(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】配管の基礎貫通構造および基礎貫通配管の施工方法
(51)【国際特許分類】
F16L 5/02 20060101AFI20241107BHJP
E03C 1/12 20060101ALI20241107BHJP
E03C 1/122 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
F16L5/02 F
E03C1/12 Z
E03C1/122 Z
(21)【出願番号】P 2020189970
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 直樹
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-041869(JP,A)
【文献】特開2018-204359(JP,A)
【文献】特開2018-096483(JP,A)
【文献】特開2018-151038(JP,A)
【文献】特開昭55-165341(JP,A)
【文献】特開2012-037036(JP,A)
【文献】特開2000-240854(JP,A)
【文献】国際公開第2015/055854(WO,A1)
【文献】中国実用新案第204647577(CN,U)
【文献】中国実用新案第207673965(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/02
E03C 1/12
E03C 1/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎に形成された貫通穴部と、該貫通穴部に挿通配置された配管との間の隙間に水膨張性の止水材が周方向に設置され、
前記隙間内の前記止水材よりも屋内側の位置には、発泡材が設置され、
前記隙間内の前記止水材よりも屋外側の位置には、
前記基礎の屋外側の面とほぼ面一になるようにモルタルが打設されて
三層になっており、
前記発泡材および前記モルタルが、前記止水材を両側から挟んで押さえることで、
前記水膨張性の前記止水材は、長手方向への膨張を抑制されると共に、径方向に膨張されていることを特徴とする配管の基礎貫通構造。
【請求項2】
請求項1に記載の配管の基礎貫通構造であって、
前記発泡材は、前記配管の外周面に取付けられた状態で、
前記配管と共に前記貫通穴部に設置され
、
前記水膨張性の前記止水材は、前記配管の前記貫通穴部への挿通後に周方向の厚みが均等となるように屋外側から設置され、
前記モルタルは、前記水膨張性の前記止水材の設置後に屋外側から設置されていることを特徴とする配管の基礎貫通構造。
【請求項3】
請求項2に記載の前記配管の基礎貫通構造であって、
前記発泡材は、粘着テープで前記配管の外周面に貼付けられていることを特徴とする配管の基礎貫通構造。
【請求項4】
配管の外周面に発泡材を取付け、
外周面に前記発泡材を取付けた前記配管を、建物の基礎に形成された貫通穴部へ挿通配置することで、前記発泡材を前記貫通穴部の内部に位置させて、前記発泡材で前記貫通穴部と前記配管との間の隙間を周方向に塞ぎ、
前記隙間内に、前記発泡材よりも屋外側に位置するように水膨張性の止水材を設置し、
前記隙間内の前記止水材よりも屋外側にモルタルを打設して、水膨張性の前記止水材を、前記発泡材と前記モルタルとで両側から挟んで押さえることで、前記止水材の長手方向への膨張を抑制すると共に、径方向に膨張させることを特徴とする基礎貫通配管の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配管の基礎貫通構造および基礎貫通配管の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建物には、給水管、排水管などの各種の配管が設けられる。これらの配管は、建物を地面に支える基礎の内外間を貫通するように設置される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
基礎には貫通穴部が形成され、配管は、貫通穴部に挿通配置される。そして、貫通穴部と配管との間の隙間には止水材が設置されて、止水材で止水される。このようにすることで、配管は、基礎貫通配管となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基礎の貫通穴部と配管との間の隙間に膨張性の止水材を設置する場合、止水材の膨張を屋内側と屋外側との両側から押さえるための押さえが必要になる。そして、貫通穴部に配管を通す作業(基礎貫通作業)を、例えば、基礎の上へ建物を据付けた後に行う場合、屋内側の押さえについては、建物の床下へ潜って設置作業を行わなくてはならないので、作業性が悪かった。
【0006】
そこで、本発明は、上記した問題点の改善に寄与することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対して、本発明は、
建物の基礎に形成された貫通穴部と、該貫通穴部に挿通配置された配管との間の隙間に水膨張性の止水材が周方向に設置され、
前記隙間内の前記止水材よりも屋内側の位置には、発泡材が設置され、
前記隙間内の前記止水材よりも屋外側の位置には、前記基礎の屋外側の面とほぼ面一になるようにモルタルが打設されて三層になっており、
前記発泡材および前記モルタルが、前記止水材を両側から挟んで押さえることで、
前記水膨張性の前記止水材は、長手方向への膨張を抑制されると共に、径方向に膨張されている配管の基礎貫通構造を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、屋内側から屋外側へ向けて、発泡材と、水膨張性の止水材と、モルタルとを順に三層に設置した上記構成によって、止水材の屋内側の押さえに対する作業性を向上することなどができる。また、隙間の内部で発泡材およびモルタルが、水膨張性の止水材を両側から挟んで押さえることで、水膨張性の止水材を、長手方向への膨張を抑制すると共に、径方向に膨張させることができる。そして、基礎の屋外側の面とほぼ面一に打設したモルタルによって基礎の表面を整えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態にかかる配管の基礎貫通構造の縦断面図である。
【
図2】発泡材を取付けた配管を
図1の基礎の貫通穴部へ屋外側から挿入する状態を示す図である。
【
図3】
図1の貫通穴部と配管との隙間内に止水材を屋外側から施工する状態を示す図である。
【
図4】
図1の隙間内にモルタルを屋外側から打設する状態を示す図である。
【
図5】比較例にかかる配管の基礎貫通構造の縦断面図である。
【
図6】
図5の貫通穴部と配管との隙間内に、バックアップ用治具を屋内側から挿入する状態を示す図である。
【
図7】
図5の貫通穴部と配管との隙間内に止水材を屋外側から施工する状態を示す図である。
【
図8】
図5の隙間内にモルタルを屋内側と屋外側との両方から打設する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1~
図8は、この実施の形態を説明するためのものである。このうち、
図1~
図4は実施例、
図5~
図8は比較例である。
【実施例1】
【0011】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、住宅などの建物1には、給水管、排水管などの各種の配管2が設けられる。これらの配管2は、建物1を地面GLに支える基礎4の内外間を貫通するように設置される。これにより、配管2は、基礎貫通配管となる。
【0013】
建物1は、どのような構造のものであっても良い。建物1は、例えば、ユニット建物などとすることができる。ユニット建物は、工場で予め製造した建物ユニットを、建築現場へ搬送して、建築現場で組み立てることにより、短期間のうちに構築できるようにした建物1である。建物ユニットは、基礎4の上に据付けるようにして組み立てられる。
【0014】
給水管は、建物1に水やお湯を供給する管のことである。排水管は、建物1で発生した排水を外部の下水道などへ導く管のことである。地面GLは、建物1を設置する敷地である。
【0015】
基礎4は、地面GLの上に設けられて、建物1の下部を地面GLよりも高い位置に支持する鉄筋コンクリート製の構築物である。基礎4には、布基礎とベタ基礎とがある。布基礎は、地面GLから立ち上がる立上部5によって主に構成される。ベタ基礎は、立上部5と、立上部5の内側の地面GLを覆う水平で平坦なスラブ部6とによって主に構成される。基礎4は、布基礎とベタ基礎のどちらとしても良い。この実施例では、基礎4は、ベタ基礎となっている。
【0016】
上記のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えることができる。
【0017】
(1)この実施例の配管2の基礎貫通構造では、基礎4に形成された貫通穴部11と、貫通穴部11に挿通配置された配管2との間の隙間12に、止水材13が周方向に設置される。
隙間12内の止水材13よりも屋内側15の位置には、発泡材16が設置される。
隙間12内の止水材13よりも屋外側17の位置には、モルタル18が打設される。
【0018】
ここで、貫通穴部11は、基礎4の内外間を貫通する穴である。貫通穴部11は、基礎4の立上部5を貫通するように設けても良いし、スラブ部6を貫通するように設けても良いし、立上部5とスラブ部6との間を貫通するように設けても良い。貫通穴部11は、ほぼ水平に設けても良いし、傾斜させて設けても良い。貫通穴部11を傾斜させる場合、屋内側15が高くなり屋外側17が低くなるように設置するのが好ましい。この実施例では、貫通穴部11は、立上部5の地面GLよりも高い位置をほぼ水平に貫通している。
【0019】
貫通穴部11は、基礎4を打設する際に、例えば、基礎4に管部材21を埋設しておくことによって形成される。
【0020】
管部材21は、紙製や柔軟な樹脂製のボイド管としても良いし、樹脂管としても良いが、貫通穴部11が変形しないようにするには、管部材21は、所要肉厚および所要強度を有する塩ビ管などの硬質の樹脂管を用いるのが好ましい。ボイド管の場合、ボイド管は、基礎4の打設後に、基礎4から取外すことができる。硬質の樹脂管の場合、樹脂管は、基礎4の打設後も、基礎4にそのまま残される。これにより、管部材21の内部空間は、貫通穴部11になる。
【0021】
貫通穴部11は、均一径で直線状とするのが好ましい。この実施例では、貫通穴部11は、立上部5の厚みと同じ長さの直管状をした、硬質の樹脂製の単一の管部材21(例えば、円筒状の塩ビ管)を、立上部5内に埋設することで構成されている。管部材21は、ほぼ水平にして、両端部が立上部5の両面とほぼ面一となり、立上部5とほぼ面直となるように、基礎4に埋設される。
【0022】
配管2は、貫通穴部11の内部に通される管状の部材であり、例えば、上記したように、給水管、排水管などとすることができる。また、配管2は、例えば、冷媒管や熱媒管などの熱媒体給排管などとしても良い。配管2は、少なくとも貫通穴部11を通る部分が、均一径で直線状になっているのが好ましい。そのために、配管2は、貫通穴部11と同じ断面形状で、貫通穴部11よりも一回り程度以上小さい、貫通穴部11と相似形の断面を有するものにするのが好ましい。この実施例では、配管2は、円筒状の管となっている。
【0023】
隙間12は、貫通穴部11(の内周面)と配管2(の外周面)との間にできる間隙のことである。この実施例では、貫通穴部11および配管2は、それぞれ円形断面となっているため、貫通穴部11と配管2との間には円環状の隙間12が形成される。隙間12は、周方向に対してほぼ均一な大きさにするのが好ましい。隙間12をほぼ周方向にほぼ均一にするためには、止水材13、発泡材16、モルタル18の施工は、配管2を完全に固定する前に行うのが好ましい。これは、配管2を完全に固定してしまうと、隙間12が周方向に均一でなくなる可能性が高いからである。
【0024】
止水材13は、貫通穴部11をシールして、例えば、雨水などが屋外側17から屋内側15へ浸入しないようにするための部材である。止水材13は、どのようなものを用いても良いが、隙間12に対するシール性を高めるためには膨張性のものを用いるのが好ましい。膨張性の止水材13には、例えば、ベントナイトなどの粘土を用いた水膨張性の粘土シール材を使用することができる。止水材13には、紐状のものを、最適な充填量が得られる分だけ切って使用する。紐状の止水材13は、貫通穴部11の内径や、配管2の外径や、隙間12の大きさや隙間12の周長に応じて最適に選定された太さのものを最適な長さにして使用する。また、膨張性の止水材13は、上記以外に、例えば、コーキングタイプの水膨張性の一液性シール材などを、隙間12へ注入するようにして用いることができる。
【0025】
止水材13は、貫通穴部11と配管2との間の隙間12の、長手方向(貫通穴部11の軸線方向)の中間部の位置に設置される。膨張性の止水材13は、設置後に膨張するので、止水材13の両側に押さえがそれぞれ必要になる。そのため、止水材13は、隙間12に対し、押さえとなる発泡材16およびモルタル18を設置する部分(空間)が、止水材13の両側(屋内側15および屋外側17)に残されるような位置に設置される。なお、膨張性でない止水材13の場合でも、止水材13を両側から押さえて圧縮することで、止水材13のシール性を高めることが期待できる。
【0026】
周方向は、貫通穴部11の内周面や配管2の外周面に沿って周回する方向のことである。
【0027】
屋内側15は、建物1の内側のことである。止水材13よりも屋内側15は、止水材13から貫通穴部11の屋内側15の開口部までの図中右側の部分のことである。
【0028】
発泡材16は、内部に多数の気泡を含むことで、軽くて柔軟で弾性変形が可能となっている部材のことである。発泡材16は、隙間12の周長と同じ長さを有し、隙間12の大きさと同じかそれよりも若干大きい均一な太さを有する細長い紐状の部材を、円環状(リング状)にして使用することができる。発泡材16は、隙間12における、止水材13の設置位置よりも屋内側15の位置に正確に設置される。
【0029】
発泡材16は、
図1Aに示すような円形断面、
図1Bに示すような矩形断面などの均一断面の部材を用いるのが好ましい。この実施例では、発泡材16には、シリコーン発泡体16aや発泡ウレタン16bなどの材質でできた、最適な太さの紐状の部材を、最適な長さに切断し、円環状に丸めて使うようにしている。なお、発泡材16は、最初から円環状になっているものを使っても良い。発泡材16は、施工後も隙間12の内部にそのまま残される。
【0030】
屋外側17は、建物1の外側のことである。止水材13よりも屋外側17は、止水材13から貫通穴部11の屋外側17の開口部までの図中左側の部分のことである。
【0031】
モルタル18は、砂(細骨材)とセメントに水を加えて練り混ぜた流動性のある硬化型の建築材料のことである。モルタル18は、隙間12における、止水材13よりも屋外側17の部分に、基礎4の屋外側17の面と面一になるように充填される。
【0032】
(2)発泡材16は、配管2の外周面に取付けられた状態で、配管2と共に貫通穴部11に設置されても良い。
【0033】
ここで、配管2の外周面は、円筒状をした配管2の外側に露出している円筒面である。発泡材16は、例えば、先に、端面どうしを接着してリング状にしたものを、配管2の外周面に嵌着(外嵌)し、その後に、発泡材16を配管2に対して動かないように接着剤で貼付けることで、発泡材16を配管2と一体化しても良い。
【0034】
また、発泡材16は、配管2の外周面に周回するようにリング状に巻き付けてから接着剤で接着することで、配管2と一体化しても良い。この際、配管2の外周面に巻き付けた発泡材16の端面どうしも、後から接着剤で接着するようにする。
【0035】
発泡材16には、例えば、上記したシリコーン発泡体16a(や発泡ウレタン16b)などを使うことができる。
【0036】
これにより、発泡材16は、配管2と共に貫通穴部11の内部に挿入されることになる。そして、配管2を貫通穴部11の内部に挿通配置することで、発泡材16は、隙間12内に挿入設置されることになる。この際、発泡材16が周方向に均一な厚みを有することで、隙間12を周方向に均一な状態で塞ぐことができる。
【0037】
配管2は、屋内側15から貫通穴部11の内部に挿通配置しても良いし、屋外側17から貫通穴部11の内部に挿通配置しても良い。この実施例では、配管2は、屋内側15から貫通穴部11の内部に挿通配置するようにしている。
【0038】
(3)発泡材16は、粘着テープ25(
図1B)で配管2の外周面に貼付けられても良い。
【0039】
ここで、粘着テープ25は、テープ状の基材の面に粘着剤の層を塗布形成した粘着固定用部材である。発泡材16は、例えば、片面に両面テープなどの粘着テープ25を貼付け、両面テープを貼付けた面を内側にして配管2の外周面に巻き付けるようにし、このとき、両面テープの反対側の粘着面を配管2に貼付けることで、配管2と一体化するようにしても良い。なお、発泡材16は、片面に粘着剤の層を塗布形成してそれ自体を粘着テープ25にしても良い。これにより、発泡材16は、直接配管2の外周面に貼付けられるようになる。
【0040】
配管2に粘着テープ25で発泡材16を貼付ける際には、配管2の外周面に貼付けられた発泡材16の端面どうしも、後から両面テープなどの粘着テープ25または接着剤で接着するようにする。発泡材16には、例えば、上記した発泡ウレタン16b(やシリコーン発泡体16a)などを使うことができる。
【0041】
(4)以下、基礎貫通配管の施工方法について説明する。
【0042】
基礎貫通配管の施工方法は、
配管2の外周面に発泡材16を取付け、
外周面に発泡材16を取付けた配管2を、基礎4に形成された貫通穴部11へ挿通配置することで、発泡材16を貫通穴部11の内部に位置させて、発泡材16で貫通穴部11と配管2との間の隙間12を周方向に塞ぎ(
図2)、
隙間12内に、発泡材16よりも屋外側17に位置するように止水材13を設置し(
図3)、
隙間12内の止水材13よりも屋外側17にモルタル18を打設するようにしても良い(
図4)。
【0043】
ここで、基礎貫通配管は、上記したように、基礎4に貫通された配管2のことである。
【0044】
基礎貫通配管の施工方法は、より具体的には、工程1では、まず、貫通穴部11の内径を確認する(内径確認工程)。
【0045】
工程2では、貫通穴部11の内径と、配管2の外径とに応じて、最適な太さの水膨張性の粘土シール材を、最適な長さに切り出すことで、最適な止水材13を用意する。止水材13は、水に浸して表面の水容易フィルムが溶けるまで湿潤させる(止水材準備工程)。なお、止水材13を、コーキングタイプの水膨張性の一液性シール材などとする場合には、この止水材準備工程は不要となる。
【0046】
工程3では、貫通穴部11の外部で配管2の外周に、発泡材16を予め取付ける。配管2の外周に対する発泡材16の取付けは、例えば、接着剤による接着固定、粘着テープ25による貼付け固定などとすることができる。そして、発泡材16が貫通穴部11の内部の所定の位置に位置されるように、発泡材16を取付けた配管2を、基礎4に形成された貫通穴部11内へ挿入する。配管2の貫通穴部11への挿入は、屋内側15からと、屋外側17からとのどちらでも良い。ただし、発泡材16の設置を作業性良く行うためには、屋外側17からの挿入とするのが好ましい(発泡材16付き配管2の設置工程)。
【0047】
工程4では、貫通穴部11の内部(貫通穴部11と配管2との間の隙間12)に、屋外側17から止水材13を充填する(止水材充填工程)。止水材13は、発泡材16に当たる位置から、貫通穴部11の屋外側17の開口部よりも僅かに奥側となる位置(例えば、開口部から20mm程度奥の位置)まで充填する。なお、止水材13を、コーキングタイプの水膨張性の一液性シール材などとした場合には、止水材13を屋外側17から隙間12内へ注入する。止水材13は、貫通穴部11の軸線方向に対する厚み(充填厚さ)が所要量(例えば、40mm程度)以上確保され、周方向に対する厚みが均等となり、貫通穴部11の内面および配管2の外面になじむように、指、細長い工具などで施工する。止水材13の施工後には、止水材13は、その施工状態を、少なくとも周方向にほぼ均等となる3箇所以上の位置で確認する(止水材施工状態確認工程)。
【0048】
工程5では、貫通穴部11の屋外側17の開口部にモルタル18を充填する(モルタル充填工程)。モルタル18は、止水性能を確保向上するため、内部に空隙ができないように、例えば、ヘラなどの調整工具31でつついて内部の空隙を破壊しながら作業する。モルタル18は、貫通穴部11の屋外側17の面と面一になるように表面を整える。モルタル18は、軸線方向に対する厚みが所要量(例えば、20mm程度)確保されるようにする。なお、貫通穴部11の屋内側15については、発泡材16は、取付けたままにしておく。
【0049】
以上により、基礎4を貫通する配管2(基礎貫通配管)が施工される。
【0050】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0051】
(作用効果 1)配管2の基礎貫通構造は、基礎4の貫通穴部11に配管2を挿通配置して、貫通穴部11と、貫通穴部11に挿通配置された配管2との間の隙間12に止水材13を周方向に設置するものである。止水材13には、例えば、ベントナイトなどの粘土を用いた水膨張性の粘土シール材や、コーキングタイプの水膨張性の一液性シール材などが使われる。膨張性の止水材13は、長手方向への膨張を抑制して径方向に適正に膨張させることで隙間12の全周に亘って高いシール性を確保するために、屋内側15と屋外側17との両側から押える必要がある。
【0052】
既存の配管2の基礎貫通構造では、
図5~
図8の比較例に示すように、止水材13の屋内側15と屋外側17の押えは、共にモルタル18によって行っていた。そのため、建物1の据付後に配管2の基礎貫通作業(配管2を貫通穴部11へ通して固定する作業)を行う場合に、屋内側15の押さえ(モルタル18の施工)を、建物1の床下へ潜って屋内側15から行う必要が生じ、その分、作業性が悪くなっていた。
【0053】
また、屋内側15の押さえとしてモルタル18を打設する場合、貫通穴部11へ配管2を挿通した後に、以下のような作業を行っていた。即ち、まず、
図6に示すように、貫通穴部11と配管2との隙間12に、屋内側15から止水材13を設置する予定の位置51まで、バックアップ用治具52を挿入する。バックアップ用治具52が、正しく上記した位置51まで挿入されているかどうかを、屋外側17から隙間12に定規などの治具53を入れて計測する。
【0054】
次に、
図7に示すように、屋外側17から隙間12に、バックアップ用治具52へ当たるように、止水材13を設置する。そして、隙間12への止水材13の設置後に、バックアップ用治具52を隙間12から屋内側15へ取外す。そして、屋内側15と屋外側17の両側から隙間12にモルタル18を打設する。そのため、建物1の据付後に基礎貫通作業を行う場合に、施工に多大な手間がかかっていた。
【0055】
これに対し、この実施例では、隙間12内の止水材13よりも屋内側15となる位置に発泡材16を設置し、隙間12内の止水材13よりも屋外側17となる位置にモルタル18を打設するようにしている。これにより、隙間12に設置される止水材13を屋内側15の発泡材16と屋外側17のモルタル18とで両側から押えて圧縮したり、または、膨張性の止水材13の膨張を抑制したりすることができる。
【0056】
そして、止水材13の屋内側15の押さえには発泡材16を用いている。発泡材16は、内部に含まれる気泡によって柔軟で弾性変形が可能な部材となっているため、発泡材16は、その弾性力によって止水材13の屋内側15への膨張を有効に抑制することができる。また、発泡材16は、隙間12内の屋内側15の位置への設置が容易である。例えば、配管2と共に貫通穴部11へ挿入するだけで、発泡材16は隙間12内の最適な位置に設置できる。発泡材16の貫通穴部11への挿入設置は、配管2と一緒に行うことで屋内側15、屋外側17のどちらからでもできる。
【0057】
よって、建物1の据付後に配管2の基礎貫通作業を行う場合であっても、屋内側15の押さえを、建物1の床下へ潜って屋内側15から発泡材16を単体で隙間12内に設置するなどの作業を行う必要がなくなり、その分、作業性を良くできる。
【0058】
また、屋外側17の押さえをモルタル18にすることで、モルタル18は基礎4と同じ塗装ができるため、モルタル18に基礎4と同じ塗装を施すことにより、モルタル18と基礎4との区別が付かないようにして基礎4の外観品質を確保、向上することができる。
【0059】
(作用効果 2)配管2の基礎貫通構造は、発泡材16を、配管2の外周面に取付けた状態で、配管2と共に貫通穴部11に設置しても良い。これにより、発泡材16が外周面に取付けられて一体となった配管2を、例えば、屋外側17から貫通穴部11へ挿入配置するだけで、発泡材16を屋外側17から容易かつ確実に隙間12内に設置できるようになる。この際、発泡材16が配管2に取付けられることで、配管2に印を付けておくだけで、発泡材16を隙間12内の適正な位置に配置することができるので、発泡材16の位置調整も容易である。
【0060】
(作用効果 3)配管2の基礎貫通構造は、発泡材16を粘着テープ25で配管2の外周面に貼付けるようにしても良い、これにより、発泡材16を粘着テープ25で配管2の外周面に貼付けるだけで、簡単、確実に発泡材16を配管2の外周面に取付けることができる。よって、発泡材16を配管2に取付ける手間を削減することができる。そして、発泡材16を粘着テープ25で貼付けた配管2を、貫通穴部11へ発泡材16と共に(屋外側17からまたは屋内側15から)挿入することで、発泡材16は、隙間12内の適正な位置に正確に設置できるようになる。
【0061】
(作用効果 4)基礎貫通配管の施工方法は、配管2の外周面に発泡材16を取付け、外周面に発泡材16を取付けた配管2を、基礎4に形成された貫通穴部11へ挿通配置することで、発泡材16を貫通穴部11の内部に位置させて、発泡材16で貫通穴部11と配管2との間の隙間12を周方向に塞ぎ、隙間12内に、発泡材16よりも屋外側17に位置するように止水材13を設置し、隙間12内の止水材13よりも屋外側17にモルタル18を打設するようにしても良い。これにより、発泡材16は、止水材13の屋内側15の押さえとして、隙間12内へ容易に設置することができるので、建物1の据付後であっても、配管2の基礎貫通作業を屋外側17から容易に行えるようになる。また、基礎貫通配管の施工方法によれば、上記した配管2の基礎貫通構造と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0062】
2 配管
4 基礎
11 貫通穴部
12 隙間
13 止水材
15 屋内側
16 発泡材
17 屋外側
18 モルタル
25 粘着テープ