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特許7583544磁性材料の製造方法、ゴムラテックス組成物の製造方法、及び成形体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】磁性材料の製造方法、ゴムラテックス組成物の製造方法、及び成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/02 20060101AFI20241107BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
C08L21/02
C08K3/22
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020128312
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025479
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000108454
【氏名又は名称】ソマール株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 裕久
(72)【発明者】
【氏名】落合 明
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-220719(JP,A)
【文献】特開2004-265936(JP,A)
【文献】特開昭61-222591(JP,A)
【文献】特開2017-053745(JP,A)
【文献】特開2002-127170(JP,A)
【文献】特開2009-103959(JP,A)
【文献】特開2016-127280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
C08K 3/00 - 13/08
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体の製造に用いるゴムラテックス組成物を製造する方法において、
極性液体を溶媒として平均一粒子径が50nm以下である磁性粒子が分散した極性溶媒ベース磁性流体から極性液体を真空凍結乾燥により除去し、回収物を得る工程と、該工程により得られた回収物をゴムラテックスと混合し、該回収物とゴムラテックスの混合物を得る工程を含む、ゴムラテックス組成物の製造方法。
【請求項2】
極性液体が、水、または、水と水溶性有機溶剤の混物である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記混合物に、架橋剤を含む他の成分を添加する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3何れか1項に記載の方法により製造されたゴムラテックス組成物を用いて成形する工程を含む、成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性材料の製造方法、その磁性材料を用いたゴムラテックス組成物の製造方法、及び、そのゴムラテックス組成物を用いた成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁体とされているゴム材料に導電性の粉末を分散させて得られる導電性ゴムは、非加圧時においては絶縁性を有するが、圧力の刺激が加わると導電性を帯びるいわゆる感圧導電性を示すため、電気・電子機器のスイッチやセンサーとして広く利用されている。例えば特許文献1では、ゴム組成物を製造する際、ゴム組成物の成形品(最終物)に導電性を付与すべく配合される機能付与材を、液体(水分散体)の形態で、ゴムラテックスと混合して作製した機能付与材分散ゴムラテックス混合物を被乾燥物(乾燥対象)とし、その被乾燥物から水を除去する方法として、恒温乾燥が好ましい旨、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-101080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のごとき、機能付与材を液体(水分散体)の形態でゴムラテックスと混合すると、混合物中の水分量が必要以上に多くなり、水分除去の作業に多くの時間を割かなければならず、実用的ではない。また特許文献1の技術では、機能付与材を液体(水分散体)の形態でゴムラテックスと混合するため、技術的に、混合物中での機能付与材濃度を高めるには限界がある(濃度上限が低い)。
【0005】
なお、水を代表とする極性液体の溶媒中に、機能付与材の一例としての磁性粒子を分散した磁性流体から回収した磁性材料を、ゴムラテックスなどの水分散体と分散混合する技術は、これまでに存在しない。
【0006】
本発明は、ゴムラテックスとの混合物中への馴染みが良く、かつ該混合物からなる組成物中への配合濃度を高めることが可能な、磁性材料を製造することができる磁性材料の製造方法と、該方法により製造された磁性材料を用いたゴムラテックス組成物の製造方法と、該方法により製造されたゴムラテックス組成物を用いた成形体の製造方法と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明に係る磁性材料の製造方法は、ゴムラテックス組成物の製造に用いる磁性材料を製造する方法において、極性液体を溶媒として磁性粒子が分散した極性溶媒ベース磁気機能性流体を被乾燥物とし、その被乾燥物から極性液体を除去し、回収物を得る工程を含み、該工程が真空凍結乾燥により行われることを特徴とする。極性液体は、水、または、水と水溶性有機溶剤の混和物で構成することができる。
【0008】
真空凍結乾燥後の回収物(磁性材料)をゴムラテックスと混合し、該回収物とゴムラテックスの混合物を得る工程を含むゴムラテックス組成物の製造方法や、得られた混合物を用いて成形する工程を含む成形体の製造方法も、本発明の一態様である。
真空凍結乾燥後の回収物をゴムラテックスと混合した後、架橋剤を含む他の成分を添加し、混合物とすることもできる。
【0009】
本発明において、「極性溶媒ベース磁気機能性流体」を被乾燥物とし、また「真空凍結乾燥」を分散媒の除去方法とし、さらに「ゴムラテックスとの混合前」を分散媒除去のタイミングとした各理由について、磁気機能性流体の1種である「磁性流体」を例に取り説明する。磁気機能性流体は、磁性流体と磁気粘性流体に分類され、何れも磁性粒子、分散剤、分散媒を含有している点で共通しているためである。
【0010】
(被乾燥物)
まず、被乾燥物であるが、磁性流体には、分子内部に固定的に電気双極子を持つ、水を代表とする極性液体を溶媒に用いた極性溶媒ベース(ここでは簡易的に「水ベース」とする)の他、電気双極子モーメントがゼロまたはゼロに近い、ベンゼン、ヘキサン、直鎖炭化水素などの油類を代表とする無極性液体を溶媒に用いた無極性溶媒ベース(ここでは簡易的に「油ベース」とする)があり、水ベース磁性流体は、油ベース磁性流体と比較して、流体中で分散の単位となるコロイド粒子の構造に違いがあることが知られている(非特許文献:磁性流体連合講演会・講演論文集2019-12/極性溶媒ベース(水ベース)磁性流体および無極性溶媒ベース(油ベース)磁性流体の分散安定性と老化現象に対する考察/2019年12月5日発行)。
【0011】
水ベース磁性流体のコロイド粒子は、磁性粒子が三層(粒子に近い側から順に、親油性第1被覆層/親水性第2被覆層/水和固定層)に被覆された構造を有する。水ベース磁性流体のコロイド粒子は、合計厚みが磁性粒子自身の半径を超える三重の被覆層に覆われた状態で流体中を行動するため、流体中での存在量に限界がある。その結果、流体自身が磁気的に希薄になることの他、分散濃度の増大に対してゲル化を起こしやすく高濃度の分散系を得ることが困難など課題は多い。
一方、油ベース磁性流体のコロイド粒子は、磁性粒子が一層(親油性被覆層)のみで被覆された構造を有するため、水ベース磁性流体のコロイド粒子が有するような上記問題を生じにくい反面、そのコロイド粒子は表面が親油性であるがゆえ、水を分散媒とするゴムラテックスとは馴染みが悪く、ゴムラテックスとの混合物中で分離凝集が見られることが多い。そこで、ゴムラテックスとの馴染みが良いことを優先し、水ベース磁性流体を被乾燥物とした。
【0012】
(分散媒の除去方法)
次に、分散媒の除去方法として、例えば特許第6309006号(段落0027)などに開示されている凝集沈降法を試みたところ、エタノールのような極性溶媒では、磁性粒子が沈降することは生じず、イソオクタンなどの無極性溶媒を添加した場合には2層に分離したままであり何れの場合も磁性粒子が沈降・分離することはなかった。また、蒸発法を試みたところ、被乾燥物として水ベース磁性流体を用いるにもかかわらず、ゴムラテックスとの馴染みが良い回収物を得ることができなかった。この方法により得られた回収物をゴムラテックスに混合させた場合に、分離凝集が見られたためである。これは、蒸発法により得られた回収物の粒子構造が、中心となる磁性粒子を覆う三重の被覆層のうち、親油性第1被覆層と親水性第2被覆層の間で剥離され、親水性第2被覆層及び水和固定層が除去されたもの(すなわち、磁性粒子が親油性第1被覆層のみで被覆された状態)となったためと推定している。この粒子の構造は、表面が親油性であるがゆえ、上述した油ベース磁性流体のコロイド粒子と同様に、水を分散媒とするゴムラテックスとは馴染みが悪いものと推測される。
一方、真空凍結乾燥法を用いた場合、中心となる磁性粒子の最表面に親水性第2被覆層を残した状態で、水和固定層のみを除去可能であると推測している。真空凍結乾燥法により得られた回収物(磁性材料)の粒子構造は、表面が親水性であるがゆえ、ゴムラテックスとは馴染みが良く、ゴムラテックスとの混合物中で分離凝集が見られないものと推測している。以上が、分散媒の除去方法として真空凍結乾燥を採用した理由である。
【0013】
(分散媒除去のタイミング)
分散媒除去のタイミングであるが、これがゴムラテックスとの混合後であると、以下の不都合を生じる。
第1に、水ベース磁性流体のコロイド粒子は、上述したとおり、磁性粒子が自身の半径を超える三重の被覆層に被覆された構造を有するため、流体中での存在量が少ない(濃度が低い)。そのため、磁性粒子を液体(流体)の形態でゴムラテックスと混合した後、分散媒を除去する(つまり、分散媒除去のタイミングがゴムラテックスとの混合後である)と、回収した混合物からなる組成物中での磁性粒子濃度は低くならざるを得ない。その結果、その組成物から水分を除去して得られる成形体に、優れた磁気特性を付与することは困難である。流体自身が磁気的に希薄(前出)であるがゆえ当然の帰結となる。
【0014】
第2に、磁性粒子を液体(流体)の形態でゴムラテックスと混合すると、混合液中の水分量が多くなり過ぎ、その結果、その後に分散媒を除去しても混合液中に水分が残存しやすい。そのため、得られた組成物を成形加工する際、水分が残存した状態で成形されてしまう。得られる成形体内部に、水分が残渣として残っていることがある。
【0015】
これに対し、分散媒除去のタイミングをゴムラテックスとの混合前とした場合、これらの不都合を生ずることはない。これが、分散媒除去のタイミングをゴムラテックスとの混合前にした理由である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る磁性材料の製造方法では、水ベース磁気機能性流体を被乾燥物として用いるため、ゴムラテックスとの混合物中への馴染みの良い磁性材料を得ることができる。また、ラテックスとの混合前に特定手法を用いて分散媒を除去するため、ラテックスとの混合の際、配合濃度の調整が可能であり、ゴムラテックスとの混合物からなる組成物中への配合濃度を高めることができる。
すなわち、本発明に係る磁性材料の製造方法によれば、ゴムラテックスとの混合物中への馴染みが良く、かつ該混合物からなる組成物中への配合濃度を高めることが可能な、磁性材料を製造することができる。
【0017】
本発明に係る、ゴムラテックス組成物と成形体の両製造方法では、ともに、本発明方法により得られた回収物(磁性材料)を用いる。このため、磁性材料の、ゴムラテックス組成物中への配合濃度を高めることができ、その結果、優れた磁気特性が付与された成形体製造へ寄与しうる。また、用いる磁性材料は水分を含まないため、これとゴムラテックスとの混合物からなる組成物から成形体を製造した際、その成形体内部に、水分残渣を生じさせることがない。
すなわち、本発明に係るゴムラテックス組成物の製造方法によれば、磁性材料の配合濃度が高められたゴムラテックス組成物を製造することができる。また、本発明に係る成形体の製造方法によれば、水分残渣がなく、さらに優れた磁気特性が付与され得る成形体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(1.磁性材料)
本実施の形態に係る磁性材料は、表面の少なくとも一部が分散剤で被覆された磁性粒子からなる粉体である。
【0019】
(2.磁性材料の製造方法)
このような磁性材料は、極性液体を溶媒として磁性粒子が分散した極性溶媒ベース磁気機能性流体を被乾燥物とし、その被乾燥物に真空凍結乾燥処理を施した後の回収物で構成される。真空凍結乾燥後の回収物(以下単に「回収物」とも言う。)は、ゴムラテックス組成物を構成するゴムラテックスとの混合に有用である。
【0020】
(極性溶媒ベース磁気機能性流体)
極性溶媒ベース磁気機能性流体には、極性溶媒ベース磁性流体と極性溶媒ベース磁気粘性流体が含まれる。極性溶媒ベース磁性流体とは、極性液体を溶媒として表面の少なくとも一部が分散剤で被覆された磁性粒子が分散したコロイド溶液である。この極性溶媒ベース磁性流体は、分散性が非常に良いため、重力、磁場などによって沈殿あるいは分離などの固液分離を生じることがなく、それ自身が磁性を持った均一な液体と見なすことができる。極性溶媒ベース磁気粘性流体とは、極性液体を溶媒として表面の少なくとも一部が分散剤で被覆された磁性粒子が分散した液体であり、外部から加えられた磁場の強度に応じて、流動性の高い状態から大きな降伏応力を有するゲル状態に、可逆的に変化する流体をいう。
極性溶媒ベース磁気機能性流体(以下、磁気機能性流体という場合がある)は、極性溶媒ベース磁性流体(以下、磁性流体という場合がある)と極性溶媒ベース磁気粘性流体(以下、磁気粘性流体という場合がある)に分類され、少なくとも、(A)磁性粒子、(B)分散剤、及び(C)極性液体を含有する。
【0021】
(A)磁性粒子
磁性流体に含有される磁性粒子は、磁性体(比透磁率が例えば1.5以上のもの)であり、磁性体としては、例えば、強磁性酸化物;強磁性金属;窒化金属などが挙げられる。強磁性酸化物としては、例えば、マグネタイト、γ酸化鉄、マンガンフェライト、コバルトフェライト、またはこれらと亜鉛、ニッケルとの複合フェライトやバリウムフェライトなどが挙げられる。強磁性金属としては、例えば、鉄、コバルト、希土類などが挙げられる。中でも、マグネタイトが量産性の点から好ましい。
磁性流体に含有される磁性粒子は、超常磁性を発現する範囲の平均粒子径、つまり臨界粒子径以下のものであれば特に制限はなく用いられる。例えば、マグネタイトやγ酸化鉄の場合、その平均粒子径は、好ましくは50nm以下、特に好ましくは40nm以下、好ましくは10nm以上である。磁性流体に含有される磁性粒子の平均粒子径は、透過電子顕微鏡(TEM)で測定される平均一次粒子径である。
磁性流体中での、磁性粒子の含有量は、沈降防止の観点から、固形分換算で、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。固形分換算とは、回収後の磁性粒子の質量の全質量に対する含有量を指す(以下同じ)。
【0022】
次に、磁気粘性流体に含有される磁性粒子としては、例えば、強磁性酸化物;強磁性金属;窒化金属;各種合金などが挙げられる。強磁性酸化物としては、例えば、マグネタイト、カルボニル鉄、γ酸化鉄、マンガンフェライト、コバルトフェライト、またはこれらと亜鉛、ニッケルとの複合フェライトやバリウムフェライトなどが挙げられる。強磁性金属としては、例えば、鉄、コバルト、希土類などが挙げられる。各種合金としては、例えば、センダスト(登録商標)、パーマロイ(登録商標)、スーパーマロイ(登録商標)などが挙げられる。これらの中でもカルボニル鉄が好ましい。
磁気粘性流体に含有される磁性粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは2μm以上、特に好ましくは5μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、特に好ましくは50μm以下である。磁気粘性流体に含有される磁性粒子の形状は、球状またはほぼ球状であることが好ましい。磁気粘性流体に含有される磁性粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置で測定される平均一次粒子径である。
磁気粘性流体中での、磁性粒子の含有量は、量産性の観点から、固形分換算で、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、好ましくは85質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。
【0023】
(B)分散剤
分散剤は、磁性粒子の分散媒(極性液体)への分散性を向上させるために磁気機能性流体中へ添加される。分散剤としては、公知の界面活性剤、高分子分散剤などが適宜使用し得るが、なかでも、分散性及び得られた磁性粉体の性能の観点から、界面活性剤が好ましい。
磁気機能性流体中に磁性粒子と分散剤とを含むことで、磁気機能性流体中で分散剤の少なくとも一部が磁性粒子に付着する。磁性粒子は、その表面の少なくとも一部が分散剤(好ましくは界面活性剤)で被覆されることになる。本実施の形態において分散剤として好ましく用いられる界面活性剤としては、例えば、オレイン酸またはその塩、石油スルホン酸またはその塩、合成スルホン酸またはその塩、エイコシルナフタレンスルホン酸またはその塩、ポリブテンコハク酸またはその塩、エルカ酸またはその塩などのように、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基などの極性基を有する炭化水素化合物である陰イオン性界面活性剤、あるいは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのような非イオン性界面活性剤、さらに、アルキルジアミノエチルグリシンのような分子構造中に陽イオン部分と陰イオン部分とを共に持つ両性界面活性剤が挙げられる。この中で安価であり入手のしやすさからオレイン酸ナトリウムが好ましい。分散剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
分散剤の平均粒子径は、磁気機能性流体中での磁性粒子同士の凝集を防止できる大きさであればよい。例えば、前記第1被覆層及び第2被覆層の各々について、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、好ましくは25nm以下、より好ましくは20nm以下である。
分散剤の含有量(複数種を含む場合はその総量)は、磁気機能性流体中での磁性粒子同士の凝集を防止できる量であればよい。例えば、固形分換算で、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0025】
(C)極性液体
磁気機能性流体の分散媒として用いる極性液体とは、分子内部に固定的に電気双極子を持つ液体を意味し、これが溶媒として用いられるとき極性溶媒という。代表的なものは、水であるが、水と水溶性有機溶剤の混和物を用いることもできる。水溶性有機溶剤としては、エタノール、メタノールなどが挙げられる。極性液体として水を用いる場合、不純物の少ない純水、イオン交換水などを用いることが好ましい。
分散媒としての極性液体に対する前記各成分の濃度は特に問わない。後の工程における作業性などの観点から、磁気粘性流体中での分散媒の含有量は、前記各成分を合計した固形分濃度が、好ましくは15質量%以上、より好ましくは30質量%以上、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下となる量である。
【0026】
磁性流体中において、固形成分における磁性粒子(無機成分)の合計含有量と、界面活性剤に代表される分散剤などの有機成分の合計含有量との割合は、超常磁性を発現する範囲であれば特に問わない。一般的には、磁性粒子と分散剤の質量比は、60:40~90:10が好ましく、70:30~85:15の範囲であることがより好ましい。
【0027】
(D)分散剤及び水和固定層で被覆された磁性粒子
磁性粒子と分散剤を極性溶媒に添加して撹拌すると、磁性粒子が三層(粒子に近い側から順に、親油性第1被覆層/親水性第2被覆層/水和固定層)に被覆された構造を有するコロイド粒子となる。磁性流体中において、分散剤及び水和固定層で被覆された磁性粒子の平均粒子径は、磁性粒子がマグネタイトやγ酸化鉄である場合には、前述の磁性粒子の平均粒子径(好ましくは50nm以下、好ましくは10nm以上)を考慮すると、好ましくは120nm以下、特に好ましくは100nm以下、好ましくは12nm以上である。
分散剤及び水和固定層で被覆された磁性粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定される平均一次粒子径のことである。例えば、堀場製作所社製のナノ粒子解析装置(nano Partica SZ-100シリーズ)を使用し測定することができる。
磁気粘性流体においては、磁性粒子そのものの大きさ(平均粒子径が、好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下)が前記した三層の厚さ(数十nm程度))と比べて極めて大きいため、磁性粒子そのものの大きさを考慮して、分散剤及び水和固定層で被覆された磁性粒子の平均粒子径を決定すればよい。
【0028】
(真空凍結乾燥処理)
本実施の形態では、極性溶媒ベース磁気機能性流体を被乾燥物とし、その被乾燥物に真空凍結乾燥処理を施し、回収物を得る。真空凍結乾燥後の回収物が、本実施の形態に係る磁性材料を構成する。回収物は、通常、サラサラとした粉末状(磁性粉体)であるが、そうでない場合(凝集体)を含むこともありうる。回収物の全部が粉末状の場合はもとより、回収物の一部または全部がたとえ凝集していたとしても、ラテックス中の水分で凝集部分が瞬時に解砕して分散混合されるので、本実施の形態では問題とはならない。回収物個々の平均粒子径は、分散剤及び水和固定層で被覆された磁性粒子の平均粒子径(前出)に準ずる。
【0029】
被乾燥物に施す真空凍結乾燥とは、被乾燥物中から実質的にすべての液体成分(極性液体)を昇華させて、表面の少なくとも一部が分散剤で被覆された磁性粒子を分離して回収することである。本実施の形態における真空凍結乾燥は、例えば、被乾燥物を凍結固化する予備凍結工程と、予備凍結された被乾燥物から凍結した極性液体を実質的に全て昇華させて除去する減圧乾燥工程と、を含む方法により実施することができる。
【0030】
予備凍結工程としては、例えば、エアーブラスト方式(空気凍結)、リキッド方式(液体凍結)、コンタクト方式(接触式凍結)、液化ガス方式などが挙げられ、エアーブラスト方式又はコンタクト方式が好ましい。
【0031】
予備凍結工程では、被乾燥物の温度が、室温(25℃)から、例えば-10℃~-80℃となるように凍結させる。凍結温度は、好ましくは、-20~-60℃である。凍結時間は、磁気機能性流体の濃度や凍結温度により一様ではないが、例えば、12~36時間、好ましくは20~30時間とすることができる。容器としては、金属製及びプラスチック製のいずれの材質のものであってもよい。
【0032】
減圧乾燥工程では、凍結された被乾燥物周りの雰囲気圧と雰囲気温度を、それぞれ、昇華が可能な圧力まで低減させるとともに、昇華が可能な温度まで上昇させ、凍結された被乾燥物中の液体成分(極性液体)がほとんど全て昇華するように乾燥させる。例えば、凍結された被乾燥物中の含極性液体率が、好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下になるまで乾燥させる。
凍結された被乾燥物周りの雰囲気圧を低減させる場合、凍結された被乾燥物を凍結乾燥機内に入れ、真空層内の圧力を低減することによって雰囲気圧を低減してもよい。
乾燥時の圧力(真空度)は、好ましくは200Pa以下、より好ましくは133Pa以下、特に好ましくは106Pa以下である。乾燥温度(棚温度)は、極性液体の凝固点よりも高温であって、界面活性剤が変質しない温度であればよく、例えば、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、特に好ましくは40℃以下である。
【0033】
本実施の形態において予備凍結工程及び減圧乾燥工程は、凍結乾燥機を用いて行うこととしてもよいし、予備凍結工程及び減圧乾燥工程を別々の手段、例えば、冷蔵庫及び凍結乾燥機などを用いて行うこともできる。しかしながら、凍結乾燥装置の小型化の面から凍結乾燥機を用いることが好ましい。例えば、共和真空技術社製の凍結乾燥機「RLEII」シリーズ、「RL-B」シリーズなどが挙げられる。
減圧乾燥工程においては、凍結された被乾燥物周りの雰囲気温度を、凍結工程における温度から減圧乾燥工程における温度に昇温させるため、従来の凍結乾燥装置に用いられるヒーターなどの構成を用いることもできる。
【0034】
(その他の処理)
本実施の形態では、回収物を、そのまま磁性材料として用いることができるが、それ(回収物)が凝集していた場合、必要に応じて粉砕処理などを施し、再粉末化することを妨げるものではない。なお、本実施の形態では、回収物が凝集していたとしても、後記のごとき、これをゴムラテックスに添加し撹拌すると、瞬時に解砕して分散混合されるため、通常は、再粉末化処理を要しない。
【0035】
(3.ゴムラテックス組成物)
本実施の形態に係るゴムラテックス組成物は、既述の工程により得られた回収物とゴムラテックスを含む混合物からなる。
【0036】
(ゴムラテックス)
ゴムラテックスは、水不溶のゴム粒子が水中に分散しているものであればよい。その粒子を構成するゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエンゴム(ABS)、メタクリル酸メチル・ブタジエンゴム(MBR)、ポリクロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、シリコーンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムなどが挙げられる。これらのゴムは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0037】
ゴムの、ゴムラテックス中での濃度は、好ましくは20質量%以上80質量%以下である。ゴムの濃度が低すぎると、ゴムラテックス組成物の成形体の強度や接着性に不都合を生じ、ゴムラテックス中でのゴムの濃度が高すぎると、相対的に分散媒(水)の量が減り、その結果、回収物の配合量を高めようとする場合、混合に支障が出ることもある。
【0038】
ゴムは、ゴムラテックス中で、分散粒子径が例えば0.01~0.5μm程度となる形態で分散していることが好ましい。分散粒子径が所定範囲(前出)のゴムは、ゴムラテックス中に存在するゴムの、例えば70%以上、好ましくは90%以上であるとよい。この分散粒子径は、ゴムラテックス中でのゴム粒子の分散度(分散の程度)を示す指標であり、この値が小さいほど分散度が高い。上記所定範囲の分散粒子径の形態で分散しているゴム粒子(凝集粒子、一時粒子)の割合は、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた画像解析を利用して算出することができる。
【0039】
ゴムラテックスには、ゴム粒子、分散媒(水)の他に、品質の向上や安定化の観点から、例えば、界面活性剤、乳化剤、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、分散剤などを、適宜選択して配合することができる。
【0040】
(他の成分)
ゴムラテックス組成物には、回収物とゴムラテックスの他に、目的に応じて種々の成分を配合することができる。例えば、架橋剤(加硫剤)、架橋促進剤(加硫促進剤)、pH調整剤、増粘剤、老化防止剤、分散剤、顔料、充填剤などが挙げられる。
架橋剤としては、特に限定されず、ゴムラテックス中のゴム粒子と架橋(加硫)し得るものであれば適宜使用することができる。例えば、硫黄、硫黄系化合物、有機過酸化物、フェノール化合物などが挙げられる。架橋剤を用いる場合の含有量は、ゴムラテックス中のゴム粒子に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。架橋剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0041】
架橋促進剤(加硫促進剤)としては、特に限定されないが、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ-2-エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2-メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2-(2,4-ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2-(N,N-ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(2,6-ジメチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2-(4′-モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4-モルホリニル-2-ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3-ビス(2-ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられる。架橋促進剤を用いる場合の含有量は、ゴムラテックス中のゴム粒子に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。架橋促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0042】
充填剤としては、アルミニウム、銅、ニッケルなどの金属、溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、チタンホワイト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、などが挙げられる。充填剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0043】
回収物とゴムラテックスを含む混合物中の、回収物とゴム粒子の配合比率は、例えば、前者が100質量%以上400質量%以下、後者が25質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
混合物中の回収物の割合は、混合物の固形分全量(100質量部)を基準として、例えば50質量部以上、好ましくは60質量部以上、例えば80質量部以下、好ましくは70質量部以下であることが望ましい。
混合物中のゴム粒子の割合は、混合物の固形分全量(100質量部)を基準として、例えば20質量部以上、好ましくは30質量部以上、例えば50質量部以下、好ましくは40質量部以下であることが望ましい。
【0044】
(4.ゴムラテックス組成物の製造方法)
本実施の形態では、既述の工程により得られた回収物をゴムラテックスと混合して混合物とすることで、本実施の形態に係るゴムラテックス組成物が得られる。得られたゴムラテックス組成物は、回収物が均一に分散混合されているため、磁気特性に優れた成形体の製造に有用である。
【0045】
混合物の調製は、回収物をゴムラテックスに添加し撹拌することで行われる。ゴムラテックスに添加する回収物の形態(サラサラの粉末状、または凝集体)の如何にかかわらず、これをゴムラテックスに添加し撹拌すると、ゴムラテックス中の水分で回収物が瞬時に解砕して分散混合される。混合する際の温度や時間は特に限定されない。
【0046】
本実施の形態では、ゴムラテックスと混合する際の形態が固体(粉末状)であるため、液体(磁気機能性流体)の形態でゴムラテックスと混合する場合と比較して、混合物中の磁性粒子の割合(濃度)を高めることできる。具体的には、混合物の固形分全量(100質量部)を基準とした混合物中の磁性粒子の割合を、例えば50質量部以上(好ましくは60質量部以上)とすることができる。
【0047】
(5.成形体及びその製造方法)
本実施の形態に係る成形体は、架橋剤を含有している場合には成形材料の架橋物からなる。成形材料は、既述の工程により得られた本実施の形態に係るゴムラテックス組成物で構成してある。
本実施の形態では、既述の工程により得られたゴムラテックス組成物を、該組成物の製造に使用したラテックス中のゴム粒子に応じた所望の成形処理(成形加工)を施すことで、本実施の形態に係る成形体が得られる。得られた成形体は、目的に応じた種々の用途(例えば、医療分野)へ使用可能である。
【0048】
成形処理としては、上述した架橋性組成物の製造に使用したラテックス中の粒子を構成するゴムの特性に応じて、各種の成形方法を採用することができる。成形方法としては、例えば、注型成形、ディッピング成形、LIM成形などが挙げられる。このような成形法で得られる成形体の形状は、特段の定めはない。
【0049】
本実施の形態に係る成形体が、優れた磁気特性を発現する作用機構は明確ではないが、以下のように考えている。
第一に、微細な磁性粒子をゴムマトリックスに分散する場合、凝集が生じやすい。この場合、微細な磁性粒子が有する磁気特性を発現することができない。これに対し、本発明によれば、極性溶媒ベース磁気機能性流体を用意し、この磁気機能性流体中の分散媒(極性液体)を特定の処理操作(真空凍結乾燥)で除去して、回収する。得られた回収物は、サラサラとした粉末状であり、磁性粒子表面の少なくとも一部が、磁気機能性流体に含まれる分散剤(好ましくは界面活性剤)により被覆されることになる。すなわち、回収物は、磁性粒子表面の少なくとも一部が分散剤(好ましくは界面活性剤)により被覆されているため、粉体として大気中における酸化が抑制される。
第二に、磁性流体を例に取ると、磁性流体中の磁性粒子は超常磁性体として存在しており、この磁性流体を出発原料(被乾燥物)として真空凍結乾燥により磁性粉体化した場合、回収物の見かけがたとえ凝集体であっても、ナノオーダー下では再凝集することなく、超常磁性の態様を維持した状態で粉体化される。
第三に、真空凍結乾燥後の回収物の見かけがたとえ凝集していたとしても、ゴムラテックス中の水分で瞬時に解砕して分散混合される。
これらの理由により、本実施の形態に係る、回収物とゴムラテックスの混合物からなるゴムラテックス組成物を用い、ゴムラテックス中のゴム粒子に適合した処理条件で成形体を作製した場合、得られた成形体は、磁気機能性流体が有する磁気特性と同様の磁気特性(例えば、磁性流体における磁気ヒステリシスが観察されないなど)を有するものと推定される。
【実施例
【0050】
以下、本発明を実験例(実施例および比較例を含む)に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。以下の記載において、「%」は「質量%」を示すものとする。
【0051】
(1.原料)
以下の原料(被乾燥物)を準備した。
「磁性流体1」: 水ベース磁性流体(固形分22.4%、製品名「EXP.14005」、フェローテック社製、固形分:平均粒子径40nmの、オレイン酸ナトリウム(分散剤)が被覆されたマグネタイト粒子(磁性粒子)、分散媒(極性液体):水)
「磁性流体2」: 油ベース磁性流体(固形分80%、製品名「EXP.12038」、フェローテック社製、固形分:平均粒子径15nmの、オレイン酸ナトリウム(分散剤)が被覆されたマグネタイト粒子(磁性粒子)、分散媒(無極性液体):イソパラフィン)
【0052】
(2.回収物)
上記(1.原料)に記載の原料に対し以下の処理を行うことにより、実験例1~3の回収物1~3を得た(実験例4、実験例5は未処理)。
【0053】
「真空凍結乾燥法」:2リットルの磁性流体1をアルミ容器に分取し、凍結乾燥機(RLEII-103型、共和真空技術社製)内の棚板上に載置した。次に、133Pa下にて-56℃での減圧乾燥(棚温度:40℃)を24時間行った。その後、凍結乾燥機から容器を取り出し、実験例1の回収物1を得た。
「蒸発法」:100mlの磁性流体1をビーカーに入れ、乾燥温度80℃、大気圧下で8時間乾燥させることにより、実験例2の回収物2を得た。
「凝析沈降法」:50mlの磁性流体2を分取し、エタノール(85%水溶液)を50ml添加して、よく攪拌し、磁性粒子を凝集沈降させた。沈降時間は24時間とした。その後、エタノールをろ別し、実験例3の回収物3を得た。
【0054】
(3.回収物の評価1)
実験例1~3で得られた各回収物1~3の状態を目視にて観察した。その結果、実験例1の回収物1はサラサラとした粉末状を呈していた。実験例2、3の回収物2、3は、いずれも、ごつごつした結晶性の粉末状を呈していた(実験例4、5は回収物なし)。
【0055】
(4.ゴムラテックスとの混合)
実験例1、2、3の各回収物20g、実験例4の磁性流体1:89.3g、および実験例5の磁性流体2:25gに対し、それぞれ、天然ゴム系ラテックス(固形分60%、製品名「Halatex」、レヂテックス社製)を20g加えて混合し、実験例1~5のゴムラテックス組成物を得た。
【0056】
(5.ゴムラテックス組成物の評価2)
実験例1~5の各ゴムラテックス組成物について下記5-1.の評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
(5-1.混合状態)
各ゴムラテックス組成物中での回収物の存在状態を、目視にて観察し、以下の基準で評価した。
「〇」: 良好(回収物のゴムラテックス組成物中での分離凝集なし)
「△」: 一部不良(回収物の10%以上、30%未満がゴムラテックス組成物中で分離凝集)
「×」: 不良(回収物の30%以上がゴムラテックス組成物中で分離凝集)
【0058】
(6.成形体の製造)
混合状態が良好であった実験例1、4の各ゴムラテックス組成物を、100mlのディスポカップ(アズワン社製)に入れ、90℃×3hの条件で乾燥させ、実験例1、4の各成形体を作製した。
【0059】
(7.成形体の評価3)
実験例1、4の各成形体について下記7-1.、下記7-2.の評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
(7-1.形状安定性)
ディスポカップから取り出した 各成形体の形状安定性を、目視にて観察し、以下の基準で評価した。
「〇」: 良好(ディスポカップから取り出せ、形状を保持している)
「×」: 不良(ディスポカップから取り出せない又は、取り出す際に成型体が部分的に破損している。)
【0061】
(7-2.水分残渣性)
ディスポカップから取り出した 各成形体の水分残渣性を、以下の基準で評価した。
「〇」: 良好(成型体の表面を指で押しても水分が流れ出ない)
「×」: 不良(成型体の表面を指で押すと水分が流れ出る)
【0062】
【表1】
【0063】
(8.考察)
表1に示すように、極性溶媒ベース磁気機能性流体の一例である水ベース磁性流体を被乾燥物とし、この被乾燥物を真空凍結乾燥して得られた、実験例1の回収物1は、サラサラとした粉末状を呈しており(評価1)、ゴムラテックスとの混合物中への馴染みが良い、すなわち分離凝集がないことが確認された(評価2が○)。これに対し、同じく、水ベース磁性流体を被乾燥物としたものの、蒸発法にて得られた、実験例2の回収物2は、ごつごつとした結晶性の粉末を呈していたため(評価1)、ゴムラテックスとの混合物中への馴染みが悪いことが確認された(評価2が×)。油ベース磁性流体を被乾燥物とし、凝析沈降法にて得られた、実験例3の回収物3も、回収物2と同様に、ごつごつとした結晶性の粉末を呈していたため(評価1)、ゴムラテックスとの混合物中への馴染みが悪いことが確認された(評価2が×)。
分散媒の除去処理を施さず、水ベース磁性流体をゴムラテックスと混合して得られた実験例4のゴムラテックス組成物の、混合状態は良好であったが(評価2が○)、同じく分散媒の除去処理を施さず、油ベース磁性流体をゴムラテックスと混合して得られた実験例5のゴムラテックス組成物の、混合状態は悪かった(評価2が×)。
【0064】
回収物1を用いて得られたゴムラテックス組成物から製造された、実験例1の成形体は、形状安定性と水分残渣性の双方が良好であることが確認された(評価3がともに○)。これに対し、水ベース磁性流体をゴムラテックスと混合して得られたゴムラテックス組成物から製造された、実験例4の成形体は、形状安定性は良好であったものの(評価3の形状安定性が○)、水分残渣性が悪化することが確認された(評価3の水分残渣性が×)。
【0065】
以上より、実験例1で得られた回収物1、該回収物1を用いて製造されたゴムラテックス組成物、および該ゴムラテックス組成物から製造された成形体の有用性が確認できた。