(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】検出装置、撮像装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/745 20230101AFI20241107BHJP
H04N 23/68 20230101ALI20241107BHJP
H04N 23/54 20230101ALI20241107BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20241107BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20241107BHJP
【FI】
H04N23/745
H04N23/68
H04N23/54
H04N23/55
G03B5/00 J
(21)【出願番号】P 2020148444
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 日向子
【審査官】藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-120132(JP,A)
【文献】特開2011-155396(JP,A)
【文献】特開2016-110000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/40 - 23/76
G03B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源に起因するフリッカの有無を検出する検出装置であって、
撮像素子を用いた連続的な撮像により、被写体に係る複数の撮像画像を取得する第1の取得手段と、
前記複数の撮像画像の撮像中に、防振機構の動作により撮像画角の変化が生じたか否かを判断する判断手段と、
前記第1の取得手段により取得された前記複数の撮像画像に基づいて
、フリッカが発生しているか否かを検出する検出手段と、
を有し、
前記検出手段は、前記複数の撮像画像の撮像中に前記防振機構の動作により撮像画角の変化が生じたと前記判断手段により判断された場合に
、フリッカが発生しているか否かの検出に用いる前記複数の撮像画像中の領域を制限することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記複数の撮像画像の撮像中に前記防振機構の動作により撮像画角の変化が生じていないと前記判断手段により判断された場合よりも、撮像画角の変化が生じたと前記判断手段により判断された場合の方が
、フリッカが発生しているか否かの検出に用いる前記複数の撮像画像中の領域を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記複数の撮像画像の撮像中における前記防振機構の駆動状況を示す情報を取得する第2の取得手段をさらに有し、
前記判断手段は、前記第2の取得手段により取得された前記防振機構の駆動状況を示す情報に基づいて、前記複数の撮像画像の撮像中に前記防振機構の動作により撮像画角の変化が生じたか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記防振機構は、光学式像ブレ補正に係るレンズの駆動機構を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記防振機構は、撮像面像ブレ補正に係る撮像素子の駆動機構を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記検出手段は、前記複数の撮像画像の撮像中の前記防振機構の動作により撮像画角の変化が生じたと判断され、かつ、前記防振機構が像ブレ補正用途でない動作を行う場合に
、フリッカが発生しているか否かの検出に用いる領域の制限を行う請求項1乃至5のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
前記像ブレ補正用途でない動作は、前記防振機構の初期化動作を含むことを特徴とする請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記像ブレ補正用途でない動作は、前記防振機構の予め定めた状態への駆動動作を含むことを特徴とする請求項6または7に記載の検出装置。
【請求項9】
前記複数の撮像画像の撮像中における、該複数の撮像画像を撮像した撮像装置の位置及び姿勢の少なくともいずれかを示す状態情報を取得する第3の取得手段をさらに有し、
前記判断手段は、前記第3の取得手段により取得された前記状態情報に基づいて、前記複数の撮像画像の撮像中に前記防振機構の動作により撮像画角の変化が生じたか否かを判断する
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項10】
前記検出手段は、前記撮像画角の変化の大きさに応じて
、フリッカが発生しているか否かの検出に用いる領域の制限量を異ならせることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の検出装置と、
前記複数の撮像画像を撮像する撮像手段と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
光源に起因するフリッカの有無を検出する検出装置の制御方法であって、
撮像素子を用いた連続的な撮像により、被写体に係る複数の撮像画像を取得する取得工程と、
前記複数の撮像画像の撮像中に、防振機構の動作により撮像画角の変化が生じたか否かを判断する判断工程と、
前記取得工程において取得された前記複数の撮像画像に基づいて
、フリッカが発生しているか否かを検出する検出工程と、
を有し、
前記複数の撮像画像の撮像中に前記防振機構の動作により撮像画角の変化が生じたと前記判断工程において判断された場合に、前記検出工程におい
てフリッカが発生しているか否かの検出に用いる前記複数の撮像画像中の領域が制限されることを特徴とする制御方法。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の検出装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、撮像装置、制御方法及びプログラムに関し、特に撮像環境下におけるフリッカの検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ等の撮像装置は、撮像素子のセンシング性能の向上と画像処理技術の発達に伴い、高感度での撮像が可能になっている。これにより、屋内等の比較的暗い撮像環境であっても、高速なシャッタスピードでの撮像が可能となり、ブレを低減した好適な撮像画像を得ることができる。
【0003】
ところで、屋内での撮像では、撮像環境内に蛍光灯等の商用電源を用いた光源が配置されることがある。このような光源は、商用電源に採用される周波数に応じて明滅する(フリッカが発生する)ため、高速なシャッタスピードで撮像した際に、1つの撮像画像内で、あるいは、連続して撮像された撮像画像間で、露出や色温度のばらつきやムラが発生し得る。例えば、センサの露光(シャッタ)方式や信号読み出し時間によって、所謂面フリッカやラインフリッカと呼ばれるムラが発生する。このような光源に起因する影響を低減すべく、特許文献1には商用電源に対応した600fpsで複数回の電荷蓄積及び読み出しを行い、得られた撮像画像に表れる信号値の変化に基づいてフリッカの有無及びその周波数を検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-014762号公報
【文献】特開2009-111613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような複数の撮像画像に基づいてフリッカの発生を検出する方式では、複数回の撮像中に撮像画角の変化が生じた場合、好適にフリッカの発生を検出できない場合がある。例えば
図6(a)に示されるように、撮像画角が固定された状態で得られた複数の撮像画像には、静的な環境光の輝度601と、フリッカ光源の周期的に変動する輝度602とが合算された状態の輝度変化603が表れるため、上記方式でフリッカを検出できる。一方で、複数回の撮像中に撮像画角の変化が生じた場合、例えば
図6(b)に示されるように、撮像画像中に表れる環境光の輝度611は一定とならず、結果、複数の撮像画像に表れる輝度変化613に周期的な変化が表れず、フリッカの検出精度が低下し得る。あるいは、フリッカ検出に係る演算量が過大となることで処理遅延が生じ、ユーザ所望のタイミングで撮像ができない可能性がある。
【0006】
この点、特許文献2には、撮像装置に振動が生じている不安定状態をフリッカ検出の対象から除外し、安定状態に遷移したことを条件としてフリッカ検出を行う制御する技術が開示されているが、上記問題点を根本的に解決するものではなかった。
【0007】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、撮像画角の変化が生じる場合であってもフリッカの有無を好適に検出する検出装置、撮像装置、制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するために、本発明の検出装置は、光源に起因するフリッカの有無を検出する検出装置であって、撮像素子を用いた連続的な撮像により、被写体に係る複数の撮像画像を取得する第1の取得手段と、複数の撮像画像の撮像中に、防振機構の動作により撮像画角の変化が生じたか否かを判断する判断手段と、第1の取得手段により取得された複数の撮像画像に基づいて、フリッカが発生しているか否かを検出する検出手段と、を有し、検出手段は、複数の撮像画像の撮像中に防振機構の動作により撮像画角の変化が生じたと判断手段により判断された場合に、フリッカが発生しているか否かの検出に用いる複数の撮像画像中の領域を制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このような構成により本発明によれば、撮像画角の変化が生じる場合であってもフリッカの有無を好適に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態及び変形例に係るデジタルカメラ100の機能構成を示したブロック図
【
図2】本発明の実施形態及び変形例に係るデジタルカメラ100で実行されるフリッカ検出処理を例示したフローチャート
【
図3】本発明の実施形態及び変形例のフリッカ検出処理に係る、撮像画角の変化が生じていない場合の検出領域を説明するための図
【
図4】本発明の実施形態1のフリッカ検出処理に係る、撮像画角の変化が生じている場合の検出領域を説明するための図
【
図5】本発明の実施形態2のフリッカ検出処理に係る、撮像画角の変化が生じている場合の検出領域を説明するための図
【
図6】撮像画角の変化が生じる場合のフリッカ検出を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施形態1]
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
以下に説明する一実施形態は、検出装置の一例としての、光学式像ブレ補正(OIS:Optical Image Stabilizer)の防振機構を有するデジタルカメラに、本発明を適用した例を説明する。しかし、本発明は、複数の撮像画像に基づいてフリッカの有無を検出することが可能な任意の機器に適用可能である。
【0013】
《デジタルカメラの構成》
図1は、本発明の実施形態に係るデジタルカメラ100の機能構成を示したブロック図である。
【0014】
カメラ制御部101は、例えばCPUであり、デジタルカメラ100が備える各ブロックの動作を制御する。カメラ制御部101は、例えばROM102に記録されている各ブロックの動作プログラムを読み出し、ワークメモリ103に展開して実行することにより各ブロックの動作を制御する。
【0015】
ROM102は、例えばフラッシュROM等の書き換え可能な不揮発性メモリである。ROM102は、デジタルカメラ100が備える各ブロックの動作プログラムに加え、各ブロックの動作に必要なパラメータ等を記憶する。一方、ワークメモリ103は、書き換え可能な揮発性メモリである。ワークメモリ103は、デジタルカメラ100が備える各ブロックの動作プログラムの展開領域としてだけでなく、各ブロックの動作により出力された中間データの一時的な記憶領域、あるいは各種処理を行うための演算領域としても用いられる。
【0016】
撮像素子105は、例えばCCDやCMOSセンサ等の撮像素子であり、レンズ群104を介して撮像素子の撮像面に結像された被写体の光学像を光電変換することで撮像を行い、アナログ画像信号を出力する。ここで、レンズ群104は、各種レンズと、絞りにより露出を制御する機構、手ブレによる結像のブレを防止する光学式像ブレ補正の防振機構、及びフォーカスやズーム動作を制御する機構を含んで構成される、デジタルカメラ100の光学系である。上述したように、本実施形態のデジタルカメラ100は光学式像ブレ補正の防振が可能に構成されている。より詳しくは、レンズ群104は不図示のシフトレンズを含み、上記防振機構は、光軸と直交する面内において、該シフトレンズの垂直方向及び水平方向の位置を変更(シフト)する駆動機構を備える。該防振機構の駆動制御は、後述のレンズ防振部106により行われる。
【0017】
撮像素子105による撮像は、露出制御部107により制御される。より詳しくは、露出制御部107は、デジタルカメラ100に設定されている撮像モード、レンズ群104の状態、被写体の明るさの情報に基づいて露出条件を決定する。そして露出制御部107は、決定した露出条件に基づいて、撮像素子105が備える不図示のシャッタの開放制御や絞り駆動に係る制御等、露出値に応じた制御位置・制御状態に該当部材を制御することで、撮像に係る露出制御を行う。
【0018】
撮像素子105により出力されたアナログ画像信号は、信号処理部108においてD/A変換、ゲイン補正等の輝度補正、ホワイトバランス補正等の色補正を含む種々の信号処理が適用されることでデジタル画像信号(以下、撮像画像として言及)に変換される。撮像画像は、記録処理部109に出力されることで、デジタルカメラ100について設定された記録形式に変換され、例えばデジタルカメラ100に着脱可能に接続されるメモリカード等であってよい記録媒体110に記録される。また本実施形態のデジタルカメラ100では、後述のフリッカ検出部114によるフリッカの有無の検出に際し、複数回の撮像で得られた複数の撮像画像がワークメモリ103に格納される。
【0019】
ジャイロセンサ112は、デジタルカメラ100に生じた姿勢変化(角度変化、角加速度)を検出し、姿勢に係る情報(状態情報)を出力するセンサである。本実施形態のデジタルカメラ100では、デジタルカメラ100の状態を検出するとしてジャイロセンサ112を備えるものとして説明するが、他のセンサにより代替される、あるいは、他のセンサを備えるものであってもよい。例えば、デジタルカメラ100に生じた位置変化や移動量を検出すべく、加速度センサ等を備えるものであってもよい。
【0020】
上述したように、本実施形態のデジタルカメラ100は、デジタルカメラ100に生じた位置・姿勢の変化に起因する撮像画像への影響を低減すべく、防振機構として、光学式像ブレ補正に係る防振機構及びその駆動制御を行うレンズ防振部106を備える。より詳しくは、露光期間中に手ブレが生じた場合には、撮像素子105上の被写体像の結像位置の変化(像ブレ)が生じ、得られる撮像画像において、該被写体の像がぼける等の画質低下が発生する。このため、レンズ防振部106は、シフトレンズの位置を制御することで、撮像素子105における被写体像の結像位置を移動させ、像ブレを低減する。より詳しくは、レンズ防振部106は、ジャイロセンサ112の出力に基づいて導出された駆動量(シフト量)の情報に基づいて、シフトレンズの位置を変更(像ブレを打ち消す方向への移動)させるよう、レンズ群104の防振機構の駆動制御を行う。これにより、同一の被写体に係る光学像が、撮像素子105上の一定の位置に結像されるようになり、像ブレが低減される。
【0021】
操作入力部111は、モード切り替えダイアルやレリーズスイッチ、設定ボタン等のデジタルカメラ100が備える各種ユーザインタフェースである。操作入力部111は、これらユーザインタフェースに対する操作入力がなされたことを検出すると、なされた操作入力に対応する制御信号をカメラ制御部101に出力する。
【0022】
フリッカ検出部114は、撮像環境についてフリッカの検出を行う。より詳しくはフリッカ検出部114は、撮像素子105により所定のタイミングで撮像されてワークメモリ103に蓄積された複数の撮像画像(以下、検出画像群として言及する)に基づいて、フリッカの有無、及び存在する場合にそのフリッカ周波数を導出する。ここで、検出画像群は、特許文献1に示されるように所定の頻度で電荷蓄積及び読み出しを行うことで得られるものとする。当該頻度は、例えば、撮像環境に配置された照明が50Hzと60Hzのいずれの商用電源で駆動している場合も検出可能に設定されるものであってよい。
【0023】
画角変化検出部113は、フリッカ検出部114の検出に用いられる検出画像群について、それらの撮像中に撮像画角の変化が生じたか否か、より詳しくは、フリッカ検出に影響を及ぼし得る撮像画角の変化が生じたか否かを検出する。本実施形態のデジタルカメラ100では、撮像画角の変化の一例として、光学式像ブレ補正に係る防振機構の駆動によって生じる撮像画角の変化を、画角変化検出部113が検出するものとして説明する。具体的には画角変化検出部113は、該防振機構の駆動状況の情報を取得可能に構成されており、取得した該駆動状況の情報に基づいて撮像画角の変化が生じたか否かを検出する。
【0024】
ところで、光学式像ブレ補正の防振機構による像ブレ補正が好適に動作している状態では、撮像画角が安定するため環境光の輝度が安定し、
図6(a)に示した撮像画角が固定されている状態と同様にフリッカ検出を行うことができる。一方で、当該防振機構は、像ブレ補正用途ではない動作を行う場合には、この間撮像される撮像画像間で撮像画角の変動が生じ得、結果、
図6(b)と同様に環境光の輝度が安定しない状況を引き起こし得る。ここで、像ブレ補正用途ではない動作には、例えば、デジタルカメラ100の起動時に行われる初期化動作のような、ジャイロセンサ112の出力とは無関係に行われる動作が含まれてよい。この他、例えば、静止画撮影の直前に、あるいは、シフトレンズの駆動位置が可動域の端部に至った際に、その後の像ブレ補正を可能ならしめるために所定の駆動位置/状態に移動させる駆動動作も含まれてよい。
【0025】
従って、本実施形態の画角変化検出部113は、例えば防振機構の駆動状況の情報に、(検出画像群の撮像中において)光学式像ブレ補正の防振機構が像ブレ補正用途ではない動作を行ったことを示す情報が含まれるか否かを判断する。そして、像ブレ補正用途ではない動作を行ったことを示す情報が含まれる場合に、画角変化検出部113は、フリッカ検出に影響を及ぼし得る撮像画角の変化が生じたものとして検出する。
【0026】
本実施形態ではハードウェアとしてデジタルカメラ100が備える各ブロックに対応した回路やプロセッサにより処理が実現されるものとして説明する。しかしながら、本発明の実施はこれに限られるものではなく、少なくとも一部のブロックの処理は該ブロックと同様の処理を行うプログラムにより実現されるものであってもよい。
【0027】
《フリッカ検出処理》
以下、このような構成をもつ本実施形態のデジタルカメラ100において、フリッカ検出に係り実行されるフリッカ検出処理について、
図2のフローチャートを用いて具体的な処理を説明する。該フローチャートに対応する処理は、カメラ制御部101が、例えばROM102に記憶されている対応する処理プログラムを読み出し、ワークメモリ103に展開して実行することにより実現することができる。本フリッカ検出処理は、例えばフリッカ検出を行う所定の条件が満たされ、該フリッカ検出に係る所定数(複数)の撮像画像(検出画像群)がワークメモリ103に格納された際に開始されるものとして説明する。ここで、フリッカ検出を行う所定の条件は、デジタルカメラ100が撮影モードで起動されたこと、照明状態の変化が検出されたこと、撮影準備指示がなされたこと等を含むものであってよい。また検出画像群に含まれる各撮像画像には、該画像が撮像された際のシフトレンズの駆動量(シフト量)の情報が関連付けられているものとする。
【0028】
S201で、画角変化検出部113はカメラ制御部101の制御の下、ワークメモリ103に格納された検出画像群の撮像中に撮像画角の変化が生じたか否かを判断する。換言すれば、本ステップでは、撮像された検出画像群で環境光の輝度が安定しているか否かが判断される。本ステップの処理の実行にあたり、画角変化検出部113は、レンズ防振部106またはカメラ制御部101から、光学式像ブレ補正に係る防振機構の駆動状況の情報を取得しているものとする。画角変化検出部113は、検出画像群の撮像中に撮像画角の変化が生じたと判断した場合は処理をS202に移し、生じていないと判断した場合は処理をS203に移す。
【0029】
なお、本実施形態では画角変化検出部113が、光学式像ブレ補正に係る防振機構の駆動状況の情報に基づいて、検出画像群の撮像中に撮像画角の変化が生じたか否かの判断を行うものとして説明したが、本発明の実施はこれに限られるものではない。当該防振機構が該当の動作を行っているか否かの判断は、検出画像群に関連付けられたシフト量の遷移に基づいて判断されるものであってもよい。
【0030】
S202で、カメラ制御部101は、検出画像群に基づいてフリッカ検出部114に行わせるフリッカ検出について、各撮像画像中の参照領域(検出領域)を制限させるよう制御する。当該制限は、検出画像群で環境光の輝度が安定している場合には、
図3に示されるように各撮像画像の全域(あるいは、固定の領域)を検出領域として輝度評価を行うことでフリッカ検出を行うところ、より小さい領域を検出領域とすることを指す。
【0031】
例えば、検出画像群に含まれる3枚の撮像画像が、撮像時のイメージサークルを一致させるように重ねた場合に、
図4のような位置関係で撮像されている場合、ハッチングで示される重複領域に検出領域を制限するものであってよい。これにより、各撮像画像について制限後の検出領域に表れる被写体像の類似性が高くなるため、領域内の環境光の輝度が安定し、フリッカの検出精度を高めることができる。
【0032】
このような検出領域の制限量(撮像画角の変化が生じていない場合の検出領域からの縮小量/割合)は、検出画像群の各々に関連付けられたシフト量の情報に基づいて行われるものであってよい。より詳しくは、カメラ制御部101は、検出画像群に関連付けられたシフト量の情報に基づいて検出領域の大きさを決定してフリッカ検出部114に伝送することで、フリッカ検出部114が行う検出処理について、検出領域の大きさを設定することができる。
【0033】
S203で、フリッカ検出部114はカメラ制御部101の制御の下、検出画像群に係る撮像環境のフリッカの有無を検出する検出処理を実行する。フリッカ検出部114は、検出処理の実行結果として、撮像環境のフリッカの有無、及びフリッカが存在する場合にはその周波数の情報を導出し、本フリッカ検出処理を完了する。該実行結果は、例えばワークメモリ103に格納され、撮像設定の変更や撮像画像の補正に用いられる。
【0034】
本ステップにおいて実行される検出処理は、設定されている検出領域の情報に基づいて行われる。即ち、検出処理は、S201において撮像画角の変化が生じていないと判断された場合には、検出画像群の全域を検出領域として実行される。またS201において撮像画角の変化が生じたと判断された場合には、検出処理は、生じていない場合よりも制限された大きさの領域を検出領域として実行される。後者の場合の検出領域の位置は、
図4に例示したように撮像画像ごとに、該撮像画像に関連付けられたシフト量に応じて決定されればよい。
【0035】
なお、本実施形態では撮像画角の変化が生じた場合の検出領域の位置はシフト量に応じて決定されるものとして説明するが、例えば主被写体領域の検出結果の情報がある場合には、該主被写体領域の位置を基準として検出領域の位置が決定されてもよい。このようにすることで、検出画像群に係る各検出領域の環境光の輝度をより安定させられる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の検出装置によれば、撮像画角の変化が生じる場合であってもフリッカの有無を好適に検出することができる。より詳しくは、フリッカ検出に影響を及ぼし得る撮像画角の変化が生じている期間に撮像された撮像画像群であっても、演算量を低減しつつ、好適な結果のフリッカ検出を実現することができる。従って、例えばデジタルカメラ100の起動時に、光学式像ブレ補正に係る防振機構の初期化動作中にフリッカ検出を行うことができるため、ユーザ所望のタイミングで好適な撮像を行うことができる。
【0037】
[変形例1]
上述した実施形態では、検出画像群の各々に関連付けられたシフトレンズのシフト量の情報に基づいて制限後の検出領域の大きさを動的に決定する態様について説明したが、本発明の実施はこれに限られるものではない。例えば、防振機構の初期化動作等は予め決まった動作を行うものであるため、制限後の検出領域の大きさは、全域に対する割合等、予め固定のサイズが設定されているものであってもよい。あるいは、フリッカ検出に影響を及ぼし得る撮像画角の変化を生じさせ得る、その他の防振機構の動作についても、例えばシフト量の差分の最大値に応じて、予め設けられたサイズ(全域よりも小さい)のいずれかが選択されて設定されるものであってもよい。また、制限後の検出領域の大きさをいずれとするかの決定は、シフト量に基づいて行われるものに限らず、防振機構が行っている動作の種別に基づいて行われるものであってよい。
【0038】
[変形例2]
上述した実施形態及び変形例では、光学式像ブレ補正に係る防振機構の動作のうち、像ブレ補正用途ではない動作を行う場合に、フリッカ検出に影響を及ぼし得る撮像画角の変化が生じるものと、検出領域を制限する態様について説明した。しかしながら、本発明の実施はこれに限られるものではなく、光学式像ブレ補正に係る防振機構の他の動作も、検出領域を制限する対象として含まれるものであってよい。
【0039】
例えば、シフトレンズの移動に許容速度(または加速度)が設定されているような態様において、デジタルカメラ100の位置及び姿勢の少なくともいずれかに急峻な変化が生じた場合、防振動作を行ったとしても撮像画角の変化を吸収しきれない可能性がある。換言すれば、初期化動作等が完了して光学式像ブレ補正に係る防振機構が好適な像ブレ補正を実現できている状態で検出画像群が取得された場合であっても、該防振機構では吸収しきれない手ブレがその撮像期間中に生じた場合には、本発明を適用可能である。即ち、このような検出画像群には撮像画角が異なる撮像画像が混在しているが、本発明により検出領域を制限することで、好適なフリッカ検出を実現できる。
【0040】
[変形例3]
上述した実施形態及び変形例では、フリッカ検出に影響を及ぼし得る撮像画角の変化が、光学式像ブレ補正に係る防振機構の動作に起因して生じるものとして説明したが、本発明の実施はこれに限られるものではない。例えば、デジタルカメラ100が、像ブレ補正の防振機構として、光学式像ブレ補正形式のものに代えて撮像面像ブレ補正(IIS:Imager Image Stabilizer)形式のものを具備する構成であっても、本発明は適用可能である。
【0041】
この場合、検出画像群の撮像中の撮像画角の変化は、撮像面像ブレ補正に係る防振機構の動作に起因して発生するものとして検出されればよい。当該防振機構は、撮像素子自体の位置を(像ブレを打ち消す方向に)移動させることで、撮像素子105に結像される光学像の範囲を変更して像ブレの低減を実現する。当該防振機構は、光学式像ブレ補正に係る防振機構と同様に、例えばジャイロセンサ112の出力に基づいて導出された駆動量に基づいて、駆動制御がなされる。
【0042】
従って、画角変化検出部113は、撮像面像ブレ補正に係る防振機構の駆動状況、駆動量の情報に基づいて、検出画像群の撮像中に撮像画角の変化が生じたか否かの判断を行えばよい。即ち、上述した実施形態等と同様、当該防振機構が初期化動作や所定位置への移動制御等の像ブレ補正用途ではない動作を実行したことや、像ブレ補正用途の動作中であっても吸収しきれない手ブレが発生したことに応じて、検出領域の制限がなされる。
【0043】
なお、本変形例では、光学式像ブレ補正に係る防振機構に代えて撮像面像ブレ補正に係る防振機構をデジタルカメラ100が備えるものとして説明したが、本発明の実施は、これらの双方を備える装置を除外するものではない。例えば、レンズ交換式の撮像装置等の態様においてこれらの防振機構が共存・共働する場合には、少なくともいずれかの防振機構の駆動状況に応じて、フリッカ検出に係り検出領域の制限を行うよう構成されるものであってよい。
【0044】
[実施形態2]
上述した実施形態及び変形例では、デジタルカメラ100が防振機構を備え、検出画像群の撮像期間における当該防振機構の動作によって撮像画角の変化が生じる態様について説明したが、本発明の実施はこれに限られるものではない。即ち、前述のような機械的な防振機構は、必ずしも全ての撮像装置に備えられるものではないが、撮像装置の位置及び姿勢の少なくともいずれかを示す状態情報を取得可能な構成を備えるのであれば、本発明は適用可能である。例えば、上述したようなジャイロセンサ112を有する撮像装置や、電子像ブレ補正(EIS:Electric Image Stabilizer)機能を備える撮像装置でも、本発明は実施可能である。
【0045】
例えば、
図5に示されるように、デジタルカメラ100が被写体に対して右方向(撮像画像の水平右方向)に順次移動しながら検出画像群の撮像が行われた(撮像画角が変化した)場合の、フリッカ検出の態様について以下に説明する。
図5では、検出画像群である3つの撮像画像を、撮像時刻の昇順に図中右方向(時間軸正の方向)に配置して示している。カメラ制御部101は、このような撮像画角の変化に対し、ジャイロセンサ112の出力に基づいて被写体の光学像の像面移動量を導出し、これに基づいて制限後の検出領域の大きさを設定する。そしてフリッカ検出部114は、制限後の検出領域の大きさに基づく検出領域を、
図5でハッチングで示されるように各撮像画像について設定し、検出処理を行う。
【0046】
なお、本明細書では、実施形態1及び2、変形例1、2及び3にて、それぞれ異なる実施態様を説明したが、本発明の実施に際し、これらの態様は如何様に組み合わせられるものであってよい。
【0047】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0048】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0049】
100:デジタルカメラ、101:カメラ制御部、102:ROM、103:ワークメモリ、104:レンズ群、105:撮像素子、106:レンズ防振部、112:ジャイロセンサ、113:画角変化検出部、114:フリッカ検出部