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特許7583530医用情報処理装置、医用画像診断装置及び医用情報処理方法
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  • 特許-医用情報処理装置、医用画像診断装置及び医用情報処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用画像診断装置及び医用情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/46 20240101AFI20241107BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20241107BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
A61B6/46 536P
A61B6/03 530A
A61B6/03 570G
A61B6/03 573
A61B5/055 370
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020036082
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021137189
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古閑 楠人
(72)【発明者】
【氏名】潟山 一樹
(72)【発明者】
【氏名】石田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】布目 忠嗣
(72)【発明者】
【氏名】才木 龍生
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/138979(WO,A1)
【文献】特開2017-113058(JP,A)
【文献】特開2019-122553(JP,A)
【文献】特開2004-329661(JP,A)
【文献】国際公開第2019/112050(WO,A1)
【文献】特開2015-089429(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147844(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/049818(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の撮像において取得された第1のデータに基づいて、前記第1の撮像の後に実行予定であり、前記第1の撮像とは撮像条件が異なる第2の撮像により得られるデータに相当する第2のデータを生成するデータ生成部と、
前記第2のデータの画質を評価する評価処理を実行することにより支援情報を生成する情報生成部と、
前記第2のデータの画質を示す前記支援情報と、前記第2のデータと、当該第2のデータ上に前記第2の撮像で撮影する撮影範囲を設定する画像とを、前記第2の撮像の実行前に、表示部に表示させる制御部と、
を備えた医用情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記支援情報と関連付けて、前記第2の撮像の制御に関する少なくとも一つのボタンを前記表示部に表示させる、
請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記情報生成部は、前記第2のデータを用いて、前記第2の撮像の実行の要否に関する情報、前記第2の撮像のプロトコルの適否に関する情報、前記第2の撮像のプロトコルの修正に関する情報、前記画質に関連する情報のうち少なくとも一つを含む前記支援情報を生成する、
請求項1又は2に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記第1の撮像はX線コンピュータ断層撮像装置を用いた低線量撮像であり、
前記第2の撮像はX線コンピュータ断層撮像装置を用いた高線量撮像である、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記第1の撮像は磁気共鳴イメージング装置を用いた事前撮像又は本撮像であり、
前記第2の撮像は磁気共鳴イメージング装置を用いた本撮像である、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記支援情報に基づいて、前記第2の撮像に関する制御を実行する制御部をさらに備えた、
請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記第2のデータを用いて、サブトラクション画像及びデュアルエナジー画像の少なくとも一方を生成する画像生成部をさらに備えた、
請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記情報生成部は、前記画質に基づいて、前記第2の撮像に関する撮像条件、撮像範囲、画像再構成条件のうちの少なくとも一つを含む前記支援情報を生成する、
請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
第1の撮像において取得された第1のデータに基づいて、前記第1の撮像の後に実行予定であり、前記第1の撮像とは撮像条件が異なる第2の撮像により得られるデータに相当する第2のデータを生成するデータ生成部と、
前記第2のデータの画質を評価する評価処理を実行することにより支援情報を生成する情報生成部と、
前記第2のデータの画質を示す前記支援情報と、前記第2のデータと、当該第2のデータ上に前記第2の撮像で撮影する撮影範囲を設定する画像とを、前記第2の撮像の実行前に、表示部に表示させる制御部と、
を備えた医用画像診断装置。
【請求項10】
第1の撮像において取得された第1のデータに基づいて、前記第1の撮像の後に実行予定であり、前記第1の撮像とは撮像条件が異なる第2の撮像により得られるデータに相当する第2のデータを生成するステップと、
前記第2のデータの画質を評価する評価処理を実行することにより支援情報を生成するステップと、
前記第2のデータの画質を示す前記支援情報と、前記第2のデータと、当該第2のデータ上に前記第2の撮像で撮影する撮影範囲を設定する画像とを、前記第2の撮像の実行前に、表示部に表示させるステップと、
を備えた医用情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等に開示の実施形態は、医用情報処理装置、医用画像診断装置及び医用情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、X線コンピュータ断層撮像装置(X線CT装置)を用いた撮像処理では、まず、位置決め撮像と呼ばれる比較的低線量の撮像により位置決め画像が取得され、位置決め画像を用いて設定された撮像領域に対して、診断画像の取得を目的として、位置決め撮像に比して高線量による撮像(本撮像)が実行される。近年では、位置決め撮像において三次元データを取得するX線CT装置も登場している。
【0003】
この様なX線CT装置を用いた撮像処理は、撮像に先立って設定される撮像プロトコルに従って実行される。撮像プロトコルの設定においては、例えば、撮像部位、位置決め撮像や本撮像における撮像条件、撮像範囲、再構成条件等が設定される。撮像プロトコルに従って撮像処理が開始されると、設定された撮像条件等に従って当該撮像プロトコルに含まれる各種処理が実行される。
【0004】
また、深層学習モデル等の人工知能を用いて、例えば投影データや再構成画像をより高画質化・高精細化する手法が開発されている。
【0005】
ところで、X線CT装置等を用いた画像診断において、一旦設定された撮像プロトコルを客観的な指標によって検証し、画像診断に関するワークフローを見直す技術は確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-93126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、客観的な指標により、画像診断に関するワークフローを見直す技術を確立することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る医用情報処理装置は、データ生成部と、情報生成部と、制御部とを備える。前記データ生成部は、第1の撮像において取得された第1のデータに基づいて、前記第1の撮像の後に実行予定であり、前記第1の撮像とは撮像条件が異なる第2の撮像により得られるデータに相当する第2のデータを生成する。前記情報生成部は、前記第2のデータの画質を評価する評価処理を実行することにより支援情報を生成する。前記制御部は、前記第2のデータの画質を示す前記支援情報と、前記第2のデータと、当該第2のデータ上に前記第2の撮像で撮影する撮影範囲を設定する画像とを、前記第2の撮像の実行前に、表示部に表示させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る医用情報処理装置を組み込んだX線コンピュータ断層撮像装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、処理回路150のデータ生成機能150dが実行するデータ生成処理の一例を説明するための図であり、低線量投影データを入力とし、高線量相当投影データを出力とする例である。
図3図3は、処理回路150のデータ生成機能150dが実行するデータ生成処理の一例を説明するための図であり、低線量投影データを入力とし、高線量相当再構成画像データを出力とする例である。
図4図4は、処理回路150のデータ生成機能150dが実行するデータ生成処理の一例を説明するための図であり、低線量再構成画像を入力とし、高線量相当再構成画像データを出力とする例である。
図5図5は、評価処理、支援情報の生成処理の流れを示したフローチャートである。
図6図6は、ステップS3における高線量相当画像の生成処理の一例を説明するための図であり、低線量投影データを入力して高線量相当投影データを生成し、高線量相当再構成データを出力とする例である。
図7図7は、ステップS3における高線量相当画像の生成処理の一例を説明するための図であり、低線量投影データを入力して低線量再構成データを生成し、高線量相当再構成データを出力とする例である。
図8図8は、ディスプレイ42に表示された支援情報、高線量相当画像等の表示例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、実施形態に係る医用情報処理装置、医用情報処理方法及び医用情報処理プログラムについて詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係る医用情報処理装置100を組み込んだX線コンピュータ断層(Computed Tomography)撮像装置1(以下、「X線CT装置1」と呼ぶ。)の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、X線CT装置1は、架台装置10と寝台装置30とコンソール装置40とを有する。
【0012】
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して水平である軸方向をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とそれぞれ定義するものとする。
【0013】
架台装置10は、診断に用いられる医用画像を撮像するための撮像系を有する。すなわち、架台装置10は、被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線の検出データから投影データを収集する撮像系を有する装置であり、X線管11と、ウェッジ16と、コリメータ17と、X線検出器12と、X線高電圧装置14と、DAS(Data AcquisitionSystem)18と、回転フレーム13と、制御装置15と、寝台装置30とを有する。
【0014】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射する真空管である。
【0015】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線のX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。
【0016】
ウェッジ16は、例えばウェッジフィルタ(wedge filter)またはボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。
【0017】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。
【0018】
X線検出器12は、X線管11から照射され、被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線量に対応した電気信号をデータ収集装置(DAS18)へと出力する。X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心として1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、X線管の焦点を中心として一つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(体軸方向、列方向とも呼ばれる)に複数配列された構造を有する。
【0019】
また、X線検出器12は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有し、シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽版を有する。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(PMT)等の光センサを有する。なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0020】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器などの電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、X線高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(図示しない)側に設けられても構わない。なお、固定フレームは、回転フレーム13を回転可能に支持するフレームである。
【0021】
DAS18は、X線検出器12の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS18が生成した検出データは、コンソール装置40へと転送される。
【0022】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。なお、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やDAS18を更に支持してもよい。なお、DAS18が生成した検出データは、一例として、回転フレーム13に設けられた発光ダイオードを有する送信機から光通信によって、固定フレームの等の架台装置10の非回転部分に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へと転送される。なお、回転フレーム13から架台装置10の非回転部分への検出データの送信方法は、光通信に限らず、非接触型のその他の方式のデータ伝送方法を用いて行ってもよい。
【0023】
制御装置15は、CPU等を有する処理回路と、モータやアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、コンソール装置40に取り付けられた入力インターフェース43若しくは架台装置10に取り付けられた入力インターフェースからの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。また、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10及び寝台装置30を動作させる制御を行う。
【0024】
例えば、制御装置15は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェースによって入力される傾斜角度(チルト角度)情報に基づいて、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって、架台装置10をチルトさせる。なお、制御装置15または処理回路150の有する制御機能150aは、制御部の一例である。
【0025】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備える。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33をその長軸方向(図1のZ軸方向)に移動させるモータあるいはアクチュエータである。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0026】
寝台駆動装置32は、制御装置15からの制御信号に従って、基台31を上下方向に移動させる。寝台駆動装置32は、制御装置15からの制御信号に従って、天板33を長軸方向に移動させる。
【0027】
コンソール装置40は、ユーザによるX線CT装置1の操作を受け付けるとともに、架台装置10によって収集されたX線検出データからX線CT画像データを再構成する装置である。コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路150とを備える。
【0028】
ここで、本実施形態に係る医用情報処理装置100は、少なくとも処理回路150によって実現される。なお、本実施形態に係る医用情報処理装置100は、例えばメモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43とをさらに含む構成であってもよい。
【0029】
メモリ41は、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスクなどにより実現される。メモリ41は、例えば投影データや再構成画像データを記憶する。メモリ41は、記憶部の一例である。
【0030】
また、メモリ41は、後述する制御機能150a、前処理機能150b、再構成処理機能150c、データ生成機能150d、情報生成機能150eを実現するための専用プログラムを格納する。
【0031】
ディスプレイ42は、ユーザが参照するモニタであり、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路150によって生成された医用画像(CT画像)や、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ42は、表示部の一例である。
【0032】
入力インターフェース43は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路150に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等をユーザから受け付ける。また、例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等により実現される。入力インターフェース43は、入力部の一例である。
【0033】
処理回路150は、X線CT装置1全体の動作を制御する。処理回路150は、例えば、制御機能150a、前処理機能150b、再構成処理機能150c、データ生成機能150d、情報生成機能150eを有する。実施形態では、構成要素である制御機能150a、前処理機能150b、再構成処理機能150c、データ生成機能150d、情報生成機能150eにて行われる各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41へ記憶されている。処理回路150はプログラムをメモリ41から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、図1の処理回路150内に示された各機能を有することになる。
【0034】
なお、図1においては単一の処理回路150にて、制御機能150a、前処理機能150b、再構成処理機能150c、データ生成機能150d、情報生成機能150eにて行われる処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路150を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0035】
換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。
【0036】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical processing unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD),及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ41に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリ41にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0037】
処理回路150は、制御機能150aにより、入力インターフェース43を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、処理回路150の各種機能を制御する。また、処理回路150は、制御機能150aにより、高線量相当画像、支援情報をディスプレイ42に表示させる。また、処理回路150は、制御機能150aにより、関心領域を設定するための計測ツール、支援情報に基づく制御を実行するための少なくとも一つのGUIをディスプレイ42に表示させる。
【0038】
処理回路150は、前処理機能150bにより、DAS18から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正などの前処理を施したデータを生成する。なお、前処理前のデータ(検出データ)および前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。処理回路150は、再構成処理機能150cにより、前処理機能150bにより生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データを生成する。また、処理回路150は、再構成処理機能150cにより、入力インターフェース43を介してユーザから受け付けた入力操作に基づいて、再構成されたCT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。
【0039】
処理回路150は、データ生成機能150dにより、第1の撮像(例えば、事前撮像としての位置決め撮像、本撮像等)において取得された第1のデータ(例えば位置決め画像等)に基づいて、第1の撮像とは撮像条件が異なる撮像により得られるデータに相当する第2のデータを生成する。ここで、撮像条件が異なるとは、X線CT装置であれば、例えばX線照射時の管電圧又は管電流が異なることを指す。また、撮影条件が異なるとは、MRI装置であれば、例えば撮像のために適用する電磁パルスの強度又は頻度が異なることを指す。
【0040】
さらに、第1の撮像とは撮像条件が異なる撮像とは、X線CT装置であれば、例えば、第1の撮像としての位置決め撮像の後に実施する予定の本撮像、第1の撮像としての本撮像の後に実施する予定の本撮像等を意味する。また、第1の撮像とは撮像条件が異なる撮像とは、MRI装置であれば、例えば、本撮像としての第1の撮像を実行した後に、撮像条件を少しずつ変えながら複数回実行する本撮像のうちの少なくとも一つを意味する。
【0041】
なお、第1の撮像とは撮像条件が異なる撮像を第2の撮像と呼ぶこともある。また、第2のデータは、第1データより診断に適したデータに相当するもの(典型的には、第2の撮像によって取得されるデータに相当するもの)であるが、必ずしも第2の撮像によって取得されるデータに相当する必要はない。
【0042】
また、本撮像とは、診断対象を診断するための画像(診断画像)を取得するために、比較的高線量で実行される撮像を意味する。また、位置決め撮像とは、本撮像の撮像範囲を決定するために、本撮像に比して低線量で実行される撮像を意味する。また、撮像プロトコルとは、診断部位、位置決め撮像及び本撮像における撮像条件、造影方法、再構成条件、画像表示方法等を含む情報である。また、本実施形態においては、本撮像、位置決め撮像によって、被検体の三次元領域に対応するデータ(ボリュームデータ)が取得されるものとする。
【0043】
本実施形態では、処理回路150のデータ生成機能150dは、例えばディープニューラルネットワークに代表されるAIモデルを含むものである。
【0044】
図2図3図4は、処理回路150のデータ生成機能150dが実行するデータ生成処理を説明するための図である。
【0045】
図2に示す様に、処理回路150は、データ生成機能150dにより、例えば位置決め撮像によって取得された投影データ(以下、「低線量投影データ」とも呼ぶ。)を入力とし、本撮像によって取得された投影データに相当する画質を有する投影データ(以下、「高線量相当投影データ」と呼ぶ。)を生成して出力する。なお、図2に示したAIモデルとしての処理回路150のデータ生成機能150dは、例えば低線量投影データを入力とし、高線量相当投影データを教師データとするトレーニングデータを用いた学習により生成することができる。
【0046】
また、図3に示す様に、処理回路150は、データ生成機能150dにより、例えば低線量投影データを入力とし、本撮像によって取得された投影データを用いて再構成された再構成画像データに相当する画質を有する再構成画像データ(以下、「高線量相当再構成画像データ」と呼ぶ。)を生成して出力する。なお、図3に示したAIモデルとしての処理回路150のデータ生成機能150dは、例えば低線量投影データを入力とし、高線量相当再構成画像データを教師データとするトレーニングデータを用いた学習により生成することができる。
【0047】
また、図4に示す様に、処理回路150は、データ生成機能150dにより、例えば低線量投影データを用いた再構成処理によって取得された再構成画像データ(以下、「低線量再構成画像データ」と呼ぶ。)を入力とし、高線量相当再構成画像データを生成して出力する。なお、図4に示したAIモデルとしての処理回路150のデータ生成機能150dは、例えば低線量再構成画像データを入力とし、高線量再構成画像データを教師データとするトレーニングデータを用いた学習により生成することができる。
【0048】
処理回路150は、情報生成機能150eにより、第2のデータ(例えば、位置決め画像や本撮像によって撮像された画像等)の質に基づいて、第1の撮像の後に実行予定であり、第1の撮像とは撮像条件が異なる第2の撮像に関する見直しを支援するための支援情報を生成する。例えば、処理回路150は、情報生成機能150eにより、生成された高線量相当投影データ又は高線量相当再構成画像データを用いた評価処理を実行し、評価処理に基づいて、撮像プロトコルを含むワークフローの見直しを支援するための支援情報を生成する。この情報生成機能150eは、ルールベースの演算機能、AIモデル、或いはAIモデルとルールベースの演算機能との組み合わせによって実現される。
【0049】
ここで、「第1の撮像とは撮像条件が異なる第2の撮像に関する見直しを支援するための支援情報」とは、第1の撮像の後に実行される予定である第2の撮像についての、撮像プロトコルの見直し、再構成や後処理に関する見直しに利用する情報である。また、「高線量相当投影データ又は高線量相当再構成画像データを用いた評価処理」とは、高線量相当投影データ、高線量相当再構成画像データ、高線量相当投影データ又は高線量相当再構成画像データから生成される画像(以下、「高線量相当画像」と呼ぶ。)の画質を評価するための評価値の計算、高線量相当画像を用いた異常部位の検出、高線量相当画像の高線量画像に対する代替レベルの計算、評価値、検出結果、代替レベルに基づく本撮像の要否判定や本撮像のプロトコルの適否判定のうちの少なくともいずれかを取得する処理を意味する。
【0050】
また、「評価処理に基づく支援情報(以下、単に「支援情報」と呼ぶ。)」とは、画像診断におけるワークフローの最適化を支援するための情報であり、評価処理によって取得された情報(評価情報)、評価情報に基づく本撮像の要否判定の結果、評価情報に基づく本撮像のプロトコルの修正案、評価情報に基づく本撮像のプロトコルの代替案のうちの少なくとも一つを含む情報である。
【0051】
以下、情報生成機能150eによって実行される評価処理、支援情報生成処理について、いくつかの具体例を挙げて説明する。
【0052】
例えば、処理回路150は、情報生成機能150eにより、高線量相当再構成画像に関する統計値、画質評価関数を用いた評価を実行する。例えば、処理回路150は、情報生成機能150eにより、高線量相当画像上に設定された関心領域(複数であってもよい)についての統計値、画質評価関数を計算する。ここで、統計値とは、例えばSD値等であり、画質評価関数とは、例えばコントラスト比、空間分解能、MTF(Modulation Transfer Function)、SSP(Slice Sensitivity Function)等である。また、処理回路150は、情報生成機能150eにより、評価値としての統計値、画質評価関数に基づいて、本撮像の要否判定、本撮像のプロトコルの適否判定を実行し、その判定結果及び根拠となる評価値を含む支援情報を生成する。
【0053】
なお、高線量相当画像への関心領域の設定は、計測ツール(後述)を用いてマニュアル操作によって実行してもよいし、領域分割処理(セグメンテーション)、や解剖学的分類処理を用いて部位や臓器を抽出し、診断目的に応じて自動的に設定するようにしてもよい。
【0054】
また、処理回路150は、情報生成機能150eにより、高線量相当画像を入力し、当該画像の全体領域又は部分的な領域についての統計値、画質評価関数を出力する。なお、このような情報生成機能150eを備えたAIモデルは、例えば、高線量相当画像を入力データとし、統計値、画質評価関数を教師データとするトレーニングデータを用いた学習により実現することができる。また、入力データとしての高線量相当画像は、画像全体を入力とし、統計値、画質評価関数の計算対象とする関心領域の設定も含めたAIモデルであってもよいし、マニュアル操作又は自動的に設定された関心領域内の画素を入力とするAIモデルであってもよい。
【0055】
また、処理回路150は、情報生成機能150eにより、高線量相当画像を入力として、病変等の異常部位が存在するか否かを検出する。処理回路150は、情報生成機能150eにより、異常部位を検出した場合には、既に設定された撮像プロトコルが検出された異常部位を診断するのに適切であるか否かを判定する(撮像プロトコルの適否判定)。処理回路150は、情報生成機能150eにより、既に設定された撮像プロトコルが適切でないと判定した場合には、検出された異常部位の精査に必要な撮像プロトコルの修正案、撮像プロトコルの代替案を含む支援情報を生成する。
【0056】
なお、この様な異常部位の検出を実行するAIモデルは、例えば、入力データとしての複数の画像と、画像毎の検出結果としての異常部位領域を教師データとするトレーニングデータを用いた学習により実現することができる。また、撮像プロトコルの適否判定を実行するAIモデルは、入力データとしての異常部位に関する情報と撮像プロトコルとの複数の組合せと、対応する異常部位の精査に必要な撮像プロトコル(複数であっても良い)を教師データとするトレーニングデータを用いた学習により実現することができる。なお、撮像プロトコルの適否判定は、AIモデルに限らず、テーブルを用いた判定処理であってもよい。
【0057】
また、処理回路150は、情報生成機能150eにより、高線量画像に対する高線量相当投影データ又は高線量相当再構成画像データの代替可能レベルを取得する。処理回路150は、情報生成機能150eにより、取得された代替可能レベルに基づいて、本撮像の実施の適否を判定する。
【0058】
なお、この様な代替可能レベルを取得するためのAIモデルは、例えば、高線量相当投影データと高線量投影データとの複数の組合せ、又は高線量相当再構成画像データと高線量再構成画像データとの複数の組合せを入力データとし、代替可能レベル(例えばレベル1~5の5段階)を教師データとするトレーニングデータを用いた学習により実現することができる。また、代替可能レベルに基づく本撮像実施の適否は、AIモデルを用いても良いし、例えばテーブルを用いた判定処理によって実現するようにしてもよい。
【0059】
また、処理回路150は、情報生成機能150eにより、高線量相当投影データ、又は高線量相当再構成画像データに基づいて、本撮像において推奨する撮像条件、再構成条件を含む支援情報を生成する。
【0060】
なお、この様な本撮像において推奨する撮像条件、再構成条件を取得するためのAIモデルは、例えば、高線量相当投影データ又は高線量相当再構成画像データと、ユーザが望むSD値とを入力データとし、入力データとしてのSD値を実現するために本撮像において必要とされる撮像条件、再構成条件を教師データとするトレーニングデータを用いた学習により実現することができる。また、例えば、高線量相当データと高線量データ(本撮像において高線量で実際に取得された投影データ又は再構成画像データ)されたとの組み合わせを入力データとし、入力データとしての高線量データの画質を実現するために本撮像において必要とされる撮像条件、再構成条件を教師データとするトレーニングデータを用いた学習により実現することができる。さらに、入力データとして、さらに診断部位を加えるようにしてもよい。
【0061】
次に、実施形態に係る医用情報処理装置100が実行する評価処理、支援情報の生成処理について説明する。
【0062】
図5は、評価処理、支援情報の生成処理の流れを示したフローチャートである。
【0063】
図5に示す様に、まず、処理回路150は、制御機能150aにより、患者情報、撮像プロトコル等の入力の入力を受け付ける(ステップS1)。ここでは、入力インターフェース43を介して、撮像プロトコルとして診断部位(例えば頭部、胸部等)、位置決め撮像及び本撮像における撮像条件、造影方法、再構成条件、画像表示方法等が入力される。
【0064】
次に、処理回路150は、制御機能150aにより、低線量による位置決め撮像を実行し、低線量投影データを取得する(ステップS2)。
【0065】
次に、処理回路150は、データ生成機能150dにより、低線量投影データを用いて、高線量相当画像を生成する(ステップS3)。
【0066】
図6図7は、ステップS3における高線量相当画像の生成処理を説明するための図である。図6に示す様に、処理回路150は、データ生成機能150dにより、低線量投影データを入力して高線量相当投影データを生成し出力する。処理回路150は、再構成処理機能150cにより、高線量相当投影データから高線量相当再構成画像データを生成し出力する。
【0067】
また、図7に示す様に、処理回路150は、再構成処理機能150cにより、低線量投影データから低線量相当再構成画像データを生成し出力する。処理回路150は、データ生成機能150dにより、低線量相当再構成画像データを入力として高線量相当再構成画像データを生成し出力する。
【0068】
また、図3に示す様に、処理回路150は、データ生成機能150dにより、低線量投影データを入力して高線量相当再構成画像データを生成し出力する。
【0069】
次に、処理回路150は、情報生成機能150eにより、評価処理を実行する(ステップS4)。この評価処理により、上述した様に、例えば高線量相当画像の画質の評価値計算、高線量相当画像を用いた異常部位の検出、高線量相当画像の高線量画像に対する代替レベルの計算、評価値、検出結果、代替レベルに基づく本撮像の要否判定や本撮像のプロトコルの適否判定等が実行される。
【0070】
次に、処理回路150は、情報生成機能150eにより、評価処理に基づく支援情報を生成する(ステップS5)。この支援情報生成処理により、上述した様に、例えば評価処理によって取得された評価情報、評価情報に基づく本撮像の要否判定の結果、評価情報に基づく本撮像のプロトコルの修正案、評価情報に基づく本撮像のプロトコルの代替案等を含む支援情報が生成される。
【0071】
次に、処理回路150は、制御機能150aにより、高線量相当画像、支援情報等をディスプレイ42に表示させる(ステップS6)。
【0072】
図8は、ディスプレイ42に表示された支援情報、高線量相当画像等の表示例を示した図である。図8に示した様に、ディスプレイ42には、高線量相当画像50、SD値、コントラスト比、空間分解能を含む支援情報52が表示されている。また、高線量相当画像と切り替えて、又は高線量相当画像と並列して、低線量投影データを再構成して得られる画像(低線量再構成画像)を表示することもできる。ユーザは、表示された高線量相当画像50、支援情報52等を観察することで、本撮像の要否、既に設定された撮像プロトコルの適否を検討し、判定することができる。
【0073】
また、処理回路150は、制御機能150aにより、必要に応じて、関心領域を設定するためのGUIである計測ツール51をディスプレイ42に表示させる。評価処理において関心領域をマニュアル設定する場合、ユーザは、入力インターフェース43を介して計測ツール51を操作し、高線量相当画像50上の所望の位置に関心領域を所望の数だけ設定することができる。また、計測ツール51を用いて関心領域を設定した場合、当該関心領域に対応する支援情報52が自動的に設定されることになる。
【0074】
また、処理回路150は、制御機能150aにより、支援情報に基づく制御を実行するためGUIとして、撮像範囲変更ツール53、54、後続の撮像(例えば本撮像)のスキップを指示するためのスキップ指示ボタン55、撮像条件や再構成条件に含まれる各種パラメータの調整を指示するためのパラメータ調整ボタン56、後続の撮像の実行を指示するための実行指示ボタン57を、ディスプレイ42に表示させる。
【0075】
例えば、ユーザは、表示された高線量相当画像50、支援情報52を観察して検討した結果、本撮像をスキップさせると判断した場合には、スキップ指示ボタン55を押すことで、ワークフローに含めた本撮像をスキップすることができる。また、ユーザは、表示された高線量相当画像50、支援情報52を観察して検討した結果、撮像条件、撮像範囲を変更すべきと判断した場合、或いは別途支援情報により推奨する撮像条件が提示された場合には、撮像範囲変更ツール53、54、パラメータ調整ボタン56を介した入力を実行することで、既に設定した撮像範囲、撮像条件を変更することができる。さらに、ユーザは、表示された高線量相当画像50、支援情報52を観察して検討した結果、特定の範囲のみの本撮像が必要であると判定した場合には、高線量相当画像に対して画質が不足している範囲を本撮像において設定すべき撮像範囲として、撮像範囲変更ツール53、54を用いて設定することができる。
【0076】
なお、処理回路150は、制御機能150aにより、支援情報に基づく制御を実行するためGUIを表示する場合、装置側が推奨する制御に対応するボタン等を強調表示するようにしてもよい。例えば、支援情報として「本撮像必要なし」との判定結果を含む場合には、推奨する制御としてスキップ指示ボタン55を強調表示する。ユーザは、強調表示されたボタンに対応する制御が推奨されていると容易に把握することができる。
【0077】
次に、処理回路150は、制御機能150aにより、ユーザによって撮像プロトコルの変更が指示されたか否かを判定する(ステップS7)。処理回路150は、制御機能150aにより、ユーザによって撮像プロトコルの変更が指示されない場合には(ステップS7のNo)、ステップS1において設定された撮像プロトコルを変更することなしに、本撮像等の後続の撮像処理を実行する(ステップS8)。
【0078】
一方、処理回路150は、制御機能150aにより、ユーザによって撮像プロトコルの変更が指示された場合には(ステップS7のYes)、入力されたユーザからの指示に基づいて撮像プロトコルを変更する(ステップS9)。処理回路150は、制御機能150aにより、変更後の撮像プロトコルに従って、X線CT装置1の撮像に関する動作を制御する(ステップS10)。
【0079】
例えば、ステップS9において「本撮像をスキップ」として撮像プロトコルが変更された場合には、処理回路150は、制御機能150aにより、本撮像をスキップする。また、例えば、ステップS9において「撮像条件の変更」により撮像プロトコルが変更された場合には、処理回路150は、制御機能150aにより、変更後の撮像条件に従って本撮像を実行する。
【0080】
また、例えば、相当高線量画像の画質を空間的に評価し、規準に達していない領域についてのみ本撮像が実行されるように、撮像範囲を変更することができる。
【0081】
以上説明した様に、本実施形態に係る医用情報処理装置100は、データ生成部としてのデータ生成機能150dと、情報生成部としての情報生成機能150eと、制御部としての制御機能150aとを備える。データ生成機能150dは、例えば、第1の撮像(例えば、位置決め撮像)において取得された第1のデータとしての位置決め撮像に基づいて、第1の撮像とは撮像条件が異なる撮像により得られるデータに相当する第2のデータ(例えば、高線量相当投影データ又は高線量相当再構成画像データ)を生成する。情報生成機能150eは、第2のデータの質に基づいて、第1の撮像の後に実行予定であり、第1の撮像とは撮像条件が異なる第2の撮像に関する見直しを支援するための支援情報を生成する。例えば、情報生成機能150eは、高線量相当投影データ又は高線量相当再構成画像データを用いた評価処理を実行し、評価処理に基づいて、撮像プロトコルを含むワークフローの見直しを支援するための支援情報を生成する。制御機能150aは、支援情報を、第2の撮像の実行前に、表示部としてのディスプレイ42に表示させる。
【0082】
評価処理においては、高線量相当画像等の画質を評価するための評価値の計算、高線量相当画像を用いた異常部位の検出、高線量相当画像の高線量画像に対する代替レベルの計算、評価値、検出結果、代替レベルに基づく本撮像の要否判定や本撮像のプロトコルの適否判定等が実行される。また、評価処理に基づく支援情報として、評価処理によって取得された評価情報、評価情報に基づく本撮像の要否判定の結果、評価情報に基づく本撮像のプロトコルの修正案、評価情報に基づく本撮像のプロトコルの代替案等が生成される。
【0083】
ユーザは、高線量相当画像という客観的な指標に基づく支援情報により、既に設定した撮像プロトコルが適切か否かを判定することができる。また、例えば高線量相当画像が十分な画質で診断可能レベルにある場合には、本撮像高線量撮像の省略が可能である。また、例えば高線量相当画像が十分な画質で診断可能レベルにない場合には、支援情報に基づいて、撮像条件、再構成条件、撮像範囲等のパラメータの再調整を行うことで、より最適な条件での高線量撮像が可能となる。さらに、検査開始時に想定しておらず、低線量画像のみでは判別できなかった病変などが高線量相当再構成画像から発見できた場合、撮像プロトコルの代替や追加を検討することが可能となる。
【0084】
従って、低線量データ(位置決め撮像において低線量で実際に取得された投影データ又は再構成画像データ)から生成された高線量相当画像という客観的な指標を用いて、高線量撮像の有無の判断やパラメータ再調整、撮像プロトコルの代替・追加を統合的且つ簡易に行う方法を実現でき、画像診断に関するワークフローを見直す技術を確立することができる。その結果、被曝低減、検査時間短縮、患者負荷軽減を実現することができる。
【0085】
(変形例1)
上記実施形態においては、支援情報を表示した後、ユーザから明示的な撮像プロトコルの変更が実行された場合にのみ、変更後の撮像プロトコルに従って撮像に関する制御を行った。これに対し、処理回路150は、制御機能150aにより、生成された支援情報に含まれる判定結果に基づいて、本撮像のスキップ等を自動的に行うようにしてもよい。
【0086】
(変形例2)
上記実施形態においては、高線量相当画像等を本撮像実行の要否、撮像プロトコルの適否等の判定基準として用いる場合を例示した。これに対し、例えば、処理回路150は、再構成処理機能150cにより、高線量相当画像等をサブトラクション処理の非造影画像等として利用し、高線量相当サブトラクション画像等を生成するようにしてもよい。また、例えば、処理回路150は、再構成処理機能150cにより、高線量相当画像等をデュアルエナジー撮像における一方のエナジーに対応する画像等として利用し、高線量相当デュアルエナジー画像等を生成するようにしてもよい。
【0087】
(変形例3)
上記実施形態において説明した医用情報処理装置100の適用は、X線CT装置1を用いた画像診断に限定されず、例えばPCT-CTシステム、アンギオ-CTシステム、磁気共鳴イメージング装置を用いた画像診断においても適用することができる。
例えば上記実施形態に係る医用情報処理装置100をPCT-CTシステム、アンギオ-CTシステムに適用した場合、X線CT装置を用いる撮像処理において、高線量相当画像等の客観的な指標に基づいて、本撮像実行の要否、撮像プロトコルの適否等を判定することができる。
【0088】
また、例えば上記実施形態に係る医用情報処理装置100を磁気共鳴イメージング装置に適用した場合、例えば、本撮像に先立って実行されるプリスキャン(事前撮像)において取得された感度マップやロケーターを用いて、上記実施形態の高線量相当画像に対応するものとして、本撮像によって取得されるMRデータ又は画像データに相当するデータ(本撮像相当データ)を生成する。生成された本撮像相当データを客観的な指標により、上記実施形態と同様の効果を実現することができる。
【0089】
(変形例4)
上記実施形態においては、高線量相当画像等を本撮像実行の要否、撮像プロトコルの適否等の判定基準として用いる場合を例示した。これに対し、これから本撮像の撮像条件等を設定する際の基準として高線量相当データを用いるようにしてもよい。
【0090】
例えば、肺がんスクリーニング検査において、低線量での位置決め撮像を実行し低線量データを取得する。処理回路150は、データ生成機能150dにより、取得した低線量データから高線量相当データを生成する。処理回路150は、情報生成機能150eにより、高線量相当データを用いて異常部位の検出を行う。処理回路150は、情報生成機能150eにより、異常部位を検出した場合には、高線量相当データを用いて評価処理を実行し、得られた評価結果に基づいて、当該異常部位についての本撮像における最適な撮像条件、撮像範囲、再構成条件のうちの少なくとも一つを含む支援情報を生成する。
【0091】
(変形例5)
上記実施形態においては、X線CT装置1が医用情報処理装置100としての機能を備える場合を例示した。これに対し、X線CT装置1と通信可能な医用情報処理装置100を医用ワークステーションやパーソナルコンピュータ等により実現するようにしてもよい。この様な変形例1に係る医用情報処理装置100は、例えばX線CT装置1により取得されたデータをリアルタイムに受け取り、これを用いて上述した評価処理、支援情報生成処理を実行する。生成された支援情報は、ディスプレイ42やX線CT装置1のモニタにリアルタイムで表示される。
【0092】
(変形例6)
生データの質を評価するために、生データを直接的に評価しなくても良い。例えば、生データを用いて再構成された画像データの質を評価することで、生データを間接的に評価することが可能である。また、画像データの質を評価するために、画像データを直接的に評価しなくても良い。例えば、画像データの基となった生データの質を評価することで、画像データを間接的に評価することが可能である。
【0093】
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、客観的な指標により、画像診断に関するワークフローを見直す技術を確立することができる。
【0094】
また、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
1 X線CT装置
10 架台装置
11 X線管
12 X線検出器
13 回転フレーム
14 X線高電圧装置
15 制御装置
16 ウェッジ
17 コリメータ
18 DAS(Data Acquisition System)
30 寝台装置
31 基台
32 寝台駆動装置
33 天板
34 支持フレーム
40 コンソール装置
41 メモリ
42 ディスプレイ
43 入力インターフェース
150 処理回路
150a 制御機能
150b 前処理機能
150c 再構成処理機能
150d データ生成機能
150e 情報生成機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8