(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】表皮材、表皮材複合体、表皮材の製造方法及び表皮材複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 3/24 20060101AFI20241107BHJP
D06N 3/00 20060101ALI20241107BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B32B3/24 Z
D06N3/00
B32B3/30
(21)【出願番号】P 2020160876
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390023009
【氏名又は名称】共和レザー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝井 拓哉
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/155692(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/065758(WO,A1)
【文献】特開2020-023300(JP,A)
【文献】特開2018-016213(JP,A)
【文献】特開2013-072147(JP,A)
【文献】特開平10-025668(JP,A)
【文献】特開昭56-112579(JP,A)
【文献】特開2018-199264(JP,A)
【文献】特開昭48-020850(JP,A)
【文献】特開昭48-020851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
D06N 1/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表皮層を備える表皮材であり、
前記表皮材は、表皮材を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有し、
且つ、前記表皮層の少なくとも一方の面に、深度0.2mm以上の凹部を有
し、
前記凹部は、平面視した場合に、幅が10mm~50mmの長さ方向に連続した帯状の凹部である、表皮材。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記表皮層の面上の全面に亘り、規則的に配列される請求項1に記載の表皮材。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記表皮層を平面視した場合、サイズ又は形状が互いに異なる複数種の貫通孔を含む請求項1又は請求項2に記載の表皮材。
【請求項4】
前記表皮材を平面視した場合、貫通孔を有する孔あき領域と、貫通孔を有しない非孔あき領域とを有する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の表皮材。
【請求項5】
前記孔あき領域のみに、前記深度0.2mm以上の凹部を有する請求項4に記載の表皮材。
【請求項6】
前記非孔あき領域のみに、前記深度0.2mm以上の凹部を有する請求項4に記載の表皮材。
【請求項7】
前記表皮層の深度0.2mm以上の凹部を有する側とは反対側の面に基布を有する請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の表皮材。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の表皮材と、クッション層とを、この順に備える表皮材複合体であり、
前記表皮材は、前記クッション層を有する側とは反対側の面に、深度0.2mm以上の前記凹部を有する表皮材複合体。
【請求項9】
少なくとも表皮層を有する表皮材基材を形成する工程と、
前記表皮材基材に、複数の貫通孔を形成する工程と、
前記表皮材基材の一方の面に、エンボスロール又はエンボス板を接触させて、深度0.2mm以上
であり、平面視した場合に、幅が10mm~50mmの長さ方向に連続した帯状の凹部を形成する工程と、を含む表皮材の製造方法。
【請求項10】
少なくとも表皮層を有する表皮材基材を形成する工程と、
前記表皮材基材に、複数の貫通孔を形成する工程と、
前記表皮材基材の表皮層を有する側とは反対側の面に、クッション層を貼り合わせる工程と、
前記クッション層と貼り合わせた表皮材基材の表皮層を有する側にエンボスロール又はエンボス板を接触させて、深度0.2mm以上
であり、平面視した場合に、幅が10mm~50mmの長さ方向に連続した帯状の凹部を形成する工程と、を含む表皮材複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は表皮材、表皮材複合体、表皮材の製造方法及び表皮材複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インストルメントパネル、ドアトリム、座席、天井などの自動車内装部品、トリム、座席、天井などの鉄道車輌及び航空機内装部品、家具、靴、履物、鞄、建装用内外装部材、衣類表装材及び裏地、壁装材などには、天然皮革や繊維製シートに代えて、耐久性に優れる合成樹脂表皮材が多用されている。例えば、自動車内装品については、車両の高級化に伴い、内装用の表皮材についても高級感を付与させることが重要になってきている。また、天然皮革と同等又はそれ以上の通気性を有することも求められている。
従来、透湿性及び通気性を付与したり、意匠性を付与したりするため、合成皮革として用いる積層シートに穿孔加工(パーフォレーション加工)を施して、直径1mm程度の大きさの複数の貫通孔をドット状に設けたパーフォレーション表皮材が知られている。
【0003】
このようなパーフォレーション表皮材は、通気性と意匠性とを備えた素材として注目されており、例えば、自動車の座席シートの表皮材等として用いられている。
しかし、通気等を目的として合成皮革に形成される孔は、合成皮革の全面に亘り、均一の形状の孔が、規則正しく均等に配置され、意匠性の向上の観点からは、さらなる改良が求められていた。
【0004】
パーフォレーション表皮材の意匠性の向上を目的として、合成皮革に形成される貫通孔の内面の不織布の存在を視認させることにより、貫通孔が強調された意匠を呈するパーフォレーション皮革様シートが提案されている(特許文献1参照)。
着色層及び前記着色層とは色相の異なる不透明表皮層とを有する積層シートに、少なくとも前記着色層及び前記不透明表皮層を貫通し、且つ、表皮層側から見た場合に着色層の色を視認することが可能な孔を複数個設けた装飾シートが提案されている(特許文献2参照)。この装飾シートは、貫通孔を見る角度によって、孔から下方に存在する着色層の色相を見ることができるといった、従来の装飾シートには見られない意匠効果を発現するとされている。
また、従来とは異なる意匠性を達成する表皮材として、汎用されている皮革様の浅い凹凸を有する合成皮革よりも、さらに深い凹凸を有する立体形状の表皮材が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-34355号公報
【文献】特開平11-256483号公報
【文献】国際公開2019/065758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の如き表皮層では、貫通孔及びその周辺部を視認した際には、独特の意匠効果を得られるが、例えば、自動車のシートなどの広い面積に表皮材を用いた場合、距離を置いて視認した場合の外観については、意匠性の向上が得難いという問題がある。例えば、自動車のシートでは、乗車した際に30cm程度は距離を置いて視認することになり、貫通孔の内部の色相などは確認し難い。
また、特許文献3に記載の合成樹脂表皮材は、深い凹凸を有する立体形状を有する表皮材が得られるが、新規な意匠性を達成することに係る着目はない。
現在では、価値観が多様化しており、通気性を目的としたパーフォレーション表皮材に対しても、従来とは違った新規な意匠性が求められている。
【0007】
本発明の実施形態の課題は、貫通孔を有し、通気性が高く、従来公知の表皮材とは異なる新規な意匠性を達成しうる表皮材及び該表皮材を備えた表皮材複合体を提供することにある。
本発明の別の実施形態の課題は、貫通孔を有し、通気性が高く、従来公知の表皮材とは異なる新規な意匠性を達成しうる表皮材を、簡易な工程により製造することができる表皮材の製造方法及び該表皮材を備えた表皮材複合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決手段は、以下に示す実施形態を含む。
<1> 少なくとも表皮層を備える表皮材であり、前記表皮材は、表皮材を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有し、且つ、前記表皮層の少なくとも一方の面に、深度0.2mm以上の凹部を有する表皮材。
【0009】
<2> 前記貫通孔は、前記表皮層の面上の全面に亘り、規則的に配列される<1>に記載の表皮材。
<3> 前記貫通孔は、前記表皮層を平面視した場合、サイズ又は形状が互いに異なる複数種の貫通孔を含む<1>又は<2>に記載の表皮材。
<4> 前記表皮材を平面視した場合、貫通孔を有する孔あき領域と、貫通孔を有しない非孔あき領域とを有する<1>~<3>のいずれか1つに記載の表皮材。
<5> 前記孔あき領域のみに、前記深度0.2mm以上の凹部を有する<4>に記載の表皮材。
<6> 前記非孔あき領域のみに、前記深度0.2mm以上の凹部を有する<4>に記載の表皮材。
<7> 前記表皮層の深度0.2mm以上の凹部を有する側とは反対側の面に基布を有する<1>~<6>のいずれか1つに記載の表皮材。
【0010】
<8> <1>~<7>のいずれか1つに記載の表皮材と、クッション層とを、この順に備える表皮材複合体であり、前記表皮材は、前記クッション層を有する側とは反対側の面に、深度0.2mm以上の前記凹部を有する表皮材複合体。
【0011】
<9> 少なくとも表皮層を有する表皮材基材を形成する工程と、前記表皮材基材に、複数の貫通孔を形成する工程と、前記表皮材基材の一方の面に、エンボスロール又はエンボス板を接触させて、深度0.2mm以上の凹部を形成する工程と、を含む表皮材の製造方法。
<10> 少なくとも表皮層を有する表皮材基材を形成する工程と、前記表皮材基材に、複数の貫通孔を形成する工程と、前記表皮材基材の表皮層を有する側とは反対側の面に、クッション層を貼り合わせる工程と、前記クッション層と貼り合わせた表皮材基材の表皮層を有する側にエンボスロール又はエンボス板を接触させて、深度0.2mm以上の凹部を形成する工程と、を含む表皮材複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、貫通孔を有し、通気性が高く、従来公知の表皮材とは異なる新規な意匠性を達成しうる表皮材及び該表皮材を備えた表皮材複合体を提供することができる。
本発明の別の実施形態によれば、貫通孔を有し、通気性が高く、従来公知の表皮材とは異なる新規な意匠性を達成しうる表皮材を、簡易な工程により製造することができる表皮材の製造方法及び該表皮材を備えた表皮材複合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】規則的に配列される貫通孔の配置の一例を示す概略平面図であり、平面視による四角格子の格子点に貫通孔を有する態様の概略平面図である。
【
図2】規則的に配列される貫通孔の配置の一例を示す概略図であり、互いにサイズの異なる相似形の六角形の重なりの状態に貫通孔を有する態様の概略平面図である。
【
図3】本開示の表皮材における孔あき領域及び非孔あき領域の確認方法の一例を示す概略平面図である。
【
図4】本開示の表皮材における孔あき領域及び非孔あき領域の確認方法の、
図3とは別の態様の一例を示す概略平面図である。
【
図5】
図5(A)は、本開示の表皮材の第1の態様である実施例1の表皮材を示す平面図であり、
図5(B)は、実施例1の表皮材を示す概略断面図である。
【
図6】
図6(A)は、本開示の表皮材複合体の第1の態様である実施例2の表皮材複合体を示す平面図であり、
図6(B)は、実施例2の表皮材複合体を示す概略断面図である。
【
図7】
図7(A)は、本開示の表皮材の第2の態様である実施例3の表皮材を示す平面図であり、
図7(B)は、実施例3の表皮材を示す概略断面図である。
【
図8】
図8(A)は、本開示の表皮材複合体の第2の態様である実施例4の表皮材複合体を示す平面図であり、
図8(B)は、実施例4の表皮材複合体を示す概略断面図である。
【
図9】
図9(A)は、本開示の表皮材の第3の態様である実施例5の表皮材を示す平面図であり、
図9(B)は、実施例5の表皮材を示す概略断面図である。
【
図10】
図10(A)は、本開示の表皮材複合体の第3の態様である実施例6の表皮材複合体を示す平面図であり、
図10(B)は、実施例6の表皮材複合体を示す概略断面図である。
【
図11】
図11(A)は、本開示の表皮材の第4の態様である実施例7の表皮材を示す平面図であり、
図11(B)は、実施例7の表皮材を示す概略断面図である。
【
図12】
図12(A)は、本開示の表皮材複合体の第4の態様である実施例8の表皮材複合体を示す平面図であり、
図12(B)は、実施例8の表皮材複合体を示す概略断面図である。
【
図13】
図13(A)は比較例1に係る同一の円形状であり且つ同一の直径の貫通孔を有する従来の表皮材の貫通孔パターンを示す平面図であり、
図13(B)は、比較例1の表皮材の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示において「~」を用いて記載した数値範囲は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を表す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示においては、各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。
なお、図面は、本開示の実施形態の例を概略的に示すものであり、各図面における寸法の比率は、必ずしも実際の寸法の比率を表すものではない。
【0015】
以下、本開示では、表皮材複合体を単に「複合体」と称することがある。
本開示において、表皮材はシート状の形態を有し、シート状の表皮材の最大面積の領域を表皮材の「面」と称し、表皮材の「面」方向とは垂直方向の断面の長さを、表皮材の「厚さ」と称する。
表皮材の「貫通孔」は、シート状の表皮材を厚さ方向に貫通する孔を意味する。よって、表皮材が表皮層のみからなる単層構造の場合には、表皮層を貫通する孔を意味し、表皮材が、例えば、基布上に表皮層を有する多層構造の場合には、表皮層と基布とを貫通する孔を意味する。
本開示において、「凹部の深度」とは、表皮材において凹部が形成されていない領域における表皮層の面から、表皮材に形成された凹部の底部までの距離を指す。
本開示において、少なくとも表皮層を有し、貫通孔及び深度0.2mm以上の凹部が形成される前の、少なくとも表皮層を備えるシート状の表皮材前駆体を「表皮材基材」と称する。本開示における「表皮材」は、前記表皮材基材に、貫通孔と、深度0.2mm以上の凹部とが形成された、完成品としての表皮材を指す。
【0016】
以下、本開示の表皮材、複合体、及びそれらの製造方法について、具体例を挙げて詳細に説明する。以下に示す具体例は、本開示の一態様であり、本開示は以下に示す具体例に限定されず、本開示の趣旨を超えない限り種々の変型例で実施することができる。
【0017】
〔表皮材〕
本開示の表皮材は、少なくとも表皮層を備える表皮材であり、前記表皮材は、表皮材を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有し、且つ、前記表皮層の少なくとも一方の面に、深度0.2mm以上の凹部を有する。
貫通孔は、表皮材の通気孔としての機能を有する。
貫通孔を形成する基材となる表皮材は、加飾層としての表皮層を有する以外には、特に層構成、層を形成する材料などには制限はない。表皮材としては、例えば、天然皮革、人工皮革、合成皮革、車両の内装及び建造物の内装に用いる加飾フィルム等が挙げられる。なお、前記合成皮革は、ポリ塩化ビニル(PVC)を含む表皮層を有する所謂PVCレザーを含む。
表皮材は、表皮層のみからなる単層構造であってもよく、表皮層に加え、基布、接着層、中間層などのその他の層を備える多層構造であってもよい。
本開示の表皮材は、表皮材が有する複数の貫通孔と、表皮材の面上に形成された深度0.2mm以上の凹部との組み合わせにより、独特の外観を呈する。
【0018】
貫通孔及び凹部が形成される前の表皮材基材は、表皮層を有すること以外、表皮材基材を構成する素材、表皮材基材の層構成などには特に制限はない。表皮材基材は、貫通孔及び深度0.2mm以上の凹部を形成することで、本開示の表皮材となる。
【0019】
<表皮層>
表皮材の表皮層は、天然皮革であってもよく、合成樹脂を含んで形成される合成樹脂表皮層であってもよい。
表皮層として、天然皮革を用いる場合には、表皮材は、表皮層としての天然皮革からなる単層の表皮材であってもよく、表皮層としての天然皮革の表面である銀面とは反対側の面に基布を有する重層の表皮材であってもよい。
なかでも、加工性及び意匠の自由度がより良好であるという観点からは、表皮層は、合成樹脂を含むことが好ましい。表皮層に含まれる合成樹脂には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
表皮層に含まれる合成樹脂としては、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂(PVC)、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられる。なかでも、表皮層に形成される凹部の保持性の観点から、ウレタン樹脂、及びPVCが好ましい。
【0020】
表皮層に含まれ得るポリウレタンとしては、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン及びこれらの変性物等が挙げられる。なかでも、本開示の表皮材が、例えば、自動車用内装材、椅子等の長期耐久性が必要な用途に用いられる観点からはポリカーボネート系ポリウレタンが好適である。
表皮層に含まれ得るポリウレタンは、水系ポリウレタン、無溶剤系ポリウレタン、及び溶剤系ポリウレタンから、適宜選択して使用することができる。
【0021】
表皮層に含まれうるPVCとしては、通常、表皮材に使用されているPVCであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、平均重合度650~2000、好ましくは平均重合度650~1800程度のPVC単独重合体、さらに、PVCを主材とする、塩化ビニルと、エチレン、酢酸ビニル、メタクリル酸エステル等との共重合体等が挙げられる。
さらに、上記PVC単独重合体、塩化ビニル由来の構造単位を含む共重合体と、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ウレタン樹脂、アクリロニトリル、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、部分ケン化ビニルアルコール等との混合樹脂等を用いることができる。
【0022】
表皮層が合成樹脂を含む場合、合成樹脂を1種のみ含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
表皮層を形成するための組成物(以下、表皮層形成用組成物と称することがある)には、主材となる合成樹脂に加え、表皮層に外観向上、感触向上等の種々の機能を付与する目的で、本開示の効果を損なわない限りにおいて公知の添加剤を加えてもよい。なお、主材となる合成樹脂とは、表皮層形成用組成物の全量に対し、50質量%以上含まれる合成樹脂を指す。
【0023】
表皮層形成用組成物が含み得る添加剤としては、可塑剤、安定剤、架橋剤、架橋促進剤、充填剤、着色剤、成膜助剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。
例えば、表皮層に着色剤を含有させることで得られる表皮材の意匠性が向上する。表皮層にリン系、ハロゲン系、無機金属系等の公知の難燃剤を添加することで表皮材の難燃性向上が図れる。また、合成樹脂としてPVCを用いる場合、可塑剤を加えることで、加工性及び得られる表皮層の感触がより向上する。
【0024】
表皮層の形成方法には特に制限はなく、公知の合成皮革、及び表皮材に用いられる表皮層の形成方法を適用して表皮層を設けることができる。
表皮層は、例えば、樹脂及び所望により含有される着色剤、溶剤等のその他の成分を含む表皮層形成用組成物を調製し、得られた表皮層形成用組成物を成形することで形成することができる。
表皮層形成用組成物は、樹脂を溶剤で溶解することで調製することができる。表皮層形成用組成物の調製に用いうる溶剤としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)、トルエン等、及びこれらを2種以上混合した混合溶媒が挙げられる。
以下、溶剤は、併記された上記略称で記載することがある。
【0025】
表皮層は、表皮層形成用組成物を、例えば、カレンダー法、ペースト加工法、溶融押出法などの公知の成膜方法で成膜することにより形成することができる。
また、離型紙上に表皮層形成用組成物を付与して表皮層を形成することができる。離型紙としては、絞型転写用離型紙、平滑な離型紙のいずれも使用することができる。絞型転写用離型紙を用いることで、表皮層の表面に絞模様と称される凹凸模様を形成することができる。
【0026】
表皮層の厚みは、表皮材の使用目的に応じて適宜選択される。
表皮材が、表皮層のみからなる単層構造である場合の表皮層の厚みは、穿孔加工後に表皮層の必要な強度が維持されやすいという観点からは、乾燥後の膜厚として、0.45mm~1.8mmが好ましく、0.9mm~1.2mmであることがより好ましい。
表皮材が、例えば、基布面に表皮層を有する多層構造の表皮材の場合の表皮層の厚みは、凹部の形成性及び強度の観点から、乾燥後の膜厚として、0.25mm~0.8mmであることが好ましい。
表皮層を2層以上有する場合、表皮層の厚みは複数の表皮層の総厚みを指す。
基材層の厚み、及び後述の表皮材、及び表皮材に含まれる基布、その他の任意の層の厚みは、表皮材を面方向に垂直に切断した切断面を観察することで測定することができる。
本開示では、表皮層の厚みは、表皮層又は表皮層を有する表皮材の切断面において無作為に選択した表皮層の5箇所の厚みを測定し、算術平均した値を、表皮層の厚みとする。表皮材及び表皮材が有するその他の層の厚みも同様に測定することができる。
従って、本開示において、表皮材における各層の厚みは、各層の乾燥後の厚みを指す。
【0027】
本開示の表皮材は、表皮層のみからなる単層構造であってもよく、表皮層以外の層を有する多層構造であってもよい。
【0028】
<基布>
本開示の表皮材は、強度と柔軟性がより良好となるという観点から、表皮層に加え、表皮層の深度0.2mm以上の凹部を有する側とは反対側の面に、さらに、基布を有していてもよい。
基布と、表皮層とを備える多層構造の表皮材は、合成皮革、人工皮革などに汎用される基本的な構成を有する表皮材である。
【0029】
基布としては、必要な強度と柔軟性を有し、得られる表皮材が所定の伸縮特性を有すれば、特に制限なく用いることができる。
基布に用いられる繊維としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール等の合成繊維、綿、麻等の天然繊維等が挙げられ、目的に応じて選択すればよい。
【0030】
基布は、織布、編布、及び不織布のいずれであってもよい。なかでも、表皮材の加工性、特に凹部の形成性がより良好であるという観点から編布が好ましい。
編布としては、経編みであるトリコット編布、ダブルラッセル編布、丸編みである鹿の子編布、インターロック編布、モクロディ編布、横編みであるニット編布等が挙げられ、両面編みの一種であるインターロック編布がより好ましい。
【0031】
表皮材に用いられる基布の目付は、成形加工性、成形後の外観、及び風合いがより良好であるという観点から、30g/m2~400g/m2が好ましく、30g/m2~300g/m2がより好ましい。
基布の目付は、例えば、編布の場合、編布の組織、編成に用いる繊維の太さ、組織、繊維の密度等により調整することができる。
【0032】
表皮材に用いられる基布の厚みは、成形加工性、成形後の外観、及び風合いがより良好であるという観点から、0.2mm~1.4mmが好ましく、0.2mm~1.0mmがより好ましい。
【0033】
表皮材は、表皮層、所望により設けられる基布に加え、必要に応じてさらに任意の層を有していてもよい。任意の層としては、接着層、発泡樹脂層、表面処理層、中間層等が挙げられる。
【0034】
表皮材の厚みは、表皮材の使用目的に応じて適宜選択される。表皮層の厚みは、穿孔加工後に表皮層の必要な強度が維持されやすいという観点からは、0.45mm~1.8mmが好ましく、0.9mm~1.2mmがより好ましい。
本開示における表皮材基材の厚みとは、表皮材が表皮層のみからなる単層構造の場合には、表皮層自体の厚みであり、表皮材が、例えば、表皮層に加え、基布などの任意の層をさらに備える多層構造の場合、多層構造の表皮材の総厚みを示す。
なお、本発明者らの検討によれば、貫通孔を設ける前の表皮材基材の厚みに対し、貫通孔を設けた後の表皮材の厚みには変化が見られないことが確認された。
表皮材の製造方法、例えば、表皮材に貫通孔を穿孔する方法、表皮材に凹部を形成する方法の詳細については、後述する。
【0035】
<任意の層>
(1.接着層)
本開示の表皮材は、接着層を有していてもよい。例えば、表皮材が基布を有する場合、表皮層と基布との間に接着層を設けることで、基布と表皮層との密着性を向上することができる。また、表皮層と基布との間に任意の層を有する場合にも、接着層により基布に隣接して形成される任意の層と基布との接着性を向上することができる。
接着層を構成する接着剤としては、特に制限はなく、ウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル樹脂等の樹脂を含有する接着剤が挙げられる。
接着剤に含まれるウレタン樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン及びこれらの変性物から選ばれる樹脂が挙げられる。
なかでも、表皮材に求められる各種性能が良好となるという観点から、ウレタン樹脂またはポリ塩化ビニル樹脂を含む接着剤が好ましく、ポリカーボネート系ポリウレタンを含む接着剤がより好ましい。
接着剤に含まれる樹脂は、基布と隣接する層との密着性、及び成形加工性がより良好であるという観点から、20℃条件下での100%モジュラスが、1.0MPa~6.0MPaであることが好ましく、1MPa~3MPaであることがより好ましい。
接着剤の厚みは、隣接する層同士の接着性がより向上し、風合いがより良好となるという観点から、2.0μm~80.0μmが好ましく、25.0μm~60.0μmがより好ましい。
接着層の厚みは、接着剤の塗布量により制御することができる。
【0036】
(2.表面処理層)
本開示の表皮材は、表面処理層を有していてもよい。表面処理層は、例えば、本開示の表皮材が基布を有する場合、表皮層の基布側の面とは反対側の面に表面処理層を有することができる。表面処理層は、一般的には、表皮材の最表面に備えられ、表皮材の外観、風合い(感触)、及び耐摩耗性の少なくともいずれかを向上させる目的で備えられる。
表面処理層に含まれる樹脂としては、ポリウレタン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられ、耐摩耗性及び風合いをより向上させ得るという観点から、ポリウレタンを主成分として含むことが好ましい。
ポリウレタンとしては、ポリカーボネート系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、及びこれらの変性物を用いることができる。表皮材に求められる各種性能の観点から、表面処理層は、ポリカーボネート系ポリウレタンを含むことが好ましい。
【0037】
表面処理層の製造方法には特に制限はなく、上記樹脂を適切な溶媒に溶解して得られた表面処理層形成用組成物、又は、上記樹脂を水系エマルジョン、ディスパージョンの状態で含む表面処理剤組成物を、表皮層の表面に塗布することで形成される。
表面処理層形成用組成物の調整に際し、樹脂の溶解に用い得る非水系有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロピルアルコール(IPA)、トルエン等、及びこれらを2種以上混合した混合溶媒が挙げられる。
水系エマルジョン樹脂又はディスパージョン樹脂は、水系の媒体又は非水系の有機溶媒(又は分散媒)に対して樹脂が均一なエマルジョンの状態で含まれる樹脂分散物である。
樹脂分散物に用いられる水系媒体としては、水、アルコール等、及びこれらを2種以上混合した混合媒体が挙げられる。樹脂分散物に用いられる非水系溶媒は、上記溶媒を同様に使用することができる。
【0038】
表面処理層は、既述の樹脂及び溶媒(分散媒)に加え、他の成分を含有することができる。
他の成分としては、架橋剤、有機フィラー、滑剤、難燃剤等が挙げられる。例えば、表面処理層が有機フィラー、滑剤等を含有することで、表皮材に滑らかな感触が付与され、耐摩耗性がさらに向上する。
【0039】
表面処理層の厚みは、表皮材の耐摩耗性及び風合いの向上効果を十分に得られるという観点からは、1.0μm~10.0μmの範囲が好ましく、1.0μm~7.5μmの範囲がより好ましい。
【0040】
<貫通孔>
本開示の表皮材は、表皮材を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を有する。
貫通孔の形状、詳細には、貫通孔を表皮材の表皮層側から平面視した場合の形状には、特に制限はなく、所望の意匠に応じて、任意の形状とすることができる。
表皮材における貫通孔の平面視における形状としては、円形、楕円形、多角形、星型、不定形などを選択することができる。
なお、多角形、星型などの放射状の形状とした場合には、鋭角的な頂部に応力の集中が生じやすく、破れ易くなる等の問題が懸念されるため、表皮材の強度維持の観点からは、円形、及び楕円形の形状が好ましく、意匠の自由度の観点からは、円形がより好ましい。
貫通孔の形状を、多角形、星型などとした場合、頂部に応力集中が生じやすく、表皮材を基材に適用する際に頂部から破れ易くなることが懸念されるため、得られる表皮材の強度がより良好であるという観点からは、頂部を有しない円形、楕円形等が好ましく、円形がより好ましい。
【0041】
貫通孔の孔径は、貫通孔により得られる意匠性及び表皮材の強度維持がより高いレベルで両立し得るという観点からは、表皮層における貫通孔の面積を、同じ面積の円の直径に換算した円相当直径として0.5mm~2.0mmが好ましく、1.0mm~1.5mmがより好ましい。
また、同様の観点から、表皮材の開孔率は、3%~15%が好ましく、5%~10%がより好ましい。表皮材の開孔率は、表皮材を表皮層側から平面視した場合の表皮材における一定領域の面積に対する、当該領域に複数存在する貫通孔の総面積の割合を意味する。
【0042】
表皮材に貫通孔を形成する方法には特に制限はなく、公知の方法が適用できる。貫通孔の穿孔方法としては、パンチング金型を用いたパンチング加工法、レザー穿孔法等が挙げられ、工程の簡易性の観点からは、パンチング金型を用いた穿孔方法が好ましい。なお、不定形、星型、花弁形などの複雑な形状の貫通孔を形成する場合には、レザー穿孔方法も有効である。
【0043】
<深度0.2mm以上の凹部>
本開示の表皮材は、表皮層の少なくとも一方の面に、深度0.2mm以上の凹部を有する。本開示の表皮材は、貫通孔と、表皮層の面上に形成された深度0.2mm以上の凹部との組み合わせにより、特徴ある意匠性を達成している。
「凹部の深度」とは、表皮材において凹部が形成されていない領域における表皮層の面から、表皮材に形成された凹部の底部までの距離を指す。凹部の深度の具体的な測定方法については後述する。
表皮層に形成された凹部の深度は、0.2mm以上であり、0.25mm以上であることが好ましい。深度の上限には特に制限はないが、表皮材の強度と柔軟性の観点からは、1.0mm以下とすることができる。
本開示の表皮材では、貫通孔と深度0.2mm以上の凹部の数、配置位置等を制御することで従来にはなかった新規な意匠性を達成することができる。
凹部の深度が0.2mm以上であることで、表皮材から距離を置いて目視した場合にも凹部の存在が確認し易く、貫通孔と組み合わせた際の新規な意匠性が認識されやすいため、好ましい。
【0044】
表皮層に形成された凹部の平面視による形状には特に制限ない。例えば、帯状の連続した凹部の場合には、外観に影響を与えやすいという観点からは、凹部の幅が10mm~50mmであることが好ましく、13mm~40mmであることがより好ましい。ここで、凹部の幅とは、凹部を平面視した場合、帯状に連続した凹部の、表皮材の長さ方向に垂直な距離を指す。
【0045】
表皮材に凹部を形成する方法には特に制限はなく、公知の表面加工方法を適用することができる。凹部の形成性と、工程の簡易性の観点からは、エンボスロール又はエンボス板によるエンボス加工を適用することが好ましい。エンボスロール又はエンボス板の凸部の高さ、形状、配置位置を制御することで、表皮材の表皮層を有する面に、任意の深さと形状を有する凹部を形成することができる。
【0046】
本開示の表皮材においては、貫通孔の形状、孔径(孔サイズ)、孔の数、孔の形成位置と、深度0.2mm以上の凹部の深さ、平面視における凹部のサイズ、凹部の配置位置、及び凹部の配置面積等を、それぞれ調整することで、新規な意匠性を有する表皮材を提供することができる。
【0047】
<貫通孔の配置>
表皮材における貫通孔は、前記表皮層の面上の全面に亘り、規則的に配列してもよい。
ここで、貫通孔が「規則的に配置される」とは、表皮材を表皮層側から平面視した場合に、同じ間隔で貫通孔が配列されている状態、或いは、複数の貫通孔により形成される同じパターンが繰り返されて配置されている状態を指す。
同じ間隔で貫通孔が配列されている状態の一例を
図1に示す。
図1は、規則的に配列される貫通孔の配置の一例を示す概略平面図であり、平面視による四角格子の格子点に貫通孔10を有する態様の概略平面図である。
図1に示す四角格子は、貫通孔10の配置位置を示す仮想線であり、四角格子の格子点に貫通孔10を有することで、貫通孔10は、等間隔で、規則的に配列される。
図1では、四角格子の格子点に貫通孔10が配置される態様を示すが、三角格子の場合にも、三角格子の格子点に貫通孔を有することで、貫通孔は規則的に配列されることになる。
【0048】
図2は、規則的に配列される貫通孔の配置の一例を示す概略図であり、互いにサイズの異なる相似形の六角形の重なりの状態に貫通孔を有する態様の概略平面図である。
図2では、複数の貫通孔12A、12B、12Cにより形成される六角形のパターンの繰り返しが示される。六角形に限定されず、平面視にて同じパターンの図形が同じサイズ、又は、
図2に示すように、互いに異なるサイズの相似形で繰り返し配列される場合も、本開示における「規則的に配列される」ことに包含される。
【0049】
貫通孔は、表皮層を平面視した場合、サイズ又は形状が互いに異なる複数種の貫通孔を含んでもよい。
図2に示す態様では、六角形のパターンを構成する貫通孔は、平面視で円形の貫通孔12A、貫通孔12Aよりも直径が小さい円形の貫通孔12B及び貫通孔12Bよりも更に直径が小さい貫通孔12Cの三種の互いに異なるサイズの貫通孔を有する。互いに異なるサイズの複数の貫通孔12A、12B、12Cが、それぞれ組み合わさって六角形のパターンを形成し、貫通孔12Cからなる六角形のパターンの外側を、貫通孔12Cの直径よりも大きな直径を有する貫通孔12Bからなる六角形のパターンが形成され、更に外側には、貫通孔12Bの直径よりも大きな直径を有する貫通孔12Aからなる六角形のパターンが形成され、相似形の六角形のパターンが形成され、このパターンが規則的に繰り返されて意匠を形成している。
図2では、互いに異なるサイズの複数の貫通孔12A、12B及び12Cが組み合わさって形成された平面視で六角形のパターンが複数配置されている。六角形のパターンは、長さ方向に配列された繰り返しパターンの線対称方向に、六角形のパターンが、幅方向にも配列されて、独自の意匠性が表現される。複数の異なるサイズの貫通孔が組み合わされて六角形のパターンが形成されることで、同じサイズの貫通孔によるパターンの繰り返しよりも、より特徴的な貫通孔による意匠が表現される。
【0050】
図2では、孔直径が互いに異なる3種の貫通孔を有するが、孔のサイズが2種であってもよく、大きさの互いに異なる4種以上の貫通孔を有してもよい。また、サイズ、例えば、貫通孔の平面視による面積が同じであって形状の異なる複数種の貫通孔を有していてもよく、サイズ及び形状が互いに異なる複数種の貫通孔を有していてもよい。
【0051】
本開示の表皮材は、表皮材を平面視した場合、貫通孔を有する孔あき領域と、貫通孔を有しない非孔あき領域とを有していてもよい。
【0052】
本開示における貫通孔を有する「孔あき領域」と、貫通孔を有しない「非孔あき領域」とを図面を用いて説明する。
本開示の表皮材において、貫通孔を有する「孔あき領域」とは、隣接する最短距離に存在する貫通孔同士を直線で結んだ場合に、一定サイズであって同じ形状の多角形を連続して形成する領域を指す。貫通孔の平面視における中央部(以下、中心点とも称する)同士を直線で結んだ場合、一定サイズであって同じ形状の多角形を連続して形成する領域が、複数のサイズの多角形を有する場合には、より面積の小さいほうの多角形を連続して形成する領域を「孔あき領域」とする。
なお、本開示の表皮材は、例えば、互いに異なる形状又は同じ形状であって互いに異なる孔径の貫通孔を有する場合には、貫通孔同士を直線で結ぶ仮想線は、貫通孔の平面視における中心点同士を結んだ距離により多角形の大きさを判断する。
なお、以下、貫通孔の配置は、特に断らない限り、表皮材の表皮層側を平面視した場合の配置を意味するものとする。
【0053】
図3には、貫通孔同士を直線で結んだ場合に、一定のサイズの正方形が連続して形成された態様を示す。複数の正方形が連続して形成された「孔あき領域」を符合A-1、A-2で示し、「非孔あき領域」を符合B-1、B-2及びB-3で示す。
図3において、複数の正方形が連続して形成されたA-1及びA-2は、本開示における「孔あき領域」であり、周縁部を孔あき領域で囲まれていても、正方形が形成されていないB-1、正方形が形成されていても連続していないB-2及び正方形が連続して形成されていても、形成された正方形のサイズがより大きいB-3は、本開示における「非孔あき領域」である。
図4は、貫通孔同士を直線で結んだ場合に、一定のサイズの正三角形が連続して形成された態様を示す。
図4においては、正三角形が連続して形成されたA-3は「孔あき領域」であり、正三角形が連続して形成されていないB-4及びB-5は、「非孔あき領域」である。
図3及び
図4で示す貫通孔のパターンを有する表皮材は、いずれも、孔あき領域と、非孔あき領域とを有する表皮材に該当する。
なお、規則的に配列される貫通孔の配置の一例を示す
図2に示す表皮材では、互いに異なる大きさの円形の貫通孔による相似形の正六角形が重層して形成されている。
図2に示す態様の場合には、最も大きな正六角形が占める領域は、より小さな相似形の正六角形の形成領域を含め、「孔あき領域」である。
【0054】
<表皮材複合体>
本開示の表皮材複合体は、既述の本開示の表皮材と、クッション層とを、この順に備える表皮材複合体であり、前記表皮材は、前記クッション層を有する側とは反対側の面に、深度0.2mm以上の凹部を有する。
【0055】
(表皮材)
複合体における表皮材の構成は、既述の本開示の表皮材の構成と同じであり、好ましい例も同様である。
但し、クッション層を有する複合体の場合、表皮材のクッション層を有する側とは反対側、即ち、表皮材の表皮層側の面に形成される凹部の深度は0.2mm以上である。
本開示の複合体では、弾力性が良好なクッション層を有することで、深度が0.2mm以上の凹部をより簡易に形成することができ、さらに、より深度の大きい凹部の形成も可能である。
【0056】
(クッション層)
クッション層は、弾力性に優れた合成樹脂により形成された層であり、必要な弾力性を達成できれば、用いる合成樹脂に特に制限はない。
なかでも、軽量で弾力性が良好であるという観点からは、合成樹脂の発泡体からなる層であることが好ましい。発泡体における気泡は連続気泡でもよく、独立気泡でもよく、これら双方を含んでいてもよい。
クッション層を形成する際に使用しうる合成樹脂としては、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン等が挙げられ、弾力性の観点から、ポリウレタンが好ましく、軟質ポリウレタンがより好ましい。
【0057】
ウレタン樹脂表皮材にクッション層を形成する方法としては、ウレタン樹脂表皮材にクッション層形成用材を接着して形成する方法、ウレタン樹脂表皮材にクッション層形成用材となる前駆体を塗布して形成する方法等が挙げられる。
クッション層は、例えば、発泡体原料(クッション層形成用材の前駆体)を予め合成樹脂発泡体に成形した後、接着してクッション層を形成してもよく、合成樹脂又は合成樹脂の前駆体を含む発泡体原料(クッション層形成用材の前駆体)を直接ウレタン樹脂表皮材に塗布し、表皮材上で発泡させて気泡を内包する合成樹脂発泡体として形成してもよい。
なかでも、クッション性、加工性が良好であるという観点から、クッション層の形成には、クッション層形成用材として、合成樹脂発泡体を用いることが好ましく、連続した気泡を有する軟質ポリウレタンフォーム材を用いることがより好ましい。
【0058】
前記軟質ポリウレタンフォーム材は、ポリオール類、ポリイソシアネート類、発泡剤及び触媒を含有する発泡体原料を反応及び発泡させることにより形成される。本開示における軟質ポリウレタンフォーム材とは、気泡を内包するポリウレタンを含み、軽量で、一般にセルが連通する連続気泡構造を有し、柔軟性があり、かつ圧力又は変形に対し復元性を有するものをいう。
【0059】
本開示においてクッション層の形成に使用される軟質ポリウレタンフォーム材としては、スラブ発泡法により得られる軟質スラブポリウレタン発泡体が好ましい。
スラブ発泡法によれば、混合撹拌された発泡体原料(反応混合液)をベルトコンベア上に吐出し、該ベルトコンベアが移動する間に発泡体原料が常温、大気圧下で反応し、自然発泡することで軟質ポリウレタン発泡体が得られる。
形成された軟質ポリウレタン発泡体を、所定の厚さにスライスすることにより、クッション層を形成する軟質ポリウレタンフォーム材を得ることができる。
【0060】
また、クッション層の形成には、公知の気泡を内包する合成樹脂層の形成方法、例えば、前記表皮材の基布側に、発泡剤と合成樹脂又は合成樹脂前駆体とを含む発泡体原料(クッション層形成用材の前駆体)を塗布した後、発泡硬化させて合成樹脂発泡体(クッション層形成用材)からなるクッション層を形成する方法、未硬化のウレタン樹脂前駆体に剪断力を付与して機械発泡させ、気泡を含むウレタン樹脂前駆体(クッション層形成用材の前駆体)を前記表皮材の基布側に塗布して、ウレタン樹脂を硬化させ、クッション層を形成する方法などを適用してもよい。
【0061】
クッション層となる軟質ポリウレタンフォーム材は、弾性部材であるが、所定の温度範囲では圧縮することでその形状に形を保つ、即ち、塑性変形することが可能である。軟質ポリウレタンフォーム材の塑性変形温度は130℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。
上記塑性変形温度が130℃以上であることで、複合体に凹部を形成する際の成形性及び成形後の凹部の形状保持性がより向上する。
塑性変形温度の上限は、軟質ポリウレタンフォーム材が熱分解して溶ける温度よりも低い温度であり、生産性の観点からは250℃以下であることが好ましい。
【0062】
クッション層の密度は、15kg/m3~100kg/m3の範囲であることが好ましく、18kg/m3~60kg/m3の範囲であることがより好ましい。
【0063】
クッション層の厚みには特に制限はない。深い凹部を形成しやすいという観点からは、既述の表皮材の厚みよりもクッション層の厚みが厚いことが好ましい。
なかでも、適度なクッション性を発現しやすく、深い凹部を形成する際の加工性がより良好であるという観点からは、一般的には、空孔を含んだクッション層の厚みは、1mm~15mmであることが好ましく、3mm~10mmであることがより好ましい。
複合体は、クッション層を1層のみ有してもよく、複数層有してもよい。複数のクッション層を有する場合のクッション層の厚みの合計は、既述のクッション層の好ましい厚みの範囲であることが好ましい。
【0064】
表皮材とクッション層とを接着する方法には特に制限はない。接着する方法としては、表皮材とクッション層とを、接着剤を用いて接着する方法、及びフレームラミネート法により接着する方法が挙げられる。フレームラミネート法とは、クッション層であるポリウレタンフォーム材の表面をバーナーなどの火炎(フレーム)により加熱し、該ポリウレタンフォーム材の表面を熱溶融させ、溶融した箇所に、表皮材の表皮層を有する側とは反対側の面を接触させ、加圧冷却して、表皮材とクッション層とを接着する方法である。フレームラミネート法については、以下に詳述する。
接着剤を接着する場合には方法は、表皮材において述べた任意の層である接着層の形成に用いる接着剤を用いて、クッション層と表皮材とを接着する方法の間に形成する方法を適用すればよい。
生産性がより良好であるという観点から、クッション層として軟質ポリウレタンフォーム材を用いる場合には、フレームラミネート法により、表皮材とクッション層とを接着することが好ましい。
【0065】
(深度0.2mm以上の凹部)
本開示の複合体における表皮材は、クッション層を有する側と反対側の面に深度0.2mm以上の凹部を有する。
複合体に形成された凹部の深度は、0.2mm以上であり、1.0mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましい。深度の上限には特に制限はないが、複合体の強度と柔軟性の観点からは、6.0mm以下とすることができる。
本開示の複合体では、表皮材が有する貫通孔と深度0.2mm以上の凹部の数、配置位置等を制御することで従来にはなかった新規な意匠性を達成することができる。
本開示の複合体では、表皮材側に設けられた深度0.2mm以上の凹部と、貫通孔とが相俟って特徴的な意匠を実現している。
【0066】
複合体の表皮層側の面に凹部を形成する方法には特に制限はなく、公知の表面加工方法を適用することができる。既述の表皮材における凹部の形成と同様に、エンボスロール又はエンボス板によるエンボス加工を適用することが好ましい。
【0067】
以下、本開示の表皮材の実施形態について、適宜、図面を参照しながら説明する。本開示における各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。なお、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。また、各図面における寸法の比率は、必ずしも実際の寸法の比率を表すものではない。
【0068】
図5(A)は、本開示の表皮材の第1の態様を示す平面図であり、
図5(B)は、本開示の表皮材の第1の態様を示す概略断面図である。
図5(A)及び
図5(B)に示す表皮材14は、平面視で円形の同一の形状及び同一のサイズの複数の貫通孔10を有する。
図5(A)の側面に記載される矢印は、表皮材14の長さ方向(製造時の表皮材の搬送方向)を示す。以下の図面に付された矢印も同様に、表皮材の長さ方向を示す。
図5(A)の平面図に示すように、表皮材14には、同じ形状であり同じサイズの円形の貫通孔10が、表皮層の全面に亘り、規則的に等間隔で形成されている。表皮材の長さ方向には、一定の間隔を介して帯状に深度0.25mmの凹部16が形成されている。
図5(B)の概略断面図に示すように、表皮材14は、基布18の一方の面に接着層20を介して、合成樹脂を含む表皮層22を有し、表皮材14を厚み方向に貫通する複数の貫通孔10を有する。
本開示の第1の態様の表皮材14は、表皮材14の全面に亘り、即ち、凹部16の形成面と非形成面との双方に、規則的に複数の貫通孔10が形成され、貫通孔10と、帯状に形成された凹部とにより、独特の意匠を実現している。
ここで、表皮材の凹部の深度は、表皮材14において凹部が形成されていない領域における表皮層22の面(
図5(B)に破線で示す)から、表皮材に形成された凹部の底部までの距離αを指す。本実施形態では、凹部の深度は0.25mmである。
表皮材の凹部の深度αは、表皮材を面方向に垂直に切断した切断面を観察することで測定することができる。即ち、凹部を有しない領域の表皮材の厚みと、凹部を形成した領域の表皮材の厚みとの差により深度が測定できる。凹部の深度の測定は、切断面を電子顕微鏡で撮影した写真によって行うことができる。本開示では、表皮層又は表皮材の厚みの測定方法と同様に、試料としての表皮材に対し、無作為に選択した5箇所の凹部の深度を測定した値の算術平均を用いている。
【0069】
図6(A)は、本開示の複合体の第1の態様を示す平面図であり、
図6(B)は、本開示の複合体の第1の態様を示す概略断面図である。
図6に示す複合体24は、平面視で円形の同一の形状及び同一のサイズの複数の貫通孔10を有する。
図6(B)の概略断面図に示すように、複合体24は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔10を有する表皮材14と、クッション層26とを有する。
図6(B)に示す複合体24における表皮材14は、
図5(A)及び
図5(B)に示す本開示の表皮材の第1の態様と同じ層構成であり、基布18の一方の面に接着層20を介して、合成樹脂を含む表皮層22を有する表皮材14である。
ここで、複合体凹部の深度は、複合体24が有する表皮材14において凹部が形成されていない領域における表皮層22の面(
図6(B)に破線で示す)から、表皮材に形成された凹部の底部までの距離βを指し、本実施形態では、凹部の深度は1.5mmである。
複合体の凹部の深度βは、表皮材における凹部の深度αと同様に測定することができる。即ち、複合体を面方向に垂直に切断した切断面において、複合体の凹部を有しない領域の厚みと、凹部が形成された領域の厚みとの差を測定することにより深度が測定できる。測定は、複合体の切断面の電子顕微鏡写真によって行うことができる。
【0070】
図7(A)は、本開示の表皮材の第2の態様を示す平面図であり、
図7(B)は、本開示の表皮材の第2の態様を示す概略断面図である。
図7(A)及び
図7(B)に示す表皮材28は、平面視で円形であって、互いに異なるサイズの3種の貫通孔12A、12B及び12Cを有する。
図7(A)の平面図に示すように、表皮材28には、互いにサイズの異なる3種の円形の貫通孔12A、12B及び12Cが形成され、それぞれのサイズの貫通孔が表皮材28の長さ方向に平行に互いに等間隔で規則正しく帯状に配列されており、長さ方向には、貫通孔を有しない帯状の領域も有する。また、表皮材28の長さ方向には、一定の間隔を介して帯状に深度0.2mmの凹部16A、16B及び16Cが形成されている。
図7(A)及び
図7(B)に示す表皮材28では、凹部16Aの領域内に、貫通孔を有する領域と、貫通孔を有しない領域とを有し、凹部16Bの領域内はすべて貫通孔を有する領域であり、凹部16Cの領域内は、貫通孔を有する領域と、貫通孔を有しない領域を有し、且つ、貫通孔を有しない領域の面積は、凹部16Aにおける貫通孔を有しない領域の面積よりも広い。
図7(B)の概略断面図に示すように、表皮材28の層構成は、基布18の一方の面に接着層20を介して、合成樹脂を含む表皮層22を有し、表皮材14を厚み方向に貫通する複数の貫通孔12A、12B及び12Cを有し、互いに異なるサイズの貫通孔を有すること以外は、
図5(B)に示す表皮材14と同じ層構成を有する。
本開示の第2の態様の表皮材28は、表皮材28の長さ方向に平行に表皮層に形成された凹部16A、16B及び16Cにおける互いに異なるサイズの貫通孔12A、12B及び12Cの配置が、それぞれ互いに異なることにより、表皮材28は、特徴的な意匠を形成している。表皮材の第2の態様では、凹部の深度は0.20mmである。
【0071】
図8(A)は、本開示の複合体の第2の態様を示す平面図であり、
図8(B)は、本開示の複合体の第2の態様を示す概略断面図である。
図8に示す複合体30は、平面視で円形の互いにサイズの異なる複数の貫通孔12A、12B及び12Cを有する。
図8(B)の概略断面図に示すように、複合体30は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔12A、12B及び12Cを有する表皮材28と、クッション層26とを有する。
図8(B)に示す複合体30における表皮材28は、
図7(A)及び
図7(B)に示す本開示の表皮材の第2の態様と同じ層構成であり、基布18の一方の面に接着層20を介して、合成樹脂を含む表皮層22を有する表皮材28である。
第2の態様の複合体30では、凹部の深度は1.0mmである。
図8(A)及び
図8(B)に示す複合体30は、平面視で円形であって、互いに異なるサイズの3種の貫通孔12A、12B及び12Cを有する。
図7(A)の平面図と同様に、
図8(A)に示す複合体30には、互いにサイズの異なる3種の円形の貫通孔12A、12B及び12Cが形成され、それぞれのサイズの貫通孔が表皮層の長さ方向に平行に互いに等間隔で規則正しく帯状に配列されており、長さ方向には、貫通孔を有しない帯状の領域も有する。また、複合体30の長さ方向には、一定の間隔を介して帯状に深度1.0mmの凹部16A、16B及び16Cが形成されている。
図8(A)及び
図8(B)に示す複合体30の平面視による意匠は、凹部の深さを除いては、
図7(A)及び
図7(B)に示す表皮材28と同じであり、複合体30の長さ方向に平行に表皮層に形成された凹部16A、16B及び16Cにおける互いに異なるサイズの貫通孔12A、12B及び12Cの配置が、それぞれ互いに異なることにより、複合体30は、特徴的な意匠を形成している。第2の態様の複合体30では、凹部の深度は1.0mmである。
【0072】
図9(A)は、本開示の表皮材の第3の態様を示す平面図であり、
図9(B)は、本開示の表皮材の第3の態様を示す概略断面図である。
図9(A)及び
図9(B)に示す表皮材32は、平面視で円形の同一の形状及び同一のサイズの複数の貫通孔10を有する。
図9(A)に示す第3の態様の表皮材32には、同じ形状であり同じサイズの円形の貫通孔10が、表皮層の長さ方向に平行に規則的に等間隔で形成され、貫通孔を有する領域が、一定間隔で、貫通孔10を有しない領域を介して形成されている。即ち、表皮材32は、貫通孔を有する領域と貫通孔を有しない領域とを有する。
本開示の表皮材は、非孔あき領域のみに、深度0.2mm以上の凹部を有していてもよい。
【0073】
既述のように、表皮材32には、同じ形状であり同じサイズの円形の貫通孔10が、表皮層の長さ方向に平行に規則的に等間隔で形成され、貫通孔を有する領域が、一定間隔で、貫通孔10を有しない領域を介して形成されている。そして、表皮材32の長さ方向において、貫通孔10を有しない非孔あき領域のみに、帯状に深度0.2mmの凹部16が形成されている。
表皮材32では、貫通孔10の非形成領域に、凹部が形成されており、従って、凹部16の形成領域内には、貫通孔10は形成されていない。表皮材32は、平面視すると、貫通孔10が等間隔に規則正しく繰り返されて配置された、凹部の非形成領域と、貫通孔10を有しない、深度0.2mmの凹部を有する。このため、表皮材32は、凹部と貫通孔との配置により特徴的な意匠を形成している。
図9(B)の概略断面図に示すように、表皮材32は、基布18の一方の面に接着層20を介して、合成樹脂を含む表皮層22を有し、表皮材32を厚み方向に貫通する複数の貫通孔10を有し、表皮材32の層構成は、貫通孔の配置位置、及び凹部の深さ以外は、本開示の第1の態様の表皮材14と同じである。
【0074】
図10(A)は、本開示の複合体の第3の態様を示す平面図であり、
図10(B)は、本開示の複合体の第3の態様を示す概略断面図である。
図10(A)及び
図10(B)に示す複合体34は、平面視で円形の同一の形状及び同一のサイズの複数の貫通孔10を有する。
図10(B)の概略断面図に示すように、複合体34は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔10を有する表皮材32と、クッション層26とを有する。
図10(B)に示す複合体34における表皮材32は、
図9(A)及び
図9(B)に示す本開示の表皮材の第3の態様と同じ層構成であり、基布18の一方の面に接着層20を介して、合成樹脂を含む表皮層22を有する表皮材14である。
複合体34の凹部の深度は3.0mmである。
【0075】
図9(A)の平面図と同様に、
図10(A)に示す複合体34には、平面視で円形の同一の形状及び同一のサイズの複数の貫通孔10を有し、貫通孔10は、複合体34の凹部の非形成領域のみに規則正しく繰り返されて配置されている。即ち、凹部16は、非孔あき領域のみに形成されており、凹部16の底面は平滑面として目視される。
図10(A)及び
図10(B)に示される複合体34は、複合体34に、複数の規則正しく繰り返されて配置される貫通孔10の非形成領域、即ち、非孔あき領域のみに、深度が3.0mmという、底部が表皮材とクッション層との界面を超えた深さに達する深度の凹部を有することにより、特徴的な意匠を形成している。
【0076】
図11(A)は、本開示の表皮材の第4の態様を示す平面図であり、
図11(B)は、本開示の表皮材の第4の態様を示す概略断面図である。
図11(A)及び
図11(B)に示す表皮材36は、平面視で円形の同一の形状及び同一のサイズの複数の貫通孔10を有する。
図11(A)に示す第4の態様の表皮材36には、同じ形状であり同じサイズの円形の貫通孔10が、表皮層の長さ方向に平行に規則的に等間隔で形成され、貫通孔を有する領域が、一定間隔で、貫通孔10を有しない領域を介して形成されている。即ち、表皮材36は、貫通孔を有する領域と貫通孔を有しない領域とを有する。
本開示の表皮材は、孔あき領域のみに、深度0.2mm以上の凹部を有していてもよい。
【0077】
表皮材36の長さ方向には、同じ形状であり同じサイズの円形の貫通孔10が、表皮層の長さ方向に平行に規則的に等間隔で形成され、貫通孔を有する領域が、一定間隔で、貫通孔10を有しない領域を介して形成されている。そして、表皮材36の長さ方向において、貫通孔10を有する孔あき領域のみに、帯状に深度0.20mmの凹部16が形成されている。表皮材36では、凹部16の形成領域のみに貫通孔10が形成され、従って、凹部16の底面の領域に貫通孔10が目視される。貫通孔10の非形成領域、即ち、非孔あき領域には、凹部16が形成されていない。表皮材36は、平面視すると、凹部16の形成領域のみに貫通孔10が等間隔に規則正しく繰り返されて配置されており、凹部16の非形成領域には貫通孔10を有さず、平滑な表皮層が目視される。このため、表皮材36は、凹部16と貫通孔10との配置により特徴的な意匠を形成している。
図11(B)の概略断面図に示すように、表皮材36は、基布18の一方の面に接着層20を介して、合成樹脂を含む表皮層22を有し、表皮材36を厚み方向に貫通する複数の貫通孔10を有し、表皮材36の層構成は、貫通孔の配置位置以外は、本開示の第1の態様の表皮材14と同じである。
【0078】
図12(A)は、本開示の複合体の第4の態様を示す平面図であり、
図12(B)は、本開示の複合体の第4の態様を示す概略断面図である。
図12(A)及び
図12(B)に示す複合体38は、平面視で円形の同一の形状及び同一のサイズの複数の貫通孔10を有する。
図12(B)の概略断面図に示すように、複合体38は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔10を有する表皮材36と、クッション層26とを有する。
図12(B)に示す複合体38における表皮材36は、
図11(A)及び
図11(B)に示す本開示の表皮材の第4の態様と同じ層構成であり、基布18の一方の面に接着層20を介して、合成樹脂を含む表皮層22を有する表皮材36である。
複合体38の凹部の深度は3.0mmである。
【0079】
図11(A)の平面図と同様に、
図12(A)に示す複合体38には、平面視で円形の同一の形状及び同一のサイズの複数の貫通孔10が、一定の間隔を置いて、規則正しく繰り返されて配置されている。そして、貫通孔10の形成領域、即ち、孔あき領域のみに複合体38の凹部16が形成され、非孔あき領域には、貫通孔10が形成されておらず、凹部16の非形成領域が平滑面として目視される。
図12(A)及び
図12(B)に示される複合体38は、深度が3.0mmという、底部が表皮材とクッション層との界面を超えた深さに達する深度の凹部16が、複数の規則正しく繰り返されて配置される貫通孔10する領域のみに形成されており、非孔あき領域には、凹部を有しないため、複合体38の表皮材36側の凸部表面は貫通孔を有しないことにより、特徴的な意匠を形成している。
【0080】
本開示の表皮材及び表皮材を有する複合体は、いずれも、表皮材を平面視した場合の貫通孔の配置、及び表面に形成された特定の深度の凹部が組み合わされて、種々の特徴的な意匠を形成することができる。
即ち、貫通孔のサイズ及び形状、配置、及び貫通孔を配置する領域と、特定の深度の凹部のサイズ、形成領域等を種々組み合わせることで、貫通孔を有し、通気性が高く、特徴的な意匠性を有する表皮材及び複合体となる。従って、本開示の表皮材及び複合体では、貫通孔及び凹部の組み合わせにより、表皮材及び表皮材を有し、クッション性が良好な複合体に独特の優れた意匠を付与することができ、その応用範囲は広い。
本開示の表皮材では、貫通孔及び特定の深度の凹部の選択により、貫通孔が本来有する通気性、凹部を有することによる感触の向上に加え、表皮材及び複合体に独特の意匠を付与することができ、種々の用途に好適に使用しうる。
【0081】
本開示の表皮材の製造方法には特に限定はない。まず、表皮材を作製し、表皮材の厚さ方向に貫通する複数の貫通孔を穿孔する公知の方法、表皮材又は複合体に凹部を形成する公知の方法をいずれも適用することができる。
表皮材に貫通孔を形成する方法としては、例えば、表皮材に対し、パンチングロール、平板状パンチ型等のパンチング金型を用いて、所望の間隔で所望の直径を有する貫通孔を穿孔するパンチング加工方法、表皮材基材にレーザーを用いて穿孔する方法等が挙げられる。
本開示の表皮材は、以下に述べる本開示の表皮材の製造方法により製造されることが、より簡易に効率的に特徴的な意匠性を有する表皮材を製造しうるため、好ましい。
【0082】
〔表皮材の製造方法〕
本開示の表皮材の製造方法は、少なくとも表皮層を有する表皮材基材を形成する工程(工程I)と、前記表皮材基材に、複数の貫通孔を形成する工程(工程II)と、前記表皮材基材の一方の面に、エンボスロール又はエンボス板を接触させて、深度0.2mm以上の凹部を形成する工程(工程III)と、を含む。
【0083】
本開示の表皮材の製造方法は、工程I、工程II、及び工程III以外に、所望により、他の工程を有していてもよい。
他の工程としては、例えば、基布と、表皮層との間に接着剤を付与して接着層を形成する工程(工程(IV))を有してもよく、表皮層の基布側とは反対側の面に表面処理層を形成する工程(工程(V))を有してもよい。
本開示の製造方法について工程毎に詳細を説明する。
【0084】
〔少なくとも表皮層を有する表皮材基材を形成する工程:工程I〕
表皮材基材は、少なくとも表皮層を有し、所望により、基布、接着層等の任意の層を有する。表皮材基材を形成するためには、まず、表皮層形成用の組成物(以下、表皮層形成用組成物と称することがある)を用いて、表皮層形成用組成物層を形成すればよい。
表皮層形成用組成物には、主材となる合成樹脂に加え、表皮層に外観向上、感触向上等の種々の機能を付与する目的で、本開示の効果を損なわない限りにおいて公知の添加剤を加えてもよい。
表皮層形成用組成物に用いうる合成樹脂は先に表皮層の項にて説明したとおりである。
表皮層形成用組成物に含まれ得る合成樹脂としては、ウレタン樹脂、PVC、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、ウレタン樹脂、及びPVCが好ましい。
表皮層形成用組成物が合成樹脂を含む場合、合成樹脂を1種のみ含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
主材となる合成樹脂とは、表皮層形成用組成物の全量に対し、50質量%以上含まれる合成樹脂を指す。
表皮層形成用組成物が含み得る添加剤としては、可塑剤、安定剤、架橋剤、架橋促進剤、充填剤、着色剤、成膜助剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。
【0085】
表皮層形成用組成物は、樹脂を溶剤で溶解すること、又は、樹脂を分散媒に分散させることで調整することができる。表皮層形成用組成物の調製に用いうる溶剤としては、DMF、MEK、IPA、トルエン等、及びこれらを2種以上混合した混合溶媒が挙げられる。表皮層形成用組成物の調整に用いる溶剤は、組成物に含まれる合成樹脂との関連で適宜選択される。
【0086】
表皮層の形成方法には特に制限はなく、公知の合成皮革、及び表皮材に用いられる表皮層の形成方法を適用して表皮層を設けることができる。また、天然皮革を使用する場合には、天然皮革はそのまま表皮層として使用できる。
表皮層は、例えば、樹脂及び所望により含有される着色剤、溶剤等のその他の成分を含む表皮層形成用組成物を調製し、得られた表皮層形成用組成物を成形することで形成することができる。
【0087】
表皮層形成用組成物層は、表皮層形成用組成物を、例えば、カレンダー法、ペースト加工法、溶融押出法などの公知の成膜方法で成膜することにより形成することができる。
また、離型紙上に表皮層形成用組成物を付与して表皮層を形成することができる。離型紙としては、絞型転写用離型紙、平滑な離型紙のいずれも使用することができる。絞型転写用離型紙を用いることで、表皮層の表面に絞模様と称される凹凸模様を形成することができる。
【0088】
離型紙上に表皮層形成用組成物を付与する場合の付与量は、表皮材の使用目的に応じて適宜選択される。
表皮材が、基布を有する多層構造の表皮材である場合、表皮層形成用組成物層の厚みは、乾燥後の膜厚として、0.25mm~0.8mmとなる量であることが好ましい。また、上記押し出し法等で表皮層を形成する場合においても、乾燥後の表皮層の膜厚が0.25mm~0.8mmとなる条件で製膜することが好ましい。
【0089】
表皮材基材が、表皮層以外の層を有する場合、表皮層形成用組成物層の乾燥前に、接着させることも好ましい態様である。
例えば、基布を有する表皮材基材を作成する場合、離型紙を用いる場合には、表皮層形成用組成物層の離型紙側とは反対側に、基布を貼り付けた後、表皮層形成用組成物層を加熱硬化させ、離型紙を剥離して、表皮層と基布との積層体としての表皮材基材を形成すればよい。
基布は、表皮材の項にて説明した基布を用いることができる。
表皮層と基布とを接着して表皮材基材を形成する場合、表皮層の一方の面に基布を接着すればよい。
基布は、表皮層と接する側に、常法により起毛処理を行ってもよい。起毛処理により、表皮層と基布との接着性がより良好となる。
接着は、表皮層形成用組成物が完全に硬化する前に、表皮層形成用組成物層に基布を圧着して、その後、硬化させてもよく、任意の層である接着層を基布に形成し、接着層を介して表皮層と基布と接着してもよい。接着層を形成する場合には、工程(I)の後、工程(II)に先だって、任意の工程である後述の接着層を形成する工程(工程(IV))を行えばよい。
接着層を形成するための接着剤、接着層の好ましい厚みなどは既述の通りである。
表皮層形成用組成物層の加熱硬化は、常法により行うことができる。
加熱温度は、50℃~190℃の範囲であることが好ましく、70℃~170℃の範囲であることがより好ましい。加熱時間は、表皮層に含まれる合成樹脂の種類、表皮層の厚みなどにより適宜選択される。一般的には、上記温度条件下で、12時間~72時間熟成、硬化することが好ましい。
表皮層が硬化した後、表皮層と基布とを有する表皮材基材を得ることができる。表皮層の形成に離型紙を用いる場合には、表皮層が硬化した後、離型紙を剥離すればよい。
【0090】
工程(I)には、好ましい態様の一つとして、離型紙を用いて表皮材基材を形成する以下の態様が挙げられる。
より具体的には、離型紙上に、表皮層形成用組成物層を形成し、前記表皮層形成用組成物層の離型紙側とは反対側に、基布を貼り付けた後、表皮層形成用組成物層を加熱硬化させ、離型紙を剥離して、表皮層と基布との積層体としての表皮材基材を形成する態様が挙げられる。
【0091】
〔表皮材基材に、複数の貫通孔を形成する工程:工程II〕
工程IIでは、工程Iで得られた表皮材基材に、貫通孔を形成する。
貫通孔の形成方法には特に制限はない。表皮材、合成皮革などに貫通孔を穿孔する公知の方法をいずれも用いることができる。
貫通孔の穿孔方法としては、パンチング金型を用いたパンチング加工法、レザー穿孔法等が挙げられる。
例えば、不定形、星型、花弁形などの複雑な形状の貫通孔を形成する場合には、レザー穿孔方法が有効である。
貫通孔形成工程の簡易性の観点からは、パンチング金型を用いた穿孔方法が好ましい。常法によりパンチングピンを備えたパンチング金型を用いて貫通孔を形成することで、簡易に規則性のある配置の貫通孔が効率よく形成できる。
例えば、パンチング金型の金型台に対して、格子点にパンチングピンを配置することで、表皮材に、貫通孔が四角格子又は三角格子状のパターンとなる複数の貫通孔を形成することができる。
また、金型台に対して、既述の
図2に示す如き、六角形が重層された形状に複数のパンチングピンを配置することにより、六角形の繰り返しパターンを形成することができる。貫通孔の形成に用いる穿孔装置には、複数種のパンチング金型を備えてもよい。
同種のパンチングピンが配置されたパンチング金型、複数種の互いに異なるパンチングピンが配置されたパンチング金型等の組み合わせ、各パンチング金型の上下動のタイミング等を制御することにより、種々のピッチで同じパターンの、或いは、互いに異なるパターンの繰り返しを有する複数の貫通孔を簡易に製造しうる。
【0092】
〔表皮材基材の一方の面に、エンボスロール又はエンボス板を接触させて、深度0.2mm以上の凹部を形成する工程:工程III〕
工程IIIでは、工程Iで得た表皮材基材の一方の面にエンボスロール又はエンボス板を接触させて、深度0.2mm以上の凹部を形成する。表皮材基材が表皮層と基布とを有する多層構造の表皮材基材である場合には、表皮材基材の表皮層を有する側にエンボスロール又はエンボス板を接触させて凹部を形成する。
工程Iで得た表皮材基材に、工程II及び工程IIIを行うことで、貫通孔と、深度0.2mm以上の凹部を有する表皮材が得られる。表皮材における好ましい凹部の深度は、既述の通りである。
【0093】
本開示の表皮材の製造方法においては、工程IIと工程IIIとは、いずれを先に行ってもよい。即ち、まず、工程Iで得た表皮材基材に貫通孔を形成し(工程II)、その後、深度0.2mm以上の凹部を形成してもよく(工程III)、表皮材基材に、まず深度0.2mm以上の凹部を形成し(工程III)、その後、貫通孔を形成してもよい(工程II)。
【0094】
表皮材基材に凹部を形成する際、エンボスロールを用いる場合には、表皮材基材を、一対のエンボスロールを有するエンボス加工機における賦形用のエンボスロールとバックアップロールとの間で加熱加圧することで、表皮材基材に深度0.2mm以上の凹部が形成される。
表皮材基材に凹部を形成する際、平板状の板に凹部形成用の凸部が形成されたエンボス板を用いる場合には、エンボス板を有するエンボス加工機におけるエンボス板とバックアップ板との間に、表皮材基材をセットして、加熱加圧することで、表皮材基材に深度0.2mm以上の凹部が形成される。
エンボス加工の際には、求められる意匠、厚みに応じて積層体とエンボスロール、又はエンボス板の間に任意の隙間を設けることもできる。
互いに独立した不連続の凹部を形成する場合には、エンボスロール及びエンボス板のいずれを用いてもよいが、例えば、帯状に連続した凹部を形成する場合には、工程の簡易性の観点から、エンボスロールを用いることが好ましい。
【0095】
凹部の形成効率の観点からは、凹部を形成する際に加熱することが好ましい。
加熱方法としては、エンボスロール又はエンボス板により押圧する表皮材基材の一方の面、好ましくは表皮層を有する側の面を、ヒーターなどで加熱した後、エンボスロール又はエンボス板で凹部の形状を印加することが好ましい。
なお、エンボスロール又はエンボス板そのものを加熱して、形状を印加させてもよい。
【0096】
エンボス加工機における加工条件は、目的に応じて適宜選択される。
例えば、エンボスロールを用いたエンボス加工の場合、加熱温度は、表皮層の、エンボスロールと接触する側の表面温度が90℃~210℃の範囲であることが好ましく、130℃~170℃の範囲であることがより好ましい。表面温度が上記範囲となるようにエンボスロール又はエンボス板を加熱するヒーターの加熱条件を調整すればよい。
エンボス加工時の圧力は0.1kgf/cm2~50kgf/cm2が好ましく、1kgf/cm2~20kgf/cm2がより好ましく、1.5kgf/cm2~10kgf/cm2がさらに好ましい。なお、1kgf/cm2は、SI単位の9.80665×10kPaに換算することができる。
加工速度は、0.5m/分~20m/分が好ましく、1m/分~10m/分がより好ましく、1.5m/分~5m/分がさらに好ましい。
また、例えば、エンボス板を用いたエンボス加工の場合、加熱温度は、積層体におけるウレタン表皮材側の表面温度で90℃~210℃の範囲が好ましく、130℃~170℃の範囲がより好ましい。表面温度が上記範囲となるようにエンボス板のヒーターを調整すればよい。
エンボス板による押圧時の圧力は0.1kgf/cm2~50kgf/cm2が好ましく、1kgf/cm2~20kgf/cm2がより好ましく、1.5kgf/cm2~10kgf/cm2がさらに好ましい。
押圧時間は、10秒~90秒が好ましく、15秒~80秒がより好ましく、20秒分~70秒がさらに好ましい。
工程Iで得た表皮材基材に対し、工程II及び工程IIIを行うことにより、貫通孔と深度0.2mm以上の凹部を有する本開示の表皮材を得ることができる。
【0097】
(その他の工程)
工程(IV)は、接着層を形成する任意の工程である。
接着層の形成は、基布又は表皮層の表面に接着剤を付与して接着層を形成した後、両者を、接着層を介して貼り合わせることで行なう。
接着層は、例えば、基布又は表皮層の表面に接着剤を付与して形成することができる。なかでも、基布の表面に、接着剤を付与し、乾燥して接着層を形成することが好ましい。
所望により設けられる接着層の形成に使用される接着剤は、接着層の項で述べた通りである。
接着剤を付与する方法としては、転写法、塗布法などが挙げられる。
基布又は表皮層の表面に、接着剤を付与し、付与した接着層を加熱、乾燥させることで、基布又は熱可塑性樹脂層の一方の面に接着層が形成される。
【0098】
工程(V)は、表皮層の表面(表皮層の基布側とは反対側の面)に、感触及び外観をより優れたものとするために、表面処理層(例えば、感触向上層)を形成する任意の工程である。
工程(V)は、樹脂として含む表面処理層形成用組成物を、表皮層の表面に付与することにより行われる。
表面処理層形成用組成物の付与は、公知の方法を適宜適用して行うことができる。
表面処理層の形成は、例えば、グラビアプリント法による塗布、リバースコーター、ダイレクトコーター等のコーティング装置による塗布などの方法から適宜選択して適用すればよい。なかでも、より均一な層を形成しうるという観点からは、グラビアプリント法が好ましい。
表面処理層の詳細は既述の通りである。
【0099】
本開示の表皮材複合体の製造方法は、少なくとも表皮層を有する表皮材基材を形成する工程(工程i)と、表皮材基材に、複数の貫通孔を形成する工程(工程ii)と、表皮材基材の表皮層を有する側とは反対側の面に、クッション層を貼り合わせる工程(工程iii)と、クッション層と貼り合わせた表皮材基材の表皮層を有する側にエンボスロール又はエンボス板を接触させて、深度0.2mm以上の凹部を形成する工程(工程iv)と、を含む。
ここで、表皮材基材に、複数の貫通孔を形成する工程(工程ii)は、表皮材基材の表皮層を有する側とは反対側の面に、クッション層を貼り合わせる工程(工程iii)の後に行われてもよい。
工程iiである貫通孔の形成を、工程iiiである表皮材とクッション層との貼り合わせ後に行うことにより、表皮材のみならず、クッション層をも貫通する貫通孔を有する複合体を形成することができる。表皮材とクッション層とを貫通する貫通孔を有する複合体は、通気性がより向上する複合体となる。
【0100】
本開示の複合体の製造方法は、工程i、工程ii、工程iii、及び工程iv以外に、所望により、他の工程を有していてもよい。
他の工程としては、既述の本開示の表皮材の製造方法において挙げた、基布と、表皮層との間に接着剤を付与して接着層を形成する工程(工程(IV))、表皮層の基布側とは反対側の面に表面処理層を形成する工程(工程(V))などが、同様に挙げられる。
本開示の複合体の製造方法について工程毎に詳細を説明する。
【0101】
〔工程i、及び工程ii〕
本開示の複合体の製造方法における、工程i:表皮材基材を形成する工程、工程ii:表皮材基材に複数の貫通孔を形成する工程は、それぞれ、既述の本開示の表皮材の製造方法における工程I及び工程IIと同じ工程である。このため、説明を省略する。
【0102】
〔表皮材基材の表皮層を有する側とは反対側の面に、クッション層を貼り合わせる工程:工程iii〕
工程iiiでは、工程iで得た表皮材基材に、クッション層を貼り合わせる。表皮材基材が、表皮層と基布とを有する多層構造の表皮材である場合には、クッション層は、表皮層を有する側とは反対側の面に貼り合わせる。表記材基材が表皮層のみからなる単層構造の場合には、表皮層の一方の面にクッション層を貼り合わせればよい。単層構造の表皮材の場合、表皮層の表面、例えば、表皮層が天然皮革であれば銀皮面とは反対側の面にクッション層を貼り合わせることが好ましい。
表皮材にクッション層を形成する方法としては、表皮材にクッション層形成用材を接着して形成する方法、ウレタン樹脂表皮材にクッション層形成用材となる前駆体(発泡体原料とも称する)を塗布して形成する方法等が挙げられる。
クッション層形成用材の詳細は、クッション層の説明の項にて述べたとおりである。
【0103】
クッション層は、例えば、発泡体原料を加熱などにより予め発泡させ、合成樹脂発泡体を成形した後、得られた合成樹脂発泡体を表皮材に接着してクッション層を形成してもよく、合成樹脂又は合成樹脂の前駆体を含む発泡体原料を直接表皮材に塗布し、表皮材上で発泡させて気泡を内包する合成樹脂発泡体であるクッション層を形成してもよい。
なかでも、クッション性及び加工性が良好であるという観点から、クッション層の形成には、クッション層形成用材として、合成樹脂発泡体を用いることが好ましく、後述のフレームラミネート工程に適用が可能である連続した気泡を有する軟質ポリウレタンフォーム材を用いることがより好ましい。
【0104】
シート状に形成されたクッション層形成用材、好ましくは、軟質ポリウレタンフォーム材は、工程iで得た表皮材基材の基布を有する面に貼り合わせる。クッション層形成用材は、工程iiで得た貫通孔を形成した表皮材基材の基布を有する面に貼り合わせてもよい。
【0105】
表皮材基材とクッション層とを貼り合わせる接着方法としては、既述の接着層を用いる方法、フレームラミネート工程により行なう方法などが挙げられる。
接着層を用いて貼り合わせる方法では、既述の表皮材と基布との接着に用いた接着層と同様のものを、クッション層と表皮材との間に形成する方法を適用すればよい。
生産性がより良好であるという観点から、クッション層として軟質ポリウレタンフォーム材を用いる場合には、工程iiiは、フレームラミネート工程を含むことが好ましい。
フレームラミネート工程は、クッション層であるポリウレタンフォーム材の表面をバーナーなどの火炎(フレーム)により加熱し、ポリウレタンフォーム材の表面を熱溶融させ、溶融した箇所に、予め工程iにて得られた表皮材基材、又は工程iiにて貫通孔を形成された表皮材基材の、基布を有する面を接触させ、加圧冷却して、表皮材基材とクッション層とを貼り合わせる工程である。
フレームラミネート工程により、表皮材とクッション層とを貼り合わせる方法をとることで、接着剤を塗布し、乾燥硬化させる工程を必要とする接着層を介する接着方法に比較して、短時間で表皮材とクッション層とが密着する。このため、複合体の生産性がより向上する。さらに、表皮材基材と、クッション層との間に接着層を有しないため、複合体の厚みをより薄くすることができる。従って、後述する工程ivにおいて、深度0.2mm以上の凹部の形成を、より効率よく行うことができるという利点を有する。
【0106】
〔クッション層と貼り合わせた表皮材基材の表皮層を有する側にエンボスロール又はエンボス板を接触させて、深度0.2mm以上の凹部を形成する工程:工程iv〕
工程ivでは、工程iiiでクッション層と貼り合わせた表皮材基材の表皮層を有する側にエンボスロール又はエンボス板を接触させて、深度0.2mm以上の凹部を形成する。
深度0.2mm以上の凹部を形成する方法としては、既述の本開示の表皮材の製造方法における工程IIIと同様に、エンボスロール又はエンボス板を接触させて行うことができる。
複合体に形成される凹部の深度は、0.2mm以上であり、1.0mm以上であることが好ましく、1.5mm以上であることがより好ましい。深度の上限には特に制限はないが、複合体の強度と柔軟性の観点からは、6.0mm以下とすることができる。
本開示の複合体の製造方法では、複合体の厚みは、表皮材単独よりも大きいが、柔軟なクッション性を有することから、深度0.2mm以上の凹部、また、深度のより大きい凹部の形成においても、エンボスロール又はエンボス板を接触させる方法をとることができる。
得られた複合体は、複合体における少なくとも表皮材に形成された貫通孔と、深度0.2mm以上の深い凹部により、特徴的な意匠を表現することができる。
【0107】
深度0.2mm以上の凹部は、エンボスロール又はエンボス板における凸部の高さを制御することで、形成される。
より深度の大きい凹部を形成しやすいという観点から、工程ivは、エンボス板を用いるエンボス加工、例えば、エンボス型を有する第1の金型と、エンボス型を有しない第2の金型とからなる一対の金型の間に、クッション層と貼り合わせた表皮材基材を配置し、第1の金型と第2の金型との双方を加熱して加工することが好ましい。
表皮材基材のクッション層を有する側とは反対の面に、第1の金型のエンボス型の凸部を押しつけて凹部を形成する際に、前記第1の金型におけるエンボス型の凸部の先端を、表皮材側から深度0.2mm以上に至る深さまで進入させてエンボス加工すればよい。
【0108】
エンボスロール又はエンボス板を用いて深度0.2mm以上の凹部を形成する場合、表皮材、エンボスロール又はエンボス板の少なくともいずれかを加熱することが好ましい。
エンボスロール又はエンボス板の加熱温度は130℃~160℃の範囲が好ましく、135℃~155℃の範囲がより好ましく、140℃~150℃の範囲がさらに好ましい。
なお、エンボス型を有しない第2の金型を加熱してもよく、その際の第2の金型の加熱温度は140℃~200℃の範囲が好ましく、150℃~190℃の範囲がより好ましく、170℃~180℃の範囲がさらに好ましい。
即ち、エンボス型を有する第1の金型の加熱温度は、エンボス型を有しない第2の金型の加熱温度よりも低いことが好ましい。
【0109】
エンボス加工の条件としては、圧力20kgf/cm2~50kgf/cm2であり、加熱時間10秒~90秒で加熱印加することが好ましく、圧力30kgf/cm2前後で、20秒から60秒間程度圧力印加することがより好ましい。
エンボス加工の条件を上記範囲とすることで、深度0.2mm以上の凹部が容易に形成され、形成された凹部は長期間に亘り形状が保持され、耐久性に優れた複合体を形成することができる。
【0110】
本開示の複合体の製造方法においては、工程ii、工程iii及び工程ivは、いずれを先に行ってもよい。即ち、まず、工程iiで貫通孔を形成した表皮材基材に、クッション層を貼り合わせ(工程iii)、その後、深度0.2mm以上の凹部を形成してもよく(工程iv)、まず、表皮材基材とクッション層とを貼り合わせ(工程iii)、その後、貫通孔を形成し(工程ii)、深度0.2mm以上の凹部を形成してもよく(工程iv)、まず、表皮材基材とクッション層とを貼り合わせ(工程iii)、深度0.2mm以上の凹部を形成し(工程iv)、その後、貫通孔を形成してもよい(工程ii)。
【0111】
本開示の表皮材及び複合体の製造方法によれば、貫通孔と深度0.2mm以上の凹部とが相俟って、今までにない意匠性の良好な表皮材及び複合体を製造することができる。
【実施例】
【0112】
以下、実施例を挙げて本開示の表皮材及びその製造方法を具体的に説明するが、本開示はこれらに制限されるものではない。
なお、以下、特に断らない限り、含有量及び濃度を表す「%」は、「質量%」を意味する。
【0113】
〔実施例1〕
(1.表皮材基材Aの作製)
ポリウレタン樹脂(1液型樹脂固形分20%のポリカーボネート系ポリウレタン樹脂)を溶剤(DMF)で希釈し、表皮層形成用組成物を調製した。
得られた表皮層形成用組成物をナイフコーターで離型紙表面に塗工し、離型紙表面に表皮層形成用組成物層を形成した。表皮層形成用組成物層の塗工量は、表皮層形成用組成物の乾燥後の厚みが0.9mmとなる量とした。
表皮層形成用組成物層に接着剤を介して基布としての編布を貼り合せた後、100℃で24時間熟成、硬化させ、表皮材基材Aを得た(工程I、工程IV)。
【0114】
(2.貫通孔の形成)
上記で作製された表皮材基材Aに、直径1.5mmの円柱上のパンチングピンを有する金型を用いて貫通孔を形成した(工程II)。貫通孔は、
図5(A)に示す配置で、円形の貫通孔が規則正しく繰り返されて配置された態様である。このようにして、貫通孔を有する表皮材基材Bを得た。表皮材基材Bの厚みは0.9mmであった。
【0115】
(3.深度0.2mm以上の凹部の形成)
工程IIで得た表皮材基材Bの、基布を有する側とは反対側の面に、幅10.0mm、高さ0.25mmの凸部を有するエンボスロールを用いて、長さ方向に連続した帯状の凹部を形成し、実施例1の表皮材を得た(工程III)。
このようにして、
図5(A)の平面図及び
図5(B)の概略断面図と同様の構成を有する実施例1の表皮材を得た。表皮材の厚みは、0.9mm、凹部の深さは0.25mmであり、凹部の幅は10.0mmであった。
【0116】
〔実施例2〕
(1.表皮材基材Aの作製)
ポリウレタン樹脂を溶剤(DMF)で希釈し、実施例1と同様にして、表皮層形成用組成物を調製した。得られた表皮層形成用組成物をナイフコーターで離型紙表面に塗工し、離型紙表面に表皮層形成用組成物層を形成した。
表皮層形成用組成物層に接着剤を介して基布としての編布を貼り合せた後、100℃で24時間熟成、硬化させ、表皮材基材Aを得た(工程i、工程IV)。
【0117】
(2.貫通孔の形成)
上記で作製された表皮材基材Aに、直径1.5mmの円柱上のパンチングピンを有する金型を用いて貫通孔を形成した(工程ii)。貫通孔は、
図6(A)に示す配置で、円形の貫通孔が規則正しく繰り返されて配置されている。このようにして貫通孔が形成された表皮材基材Bを得た。表皮材基材Bの厚みは0.9mmであった。
【0118】
(3.クッション層の形成)
密度20kg/m3(JIS K7222)、硬さ98.1(JIS K6400-2)、圧縮残留歪8%以下(JIS K6400-4)のスラブ発泡法で得られたポリエーテルポリエステル系軟質ウレタンフォーム材を、厚さ1.8mmにスライスして、クッション層とした。
表皮材基材Bと前記クッション層とを、フレームラミネート加工により貼り合せを行い、表皮材基材とクッション層との積層体Cを形成した(工程iii)。
工程iiiでは、クッション層としてのポリウレタンフォーム材の表面をバーナーの火炎(フレーム)により加熱し、該ポリウレタンフォーム材の表面を溶融させ、溶融した箇所に、積層体Bの基布面を接触させ、加圧冷却して、積層体Bとクッション層とを接着して積層体Cを得た。積層体Cの厚みは2.2mmであった。これは、フレームラミネート加工と加圧により、クッション層の厚みが1.3mmとなったことによる。
【0119】
(4.深度0.2mm以上の凹部の形成)
工程iiiで得た積層体Cの、クッション層を有する側とは反対側の面に、幅13.7mm、高さ1.5mmの凸部を有するエンボスロールを用いて、長さ方向に連続した帯状の凹部を形成した。このようにして、
図6(A)の平面図及び
図6(B)の概略断面図と同様の構成を有する、実施例2の複合体を得た(工程iv)。実施例2の複合体の厚みは2.2mm、凹部の深さは1.5mmであり、平面視による帯状の凹部の幅は13.7mmであった。
【0120】
〔実施例3〕
(2.貫通孔の形成)において、上記で作製された表皮材基材Aに、直径1.0mm、1.3mm、及び1.5mmの互いにサイズの異なる円柱状のパンチングピンを有する金型を用いて、
図7(A)に示す配置の貫通孔を形成したこと(工程II)、及び、(3.深度0.2mm以上の凹部の形成)において、幅34.0mm、高さ0.20mmの凸部を有するエンボス板を用いて、深度0.2mmの凹部を形成したこと(工程III)以外は、実施例1と同様にして、
図7(A)の平面図及び
図7(B)の概略断面図と同様の構成を有する、実施例3の表皮材を得た。
【0121】
〔実施例4〕
(2.貫通孔の形成)において、上記で作製された表皮材基材Aに、直径1.0mm、1.3mm、及び1.5mmの互いにサイズの異なる円柱状のパンチングピンを有する金型を用いて、
図8(A)に示す配置の貫通孔を形成したこと(工程ii)、及び、(4.深度0.2mm以上の凹部)の形成において、幅47.0mm、高さ1.0mmの凸部を有するエンボス板を用いて、深度1.0mmの凹部を形成したこと(工程iv)以外は、実施例2と同様にして、
図8(A)の平面図及び
図8(B)の概略断面図と同様の構成を有する実施例4の複合体を得た。
【0122】
〔実施例5〕
(2.貫通孔の形成)において、上記で作製された表皮材基材Aに、直径1.5mmの円柱状のパンチングピンを有する金型を用いて、
図9(A)に示す配置の貫通孔を形成したこと(工程II)、及び、(3.深度0.2mm以上の凹部の形成)において、幅34.0mm、高さ0.20mmの凸部を有するエンボスロールを用いて、深度0.2mmの凹部を形成したこと(工程III)以外は、実施例1と同様にして、
図9(A)の平面図及び
図9(B)の概略断面図と同様の構成を有する、実施例5の表皮材を得た。実施例5の表皮材では、非孔あき領域に凹部が形成されている。実施例5の表皮材の厚みは0.9mm、凹部の深さは0.2mmであり、凹部の幅は34.0mmであった。
【0123】
〔実施例6〕
(1.表皮材基材Aの作製)
ポリウレタン樹脂を溶剤(DMF)で希釈し、実施例1と同様にして表皮層形成用組成物を調製した。得られた表皮層形成用組成物をナイフコーターで離型紙表面に塗工し、離型紙表面に表皮層形成用組成物層を形成した。
表皮層形成用組成物層に接着剤を介して基布としての編布を貼り合せた後、100℃で24時間熟成、硬化させ、表皮材基材Aを得た(工程i、工程IV)。
【0124】
(2.貫通孔の形成)
上記で作製された表皮材基材Aに、直径1.5mmの円柱上のパンチングピンを有する金型を用いて貫通孔を形成した(工程ii)。貫通孔は、
図10(A)に示す配置で、円形の貫通孔が規則正しく繰り返されて配置されている。このようにして貫通孔を有する表皮材基材Bを得た。表皮材基材Bの厚みは0.9mmであった。
【0125】
(3.クッション層の形成)
密度20kg/m3、硬さ98.1、圧縮残留歪8%以下スラブ発泡法で得られたポリエーテルポリエステル系軟質ウレタンフォーム材を、厚さ5.5mmにスライスして、クッション層とした。
表皮材基材Bと前記クッション層とを、フレームラミネート加工により貼り合せを行い、表皮材基材Bとクッション層との積層体Cを形成した。(工程iii)
積層体Cの厚みは5.9mmであった。これは、フレームラミネート加工と加圧により、クッション層の厚みが5.0mmとなったことによる。
【0126】
(4.深度0.2mm以上の凹部の形成)
工程ivで得た積層体Cの、基布を有する側とは反対側の面に、幅47.0mm、高さ3.0mmの凸部を有するエンボスロールを用いて、長さ方向に連続した帯状の凹部を形成し、実施例6の複合体を得た(工程iv)。実施例6の複合体では、非孔あき領域に凹部が形成されている。実施例6の複合体の厚みは5.9mm、凹部の深さは3.0mmであり、凹部の幅は47.0mmであった。
【0127】
〔実施例7〕
(2.貫通孔の形成)において、上記で作製された表皮材基材Aに、直径1.5mmの円柱状のパンチングピンを有する金型を用いて、
図11(A)に示す配置の貫通孔を形成したこと(工程II)、及び、(3.深度0.2mm以上の凹部の形成)において、幅34.0mm、高さ0.20mmの凸部を有するエンボス板を用いて、深度0.2mmの凹部を形成したこと(工程III)以外は、実施例1と同様にして、
図11(A)の平面図及び
図11(B)の概略断面図と同様の構成を有する、実施例7の表皮材を得た。実施例7の表皮材では、孔あき領域のみに凹部が形成されている。実施例7の表皮材の厚みは0.9mm、凹部の深さは0.2mmであり、凹部の幅は34.0mmであった。
【0128】
〔実施例8〕
(2.貫通孔の形成)において、直径1.5mmの円柱状のパンチングピンを有する金型を用いて、
図12(A)に示す配置の貫通孔を形成したこと(工程ii)、及び、(4.深度0.2mm以上の凹部の形成)において、幅47.0mm、高さ3.0mmの凸部を有するエンボス板を用いて、深度3.0mmの凹部を形成したこと(工程iv)以外は、実施例6と同様にして、
図12(A)の平面図及び
図12(B)の概略断面図と同様の構成を有する、実施例8の複合体を得た。実施例8の複合体では、孔あき領域のみに凹部が形成されている。実施例8の複合体の厚みは5.9mm、凹部の深さは3.0mmであり、凹部の幅は47.0mmであった。
【0129】
〔比較例1〕
(1.積層体Aの作製)
ポリウレタン樹脂を溶剤(DMF)で希釈し、実施例1と同様にして表皮層形成用組成物を調製した。得られた表皮層形成用組成物をナイフコーターで離型紙表面に塗工し、離型紙表面に表皮層形成用組成物層を形成した。
表皮層形成用組成物層に接着剤を介して基布としての編布を貼り合せた後、100℃で24時間熟成、硬化させ、表皮材基材Aを得た(工程I、工程IV)。
【0130】
(2.貫通孔の形成)
上記で作製された表皮材基材Aに、直径1.5mmの円柱上のパンチングピンを有する金型を用いて貫通孔を形成した(工程II)。
図13(A)は、比較例1に係る同一の円形状であり且つ同一の直径の貫通孔を有する従来の表皮材40の貫通孔パターンを示す平面図であり、
図13(B)は、比較例1の表皮材の概略断面図である。
図13(B)に示すように、比較例1の表皮材は、基布18上に接着層20を介して表皮層22を有し、円形状の貫通孔10が規則正しく繰り返されて配置されており、表皮材の層構成は、実施例1の表皮材と同様である。
比較例1の表皮材では、貫通孔は、
図13(A)に示す配置で、円形の貫通孔が規則正しく繰り返されて配置された態様である。このようにして、
図13(A)の平面図及び
図13(B)の概略断面図と同様の構成を有する、貫通孔を有し、深度0.2mm以上の凹部を有しない、比較例1の表皮材を得た。比較例1の表皮材の厚みは0.9mmであった。
【0131】
〔比較例2〕
工程IIで得た表皮材基材Bの、基布を有する側とは反対側の面に、凹部を形成する際に、幅5.0mm、高さ0.1mmの凸部を有するエンボスロールを用いて、長さ方向に連続した帯状の凹部を形成した以外は、実施例1と同様にして比較例2の表皮材を得た(工程III)。
このようにして、
図5(A)の平面図とは、形成された凹部の深度及び幅が異なる以外は、
図5(B)の概略断面図と同様の層構成を有する比較例2の表皮材を得た。表皮材の厚みは、0.9mm、凹部の深さは0.1mmであり、凹部の幅は5.0mmであった。
【0132】
〔比較例3〕
工程iiiで得た表皮材とクッション層との積層体Cの、基布を有する側とは反対側の面に、凹部を形成する際に、幅5.0mm、高さ0.1mmの凸部を有するエンボスロールを用いて、長さ方向に連続した帯状の凹部を形成した以外は、実施例2と同様にして比較例3の複合体を得た(工程iv)。
このようにして、
図6(A)の平面図とは、形成された凹部の深度及び幅が異なる以外は、
図6(B)の概略断面図と同様の層構成を有する比較例3の複合体を得た。比較例3の複合体の表皮材の厚みは、2.2mm、凹部の深さは0.1mmであり、凹部の幅は5.0mmであった。
【0133】
〔表皮材及び表皮材複合体の評価〕
得られた表皮材及び複合体を以下の基準で評価した。結果を表1~表2に示す。
【0134】
1.意匠性
得られた表皮材及び複合体を、目視により平面視して観察し、以下の評価基準で評価した。比較例1の均一な貫通孔を有する表皮層を従来品(基準)として評価した。
A:従来品とは異なり、特徴的な意匠性がある
B:従来品と同等の外観である
【0135】
【0136】
【0137】
表1~表2に明らかなように、実施例1、3、5及び7の表皮材、実施例2、4、6及び8の複合体は、いずれも外観を観察した場合、従来にはなかった特徴的な意匠の外観を呈していた。
一方、貫通孔を有するが凹部を有しない比較例1の表皮材、深度0.2mm以上の凹部を有しない比較例2の表皮材、及び深度0.2mm以上の凹部を有しない比較例3の複合体は、いずれも、従来品とは異なる特徴的な意匠の外観が得られなかった。
【符号の説明】
【0138】
10 貫通孔
12A、12B、12C 貫通孔
14、28、32、36 表皮材
16、16A、16B、16C 凹部
18 基布
20 接着層
22 表皮層
24、30、34、38 表皮材複合体(複合体)
26 クッション層
40 比較表皮材
α 凹部の深度を示す距離
β 凹部の深度を示す距離