(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02D 41/06 20060101AFI20241107BHJP
F02B 19/16 20060101ALI20241107BHJP
F02B 19/18 20060101ALI20241107BHJP
F02D 41/40 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
F02D41/06
F02B19/16 H
F02B19/18 B
F02D41/40
(21)【出願番号】P 2020157774
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-08-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大樹
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-098613(JP,A)
【文献】特開平07-026961(JP,A)
【文献】特開2004-285928(JP,A)
【文献】特開2002-357115(JP,A)
【文献】特開平06-159065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/06
F02B 19/16
F02B 19/18
F02D 41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドとシリンダブロックを備えた内燃機関であって、
前記シリンダブロックに形成された気筒と、
前記気筒内に摺動自在に挿嵌されたピストンと、
前記気筒内に形成され、前記ピストンと前記シリンダヘッドの間の主燃焼室と、
前記主燃焼室に連通するように前記シリンダヘッドに形成され、排気弁および吸気弁が開閉自在に設けられた複数のポートと、
底部が前記ピストン側を臨むように前記シリンダヘッドに設けられ
、副燃焼室を有する
第1チャンバおよび第2チャンバと、
前記シリンダヘッドに設けられ、
前記第1チャンバの副燃焼室に燃料を噴霧する
第1インジェクタと、
前記シリンダヘッドに設けられ、前記第2チャンバの副燃焼室に燃料を噴霧する第2インジェクタと、
前記シリンダヘッドに設けられ、前記
第1チャンバの副燃焼室内
の混合気を着火する
第1点火プラグと、
前記シリンダヘッドに設けられ、前記第2チャンバの副燃焼室内の混合気を着火する第2点火プラグと、
前記
第2チャンバの副燃焼室と連通するように前記
第2チャンバに
おいて、
前記排気弁側に臨むように形成され、トーチ火炎を噴射する噴口と、
前記
第1インジェクタ
、前記第2インジェクタ、前記
第1点火プラグ
および前記第2点火プラグを駆動制御するエンジン制御ユニットと、
を具備し、
前記エンジン制御ユニットは、
前記第1チャンバの副燃焼室内の混合気を前記第1点火プラグにより着火させて、前記第1点火プラグの着火タイミングとは異なるタイミングである排気行程時において、前記
第2インジェクタか
ら燃料が噴霧された前記
第2チャンバの副燃焼室内の混合気を前記
第2点火プラグにより着火させて、前記噴口から前記トーチ火炎を
前記排気弁側に向かって噴射させて、燃焼ガスと共に前記トーチ火炎を前記排気弁が開弁した前記ポートに送り込む制御を実行することを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記エンジン制御ユニットは、燃焼行程時において
、前記
第1チャンバ
の副燃焼室内の混合気
を前記
第1点火プラグにより着火させて
、排気行程時において
、前記
第2チャンバ
の副燃焼室内の混合気
を前記
第2点火プラグにより着火させて
、前記トーチ火炎を噴射させる制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記噴口は、孔軸が前記
第2チャンバの中心軸に対して90°の角度を有し
、前記排気弁側の複数のポートの中間を指向していることを特徴とする請求項1
または請求項2記載の内燃機関。
【請求項4】
前記燃料がガソリンのガソリンエンジンであることを特徴とする請求項1から請求項
3の何れか1項に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒を昇温促進し、副燃焼室を備えた希薄燃焼の内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンエンジンの熱効率を向上させる手法の一つとして、希薄燃焼(リーンバーン)技術が注目されている。この希薄燃焼技術は、燃焼室内に投入する燃料の量を減らして薄い混合気を作り、これを素早く燃やして燃費を向上させる。
【0003】
希薄燃焼技術において、例えば、特許文献1および特許文献2に開示されるように、熱損失と排気損失を低減するために副燃焼室(プリチャンバ)燃焼方式が知られている。
【0004】
副燃焼室燃焼方式は、燃焼室に配設される点火プラグに、微小な孔が複数設けられた半円形のキャップなどをかぶせて副燃焼室を形成し、この副燃焼室内に燃料噴射装置を配置する。そして、副燃焼室内に少量の燃料を噴射して点火すると、副燃焼室内の燃料が一気に燃え、複数の微小な孔からトーチ火炎が燃焼室内に吹きだす。このトーチ火炎によりシリンダ内の希薄混合気が着火し、短時間で急速燃焼させことができる。これにより、希薄環境下での安定燃焼や、ボア端での自着火を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-026961号公報
【文献】特開2018-105171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、内燃機関のパワーユニットを有する車両などには、排ガス中の有害成分を浄化するための触媒コンバータが排気路に設けられている。この触媒コンバータ内の触媒(三元触媒)は、有害成分を浄化する活性化温度に排ガスの熱により昇温される。
【0007】
しかしながら、副燃焼室燃焼方式の内燃機関は、希薄混合気の燃焼速度が速いため、排気路に設けられた触媒を早期に昇温させることが困難であり、冷間始動時などにおける触媒が活性化温度に達する時間が長くなるという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、排気路に設けられた触媒が活性化する温度に昇温促進させる副室燃焼を有する内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、シリンダヘッドとシリンダブロックを備えた内燃機関であって、
前記シリンダブロックに形成された気筒と、前記気筒内に摺動自在に挿嵌されたピストンと、前記気筒内に形成され、前記ピストンと前記シリンダヘッドの間の主燃焼室と、前記主燃焼室に連通するように前記シリンダヘッドに形成され、排気弁および吸気弁が開閉自在に設けられた複数のポートと、底部が前記ピストン側を臨むように前記シリンダヘッドに設けられ、副燃焼室を有する第1チャンバおよび第2チャンバと、前記シリンダヘッドに設けられ、前記第1チャンバの副燃焼室に燃料を噴霧する第1インジェクタと、前記シリンダヘッドに設けられ、前記第2チャンバの副燃焼室に燃料を噴霧する第2インジェクタと、前記シリンダヘッドに設けられ、前記第1チャンバの副燃焼室内の混合気を着火する第1点火プラグと、前記シリンダヘッドに設けられ、前記第2チャンバの副燃焼室内の混合気を着火する第2点火プラグと、前記第2チャンバの副燃焼室と連通するように前記第2チャンバにおいて、前記排気弁側に臨むように形成され、トーチ火炎を噴射する噴口と、前記第1インジェクタ、前記第2インジェクタ、前記第1点火プラグおよび前記第2点火プラグを駆動制御するエンジン制御ユニットと、を具備し、前記エンジン制御ユニットは、前記第1チャンバの副燃焼室内の混合気を前記第1点火プラグにより着火させて、前記第1点火プラグの着火タイミングとは異なるタイミングである排気行程時において、前記第2インジェクタから燃料が噴霧された前記第2チャンバの副燃焼室内の混合気を前記第2点火プラグにより着火させて、前記噴口から前記トーチ火炎を前記排気弁側に向かって噴射させて、燃焼ガスと共に前記トーチ火炎を前記排気弁が開弁した前記ポートに送り込む制御を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、排気路に設けられた触媒が活性化する温度に昇温促進させる副室燃焼を有する内燃機関を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】希薄燃焼エンジンの要部の断面を部分的に示す概略構成図
【
図2】吸気行程の希薄燃焼エンジンの状態を示す部分断面図
【
図3】圧縮行程の希薄燃焼エンジンの状態を示す部分断面図
【
図4】第1の副燃焼室からトーチ火炎が噴射される着火時の希薄燃焼エンジンの状態を示す部分断面図
【
図5】燃焼行程の希薄燃焼エンジンの状態を示す部分断面図
【
図6】第2の副燃焼室からトーチ火炎が噴射される排気行程の希薄燃焼エンジンの状態を示す部分断面図
【
図7】変形例の第2の副燃焼室からトーチ火炎が噴射される着火時の希薄燃焼エンジンの状態を示す部分断面図
【
図8】変形例の第2の副燃焼室からトーチ火炎が噴射される排気行程の希薄燃焼エンジンの状態を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照しながら、本発明の一態様の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明に用いる図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0013】
図1に示す、内燃機関である希薄燃焼(リーンバーン)エンジン(以下、単にエンジンと略記する)1は、火花点火式の筒内噴射エンジンを示し、本実施形態においては、例えば、自然吸気型の4気筒のガソリンエンジンの1気筒部分の断面を例示している。
【0014】
エンジン1は、シリンダブロック10に開口する各気筒11にピストン15が摺動自在に嵌挿されている。このピストン15の頂面には、ピストンキャビティ15aが形成されている。ピストン15とシリンダヘッド20との間の空間として主燃焼室12が設けられている。
【0015】
ここで、例えば、各気筒11に対応する領域において、シリンダヘッド20の底面28には、2つの吸気ポート23および2つの排気ポート24が開口されている。さらに、2つの吸気ポート23および2つの排気ポート24には、これらを開閉する吸気弁25および排気弁26がそれぞれ配設されている。なお、
図1においては吸気ポート23および排気ポート24がそれぞれ1つのみ図示している。
【0016】
また、シリンダヘッド20側の主燃焼室12の略中央位置には、メインプレチャンバとして機能する第1の副燃焼室ユニット40が設けられている。さらに、シリンダヘッド20側の主燃焼室12の排気ポート24側には、サブプレチャンバとして機能する第2の副燃焼室ユニット41が設けられている。
【0017】
第1の副燃焼室ユニット40は、有底筒状のキャップ体である第1のチャンバ42、第1の点火プラグ47および噴射用燃料噴射弁として機能する第1のインジェクタ46が保持されている。
【0018】
第2の副燃焼室ユニット41は、有底筒状のキャップ体である第2のチャンバ44、第2の点火プラグ49および噴射用燃料噴射弁として機能する第2のインジェクタ48が保持されている。
【0019】
これら第1、第2の点火プラグ47,49の先端部に形成された点火部および第1、第2のインジェクタ46,48の先端部に設けられた燃料噴射口は、それぞれが第1、第2のチャンバ42,44によって形成された狭小空間である第1、第2の副燃焼室42a,44a内に臨まされている。
【0020】
第1のチャンバ42は、有底部に複数の噴口43が周方向に形成されている。これら複数の噴口43は、例えば、略等間隔に8つ形成されており、これら8つの噴口43の各孔軸が第1のチャンバ42の中心軸に対して所定の角度θ(例えばθ=45°)を有している。即ち、8つの噴口43は、第1の副燃焼室42aと連通し、主燃焼室12に向けて俯角を有して開口部が放射状に臨むように各孔軸が設定されている。
【0021】
第2のチャンバ44は、1つまたは2つの噴口45が排気弁26および排気ポート24側に向けて形成されている。噴口45は、1つの場合、例えば、2つの排気弁26の略中間に向けて形成されていることが好ましく、2つの場合、例えば、個々が各排気弁26に向けて形成されていることが好ましい。
【0022】
1つまたは2つの噴口45も、その孔軸が第2のチャンバ44の中心軸に対して所定の角度θ(例えばθ=90°)を有している。即ち、噴口45は、第2の副燃焼室44aと連通し、主燃焼室12の排気弁26側に向けて臨むように孔軸が設定されている。
【0023】
さらに、シリンダヘッド20には、筒内噴射用燃料噴射弁として機能する第3のインジェクタ17が保持され、この第3のインジェクタ17の燃料噴射口がピストン15の頂面に対して所定の俯角を有した状態で気筒11内に臨まされている。
【0024】
なお、シリンダヘッド20には、吸気弁25および排気弁26の燃焼サイクル毎の開弁状態を可変に切換可能な図示しない可変動弁機構が設けられている。可変動弁機構は、吸気弁25および排気弁26を、任意のタイミングおよびリフト量で駆動することが可能となっており、エンジン制御ユニット(ECU)30によって駆動制御される。
【0025】
また、ECU30は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどを有する周知のマイクロコンピュータを中心として構成され、入力側に、図示しない吸入空気量センサ、クランク軸の回転からエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサなどを含む各種センサ/スイッチ類が接続されている。
さらに、ECU30は、例えば、水冷エンジンのクーラント液の温度を検出する水温センサ31、排気ガス中の酸素量を検出するO2センサ32および触媒コンバータ50の触媒51の温度または触媒出口直後の排ガスの温度を検出する触媒温度センサ33が接続されている。
【0026】
なお、O2センサ32は、排気ポート24に連通するエキゾーストマニホールド27に接続される排気管29に設けられている。また、触媒温度センサ33は、触媒コンバータ50の触媒51を収容する外装体のプロテクタとして機能するケース体52の後方側に設けられている。
【0027】
以上のように構成されたエンジン1は、
図2に示すように、ピストン15が上死点の位置から下降することで気筒11内が陰圧となって、このピストン15の運動に連動して吸気弁25が開き、吸気ポート23から主燃焼室12内に空気(AIR)が吸入される吸気行程が行われる。そして、エンジン1は、
図3に示すように、ピストン15が下死点の位置から上昇する圧縮行程が行われる。
【0028】
この圧縮行程時において、エンジン1は、要求負荷に応じたタイミングにより、ECU30の制御によって、第3のインジェクタ17の燃料噴射口から燃料(ガソリン)が主燃焼室12内に噴霧される。さらに、エンジン1は、所定のタイミングにより、ECU30の制御によって、第1のインジェクタ46の燃料噴射口から燃料(ガソリン)が第1の副燃焼室42a内に噴霧される。
【0029】
そして、エンジン1は、
図4に示すように、上死点付近にピストン15が運動した際に、ECU30の制御によって、第1の点火プラグ47の点火部に火花を発生させて、狭小空間の第1の副燃焼室42a内の混合気を着火する。
【0030】
これにより、第1の副燃焼室42a内の混合気が急速に燃焼して、複数、ここでは8つの噴口43から着火源である8つのトーチ火炎Fが主燃焼室12内に放射状に噴射され、主燃焼室12が急速に燃焼される燃焼行程が行われる。
【0031】
この燃焼行程により、エンジン1は、
図5に示すように、燃焼された主燃焼室12内の気体の膨張作用によりピストン15が下死点まで押し下げられて動力が伝えられ、さらに慣性力により下死点から上死点に運動する。
【0032】
このとき、エンジン1は、
図6に示すように、ピストン15の運動に連動して排気弁26が開き、燃焼ガス(排ガス/EX GAS)を気筒11外の排気ポート24内に押し流す排気行程が行われる。
【0033】
また、エンジン1は、燃焼行程から排気行程に移る際に、ECU30の制御によって、第2のインジェクタ48の燃料噴射口から燃料(ガソリン)が第2の副燃焼室44a内に噴霧される。そして、エンジン1は、排気弁26が開弁される所定のタイミング(例えば、排気弁26が開弁された瞬間)に、ECU30の制御によって、第2の点火プラグ49の点火部に火花を発生させて、狭小空間の第2の副燃焼室44a内の混合気を着火する。
【0034】
これにより、第2の副燃焼室44a内の混合気が燃焼して、排気弁26が開弁した排気ポート24に向けて噴口45からトーチ火炎Fが主燃焼室12内に噴射される。このとき、排気ポート24内に押し流されている燃焼ガスの気流によって、トーチ火炎Fが排気ポート24内に入り込む。
【0035】
排気ポート24に押し流された燃焼ガスは、トーチ火炎Fにより、さらに熱せられて高温となり、排気ポート24に連通するエキゾーストマニホールド27および排気管29を伝って触媒コンバータ50に送気される。この高温な燃焼ガスは、触媒コンバータ50の触媒51を加熱して昇温させる。これにより、触媒51は、高温な燃焼ガスにより加熱されて、燃焼ガスを浄化する活性化温度に達するまでの時間が短縮される。
【0036】
以上の記載により、本実施の形態のエンジン1は、燃焼室内に、ここでは2つの第1、第2の副燃焼室ユニット40,41を有した構成となっている。そして、2つのうち第1の副燃焼室ユニット40は、ジェット火炎であるトーチ火炎Fを主燃焼室12内に噴射して混合気を燃焼させる方式のメイン着火源となっており、第2の副燃焼室ユニット41が排気弁26の開くタイミングに合わせてトーチ火炎Fを直接、排気ポート24内の方向に噴射する方式とした触媒コンバータ50の触媒51の温度上昇を促進するサブの着火源となっている。
【0037】
このように、エンジン1は、メインの第1の副燃焼室ユニット40とサブの第2の副燃焼室ユニット41の着火タイミングが異なり、触媒51の低温時に第2の副燃焼室ユニット41が駆動されて排気弁26が開くタイミングに応じてトーチ火炎Fを噴射させる制御が行われる。そして、エンジン1は、サブの第2の副室燃焼ユニット41から噴射されたトーチ火炎Fを直接排気系に噴射することができるため、触媒51の暖機を促進することができる。
【0038】
なお、ECU30は、第2の副燃焼室ユニット41を駆動および停止する制御を冷間始動時または寒冷地などにより温度低下した触媒51が活性化する温度への昇温を促進させる種々の条件下の際に実施する。なお、ECU30は、第2の副燃焼室ユニット41の駆動および停止の制御を水温センサ31、O2センサ32、触媒温度センサ33などの検出値に基づき実行する。
【0039】
さらに、エンジン1は、メインとなる第1の副室燃焼ユニット40およびサブとなる第2の副燃焼室ユニット41が独立して制御されるため、暖機運転(ファスト・アイドル)時に第1の副室燃焼ユニット40によるトーチ火炎Fの噴射を燃焼安定性確保に使用し、第2の副燃焼室ユニット41によるトーチ火炎Fの噴射を触媒51の暖機に使用することで、触媒51の温度を下げることなく、混合気の失火によるトルク変動によって発生する振動を抑えることも可能となる。
【0040】
なお、上記実施の形態では、第1の副燃焼室ユニット40が第1のインジェクタ46により第1の副燃焼室42aに直接、燃料(ガソリン)を噴霧して第1の点火プラグ47の点火によりトーチ火炎Fを主燃焼室12内に噴射する方式の所謂アクティブモードを例示したが、これに限定されることなく、第1のインジェクタ46を設けず、圧縮行程時に主燃焼室12から各噴射口43から第1の副燃焼室42a内に入り込んだ混合気を第1の点火プラグ47の点火によりトーチ火炎Fを主燃焼室12内に噴射する方式の所謂パッシブモードとしてもよい。
【0041】
(変形例)
本変形例のエンジン1は、
図7および
図8に示すように、第1の副燃焼室ユニット40の機能を有する第2の副燃焼室ユニット41のみを備えた構成となっている。即ち、ここでの第2の副燃焼室ユニット41は、メインプレチャンバおよびサブプレチャンバの機能を有した構成となっている。
【0042】
ここでのエンジン1は、
図7に示すように、燃焼行程時において、第2の点火プラグ49の点火部に火花が発生されて、第2の副燃焼室44a内の混合気を着火する制御がECU30によって行われる。これにより、噴口45から着火源であるトーチ火炎Fが主燃焼室12内に噴射され、主燃焼室12が急速に燃焼されて燃焼行程が実施される。
【0043】
また、エンジン1は、排気弁26が開弁される所定のタイミング(例えば、排気弁26が開弁された瞬間)に、第2の点火プラグ49の点火部に火花を発生させて、第2の副燃焼室44a内の混合気を着火する制御がECU30によって実行される。
【0044】
これにより、第2の副燃焼室44a内の混合気が燃焼して、
図8に示すように、排気弁26が開弁した排気ポート24に向けて噴口45からトーチ火炎Fが主燃焼室12内に噴射される。そのため、トーチ火炎Fは、燃焼ガスと共に排気ポート24内に送り込まれる。
【0045】
このような構成としても、エンジン1は、トーチ火炎Fにより、さらに高温化された燃焼ガスが触媒51を加熱して、触媒51が燃焼ガスを浄化する活性化温度に達するまでの時間を短縮でき、上記実施の形態に記載の作用効果を有する構成となる。
【0046】
さらに、エンジン1は、第2の副燃焼室ユニット41のみとなるため、構造が簡素化され、コストを抑えた構成とすることができる。また、エンジン1は、シリンダヘッド20の底面28における吸気ポート23、排気ポート24、吸気弁25および排気弁26の径を大きくすることができ、気筒11への吸排気効率を高めることができる。
【0047】
なお、上記実施の形態および変形例では、エンジン1が筒内噴射エンジンの構成を例示したが、これに限定されることなく、吸気管内に燃料を噴射して混合気を生成するポート噴射エンジンに適用できる技術である。
【0048】
ところで、ECU30は、中央処理装置(CPU)、ROM、RAMなどの記憶装置などを含むプロセッサを有している。また、プロセッサの複数の回路の全て若しくは一部の構成は、ソフトウェアで実行してもよい。例えば、ROMに格納された各機能に対応する各種プログラムをCPUが読み出して実行するようにしてもよい。
【0049】
さらに、プロセッサの全部若しくは一部の機能は、論理回路あるいはアナログ回路で構成してもよく、また各種プログラムの処理を、FPGAなどの電子回路により実現するようにしてもよい。
【0050】
以上の実施の形態に記載した発明は、それらの形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記各形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
例えば、各形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0051】
1…エンジン
10…シリンダブロック
11…気筒
12…主燃焼室
15…ピストン
15a…ピストンキャビティ
17…第3のインジェクタ
20…シリンダヘッド
23…吸気ポート
24…排気ポート
25…吸気弁
26…排気弁
27…エキゾーストマニホールド
28…底面
29…排気管
30…エンジン制御ユニット(ECU)
31…水温センサ
32…O2センサ
33…触媒温度センサ
40…第1の副燃焼室ユニット
42…第1のチャンバ
42a…第1の副燃焼室
43,45…噴口
44…第2のチャンバ
44a…第2の副燃焼室
46…第1のインジェクタ
47…第1の点火プラグ
48…第2のインジェクタ
49…第2の点火プラグ
50…触媒コンバータ
51…触媒
52…ケース体
F…トーチ火炎