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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20241107BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20241107BHJP
   H05K 7/14 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G06K19/077 156
G06K19/07 060
H05K7/14 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020147313
(22)【出願日】2020-09-02
(65)【公開番号】P2022042100
(43)【公開日】2022-03-14
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(73)【特許権者】
【識別番号】000108085
【氏名又は名称】セコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須江 俊介
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-070373(JP,A)
【文献】特開2006-345484(JP,A)
【文献】特開2001-339176(JP,A)
【文献】特開2007-258877(JP,A)
【文献】特開2017-072939(JP,A)
【文献】特開2002-183699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
G06K 19/07
H05K 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セキュリティシステムにおいて用いられる無線通信装置であって、
前記無線通信装置の外殻を形成するケースと、
無線通信を制御する電子部品が搭載された電子回路基板と、
前記電子回路基板を前記ケースの内側面であるケース内側面から離れた位置で保持し、前記電子回路基板を保持した状態で前記ケース内側面に接する保持部材と、
を備え、
前記保持部材は、円形の平面視形状を有するボタン型の電池を収容可能であって、前記電池の側面の少なくとも一部を覆って前記電池を収容する電池収容部を有し、
前記電池収容部は、前記電池の径方向に厚みを持つ収容壁であって、前記収容壁の外側面が前記ケース内側面と接し、前記収容壁の内側面が前記電池の側面と接した状態で前記収容された電池を保持する収容壁を有する、
無線通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線通信装置において、
前記保持部材は、さらに、板状部を有し
前記電池収容部に前記電池が収容された状態において、前記板状部の一方の面は、前記電池収容部に収容された前記電池に対向し、前記板状部の他方の面は、前記電子回路基板に対向する、無線通信装置。
【請求項3】
請求項または請求項に記載の無線通信装置において、
前記保持部材は、前記電子回路基板を前記ケース内における底面から離れた位置で保持する、無線通信装置。
【請求項4】
請求項から請求項までのいずれか一項に記載の無線通信装置において、
前記ケースは、前記電池の径方向と平行な方向を割り面として互いに着脱可能に組み付けられた第1ケース部と第2ケース部とを有し、
前記第1ケース部は、前記電子回路基板と前記保持部材と前記電池とを収容するための収容空間の少なくとも一部を形成する凹部を有する、無線通信装置。
【請求項5】
請求項に記載の無線通信装置において、
前記第1ケース部は、
前記凹部を形成する窪みが形成されたカップ状の外観形状を有する主部材と、
前記主部材の内側表面を覆うカップ状の外観形状を有し、前記電池収容部を全周に亘って囲んでいる弾性部材と、
を有する、無線通信装置。
【請求項6】
請求項に記載の無線通信装置において、
記電池の径方向と平行な方向における前記保持部材の大きさは、少なくとも前記弾性部材と接する箇所において、前記径方向と平行な方向における前記電子回路基板の大きさよりも大きい、無線通信装置。
【請求項7】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の無線通信装置であって、
前記電子回路基板は、切り欠き部を有し、
前記保持部材は、前記切り欠き部と係合する爪を有する、無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯性に優れる無線タグがセキュリティシステムにおいて用いられている。例えば、特許文献1に記載のように、入退室管理システムにおいて、入退場管理エリアに設置されている認証を行う管理装置に対し、無線タグが有する装置固有のタグIDと、ユーザ固有の暗証番号とを含むタグ情報を無線送信するために、無線タグが用いられる。この入退室管理システムにおいては、管理装置は、受信したタグ情報を、予め登録されているIDおよび暗証番号と比較して認証し、認証成功の場合には、部屋の扉のロックを解除する。
【0003】
一般に、無線タグは、無線通信を実行する通信用IC(Integrated Circuit)、アンテナおよびメモリ等が搭載された電子回路基板や、アクティブリーダ方式の無線タグにおいては電池が、樹脂等で形成されたケース内に収容された装置構成を有する。例えば、特許文献2に記載の携帯機の装置構成に類似する装置構成が採用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-106570号公報
【文献】特開2004-150184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セキュリティシステムにおいて用いられる無線タグは、ユーザが持ち歩くことが前提となる。このため、歩行時の振動や、無線タグの収納場所によってはそれ以上の衝撃が無線タグに入力されるおそれがある。しかし、特許文献2の携帯機のような装置構成では、弾性部材とカバーとが一体となったケースに対して、電子回路基板の外周縁が直接接触して支持されているため、上述の振動や衝撃等に起因する応力がケースから直接的に電子回路基板に入力されてしまう。これにより、電子回路基板に負荷が掛かり、電子回路基板自体の湾曲や損傷、および電子回路基板に搭載された電子部品の破損が生じ得る。他方、近年、無線タグの小型化が求められているため、単純に振動や衝撃を吸収するための部品点数を増やすことは容易ではないという実情がある。上述した問題や状況は、無線タグに限らず、任意の種類の無線通信装置に共通している。このため、セキュリティシステムにおいて用いられる無線通信装置において、部品点数を増加させることなく電子回路基板への応力の入力を抑制可能な技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
[形態1]セキュリティシステムにおいて用いられる無線通信装置であって、前記無線通信装置の外殻を形成するケースと、無線通信を制御する電子部品が搭載された電子回路基板と、前記電子回路基板を前記ケースの内側面であるケース内側面から離れた位置で保持し、前記電子回路基板を保持した状態で前記ケース内側面に接する保持部材と、を備え、前記保持部材は、円形の平面視形状を有するボタン型の電池を収容可能であって、前記電池の側面の少なくとも一部を覆って前記電池を収容する電池収容部を有し、前記電池収容部は、前記電池の径方向に厚みを持つ収容壁であって、前記収容壁の外側面が前記ケース内側面と接し、前記収容壁の内側面が前記電池の前記側面と接した状態で前記収容された電池を保持する収容壁を有する、無線通信装置。
【0007】
(1)本開示の一形態によれば、セキュリティシステムにおいて用いられる無線通信装置が提供される。この無線通信装置は、前記無線通信装置の外殻を形成するケースと、無線通信を制御する電子部品が搭載された電子回路基板と、前記電子回路基板を保持し、前記電子回路基板を保持した状態で前記ケースの内側面であるケース内側面に接する保持部材と、を備え、前記保持部材は、前記電子回路基板を前記ケース内側面から離れた位置で保持する。
この形態の無線通信装置によれば、保持部材は、電子回路基板をケース内側面から離れた位置で保持するので、ケースを介して電気回路基板に直接的に応力が入力されることを抑制できる。このため、部品点数を増加させることなく電子回路基板への応力の入力を抑制できる。また、保持部材は、電子回路基板を保持した状態でケース内側面に接するので、ケース内における電子回路基板の位置ずれを抑制しつつ、ケースの剛性を保持部材により向上できる。
(2)上記形態の無線通信装置において、前記保持部材は、板状部を有し電池を収容可能な電池収容部を有し、前記電池収容部に前記電池が収容された状態において、前記板状部の一方の面は、前記電池収容部に収容された前記電池に対向し、前記板状部の他方の面は、前記電子回路基板に対向してもよい。
この形態の無線通信装置によれば、保持部材は、ケース内を物理的に区画して電池と電子回路基板とを互いに異なる空間に位置させることができる。このため、無線通信装置に衝撃が加えられた際に、電池が電子回路基板に衝突することを抑制でき、また、かかる衝突に起因して予期せぬ電流が電子回路基板に流れて電子部品が損傷することを抑制できる。
(3)上記形態の無線通信装置において、前記保持部材は、電池を収容可能な電池収容部を有し、前記電池は、円形の平面視形状を有するボタン型電池であり、前記電池収容部は、前記電池が収容された状態において前記電池の側面と接する収容部内側面と、前記電池が収容された状態において前記ケース内側面に接する収容部外側面であって、前記電池の径方向と平行な方向において前記収容部内側面と対応する収容部外側面と、を有してもよい。
この形態の無線通信装置によれば、電池収容部は、電池が収容された状態において電池の側面と接する収容部内側面と、電池が収容された状態においてケース内側面に接し、電池の径方向と平行な方向において収容部内側面と対応する収容部外側面とを有するので、電池収容部を電池によって内側から支えることができる。これにより、無線通信装置に衝撃が加えられて、ケースの内側面から電池収容部の収容部外側面に応力が入力された場合に、径方向と平行な方向において対応する収容部内側面で接している電池の反力により、入力された応力をキャンセルして、保持部材の変形や移動を抑制できる。かかる結果として、保持部材により保持される電子回路基板に対して応力が入力されることを抑制できる。
(4)上記形態の無線通信装置において、前記保持部材は、前記電子回路基板を前記ケース内における底面から離れた位置で保持してもよい。
この形態の無線通信装置によれば、保持部材は、電子回路基板をケース内における底面から離れた位置で保持するので、ケースを介して電気回路基板に直接的に応力が入力されることをより抑制できる。
(5)上記形態の無線通信装置において、前記ケースは、前記電池の径方向と平行な方向を割り面として互いに着脱可能に組み付けられた第1ケース部と第2ケース部とを有し、前記第1ケース部は、前記基板と前記保持部材と前記電池とを収容するための収容空間の少なくとも一部を形成する凹部を有してもよい。
この形態の無線通信装置によれば、ケースは、電池の径方向と平行な方向を割り面として互いに着脱可能に組み付けられた第1ケース部と第2ケース部とを有し、第1ケース部は、電子回路基板と保持部材と電池とを収容するための収容空間の少なくとも一部を形成する凹部を有しているので、例えば、電池交換や修理等において、ユーザが無線通信装置内部にアクセスし易くできる。
(6)上記形態の無線通信装置において、前記ケースは、前記凹部の表面を覆うカップ状の外観形状を有し、前記電池収容部を全周に亘って囲んでいる弾性部材を、さらに有してもよい。
この形態の無線通信装置によれば、ケースは、凹部の表面を覆うカップ状の外観形状を有し、電池収容部を全周に亘って囲んでいる弾性部材を有するので、ケースの外部から入力された応力が直接的に電池収容部に入力されることを抑制でき、また、入力された応力の少なくとも一部を弾性部材によって吸収して緩和できる。
(7)上記形態の無線通信装置において、前記電池は、円形の平面視形状を有するボタン型電池であり、前記電池収容部は、前記電池の側面の少なくとも一部を覆って前記電池を収容し、前記電池の径方向と平行な方向における前記保持部材の大きさは、少なくとも前記弾性部材と接する箇所において、前記径方向と平行な方向における前記電子回路基板の大きさよりも大きくてもよい。
この形態の無線通信装置によれば、電池の径方向と平行な方向における保持部材の大きさは、少なくとも弾性部材と接する箇所において、電子回路基板の大きさよりも大きいので、ケースの外部から入力されて弾性部材により緩和された応力は、電子回路基板ではなく、保持部材に伝わることとなる。このため、かかる応力が電子回路基板に直接的に伝わることを抑制できる。
(8)上記形態の無線通信装置において、前記電子回路基板は、切り欠き部を有し、前記保持部材は、前記切り欠き部と係合する爪を有してもよい。
この形態の無線通信装置によれば、電子回路基板の切り欠き部に保持部材の爪が係合することにより、保持部材は電子回路基板を保持できる。
本開示は、種々の形態で実現することも可能である。例えば、無線通信装置を備えるセキュリティシステム、無線タグ、および無線通信装置の製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態の無線通信装置としての無線タグの外観構成を示す上面図である。
図2】無線タグの外観形状を示す平面図である。
図3】第2ケース部の構成を示す斜視図である。
図4】第1ケース部に収容された状態の保持部材および電池を示す斜視図である。
図5】第1ケース部に収容された状態の保持部材および電池を示す上面図である。
図6図5に示す6-6断面線での第1ケース部等の断面を示す断面図である。
図7図5に示す7-7断面線での第1ケース部等の断面を示す断面図である。
図8】電子回路基板を保持した状態の保持部材を示す斜視図である。
図9図7に示す部分領域Xを拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.実施形態:
図1は、本開示の一実施形態の無線通信装置としての無線タグ10の外観構成を示す上面図である。図2は、無線タグ10の外観形状を示す平面図である。図1には、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸が表されている。なお、他の図2図9におけるX軸、Y軸およびZ軸は、いずれも図1のX軸、Y軸およびZ軸に対応する。本実施形態において、「X軸方向」とは、+X方向および-X方向の総称である。同様に、「Y軸方向」とは+Y方向および-Y方向の総称であり、「Z軸方向」とは+Z方向および-Z方向の総称である。
【0010】
無線タグ10は、無線通信を実行可能に構成されており、セキュリティシステムにおいて用いられる。具体的には、本実施形態において、無線タグ10は、住居等の家屋内の異常を検知して報知等を行う、いわゆるホームセキュリティシステムにおいて用いられる。かかるホームセキュリティシステムでは、例えば、玄関近傍に操作盤が設置されており、かかる操作盤に設けられたボタンや操作パネルを、無線タグ10を携帯したユーザが操作することにより、家屋のセキュリティレベルを切り替えることができる。例えば、窓や扉の開閉動作の有無がユーザやセキュリティ会社に報知されるセキュリティレベルと、このような開閉動作の有無が報知されないセキュリティレベルとを相互に切り替えることができる。セキュリティレベルの切り替え操作を行うのが正規のユーザ、すなわち、家屋の住人であることの認証が、無線タグ10を利用して実行される。具体的には、無線タグ10に予め記憶されている認証情報が無線通信によって、操作盤に通知される。操作盤には、ネットワークを介して認証装置が接続されており、無線タグ10から受信された認証情報が認証装置に中継される。認証装置は、受信した認証情報を予め登録されている認証情報を比較することにより、認証を実行する。なお、認証情報としては、例えば、無線タグ10の機器本体固有のIDや、ユーザが予め無線タグ10に記憶させておいたパスワード等の情報が該当する。
【0011】
図1および図2に示す無線タグ10は、薄い扁平な略直方体の外観形状を有する。一例として、縦3cm、横3cm、高さ1cmの略直方体の外観形状を有してもよい。無線タグ10は、外殻を形成するケース13の内部に、後述する電子回路基板20や電池90などが収容された構造を有する。図2に示すように、ケース13は、第1ケース部11と第2ケース部12とが、無線タグ10の厚さ方向(Z軸方向)に分解可能に互いに組み付けられて構成されている。第1ケース部11の表面には、操作部111が設けられている。操作部111は、ユーザが無線タグ10に対して何らかの操作を行う場合に用いられる。かかる操作としては、例えば、無線タグ10の動作モードを強制的にスリープモードや、ウェイクアップモードに移行させる操作などが該当する。
【0012】
図3は、第2ケース部12の構成を示す斜視図である。第2ケース部12は、中央が凹状に窪んだ底の浅いカップ状、言い換えるとトレイ状の外観形状を有する。本実施形態において、第2ケース部12は、ポリエチレンやポリアミドといった合成樹脂により形成されている。なお、合成樹脂に代えてアルミニウム等の金属や炭素繊維などにより形成されてもよい。第2ケース部12が有する4つの側面123および底面124で囲まれた空間121は、後述する電子回路基板20や電池90等のZ軸方向のおよそ半分を収容する空間として利用される。各側面123には、係合爪122が設けられている。係合爪122は、第1ケース部11と第2ケース部12とが互いに組み付けられる際に用いられる。底面124における1つの角には、Z軸方向に延設されたリブ125が配置されている。第1ケース部11と第2ケース部12とが組み付けられた状態において、リブ125の先端は、後述する保持部材30に接する。これにより、無線タグ10の内部における保持部材30のZ軸方向への位置ずれが抑制される。加えて、第2ケース部12に対して+Z方向の応力が加えられた場合に、底面124が撓むことが抑制される。
【0013】
図4は、第1ケース部11に収容された状態の保持部材30および電池90を示す斜視図である。図5は、第1ケース部11に収容された状態の保持部材30および電池90を示す上面図である。図6は、図5に示す6-6断面線での第1ケース部11等の断面を示す断面図である。図7は、図5に示す7-7断面線での第1ケース部11等の断面を示す断面図である。
【0014】
第1ケース部11は、第2ケース部12と同様に、中央に図6および図7に示す凹部115を有するカップ状(トレイ状)の外観形状を有する。第1ケース部11は、主部材110と、弾性部材40とを備える。凹部115は、無線タグ10の内部において、電子回路基板20と保持部材30と電池90を収容するための収容空間の一部を形成する。
【0015】
主部材110は、凹部115を形成する窪みが形成されたカップ状(トレイ状)の外観形状を有する。主部材110は、第2ケース部12と同様に合成樹脂により形成されている。主部材110における外周縁よりも若干内側の位置には、-Z方向に突出する周回壁部113が設けられている。第1ケース部11と第2ケース部12とが組み付けられた状態において、周回壁部113における第2ケース部12の係合爪122と対応する4つの位置には、それぞれ被係合部112が設けられている。被係合部112は、第2ケース部12の係合爪122と係合可能に構成されている。
【0016】
図4ないし図7に示す弾性部材40は、主部材110の内側表面を覆うカップ状の外観形状を有する。弾性部材40は、電池収容部39を全周に亘って囲んでいる。本実施形態において、弾性部材40は、ブチルゴムにより形成されている。なお、ブチルゴムに限らず、シリコンゴムや、天然ゴムなど、任意の種類の弾性材料により形成されてもよい。弾性部材40の-Z方向の端部の開口の周囲には、リップ部41が形成されている。リップ部41は、他の部位に比べて若干厚さが大きく形成されている。リップ部41は、第1ケース部11と第2ケース部12とが組み付けられた状態において、第2ケース部12の+Z方向の端面と、第1ケース部11の-Z方向の端面とに挟まれて潰される。これにより、第1ケース部11と第2ケース部12との合わせ面における気密および水密が確保される。図7に示すように、弾性部材40の内側には段差st1、st2が設けられ、かかる段差st1、st2には、電子回路基板20の+Z方向の面における外周縁近傍の部位が接している。また、図7に示すように、電子回路基板20の-Z方向の面における外周縁近傍の部位は、電子回路基板20が段差st1、st2と接する位置と対応する位置において、電池収容部39(後述の一対の角部32、33)と接している。
【0017】
電池90は、本実施形態では、いわゆるボタン型電池(「コイン型電池」とも呼ばれる)に相当する。本実施形態において、電池90の径方向は、X-Y平面と平行である。電池90の厚さ方向はZ軸方向と平行である。電池90は、後述する電子回路基板20に搭載されている電子部品に電力を供給する。すなわち、本実施形態において、無線タグ10は、いわゆるアクティブリーダ方式の無線タグに相当する。
【0018】
保持部材30は、第1ケース部11の内側面および第2ケース部12の内側面(以下、単に「ケース内側面」と呼ぶ)に接する。保持部材30は、電子回路基板20をケース内側面から離れた位置で保持する。ケース内側面には、第1ケース部11の底面および第2ケース部12の底面が含まれる。したがって、保持部材30は、電子回路基板20をケース内(第1ケース部11および第2ケース部12)における底面から離れた位置で保持するともいえる。保持部材30は、電池収容部39を有する。電池収容部39は、電池90を収容する。電池収容部39は、複数の固定爪31と、一対の角部32、33を備える。固定爪31は、電池90の-Z方向の面(プラス極またはマイナス極の面)を+Z方向に支持する。これにより、電池90の-Z方向への位置ずれが抑制される。一対の角部32、33は、電池90を挟んで互いに対向する位置に配置されている。一対の角部32、33は、それぞれ、電池90の側面に接しており、X-Y平面と平行な方向に沿って他方に向かって電池90に若干の応力を加える。このような構成により、電池90のX-Y方向に沿った位置ずれが抑制される。
【0019】
図8は、電子回路基板20を保持した状態の保持部材30を示す斜視図である。なお、図8では、第1ケース部11は省略されている。保持部材30の-Z方向の端部には、4つの爪34が設けられている。具体的には、+X方向の外縁、-X方向の外縁、+Y方向の外縁、-Y方向の外縁にそれぞれ1つずつ爪34が配置されている。各爪34は、-Z方向に延設されており、電子回路基板20の外縁部に設けられている4つの切り欠き部24のうち、対応する位置の切り欠き部24にそれぞれ係合する。図8に示すように、保持部材30の角部のX-Y平面と平行な方向の大きさは、電子回路基板20の角部のX-Y平面と平行な方向の大きさよりも大きい。このため、かかる部分において保持部材30は弾性部材40と接し、他方、電子回路基板20は弾性部材40と接していない。換言すると、電子回路基板20は弾性部材40から離れて配置されており、電子回路基板20と弾性部材40との間には隙間が設けられている。このように、電池90の径方向と平行な方向における保持部材30の大きさは、少なくとも弾性部材40と接する箇所において、電子回路基板20の大きさよりも大きく、また、電子回路基板20と弾性部材40との間には隙間が設けられているので、ケース13を介して入力されて弾性部材40により緩和された応力は、電子回路基板20ではなく、保持部材30に伝わることとなる。このため、かかる応力が電子回路基板20に直接的に伝わることを抑制できる。
【0020】
図6ないし図8に示すように、無線タグ10は、電子回路基板20を備える。電子回路基板20は、板状の基板に、様々な電子部品が搭載された構成を有する。このような電子部品としては、例えば、無線通信を制御するためのIC(Integrated Circuit)、アンテナ素子、認証情報を記憶するROM(Read Only Memory)などが該当する。上述のように、電子回路基板20の外縁部に設けられた4つの切り欠きに保持部材30の4つの爪34が係合することにより、電子回路基板20は、保持部材30に保持される。このように保持部材30に保持された状態で無線タグ10内の収容される電子回路基板20は、図6および図7に示すように、第1ケース部11および第2ケース部12に直接的に接触していない。したがって、ケース13を介して無線タグ10の内部に入力される応力が直接的に電子回路基板20に伝わることが抑制される。また、図6および図7に示すように、電子回路基板20に係合している保持部材30の4つの爪34は、電子回路基板20と係合している部分よりも+Z方向に突出した部分を有しており、かかる部分において弾性部材40の底面(凹部115の底面)に接している。これにより、電子回路基板20と第1ケース部11(凹部115)との間に隙間が設けられ、電子回路基板20が第1ケース部11に接することが抑制される。したがって、ケース13に対してZ軸方向から応力が入力された場合に、かかる応力がケース13から直接的に電子回路基板20に伝わることが抑制される。また、4つの爪34が、電子回路基板20と係合している部分よりも+Z方向に突出した部分を有することにより、第1ケース部11の内側において電子回路基板20よりも+Z方向に収容空間Ar1を形成することができる。このため、かかる収容空間Ar1を利用して、電子回路基板20の表面に接続されている各種電子部品を収容することができる。
【0021】
図9は、図7に示す部分領域Xを拡大して示す拡大図である。部分領域Xは、角部33を中心とする領域である。図7および図9に示すように、角部33は、縦壁部33aと、板状部33bとを備える。縦壁部33aは、Z軸方向と平行に延設された壁状の部位である。図9に示すように、縦壁部33aの内側面S3は、電池90の側面と径方向(X-Y平面と平行な方向)に接している。内側面S3は、電池収容部39の内側面に該当し、本開示における収容部内側面に相当する。縦壁部33aの径方向外側の外周側面S4は、弾性部材40に接している。このとき、外周側面S4は、縦壁部33aの内側面S3のうちの電池90と接する部分と対応する位置において、弾性部材40(第1ケース部11)に接している。外周側面S4は、電池収容部39の外側面に該当し、本開示における収容部外側面に相当する。上述のように、縦壁部33aの内側面S3において電池90と接するので、電池収容部39を電池90によって内側から支えることができる。これにより、無線タグ10に衝撃が加えられて、ケース内側面から電池収容部39の外側面、すなわち、縦壁部33aの外周側面S4に応力が入力された場合に、径方向と平行な方向において対応する内側面S3で接している電池90の反力により、入力された応力をキャンセルして、保持部材30の変形や移動を抑制できる。そして、かかる変形や移動を抑制することにより、保持部材30により保持される電子回路基板20に対して応力が入力されることを抑制できる。
【0022】
板状部33bは、X-Y平面と平行に延設される薄板状の外観形状を有する。板状部33bは、Z軸方向において、電子回路基板20と電池90との間に位置している。板状部33bは、ケース13の内部を区画して、電池90と電子回路基板20とを互いに異なる空間に位置させる。板状部33bの-Z方向の面S1は、電池収容部39に収容されている電池90に対向し、また、電池90に接している。他方、板状部33bの+Z方向の面S2は、電子回路基板20に対向している。図9に示すように、面S2は、電子回路基板20と接していない。上述のように、板状部33bが電子回路基板20と電池90との間に位置していることにより、無線タグ10に衝撃が加えられた際に、電池90が電子回路基板20に衝突することを抑制でき、また、かかる衝突に起因して予期せぬ電流が電子回路基板20に流れて電子部品が損傷することを抑制できる。また、電子回路基板20と電池90とを、板状部32b、33bの厚さ(Z軸方向の長さ)を利用して、互いに隔てて配置させるので、これらを同一平面上に互いに隔てて並んで配置させる構成に比べて、無線タグ10のサイズが過度に大きくなることを抑制できる。
【0023】
なお、上述のように、板状部33bは、電子回路基板20に接していない。換言すると、板状部33bは、電子回路基板20からZ軸方向に離れて配置されている。保持部材30は、板状部33bとは異なる他の部位であって、板状部33bと同様に電子回路基板20に接しないで離れて配置された部位を有している。
【0024】
角部32の構成は、上述した角部33の構成と同様である。すなわち、図7に示すように、角部32は、縦壁部32aおよび板状部32bを有し、縦壁部32aの内側面は電池90と接し、縦壁部32aの外側面は、弾性部材40と接する。板状部32bの-Z方向の面は、電池収容部39に収容されている電池90に対向し、+Z方向の面は電子回路基板20に対向している。
【0025】
以上説明した本実施形態の無線タグ10によれば、保持部材30は、電子回路基板20をケース内側面から離れた位置で保持するので、ケース13を介して電子回路基板20に直接的に応力が入力されることを抑制できる。このため、部品点数を増加させることなく電子回路基板20への応力の入力を抑制できる。また、保持部材30は、電子回路基板20を保持した状態でケース内側面に接するので、ケース13内における電子回路基板20の位置ずれを抑制しつつ、ケース13の剛性を保持部材30により向上できる。
【0026】
また、保持部材30は、ケース13内を物理的に区画して電池90と電子回路基板20とを互いに異なる空間に位置させることができる。このため、無線タグ10に衝撃が加えられた際に、電池90が電子回路基板20に衝突することを抑制でき、また、かかる衝突に起因して予期せぬ電流が電子回路基板20に流れて電子部品が損傷することを抑制できる。
【0027】
また、電池収容部39は、電池90が収容された状態において電池90の側面と接する収容部内側面である面S3と、電池90が収容された状態においてケース内側面に接し、電池90の径方向と平行な方向において収容部内側面と対応する収容部外側面である面S4とを有するので、電池収容部39を電池90によって内側から支えることができる。これにより、無線タグ10に衝撃が加えられて、ケース13の内側面から電池収容部39の収容部外側面に応力が入力された場合に、径方向と平行な方向において対応する収容部内側面で接している電池90の反力により、入力された応力をキャンセルして、保持部材30の変形や移動を抑制できる。かかる結果として、保持部材30により保持される電子回路基板20に対して応力が加えられることを抑制できる。
【0028】
また、保持部材30は、電子回路基板20をケース13内における底面から離れた位置で保持するので、ケース13を介して電気回路基板20に直接的に応力が入力されることをより抑制できる。
【0029】
また、ケース13は、電池90の径方向と平行な方向を割り面として互いに着脱可能に組み付けられた第1ケース部11と第2ケース部12とを有し、第1ケース部11は、電子回路基板20と保持部材30と電池90とを収容するための収容空間Ar1の少なくとも一部を形成する凹部115を有しているので、例えば、電池交換や修理等において、ユーザが無線タグ10内部にアクセスし易くできる。
【0030】
また、第1ケース部11は、凹部115の表面を覆うカップ状の外観形状を有し、電池収容部39を全周に亘って囲んでいる弾性部材40を有するので、第1ケース部11の外部から入力された応力が直接的に電池収容部に入力されることを抑制できる。また、入力された応力の少なくとも一部を弾性部材40によって吸収して緩和できる。
【0031】
また、電池90の径方向と平行な方向における保持部材30の大きさは、少なくとも弾性部材40と接する箇所において、電子回路基板20の大きさよりも大きいので、ケース13を介して入力されて弾性部材40により緩和された応力は、電子回路基板20ではなく、保持部材30に伝わることとなる。このため、かかる応力が電子回路基板20に直接的に伝わることを抑制できる。
【0032】
また、電子回路基板20は、切り欠き部24を有し、保持部材30は、切り欠き部24と係合する爪34を有するので、電子回路基板20の切り欠き部24に保持部材30の爪34が係合することにより、保持部材30は電子回路基板20を保持できる。
【0033】
B.他の実施形態:
(B1)上記実施形態において、一対の角部32、33は、それぞれ板状部32b、33bを備えていたが、板状部32b、33bのうちの少なくとも一方を省略してもよい。かかる構成においても、縦壁部32a、33aが電池90の側面を径方向に挟持することにより、電池収容部39に収容された電池90を支持できる。
【0034】
(B2)上記実施形態において、電池90は、いわゆるボタン型電池であったが、ボタン型電池に代えて、円柱状の乾電池など他の任意の形状の電池であってもよい。かかる構成においても、電池収容部39が電池の外側面と接する面と、ケース内側面と接する面とを有することにより、外部より応力が入力された際に保持部材30が変形、損傷することを抑制できる。
【0035】
(B3)上記実施形態では、ケース13は、第1ケース部11および第2ケース部12が電池90の径方向と平行な方向を割り面として互いに組み付けられた構造を有していたが、本開示はこれに限定されない。例えば、電池90の径方向と直交する方向(Z軸方向と平行な方向)を割り面として、2つのケース部が互いに組み付けられた構造を有していてもよい。また、例えば、電池90の出し入れを行うための開口が形成された略直方体の筐体と、かかる筐体の開口を開閉可能に塞ぐ蓋部材とにより、ケース13を構成してもよい。
【0036】
(B4)上記実施形態において、電池の径方向と平行な方向における保持部材30の大きさは、少なくとも弾性部材40と接する箇所において、径方向と平行な方向における電子回路基板20の大きさよりも大きかったが、本開示はこれに限定されない。かかる箇所において、保持部材30の大きさは電子回路基板20の大きさ以下であってもよい。かかる構成においても、電子回路基板20が弾性部材40に接しないように構成されることにより、上記実施形態と同様な効果を奏する。電子回路基板20が弾性部材40に接しないように構成するためには、例えば、弾性部材40のうちのリップ部41の近傍のZ軸方向に延設された部分において、径方向に電子回路基板20と対向する部分の厚み(X-Y平面と平行な方向の厚み)を小さくし、他方、径方向に保持部材30と対向する部分の厚みを大きくして、電子回路基板20と対向する部分の表面を径方向外側にオフセットさせてもよい。
【0037】
(B5)保持部材30は、爪34が電子回路基板20の切り欠き部24に係合することによって、電子回路基板20を保持していたが、他の任意の方法で保持してもよい。具体的には、例えば、電子回路基板20に厚さ方向の貫通孔を設けておき、保持部材30がかかる貫通孔に挿入可能なスナップフィット用の爪を備える構成とし、かかる爪を貫通孔に挿入させることにより、電子回路基板20を保持するようにしてもよい。
【0038】
(B6)上記実施形態における無線タグ10の構成は、あくまで一例であり、様々に変更可能である。例えば、弾性部材40を省略してもよい。かかる構成においては、保持部材30の外周縁が主部材110の内側面に接する構成としてもよい。また、無線タグ10は、ホームセキュリティシステムに適用されていたが、他の任意の種類のセキュリティシステムに適用されてもよい。例えば、企業において居室や倉庫や機械室等を監視するためのセキュリティシステムに適用されてもよい。また、無線タグ10に限らず、携帯性を有する任意の種類の無線通信装置に本開示を適用してもよい。
【0039】
本開示は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
10…無線タグ、11…第1ケース部、12…第2ケース部、13…ケース、20…電子回路基板、24…切り欠き部、30…保持部材、31…固定爪、32…角部、32a…縦壁部、32b…板状部、33…角部、33a…縦壁部、33b…板状部、34…爪、39…電池収容部、40…弾性部材、41…リップ部、90…電池、110…主部材、111…操作部、112…被係合部、113…周回壁部、115…凹部、121…空間、122…係合爪、123…側面、124…底面、125…リブ、Ar1…収容空間、S1…面、S2…面、S3…内側面、S4…外周側面、X…部分領域、st1,st2…段差
図1
図2
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図7
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図9