(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】手動施錠装置、鉄道用ドア装置
(51)【国際特許分類】
E05B 83/36 20140101AFI20241107BHJP
E05F 15/643 20150101ALI20241107BHJP
B61D 19/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
E05B83/36 A
E05F15/643
B61D19/00 C
B61D19/00 A
(21)【出願番号】P 2020189854
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】榊 源太
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060449(JP,A)
【文献】特開2004-324159(JP,A)
【文献】実公昭49-021520(JP,Y1)
【文献】特開2010-174435(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0188177(US,A1)
【文献】米国特許第05755060(US,A)
【文献】英国特許出願公開第02046828(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
E05F 15/00-15/79
B61D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からの駆動力をドアリーフに伝達して、前記ドアリーフを全開位置と全閉位置との間で移動させる伝達機構と、
前記伝達機構に設けられて前記ドアリーフの開閉と同期して移動する移動部と、
前記ドアリーフの開閉方向における前記移動部と接触して前記移動部の移動を規制する規制部と、
手動で操作することによって操作力を発生させる操作部と、
前記ドアリーフが前記全閉位置に位置しているときに、前記操作部の操作力によって、前記移動部の移動を規制しない解錠位置から前記移動部の移動を規制する施錠位置に、前記規制部を移動させることで施錠を行う施錠部と、
前記ドアリーフが前記全閉位置に位置しているときのみに、前記施錠部による施錠を可能とする施錠規制部と、
を備
え、
前記規制部が被係合部を有し、
前記施錠規制部は、
前記被係合部と接触して前記規制部の移動を妨げる係合部と、
前記ドアリーフが全閉位置に到達する際に、前記移動部によって閉方向に押圧されて前記係合部と前記被係合部との接触を解除可能な被押圧部と、
を備える、
手動施錠装置。
【請求項2】
前記施錠規制部は前記被押圧部と前
記係合部とを備えるカムであり、
前記カムは、前記被押圧部が押圧されることで回転して前記被係合部と前記係合部との接触を解除する、
請求項
1に記載の手動施錠装置。
【請求項3】
前記ドアリーフが前記全閉位置に到達したことを検知するための全閉スイッチと、
前記カムは、前記被押圧部が押圧されることで回転して、前記全閉スイッチを押圧するスイッチ押圧部を更に備える、
請求項
2に記載の手動施錠装置。
【請求項4】
鉄道車両の複数の乗降口を開閉する複数のドアに設けられ、
前記全閉スイッチが、全ての前記ドアが全閉した際に全閉信号を伝送するインターロック回路に接続されるとともに、前記操作部を手動で操作することによって前記施錠部による施錠をした際に、前記全閉スイッチが前記インターロック回路をバイパスして前記全閉信号を常時伝送可能に接続される、
請求項
3に記載の手動施錠装置。
【請求項5】
前記施錠部が、前記操作部の操作力によって回転する第1リンクと、
前記第1リンクの端部に一端が接続されるとともに他端が前記規制部に接続される第2リンクと、
を備え、
前記解錠位置から前記施錠位置に向けて前記第1リンクが回転して、前記第1リンクと前記第2リンクとが死点を越えた位置で前記施錠位置となる、
請求項
4に記載の手動施錠装置。
【請求項6】
前記第2リンクが、前記施錠位置において前記移動部の移動方向に沿って延在する、請求項
5に記載の手動施錠装置。
【請求項7】
前記第2リンクに接続された前記規制部は、前記ドアリーフが前記全閉位置に位置する場合、前記移動部の前記全開位置に向かう位置に接する、
請求項
6に記載の手動施錠装置。
【請求項8】
前記施錠部は、スライドする両開きの前記ドアリーフのそれぞれに接続された前記移動部を前記操作部の操作力によって同時に施錠する、
請求項
7に記載の手動施錠装置。
【請求項9】
前記操作部が、前記移動部の移動方向において両開きの前記ドアリーフの中央に設けられる、
請求項
8に記載の手動施錠装置。
【請求項10】
前記伝達機構が、前記移動部と一体に移動する連結移動部を有する、
請求項
9に記載の手動施錠装置。
【請求項11】
前記操作部は、鉛直上向きに操作が入力される入力部を有する、
請求項
10に記載の手動施錠装置。
【請求項12】
前記操作部は、前記入力部から鉛直上向きに入力された操作力を、前記移動部の移動方向と交差する横方向に変換する変換部を有する、
請求項
11に記載の手動施錠装置。
【請求項13】
鉄道車両の乗降口を開閉するためのドアリーフと、
前記ドアリーフを駆動する駆動源と、
前記駆動源からの駆動力を前記ドアリーフに伝達して、前記ドアリーフを全開位置と全閉位置との間で移動させる伝達機構と、
前記伝達機構に設けられて前記ドアリーフの開閉と同期して移動する移動部と、
前記ドアリーフの開閉方向における前記移動部の移動を規制する規制部と、
手動で操作することによって操作力を発生させる操作部と、
前記ドアリーフが前記全閉位置に位置しているときに、前記操作部の操作力によって、前記移動部の移動を規制しない解錠位置から前記移動部の移動を規制する施錠位置に、前記規制部を移動させることで施錠を行う施錠部と、
前記ドアリーフが前記全閉位置に位置しているときのみに、前記施錠部による施錠を可能とする施錠規制部と、
を備
え、
前記規制部が被係合部を有し、
前記施錠規制部は、
前記被係合部と接触して前記規制部の移動を妨げる係合部と、
前記ドアリーフが全閉位置に到達する際に、前記移動部によって閉方向に押圧されて前記係合部と前記被係合部との接触を解除可能な被押圧部と、
を備える、
鉄道用ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手動施錠装置、鉄道用ドア装置に関し、鉄道車両用等のドアが故障したときなどに、ドアを使用できないよう、乗務員等が手動で閉状態にロックする際に用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車等には、例えば鉄道車両用ドアに不具合が生じた際であっても走行可能にするためには、ドアを使用できないようにする必要がある。この場合に、乗務員が鉄道車両用ドアを、手動にて戸閉状態でロックする装置として、OoSL(Out of Service Lock)と呼ばれる機構が備えられている。
【0003】
例えば、両開きのスライドドアの場合、片方のドアリーフごとに、それぞれ独立してロックする構成が知られている。このような例として、特許文献1には、ラッチ棒7がラッチ穴10へ移動することで、引戸1をロックする構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術では、ドアリーフと接触して移動を規制することで、ドアをロックする機構であるため、モータからドアリーフに駆動力が伝達された後に規制することになり、重量のあるドアリーフの移動を規制する必要があるために、ドアが動かないようにするには大きな規制力が必要であり、規制部材に大きな剛性・強度を必要とし、装置が高強度化、大型化する傾向があるため、より小さな規制力でロックを可能にしたいという要求があった。さらに、両開きのうち、一方のドアリーフがロックされた場合に、他方のドアリーフがロックされないとこのないようにしたいという要求があった。
【0006】
本発明は、重量のあるドアリーフを直接規制する場合に比べて駆動力がドアリーフに伝達される前に小さな規制力で規制可能なOoSLを提供するという目的を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
(1)本発明の一態様に係る手動施錠装置は、駆動源からの駆動力をドアリーフに伝達して、前記ドアリーフを全開位置と全閉位置との間で移動させる伝達機構と、
前記伝達機構に設けられて前記ドアリーフの開閉と同期して移動する移動部と、
前記ドアリーフの開閉方向における前記移動部と接触して前記移動部の移動を規制する規制部と、
手動で操作することによって操作力を発生させる操作部と、
前記ドアリーフが前記全閉位置に位置しているときに、前記操作部の操作力によって、前記移動部の移動を規制しない解錠位置から前記移動部の移動を規制する施錠位置に、前記規制部を移動させることで施錠を行う施錠部と、
前記ドアリーフが前記全閉位置に位置しているときのみに、前記施錠部による施錠を可能とする施錠規制部と、
を備え、
前記規制部が被係合部を有し、
前記施錠規制部は、
前記被係合部と接触して前記規制部の移動を妨げる係合部と、
前記ドアリーフが全閉位置に到達する際に、前記移動部によって閉方向に押圧されて前記係合部と前記被係合部との接触を解除可能な被押圧部と、
を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る手動施錠装置は、駆動源からの駆動力をドアリーフに伝達して、前記ドアリーフを全開位置と全閉位置との間で移動させる伝達機構と、
前記伝達機構に設けられて前記ドアリーフの開閉と同期して移動する移動部と、
前記ドアリーフの開閉方向における前記移動部と接触して前記移動部の移動を規制する規制部と、
手動で操作することによって操作力を発生させる操作部と、
前記ドアリーフが前記全閉位置に位置しているときに、前記操作部の操作力によって、前記移動部の移動を規制しない解錠位置から前記移動部の移動を規制する施錠位置に、前記規制部を移動させることで施錠を行う施錠部と、
を備える。
本発明の一態様に係る手動施錠装置によれば、ドアリーフと一体に動くが伝達機構の途中の移動部を規制部によってロックすることでドアリーフを開閉させないので、直接ドアリーフをロックする場合に比べて小さい規制力で施錠可能となる。
【0011】
(2)上記(1)に記載した本発明の手動施錠装置は、前記施錠規制部は前記被押圧部と前記係合部とを備えるカムであり、
前記カムは、前記被押圧部が押圧されることで回転して前記被係合部と前記係合部との接触を解除する、ことができる。
【0012】
(3)上記(2)に記載した本発明の手動施錠装置は、前記ドアリーフが前記全閉位置に到達したことを検知するための全閉スイッチと、
前記カムは、前記被押圧部が押圧されることで回転して、前記全閉スイッチを押圧するスイッチ押圧部を更に備える、ことができる。
【0013】
(4)上記(3)に記載した本発明の手動施錠装置は、鉄道車両の複数の乗降口を開閉する複数のドアに設けられ、
前記全閉スイッチが、全ての前記ドアが全閉した際に全閉信号を伝送するインターロック回路に接続されるとともに、前記操作部を手動で操作することによって前記施錠部による施錠をした際に、前記全閉スイッチが前記インターロック回路をバイパスして前記全閉信号を常時伝送可能に接続される、ことができる。
【0014】
(5)上記(4)に記載した本発明の手動施錠装置は、前記施錠部が、前記操作部の操作力によって回転する第1リンクと、
前記第1リンクの端部に一端が接続されるとともに他端が前記規制部に接続される第2リンクと、
を備え、
前記解錠位置から前記施錠位置に向けて前記第1リンクが回転して、前記第1リンクと前記第2リンクとが死点を越えた位置で前記施錠位置となる、ことができる。
【0015】
(6)上記(5)に記載した本発明の手動施錠装置は、前記第2リンクが、前記施錠位置において前記移動部の移動方向に沿って延在する、ことができる。
【0016】
(7)上記(6)に記載した本発明の手動施錠装置は、前記第2リンクに接続された前記規制部は、前記ドアリーフが前記全閉位置に位置する場合、前記移動部の前記全開位置に向かう位置に接する、ことができる。
【0017】
(8)上記(7)に記載した本発明の手動施錠装置は、前記施錠部は、スライドする両開きの前記ドアリーフのそれぞれに接続された前記移動部を前記操作部の操作力によって同時に施錠する、ことができる。
【0018】
(9)上記(8)に記載した本発明の手動施錠装置は、前記操作部が、前記移動部の移動方向において両開きの前記ドアリーフの中央に設けられる、ことができる。
【0019】
(10)上記(9)に記載した本発明の手動施錠装置は、前記伝達機構が、前記移動部と一体に移動する連結移動部を有する、ことができる。
【0020】
(11)上記(10)に記載した本発明の手動施錠装置は、前記操作部は、鉛直上向きに操作が入力される入力部を有する、ことができる。
【0021】
(12)上記(11)に記載した本発明の手動施錠装置は、前記操作部は、前記入力部から鉛直上向きに入力された操作力を、前記移動部の移動方向と交差する横方向に変換する変換部を有する、ことができる。
【0022】
(15)本発明の他の態様に係る鉄道用ドア装置は、鉄道車両の乗降口を開閉するためのドアリーフと、
前記ドアリーフを駆動する駆動源と、
前記駆動源からの駆動力を前記ドアリーフに伝達して、前記ドアリーフを全開位置と全閉位置との間で移動させる伝達機構と、
前記伝達機構に設けられて前記ドアリーフの開閉と同期して移動する移動部と、
前記ドアリーフの開閉方向における前記移動部の移動を規制する規制部と、
手動で操作することによって操作力を発生させる操作部と、
前記ドアリーフが前記全閉位置に位置しているときに、前記操作部の操作力によって、前記移動部の移動を規制しない解錠位置から前記移動部の移動を規制する施錠位置に、前記規制部を移動させることで施錠を行う施錠部と、
前記ドアリーフが前記全閉位置に位置しているときのみに、前記施錠部による施錠を可能とする施錠規制部と、
を備え、
前記規制部が被係合部を有し、
前記施錠規制部は、
前記被係合部と接触して前記規制部の移動を妨げる係合部と、
前記ドアリーフが全閉位置に到達する際に、前記移動部によって閉方向に押圧されて前記係合部と前記被係合部との接触を解除可能な被押圧部と、
を備える。
【0023】
本発明の他の態様に係る鉄道用ドア装置は、鉄道車両の乗降口を開閉するためのドアリーフと、
前記ドアリーフを駆動する駆動源と、
前記駆動源からの駆動力を前記ドアリーフに伝達して、前記ドアリーフを全開位置と全閉位置との間で移動させる伝達機構と、
前記伝達機構に設けられて前記ドアリーフの開閉と同期して移動する移動部と、
前記ドアリーフの開閉方向における前記移動部の移動を規制する規制部と、
手動で操作することによって操作力を発生させる操作部と、
前記ドアリーフが前記全閉位置に位置しているときに、前記操作部の操作力によって、前記移動部の移動を規制しない解錠位置から前記移動部の移動を規制する施錠位置に、前記規制部を移動させることで施錠を行う施錠部と、
を備える。
本発明の他の態様に係る鉄道用ドア装置によれば、ドアリーフと一体に動くが伝達機構の途中の移動部を規制部によってロックすることでドアリーフを開閉させないので、直接ドアリーフをロックする場合に比べて小さい規制力で施錠可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ドアリーフへ駆動力を伝達する伝達機構に設けられた移動部と接触して、ドアリーフへの力が伝達されることを規制することによって、ドアリーフと接触して移動を規制する場合と比較して、小さい力でドアリーフの移動を規制できる。という効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る手動施錠装置、鉄道用ドア装置の実施形態の配置される乗降口を示す模式図である。
【
図2】本発明に係る手動施錠装置および鉄道用ドア装置の実施形態における全閉状態を示す車幅方向に見た正面図である。
【
図3】本発明に係る手動施錠装置の実施形態における施錠部付近を示す斜視図である。
【
図4】本発明に係る手動施錠装置の実施形態における施錠部付近を示す斜視図である。
【
図5】本発明に係る手動施錠装置および鉄道用ドア装置の実施形態における開状態を示す車幅方向に見た正面である。
【
図6】本発明に係る手動施錠装置の実施形態における手動施錠の動作途中を示す説明図である。
【
図7】本発明に係る手動施錠装置の実施形態における施錠状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る手動施錠装置、鉄道用ドア装置の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における鉄道車両の乗降口付近を車幅方向視した模式図である。
図2は、本実施形態における鉄道用ドア装置および手動施錠装置における開状態を示す正面図である。
図3は、本実施形態における手動施錠装置における施錠部付近を示す斜視図である。
図4は、本実施形態における手動施錠装置における施錠部付近を示す斜視図である。図において、符号100は、鉄道用ドア装置である。
【0027】
以下の実施形態では、鉄道用ドア装置として鉄道車両(車両)の乗降口を開閉する両引き分けの一対のドアを備えた例を挙げて説明する。なお、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を意味するのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も含むものとする。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0028】
本実施形態に係る鉄道用ドア装置100は、
図1に示すように、乗降口200の上側に配置される。
鉄道用ドア装置100は、手動施錠装置101を含む。
鉄道用ドア装置100は、
図2~
図4に示すように、一対のドア2と、駆動源3と、伝達機構4と、移動部5と、規制部6と、操作部7と、施錠部8と、施錠規制部9と、を有する。伝達機構4と、移動部5と、規制部6と、操作部7と、施錠部8と、施錠規制部9とは、手動施錠装置101を構成する。
【0029】
なお、以下の説明では、必要に応じてY,X,Zの直交座標系を用いて説明する。Y方向は、車両の幅方向と一致している。X方向は、車両の前後方向と一致している。Z方向は、Y方向及びX方向に直交する車両の高さ方向(重力方向)を示している。以下の説明では、Y方向、X方向及びZ方向のうち、図中矢印側をプラス(+)側とし、矢印とは反対側をマイナス(-)側として説明する。+Y側は車幅方向内側に相当し、-Y側は車幅方向外側に相当する。+Z側は重力方向の上側に相当し、-Z側は重力方向の下側に相当する。
【0030】
鉄道用ドア装置100は、
図1に示すように、乗降口200をX方向にスライドして開閉する両開きのドア2を有する。ドア2は、
図2に示すように、ドアリーフ10と、ドアリーフ10に連結されたドアハンガ(連結移動部)11と、を備える。ドア2は、図示しないガイドレールによって車両の乗降口200を開閉するための開閉経路を規定される。ドアリーフ10は、全閉位置と全開位置との間でX方向に往復移動する。ドア2は、駆動源3によって開閉駆動される。
【0031】
駆動源3は、ドア2を移動させるための駆動力を出力する。例えば、駆動源3は、モータである。モータの出力軸は、前後方向に沿う軸線まわりで回転する。例えば、モータの出力軸は、前後方向に沿う軸線まわりの一方と他方とに回転可能(正逆回転可能)とされる。モータの正逆回転により、ドアリーフ10を全閉位置と全開位置との間でX方向に往復移動させる。
【0032】
伝達機構4は、駆動源3からの駆動力をドアリーフ10に伝達して、ドアリーフ10を全開位置と全閉位置との間で移動させる。伝達機構4は、例えば、駆動源3からの駆動力の向きを変換する動力変換機構41と、前後方向(X方向)に沿って延びる無端状のベルト42と、を備える。動力変換機構41は、モータの出力軸の前後方向に沿う軸線まわりの回転を、車幅方向に沿う軸線まわりの回転へ変換する。動力変換機構41は、車幅方向(Y方向)に沿う軸線まわりで回転するギア43を備える。ギア43に対して前後方向に離間した位置には、ギア43の回転軸線と平行な軸線(Y方向に沿う軸線)まわりで回転可能なプーリ44が設けられている。
【0033】
ベルト42は、ギア43とプーリ44とに架け渡されている。ベルト42は、ギア43の回転に連動してギア43及びプーリ44の周りを移動(周回)する。ベルト42には、ベルト42の移動と共に移動する移動部5が取り付けられている。移動部5は、前後方向(X方向)に往復移動する。移動部5には、ドアハンガ11が接続される。ドアハンガ11は、図示しないガイドレールによって開閉経路を規定される。
【0034】
移動部5は、ドアリーフ10の全閉位置と全開位置との間の移動に対応して、全閉対応位置と全開対応位置との間で前後方向(X方向)に往復移動する。移動部5は、ギア43とプーリ44とに架け渡されたベルト42に対して外側に取り付けられている。ここで、ベルト42の外側とは、Y方向視して、ベルト42で囲まれギア43とプーリ44とに近接する位置が内側、ベルト42に対してギア43とプーリ44とは反対側となる位置が外側である。
移動部5の全閉対応位置と全閉対応位置とは、前後方向(X方向)においてギア43とプーリ44との間に位置している。
移動部5は、
図2に示すように、ベルト42の上側に取り付けられた上移動部51と、ベルト42の下側に取り付けられた下移動部52とを有する。
【0035】
図2において、上移動部51は、前後方向(X方向)において、プーリ44に近接した右側となる位置が全閉対応位置とされ、ギア43に近接した左側の位置が全開対応位置とされる。
同様に、
図2において、下移動部52は、前後方向(X方向)において、プーリ44に近接した右側となる位置が全開対応位置とされ、ギア43に近接した左側の位置が全閉対応位置とされる。上移動部51には、
図2に示す左側のドアリーフ10がドアハンガ11を介して接続される。下移動部52には、
図2に示す右側のドアリーフ10がドアハンガ11を介して接続される。
【0036】
上移動部51と下移動部52とは、前後方向(X方向)におけるベルト42の移動にしたがって、互いに逆向きに、かつ、同一距離だけ移動する。したがって、上移動部51の全閉対応位置と下移動部52の全閉対応位置とは、乗降口200の中心に対して、前後方向(X方向)に等距離とすることができる。同様に、上移動部51の全開対応位置と下移動部52の全開対応位置とは、乗降口200の中心に対して、前後方向(X方向)に等距離とすることができる。
上移動部51と下移動部52とは、いずれも車幅方向(Y方向)視して矩形の外径を有する。
【0037】
規制部6は、上移動部51と下移動部52とに対応して、右規制部61と左規制部62とを有する。なお、この右と左とは、
図2における位置にあわせて便宜的に呼称している。
右規制部61は、Y方向に延びる回転軸線を有する回転軸61aによって回転可能に支持されている。右規制部61は、上移動部51に接触する施錠位置と、上移動部51に接触せずかつ上移動部51の移動を妨げない解錠位置と、の間を回転軸61aの周りで回転移動可能である。
回転軸61aは、全閉対応位置にある上移動部51に近接する位置に配置される。回転軸61aは、Y方向視して、全閉対応位置にある上移動部51の-Z方向かつ-X方向に近接する位置に配置される。
【0038】
右規制部61は、回転軸61aから互いに逆向き方向に延びる第1アーム61bと第2アーム61cとを有する。
右規制部61は、第1アーム61bと第2アーム61cとがX方向に延びる解錠位置と、第1アーム61bと第2アーム61cとがZ方向に延びる施錠位置との間を回転する。右規制部61は、
図2に示す解錠位置から、回転軸61aの回りを時計回りに約90°回転して施錠位置となる。
【0039】
第1アーム61bは、解錠位置において、回転軸61aから-X方向に延びる位置となり、施錠位置においては、回転軸61aから+Z方向に延びる位置となる。
第1アーム61bは、解錠位置においてY方向視してベルト42に対する内側に位置し、施錠位置においてベルト42に対する外側となる位置まで回転移動する。
【0040】
第1アーム61bは、施錠位置において上移動部51に接触して、-X方向への上移動部51の移動を妨げる移動規制部61dを有する。移動規制部61dは、全閉対応位置にある上移動部51に対して、上移動部51における-X方向の前面51aに接触する(後述する
図7参照)。すなわち、移動規制部61dは、施錠位置においてベルト42に対する外側に位置し、上移動部51における-X方向の前面51aに接触する距離だけ回転軸61aから離れて配置される。
【0041】
移動規制部61dは、解錠位置において、第1アーム61bの+Z方向を向いた上面に位置する。移動規制部61dは、上移動部51の前面51aに対してなるべく大きな面積で接触するように、施錠位置で上移動部51の前面51aと平行な面形状を有する。つまり、移動規制部61dは、施錠位置でYZ方向に沿った面を有する。
回転軸61aは、Y方向視して、全閉対応位置にある上移動部51の前面51aよりも-X方向に近接する位置に配置される。
【0042】
第1アーム61bには、回転軸61aから離間した位置に回転軸61fが設けられて、後述する施錠部8に接続される。回転軸61fは、回転軸61aと平行なY方向の回転軸線を有する。移動規制部61dは、解錠位置における第1アーム61bでは回転軸61fよりも+Z方向に位置する。右規制部61において、施錠位置における回転軸61fは、回転軸61aに対して+Z方向に位置する。
【0043】
同様に、第2アーム61cは、解錠位置において、回転軸61aから+X方向に延びる位置となり、施錠位置においては、回転軸61aから-Z方向に延びる位置となる。
第2アーム61cは、解錠位置においてY方向視してベルト42に対する内側に位置し、施錠位置においてベルト42に接触しないか干渉しない位置まで回転移動する。
【0044】
第2アーム61cには、解錠位置において後述する施錠規制部9に接触して、回転軸61aに対する時計回りの右規制部61の回転移動を妨げられる被係合部61eを有する。被係合部61eが施錠規制部9に接触した状態では、右規制部61は施錠規制部9に拘束されて、回転が妨げられる。
【0045】
左規制部62は、右規制部61に対して点対称に設けられる。具体的には、Y方向視して、ギア43の回転軸線とプーリ44の回転軸線との中点に対して、左規制部62と右規制部61とが点対称に配置される。
左規制部62は、Y方向に延びる回転軸線を有する回転軸62aによって回転可能に支持されている。左規制部62は、下移動部52に接触する施錠位置と、下移動部52に接触せずかつ下移動部52の移動を妨げない解錠位置と、の間を回転軸62aの周りで回転移動可能である。
回転軸62aは、全閉対応位置にある下移動部52に近接する位置に配置される。回転軸62aは、Y方向視して、全閉対応位置にある下移動部52の+Z方向かつ+X方向に近接する位置に配置される。
【0046】
左規制部62は、回転軸62aから互いに逆向き方向に延びる第1アーム62bと第2アーム62cとを有する。
左規制部62は、第1アーム62bと第2アーム62cとがX方向に延びる解錠位置と、第1アーム62bと第2アーム62cとがZ方向に延びる施錠位置との間を回転する。左規制部62は、
図2に示す解錠位置から、回転軸62aの周りを時計回りに約90°回転して施錠位置となる。
【0047】
第1アーム62bは、解錠位置において、回転軸62aから+X方向に延びる位置となり、施錠位置においては、回転軸62aから+Z方向に延びる位置となる。
第1アーム62bは、解錠位置においてY方向視してベルト42に対する内側に位置し、施錠位置においてベルト42に対する外側となる位置まで回転移動する。
【0048】
第1アーム62bは、施錠位置において下移動部52に接触して、+X方向への下移動部52の移動を妨げる移動規制部62dを有する。移動規制部62dは、全閉対応位置にある下移動部52に対して、下移動部52における+X方向の前面52aに接触する(後述する
図7参照)。すなわち、移動規制部62dは、施錠位置においてベルト42に対する外側に位置し、下移動部52における+X方向の前面52aに接触する距離だけ回転軸62aから離れて配置される。
【0049】
移動規制部62dは、解錠位置において、第1アーム62bの-Z方向を向いた下面に位置する。移動規制部62dは、下移動部52の前面52aに対してなるべく大きな面積で接触するように、施錠位置で下移動部52の前面52aと平行な面形状を有する。つまり、移動規制部62dは、施錠位置でYZ方向に沿った面を有する。
回転軸62aは、Y方向視して、全閉対応位置にある下移動部52の前面52aよりも+X方向に近接する位置に配置される。
【0050】
第1アーム62bには、回転軸62aから離間した位置に回転軸62fが設けられて、後述する施錠部8に接続される。回転軸62fは、回転軸62aと平行なY方向の回転軸線を有する。移動規制部62dは、解錠位置における第1アーム62bでは回転軸62fよりも-Z方向に位置する。左規制部62において、施錠位置における回転軸62fは、回転軸62aに対して-Z方向に位置する。
【0051】
同様に、第2アーム62cは、解錠位置において、回転軸62aから-X方向に延びる位置となり、施錠位置においては、回転軸62aから+Z方向に延びる位置となる。
第2アーム62cは、解錠位置においてY方向視してベルト42に対する内側に位置し、施錠位置においてベルト42に接触しないか干渉しない位置まで回転移動する。
【0052】
第2アーム62cには、解錠位置において後述する施錠規制部9に接触して、回転軸62aに対する時計回りの左規制部62の回転移動を妨げられる被係合部62eを有する。被係合部62eが施錠規制部9に接触した状態では、左規制部62は施錠規制部9に拘束されて、回転が妨げられる。
【0053】
操作部7は、手動で操作することによって施錠部8を操作する操作力を発生させる。
操作部7は、
図3,
図4に示すように、手動により操作力を入力する入力部71と、入力部71から入力された操作力の方向を変換して施錠部8へと伝達する変換部72と、を有する。
【0054】
入力部71は、X方向で乗降口200の中央に配置される(
図1参照)。入力部71は、ドアリーフ10よりも上側に位置する。入力部71は、図示しない施錠キーに噛み合って回転される入力軸71aを有する。
入力軸71aはZ方向に沿った回転軸線を有し、下端から鉛直上向きに操作力を入力される。入力軸71aは、X方向において、ギア43の回転軸線とプーリ44の回転軸線とから等距離に配置される。入力軸71aは、X方向で乗降口200の中央位置に配置される。
【0055】
変換部72は、入力軸71aと後述する施錠部8の回転軸81aとの間で回転を伝達するとともに伝達方向を変える傘歯車71b、72bを有する。傘歯車71bは、入力軸71aの上端付近に配置される。傘歯車72bは、後述する施錠部8の回転軸81aに配置される。回転軸81aはY方向に沿った回転軸線を有する。傘歯車71bと傘歯車72bとは、互いに噛み合っており、入力軸71aから回転軸81aへと回転を伝達する。
【0056】
施錠部8は、
図2~
図4に示すように、回転軸81aを中心として回転する第1リンク81と、第1リンク81の端部に一端が接続される右第2リンク(第2リンク)82と、左第2リンク(第2リンク)83と、を有する。
回転軸81aはY方向に沿った回転軸線を有する。回転軸81aは、X方向で乗降口200の中央位置に配置される。回転軸81aは、X方向において、ギア43の回転軸線とプーリ44の回転軸線とから等距離に配置される。回転軸81aは、Y方向視してベルト42に対する内側に配置される。
【0057】
第1リンク81は、解錠位置において、回転軸81aを中心位置として+X方向に向かって延びるアーム81bと、-X方向に向かって延びているアーム81cとを有する。
第1リンク81は、回転軸81aを中心位置としてアーム81b,81cがX方向に沿ってそれぞれ反対方向を向いて延びる解錠位置と、アーム81b,81cがX方向に沿って延びるが解錠位置とは逆向きとなる施錠位置との間で、回転軸81aを回転中心として180°回転可能である。
【0058】
アーム81cの先端には、回転軸81dを介して左第2リンク(第2リンク)83の一端が接続される。アーム81cの先端には、回転軸81eを介して右第2リンク(第2リンク)82の一端が接続される。アーム81cの先端には、回転軸81eよりも回転軸81aから離間する位置に、停止部81gが形成される。停止部81gは、施錠位置において第1リンク81を停止させて回転位置を規制する。停止部81gは、施錠位置において停止規制部84に当たって位置規制される。
【0059】
アーム81bは、先端に施錠スイッチ103に接触するスイッチ押圧部81gを有する。スイッチ押圧部81gは、停止部81gと兼用することができる。スイッチ押圧部81gが接触してONになった施錠スイッチ103は、第1リンク81が施錠位置にあることを検知する。つまり、施錠スイッチ103は、移動部5が全閉対応位置となり、かつ、規制部6が施錠位置であることを検知する。
これにより、施錠スイッチ103を用いて、通常の車両運行におけるドア全閉検知用のスイッチとして用いることが可能である。
【0060】
回転軸81dは、解錠位置において、回転軸81aから+X方向に向かって離間した位置にある。回転軸81eは、解錠位置において、回転軸81aから-X方向に向かって離間した位置にある。Y方向視して、回転軸81dと回転軸81aとの離間距離は、回転軸81eと回転軸81aとの離間距離に等しい。
【0061】
左第2リンク(第2リンク)83の他端には、回転軸62fを介して左規制部62が回転可能に接続される。左第2リンク(第2リンク)83は、解錠位置において、回転軸81dから-X方向に向かって延びる。
右第2リンク(第2リンク)82の他端には、回転軸61fを介して右規制部61が回転可能に接続される。右第2リンク(第2リンク)82は、解錠位置において、回転軸81eから+X方向に向かって延びる。
【0062】
解錠位置において、アーム81bは回転軸81aから+X方向に向かい、左第2リンク(第2リンク)83は回転軸81dから-X方向に向かって延びる。また、解錠位置において、アーム81bと左第2リンク(第2リンク)83とは平行でありかつY方向視して重なる位置となる。このため、左第2リンク(第2リンク)83には、回転軸81dから-Z方向に湾曲して回転軸81eを避ける湾曲部83aが回転軸81dに近接する位置に形成される。
【0063】
解錠位置において、アーム81cは回転軸81aから-X方向に向かい、右第2リンク(第2リンク)82は回転軸81eから+X方向に向かって延びる。また、解錠位置において、アーム81cと右第2リンク(第2リンク)82とは平行でありかつY方向視して重なる位置となる。このため、右第2リンク(第2リンク)82には、回転軸81eから+Z方向に湾曲して回転軸81dを避ける湾曲部82aが回転軸81eに近接する位置に形成される。
【0064】
回転軸81a,回転軸81d,回転軸81e,回転軸61f,回転軸62fは、いずれもY方向に沿っており、互いに平行である。
アーム81bと左第2リンク(第2リンク)83と左規制部62とは、全閉対応位置における下移動部52に対する移動を規制するロックリンクを形成する。
アーム81cと右第2リンク(第2リンク)82と右規制部61とは、全閉位対応置における上移動部51に対する移動を規制するロックリンクを形成する。
【0065】
操作部7から入力された操作力により、第1リンク81が、
図2に示す時計回りに回転して停止規制部84に当たり、施錠部8は施錠位置となる。この施錠位置において、第1リンク81は水平位置、すなわち、アーム81bが-X方向に沿うとともにアーム81cが回転軸81a周りで-Y方向に向かう回転位置となる。このとき、後述する
図7に示すように、右第2リンク82は、回転軸81dよりも回転軸61fがZ方向で上側に位置する。同様に左第2リンク83は、回転軸81eよりも回転軸62fがZ方向で下側に位置する。つまり、解錠位置から施錠位置への回転において、第1リンク81と第2リンク82,83とは、直線に並んだ死点の状態を越えてさらに回転している。つまり、施錠位置から解錠位置に戻る際には、第1リンク81と第2リンク82,83とは、再度死点を越えて回転する必要がある。
操作部7から入力された操作力により、第1リンク81が、
図2に示す反時計回りに回転して水平位置になると、施錠部8は解錠位置となる。
【0066】
施錠規制部9は、ドアリーフ10が全閉位置に位置しているときのみに、施錠部8による施錠を可能とする。
施錠規制部9は、
図2~
図4に示すように、右施錠規制部91と左施錠規制部92とを有する。
【0067】
右施錠規制部91は、右規制部61に対する施錠規制を可能とする。右施錠規制部91は、Y方向に延びる回転軸線を有する回転軸91aによって回転可能に支持されている。右施錠規制部91は、上移動部51に接触されて上移動部51に押圧されたロック可能位置と、上移動部51が接触しないか上移動部51に押圧されていないロック不可位置と、の間を回転軸91aの周りで回転移動可能である。
回転軸91aは、Y方向視してベルト42に対する内側に配置される。回転軸91aは、全閉対応位置にある上移動部51に近接する位置に配置される。回転軸91aは、Y方向視して、全閉対応位置にある上移動部51の-Z方向に近接しかつX方向に一致する位置に配置される。回転軸91aの周りには、図示しないねじりバネが取り付けられて、右施錠規制部91を、
図2における回転軸91a周りで反時計回りに付勢している。
【0068】
右施錠規制部91は、回転軸91aから+Z方向に延びる第1アーム91bと、第1アーム91bの基端側で-X方向に突出する係合部91hと、を有するカムとなっている。
第1アーム91bは、上移動部51に接触されて上移動部51に押圧される被押圧部91dを先端位置に有する。被押圧部91dは、回転軸91aから+Z方向に延びる第1アーム91b先端において-X方向に突出して形成される。被押圧部91dが+X方向に押圧された際に、第1アーム91bはロック不可位置からロック可能位置へと回転軸91aの周りに回転移動可能である。被押圧部91dは、上移動部51が+X方向に進む際に前向きである前面51bに接触して押圧される。上移動部51からの押圧がなくなり、前面51bが被押圧部91dに接触しない状態では、回転軸91a周りのねじりバネにより第1アーム91bがロック可能位置からロック不可位置へと戻る。
【0069】
右施錠規制部91は、第1アーム91bの先端が+Z方向に延びるロック不可位置と、ロック不可位置に比べて第1アーム91bの先端が+X方向に傾くロック可能位置と、の間を回転軸91aの周りに回転可能である。右施錠規制部91は、
図2に示すロック不可位置から、回転軸91aの回りを時計回りに回転してロック可能位置となる(後述する
図5~
図7参照)。
ロック不可位置における係合部91hは、被係合部61eに対して接触して右規制部61の回転移動を妨げる。ロック可能位置における係合部91hは、被係合部61eに対して離間して右規制部61の移動を妨げない。
【0070】
右施錠規制部91では、上移動部51から被押圧部91dへの押圧により第1アーム91bが回転してロック可能位置となり、係合部91hと被係合部61eとの接触が解除されて右規制部61による施錠が可能となる。
【0071】
左施錠規制部92は、右施錠規制部91に対して点対称に設けられる。具体的には、Y方向視して、ギア43の回転軸線とプーリ44の回転軸線との中点に対して、左施錠規制部92と右施錠規制部91とが点対称に配置される。
左施錠規制部92は、左規制部62に対する施錠規制を可能とする。左施錠規制部92は、Y方向に延びる回転軸線を有する回転軸92aによって回転可能に支持されている。左施錠規制部92は、下移動部52に接触されて下移動部52に押圧されたロック可能位置と、下移動部52に接触しないか下移動部52に押圧されていないロック不可位置と、の間を回転軸92aの周りで回転移動可能である。
【0072】
回転軸92aは、Y方向視してベルト42に対する内側に配置される。回転軸92aは、全閉対応位置にある下移動部52に近接する位置に配置される。回転軸92aは、Y方向視して、全閉対応位置にある下移動部52の+Z方向に近接しかつX方向で一致する位置に配置される。回転軸92aの周りには、図示しないねじりバネが取り付けられて、左施錠規制部92を、
図2における回転軸92a周りで反時計回りに付勢している。
【0073】
左施錠規制部92は、回転軸92aから-Z方向に延びる第1アーム92bと、回転軸92aから+Z方向に延びる第2アーム92cと、第1アーム92bの基端側で+X方向に突出する係合部92hと、を有するカムとなっている。
第1アーム92bは、下移動部52に接触されて下移動部52に押圧される被押圧部92dを先端位置に有する。被押圧部92dは、回転軸92aから-Z方向に延びる第1アーム92b先端において+X方向に突出して形成される。
【0074】
被押圧部92dが-X方向に押圧された際に、第1アーム92bはロック不可位置からロック可能位置へと回転軸92aの周りに回転移動可能である。被押圧部92dは、下移動部52が-X方向に進む際に前向きである前面52bに接触して押圧される。下移動部52からの押圧がなくなり、前面52bが被押圧部92dに接触しない状態では、回転軸92a周りのねじりバネにより第1アーム92bがロック可能位置からロック不可位置へと戻る。
【0075】
第2アーム92cは、先端に全閉スイッチ102に接触するスイッチ押圧部92eを有する。スイッチ押圧部92eが接触してONになった全閉スイッチ102は、下移動部52が全閉対応位置となり、かつ、左施錠規制部92がロック可能位置であることを検知する。つまり、全閉スイッチ102は、移動部5が全閉対応位置となり、かつ、施錠規制部9がロック可能位置であることを検知する。
【0076】
左施錠規制部92は、第1アーム92bの先端が-Z方向に延びるロック不可位置と、ロック不可位置に比べて第1アーム92bの先端が-X方向に傾くロック可能位置と、の間を回転軸92aの周りに回転可能である。左施錠規制部92は、
図2に示すロック不可位置から、回転軸92aの回りを時計回りに回転してロック可能位置となる(後述する
図5~
図7参照)。
ロック不可位置における係合部92hは、被係合部62eに対して接触して左規制部62の回転移動を妨げる。ロック可能位置における係合部92hは、被係合部62eに対して離間して左規制部62の移動を妨げない。
【0077】
左施錠規制部92では、下移動部52から被押圧部92dへの押圧により第1アーム92bが回転してロック可能位置となり、係合部92hと被係合部62eとの接触が解除されて左規制部62による施錠が可能となる。
同時に、第1アーム92bと一体として第2アーム92cが回転して、スイッチ押圧部92eの接触により、全閉スイッチ102が全閉対応位置であることを検知して出力する。
全閉スイッチ102は、全てのドア2が全閉した際に全閉信号を伝送するインターロック回路に接続されるとともに、施錠部8による施錠をした際に、全閉スイッチ103がインターロック回路をバイパスして全閉信号を常時伝送可能に接続される。
【0078】
本実施形態の鉄道用ドア装置100は、
図2に示すドア2が開いた状態、少なくとも全閉でない状態では、移動部5が施錠規制部9当接していないので、施錠規制部9がロック不可位置を維持し、施錠規制部9による規制部6の動作規制が維持されている。したがって、規制部6が解錠位置を維持するため、手動による施錠は規制されている。
【0079】
さらに、
図5に示すドア2が閉じた状態、つまり、ドアリーフ10が全閉位置に到達した状態では、移動部5が施錠規制部9に当接して、施錠規制部9がロック可能位置となる。これにより、施錠規制部9による規制部6の動作規制が解除される。同時に、全閉スイッチ102はドアリーフ10が全閉位置に到達した状態であることを検知する。
【0080】
ここで、手動によるドア2の施錠をおこなう際には、ドアリーフ10が全閉位置に到達した状態でのみ、施錠可能であることが必要である。
この状態において、操作部7から施錠する際には、図示しないキーによって入力軸71aを回転操作する。この操作力は傘歯車71b、傘歯車72b、回転軸81aに伝達され、施錠部8の第1リンク81が回転する。
【0081】
ドアリーフ10が全閉位置にある場合で、操作部7から施錠操作された場合、
施錠部8の第1リンク81は、
図2~
図5に示す解錠位置から、
図6に示す途中状体、を経て、
図7に示す施錠位置へと回転する。停止部81gが停止規制部84に当たって施錠位置で回転が停止する。第1リンク81の回転に伴って、第2リンク82,83および右規制部61,左規制部62も連動して回転する。これにより、施錠位置においては、
図7に示すように、水平方向(X方向)に向いた第1リンク81に対して、第2リンク82,83は、第1リンク81側端部の回転軸81d,81eよりも規制部6側端部の回転軸61f,62fのほうが、Z方向に第1リンク81よりも離間した位置となる。
【0082】
つまり、
図7に示すように、第1リンク81に対して、右第2リンク82は、回転軸81d周りで、角度θ2だけ180°を越えた回転をした状態が施錠位置である。また、第1リンク81に対して、左第2リンク83は、回転軸81e周りで、角度θ3だけ180°を越えた回転をした状態が施錠位置である。
【0083】
ここで、第1リンク81に対して、右第2リンク82は、回転軸81d周りで、角度θ2だけ水平方向よりも上向きに傾いている。これは、右規制部61の回転軸61fがベルト42の外側に位置し、回転軸61fが回転軸61aに対して+Z方向に位置する施錠位置まで右規制部61が回転したことによる。
【0084】
ここで、第1リンク81に対して、左第2リンク83は、回転軸81e周りで、角度θ3だけ水平方向よりも下向きに傾いている。これは、左規制部62の回転軸62fがベルト42の外側に位置し、回転軸62fが回転軸62aに対して-Z方向に位置する施錠位置まで左規制部62が回転したことによる。
ここで、施錠位置において、ドア2が開こうとした場合には、移動部5が全閉対応位置から移動しようとする。この場合、移動部5は全開対応位置に向かって進もうとする。
【0085】
すると、右規制部61においては、上移動部51の前面51aから移動規制部61dが-X方向に押圧される。すると、右規制部61は、-Y方向視して、回転軸61a周りに反時計回りに回転しようとする力が作用する。この力は施錠部8の第2リンク82に伝達されるが、この際、第2リンク82の軸線に沿って作用して、回転軸81dから第1リンク81へと伝達される。
【0086】
上述したように、施錠位置においては、第1リンク81に対して右第2リンク82は死点を越えた角度位置となっているため、右第2リンク82から第1リンク81へと伝達されるドア2を開放しようとする力の作用線は、施錠する回転方向へと向かっており、停止規制部84によって第1リンク81の回転は規制されることになる。
【0087】
同様に、左規制部62においては、下移動部52の前面52aから移動規制部62dが+X方向に押圧される。すると、左規制部62は、-Y方向視して、回転軸61a周りに反時計回りに回転しようとする力が作用する。この力は施錠部8の第2リンク83に伝達されるが、この際、第2リンク83の軸線に沿って作用して、回転軸81eから第1リンク81へと伝達される。
【0088】
上述したように、施錠位置においては、第1リンク81に対して左第2リンク83は死点を越えた角度位置となっているため、左第2リンク83から第1リンク81へと伝達されるドア2を開放しようとする力の作用線は、施錠する回転方向へと向かっており、停止規制部84によって第1リンク81の回転は規制されることになる。
つまり、死点を越えて、第2リンク82,83を回転させないと、解錠方向へ回転させることができない。
したがって、他の構成を追加することなく、手動による施錠状態を維持することが可能となる。
【0089】
しかも、このような死点を越えた状態が、第1リンク81と第2リンク82および第2リンク83とで、Y方向視して回転軸81aに対して点対称な状態で施錠状態が維持されるため、移動部5の押圧力または解錠方向への規制部6への押圧力が大きい場合でも、施錠状態を容易に維持することが可能となる。
【0090】
本実施形態の鉄道用ドア装置100は、手動施錠装置101において、ドアリーフ10と一体に動く伝達機構4のベルト42に取り付けられた移動部5の上移動部51と下移動部52とを、同時に、規制部6の右規制部61と左規制部62とによってそれぞれロックすることでドアリーフ10を開閉させない。これにより、直接ドアリーフをロックする場合に比べて小さい規制力で施錠可能となる。
【0091】
本実施形態の鉄道用ドア装置100は、手動で施錠する場合に、手動施錠装置101において施錠規制部9が規制部6に当たって、施錠動作ができないように規制している。ドアリーフ10が全閉位置にある全閉状態にならないと施錠規制部9は規制部6から離間しない。このため、ドアリーフ10が全閉位置にない場合、手動による施錠ができないよう規制できる。
しかも、両開きのドアリーフ10のそれぞれを、操作部9のキー操作によって同時にロックすることができ、このロック状態を維持することができる。
【0092】
これにより、例えば、ドア2の故障発生時等の非常時でも車両走行をおこなう必要があるなど、ドア閉駆動ができない場合に、全閉状態で施錠する動作を手動によっても確実におこなうことができる。特に、ドアリーフ10を直接ロックする機構に比べてドアリーフ10が破損する場合でも施錠を確実におこなうことができ、安全性を向上できる。
【0093】
また、ドアリーフ10が全閉位置以外では施錠ができない構成なので、誤動作を防止して、安全性を向上できる。ドアリーフ10を直接ロックする機構に比べて、小さな部品でかつ小さい規制力で確実に施錠をおこなうことができる。
【0094】
上記構成によると、施錠規制部9が移動部5と当接して施錠規制位置から非施錠規制位置に移動して規制部6、施錠部8の施錠動作が可能となる。そのため、開閉方向全域にわたって施錠規制部(ふさぎ板)を設けることなく、全閉位置のみで手動施錠可能となる。
【0095】
本発明の手動施錠装置は、前記ドアリーフが前記全閉位置に位置しているときのみに、前記施錠部による施錠を可能とする施錠規制部を備える、ことができる。
これにより、ドアリーフが全閉状態でないとロックできないため安全性を向上することができる。
【0096】
本発明の手動施錠装置は、前記規制部が被係合部を有し、
前記施錠規制部は、
前記被係合部と接触して前記規制部の移動を妨げる係合部と、
前記ドアリーフが全閉位置に到達する際に、前記移動部によって閉方向に押圧されて前記係合部と前記被係合部との接触を解除可能な被押圧部と、
を備える、ことができる。
これにより、移動部による被押圧部の押圧有無だけで解錠・施錠を切り替えることが可能となり、部品電数を削減することができ、動作確実性を向上することができる。
【0097】
本発明の手動施錠装置は、前記施錠規制部は前記被押圧部と前記被係合部とを備えるカムであり、
前記カムは、前記被押圧部が押圧されることで回転して前記被係合部と前記係合部との接触を解除する、ことができる。
これにより、被係合部と係合部との接触およびその解除を確実に切り替えることができる。
【0098】
本発明の手動施錠装置は、前記ドアリーフが前記全閉位置に到達したことを検知するための全閉スイッチと、
前記カムは、前記被押圧部が押圧されることで回転して、前記全閉スイッチを押圧するスイッチ押圧部を更に備える、ことができる。
これにより、ドアリーフの位置を直接検出することなく、全閉状態にあることを検出することが可能となる。
【0099】
本発明の手動施錠装置は、鉄道車両の複数の乗降口を開閉する複数のドアに設けられ、
前記全閉スイッチが、全ての前記ドアが全閉した際に全閉信号を伝送するインターロック回路に接続されるとともに、前記操作部を手動で操作することによって前記施錠部による施錠をした際に、前記全閉スイッチが前記インターロック回路をバイパスして前記全閉信号を常時伝送可能に接続される、ことができる。
これにより、手動操作によって施錠する非常時におけるロック検出が可能であり、しかも、通常のドア開閉における全閉を検出するための全閉スイッチとして用いることが可能となる。
【0100】
本発明の手動施錠装置は、前記施錠部が、前記操作部の操作力によって回転する第1リンクと、
前記第1リンクの端部に一端が接続されるとともに他端が前記規制部に接続される第2リンクと、を備え、
前記解錠位置から前記施錠位置に向けて前記第1リンクが回転して、前記第1リンクと前記第2リンクとが死点を越えた位置で前記施錠位置となる、ことができる。
これにより、第1リンクと第2リンクとの角度が死点を越えた位置で施錠しているので、施錠位置で第1リンクと第2リンクとを固定するための構成が必要なく、かつ、確実に施錠をおこなうことができる。
【0101】
本発明の手動施錠装置は、前記第2リンクが、前記施錠位置において前記移動部の移動方向に沿って延在する、ことができる。
これにより、施錠時に、移動部が解錠しようとすると、第2リンクをその延在する方向に押圧することになり、大きな力がかかっても施錠状態を維持することが容易となる。
【0102】
本発明の手動施錠装置は、前記第2リンクに接続された前記規制部は、前記ドアリーフが前記全閉位置に位置する場合、前記移動部の前記全開対応位置に向かう位置に接する、ことができる。
これにより、規制部が、移動部の移動範囲の端となる全閉位置から移動方向の前向きとなる箇所に直接接して、この移動部の規制をおこなうため、効果的に移動を規制することができる。
【0103】
本発明の手動施錠装置は、前記施錠部は、スライドする両開きの前記ドアリーフのそれぞれに接続された前記移動部を前記操作部の操作力によって同時に施錠する、ことができる。
両開きのドアリーフを同時にロック可能であり、片方だけロックされていない状態を回避することができる。
【0104】
本発明の手動施錠装置は、前記操作部が、前記移動部の移動方向において両開きの前記ドアリーフの中央に設けられる、ことができる。
これにより、両開きのドアリーフを同時にロック可能であり、操作性を向上することができる。
【0105】
本発明の手動施錠装置は、前記伝達機構が、前記移動部と一体に移動する連結移動部を有する、ことができる。
これにより、伝達機構として、巻回ベルト式、ラックアンドピニオン式、スクリュー式、リニアモータ式、電動シリンダ等の機構のいずれかによって駆動力を伝達する場合にこれらと移動部が一体に移動しても、移動部がドアハンガと一体に移動することも、いずれの場合でも確実な施錠が可能である。
【0106】
本発明の手動施錠装置は、前記操作部は、鉛直上向きに操作が入力される入力部を有する、ことができる。
これにより、施錠操作における操作性を向上することができる。
【0107】
本発明の手動施錠装置は、前記操作部は、前記入力部から鉛直上向きに入力された操作力を、前記移動部の移動方向と交差する横方向に変換する変換部を有する、ことができる。
これにより、乗降口のドア上位置に組み込むことが可能であり省スペース化を図ることができる。また、車幅方向で車両中央位置から操作部の鍵穴が見えないのでデザイン性を向上することができる。
【0108】
本発明の手動施錠装置は、上述した実施形態における個々の構成を適宜選択して組み合わせて適用することが可能である。
さらに、上述した実施形態における個々の構成を適宜変更することもできる。
例えば、ドアリーフが1枚の構成のOoSLとすることができる。
移動部5(上移動部5、下移動部52)がドアハンガ11に接続されていない構成も可能である。この場合、移動部5(上移動部5、下移動部52)がドアハンガ11に接続された位置とは異なる位置で、ベルト42に設けられることもできる。
施錠部8が、リンク機構でない構成も可能である。この場合、右規制部61の第2アーム61cと、左規制部62の第2アーム62cとを、同時に回転軸81aへと近づくように回転させて施錠位置とするための構成を有することができる。さらに、この場合、施錠する場合と逆向きに回転させて元に戻すための構成も設けることもできる。
【符号の説明】
【0109】
100…鉄道用ドア装置
101…手動施錠装置
200…乗降口
2…ドア
3…駆動源
4…伝達機構
5…移動部
6…規制部
7…操作部
8…施錠部
9…施錠規制部
10…ドアリーフ
11…ドアハンガ(連結移動部)
42…ベルト
61e,62e…被係合部
71…入力部
81g…スイッチ押圧部
82a,83a…湾曲部
84…停止規制部
91d…被押圧部
91h,92h…係合部
92e…スイッチ押圧部