(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】リグノセルロース材料を叩解するためのリファイナおよびそのようなリファイナのためのリファイニングセグメント
(51)【国際特許分類】
D21D 1/30 20060101AFI20241107BHJP
B02C 7/12 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
D21D1/30
B02C7/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020149608
(22)【出願日】2020-09-07
【審査請求日】2023-08-24
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】515203011
【氏名又は名称】バルメット・アー・ベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリステル・ヘドルンド
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-008373(JP,A)
【文献】米国特許第06616078(US,B1)
【文献】米国特許第05704559(US,A)
【文献】特開2018-059224(JP,A)
【文献】特表2003-515008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21D 1/30
B02C 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース材料を叩解するためのリファイナ(1)であって、前記リファイナが、ロータディスク(10)および対向配置されたステータディスク(20)を備え、前記ロータディスク(10)およびステータディスク(20)には、前記リグノセルロース材料を粉砕するための突起構造(40)を備えるリファイニングセグメント(30;31)が設けられており、前記ロータディスク(10)に設けられたリファイニングセグメント(30)の突起構造(40)の高さが、前記ステータディスク(20)に設けられた
リファイニングセグメント(31)の突起構造(40)の高さの少なくとも3倍より高いことを特徴とする、リファイナ(1)。
【請求項2】
前記ステータディスク(20)に設けられたリファイニングセグメント(30)が、前記ロータディスク(10)のリファイニングセグメント(31)の材料よりも硬い材料から製造される、請求項1に記載のリファイナ(1)。
【請求項3】
ロータディスク(10)に設けられる少なくともリファイニングセグメント(30)の突起構造(40)が、前記リファイニングセグメント(30)の内周(30a)から前記リファイニングセグメントの外周(30b)まで半径方向に延在するバーを備える、請求項1~2のいずれか一項に記載のリファイナ(1)。
【請求項4】
ステータディスク(20)に設けられるリファイニングセグメント(31)のバーのそれぞれが、範囲[0.5mm、2.5mm
]にある幅を有し、ロータディスク(10)に設けられるリファイニングセグメント(30)のバーのそれぞれが、範囲[1.0mm、5mm
]にある幅を有する、請求項3に記載のリファイナ。
【請求項5】
半径方向に延在し隣接するバーの間に広がる距離が、範囲[0.1cm、1.0cm
]にある、請求項3~4のいずれか一項に記載のリファイナ。
【請求項6】
ステータディスク(20)に装備されたリファイニングセグメント(31)の突起構造(40)が、ピラミッドまたはスタブ形状を有する突起構造を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のリファイナ。
【請求項7】
第1の
リファイニングセグメント(30)および第2の
リファイニングセグメント(31)を備えるリファイナセグメント対であって、前記第1の
リファイニングセグメント(30)が、リグノセルロース材料のリファイナのためのロータディスクと共に使用されるように構成され、前記第2のセグメントが、リグノセルロース材料の前記リファイナのためのステータディスクと共に使用されるように構成され、前記第1および第2のリファイニングセグメント(30;31)が、前記リグノセルロース材料を粉砕するための突起構造(40)を備え、前記第1のリファイニングセグメント(30)の突起構造(40)の高さが、前記第2の
リファイニングセグメント(31)の突起構造(40)の高さの少なくとも3倍より高いことを特徴とする、リファイナセグメント対。
【請求項8】
前記ステータディスク(20)に設けられるように構成されるリファイニングセグメント(30)が、前記ロータディスク(10)と共に使用されるように構成されるリファイニングセグメント(31)の材料よりも硬い材料から製造される、請求項7に記載のリファイナセグメント対。
【請求項9】
前記ロータディスク(10)と共に使用されるように構成される少なくともリファイニングセグメント(30)の突起構造(40)が、前記リファイニングセグメント(30)の内周(30a)から前記リファイニングセグメントの外周(30b)まで半径方向に延在するバーを備える、請求項7~8のいずれか一項に記載のリファイナセグメント対。
【請求項10】
ステータディスクと共に使用されるリファイニングセグメント(31)のバーのそれぞれが、範囲[0.5mm、2.5mm
]にある幅を有し、ロータディスクと共に使用されるリファイニングセグメント(30)のバーのそれぞれが、範囲[1.0mm、5mm
]にある幅を有する、請求項9に記載のリファイナセグメント対。
【請求項11】
半径方向に延在し隣接するバーの間に広がる距離が、範囲[0.1cm、1.0cm
]にある、請求項9~10のいずれか一項に記載のリファイナセグメント対。
【請求項12】
ステータディスク(20)と共に使用されるように構成されるリファイニングセグメント(31)の突起構造(40)が、ピラミッドまたはスタブ形状を有する突起構造を備える、請求項7~11のいずれか一項に記載のリファイナセグメント対。
【請求項13】
リグノセルロース材料を叩解するためのリファイナ(1)内での、請求項7に記載のリファイナセグメント対の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
提案された技術は、一般に、リグノセルロース材料を叩解する(refining)ためのリファイナ、およびそのようなリファイナのためのリファイニングセグメントに関する。
【0002】
本明細書の実施形態は、一般に、リファイニングディスク上の改善された材料の流れを提供するリファイナおよびリファイニングセグメントに関する。
【背景技術】
【0003】
例えばリグノセルロース材料の叩解に一般に使用されるリファイナは、その間で材料が叩解される(refined)または離解される相対的に回転する2つのディスクを備える。一対の相対的に回転するディスクは、特に、ロータと呼ばれる1つの回転するディスクと、ステータと呼ばれる静止したディスクを備え得る。これらのディスクには、多くの場合、リファイナセグメントと呼ばれるセグメントが設けられ、その目的は、材料のより効率的な叩解を得ることである。リファイナセグメントには、多くの場合、セグメントの活性表面、すなわち材料が流れるセグメント表面に配置された突起構造(複数)が設けられ、それらは、リグノセルロース材料の効率的な叩解を達成するために部分的に利用される。突起構造の存在は、リファイニングセグメント表面の材料の流れに影響を与える。突起構造は、一部のリファイナではバーおよびダムと呼ばれ、バーは多くの場合、半径方向に設けられ、ダムは、バーにほぼ直交する方向に設けられ、多くの場合、隣接する2つのバーの間に広がっている。材料を均一に粉砕または叩解する必要があるので、突起構造により、多くの場合、好ましくない乱流効果を表す不均一な流れが発生する可能性があり、不均一な流れは、材料の一部を特定の部分に残存させ、かなりの粉砕をもたらす一方で、材料の他の部分は同部分から速やかに除去されるため、したがって、粉砕レベルが低くなる可能性がある。このことから、リファイニングセグメントを設計するには、突起構造による効率的な粉砕、およびリファイニング表面の効率的な表面(すなわち、対向する2枚のリファイナディスク間のギャップとして定義されるディスクギャップ、例えば、それぞれのリファイニングセグメントを担持するロータディスクとステータディスクの間に配置されたディスクギャップに面する面の側)での滑らかな材料の流れを達成するために、微妙な問題が存在する。材料が叩解または離解されるのは、ディスク間のディスクギャップ内である。
【0004】
突起構造による効率的な粉砕とリファイニング面での滑らかな材料の流れとを得るという同時に発生する課題に対処するとき、提案された技術は有益な特徴を示す、リファイニングセグメントおよびそのようなリファイニングセグメントを備えるリファイナを提供することを目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
提案された技術の目的は、より滑らかな流れ、ならびに材料の効率的な粉砕または叩解動作を可能にするロータディスクおよびステータディスクのための、リファイニングセグメントを提供することである。
【0006】
提案された技術の別の目的は、より滑らかな流れならびに材料の効率的な粉砕またはリファイニング動作を可能にするリファイニングセグメントが装着されたロータディスクとステータディスクを備える、リグノセルロース材料を叩解するための、リファイナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらおよび他の目的は、提案された技術の実施形態によって満たされる。
【0008】
第1の態様によれば、第1のセグメントおよび第2のセグメントを備えるリファイナセグメント対が提供され、そこでは、第1のセグメントは、リグノセルロース材料のリファイナのためのロータディスクと共に使用されるように構成され、第2のセグメントは、リグノセルロース材料のリファイナのためのステータディスクと共に使用されるように構成される。第1および第2のリファイニングセグメントは、リグノセルロース材料を粉砕するための突起構造を備える。一対のリファイナセグメントは、第1のリファイニングセグメントの突起構造の高さが、第2のリファイナセグメントの突起構造の高さの少なくとも3倍より高いことを規定する。
【0009】
提案された技術の第2の態様によれば、リグノセルロース材料を叩解するためのリファイナが提供される。当該リファイナは、ロータディスクと、対向配置されたステータディスクを備える。ロータディスクおよびステータディスクには、リグノセルロース材料を粉砕するための突起構造を備えるリファイニングセグメントが設けられている。ロータディスクに設けられるリファイニングセグメントの突起構造の高さは、ステータディスクに設けられるリファイナセグメントの突起構造の高さの少なくとも3倍より高い。
【0010】
提案された技術の実施形態は、リファイニングセグメントのより滑らかな材料の流れ、ならびにリファイニングセグメントを流れる材料の効率的な粉砕または叩解動作を可能にする。提案されたリファイナセグメントの設計から導かれる別の利点は、異なるリファイニングセグメント、すなわち、ロータのためのリファイニングセグメントおよびステータのためのリファイニングセグメントを、異なる硬さを有する材料から製造できることである。これにより、リファイニングセグメントの寿命もまた、確実に長くできるであろう。
【0011】
他の利点は、詳細な説明を読むことにより理解されるであろう。
【0012】
本実施形態は、そのさらなる目的および利点と共に、添付の図面と共に以下の説明を参照することによって最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】リファイナにおけるステータディスク-ロータディスク構成の概略断面図である。
【
図3a】提案された技術によるリファイナセグメント対の概略断面側面図である。リファイナセグメント対は、それらのリファイニング面が互いに面するように配置されている。
【
図3b】提案された技術によるリファイナセグメント対の概略断面側面図である。リファイナセグメント対は、並んで配置されている。
【
図4】提案された技術によるリファイナセグメント対の概略断面側面図である。リファイナセグメント対は、それらのリファイニング面が互いに面するように配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面の全体にわたって、類似または対応する要素には同じ参照表記が使用される。
【0015】
一般に、本明細書で使用されるすべての用語は、関連する技術分野における通常の意味にしたがって解釈されるべきである。ただし、異なる意味が明確に与えられている場合および/またはその用語が使用される前後関係から暗示される場合はこの限りではない。a/an/theの要素、装置、構成要素、手段、ステップなどへのすべての例は、明らかに別段の記載がない限り、要素、装置、構成要素、手段、ステップなどの少なくとも1つの例を参照するとオープンに解釈されるべきである。本明細書に開示された任意の方法のステップは、開示された正確な順序で実行される必要はない。ただし、ステップが他のステップに続くか先行するように明らかに記述される場合、および/またはステップが他のステップに続くか先行しなければならないことが暗黙的である場合はこの限りではない。本明細書に開示された実施形態のいずれかの特徴は、適切な場合は常に、任意の他の実施形態に適用できる。同様に、任意の実施形態の任意の利点は、任意の他の実施形態に適用でき、逆も同様である。この明細書中の実施形態の他の目的、特徴および利点は、以下の説明から明らかであろう。
【0016】
提案された技術をよりよく理解するために、一般的なリファイナの簡単な概要から始めることが有用であろう。この目的のために、
図1を参照する。
図1は、提案された技術を利用できるリファイナの概略図を示す。リグノセルロース材料を叩解するためのリファイナ1(例えばパルプリファイナ)の断面図が開示されている。この構成は、本発明を理解するために必須ではない装置のすべての構成要素と共に、リファイナ装置の外側ケースを表すハウジング26内に収容される。図示しない構成要素の例は、例えば回転軸を駆動するための電気モータ、リグノセルロース材料の供給機構などである。第2のハウジング41の内部には、ロータリファイナディスクとも呼ばれるロータディスク10、およびステータリファイナディスクとも呼ばれるステータディスク20が、軸に沿って直線的に整列させられている。ロータディスク10は、軸受16上に配置された回転軸15に取り付けられている。回転軸15は、軸15を回転させる、したがってロータディスク10を回転させるモータ(図示せず)に接続されており、したがってロータディスク10を回転させる。ロータディスク10に面するステータディスク20には、リグノセルロース材料のための供給チャネル14とリファイニングギャップ19との間に延在し中央に配置された貫通孔32が設けられてもよい。特定の実施形態では、ロータ10には、リグノセルロース材料の流入に面する表面を有するセンタプレート17が設けられてもよい。センタプレート17の表面には、リグノセルロース材料を外側に導く構造が設けられてもよい。センタプレート17は、リファイニングセグメントよりもディスクの中心に近い位置に配置される。ロータディスク10およびステータディスク20には、多くの場合、リグノセルロース材料の誘導および粉砕を可能にする突起構造が設けられる。これらのリファイナセグメントには、さらに、バーおよびダムが設けられ得る。センタプレート17は、リファイニングセグメントよりもディスクの中心に近い位置に配置される。すなわち、センタプレートは、ディスクの中心に原点を有する半径方向にリファイニングセグメントの内側に配置される。特定のディスクは、センタプレートではなく、リファイニングセグメントの内側に配置されたセンタ領域を有してもよいことに留意されたい。
【0017】
使用中、木材チップまたは例えばパルプのような調製木材などのリグノセルロース材料は、供給機構(図示しない)によって、供給チャネル14を通して供給される。材料は、ステータディスク20の孔32を通過し、ギャップ19に入る。ギャップ19は、実質的に、ロータディスク10とステータディスク20との間の開放領域によって画定され、この領域は、動作中、非常に小さくされてもよい。ギャップ19に流入するリグノセルロース材料は、ロータ30のセンタプレート17に入射する。センタプレート17は、リグノセルロース材料をロータおよび/ステータ上のリファイナセグメントに向けて誘導するように動作する。
【0018】
提案された技術を利用できる一般的なリファイナを詳細に説明したので、次に、提案された技術に関連する特定のロータおよびステータの設計を詳細に説明する。
【0019】
提案された技術が使用され得るロータステータ構成のより詳細な説明を提供するために、次に
図2を参照する。
図2は、例えば上述のようにリファイナのハウジング41に収容されたロータステータ構成の断面側面図を示す。図は回転軸を中心に回転するように配置されたロータを示す。ロータには、ステータに面する表面に、リファイナセグメント30を備えるロータディスク10が設けられている。ステータには、ロータに面する表面に、リファイナセグメント31を備えるステータディスク20が設けられている。リファイナディスクの目的の1つは、リファイナセグメント30;31を担持することであるので、ロータおよびステータディスク10;20は、リファイナの特定のバージョンでは、セグメントホルダと呼ばれることがある。また、
図2には、叩解を受けるリグノセルロース材料のための流入口32が示されている。流入口32は、ステータのセンタ領域に配置される。流入口32に対向するロータ側のリファイナディスクのセンタ領域には、センタプレート17が配置される。
図1を参照して説明されたセンタプレート17の目的は、流入口32から投入される材料をリファイナディスクの外側部分に向かって分配することである。すなわち、センタプレート17は、リファイナディスク上に配置されたリファイナセグメントに向かって材料を分配するように動作する。リファイナの特定のバージョンでは、センタプレートは任意であってもよい。
【0020】
リファイナにとって特に有益な特徴は、リファイナセグメント表面で材料が滑らかに流れる可能性と、効率的な叩解動作とを、同時に提供するリファイナセグメント設計を有することである。提案された技術は、そのような特徴を示すリファイナセグメントを提供する。次に、2つの対向するリファイニングディスク、ロータディスク10およびステータディスク20を示す
図3aを参照する。ディスク10;20には、突起構造、例えばバー40が設けられる。本発明者は、ロータディスクの構造40が、ステータディスクセグメントに設けられる突起構造と比較して異なる高さを有するように、ロータディスクおよびステータディスクの突起構造40が提供され得ることを認識している。突起構造の高さは、突起構造の法線方向、すなわち、リファイナで使用されるとき、リファイニングセグメントの表面から、ロータ側セグメントとステータディスクセグメントとの間の意図されるディスクギャップに向かう方向の、突起構造の延長部分として定義される。この異なる高さを設けることにより、リグノセルロース材料および/または叩解する材料を叩解するとき、一般的に生成される蒸気の移送のために、ロータ側およびステータ側に異なる体積が確保される。蒸気は、好ましくはステータディスク表面に沿って移動すべきであり、一方、塊またはリグノセルロース材料は、好ましくはロータディスク表面に沿って移動すべきである。提案された技術の好ましい結果は、叩解される材料は、ロータ側に占める体積がより多くなり、その結果、叩解される材料は主にロータ側セグメントに沿って流れることが可能となり、一方、蒸気はステータ側セグメントを流れることが可能となり、したがって、蒸気と叩解される材料との相互作用を確実に低減することである。ステータディスクセグメントには、より低い突起構造が設けられるので、したがって、より少ない割合の材料の流れを運ぶので、全体的な材料の流れに実質的に影響を与えることなく、より微細な構造パターンの突起構造を提供することが可能になる。一方、この微細構造パターンは、実質的に多数のエッジをもたらし、それは、その代わりに、材料の分配を改善し効率的な粉砕を可能にする。
【0021】
ステータディスクセグメントの突起構造の高さが比較的低いことにより、ステータリファイニングセグメントの有効寿命を増加させるより硬い材料で、ステータディスクのリファイニングセグメントを提供することが可能になるであろう。本発明者は、ステータ側リファイニングセグメントの突起構造の比較的低い高さにより、それらのリファイニングセグメントの構造材料として、より硬い材料を使用することが可能になることを認識している。硬い材料で高い突起構造を設けると衝撃に対して脆化を引き起こすとの認識により、突起構造の高さを低くすると、より硬い材料を使用することが可能になる。すなわち、提案された技術は、対応する突起構造、例えばステータ側リファイニングセグメントのバーの延長部分の高さが比較的低いことにより、ロータ側と比較してステータ側で、比較的硬い構造材料を使用することを可能にする。
【0022】
本発明者は、ロータ側に対してステータ側に異なる高さを有する突起構造を設けると、ロータ側セグメントの突起構造の高さが、ステータディスクセグメントの高さの少なくとも3倍を超えるとき、材料移送量に関して大きな改善をもたらすことを見出した。
【0023】
以下では、提案された技術の様々な実施形態の詳細な説明を提供する。提案された技術は、前述のようにリファイナの設計に関連して使用できる。
【0024】
提案された技術の第1の態様は、リグノセルロース材料を叩解するためのリファイナを提供する。このリファイナには、特定の設計にしたがったロータディスクおよびステータディスクのための、リファイナセグメントが装着される。すなわち、提案された技術は、リグノセルロース材料を叩解するためのリファイナ1を提供する。このリファイナは、ロータディスク10および対向配置されたステータディスク20を備える。ロータディスク10およびステータディスク20には、リグノセルロース材料を粉砕または叩解するための突起構造40を備えるリファイニングセグメント30;31が設けられる。リファイナは、ロータディスク10に設けられたリファイニングセグメント30の突起構造40の高さが、ステータディスク20に設けられたリファイナセグメント31の突起構造40の高さの少なくとも3倍より高いリファイニングセグメント30;31を示す。
【0025】
前述したように、ロータ側セグメントおよびステータディスクセグメントの突起構造の高さが異なることにより、ロータ側セグメントの突起構造の高さが、ステータディスクセグメントの高さの少なくとも3倍を超えるとき、材料移送に関して改善が可能になる。この高低差は、異なる側面での移送量の差をもたらし、その結果、叩解される材料は、ステータ側と比較したときロータ側で3倍多い体積になる。次に、提案された技術によるリファイナのためのリファイナセグメント対の概略断面側面図を開示する
図3bを参照する。リファイナセグメント対は、並んで配置されている。ロータディスクセグメント10の突起構造40;30は、高さHを有するように示され、一方、ステータディスクセグメント20の突起構造40;31は、高さH*を有するように示され、HとH*との比は、提案される構造によれば、少なくとも3、すなわち、H/H*≧3であるべきである。提案された技術で、材料の流れの大部分がロータ側にあるという事実は、全体的な材料の流れに悪影響を与えることなく、特定の特徴を有するステータディスクセグメントを設計することを可能にする。特定のステータディスクセグメントについては、本開示の後半で詳細に説明される。
【0026】
本明細書で企図されるいくつかの実施形態は、添付の図面を参照してここでより詳細により完全に説明される。他の実施形態は、しかしながら、本明細書に開示された主題の範囲内に含まれ、開示された主題は、本明細書に記載された実施形態のみに限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、当業者に主題の範囲を伝えるための例として提供される。
【0027】
提案された技術の特定の実施形態は、ロータディスク10に設けられたリファイニングセグメント30が、ステータディスク20のリファイニングセグメント31の材料よりも硬い材料から製造されるリファイナ1を提供する。
【0028】
ロータ側セグメントおよびステータディスクセグメントに、異なる高さの突起構造が設けられることにより、ステータディスクセグメントがロータディスクセグメントの材料よりも硬い材料から製造され得ることを確実にする。これは、より硬い材料で製造された顕著な延長部分を有する突起構造は脆化しやすいという、本発明者の洞察によるものである。突起構造の高さを低くすることにより、リファイニングセグメントの脆化に悪影響を与えることなく、硬い材料を使用することが可能となる。材料の硬さは、例えば、ロックウェルスケールに基づいて決定されてもよい。ロックウェルスケールとは、材料の圧入硬度に基づいた硬さの尺度である。ロックウェル試験は、大きな荷重下での圧子の侵入深さを測定し、より小さな予め加えたられた荷重によりできた侵入と比較するよく知られた試験である。ロックウェル試験は、例えば、HRA、HRB、HRCなどの異なるスケールで提供され、硬度特徴値として、多くの場合Nで表される無次元のパラメータをもたらす。ロータ側リファイニングセグメントは、好ましくは少なくとも57~58のNを有し、さらに好ましくは60超のNを有するべきである。
【0029】
上述実施形態の特定のバージョンでは、ロータディスク10に設けられたリファイニングセグメント30は、鉄、鋼またはステンレス鋼からなる群から選択される材料から製造され、ステータディスク20に設けられたリファイニングセグメント31は、ダイヤモンドからなる材料から製造されるリファイナ1が提供される。
【0030】
提案された技術の別の実施形態は、ロータディスク10に設けられる少なくともリファイニングセグメント30の突起構造40が、リファイニングセグメント30の内周30aからリファイニングセグメントの外周30bまで半径方向に延在するバーを備えるリファイナ1を提供する。例えば、
図3aを参照のこと。
【0031】
バーは、リファイニングセグメント30の内周30aからリファイニングセグメントの外周30bまで半径方向に延在するように意図されるが、バーは、材料の流れ特性を改善するように、湾曲した形状を有してもよい。
【0032】
提案された技術のさらに別の実施形態は、ステータディスク20に設けられるリファイニングセグメント31のバーのそれぞれが、範囲[0.5mm、2.5mm]、好ましくは、範囲[0.5mm、2.2mm]、さらに好ましくは範囲[0.5mm、2.0mm]にある幅を有し、かつロータディスク10に設けられるリファイニングセグメント30のバーのそれぞれが、範囲[1.0mm、5mm]、好ましくは、範囲[1.4mm、4.5mm]、さらに好ましくは範囲[1.6mm、4mm]にある幅を有するリファイナを提供する。
【0033】
提案された技術のさらに別の実施形態は、半径方向に延在し隣接するバーの間に広がる距離が、範囲[0.1cm、1.0cm]にあるリファイナを提供する。距離は、好ましくは範囲[0.1cm、0.8cm]にあり、さらに好ましくは範囲[0.1cm、0.4cm]にあるべきである。本実施形態における距離は、ロータディスクのリファイニングセグメントおよびステータディスクのリファイニングセグメントに等しく当てはまる。
【0034】
一例として、提案された技術は、ステータディスク20に設けられたリファイニングセグメント31の突起構造40が、ピラミッドまたはスタブ形状を有する突起構造を備えるリファイナを提供する。
【0035】
突起構造のこれらの代替的な形状および形態もまた、提案された技術の機構によって可能になる。ステータ側の突起構造は、例えば、リファイナセグメントのバルク材料よりも硬い材料から製造されもよい。すなわち、鉄または鋼のようなバルク材料からなる複合リファイナセグメント、またはバルク材料に結合された第2のより硬い材料、例えばダイヤモンドの突起構造が設けられたステンレス鋼であってもよい。しかしながら、リファイニングセグメントは、バルク材料の表面から突起構造がフライス加工された単一の材料片として製造されてもよい。リファイニングセグメントはまた、特定の形状を有する突起構造を表す単一の材料片として鋳造されてもよい。
【0036】
提案されたリファイナの様々な実施形態を説明したが、次に進み、提案された技術の第2の態様の様々なバージョン、すなわち、既存のリファイナと共に使用可能なリファイナセグメント対30;31を説明する。すなわち、リファイナセグメント対は、公知のリファイナのための別個の機器として提供され得る。リファイナセグメント対の協働する特徴により、リファイニング動作が、表面の滑らかな流れと効率的な粉砕動作の両方をもたらすことが確実になる。リファイナセグメントに関連する特定の利点は、少なくとも部分的に上述されており、以下のセクションでは繰り返さない。
【0037】
提案されたリファイニングセグメント対のリファイニングセグメントは、リファイナディスク、すなわち、ロータディスクまたはステータディスクに取り付けられるセグメントの形状で提供されてもよい。リファイニングセグメントは、所望により、センタ領域が取り除かれた円の形状で、または扇状形状で提供されてもよい。ロータディスク形状またはステータディスク形状の特定のディスクは、このように、いくつかのリファイナセグメントの状態で提供されてもよく、それによって、リファイニングセグメントによって完全に覆われるか、または部分的に覆われる。したがって、リファイニングディスクは、セグメントホルダとも呼ばれる。しかしながら、リファイニングセグメントは、完全に一体化されたディスクの形態で提供されてもよく、それ自体がリファイニングディスクの一部を形成するか、またはリファイニングディスクを形成してもよい。この場合、リファイニングセグメントおよびリファイニングディスクは、ロータまたはステータに取り付けることができる一体型構造を形成する。リファイニングセグメント対とは、ロータディスクと共に使用されることを意図した少なくとも1つのリファイニングセグメントを備える、第1のセットのリファイニングセグメントと、ステータディスクと共に使用されることを意図した少なくとも1つのリファイニングセグメントを備える、対応する第2のセットのリファイニングセグメントと、を意味する。リファイニングセグメントの様々なセットに、後述する特徴が設けられている。
【0038】
後述するリファイナセグメント対は、叩解動作中に付属部品が外れる危険性を低減するために、好ましくは単一の部品として製造される。そのような緩んだ部品は、リファイニングセグメント表面を損傷する可能性があり、これは好ましくは回避されるべきである。しかしながら、例えば、ステータディスクセグメントに硬い材料の突起構造設けることによって、複合リファイニングセグメントが有用であり得るいくつかのシナリオがある。
【0039】
第2の態様によれば、提案された技術は、第1のセグメント30と第2のセグメント31とを備えるリファイナセグメント対を提供する。第1のセグメント30は、リグノセルロース材料のリファイナのためのロータディスクと共に使用されるように構成され、第2のセグメントは、リグノセルロース材料のリファイナのためのステータディスクと共に使用されるように構成される。第1および第2のリファイニングセグメント30;31は、リグノセルロース材料を粉砕するための突起構造40を備え、ここで、第1のリファイニングセグメント30の突起構造40の高さは、第2のリファイナセグメント31の突起構造40の高さの少なくとも3倍より高い。これらの特徴を有するリファイナセグメント対は、
図3bでは横に並んで、また
図4では間にギャップを有して互いに対向して、模式的に示されている。このギャップは、ディスクギャップであり、材料が粉砕または叩解されるリファイナ内の領域である。
【0040】
提案された技術の特定の実施形態は、ロータディスク10に設けられるように構成されるリファイニングセグメント30が、ステータディスク20と共に使用されるように構成されるリファイニングセグメント31の材料よりも硬い材料から製造されるリファイナセグメント対を提供する。
【0041】
提案された技術の別の実施形態は、ロータディスク10と共に使用されるように構成される少なくともリファイニングセグメント30の突起構造40が、リファイニングセグメント30の内周30aからリファイニングセグメントの外周30bまで半径方向に延在するバーを備えるリファイナセグメント対を提供する。
【0042】
提案された技術のさらに別の実施形態は、バーのそれぞれが、範囲[0.1cm、0.8cm]にある幅を有するリファイナセグメント対を提供する。幅は、好ましくは範囲[0.1cm、0.6cm]にあり、さらに好ましくは範囲[0.1cm、0.3cm]にある。
【0043】
提案された技術のさらに別の実施形態は、ステータディスクと共に使用されるリファイニングセグメント31のバーのそれぞれが、範囲[0.5mm、2.5mm]、好ましくは範囲[0.5mm、2.2mm]、さらに好ましくは範囲[0.5mm、2.0mm]にある幅を有し、ロータディスクと共に使用されるリファイニングセグメント30のバーのそれぞれが、範囲[1.0mm、5mm]、好ましくは範囲[1.4mm、4.5mm]、さらに好ましくは範囲[1.6mm、4mm]にある幅を有するリファイナセグメント対を提供する。
【0044】
提案された技術のさらなる別の実施形態は、半径方向に延在し隣接するバーの間に広がる距離が、範囲[0.1cm、1.0cm]にあるリファイナを提供する。距離は、好ましくは範囲[0.1cm、0.8cm]にあり、さらに好ましくは範囲[0.1cm、0.4cm]にあるべきである。
【0045】
一例として、提案された技術はまた、リファイナセグメント対を提供する。リファイナセグメント対は、ステータディスク20と共に使用されるように構成されるリファイニングセグメント31の突起構造40が、ピラミッドまたはスタブ形状を有する突起構造を備える。これらのピラミッドまたはスタブは、例えば、ロータディスクセグメントのバルク材料および/またはステータディスクセグメントのバルク材料よりも硬い材料から製造されてもよい。
【0046】
また、提案された技術は、リグノセルロース材料を叩解するためのリファイナ1における上述にしたがった、リファイナセグメント対の使用を提供する。
【符号の説明】
【0047】
1 リファイナ
10 ロータディスクセグメント
14 供給チャネル
15 回転軸
16 軸受
17 センタプレート
19 リファイニングギャップ
20 ステータディスクセグメント
26 ハウジング
30 第1のリファイナセグメント、リファイニングセグメント
30a 内周
30b 外周
31 第2のリファイナセグメント、リファイニングセグメント
30;31 リファイナセグメント対
32 流入口、孔、貫通孔
40 バー
41 第2のハウジング
H 高さ
H* 高さ