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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】胴縁取付け方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20241107BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20241107BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
E04B1/58 510C
E04B2/56 633A
E04B2/56 642B
E04F13/08 101N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020200364
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022088105
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】米森 秀明
(72)【発明者】
【氏名】大槻 由君
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 弘光
(72)【発明者】
【氏名】瀬之口 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊司
(72)【発明者】
【氏名】田中 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳二
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-033341(JP,A)
【文献】特開平05-331937(JP,A)
【文献】実開平06-071631(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
E04B 2/56-2/70,2/88-2/96
E04F 13/08
E02D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床スラブから立ち上がる立ち上がり部の上面に横胴縁を定着させる胴縁取付け方法であって、
隣接する一対の柱に前記横胴縁を適正姿勢に調整して支持させる先付け調整工程と、前記先付け調整工程の後に、前記横胴縁を前記立ち上がり部の上面に定着させる横胴縁定着工程と、を実行し、
前記先付け調整工程では、前記横胴縁に上端部を固定した定着具としてのアンカーボルトを、前記立ち上がり部が構築される構築空間に下端部が浮くように突出させた状態で、前記横胴縁を前記一対の柱に支持させ、
前記横胴縁定着工程では、前記アンカーボルトを埋設するように前記構築空間にコンクリートを打設して前記立ち上がり部を構築することで前記横胴縁を前記適正姿勢で前記立ち上がり部に定着させる胴縁取付け方法。
【請求項2】
平面視で前記横胴縁が延びる方向に対して直交する方向を調整方向として、
前記横胴縁と前記柱とを接合する第1接合部には、前記柱に対して前記横胴縁を前記調整方向に調整可能にボルト接合するための前記調整方向に長い長孔が備えられ、
前記横胴縁と前記定着具とを接合する第2接合部には、前記横胴縁に対して前記定着具を前記調整方向に調整不能にボルト接合するための丸穴が備えられている請求項1に記載の胴縁取付け方法。
【請求項3】
前記立ち上がり部における室内側の部分に、前記横胴縁の底面よりも上側に突出する突出段部を有している請求項1又は2に記載の胴縁取付け方法。
【請求項4】
前記横胴縁に、当該横胴縁から上側に延びるように複数の縦胴縁が地組みされて、最下段の胴縁ユニットが構成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の胴縁取付け方法。
【請求項5】
前記アンカーボルトを、前記立ち上がり部とその下方の前記床スラブとに亘る状態で埋設する請求項1から4のいずれか一項に記載の胴縁取付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床スラブから立ち上がる立ち上がり部の上面に横胴縁を定着させる胴縁取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、隣接する一対の柱(12)に横胴縁(14)を適正姿勢に調整して支持させる胴縁取付け方法が開示されている。このような胴縁取付け方法において、最下段の横胴縁については、床スラブから立ち上がる立ち上がり部の上面に定着させる状態で取り付ける方法が用いられる場合がある。説明を加えると、立ち上がり部が構築される構築空間にコンクリートを打設して立ち上がり部を構築し、横胴縁を隣接する一対の柱に適正姿勢に調整して支持させると共にその立ち上がり部に打ち込まれたアングルに横胴縁を接合して、床スラブから立ち上がる立ち上がり部の上面に横胴縁を定着させる方法が用いられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平07-310381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような胴縁取付け方法では、横胴縁を一対の柱に支持させる前に立ち上がり部を構築する必要があるため、工期に遅れが生じ易かった。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、工期の遅れが生じ難い胴縁取付け方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、床スラブから立ち上がる立ち上がり部の上面に横胴縁を定着
させる胴縁取付け方法であって、
隣接する一対の柱に前記横胴縁を適正姿勢に調整して支持させる先付け調整工程と、前記先付け調整工程の後に、前記横胴縁を前記立ち上がり部の上面に定着させる横胴縁定着工程と、を実行し、前記先付け調整工程では、前記横胴縁に上端部を固定した定着具としてのアンカーボルトを、前記立ち上がり部が構築される構築空間に下端部が浮くように突出させた状態で、前記横胴縁を前記一対の柱に支持させ、前記横胴縁定着工程では、前記アンカーボルトを埋設するように前記構築空間にコンクリートを打設して前記立ち上がり部を構築することで前記横胴縁を前記適正姿勢で前記立ち上がり部に定着させる点にある。
【0007】
本構成によれば、先付け調整工程では、横胴縁を一対の柱に適正姿勢で支持させ、その横胴縁に固定した定着具を構築空間に突出させる。このような状態で横胴縁定着工程を実行して、構築空間にコンクリートを打設することで、立ち上がり部を構築すると共にその構築した立ち上がり部に定着具を埋設させて、適正姿勢の横胴縁を立ち上がり部の上面に定着させることができる。
そして、このように横胴縁定着工程の前に先付け調整工程を実行することで、構築空間にコンクリートを打設して立ち上がり部を構築する前に、横胴縁を一対の柱に適正姿勢で支持させることができるので、横胴縁の上側に縦胴縁や別の横胴縁を取り付ける作業が行うことができ、工期に遅れが生じ難くなる。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、平面視で前記横胴縁が延びる方向に対して直交する方向を調整方向として、前記横胴縁と前記柱とを接合する第1接合部には、前記柱に対して前記横胴縁を前記調整方向に調整可能にボルト接合するための前記調整方向に長い長孔が備えられ、前記横胴縁と前記定着具とを接合する第2接合部には、前記横胴縁に対して前記定着具を前記調整方向に調整不能にボルト接合するための丸穴が備えられている点にある。
【0009】
本構成によれば、長孔を用いて横胴縁を一対の柱の夫々に接合することで、一対の柱の夫々に対する横胴縁の調整方向の位置を調整することができるため、横胴縁を適正姿勢に調整した状態で一対の柱に支持させることができる。また、丸穴を用いて横胴縁と定着具とを接合することで、定着具を横胴縁に対して接合強度が高い状態でボルト接合することができる。
【0010】
本発明の第3特徴構成は、前記立ち上がり部における室内側の部分に、前記横胴縁の底面よりも上側に突出する突出段部を有している点にある。
【0011】
本構成によれば、立ち上がり部の突出段部を水返しとして機能させることができ、立ち上がり部より室内側に雨水等の水が浸入することを防止することができる。
【0012】
本発明の第4特徴構成は、前記横胴縁に、当該横胴縁から上側に延びるように複数の縦胴縁が地組みされて、最下段の胴縁ユニットが構成されている点にある。
【0013】
本構成によれば、地組みにより横胴縁と複数の縦胴縁とを最下段の胴縁ユニットにユニ
ット化することができるため、鉄骨建て方の工数を少なくできる。
本発明の第5特徴構成は、前記アンカーボルトを、前記立ち上がり部とその下方の前記床スラブとに亘る状態で埋設する点にある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】胴縁取付け構造の正面図
図2】横胴縁と柱との接合箇所を示す正面図
図3】横胴縁と柱との接合箇所を示す側面図
図4】横胴縁と柱との接合箇所を示す平面図
図5】横胴縁と縦胴縁との接合箇所を示す正面図
図6】横胴縁と縦胴縁との接合箇所を示す側面図
図7】横胴縁定着工程を実行する前の胴縁取付け構造の正面図
図8】胴縁ユニットの正面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1には、床スラブ1から立ち上がる立ち上がり部2の上面に横胴縁3を定着させる胴縁取付け構造が示されている。横胴縁3は、隣接する一対の柱4に適正姿勢に調整した状態で支持されていると共に、立ち上がり部2の上面に定着されている。そして、横胴縁3には、複数の縦胴縁5が接合されている。
【0016】
以下、胴縁取付け構造について説明するが、横胴縁3が延びる方向を幅方向Yとすると共に、幅方向Yの一方側を左側Y1とし、左側Y1の反対側を右側Y2とする。また、平面視で幅方向Yに対して直交する方向(柱4と横胴縁3とが並ぶ面外方向)を調整方向Xとし、調整方向Xの一方側(柱4に対して横胴縁3が存在する側)を外側X1とし、その反対側(横胴縁3に対して柱4が存在する側)を内側X2(室内側)として説明する。
【0017】
図3及び図6に示すように、立ち上がり部2は、床スラブ1の外側X1の端部から上側Z1に向けて立ち上がるように構築されている。また、図6に示すように、立ち上がり部2における内側X2の部分に、横胴縁3の底面よりも上側Z1に突出する突出段部2Aを有している。突出段部2Aは、立ち上がり部2における内側X2の端部にあり、横胴縁3よりも内側X2に位置している。つまり、立ち上がり部2における突出段部2Aより外側X1の部分の上面に、横胴縁3が定着されている。尚、本実施形態では、立ち上がり部2は、幅方向Yにおいて第1接合部材6が存在している範囲には構築されていない。そして、図6に仮想線で示すように型枠Fを設置して立ち上がり部2を構築する場合に、最も高い位置にある突出段部2Aが形成される空間に対して上側からコンクリートを流し込むことによって、立ち上がり部2の全体に適切にコンクリートを充填させ易くなる。また、このようにコンクリートを立ち上がり部2に適切に充填させるための突出段部2Aを立ち上がり部2の内側の端部に形成することで、この突出段部2Aを水返しとして兼用できる。
【0018】
図1及び図7に示すように、横胴縁3は、隣接する一対の柱4に適正姿勢に調整した状態で支持されている。横胴縁3の左側Y1の端部が、一対の柱4のうちの左側Y1にある柱4に第1接合部材6を用いて接合されている。横胴縁3の右側Y2の端部が、一対の柱4のうちの右側Y2にある柱4に第1接合部材6を用いて接合されている。また、横胴縁3の幅方向Yの端部には、第1接合部材6を用いて縦胴縁5が接合され、横胴縁3の幅方向Yの中間部には、第2接合部材7を用いて縦胴縁5が接合されている。図3に示すように、横胴縁3は、リップ溝型鋼によって構成されており、リップ部が上側Z1を向く姿勢で立ち上がり部2の上面に定着されている。尚、図1は、床スラブ1や立ち上がり部2を構築した後の状態を示しており、図7は、床スラブ1や立ち上がり部2を構築する前の状態を示している。
【0019】
図4に示すように、横胴縁3の幅方向Yの端部の夫々には、第1接合部材6に対してボルト接合するための第1横接合用丸孔11が形成されており、図2に示すように、横胴縁3は、その幅方向Yの端部の夫々が第1接合部材6にボルト接合されている。また、図1及び図7に示すように、横胴縁3の幅方向Yの中間部には、複数の第2接合部材7が幅方向Yに間隔を空けて並ぶ状態で溶接接合されている。また、横胴縁3の幅方向Yの中間部には、定着具8をボルト接合するための定着具用丸孔12(図6参照)が幅方向Yに間隔を空けて並ぶ状態で複数形成されている。定着具用丸孔12は、第2接合部材7に対して幅方向Yにずらした位置に形成されている。尚、図4では、ボルト接合するための孔を見易くするために第1ボルト36の図示を省略している。
【0020】
図2に示すように、縦胴縁5は、上下方向Zに沿う姿勢の2本のフレーム材9を幅方向Yに並べて構成されている。2本のフレーム材9は、リップ溝形鋼によって構成されており、リップ部が互いに反対側を向くように設置されている。図1に示すように、縦胴縁5として、第1接合部材6に接合される第1縦胴縁5Aと、第2接合部材7に接合される第2縦胴縁5Bとが備えられている。第1縦胴縁5Aは、第1接合部材6を用いて横胴縁3の幅方向Yの端部及び柱4に接合されている。第2縦胴縁5Bは、第2接合部材7を用いて横胴縁3の幅方向Yの中間部に接合されている。
【0021】
図2及び図3に示すように、第1縦胴縁5Aの下端部には、第1接合部材6に対してボルト接合するための第1縦接合用丸孔13が形成されている。図5及び図6に示すように、第2縦胴縁5Bの下端部には、第2接合部材7に対してボルト接合するための第2縦接合用丸孔14が形成されている。本実施形態では、第1縦接合用丸孔13と第2縦接合用丸孔14とは、同じ大きさに形成されると共に縦胴縁5における同じ位置に形成されている。つまり、第1縦胴縁5Aと第2縦胴縁5Bとは、設置する位置が異なるだけで同じ縦胴縁5が用いられている。尚、ボルト接合するための孔を見易くするために、図3では第3ボルト38の図示を省略し、図6では第4ボルト39の図示を省略している。
【0022】
図2から図4に示すように、第1接合部材6は、横胴縁3の左側Y1の端部が接合する横胴縁左用接合部16と、横胴縁3の右側Y2の端部が接合する横胴縁右用接合部17と、縦胴縁5(第1縦胴縁5A)の下側Z2の端部が接合する縦胴縁用接合部18と、柱4の外側X1に向く面に接合する柱用接合部19と、を備えている。
【0023】
説明を加えると、第1接合部材6は、調整方向X及び幅方向Yに沿う姿勢の第1板状部21と、第1板状部21の上側Z1に位置して調整方向X及び上下方向Zに沿う姿勢の第2板状部22と、第1板状部21の下側Z2に位置して幅方向Y及び上下方向Zに沿う姿勢の第3板状部23とを備えている。第2板状部22は、第1板状部21の幅方向Yの中央部から上側Z1に向けて延びるように備えられている。第3板状部23は、第1板状部21の内側X2の端部から下側Z2に向けて延びるように備えられている。
【0024】
図4に示すように、第1板状部21における第2板状部22より右側Y2の部分に、横胴縁3の左側Y1の端部に対して調整方向Xに位置調整可能にボルト接合するための調整方向Xに長い横胴縁左用長孔26が形成されている。この第1板状部21の右側Y2の部分によって横胴縁左用接合部16が構成されている。第1板状部21における第2板状部22より左側Y1の部分に、横胴縁3の右側Y2の端部に対して調整方向Xに位置調整可能にボルト接合するための調整方向Xに長い横胴縁右用長孔27が形成されている。この第1板状部21の左側Y1の部分よって横胴縁右用接合部17が構成されている。
【0025】
図3に示すように、第2板状部22に、縦胴縁5(第1縦胴縁5A)の下側Z2の端部に対して上下方向Zに位置調整可能にボルト接合するための上下方向Zに長い縦胴縁用長孔28が形成されている。この第2板状部22によって縦胴縁用接合部18が構成されている。また、第1板状部21の内側X2の端部と第2板状部22の内側X2の端部と第3板状部23とが柱4に溶接接合されている。これら第1板状部21の内側X2の端部と第2板状部22の内側X2の端部と第3板状部23とによって柱用接合部19が構成されている。
【0026】
図5及び図6に示すように、第2接合部材7は、横胴縁3の幅方向Yの中間部に接合する横胴縁中間用接合部31と、縦胴縁5の下側Z2の端部に接合する第2縦胴縁用接合部32とを備えている。
【0027】
説明を加えると、第2接合部材7は、調整方向X及び幅方向Yに沿う姿勢の第4板状部33と、第4板状部33の上側Z1に位置して調整方向X及び上下方向Zに沿う姿勢の第5板状部34とを備えている。第5板状部34は、第4板状部33における幅方向Yの一方側(本実施形態では右側Y2)の端部から上側Z1に向けて延びるように備えられている。
【0028】
そして、第4板状部33が横胴縁3の幅方向Yの中間部に溶接接合されている。この第4板状部33によって横胴縁中間用接合部31が構成されている。第5板状部34に、縦胴縁5(第2縦胴縁5B)の下側Z2の端部に対してボルト連結するための縦胴縁用丸孔35が形成されている。この第5板状部34によって第2縦胴縁用接合部32が構成されている。
【0029】
図2から図4に示すように、横胴縁3の左側Y1の端部と第1接合部材6とは、第1ボルト36を横胴縁3の第1横接合用丸孔11と第1接合部材6の横胴縁左用長孔26との双方に挿通させた状態でボルト接合されている。第1横接合用丸孔11における第1ボルト36の位置は調整方向Xに調整できないものの、横胴縁左用長孔26における第1ボルト36の位置は調整方向Xに調整できる。そのため、横胴縁3の左側Y1の端部と第1接合部材6とを接合する場合に、横胴縁左用長孔26における第1ボルト36の位置を調整方向Xに調整することで、第1接合部材6に対する横胴縁3の左側Y1の端部の位置を調整方向Xに調整可能となっている。
【0030】
横胴縁3の右側Y2の端部と第1接合部材6とは、第2ボルト37を横胴縁3の第1横接合用丸孔11と第1接合部材6の横胴縁右用長孔27との双方に挿通させた状態でボルト接合されている。第1横接合用丸孔11における第2ボルト37の位置は調整方向Xに調整できないものの、横胴縁右用長孔27における第2ボルト37の位置は調整方向Xに調整できる。そのため、横胴縁3の右側Y2の端部と第1接合部材6とを接合する場合に、横胴縁右用長孔27における第2ボルト37の位置を調整方向Xに調整することで、第1接合部材6に対する横胴縁3の右側Y2の端部の位置を調整方向Xに調整可能となっている。
【0031】
このように、横胴縁3と柱4とを接合する第1接合部41には、柱4に対して横胴縁3を調整方向Xに調整可能にボルト接合するための調整方向Xに長い長孔(横胴縁左用長孔26、及び、横胴縁右用長孔27)が備えられている。尚、第1接合部41は、横胴縁3の幅方向Yの端部や第1接合部材6の横胴縁左用接合部16及び横胴縁右用接合部17によって構成されている。
【0032】
図2及び図3に示すように、第1縦胴縁5Aの下側Z2の端部と第1接合部材6とは、第3ボルト38を第1縦胴縁5Aの第1縦接合用丸孔13と第1接合部材6の縦胴縁用長孔28との双方に挿通させた状態でボルト接合されている。第1縦接合用丸孔13における第3ボルト38の位置は上下方向Zに調整できないものの、縦胴縁用長孔28における第3ボルト38の位置は上下方向Zに調整できる。そのため、第1縦胴縁5Aの下側Z2の端部と第1接合部材6とを接合する場合に、縦胴縁用長孔28における第3ボルト38の位置を上下方向Zに調整することで、第1接合部材6に対する第1縦胴縁5Aの下側Z2の端部の位置を上下方向Zに調整可能となっている。
【0033】
このように、縦胴縁5と柱4とを接合する第3接合部43には、柱4に対して縦胴縁5を上下方向Zに調整可能にボルト接合するための上下方向Zに長い縦胴縁用長孔28が備えられている。尚、第3接合部43は、第1縦胴縁5Aの下側Z2の端部や第1接合部材6の縦胴縁用接合部18によって構成されている。
【0034】
図5及び図6に示すように、第2縦胴縁5Bの下側Z2の端部と第2接合部材7とは、第4ボルト39を第2縦胴縁5Bの第2縦接合用丸孔14と第2接合部材7の縦胴縁用丸孔35との双方に挿通させた状態でボルト接合されている。そのため、第2縦胴縁5Bの下側Z2の端部と第2接合部材7とをボルト接合する場合に、第2接合部材7に対する第2縦胴縁5Bの下側Z2の端部の位置を調整不能となっている。
【0035】
このように、縦胴縁5と横胴縁3とを接合する第4接合部44には、横胴縁3に対して縦胴縁5を上下方向Zに調整不能にボルト接合するための丸孔(第2縦接合用丸孔14及び縦胴縁用丸孔35)が備えられている。尚、第4接合部44は、第2縦胴縁5Bの下側Z2の端部や第2接合部材7の第2縦胴縁用接合部32によって構成されている。
【0036】
〔定着具〕
図6に示すように、定着具8は、横胴縁3の定着具用丸孔12を利用して横胴縁3に固定されている。横胴縁3を一対の柱4に支持させた状態では、定着具8は横胴縁3の下面から立ち上がり部2に向けて突出した状態となっている。そして、定着具8における横胴縁3の下面から下側Z2に突出した部分は、立ち上がり部2に埋設されている。換言すると、立ち上がり部2は、横胴縁3を埋設するように構築されている。本実施形態では、定着具8は、アンカーボルトによって構成されている。また、本実施形態では、定着具8は、立ち上がり部2と床スラブ1とに亘る状態で埋設されている。
【0037】
このように、横胴縁3と定着具8とを接合する第2接合部42には、横胴縁3に対して定着具8を調整方向Xに調整不能にボルト接合するための定着具用丸孔12(丸穴)が備えられている。尚、第2接合部42は、横胴縁3の幅方向Yの中間部によって構成されている。
【0038】
本実施形態では、適正姿勢を、平面視における立ち上がり部2に対する横胴縁3の調整方向Xの位置、及び、平面視における立ち上がり部2に対する横胴縁3の角度が適正となる姿勢としている。
【0039】
図8に示すように、横胴縁3に、当該横胴縁3から上側Z1に延びるように複数の縦胴縁5が地組みされて、最下段の胴縁ユニット45が構成されている。図8に示す胴縁ユニット45の例では、2本の横胴縁3と4本の縦胴縁5とを地組みした最下段の胴縁ユニット45を示している。この最下段の胴縁ユニット45の2本の横胴縁3のうちの下側Z2の横胴縁3は、立ち上がり部2の上面に定着させる横胴縁3である。また、4本の縦胴縁5は、いずれも第2縦胴縁5Bである。
【0040】
このように地組みされた胴縁ユニット45を一対の柱4に支持させる場合、胴縁ユニット45における下側Z2の横胴縁3については、横胴縁3の左側Y1の端部を、左側Y1の柱4に接合された第1接合部材6の横胴縁左用接合部16にボルト接合し、横胴縁3の右側Y2の端部を、右側Y2の柱4に接合された第1接合部材6の横胴縁右用接合部17にボルト接合して、横胴縁3を一対の柱4に支持させる。そして、このように横胴縁3の両端部を第1接合部材6にボルト接合する場合に、横胴縁3の両端部の夫々を調整方向Xの位置を調整した状態でボルト接合することで、横胴縁3を適正姿勢とすることができる。尚、図4に示す胴縁ユニット45には、定着具8を示していないが、胴縁ユニット45を地組みする際に横胴縁3に定着具8を固定し、定着具8を備えた胴縁ユニット45を一対の柱4に支持するようにしてもよい。
【0041】
次に、床スラブ1から立ち上がる立ち上がり部2の上面に横胴縁3を定着させる胴縁取付け方法について説明する。
胴縁取付け方法では、先付け調整工程と横胴縁定着工程とを実行する。先付け調整工程は、隣接する一対の柱4に横胴縁3を適正姿勢に調整して支持させる工程である。横胴縁定着工程は、定着具8を埋設するように構築空間Sにコンクリートを打設して立ち上がり部2を構築することで横胴縁3を適正姿勢で立ち上がり部2に定着させる工程である。
【0042】
先付け調整工程について説明する。図7に示すように、先付け調整工程では、構築空間Sに立ち上がり部2を構築する前に、胴縁ユニット45を一対の柱4に支持させる。このとき、胴縁ユニット45の下側Z2の横胴縁3については、胴縁ユニット45の下側Z2の横胴縁3の左側Y1の端部を、第1接合部材6に対して調整方向Xに位置調整した状態で接合して左側Y1の柱4に支持させ、胴縁ユニット45の下側Z2の横胴縁3の右側Y2の端部を、第1接合部材6に対して調整方向Xに位置調整した状態で接合して右側Y2の柱4に支持させる。横胴縁3の両端部を第1接合部材6に対して調整方向Xに位置調整した状態で接合することで、隣接する一対の柱4に横胴縁3を適正姿勢で支持させる。そして、一対の柱4に支持された横胴縁3に固定された定着具8は、横胴縁3から構築空間Sに突出している。このように、先付け調整工程では、横胴縁3に固定した定着具8を、立ち上がり部2が構築される構築空間Sに突出させた状態で、横胴縁3を一対の柱4に適正姿勢で支持させる。そして、横胴縁3は一対の柱4に適正姿勢で支持されているため、この後、構築空間Sに立ち上がり部2を構築する前に、一対の柱4に支持させた胴縁ユニット45の上側Z1に、別の胴縁ユニットを取り付けることが可能となっている。
【0043】
先付け調整工程を実行した後であって横胴縁定着工程を実行する前は、図7に示すように、立ち上がり部2が構築されておらず、この立ち上がり部2が構築される空間を構築空間Sとしている。本実施形態では、立ち上がり部2に加えて、床スラブ1の少なくとも一部も構築されておらず、立ち上がり部2が構築される空間に加えて床スラブ1の一部が構築される空間も構築空間Sとしている。
【0044】
次に、横胴縁定着工程について説明する。先付け調整工程を実行した後は、図7に示すように、横胴縁3は適正姿勢で一対の柱4に支持され、横胴縁3に固定された定着具8は構築空間Sに突出しており、この状態で横胴縁定着工程を実行する。横胴縁定着工程では、図1に示すように、構築空間Sにコンクリートを打設して立ち上がり部2を構築することで、構築空間Sに突出していた定着具8を立ち上がり部2に埋設し、適正姿勢の横胴縁3をその姿勢のまま立ち上がり部2に定着させる。このように、横胴縁定着工程では、定着具8を埋設するように構築空間Sにコンクリートを打設して立ち上がり部2を構築することで横胴縁3を適正姿勢で立ち上がり部2に定着させる。
【0045】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0046】
(1)上記実施形態では、第1接合部41に、調整方向Xに長い長孔(横胴縁左用長孔26や横胴縁右用長孔27)を備える構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、第1接合部41に、調整方向Xに長い長孔に代えて、柱4に対して横胴縁3を幅方向Yに調整可能にボルト接合するために幅方向Yに長い長孔を形成してもよく、柱4に対して横胴縁3を上下方向Zに調整可能にボルト接合するために上下方向Zに長い長孔を備えてもよく、柱4に対して横胴縁3を位置調整不能にボルト接合するための丸孔を備えてもよい。
【0047】
(2)上記実施形態では、立ち上がり部2における内側X2の部分に突出段部2Aを形成する構成を例として説明した。しかし、このような構成に限定されない。例えば、立ち上がり部2における内側X2の部分に突出段部2Aを形成しなくてもよい。
【0048】
(3)上記実施形態では、横胴縁3と複数の縦胴縁5とを地組みして最下段の胴縁ユニット45にユニット化する例を説明したが、横胴縁3や縦胴縁5を地組みせずに、横胴縁3と縦胴縁5とを各別に柱4に支持させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 床スラブ
2 立ち上がり部
2A 突出段部
3 横胴縁
4 柱
8 定着具
12 定着具用丸孔(丸孔)
26 横胴縁左用長孔(長孔)
27 横胴縁右用長孔(長孔)
41 第1接合部
42 第2接合部
45 胴縁ユニット
S 構築空間
X 調整方向
X2 内側(室内側)
Y 幅方向(横胴縁が延びる方向)
Z1 上側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8