(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】時計用ベゼル
(51)【国際特許分類】
G04B 19/28 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
G04B19/28 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020047249
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2023-02-21
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バーロン, ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】カイオール, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】スラン, ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ミンコーン, ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ニュエン, ミシェル
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-102048(JP,U)
【文献】特表2018-526652(JP,A)
【文献】特開2013-145234(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0193210(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 19/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型時計ケース用の小型時計部品(1
)であって、軸(A)、第一リング(10)、第二リング(11)及び前記第一及び第二リングを接続する連結要素(12)を含み、
前記連結要素は
、弾性を有し
前記第一リングと前記第二リングが直接接触しないように第一及び第二リングの間に
挿入され、
第一リングは、前記軸(A)に平行な方向から見たときに前記第二リングを覆い、前記軸(A)と垂直な方向から見たときに前記第二リングを覆うよう配置され、
前記第一リング及びまたは前記第二リングは小型時計ケース(200)の残りの部
分に保持するための要素(31)を含む、時計部品。
【請求項2】
前記時計部品は小型時計ケース(200)の残りの部
分に対して、
前記軸(A)の周りを回転可能なように設置される、請求項1に記載の小型時計部品。
【請求項3】
前記第一リング(10)及び前記連結要素(12)は、化学結合による付着及びまたは
係合部(112)によって、互いに保持または固定され、及びまたは
前記第二リング(11)及び前記連結要素(12)は、化学結合による付着及びまたは
係合部によって、互いに固定される、
請求項1または2に記載の小型時計部品。
【請求項4】
前記
係合部(102、112)は、少なくともピン及びまたは少なくともくさび及びまたは少なくともバヨネット及びまたは少なくとも溝及びまたは穴及びまたは少なくともロッド及びまたは少なくともボス及びまたは螺旋形状を有する要素を含む、請求項3に記載の小型時計部品。
【請求項5】
前記第一リング(10)及びまたは前記第二リング(11)は、前記連結要素(12)との境界面にテクスチャー加工を施される、請求項1から4のいずれか一項に記載の小型時計部品。
【請求項6】
前記第一リング(10)及びまたは前記第二リング(11)は、前記連結要素との境界面が、少なくとも部分的に結合剤
層で被覆される、請求項1から5のいずれか一項に記載の小型時計部品。
【請求項7】
前記第一リング(10)は前記第二リング(11)に向かって延びる第一縁部(103)を含み、及びまたは前記第二リング(11)は前記第一リング(10)に向かって延びる第二縁部(113)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の小型時計部品。
【請求項8】
前記連結要素は、エラストマーまたはポリマーからなり
、また
は天然または合成ゴムまたはフッ素エラストマーからなり、またはエラストマー材料
と他の材料の混合物を含むEPDMゴムまたはニトリルまたは共重合体からなり、またはポリウレタン(PU)またはポリ(3-カプロラクトン)及びスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(PCL/SBS)からなる、請求項1から7のいずれか一項に記載の小型時計部品。
【請求項9】
前記連結要素の体積弾性係数は1GPaと4GPaの
間である、請求項1から8のいずれか一項に記載の小型時計部品。
【請求項10】
前記第一及び第二リングは前記部品の前記軸(A)の周りを回転可能に固定され、及びまたは前記連結要素(12)は少なくとも穴及びまたは少なくともインサートを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の小型時計部品。
【請求項11】
前記連結要素(12)は前記第一リング(10)と前記第二リング(11)との間
に直接形成され、及びまたは前記第一リング(10)が金属製またはセラミック材料製であり及びまたは前記第二リング(11)が金属製またはセラミック材料製である、請求項1から10のいずれか一項に記載の小型時計部品。
【請求項12】
第一リング(10)、第二リング(11)及び前記第一及び第二リングを接続する連結要素(12)を含む
、請求項1から11のいずれか一項に記載の時計部品の製造方法であって、
前記第一リングと前記第二リングを供給し、
前記第一リングと前記第二リングを互いに対し
て配置し、
前記連結要素
を前記第一及び前記第二リングの間に挿入し、
前記連結要素を前記第一リング及びまたは前記第二リングに対し
て固定する、
各ステップを含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の前記製造方法を実施することにより得られた、小型時計部品。
【請求項14】
請求項1から11
のいずれか一項に記載の小型時計部品、または、請求項13に記載の
小型時計部品(1)を含む、小型時計ケース(200)。
【請求項15】
請求項14に記載の小型時計ケース(200)
、または
、請求項1から11
のいずれか一項に記載の小型時計部品、または、請求項1
3に記載の小型時計部品を含む、時計(400
)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型時計部品、特に時計用ベゼルに関する。本発明はまた、このような小型時計部品を含む小型時計ケースに関する。本発明はさらに、このような小型時計部品または小型時計ケースを含む時計に関する。最後に、本発明はこのような小型時計部品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一つまたは二つの方向に回転し、ノッチングを有することがあるベゼルを具備する小型時計ケース装置の実施形態が知られる。ベゼルは、たとえばベゼルリングとベゼルディスクといった、同じ材料または異なる材料からなる複数のパーツからなってよい。このようなベゼルは、弾性復元要素を形成することのできるガスケットなどの保持用要素により、通常は軸方向に保持され、追加の弾性復元手段により軸方向に戻されることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、打ち込みにより互いに固定される二つのベゼルパーツからなるベゼルが記載される。ガスケットと弦巻ばねの形をとる弾性復元手段は、ベゼルが操作された時に認められる感覚を変更することを可能とするため、ベゼルと小型時計の胴との間に相対的な軸方向の遊びを許可する。小型時計の胴とベゼルの間に配置されるこれらの弾性復元手段は、使用者によって加えられた圧力に反応する力を与えるように供され、ベゼルを形成するパーツは遊びの可能性がない状態で互いに固定される。
【0004】
特許文献2には、放射状に変形可能な弾性要素を使って、打ち込みにより互いに固定される二つのベゼルパーツからなるベゼルが記載される。
【0005】
特許出願3は、ねじ止めにより互いに固定される二つのベゼルパーツからなるベゼルが記載される。
【0006】
上記の三つの異なる構造において、二つのベゼルパーツは互いに相対的な自由度を何ら有さない。
【0007】
例えばエポキシド接着剤や両面粘着テープなどの接着剤を使って二つのベゼルパーツを固定する既知の方法もある。しかしながら、これらの接着剤のせん断抵抗はいつも満足のいくものでもなければ、再現可能でもない。さらに、環境変化(気温、気圧、湿度等)に応じた接着剤の挙動は、製品の性能に関連する目標を達成するのに十分に満足な時効硬化処理が行われない。
【0008】
特許文献4は、互いに接する小型時計の胴と装着リングの組立構造を説明する。この組立構造を形成するため、エラストマー要素は小型時計の胴と装着リングの間にオーバーモールドされる。
【0009】
ベゼル等のいくつかの時計部品は、使用者によって操作可能である。それゆえ、これらの部品の操作をしているときに使用者が受ける感覚を最適化することが重要である。
【0010】
ベゼルを回転させる間、使用者によって知覚される間隔は、通常、ベゼルが操作される方法次第であり、特にそこに付与される軸方向の圧力及び配置の方法による。既知の設計において、この感覚は、使用者によって加えられた圧力に対応する力を付与する、小型時計の胴とベゼルの間に配置される弾性復元手段によって実現される。このベゼルを形成する様々なパーツは遊びの余地なく互いに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許出願公開第2624076号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2615507号明細書
【文献】スイス特許出願公開第700299号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0980543号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、従来から知られる時計部品の改良である、小型時計部品、特に時計用ベゼルを提供することにある。特に、本発明は、部品の操作をする際に使用者が受ける知覚を最適化することを可能とする、小型時計部品、特に時計用ベゼルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、小型時計部品が請求項1および13に定義される。
【0014】
時計部品の異なる実施形態が請求項2から11に定義される。
【0015】
本発明によれば、小型時計部品を製造する方法が請求項12に定義される。
【0016】
本発明によれば、小型時計ケースが請求項14に定義される。
【0017】
本発明に係る時計が請求項15に定義される。
【0018】
添付の図面は、本発明に係る時計の実施形態を例として図示する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、時計の実施形態を示す部分断面図である。
【
図2】
図2は、時計のベゼルの第一リングを下から視た図である。
【
図3】
図3は、時計のベゼルの第二リングを上から視た図である。
【
図4】
図4は、時計の実施形態を上から視た図である。
【
図5】
図5は、
図4の面V-Vにおける時計の実施形態を示す部分断面図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る時計の別の実施形態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
時計400の実施形態を、
図1から6を参照して以下に説明する。時計400は、例えば、小型時計または腕時計である。
【0021】
時計400は小型時計ケース200の実施例を含む。
【0022】
時計400及びまたは小型時計ケース200は時計部品1の実施形態を含む。時計部品1は、例えば、時計の使用者による操作が可能な部品、特にベゼルまたはりゅうずである。例えば、この部品は小型時計ケース200の残りの部分または小型時計の胴において軸Aの周りを回転可能に配置される。この部品は、例えばケースの基部周りに位置される回転リングなど、いかなる可動の時計部品の形状であってもよい。特に部品は、例えば時計の調整または巻き上げを実施するため、使用者によって操作され、つまり小型時計ケース200の残りの部分に対して移動される。
【0023】
時計部品1は、軸Aに加えて、第一リング10、第二リング11及び第一及び第二リングを接続する連結要素12を含む。
【0024】
連結要素12は弾性挿入手段であり、第一リングと第二リングの間に配置される。
【0025】
連結要素12は、部品を操作している際に使用者に知覚される感覚を最適化し、かつ二つのリングを組み立てる目的で、第一リングと第二リングの間に挿入され、つまり第一及び第二リングの境界面に配置される。
【0026】
時計部品は小型時計ケース200の残りの部分、例えば小型時計の胴に取り付けられ、特にこの部品が軸方向に保持されるよう、ガスケット3を用いてスナップフィットされる。この目的のため、第一リング及びまたは第二リングは、小型時計ケース200の残りの部分、特に小型時計の胴4に保持するための要素31、もしくは時計ケースの残りの部分、特に小型時計の胴4に支えるための要素31、もしくは時計ケースの残りの部分、特に小型時計の胴4に固定するための要素31を含む。開示される実施形態において、要素31は第二リング11に形成された溝である。この要素31は、時計部品1を時計ケースの残りの部分、特に小型時計の胴4に保持するまたは支えるまたは固定するためのガスケット3に、障害物のように相互作用する。ここにおける保持は、時計部品が軸Aの周りを、小型時計ケースの残りの部分に対して相対的に回転することを許容する。
【0027】
要素31は、他のいかなる形状及びまたはいかなる保持機能を有してもよい。
【0028】
図1は、第一リング10、第二リング11および連結要素12を含む、回転ベゼル1を示す。時計部品はさらに弾性復元手段2によって軸方向に戻される。弾性復元手段2は、例えば、ボールクリックの形状を有してもよい。「ボールクリック」は、例えば、ばね、特に弦巻ばねによって、ボールと相互作用する刻み目の底に向かって弾性的に戻るボールを意味する。
【0029】
第一リングは例えば、装飾的な要素としての役割を有する。第一リングは、例えば
-時間または分の割出などの表示を有する、及びまたは
-把持を許容する
目的を有する、少なくとも二つの部分を含むことが可能である。
【0030】
第一リングはL字型の断面を有してもよい。全体として、第一の円錐台状部分108(軸Aを有する)及び第二の円筒状部分109(軸Aを有する)を有してもよい。第一部分は、例えば、頂部の半角が70°から85°の間であってよい。
【0031】
第一リング10は、前記連結要素12と接することが可能なよう配置される少なくとも一つの第一障害部102を有してもよい。この少なくとも一つの第一障害部102は、ピン及びまたはくさび及びまたはバヨネット要素及びまたは溝及びまたは(例えば蟻溝形状を有する)穴及びまたはロッド及びまたはボス及びまたは螺旋形状(例えばねじ山)を有する要素であってよい。様々な形状の第一障害部102があってよい。
【0032】
第一リング10は既知の製造方法により製造されてよい。第一リング10は、例えば、セラミック、ガラス、複合材、合金またはその他好適な材料製であってよい。第一リング10は部品の可視部分または部品の可視部分の大部分を形成してよい。
【0033】
第二リング11は、例えば、時計部品における機能的役割及びまたは小型時計ケース200の胴4に対して部品を接続する機能的役割を有する。第二リング11は、その機能を提供するのに適したどのような材料からなってもよい。特に、第二リング11は、鋼鉄などの金属または合金からなってもよい。しかしながら、他の材料、特にセラミックまたは複合材を考慮に入れてもよい。
【0034】
第二リング11は実質的に平らな形状を有してよい。
【0035】
第二リング11は、連結要素12と接することができるよう配置された少なくとも一つの第二障害部112を含んでよい。少なくとも一つの第二障害部112は、ピン及びまたはくさび及びまたはバヨネット要素及びまたは溝及びまたは(例えば蟻溝形状を有する)穴及びまたはロッド及びまたはボス及びまたは螺旋形状(例えばねじ山)を有する要素であってよい。様々な形状の第二障害部112があってよい。
【0036】
第一リング10は、部品を軸Aに平行な方向から見たときに第二リング11を覆い、部品を軸Aと垂直な方向から見たときに第二リングを覆うよう配置されるのが好ましく、その結果、装着者には第一リング10を形成する素材のみが見える。
【0037】
第一及び第二リングは、同じ種類であっても別の種類であってもよい。
【0038】
好ましくは、第一リング10と連結要素12は、付着により、化学結合により、及びまたは障害部102により、互いに保持されまたは固定される。
【0039】
好ましくは、第二リング11及び連結要素12は、付着により、化学結合により、及びまたは障害部112により、互いに保持されまたは固定される。
【0040】
そのため、好ましくは、連結要素12は部品1の二つのリング10、11を互いに固定することを可能とする。
【0041】
加えてもしくは代替的に、第一及び第二リングは部品の軸Aの周りを回転可能に固定される。「回転可能に固定」とは、部品が操作される際に使用者に知覚できるような角度的遊びがない、という意味である。
【0042】
連結要素12は、第一リング10の少なくとも一つの第一障害部102と相互作用することが可能な第一機械的結合手段を含んでよく、第一障害部102は機械的結合機能を提供する。
【0043】
加えてもしくは代替的に、連結要素12は、第二リング11の少なくとも一つの第二障害部112と相互作用することが可能な第二機械的結合手段を含んでよい。少なくとも一つの第二障害部112は機械的結合機能を提供する。
【0044】
従って、第二リング11の表面は、連結要素12の挿入により第一リング10の表面に固定されるよう設計される。上述の障害部102、112は第一及び第二リングの固定を補強することを可能とする。有利には、第二リング11の少なくとも一つの第二障害部112は、連結要素12の結合手段と直接的に相互作用し、及びまたは第一リング10の少なくとも一つの第一障害部102は、連結要素12の結合手段と直接的に相互作用する。
【0045】
第一リングは連結要素との境界面にテクスチャー加工を施されてよい。
【0046】
第二リングは連結要素との境界面にテクスチャー加工を施されてよい。
【0047】
このテクスチャー加工またはこれらのテクスチャー加工は、連結要素12が接続されるべき表面の表面積を増加させる及びまたは表面の濡れ性を最適化することを可能とする。「テクスチャー加工」とは、特に、第一及び第二リング10、11の一方及びまたは他方の表面の状態を変更するための表面処理を意味する。
【0048】
原則として、連結要素12の剛性を調整することにより、操作中にかけられる力及びまたは衝撃に対する部品の反応を適応させることができる。
【0049】
従って、連結要素12は有利にはその一部または全部がエラストマーまたはポリマー、特に形状記憶ポリマーからなり、または天然または合成ゴムまたは例えばFKM,FFKMまたはフルオロシリコーンタイプのフッ素エラストマー、またはEPDMゴムまたはニトリルまたはエラストマー材料と他の材料、例えば熱可塑性樹脂(このような混合物は「熱可塑性樹脂エラストマー」の名称でも知られる)の混合を含む共重合体、またはポリウレタン(PU)またはポリ(3-カプロラクトン)及びスチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(PCL/SBS)からなる。
【0050】
特定の変形例によると、ポリマーは混合されてよい。
【0051】
有利には、ポリマーの処方は、使用者に知覚される感覚を最適化するために、部品全体により多いまたはより少ない剛性を与える目的で選択される。ポリマーの処方はさらに、適切な弾性係数、粘性係数及び損失係数を選択された(製品の完全な状態を維持するため)衝撃吸収機能を与えるために重要であってよく、それにより「フィルタ」されるべき動的応力によって受けるエネルギーをより多く消散させることが可能となる。これは部品自体を保護し、時計部品とムーブメントの間の衝撃伝達チェーンの伝達関数を変更することに貢献し、それによりムーブメントに影響を与える加速度を制限する。
【0052】
変形例において、連結要素は射出、鋳造、圧縮または転写により形成されてよい。この形成は通常、使用されるポリマーの性質に左右され、方法におけるパラメータを適合させることにより予想可能な、連結要素の収縮または拡張をもたらす。
【0053】
ポリマーの形成は、例えばオーバーモールドにより、好ましくは第一リング10と第二リング11との間に直接実施される。この変形例によると、ポリマーのオーバーモールドの際に、少なくとも一つの第一障害部102または少なくとも一つの第二障害部112と相互作用することが可能な少なくとも一つの機械的結合手段が形成される。ポリマーにより各障害部の動きが妨げられる。
【0054】
連結要素の体積弾性係数は好ましくは1GPaと4GPaの間、あるいは1.5GPaと3GPaの間または2GPaと2.5GPaの間または1.5GPaと2.5GPaの間である。
【0055】
連結要素12は少なくとも一つの穴及びまたは少なくとも一つのインサートを含んでよい。これにより連結要素12を柔らかくまたは硬くすることができる。この選択肢により、操作の際のトルク伝達を最適化すること、及びまたは衝撃吸収の動的範囲を定めることができる。
【0056】
図6に示す通り、第一リングは、第二リングに向かって、例えば軸Aの方向または実質的にその方向に延びる第一縁部103を含んでよい。この第一縁部103は、例えば、第一リングの内径または内周に形成されている。
【0057】
図6に示す通り、第二リングは、第一リングに向かって、例えば軸Aの方向または実質的にその方向に延びる第二縁部113を含んでよい。この第二縁部113は、例えば、第二リングの内径または内周に形成されている。
【0058】
第二縁部113は、内部端111にあり鋭い角を有さない立ち上がったリップ部であってよい。有利には、第二縁部113は連結要素12の剛性を変更するのに使用されてよい。第二縁部113をさらに立設すると、軸Aに沿う圧力にさらされた際の連結要素12の横方向の拡張が制限されるため、連結要素12の剛性が増加する。第二縁部113はまた、遊び(第二リングに対する第一リングの軸Aに沿った動き)を減らすストッパ(第一リング、特に第一縁部103と接する)として機能してもよい。
【0059】
同じ原理で、それらの形状および位置に応じて、障害部102、112は連結要素12の剛性を変更するのに使用されてもよい。
【0060】
図6の変形例において、内部端101にあり鋭い角を有さない立ち上がった第一縁部103及びまたは内部端111にあり鋭い角を有さない立ちあがった第二縁部113は第一リング10から連結要素12が分離されるのを防ぎ、連結要素12が外部に対して露出することを避けることができる。有利には、第一縁部103は連結要素12の剛性を変更するのに使用することができる。第一縁部103をさらに立設すると、軸Aに沿う圧力にさらされた際の連結要素12の横方向の拡張が制限されるため、連結要素12の剛性が増加する。第一縁部103はまた、遊び(第二リングに対する第一リングの軸Aに沿った動き)を減らすストッパ(第二リング、特に第二縁部113と接する)として機能してもよい。
【0061】
本発明はさらに、第一リング10及び第二リング11を有する時計部品1を組み立てる方法に関し、これらリングは、組み立てられて時計ケースの残りの部分、特に小型時計の胴に対して組み付けられる前に、相対的遊びを有して互いに固定されるよう設計される。
【0062】
有利には、本方法は第一リングと第二リングとの間の位置関係を最適化することを可能とする。
【0063】
以下に記載する実施形態において、組み立て方法は、
-第一及び第二リングを供給するステップと、
-第一リング10と第二リング11を相対的に、特に鋳型内で、配置するステップE1と、
-第一及び第二リングの間に連結要素12を導入、挿入または形成するステップE2と、
-連結要素12を第一リング10及びまたは第二リング11に対して、特に連結要素の重合作用により、固定するステップE3
を含む。
【0064】
この方法は、各リングの表面を準備するための予備ステップE0やトリミングするステップE4等、任意の追加ステップを含んでよい。
【0065】
連結要素12を第一リング10及びまたは第二リング11に固定することにより、これら要素の分離を防ぐことができる。リングの形状に応じ、連結要素12はリングを互いに分離させる可能性のあるいくつかの力、例えば直接牽引、せん断または(例えば一端部から始まり境界面に沿って伝わり異なる要素の素材同士を分離する)切裂に曝される可能性がある。
【0066】
上述した通り、
-第一リング10及び連結要素12;及びまたは
-第二リング11及び連結要素12
を固定するための固定手段は、化学結合、機械的結合手段、機械的組立手段、またはこれらの組み合わせであってよい。
【0067】
実施例1において、連結要素12を導入するまたは連結要素12を形成する第二ステップE2は、オーバーモールドステップを含む。このようなオーバーモールドは、下記の各実施例に比べて数多くの有利点を有する。本実施例によると連結要素12の形成の際の形状的制約、および連結要素12と接するよう配置される第一リング10または第二リング11の機械加工公差を減らすことができ、同時に第一リング10を第二リング11に対して精密に位置決めすることを可能とする。
【0068】
この実施例1において、二つのリングと連結要素12との間の固定は、化学結合のみによってなされる。
【0069】
化学結合の「力」つまり機械的強度は、いくつかの要因によって影響される。一つ目は、例えばポリマー、接着剤材料またはプライマー等の化学結合剤によって濡らされる裏当ての容積に関する。濡れ性が向上すると、二つの材料間の接合が向上し、接着の機会が増大する。例えば、これは各材料の温度及びまたはポリマーまたはプライマーの粘度、及びまたはテクスチャー加工される及びまたはポリマーまたはプライマーと接するよう配置される表面の多孔性の組み合わせの結果であってよい。
【0070】
特定の変形例によると、部品は少なくとも一つの結合剤層、例えばプライマーを含む。このコーティングは、連結要素12が接着される第一リング及びまたは第二リングの表面に塗布される。
【0071】
このように、実施例1の変形例によると、ポリマーと第二リング11及びまたは第一リング10との間の付着はプライマーの存在により向上する。第一プライマーは有利には、第二リング11と連結要素12の間の付着を最適化するため、連結要素12が接着される第二リング11の表面に塗布される。この第一プライマーは、連結要素12と第二リング11の間の接触面の少なくとも一部を覆う。有利には、この表面の全てを覆い、この表面の全体に付着を提供する。第二プライマーは有利には、第一リング10と接着要素12の間の付着を最適化するため、接着要素12が接着される第一リング10の表面に塗布される。第二プライマーは、連結要素12及び第一リング10の間の接触面の少なくとも一部を覆う。有利には、この表面の全てを覆い、この表面の全体に付着を提供する。
【0072】
これらのプライマーは有利には、第二リング及びまたは第一リング及びまたは連結要素の構成材料に基づいて選択される。それらは特に、以下の商品名で知られる下記の製品から選択されてよい:Cilbond(登録商標)、Megum(登録商標)、Thixon(登録商標)、Chemlok(登録商標)及びChemosil(登録商標)。
【0073】
ある変形例によると、同じプライマーが第一リング10と第二リング11に使用される。
【0074】
ある変形例によると、連結要素12が接着されない表面に対して撥水表面処理を行ってもよい。
【0075】
実施例1の別の変形例によると、第一リング10及びまたは第二リング11の表面は、連結要素との化学結合が形成される表面に対して機械式マイクロアンカーを生成させ及びまたは表面の表面積を増加させ及びまたは表面の濡れ性を最適化するため、テクスチャー加工を施される。このテクスチャー加工は、機械的手段(サンドブラスティングまたは切削加工)またはその他の手段(レーザストラクチャリング)またはその他当業者に既知の手段により実施されてよい。
【0076】
実施例1のさらに別の変形例によると、第一リング10及びまたは第二リング11は、上述した通り、少なくとも一つの第一または一つの第二障害部102、112を含んでよい。この場合、第一及びまたは第二リング10、11の成形により形成される少なくとも一つの第一または第二障害部102、112の中及びまたは周辺に、ポリマーが注入されてその後重合される。
【0077】
第一リング10と第二リング11を互いに対して相対的に配置する第一ステップE1において、第一及び第二リング10、11は有利には、部品1に機械力が発揮されていない際の相対的位置に対応する位置において、射出成形金型内に配置される。各リングは、特にピン、機械的構造またはリング10及び11を鋳型内で配置することを可能とするその他の要素によって位置に保持される。鋳型内の二つのリングの間に残る空間は、連結要素12によって充実される、収縮の余地を有する容量を形成する。部品間の空間は鋳型内の支持面によって規定されてもよい。連結要素12の寸法は、鋳型の残りの空間によってその後規定される。
【0078】
連結要素12を導入するまたは連結要素12を形成する第二ステップE2において、二つのリングの間の空間を充填するために、好ましくはポリマーが注入される。
【0079】
実施例2においては、第一及び第二ステップが同時に実施され、連結要素を各リングに固定するステップは機械的であっても化学的であってもよいが、完成品同士に対して実施される(連結要素が固定ステップE3の間に形成される実施例1とは異なる)。
【0080】
この実施例2において、部品は、組み立てられる三つの固体パーツ(第一リング、第二リング及び連結要素)からなる。連結要素は好ましくは、射出、鋳造または圧縮または前もって定められたまたは予め定義された形状を有する少なくとも一つの連結要素を製造するその他の既知の製造方法によって前もって形成されたポリマーである。二つのリング及び連結要素は、連結要素に存在し、第一リングの少なくとも一つの第一障害部102及びまたは第二リングの少なくとも一つの第二障害部112と相互作用することが可能な機械的結合手段により、互いに固定される(ステップE3)。この固定は、連結要素の弾性変形及びまたは結合手段の形状により許可されてよい。特にこの固定は、三つの要素が機械的に相互に固定されるよう、第一リングを連結要素に留める及びまたは第二リングを連結要素に留めることにより実施されてよい。
【0081】
実施例2の変形例によると、化学結合剤、特に接着剤が、連結要素と第一リングの間において互いに接するよう設計された一部または全部の面に加えられてよい。同様に、化学結合剤、特に接着剤が、連結要素と第二リングの間において互いに接するよう設計された一部または全部の面に加えられてよい。この例によると、ステップE3は化学結合剤を用いて三つのパーツ(第一リング、連結要素および第二リング)を組み立てることからなる。
【0082】
実施例2の別の変形例によると、機械的結合手段及び化学結合剤は共に、第一リングを連結要素に、及びまたは一方で、第二リングを連結要素に、組み付けるために使用されてよい。
【0083】
変形例や、実施例や、方法の実施態様にかかわらず、特にオーバーモールドによって導入された場合または実施例2によって圧縮された場合、連結要素が過剰である場合がある。この場合、製造方法は、過剰な材料を取り除くために実施される、部品をトリミングするステップを含んでよい。このステップはどのような既知の技術を使用して実施されてもよい。
【0084】
プライマーが使用された方法の変形例の実施においては、材料を除去または取り除くこのステップは、固定構造に含まれない第一リングと第二リングの表面にプライマーが存在しないことによって容易となる。ポリマーがプライマーに被覆された表面に強固に接着されている場合、バリはプライマーを有さない表面のみと接し、そのためこのバリは固定されることを意図されない表面に損傷を与えるリスクなく、容易に取り除くことができる。
【0085】
本方法の変形例の実施において、バリが存在する可能性があり連結要素12が接着されていない表面は、ポリマーの付着を防止する撥水表面加工によって保護されてもよい。この表面加工は一時的であっても最終的であってもよい。
【0086】
上述した方法は時計部品を製造するため、特にベゼルを製造するために使用してよい。結果として得られる部品は一体部品の外観を有する。好ましくは、異なる要素同士は、連結要素を犠牲にすることのみにより分離可能である。
【0087】
(例えばねじ止め、リベット止めまたは挿入により)強固に組み立てられた二つのリングからなる従来の回転ベゼルと比較すると、リベットとねじは通常見える状態にあり部品の外観の質を落とす。さらに、ねじは緩まる傾向にある。さらに、組立品の剛性は使用者の知覚を変更するものではない。
【0088】
強固な接着剤を使って付着により組み立てられた二つのリングからなる従来の回転ベゼルと比較すると、本発明によって製造されたベゼルの環境条件に対する耐性は、接着剤が通常ポリマーより弱い耐性を有することから、向上される。さらに、衝撃の影響による強固な接着剤の破損または分離の可能性を否定することができないが、ポリマーは弾性を有するため、衝撃のうちの一部を吸収可能であり、そのため組立品は、進行性劣化に対し
てより敏感でない。加えて、組立品の剛性は使用者の知覚を変更するものではない。
【0089】
従って、ねじや接着剤の使用と比較して、部品のリング同士の固定や相互作用の品質及び頑健性を保証しつつ、使用者に伝わる感覚が向上される。さらに、本発明は、時計部品の外観に関して高いレベルの多様性を提供する。
【0090】
上述した部品は、以下に列挙する有利点を有する。
【0091】
本明細書に提案される解決法の結果、第一及び第二リングは互いに継続して接することなく組み立てられる。さらに、それらが連結要素により組み立てられた後も、互いに相対的に移動可能である。第一及び第二リングの間の相対的移動の程度及び方向は、連結要素の剛性及びそれらがある場合はストッパや障害部によって規定される。
【0092】
ベゼルを形成する異なる部品が互いに遊びを有することなく固定され、使用者によってかけられる圧力に対する反応として提供される力を与える小型時計の胴及びベゼルの間に配置される弾性復元手段を用いて、使用者に対して感覚が伝わるよう提供される既知の設計方法と比較して、特に、本発明に係る解決方法の結果として、ベゼルを形成する異なるリングは相対的に僅かに移動可能である。これは、連結要素12の剛性及び減衰の基準に基づく二つのリングの間に定義された相対的遊びが、可動部品を操作する際の感覚を最適化することができるからである。
【0093】
反対に、ベゼルの二つのリングが互いに強固に接続される既知の従来例によると、操作の際の感覚は一体型ベゼルによって知覚されるものと似ている。
【0094】
従来の組立モードによると、リング同士の間に遊びや限定的遊びを有しないため、衝撃に対する実質的で具体的な保護は何ら提供されない。反対に、上述の部品のおかげで、連結要素の剛性によって規定される振幅数範囲において、部品に加えられる全ての衝撃は吸収され、振動が減衰される。言い換えれば、上述した連結要素は、振幅ダンパー及びまたは衝撃吸収材としての役割を果たすことにより、部品を保護することができる。連結要素はさらに、他の機能に加えて、衝撃吸収及びまたは振動減衰機能を提供することにより、第一リングの機械的保護を提供することもできる。ベゼルがいくつかの組み立てられた部品からなる従来の解決方法と比較して、連結要素がリングに対してかける圧力は非常に少ない。本発明に係る組立モードは、セラミックリングを金属製リングに対して組み付けるのに特に有利である。
【0095】
好ましくは、上述した連結要素は、有利には、部品の外観に影響を与えることなく、腐食や汚れの入り込みといった問題を生じる可能性のある隙間がないことを保証しつつ、部品の二つのリングを互いに固定することを可能とする。
【符号の説明】
【0096】
1 時計部品
4 胴
10 第一リング
11 第二リング
12 連結要素
31 要素
102 障害部
103 第一縁部
112 障害部
113 第二縁部
200 小型時計ケース
400 時計