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特許7583534可動部品固定用接着剤組成物、光学部品、電子部品、及び、電子モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】可動部品固定用接着剤組成物、光学部品、電子部品、及び、電子モジュール
(51)【国際特許分類】
   C09J 163/00 20060101AFI20241107BHJP
   C09J 4/06 20060101ALI20241107BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241107BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J4/06
C09J11/06
C09J11/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020093281
(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公開番号】P2020200451
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019107895
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】林 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】河田 晋治
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/035791(WO,A1)
【文献】特表2015-507660(JP,A)
【文献】特開2005-344112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と、光ラジカル重合開始剤と、熱エポキシ硬化剤とを含有し、
前記硬化性樹脂は、エポキシ基を有さないラジカル重合性化合物と、ラジカル重合性基を有さないエポキシ化合物と、エポキシ基とラジカル重合性基とを有する化合物とを含み、
前記エポキシ基を有さないラジカル重合性化合物は、1分子中にビニル基を1つ有する化合物を含み、
前記硬化性樹脂100重量部中における前記エポキシ基を有さないラジカル重合性化合物と前記エポキシ基とラジカル重合性基とを有する化合物との合計の含有量が45重量部以上90重量部以下であり、
前記熱エポキシ硬化剤は、開始領域温度の最も低い値が80℃以下である熱エポキシ硬化剤を含む
ことを特徴とする光学部品又は電子部品固定用接着剤組成物。
【請求項2】
前記エポキシ基を有さないラジカル重合性化合物は、1分子中にビニル基を1つ有する環状アミド化合物を含む請求項記載の光学部品又は電子部品固定用接着剤組成物。
【請求項3】
前記1分子中にビニル基を1つ有する環状アミド化合物は、N-ビニル-2-ピロリドン及び/又はN-ビニル-ε-カプロラクタムである請求項記載の光学部品又は電子部品固定用接着剤組成物。
【請求項4】
前記開始領域温度の最も低い値が80℃以下である熱エポキシ硬化剤は、イミダゾール系硬化剤を含む請求項1、2又は3記載の光学部品又は電子部品固定用接着剤組成物。
【請求項5】
充填剤を含有する請求項1、2、3又は4記載の光学部品又は電子部品固定用接着剤組成物。
【請求項6】
前記充填剤は、表面がメチル処理されたシリカを含む請求項記載の光学部品又は電子部品固定用接着剤組成物。
【請求項7】
前記充填剤の含有量が、前記硬化性樹脂100重量部に対して、5重量部以上50重量部以下である請求項5又は6記載の光学部品又は電子部品固定用接着剤組成物。
【請求項8】
遮光剤を含有する請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の光学部品又は電子部品固定用接着剤組成物。
【請求項9】
チクソトロピックインデックスが3.0以上7.0以下である請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載の光学部品又は電子部品固定用接着剤組成物。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の光学部品又は電子部品固定用接着剤組成物の硬化物を有する光学部品。
【請求項11】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の光学部品又は電子部品固定用接着剤組成物の硬化物を有する電子部品。
【請求項12】
請求項10記載の光学部品又は請求項11記載の電子部品を有する電子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化時の接着性、低温での熱硬化性、及び、低硬化収縮性に優れる可動部品固定用接着剤組成物に関する。また、本発明は、該可動部品固定用接着剤組成物を用いてなる光学部品、電子部品、及び、電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)等を撮像素子としたカメラモジュール等における可動部品の固定には、光照射及び/又は加熱により硬化する接着剤組成物が用いられている。
このような接着剤組成物として、例えば、特許文献1には、特定のシリコーン系化合物を組み合わせたシリコーン組成物が開示されており、特許文献2には、アミノグリシジルエーテル、アルケニル基を有するフェノール系硬化剤及びトリアジン骨格を有するチオール化合物を組み合わせた液状エポキシ樹脂組成物が開示されている。しかしながら、従来の接着剤組成物は、仮固定時の接着性に劣るものであったり、硬化収縮性が高かったりすることで、可動部品に位置ずれを生じさせることがあるという問題があった。
また、光学部品や電子部品に対するダメージを低減するため、接着剤組成物には低温での加熱により充分に硬化させることができるものが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-057755号公報
【文献】特開2014-031461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、光硬化時の接着性、低温での熱硬化性、及び、低硬化収縮性に優れる可動部品固定用接着剤組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該可動部品固定用接着剤組成物を用いてなる光学部品、電子部品、及び、電子モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、硬化性樹脂と、光重合開始剤と、熱硬化剤とを含有し、上記硬化性樹脂は、エポキシ基を有さないラジカル重合性化合物と、ラジカル重合性基を有さないエポキシ化合物と、エポキシ基とラジカル重合性基とを有する化合物とを含み、上記熱硬化剤は、開始領域温度の最も低い値が80℃以下である熱硬化剤を含む可動部品固定用接着剤組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0006】
本発明者らは、硬化性樹脂として、エポキシ基を有さないラジカル重合性化合物と、ラジカル重合性基を有さないエポキシ化合物と、エポキシ基とラジカル重合性基とを有する化合物とを組み合わせて用い、かつ、熱硬化剤として、開始領域温度の最も低い値が80℃以下であるものを用いることを検討した。その結果、光硬化時の接着性、低温での熱硬化性、及び、低硬化収縮性に優れる可動部品固定用接着剤組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、エポキシ基を有さないラジカル重合性化合物と、ラジカル重合性基を有さないエポキシ化合物と、エポキシ基とラジカル重合性基とを有する化合物とを含む。
【0008】
上記エポキシ基を有さないラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物が好ましく、ビニル化合物、(メタ)アクリル化合物がより好ましい。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリル化合物」は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味し、上記「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0009】
上記エポキシ基を有さないラジカル重合性化合物は、上記ビニル化合物として、1分子中にビニル基を1つ有する化合物を含むことが好ましく、1分子中にビニル基を1つ有する環状アミド化合物を含むことがより好ましい。
上記1分子中にビニル基を1つ有する環状アミド化合物を含むことにより、得られる可動部品固定用接着剤組成物が光硬化時の接着性により優れるものとなり、可動部品の位置ずれを防止する効果により優れるものとなる。
【0010】
上記1分子中にビニル基を1つ有する環状アミド化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物等が挙げられる。
【0011】
【化1】
【0012】
式(1)中、nは、2~6の整数を表す。
【0013】
上記式(1)で表される化合物のなかでも、N-ビニル-2-ピロリドン及び/又はN-ビニル-ε-カプロラクタムが好ましく用いられる。
【0014】
上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0015】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコールアクリル酸多量体エステル、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-(((ブチルアミノ)カルボニル)オキシ)エチル(メタ)アクリレート、(3-プロピルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-ブチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)エチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)プロピル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)ブチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)ペンチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)ヘキシル(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-イソブチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-シクロヘキシル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート等が挙げられる。
【0016】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールF型エポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノールE型エポキシ(メタ)アクリレート、及び、これらのカプロラクトン変性体等が挙げられる。
【0019】
上記(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0020】
上記ラジカル重合性基を有さないエポキシ化合物(以下、単に「エポキシ化合物」ともいう)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールE型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビスフェノールO型エポキシ化合物、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、水添ビスフェノール型エポキシ化合物、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、スルフィド型エポキシ化合物、ジフェニルエーテル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、アルキルポリオール型エポキシ化合物、ゴム変性型エポキシ化合物、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0021】
上記エポキシ基とラジカル重合性基とを有する化合物としては、例えば、グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において上記「部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物」は、1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得られる、1分子中に1以上のエポキシ基と1以上の(メタ)アクリロイル基とを有する化合物を意味する。
【0022】
上記グリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0023】
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物としては、例えば、部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ化合物、部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールF型エポキシ化合物、部分(メタ)アクリル変性ビスフェノールE型エポキシ化合物等が挙げられる。
【0024】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物を位置合わせ工程が必要になる部位に用いる場合、本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、上記エポキシ基とラジカル重合性基とを有する化合物としてエポキシ基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を含有することが好ましい。上記「位置合わせ工程」としては、例えば、カメラモジュールにおいては、アクティブアライメント工程等が挙げられる。
【0025】
上記硬化性樹脂100重量部中におけるラジカル重合性基を有する化合物の合計の含有量の好ましい下限は45重量部、好ましい上限は90重量部である。上記ラジカル重合性基を有する化合物の合計の含有量が45重量部以上であることにより、得られる可動部品固定用接着剤組成物が光硬化時の接着性により優れるものとなる。上記ラジカル重合性基を有する化合物の合計の含有量が90重量部以下であることにより、得られる可動部品固定用接着剤組成物が低硬化収縮性及び低温での熱硬化性により優れるものとなる。上記ラジカル重合性基を有する化合物の合計の含有量のより好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は85重量部である。
なお、本明細書において上記「ラジカル重合性基を有する化合物の合計の含有量」は、上記エポキシ基を有さないラジカル重合性化合物と、上記エポキシ基とラジカル重合性基とを有する化合物との合計の含有量を意味する。
【0026】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、光重合開始剤を含有する。
上記光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤が好適に用いられる。
【0027】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、オキシムエステル化合物、ベンゾインエーテル化合物、チオキサントン化合物等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、具体的には例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-((4-メチルフェニル)メチル)-1-(4-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-(フェニルチオ)フェニル)-1,2-オクタンジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0028】
上記光重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.2重量部、好ましい上限が3重量部である。上記光重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる可動部品固定用接着剤組成物が優れた保存安定性を維持しつつ、光硬化性により優れるものとなる。上記光重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は2.5重量部である。
【0029】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、上記光重合開始剤に加えて、熱重合開始剤を含有してもよい。
上記熱重合開始剤としては、熱ラジカル重合開始剤が好適に用いられる。
【0030】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等で構成されるものが挙げられる。なかでも、アゾ化合物で構成される開始剤(以下、「アゾ開始剤」ともいう)が好ましい。
上記アゾ化合物としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ化合物としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
上記アゾ化合物としては、具体的には例えば、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
【0031】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0032】
上記熱重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.2重量部、好ましい上限が10重量部である。上記熱重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる可動部品固定用接着剤組成物が優れた保存安定性を維持しつつ、熱硬化性により優れるものとなる。上記熱重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0033】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、熱硬化剤を含有する。
上記熱硬化剤は、開始領域温度の最も低い値が80℃以下である熱硬化剤を含む。上記開始領域温度の最も低い値が80℃以下の熱硬化剤を用いることにより、本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、低温硬化性に優れるものとなる。上記熱硬化剤は、開始領域温度の最も低い値が79℃以下であることが好ましく、78℃以下であることがより好ましい。
また、保存安定性の観点から、上記熱硬化剤は、開始領域温度の最も低い値が70℃以上であることが好ましい。
なお、上記「開始領域温度の最も低い値」は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて、ビスフェノールA型エポキシ樹脂100重量部と上記熱硬化剤を5重量部とを混ぜ、5℃/分で昇温した時の反応開始温度として測定することができる。
【0034】
上記開始領域温度の最も低い値が80℃以下の熱硬化剤は、イミダゾール系硬化剤を含むことが好ましい。
上記イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール(開始領域温度76℃~92℃)、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール(開始領域温度79℃~106℃)等が挙げられる。
【0035】
上記熱硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.2重量部、好ましい上限が5重量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる可動部品固定用接着剤組成物が優れた保存安定性を維持しつつ、熱硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は4重量部である。
【0036】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、粘度の向上、応力分散効果による接着性の更なる向上、線膨張率の改善等を目的として充填剤を含有してもよい。
【0037】
上記充填剤としては、無機充填剤や有機充填剤を用いることができる。
上記無機充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。
上記有機充填剤としては、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等が挙げられる。
なかでも、上記充填剤は、表面がメチル処理されたシリカを含むことが好ましい。上記充填剤として上記表面がメチル処理されたシリカを用いることにより、得られる可動部品固定用接着剤組成物が接着性に優れ、かつ、後述するチクソトロピックインデックスを容易に調整できるものとなる。
【0038】
上記充填剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が5重量部、好ましい上限が50重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等の悪化を抑制しつつ、接着性の向上等の効果をより発揮することができる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は40重量部である。
【0039】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、上記遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、遮光接着剤として好適に用いることができる。
【0040】
上記遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、チタンブラックが好ましい。
上記遮光剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0041】
上記チタンブラックは、波長300nm以上800nm以下の光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370nm以上450nm以下の光に対する透過率が高くなる物質である。即ち、上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することで本発明の可動部品固定用接着剤組成物に遮光性を付与する一方、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する遮光剤である。上記遮光剤としては、絶縁性の高い物質が好ましく、絶縁性の高い遮光剤としてもチタンブラックが好適である。
【0042】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
【0043】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、三菱マテリアル社製のチタンブラック、赤穂化成社製のチタンブラック等が挙げられる。
上記三菱マテリアル社製のチタンブラックとしては、例えば、12S、13M、13M-C、13R-N、14M-C等が挙げられる。
上記赤穂化成社製のチタンブラックとしては、例えば、ティラックD等が挙げられる。
【0044】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は13m/g、好ましい上限は30m/gであり、より好ましい下限は15m/g、より好ましい上限は25m/gである。
また、上記チタンブラックの体積抵抗の好ましい下限は0.5Ω・cm、好ましい上限は3Ω・cmであり、より好ましい下限は1Ω・cm、より好ましい上限は2.5Ω・cmである。
【0045】
上記遮光剤の一次粒子径の好ましい下限は1nm、好ましい上限は5000nmである。上記遮光剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる可動部品固定用接着剤組成物を遮光性により優れるものとすることができる。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は100nmである。
なお、上記遮光剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記遮光剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
【0046】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物100重量部中における上記遮光剤の含有量の好ましい下限は0.2重量部、好ましい上限は5重量部である。上記遮光剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる可動部品固定用接着剤組成物の接着性、硬化後の強度、及び、描画性の悪化を抑制しつつ、遮光性を向上させる効果により優れるものとなる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は3重量部である。
【0047】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、被着体への短時間での塗れ性と形状保持性とを向上させる等の目的で粘度調整剤を含有してもよい。
上記粘度調整剤としては、例えば、ヒュームドシリカや層状ケイ酸塩等が挙げられる。
上記粘度調整剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0048】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物100重量部中における上記粘度調整剤の含有量の好ましい下限は0.5重量部、好ましい上限は20重量部である。上記粘度調整剤の含有量がこの範囲であることにより、被着体への短時間での塗れ性と形状保持性とを向上させる等の効果により優れるものとなる。上記粘度調整剤の含有量のより好ましい下限は1.0重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0049】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、接着性を更に向上させること等を目的として、シランカップリング剤を含有してもよい。
【0050】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。
【0051】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は5.0重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、ブリードアウト等を抑制しつつ、接着性を向上させる効果をより発揮することができる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は3.0重量部である。
【0052】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、導電性粒子を含有してもよい。上記導電性粒子を含有することにより、本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、導電ペースト等に好適に用いることができる。
【0053】
上記導電性粒子としては、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0054】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物100重量部中における上記導電性粒子の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は20重量部である。上記導電性粒子の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等の悪化を抑制しつつ、導電性の向上等の効果をより発揮することができる。上記導電性粒子の含有量のより好ましい下限は1.0重量部、より好ましい上限は15.0重量部である。
【0055】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、更に、架橋剤、有機溶剤、可塑剤、分散剤等を含有してもよい。
【0056】
上記架橋剤としては、例えば、ハロヒドリン化合物、ハロゲン化合物、イソシアネート化合物、ビスアクリルアミド化合物、尿素化合物、グアニジン化合物、ジカルボン酸化合物、不飽和カルボン酸化合物、不飽和カルボン酸エステル化合物、アルデヒド化合物等が挙げられる。
上記ハロヒドリン化合物としては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等が挙げられる。
上記ハロゲン化合物としては、例えば、1,2-ジクロロエタン、1,3-ジクロロプロパン等が挙げられる。
上記イソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
上記ビスアクリルアミド化合物としては、例えば、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-エチレンビスアクリルアミド等が挙げられる。
上記尿素化合物としては、例えば、尿素、チオ尿素等が挙げられる。
上記グアニジン化合物としては、例えば、グアニジン、ジグアニド等が挙げられる。
上記ジカルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、アジピン酸等が挙げられる。
上記不飽和カルボン酸化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
上記不飽和カルボン酸エステル化合物としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。
上記アルデヒド化合物としては、例えば、グリオキサール、グルタルアルデヒド、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、アジピンアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。
これらは、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。また、これらの架橋剤は、必要であれば、水やアルコールなどの有機溶媒に溶かして使用することもできる。
【0057】
上記有機溶剤としては、例えば、ケトン類、アルコール類、芳香族炭化水素類、エステル類、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、ブチルセルソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテート等が挙げられる。
上記ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。
上記アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
上記エステル類としては、例えば、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酪酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。
【0058】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物は上記有機溶剤を含有しないことが好ましいが、上記有機溶剤を含有する場合、上記有機溶剤の含有量の好ましい上限は10.0重量%である。上記有機溶剤の含有量が10.0重量%以下であることにより、硬化阻害を起こし難くすることができる。
【0059】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物を製造する方法としては、例えば、混合機を用いて、硬化性樹脂と、光重合開始剤と、熱硬化剤と、必要に応じて添加する充填剤等とを混合する方法等が挙げられる。
上記混合機としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等が挙げられる。
【0060】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物のチクソトロピックインデックスの好ましい下限は3.0、好ましい上限は7.0である。上記チクソトロピックインデックスがこの範囲であることにより、得られる可動部品固定用接着剤組成物を塗布した際に好適な塗布高さを確保することができ、可動部品の位置ずれを防止する効果により優れるものとなる。上記チクソトロピックインデックスのより好ましい下限は4.0、より好ましい上限は6.0である。
なお、本明細書において上記「チクソトロピックインデックス」は、E型粘度計を用いて25℃、0.5rpmの条件で測定した粘度を、25℃、5.0rpmの条件で測定した粘度で除した値を意味する。
【0061】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、硬化収縮率が3%以下であることが好ましい。上記硬化収縮率が3%以下であることにより、本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、可動部品の位置ずれを防止する効果により優れるものとなり、可動部品の固定に好適に用いられるものとなる。上記硬化収縮率は、2.7%以下であることがより好ましい。
また、上記硬化収縮率の好ましい下限は特にないが、実質的な下限は1%である。
なお、本明細書において上記「硬化収縮率」は、硬化前の可動部品固定用接着剤組成物の25℃における比重をG、可動部品固定用接着剤組成物の硬化物の25℃における比重をGとしたとき、下記式により算出される値である。
硬化収縮率(%)=((G-G)/G)×100
また、上記比重の測定に用いる硬化物は、可動部品固定用接着剤組成物に波長365nmの紫外線を1000mJ/cm照射した後、80℃で1時間加熱することにより得ることができる。
【0062】
本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、可動部品の金属部の固定に用いられてもよいし、可動部品の非金属部の固定に用いられてもよい。
上記金属部を構成する金属としては、例えば、銅、ニッケル等が挙げられる。
上記非金属部を構成する非金属としては、例えば、ポリアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリカーボネート、LCP(液晶ポリマー)、セラミックス等が挙げられる。
【0063】
特に、本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、光硬化時の接着性及び低硬化収縮性に優れることから、光照射により仮固定を行う位置合わせ工程が必要となる可動部品の固定に好適に用いることができる。また、本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、低温での熱硬化性に優れることから、光学部品や電子部品に対するダメージを低減することができる。
上記「位置合わせ工程」としては、例えば、カメラモジュールにおいては、アクティブアライメント工程等が挙げられる。
【0064】
また、本発明の可動部品固定用接着剤組成物の硬化物を有する光学部品、及び、本発明の可動部品固定用接着剤組成物の硬化物を有する電子部品もまた、それぞれ本発明の1つである。
更に、本発明の光学部品又は本発明の電子部品を有する電子モジュールもまた、本発明の1つである。
【0065】
本発明の電子モジュールとしては、カメラモジュールや表示モジュール等が挙げられる。なかでも、カメラモジュールが好適である。即ち、本発明の可動部品固定用接着剤組成物は、カメラモジュール用接着剤として好適に用いられる。
上記カメラモジュールとしては、具体的には例えば、基板とCCDやCMOS等の撮像素子との間等に本発明の可動部品固定用接着剤組成物の硬化物を有するものが挙げられる。
【発明の効果】
【0066】
本発明によれば、光硬化時の接着性、低温での熱硬化性、及び、低硬化収縮性に優れる可動部品固定用接着剤組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該可動部品固定用接着剤組成物を用いてなる光学部品、電子部品、及び、電子モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0068】
(実施例1~14、比較例1~3)
表1、2に記載された配合比に従い、各材料を、混合機にて混合して実施例1~14、比較例1~3の可動部品固定用接着剤組成物を得た。混合機としては、ARE-310(シンキー社製)を用いた。
なお、表1、2中、「UVACURE 1561」は、部分アクリル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を約50重量%、ビスフェノールA型エポキシアクリレートを約25重量%、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を約25重量%含有する混合物(ラジカル重合性基を有する化合物の含有割合約75重量%)である。
得られた各可動部品固定用接着剤組成物について、E型粘度計(BROOK FIELD社製、「DV-III」)を用いて、25℃、0.5rpmの条件、及び、25℃、5.0rpmの条件で粘度を測定した。25℃、0.5rpmの条件で測定した粘度を25℃、5.0rpmの条件で測定した粘度で除することによりチクソトロピックインデックスを算出した。結果を表1、2に示した。
【0069】
<評価>
実施例及び比較例で得られた可動部品固定用接着剤組成物について以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0070】
(保存安定性)
実施例及び比較例で得られた各可動部品固定用接着剤組成物について、製造直後の初期粘度と、25℃で24時間保管したときの粘度とを測定し、(25℃、24時間保管後の粘度)/(初期粘度)を粘度変化率として導出した。
粘度変化率が2以下であったものを「○」、2を超えたものを「×」として保存安定性を評価した。
なお、可動部品固定用接着剤組成物の粘度は、E型粘度計(BROOK FIELD社製、「DV-III」)を用い、25℃において回転速度1.0rpmの条件で測定した。
【0071】
(低硬化収縮性)
実施例及び比較例で得られた各可動部品固定用接着剤組成物について、1000mJ/cmの紫外線(波長365nm)を照射した後、80℃で1時間加熱することにより、長さ15mm、幅15mm、厚さ2mmの硬化物を得た。硬化前の接着剤組成物の25℃における比重、及び、可動部品固定用接着剤組成物の硬化物の25℃における比重を測定し、上述した式により硬化収縮率を算出した。
硬化収縮率が3%以下であった場合を「○」、3%を超え3.5%以下であった場合を「△」、3.5%を超えた場合を「×」として、低硬化収縮性を評価した。
【0072】
(光硬化時の接着性)
基材として、長さ100mm、幅25mm、厚さ2.0mmの液晶ポリマー(日本テストパネル社製、「スミカスーパーLCP E4008」)に実施例及び比較例で得られた各可動部品固定用接着剤組成物を塗布し、シリコンウェハー基板(長さ2mm、幅2mm、厚さ0.7mm)を重ねた。次いで、1000mJ/cmの紫外線(波長365nm)を照射して可動部品固定用接着剤組成物を光硬化させ、試験片を得た。得られた試験片について、ダイシェアテスターを用いて、300μm/sの速度で25℃におけるダイシェア強度を測定した。ダイシェアテスターとしては、ボンドテスターDAGE4000(NORDSON DAGE社製)を用いた。
ダイシェア強度が1N以上であった場合を「○」、1N未満であった場合を「×」として接着性を評価した。
【0073】
(低温での熱硬化性)
基材として、長さ100mm、幅25mm、厚さ2.0mmの液晶ポリマー(日本テストパネル社製、「スミカスーパーLCP E4008」)に実施例及び比較例で得られた各可動部品固定用接着剤組成物を塗布し、シリコンウェハー基板(長さ2mm、幅2mm、厚さ0.7mm)を重ねた。次いで、1000mJ/cmの紫外線(波長365nm)を照射した後、80℃で1時間加熱することにより可動部品固定用接着剤組成物を硬化させ、試験片を得た。得られた試験片について、ダイシェアテスターを用いて、300μm/sの速度で25℃におけるダイシェア強度を測定した。ダイシェアテスターとしては、ボンドテスターDAGE4000(NORDSON DAGE社製)を用いた。
ダイシェア強度が100N以上であった場合を「○」、100N未満であった場合を「×」として低温での熱硬化性を評価した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明によれば、光硬化時の接着性、低温での熱硬化性、及び、低硬化収縮性に優れる可動部品固定用接着剤組成物を提供することができる。また、本発明によれば、該可動部品固定用接着剤組成物を用いてなる光学部品、電子部品、及び、電子モジュールを提供することができる。