測定は、JIS A 1111細骨材の表面水率試験方法などが適用されるが、手間や時間を要し、連続的な測定は不可能である。また、電気的な手法やマイクロ波を用いた手法等があるが、一部の局所的部分の測定しかできない。その他の品質についても試験を実施して値を算出するが、多大な手間と時間を要することと、連続的な測定は困難である。
【0008】
特許文献1、2および非特許文献1に記載されている水分計による骨材の表面水率を測定する方法は、時間と手間がかかる他、骨材の表面水率のばらつきや、ベルトコンベア上で測定した骨材の表面水率や貯蔵ビン内でストックされた骨材の表面水率は、コンクリート混練までに変化するため、正確な表面水率を把握することが困難な場合がある。
【0009】
また、特許文献3では、骨材は絶乾状態(水分を含んでいない状態)から水分を含んだ状態になると、表面の色が徐々に濃くなることから、骨材の画像データから濃淡を測定し、骨材の表面水率を測定しているが、骨材の濃淡が同じであっても、骨材の大きさ(粒度)によって表面水率が異なるため、骨材の濃淡からだけでは、骨材の品質を適切に把握することは困難である。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、機械学習による予測モデルを用いて骨材の画像データを解析することにより、短時間でかつ高い精度で、コンクリート混練前の骨材の品質を示す物性値を推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の骨材の品質推定方法は、予測モデルを用いた骨材の品質推定方法であって、前記予測モデルを、画像データを含む学習用入力データと骨材の品質を示す物性値に関する学習用出力データとの組み合わせである学習データを複数用いた機械学習によって作成する工程と、少なくとも骨材が映るように撮影された画像データを、前記予測モデルに入力し、前記予測モデルから前記撮影した骨材の品質を示す物性値を出力する工程と、を含み、前記出力した物性値を、前記撮影した骨材の物性値であると推定することを特徴としている。
【0012】
これにより、短時間でかつ高い精度で骨材の品質を推定することができ、安定したフレッシュ性状や硬化性状のコンクリートを製造することができる。
【0013】
(2)また、本発明の骨材の品質推定方法において、前記画像データは、コンクリート混練前の骨材の表面を撮影した画像データであることを特徴としている。このように、コンクリート混練前の骨材の表面を撮影した画像データを用いることで、より高い精度の骨材の品質を推定することが可能となる。
【0014】
(3)また、本発明の骨材の品質推定方法において、前記画像データは、前記コンクリート混練前の骨材の表面を連続的に撮影した複数の画像を撮影した画像データであって、前記複数の画像データを、前記予測モデルに入力し、前記予測モデルから、前記複数の撮影した骨材の品質を示す物性値を出力し、出力された前記複数の物性値から算出された平均値を用いて骨材の品質を推定することを特徴としている。このように、コンクリート混練前の骨材の表面の画像データを用いて予測モデルを作成するので、より高い精度の骨材の品質を推定することが可能となる。
【0015】
(4)また、本発明の骨材の品質推定方法において、前記品質は、前記骨材の表面水率に関する情報を少なくとも含むことを特徴としている。このように、画像データと骨材の表面水率を関連付けて学習させ、予測モデルを作成することで、コンクリート混練前の骨材の表面水率をより正確に把握することができ、安定したフレッシュ性状や硬化性状のコンクリートを製造することが可能となる。
【0016】
(5)また、本発明の骨材の品質推定方法において、前記品質は、前記骨材の粒度に関する情報を少なくとも含むことを特徴としている。これにより、粒度を考慮した骨材の表面水率を関連付けて学習させ、予測モデルを作成することで、コンクリート混練前の骨材の表面水率をより正確に把握することができ、安定したフレッシュ性状や硬化性状のコンクリートを製造することが可能となる。
【0017】
(6)また、本発明のコンクリート製造方法は、上記(1)から(5)のいずれかに記載の骨材の品質推定方法を用いたコンクリート製造方法であって、前記品質推定方法を用いて、コンクリート混練前の骨材の品質を推定する工程と、前記推定した骨材の品質に基づき、骨材、セメント、水、混和剤、混和材を含む各コンクリート材料の計量する工程と、前記計量した各材料を混練する工程と、を含むことを特徴としている。
【0018】
これにより、短時間でかつ高い精度で骨材の品質を推定することができ、安定したフレッシュ性状や硬化性状のコンクリートを製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、短時間でかつ高い精度で、コンクリート混練前の骨材の品質を推定することができ、安定したフレッシュ性状や硬化性状のコンクリートを製造することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】骨材の品質推定システムの概要を示す図である。
図2】コンクリートの製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本実施形態に係る骨材の品質推定システムの概要を示す図である。この骨材の品質推定システム1は、骨材の品質を推定するために用いられる。骨材の品質とは、骨材の物性値であり、表面水率、含水率、吸水率、粒度分布、粗粒率、実積率等である。生コンクリート製造工程において、まず、骨材はベルトコンベアでプラントへ運ばれ、プラント上部の貯蔵ビン内にストックされる。ベルトコンベア上または貯蔵ビン内には、カメラが設置されており、ベルトコンベアで運ばれてくるベルトコンベア上の骨材、または、貯蔵ビン内にストックされた骨材を、カメラで撮影する。
【0022】
骨材の品質推定システム1において、画像取得部11は、各カメラで撮影された画像データを取得する。取得した画像データを、予測モデル作成部13で予め機械学習によって作成された予測モデルに入力し、制御部(解析実行部)15で予測モデルを用いて、カメラで撮影した骨材の品質を解析する。その後、表示部(出力部)17から解析された骨材の品質を示す物性値を出力する。出力された骨材の物性値を、カメラで撮影した骨材の物性値と推定する。また、得られた複数の出力データから算出された平均値を、解析された骨材の品質を示す物性値としてもよい。
【0023】
骨材の品質推定システム1で推定された骨材の物性値を用いて、コンクリートの各材料を計量し、コンクリートを混練する。このように、コンクリート混練前の骨材の品質を推定することで、材料の配合を適切に行うことが可能となる。例えば、骨材の品質推定システム1において、骨材の品質を示す物性値の一つである表面水率を推定することにより、コンクリート混練に適切な水の量から、推定した表面水率を差し引いた量の水を、ミキサへ注入することにより、安定したフレッシュ性状や硬化性状のコンクリートを製造することが可能となる。
【0024】
(骨材の品質推定方法)
本実施形態に係る骨材の品質推定方法は、予測モデルを用いて、骨材の品質を推定する方法である。予測モデルは、少なくとも骨材が映るように撮影された画像データと骨材の品質を示す物性値に関する学習用出力データとの組み合わせである学習データを複数用いた機械学習によって作成されたものである。撮影した画像データを、予測モデルに入力し、予測モデルから撮影した骨材の品質を示す物性値を出力し、出力された物性値を、撮影した骨材の物性値であると推定するものである。骨材の品質を示す物性値として、例えば、表面水率、含水率、吸水率、粒度分布、粗粒率、実積率等が挙げられる。
【0025】
予測モデルは、機械学習によって作成されたものである。機械学習に用いられる学習方法の例としては、ニューラルネットワーク、線形回帰、決定木、サポートベクター回帰、アンサンブル法、サポートベクターマシン、判別分析、単純ベイズ法、最近傍法等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
中でも、より高い精度で品質を推定することができる観点から、ニューラルネットワークが好ましい。ニューラルネットワークは、より高い精度で品質を推定することができる観点から、入力層と出力層の間に、一つ以上の中間層を有する階層型のニューラルネットワークが好適である。
【0027】
ニューラルネットワークの例としては、2次元または3次元畳み込みニューラルネットワーク(2DCNN または 3DCNN:2D または 3D Convolutional Neural Network)等の畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)や、再帰型ニューラルネットワーク(RNN:Recurrent Network)や、長期・短期記憶(LSTM:Long Short-Term memory)ニューラルネットワーク(LSTMを用いて再帰型ニューラルネットワークを改良したもの)等が挙げられる。
【0028】
中でも、画像認識の分野において優れた性能を有する、畳み込みニューラルネットワーク(中間層として、畳み込み層やプーリング層等を有するニューラルネットワーク)がより好適である。畳み込みニューラルネットワークによれば、画像データから特徴量を検出し、該特徴量を用いて、分類または回帰を行うことが可能な予測モデルを作成することができる。
【0029】
畳み込みニューラルネットワークにおける、畳み込み層とプーリング層の組み合わせからなる層の数は、より高い精度で推定することができる観点から、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上である。
【0030】
また、機械学習は、例えば、Google社が開発したソフトウェアライブラリである「TensorFlow」(「TENSORFLOW」(登録商標))や、IBM社が開発したシステムである「IBM Watson」(「IBM WATSON」(商標登録))等を用いて行うことができる。
【0031】
予測モデルは、画像データを含む学習用入力データと骨材の品質に関する学習用出力データとの組み合わせである学習データを複数用いた機械学習によって作成される。学習用入力データとしては、コンクリート混練前の骨材の画像データが挙げられる。具体的には、ベルトコンベア上、あるいは貯蔵ビンなどにストックされている骨材を、定点カメラで撮影した動画像データや、定期的に撮影した静止画像データ等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、撮影する画像は、骨材部分が入っていればよく、表面が平らであっても凹凸状になっていてもよい。
【0032】
学習用入力データとして用いられる画像データの数は、より高い精度で品質を推定することができる観点から、好ましくは100以上、より好ましくは1000以上、さらに好ましくは1万以上、さらに好ましくは5万以上、特に好ましくは10万以上である。画像データは、動画像のデータであっても静止画像のデータであってもよい。また、画像は、2次元画像であってもよく、3次元画像であってもよい。
【0033】
画像データの撮影は、ベルトコンベア上または貯蔵ビン内に設置されたカメラによって行われる。骨材部分がよく映るよう、カメラを設置する。動画像の場合は、静止画像にして入力データとする。
【0034】
骨材を撮影した画像から、特定の範囲の画像を画像データ(学習用入力データとして用いられるもの)として切り出す場合において、骨材を撮影した一つの画像から、複数の画像データを切り出してもよい。また、複数の画像データは、その切り出された範囲が、各々、一部重複したものであってもよい。例えば、最初に画像データを切り出した位置を基準として、縦方向横方向(上下の方向及び左右の方向)の少なくとも一つの方向に、1~10ピクセル単位でずらした位置から、別の画像データを切り出すことで、一つの画像から、複数の画像データを得てもよい。
【0035】
ベルトコンベア上、あるいは貯蔵ビン内にストックされた骨材を撮影した画像は、畳み込みニューラルネットワークなどの機械学習により適した画像データにする観点から、1ピクセルを0から255の256階調の数値で表すグレースケース画像に変換してもよい。
【0036】
このように、ベルトコンベアで骨材を運搬する工程、貯蔵ビン内などで骨材の様子を連続的に撮影し、これを予め作成した学習モデルを使用して、骨材の物性値を推定し、その推定した物性値に基づき、コンクリートの材料の配合を決め、計量し、ミキサで材料を混練することで、安定したフレッシュ性状や硬化性状のコンクリートを製造することができる。
【0037】
(コンクリートの製造方法)
上述した骨材の品質推定方法を用いたコンクリートの製造方法について、説明する。図2は、コンクリートの製造工程を示す図である。まず、骨材(川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、硅砂、スラグ細骨材、および軽量細骨材や粗骨材等)をベルトコンベアでプラント上部に運び、貯蔵ビンに貯蔵する。ベルトコンベア上や貯蔵ビン内には、カメラが設置されており、ベルトコンベア上で運搬されている時点の骨材や貯蔵ビン内に貯蔵されている骨材の画像を撮影する(ステップS1)。次に、撮影した画像データを骨材の品質推定システムに送信する。品質推定システムにおいて、入力された画像データをもとに、骨材の品質を解析する。つまり、入力された画像データから、予測モデルを用いて骨材の品質を解析し、骨材の物性値を品質推定結果として出力する(ステップS2)。次に、出力された骨材の物性値を考慮し、骨材、セメント、混和剤、混和材などのその他のコンクリート材料を計量し、ミキサへ注入する(ステップS3)。注入完了後、ミキサで混練し、生コンクリートが製造される(ステップS4)。
【0038】
(実施例)
表1は、本実施例で学習用サンプルとして用いた骨材の種類等の骨材に関する情報を示す表である。表1に示す2種類の骨材を対象とし、JIS A 1111細骨材の表面水率試験方法、JIS A 1125骨材の含水率試験方法及び含水率に基づく表面水率の試験方法による表面水率を、表1記載の値になるように調整した。本実施例では、骨材の品質(物性値)として、表面水率(%)を用いたが、表面水率の他、吸水率、粒度分布、粗粒率、実積率等を用いることも可能である。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示した骨材を、縦50cm×横50cm×高さ10cmの容器に入れ、骨材の表面状態を平らな状態にならしたもの、表面を凹凸に目荒らししたものとした。これらの24通り(2(骨材の種類)×6(表面水分率)×2(表面状態))の組み合わせの骨材全体を、照明によって暗い、明るいの2パターンとしてデジタルカメラで撮影し、48枚(24×2)の画像データを得た。
【0041】
各画像データから256×256ピクセルの大きさとなるように異なる画像データをランダムに40枚抽出し、1920枚(48×40)を入力データ、表面水率を出力データとする学習モデルを作成した。
【0042】
機械学習には、「TensorFlow」(「TENSORFLOW」(登録商標))を使用し、5層の畳み込みニューラルネットワークを用いて学習を行った。また、学習において、誤差関数として最小二乗法を使用した。学習回数は50万回とし、1回の学習で入力される画像データ(学習用入力データ)の数は、50個(ランダムに選択されたもの)とした。
【0043】
次に、上記作成した学習モデルの検証を行った。表2は、検証用サンプルとして用いた骨材の種類等の骨材に関する情報を示す表である。
【0044】
【表2】
【0045】
表2に示すように、表面水率を調整した骨材を対象に、同様にデジタルカメラで撮影し、32枚(2(骨材の種類)×4(表面水分率)×2(表面状態)×2(明るさ))の画像を検証用画像データとして取得した。32枚の各画像データから、256×256ピクセルの大きさとなるように異なる画像データをランダムにそれぞれ20枚抽出し、640枚(32×20)の画像データを取得した。
【0046】
これらの取得した640枚の画像データを入力データ、各表面水率を出力データとして、検証を行なった。検証では、表2に示す表面水率の実測値に対して、学習モデルにより出力された物性値が±0.25%以内で推定できた場合を正解とした。検証の結果、正解率は、96%となり、骨材の画像データを用いて表面水率を推定することが可能であることがわかった。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、コンクリート混練前の骨材の品質を、短時間でかつ高い精度で推定することができ、安定したフレッシュ性状や硬化性状のコンクリートを製造することを可能とする。
【符号の説明】
【0048】
1 品質推定システム
11 画像取得部
13 予測モデル作成部
15 制御部(解析実行部)
17 表示部(出力部)
図1
図2