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特許7583597異形シリカ系微粒子分散液およびその製造方法
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  • 特許-異形シリカ系微粒子分散液およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】異形シリカ系微粒子分散液およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/143 20060101AFI20241107BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20241107BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20241107BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20241107BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
C01B33/143
B24B37/00 H
C09G1/02
C09K3/14 550D
H01L21/304 622B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020203938
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2022091234
(43)【公開日】2022-06-21
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 和洋
(72)【発明者】
【氏名】山田 大輔
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-137822(JP,A)
【文献】特開2009-149493(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131874(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/163992(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 -37/34
C01B 33/14 -33/159
C09G 1/02
C09K 3/14
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(a)~下記工程(f)を備える、異形シリカ系微粒子分散液の製造方法。
工程(a):珪酸アルカリ水溶液において、アルカリ金属に対するシリカのモル数の比が0.5以上10以下の範囲となるように調整し、必要に応じてアルカリを添加することで、SiO濃度を2質量%以上25質量%以下、かつ、イオン強度を0.4以上に調整して、種粒子前駆体分散液を得る工程
工程(b):前記工程(a)で得られた種粒子前駆体分散液を、温度40℃以上100℃未満の範囲で加熱熟成する工程
工程(c):前記工程(b)に続いて、加熱熟成した種粒子前駆体分散液に、酸性珪酸液を、種粒子前駆体分散液のシリカ量に対する酸性珪酸液のシリカ量のモル比([酸性珪酸液のシリカ量]/[種粒子前駆体分散液のシリカ量])が0.5以上10以下の範囲となるように添加して、種粒子分散液を得る工程
工程(d):前記工程(c)で得られた種粒子分散液を、必要に応じてアルカリを添加することで、SiO濃度を2質量%以上15質量%以下、かつ、イオン強度を0.25以上に調整する工程
工程(e):前記工程(d)に続いて、SiO濃度およびイオン強度を調整した種粒子分散液を、温度40℃以上100℃未満の範囲で加熱熟成する工程
工程(f):前記工程(e)に続いて、加熱熟成した種粒子分散液に、酸性珪酸液を、種粒子分散液のシリカ量に対する酸性珪酸液のシリカ量のモル比([酸性珪酸液のシリカ量]/[種粒子分散液のシリカ量])が5以上20以下の範囲となるように添加して、異形シリカ系微粒子を含有する異形シリカ系微粒子分散液を得る工程
【請求項2】
前記工程(a)において、前記種粒子前駆体分散液を、必要に応じてアルカリを添加することで、SiO濃度を5質量%以上20質量%以下、かつ、イオン強度を0.4以上に調整する、請求項1に記載の異形シリカ系微粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
前記異形シリカ系微粒子の平均異形度が1.2以上10以下である、請求項1または請求項2に記載の異形シリカ系微粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
前記工程(b)および前記工程(d)で用いるアルカリが、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される少なくとも1種のイオン強度調整剤である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異形シリカ系微粒子分散液の製造方法。
【請求項5】
前記工程(a)~前記工程(f)のいずれでも、ハロゲン化アルカリを使用しない、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の異形シリカ系微粒子分散液の製造方法。
【請求項6】
下記[1]~[4]の条件を満たす異形シリカ系微粒子を含む、異形シリカ系微粒子分散液。
[1]動的光散乱法による平均粒子径が10nm以上300nm以下である。
[2]窒素吸着法により換算される平均粒子径が5nm以上200nm以下である。
[3]走査型電子顕微鏡写真を解析して求めた平均異形度が1.2以上10以下である。
[4]走査型電子顕微鏡写真を解析して求めた粒子径分布において、粒子径の小さい側からの個数割合([個数]/[全個数])が0超1/10以下の範囲の粒子の平均異形度を[A]とし、粒子径の小さい側からの個数割合([個数]/[全個数])が9/10超10/10以下の範囲の粒子の平均異形度を[B]としたとき、[B]/[A]の値が1.2以上である。
【請求項7】
前記[4]の条件において、[A]の値が1.13以上である、請求項6に記載の異形シリカ系微粒子分散液。
【請求項8】
前記異形シリカ系微粒子が、下記[5]の条件を満たす、請求項6または請求項7に記載の異形シリカ系微粒子分散液。
[5]走査型電子顕微鏡写真を解析して粒子の異形度を求めたとき、全粒子に占める異形粒子率([異形度が1.2以上の粒子の個数]/[全粒子の個数]×100%)が45%以上である。
【請求項9】
前記異形シリカ系微粒子が、下記[6]の条件を満たす、請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の異形シリカ系微粒子分散液。
[6]走査型電子顕微鏡写真を解析して、立体構造を備える粒子の個数をTとし、全粒子の個数をSとしたとき、立体構造率(T/S×100%)が10%以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形シリカ系微粒子分散液およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨用粒子としては、従来、シリカゾルやヒュームドシリカおよびヒュームドアルミナ等が用いられている。半導体の集積回路付基板の製造においては、シリコンウェハー上にアルミニウムの配線を形成し、この上に絶縁膜としてシリカ等の酸化膜を設ける。この場合に配線による凹凸が生じるので、この酸化膜を研磨して平坦化することが行われている。このような基板の研磨において、研磨後の表面は段差や凹凸がなく平坦で、さらにミクロな傷等もなく平滑であること、および高い研磨速度が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、7~1000nmの長径と0.3~0.8の短径/長径比を有するコロイダルシリカ粒子の数が全粒子中50%以上を占めるコロイダルシリカで研磨する半導体ウェーハーの研磨方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-150334号公報
【文献】特許第6207345号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の半導体ウェーハーの研磨方法においては、短径/長径比が0.3~0.8と、シリカ粒子の平均異形度が高いために、研磨速度を向上できる。しかしながら、シリカ粒子の平均異形度が高すぎる場合には、研磨後の基板にスクラッチが発生しやすく、基板表面の平滑性が低下するという点で問題があった。
また、特許文献2に記載の研磨方法においては、シリカ一次粒子が少なくとも4個以上クラスター化した異形シリカ粒子を使用することで高い研磨速度が得られることが示されている。しかしながら、少なくとも4個以上のクラスター化した構造を備えているため研磨速度は速いものの、クラスター構造を形成させる目的で凝集剤を使用しており、粗大粒子も多く、さらにクラスター化していない小さなサイズの球状粒子が多く含まれていることが判明した。その結果、粗大粒子によって研磨傷が発生しやすく、その一方で、研磨傷の修復効果や平滑化効果の高い、サイズの小さな粒子は真球状であり、研磨速度が遅いため、修復効果が小さいという点で改善の余地があることが判明した。
【0006】
本発明は、研磨スラリーとして使用した場合に、基板表面の平滑性を向上でき、かつ研磨速度を高くできる異形シリカ系微粒子分散液、並びに、異形シリカ系微粒子分散液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、下記工程(a)~下記工程(f)を備える、異形シリカ系微粒子分散液の製造方法が提供される。
下記工程(a)~下記工程(f)を備える、異形シリカ系微粒子分散液の製造方法。
工程(a):珪酸アルカリ水溶液において、アルカリ金属に対するシリカのモル数の比が0.5以上10以下の範囲となるように調整し、必要に応じてアルカリを添加することで、SiO濃度を2質量%以上25質量%以下、かつ、イオン強度を0.4以上に調整して、種粒子前駆体分散液を得る工程
工程(b):前記工程(a)で得られた種粒子前駆体分散液を、温度40℃以上100℃未満の範囲で加熱熟成する工程
工程(c):前記工程(b)に続いて、加熱熟成した種粒子前駆体分散液に、酸性珪酸液を、種粒子前駆体分散液のシリカ量に対する酸性珪酸液のシリカ量のモル比([酸性珪酸液のシリカ量]/[種粒子前駆体分散液のシリカ量])が0.5以上10以下の範囲となるように添加して、種粒子分散液を得る工程
工程(d):前記工程(c)で得られた種粒子分散液を、必要に応じてアルカリを添加することで、SiO濃度を2質量%以上15質量%以下、かつ、イオン強度を0.25以上に調整する工程
工程(e):前記工程(d)に続いて、SiO濃度およびイオン強度を調整した種粒子分散液を、温度40℃以上100℃未満の範囲で加熱熟成する工程
工程(f):前記工程(e)に続いて、加熱熟成した種粒子分散液に、酸性珪酸液を、種粒子分散液のシリカ量に対する酸性珪酸液のシリカ量のモル比([酸性珪酸液のシリカ量]/[種粒子分散液のシリカ量])が5以上20以下の範囲となるように添加して、異形シリカ系微粒子を含有する異形シリカ系微粒子分散液を得る工程
【0008】
本発明の一態様によれば、下記[1]~[4]の条件を満たす異形シリカ系微粒子を含む、異形シリカ系微粒子分散液が提供される。
[1]動的光散乱法による平均粒子径が10nm以上300nm以下である。
[2]窒素吸着法により換算される平均粒子径が5nm以上200nm以下である。
[3]走査型電子顕微鏡写真を解析して求めた平均異形度が1.2以上10.0以下である。
[4]走査型電子顕微鏡写真を解析して求めた粒子径分布において、粒子径の小さい側からの個数割合([個数]/[全個数])が0超1/10以下の範囲の粒子の平均異形度を[A]とし、粒子径の小さい側からの個数割合([個数]/[全個数])が9/10超10/10以下の範囲の粒子の平均異形度を[B]としたとき、[B]/[A]の値が1.2以上である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、研磨スラリーとして使用した場合に、基板表面の平滑性を向上でき、かつ研磨速度を高くできる異形シリカ系微粒子分散液、並びに、異形シリカ系微粒子分散液の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1で得られた異形シリカ系微粒子を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[異形シリカ系微粒子分散液の製造方法]
以下、本実施形態に係る異形シリカ系微粒子分散液の製造方法について説明する。
本実施形態に係る異形シリカ系微粒子分散液の製造方法は、下記の工程(a)~工程(f)を備えることを特徴としている。
なお、本明細書において、異形シリカ系微粒子とは、球状シリカ系粒子以外の形状が異形の粒子のことをいう。ここで、球状シリカ系粒子は、形状が球状のシリカ系粒子のことをいう。また、異形シリカ系微粒子としては、球状シリカ系粒子が粉砕されたシリカ一次微粒子や、シリカ一次微粒子が連結した粒子、シリカ一次微粒子が連結した粒子を更にシリカで粒子成長させた形状等、球状以外の形状の粒子が全て挙げられる。シリカ一次微粒子が連結したとは、隣接するシリカ一次微粒子の間に生成した結合によって、隣接するシリカ一次微粒子同士が互いに固定化したことをいう。ここで結合の種類は特に限定されるものではないが、例えば隣接するシリカ一次微粒子のそれぞれの表面シラノール基同士の縮合反応により生じたシロキサン結合等の化学的結合を挙げられる。
【0012】
[工程(a)]
工程(a)は、珪酸アルカリ水溶液において、アルカリ金属に対するシリカのモル数の比が0.5以上10以下の範囲となるように調整し、必要に応じてアルカリを添加することで、SiO濃度を2質量%以上25質量%以下、かつ、イオン強度を0.4以上に調整して、種粒子前駆体分散液を得る工程である。
種粒子前駆体分散液におけるアルカリ金属に対するシリカのモル数の比が0.5未満の場合、アルカリ金属を多量に添加する必要があり、非経済的である。また、凝集し粗大な粒子が生じやすいため沈降が生じやすく、単分散した種粒子が生成し難いという点で問題がある。他方、アルカリ金属に対するシリカのモル数の比が10を超えると、生成する種粒子のサイズが非常に小さくなり、研磨用として必要なサイズに粒子成長させる手間が非常にかかり非経済的であること、また粒子成長幅が大きくなるため、得られる異形粒子の異形度が低下するという点で問題がある。また、同様の観点から、アルカリ金属に対するシリカのモル数の比は、1以上5以下であることが好ましい。
【0013】
珪酸アルカリ水溶液におけるアルカリ金属としては、カリウムおよびナトリウム、リチウム等が挙げられる。珪酸アルカリ水溶液において、SiO濃度およびアルカリ濃度(AO濃度)は、特に限定されない。例えば、SiO濃度は、2質量%以上25質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。AO濃度は、0.5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、2質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
【0014】
種粒子前駆体分散液におけるSiO濃度が2質量%未満では、得られる種粒子の異形度が低下してしまう。他方、このSiO濃度が25質量%を超えると、凝集が進み、沈殿や粗大粒子が生じるという点で問題がある。また、同様の観点から、このSiO濃度は、5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、8質量%以上18質量%以下であることがより好ましい。
【0015】
種粒子前駆体分散液におけるイオン強度が0.4未満では、イオン強度が不足するため、種粒子前駆体や工程(b)および(c)等で生成した核粒子の会合が進まないため、種粒子の異形度が低下する。また、同様の観点から、このイオン強度は、0.8以上2.5以下であることが好ましく、1.2以上2.0以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、分散液におけるイオン強度は、下式から算出される値を意味するものとする。なお、ここでイオン強度の計算に用いる元素は、粒子の凝集や会合に大きく影響を及ぼすアルカリ金属とアルカリ土類金属、ハロゲンのみをいう。
【0016】
【数1】
【0017】
ここで、式中のJはイオン強度を表す。Ciは系中のアルカリ金属とアルカリ土類金属、ハロゲンのモル濃度を表し、Ziは各イオンの価数を表す。
なお、各イオンのモル濃度は、各物質が溶解した液のpHにおいて解離する物質のイオン濃度であり、各物質の酸解離定数pKaあるいは塩基解離定数pKbを用いて算出する。例えば、水中でA(-)とB(+)とに解離する塩を、分散液に添加する場合は、酸AH、塩基BOHとに分け、A(-)とH(+)、およびB(+)とOH(-)各々のイオン濃度を算出する。また、pH調整等で使用する酸についても同様で、AHをA(-)とH(+)に分けて、それぞれイオン濃度を算定し、上記計算式にあてはめて算出する。
【0018】
アルカリとしては、適宜公知のアルカリを用いることができる。また、アルカリとしては、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される少なくとも1種のイオン強度調整剤を用いることが好ましい。
【0019】
[工程(b)]
工程(b)は、前記工程(a)で得られた種粒子前駆体分散液を、温度40℃以上100℃未満の範囲で加熱熟成する工程である。
この工程(b)により、分散液中のシリカ溶解度の均一化や種粒子前駆体の均一化等の溶液中の均質化等を行うことができる。本明細書においては、この安定化させる操作をシーディングと称する場合がある。
【0020】
加熱熟成する際の種粒子前駆体分散液におけるpHは、種粒子前駆体分散液におけるイオン強度を高めるという観点から、10以上であることが好ましく、11以上であることが好ましい。
【0021】
加熱熟成する際の加熱温度が40℃未満では、シーディングの効果が得られない。他方、この加熱温度が100℃以上であると、反応液が沸騰するため安定的に生産できないという点で問題がある。また、同様の観点から、加熱熟成する際の温度は、60℃以上95℃以下であることが好ましい。
加熱熟成する際の熟成時間は、シーディングの効果の観点から、20分間以上120分間以下であることが好ましく、60分間以上100分間以下であることがより好ましい。
【0022】
アルカリとしては、適宜公知のアルカリを用いることができる。また、アルカリとしては、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される少なくとも1種のイオン強度調整剤を用いることが好ましい。
【0023】
[工程(c)]
工程(c)は、前記工程(b)に続いて、加熱熟成した種粒子前駆体分散液に、酸性珪酸液を、種粒子前駆体分散液のシリカ量に対する酸性珪酸液のシリカ量のモル比([酸性珪酸液のシリカ量]/[種粒子前駆体分散液のシリカ量])が0.5以上10以下の範囲となるように添加して、種粒子分散液を得る工程である。
種粒子前駆体分散液のシリカ量に対する酸性珪酸液のシリカ量のモル比が0.5未満では、シリカ量が不足するため種粒子が生成し難く、仮に種粒子が生成したとしてもサイズが小さく安定性も悪いという点で問題がある。他方、このシリカ量のモル比が10を超えると、種粒子の異形度が低下するという点で問題がある。また、同様の観点から、このシリカ量のモル比は、0.7以上5以下であることが好ましく、1以上2以下であることがより好ましい。
【0024】
酸性珪酸液を添加する際の保持温度は、酸性珪酸液の溶解と粒子への沈着促進という観点から、40℃以上100℃未満であることが好ましく、60℃以上95℃以下であることがより好ましい。
酸性珪酸液を添加する際の添加時間は、1時間未満の場合は、酸性珪酸液の添加速度が速すぎるため、自己核生成しやすい傾向にある。他方、15時間を超えると生産性が低下する傾向にある。また、同様の観点から、この添加時間は、2時間以上8時間以下であることがより好ましい。
酸性珪酸液を添加した後の保持時間は、10分間以上120分間以下であることが好ましい。
得られる種粒子分散液において、種粒子の動的光散乱法による平均粒子径は、工程(d)(e)で研磨用として必要なサイズに粒子成長させるが、種粒子が5nm未満の場合は、粒子成長幅をかなり大きくさせる必要があるため、異形度が低下する傾向にある。他方、100nm超の場合は、粒子成長後にサイズが大きくなり過ぎるため沈降しやすくなるという問題がある。また、同様の観点から、種粒子の動的光散乱法による平均粒子径は、10nm以上50nm以下であることがより好ましい。
【0025】
酸性珪酸液としては、珪酸アルカリ(珪酸アルカリ金属および珪酸アンモニウム等)の水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリし、得られる酸性珪酸液を使用できる。酸性珪酸液のSiO濃度は、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上7質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
[工程(d)および工程(e)]
工程(d)は、前記工程(c)で得られた種粒子分散液を、必要に応じてアルカリを添加することで、SiO濃度を2質量%以上15質量%以下、かつ、イオン強度を0.25以上に調整する工程である。
ここで、アルカリとしては、工程(b)で用いるアルカリと同様である。
工程(e)は、前記工程(d)に続いて、SiO濃度およびイオン強度を調整した種粒子分散液を、温度40℃以上100℃未満の範囲で加熱熟成する工程である。
【0027】
SiO濃度を調整した種粒子分散液におけるSiO濃度が2質量%未満では、濃度が薄いため生産性が低下する。他方、このSiO濃度が15質量%を超えると、凝集が進み過ぎて沈殿や粗大粒子が生じるという点で問題がある。また、同様の観点から、このSiO濃度は、3質量%以上10質量%以下であることが好ましく、4質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
イオン強度を調整した種粒子分散液におけるイオン強度が0.25未満では、異形シリカ系微粒子が成長するほど、異形度が低下してしまう。また、同様の観点から、このイオン強度は、0.3以上0.7以下であることが好ましい。
【0029】
加熱熟成する際の種粒子分散液におけるpHは、種粒子分散液におけるイオン強度を高めるという観点から、10以上であることが好ましい。
【0030】
加熱熟成する際の加熱温度が40℃未満では、シーディングの効果が得られない。他方、この加熱温度が100℃以上であると、反応液が沸騰し、安定して生産できないという点で問題がある。また、同様の観点から、加熱熟成する際の温度は、80℃以上100℃未満であることが好ましい。
加熱熟成する際の熟成時間は、シーディングの効果の観点から、20分間以上120分間以下であることが好ましく、20分間以上60分間以下であることがより好ましい。
【0031】
[工程(f)]
工程(f)は、前記工程(e)に続いて、加熱熟成した種粒子分散液に、酸性珪酸液を、種粒子分散液のシリカ量に対する酸性珪酸液のシリカ量のモル比([酸性珪酸液のシリカ量]/[種粒子分散液のシリカ量])が5以上20以下の範囲となるように添加して、異形シリカ系微粒子を含有する異形シリカ系微粒子分散液を得る工程である。
ここで、酸性珪酸液としては、工程(c)で用いる酸性珪酸液と同様である。
【0032】
種粒子分散液のシリカ量に対する酸性珪酸液のシリカ量のモル比が5未満では、粒子が所望のサイズに成長しないため研磨速度が遅くなるという点で問題がある。他方、このシリカ量のモル比が20を超えると、粒子を成長させ過ぎるため、粒子異形度が低下して研磨速度が遅くなるという点で問題がある。また、同様の観点から、このシリカ量のモル比は、6以上15以下であることが好ましい。
【0033】
酸性珪酸液を添加する際の保持温度は、酸性珪酸液の溶解と粒子への沈着反応の促進という観点から、40℃以上100℃未満であることが好ましく、80℃以上100℃未満であることが好ましい。
酸性珪酸液を添加する際の添加時間は、短すぎると珪酸が自己核生成するため好ましくない。また添加時間が長すぎると、経済性が悪化するため、5時間以上36時間以下であることが好ましく、8時間以上24時間以下であることがより好ましい。
酸性珪酸液を添加した後の保持時間は、10分間以上120分間以下であることが好ましい。
【0034】
この工程(f)においては、アルカリ金属に対するシリカのモル数の比が30以上150以下であることが好ましく、35以上130以下であることがより好ましく、40以上120以下であることが特に好ましい。なお、アルカリ金属に対するシリカのモル数の比とは、工程(f)の終了時において、シリカの総モル数をアルカリ金属の総モル数で割った値である。
アルカリ金属に対するシリカのモル数の比が前記下限未満となると、アルカリ金属に対するシリカの量が不足していることになり、反応液のpHが高くなり過ぎるため、粒子の凝集が生じる傾向にある。また、仮に凝集が生じない場合でも、経時安定性が悪く、経時変化で粒子径が大きくなったり、凝集が生じる場合がある。他方、アルカリ金属に対するシリカのモル数の比が150を超えると、アルカリ金属に対するシリカの量が多すぎることになり、反応液中のpHが低くなるため、粒子成長のために添加した酸性珪酸液が粒子成長に寄与せず、自己核生成が生じる傾向にある。
【0035】
[各工程の作用効果]
工程(e)および(f)では、工程(c)で得られた種粒子をさらに会合させ、所望のサイズや異形度に調整し、かつ粒子成長させる工程である。この工程では種粒子を含む溶液にアルカリ金属等を添加して系内のイオン強度を所定値以上に調整し、さらに種粒子の濃度、すなわち工程(e)におけるシリカ濃度を所定範囲内に調整することで、種粒子を会合させ、会合度を制御できる。次いで、工程(f)で、この溶液に酸性珪酸液を添加することで、会合させた粒子のネック部をシリカで埋めることで会合構造を補強しながら、所望のサイズ、異形度を備える粒子を得ることができる。
会合させた種粒子は酸性珪酸液で粒子成長させているため、種粒子同士が強固に結合している。そのため研磨に使用しても粒子が崩壊することはない。また異形粒子率が高く、さらに異形形状によって、基板との接触面積が高いため、高い研磨速度を示す。さらにサイズの小さい粒子の異形度も高いことから、大粒子によって生じた研磨傷の修復効果が高い。
【0036】
この際、工程(e)のシリカ濃度が2%未満では種粒子が会合し難く、仮に会合したとしても異形度の低い粒子しか得られない。また反応濃度が低いため生産性効率も悪い。シリカ濃度が15%超の場合は、高濃度であるため生産効率は高いが、種粒子の凝集が生じ、粗大な粒子が生成し沈殿が生じる傾向にある。
また、イオン強度調整剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン及びこれらの塩や水酸化物等が挙げられるが、工程(e)で使用するイオン強度調整剤はアルカリ金属の水酸化物が好ましい。アルカリ金属の水酸化物は、イオン強度調整とともに核生成や粒子成長の触媒を兼ねることができるからである。アルカリ金属の水酸化物としてはNaOH、KOHを添加してもよく、原料の珪酸アルカリから持ち込まれるアルカリ金属の水酸化物を利用してもよい。
【0037】
一方、KClやCaCl等のハロゲン化物の塩(ハロゲン化アルカリ)をイオン強度調整剤として使用した場合、これらは凝集剤として作用するため、種粒子の凝集が生じ、粗大粒子や沈殿が生じる傾向にある。沈殿が生じないように凝集剤を少量添加して、反応をさせると異形粒子は得られるものの、凝集剤量が少ないため、一部の粒子は異形化するものの、異形でない真球や略真球粒子が多く存在する。そのため、得られた異形粒子は、異形粒子率が低くなる傾向にある。すなわち、粒子径の小さい粒子は異形度が低い粒子となり、粒子径が大きな凝集粒子は異形度が高くなり、異形度の二極化が生じる。通常、サイズの小さな粒子は研磨基板の平滑化効果が高いが、分布が広い粒子の場合、大粒子と小粒子が共存し小粒子は研磨速度が低いため、大粒子によって悪化した表面粗さの平滑化効果が小さくなる。その結果、研磨傷が多発しやすい傾向にある。
イオン強度が0.25未満では、イオン強度が不足するため粒子の会合が進まず、仮に会合したとしても異形度の低い粒子しか得られない。また、イオン強度が0.7以上の場合は、凝集が生じ沈殿が生じる傾向にある。
【0038】
[異形シリカ系微粒子分散液]
次に、本実施形態に係る異形シリカ系微粒子分散液について説明する。
本実施形態に係る異形シリカ系微粒子分散液は、下記[1]~[4]の条件を満たす異形シリカ系微粒子を含むことを特徴としている。
本実施形態に係る異形シリカ系微粒子分散液は、前記本実施形態に係る異形シリカ系微粒子分散液の製造方法により作製できる。
【0039】
[条件1]
条件1は、動的光散乱法による平均粒子径が10nm以上300nm以下であることである。
動的光散乱法による平均粒子径が10nm未満では、研磨スラリーとして使用した場合に研磨速度が低くなってしまう。他方、この平均粒子径が300nmを超えると、基板表面の粗さやうねり、およびスクラッチ等が悪化するという点で問題がある。また、同様の観点から、この平均粒子径は、30nm以上250nm以下であることが好ましく、50nm以上200nm以下であることがより好ましい。
【0040】
[条件2]
条件2は、窒素吸着法により換算される平均粒子径が5nm以上200nm以下であることである。
窒素吸着法により換算される平均粒子径が5nm未満では、必要な研磨速度が得られにくく、さらに小さな粒子が基板に残留しやすい。他方、この平均粒子径が200nmを超えると、スクラッチが発生したり、研磨後の基板の表面粗さが悪化したり、うねりが悪化する。また、同様の観点から、この平均粒子径は、10nm以上150nm以下であることが好ましく、20nm以上100nm以下であることがより好ましい。
【0041】
[条件3]
条件3は、走査型電子顕微鏡写真を解析して求めた平均異形度が1.2以上10以下であることである。
走査型電子顕微鏡写真を解析して求めた平均異形度が1.2未満では、異形度が不足しており、基板との接触面積が小さいため、研磨スラリーとして使用した場合に研磨速度が低くなってしまう。他方、この平均異形度が10を超えると、そのような粒子は製造プロセスが複雑であるため工業的に安定的な生産が難しく、また経済性も悪い。仮に異形度が10以上の粒子が得られとしても研磨速度はそれ以上向上せず、スクラッチが発生しやすいという点で問題がある。また、同様の観点から、この平均異形度は、1.2以上5以下であることがより好ましい。
【0042】
本明細書において、平均異形度は、走査型電子顕微鏡写真を解析して求められる。具体的には、走査型電子顕微鏡写真を観察し、各粒子に外接する外接長方形のうち最も面積が小さい長方形を求める。そして、外接長方形における長辺および短辺の長さを求め、短辺に対する長辺の比([長辺]/[短辺])を異形度とする。各粒子について異形度を算出し、これらの平均値を平均異形度として算出できる。
【0043】
[条件4]
条件4は、走査型電子顕微鏡写真を解析して求めた粒子径分布において、粒子径の小さい側からの個数割合([個数]/[全個数])が0超1/10以下の範囲の粒子の平均異形度を[A]とし、粒子径の小さい側からの個数割合([個数]/[全個数])が9/10超10/10以下の範囲の粒子の平均異形度を[B]としたとき、[B]/[A]の値が1.2以上であることである。
なお、粒子径の個数割合を求める際に用いた粒子径は、面積等価円の直径を用いた。面積等価円直径とは、走査型電子顕微鏡写真を解析して求められる。具体的には、走査型電子顕微鏡写真を観察し、各粒子の面積を求め、この面積と等しい円の直径を面積等価円直径として用いた。
[B]/[A]の値が1.2以上であれば、スクラッチを抑制しつつ、研磨速度を向上できる。
ここで、[A]は、比較的に小さな粒子群の平均異形度であり、[B]は、比較的に大きな粒子群の平均異形度である。そのため、[B]/[A]の値が、1以上であるということは、大きな粒子であるほど、異形度が大きくなる傾向があることを示す。
また、平均異形度が所定の範囲(1.2以上10以下)にあり、さらにB/A比が1.2以上の場合は、全体的に異形度が高く、さらに小粒子側成分も大粒子成分の異形度も高いことを示す。
通常、小さな粒子と大きな粒子は研磨性能への影響が大きい。サイズの大きな粒子は研磨速度が非常に高く、異形度が高まるにつれて研磨速度も向上するため、砥粒全体の研磨速度向上への寄与が非常に大きい。しかし、その一方で、サイズの大きな粒子は基板表面の粗さを悪化させたり、研磨傷の原因となる傾向にある。
一方、サイズの小さな粒子は研磨速度が低いため、砥粒全体の研磨速度を低下させるという意味で影響が大きい。その一方で、基板表面の平滑化への寄与が大きく、粗大粒子等が原因で生じたスクラッチの修復効果や平滑化の効果がある。従って、サイズの小さな粒子の異形度が適度に高ければ、表面粗さやスクラッチ等の修復効果が高まり、更に研磨速度の底上げにもなることから、小粒子の異形度が高いことが望ましい。
従って、小粒子の異形度が高く、さらにB/A比が高い場合は、研磨速度は十分に高く、更に平滑でスクラッチの少ない基板表面を得ることができる。
このようなメカニズムにより、[B]/[A]の値が1.2以上であれば、スラッチを抑制しつつ、研磨速度を向上できるものと本発明者らは推察する。
また、同様の観点から、[B]/[A]の値は、1.2以上2以下であることが好ましく、1.2以上1.80以下であることがより好ましい。
また、上記の観点から、[A]の値は、1.13以上であることが好ましく、1.15以上1.8以下であることがより好ましい。[A]の値が1.13未満の場合、異形度が低く研磨速度が遅いため、表面平滑効果が小さくなるからである。他方、[A]の値が1.8超の場合、異形度が高いため研磨速度が高くなるが、平滑化効果よりも粗さを悪化させる効果が大きくなるからである。
【0044】
[条件5]
条件5は、走査型電子顕微鏡写真を解析して粒子の異形度を求めたとき、全粒子に占める異形粒子率([異形度が1.2以上の粒子の個数]/[全粒子の個数]×100%)が45%以上であることである。なお、本実施形態においては、この条件5を満たすことがより好ましい。
全粒子に占める異形粒子率が45%以上であれば、研磨速度を更に向上できる。また、同様の観点から、この異形粒子率は、48%以上95%以下であることが好ましく、50%以上90%以下であることがより好ましい。異形粒子率が95%超の場合、研磨速度は高いものの基板表面粗さが悪化したり、スクラッチが生じやすい傾向にある。異形粒子率が45%未満の場合は、球形粒子が多くなるため研磨速度が低下するからである。
【0045】
[条件6]
条件6は、走査型電子顕微鏡写真を解析して、立体構造を備える粒子の個数をTとし、全粒子の個数をSとしたとき、立体構造率(T/S×100%)が10%以上であることである。なお、本実施形態においては、この条件6を満たすことがより好ましい。粒子が立体的な構造を備える場合、球状や平面状の粒子と比較して、立体部分が存在するため、基板への応力を集中させることで研磨速度を向上させることができる。
立体構造率が10%以上であれば、研磨速度を向上できる。また、同様の観点から、立体構造率は、12%以上95%以下であることが好ましく、15%以上90%以下であることがより好ましい。立体構造率が95%を超えると、研磨速度は高いものの研磨傷が多発したり、表面の平滑性が悪化する傾向にあるからである。
ここで、粒子が立体構造を備えているか否かの判定は、走査型電子顕微鏡写真での色合いで判断できる。なお、透過型電子顕微鏡写真を併用して、粒子の立体部分を見分けることもできる。
【0046】
[用途]
本実施形態に係る異形シリカ系微粒子分散液は、研磨スラリーとして使用した場合に、基板表面の平滑性を向上でき、かつ研磨速度を高くできる。そのため、本実施形態に係る異形シリカ系微粒子分散液は、研磨用組成物または研磨スラリーの成分として好適に使用できる。
なお、研磨用組成物および研磨スラリーは、さらに他の成分を含むことができる。他の成分として、研磨促進剤、界面活性剤、親水性化合物、複素環化合物、pH調整剤およびpH緩衝剤から選ばれる1以上の成分を使用することができる。
【実施例
【0047】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(種粒子分散液の調製)
純水329gに、珪酸カリウム水溶液(富士化学社製2号珪酸カリの水溶液、SiO濃度20.5質量%、KO濃度9.4質量%、アルカリ金属に対するシリカのモル数の比2.04)1.0kgを加え、さらに水酸化カリウム水溶液(東亜合成社製「スーパーカリR」KOH濃度48.0質量%)157g添加し、均一になるまで攪拌した(工程(a))。この溶液のpHは12.9で、電気伝導度は92.3mS/cmで、SiO濃度は13.8質量%で、イオン強度は1.305であった。そして、この溶液を攪拌しながら72℃に昇温し、80分間保持し、加熱熟成した種粒子前駆体分散液を得た(工程(b))。
次いで、この溶液の温度を保ったまま、酸性珪酸液(SiO濃度4.55質量%)6.51kgを5時間かけて添加した。この種粒子前駆体分散液のシリカ量に対する酸性珪酸液のシリカ量のモル比([酸性珪酸液のシリカ量]/[種粒子前駆体分散液のシリカ量])は、1.44であった。添加終了後も72℃に保持したまま、1時間攪拌を行い、その後室温になるまで放冷して、種粒子分散液を得た(工程(c))。得られた種粒子分散液において、アルカリ金属に対するシリカのモル数の比は、5.0であった。得られた種粒子の動的光散乱法による平均粒子径は、27nmであった。
【0048】
(異形シリカ系微粒子分散液の調製)
得られた種粒子分散液700gに、純水144gを添加し、均一になるまで攪拌した。この種粒子分散液において、SiO濃度は5.2質量%であり、イオン強度は0.368であった(工程(d))。さらに、この種粒子分散液を攪拌しながら97.5℃まで昇温し、30分間97.5℃を保持した(工程(e))。次いで、97.5℃を保持したまま、4.55質量%の酸性珪酸液8.96kgを12時間かけて添加した。この種粒子分散液のシリカ量に対する酸性珪酸液のシリカ量のモル比([酸性珪酸液のシリカ量]/[種粒子分散液のシリカ量])は、9.3であった。添加終了後も97.5℃を1時間保ったまま攪拌を継続し、その後室温になるまで放冷して、異形シリカ系微粒子分散液を得た(工程(f))。得られた異形シリカ系微粒子分散液において、アルカリ金属に対するシリカのモル数の比は、51.2であった。
得られた異形シリカ系微粒子分散液を、限外ろ過膜を用いてシリカ濃度が12質量%になるまで濃縮した。次いで、ロータリーエバポレーターで20質量%まで濃縮した。得られた異形シリカ系微粒子の比表面積換算粒子径は49nmで、動的光散乱法粒子径は124nmであった。
なお、この異形シリカ系微粒子分散液の製造方法における各条件等について、表1に示した。
【0049】
[実施例2~3]
表1に示す各条件等に従い各工程を行い、異形シリカ系微粒子分散液を得た。
【0050】
[比較例1]
(種粒子(a)調製)
珪酸カリウム(SiO濃度20.5質量%、KO濃度9.37質量%)87.8gに純水1,127gを添加し、水酸化カリウム水溶液(KOH濃度3質量%)31.4gを添加し、攪拌した後に83℃に昇温し、83℃にて30分保持して前駆体分散液とした。この溶液のSiO濃度は1.45質量%であった。
次に、SiO濃度4.6質量%の酸性珪酸液1,494gを3時間かけて連続的に添加した。続いて、酸性珪酸液8,963gを12時間かけて連続的に添加した。添加終了後、83℃にて1時間保った後、室温まで冷却した。得られた種粒子(a)の動的光散乱法粒子径は35nmであった。
得られたシリカゾルを、限外ろ過膜を用いてシリカ濃度が12質量%になるまで濃縮した。次いで、ロータリーエバポレーターで20質量%まで濃縮した。
【0051】
(粒子(A)の調製)
純水1,692gにKOH濃度48.5質量%の水酸化カリウム水溶液26.0gを添加し、均一になるまで攪拌した。攪拌を継続しながら4.6質量%の酸性珪酸液460.7gを添加し、次いで、種粒子(a)355gを添加した。この溶液のSiO濃度は6.5質量%であった。さらに、87℃まで昇温し30分間87℃を保持した。次いで、87℃を保持したまま4.6質量%の酸性珪酸液11,388gを14時間かけて添加した。添加終了後も87℃を1時間保ったまま攪拌を継続し、室温になるまで放冷して、粒子(A)を含むシリカゾルを得た。
次に、このシリカゾを、限外ろ過膜を用いて12質量%まで濃縮した。次いで、ロータリーエバポレーターで20質量%まで濃縮した。得られた粒子(A)の動的光散乱法粒子径は64nmで、比表面積換算粒子径は43nmであった。
【0052】
[比較例2]
(粒子(B)の調製)
純水23,142gにKOH濃度48.5質量%の水酸化カリウム水溶液274.7gを添加し、均一になるまで攪拌した。攪拌を継続しながら4.52質量%の酸性珪酸液4,951gを添加し、次いで、比較例1の粒子(A)の調製と同様にして得られたシリカゾル3,336.8gを添加した。この溶液のSiO濃度は5.0質量%であった。さらに、98℃まで昇温し30分間98℃を保持した。次いで、98℃を保持したまま4.52質量%の酸性珪酸液128.65kgを18時間かけて添加した。添加終了後も98℃を1時間保ったまま攪拌を継続し、室温になるまで放冷して、粒子(B)を含むシリカゾルを得た。
次に、このシリカゾを、限外ろ過膜を用いて12質量%まで濃縮した。次いで、ロータリーエバポレーターで20質量%まで濃縮した。得られた粒子(B)の動的光散乱法粒子径は110nmで、比表面積換算粒子径は80nmであった。
【0053】
[比較例3]
実施例1と同様にして得られた種粒子分散液を使用し、実施例1の工程(d)において、種粒子分散液に添加する純水の量を1909gとした以外は実施例1と同様に行って、異形シリカ系微粒子分散液を得た。
得られた異形シリカ系微粒子分散液を、限外ろ過膜を用いてシリカ濃度が12質量%になるまで濃縮した。次いで、ロータリーエバポレーターで20質量%まで濃縮した。得られた異形シリカ系微粒子の動的光散乱法粒子径は47nmで、比表面積換算粒子径は27nmであった。
【0054】
[比較例4]
(粒子(D)の調製)
純水9,483gに珪酸ナトリウム水溶液(SiO濃度24.3質量%)3,294gを添加して均一になるまで攪拌したのち、4.5質量%の酸性珪酸液347gと濃度20質量%のKCl(凝集剤)254gを5分間で添加して混合した(工程(a))。この溶液のSiO濃度は6.1質量%であった。
次いで、これを97℃に昇温し、97℃で30分間保持した。(工程(b))
工程(a)および工程(b)における攪拌羽根の回転数を2.5/secとした。その後、酸性珪酸液281.8kgを15時間かけて添加し、添加終了後も97℃で30分放置した。このときのレイノルズ数は、使用したタンク形状、羽根形状、羽根サイズ、分散密度、粘度から1.36×10と算出された。続いて、室温まで冷却し、限外モジュールを用いて濃縮して、固形分濃度10質量%の粒子(D)を含むシリカゾルを得た。次いで、ロータリーエバポレーターで20質量%まで濃縮した。得られた粒子(D)の動的光散乱法粒子径は155nmで、比表面積換算粒子径は65nmであった。
【0055】
[比較例5]
(珪酸カリウム溶液の調製)
超純水3.699kgに水酸化カリウム水溶液(KOH濃度48.7質量%)2.766kgを添加し、均一になるまで攪拌した。この水酸化カリウム水溶液にシリカ粉末(含水率20質量%)2.82kgを添加して混合した。この混合液を95℃に昇温し、4時間保持し、珪酸カリウム溶液を得た。
得られた珪酸カリウム溶液において、SiO濃度は24.5質量%であり、KO濃度は12.4質量%であり、SiO/KO(モル比)は3.10であった(以下、この珪酸カリウム溶液ないしそれと同等の珪酸カリウム溶液を「珪酸カリウム溶液(1)」と記す。)。
(前駆体分散液の調製)
超純水2.344kgに珪酸カリウム溶液(1)0.88kgを添加して均一になるまで撹拌し、アルカリ水溶液を得た。このアルカリ水溶液に、酸性珪酸液0.15kgを添加して混合した。この混合液を98.5℃に昇温し、1.3時間保持し、前駆体分散液を得た。前駆体分散液は、SiO濃度6.6質量%であり、SiO/AO(モル比)は3.2であった。
【0056】
(種粒子(e)の調製)
得られた前駆体粒子分散液全量に酸性珪酸液6.97kgを、98.5℃で、4.9時間かけて添加した。添加終了後も98.5℃で0.5時間放置し、種粒子(e)の分散液を得た。
この種粒子分散液のSiO濃度は5.2質量%でKO濃度は1.1質量%であった。また、動的光散乱粒子径測定装置で測定した平均粒子径は105nmであった。
(粒子(E)の調製)
超純水0.113kgに珪酸カリウム溶液(1)0.006kgを添加した。これに種粒子(e)を含む種粒子分散液10.34kgを添加して混合した。この溶液のSiO濃度は5.2質量%であった。次いで、これを97.5℃に昇温し、0.5時間保持した。
その後、97.5℃で、酸性珪酸液142.94kgを12時間かけて添加した。添加終了後も97.5℃で1時間放置し、続いて室温まで冷却し、粒子(E)を含むシリカ粒子分散液を得た。得られたシリカ粒子分散液において、SiO濃度は4.6質量%であり、KO濃度は0.07質量%であった。
続いて限外モジュールを用いて濃縮してSiO濃度11.7質量%のシリカ粒子分散液を調製した。次いで、ロータリーエバポレーターで20質量%まで濃縮した。得られた粒子(E)の比表面積換算粒子径は41nmで、動的光散乱法粒子径は131nmであった。
【0057】
[異形シリカ系微粒子分散液およびその製造方法の評価]
まず、異形シリカ系微粒子分散液の製造方法における各条件等について、表1に纏めた。
また、異形シリカ系微粒子の物性測定と、異形シリカ系微粒子分散液の評価を、下記の方法により行った。得られた結果を表2に示す。なお、実施例1で得られた異形シリカ系微粒子の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。
(1)平均粒子径の測定
得られた種粒子分散液および異形シリカ系微粒子分散液の動的光散乱法による平均粒子径を測定した。また異形シリカ系微粒子分散液について、窒素吸着法により換算される平均粒子径を測定した。
【0058】
(2)異形シリカ系微粒子の走査型電子顕微鏡写真による解析
(2-1)平均異形度
平均異形度は、走査型電子顕微鏡写真を解析して求めた。具体的には、走査型電子顕微鏡写真を観察し、任意の100個以上の粒子について各粒子に外接する外接長方形のうち、面積が最小となる最小外接長方形を求める。そして、最小外接長方形における長辺および短辺の長さを求め、短辺に対する長辺の比([長辺]/[短辺])を異形度とする。各粒子について異形度を算出し、これらの平均値を平均異形度として算出した。
(2-2)面積等価円平均粒子径
面積等価円粒子径とは、走査型電子顕微鏡写真を観察し、任意の100個以上の粒子について各粒子の投影面積に等しい面積をもつ円の直径を、各粒子の粒子径としたものである。
(2-3)粒子群の平均異形度[A]、[B]、および[B]/[A]の値
走査型電子顕微鏡写真を解析して、任意の100個以上の粒子について粒子径分布を求めた。なお、ここでの粒子径は、面積等価円平均粒子径である。この粒子径分布において、粒子径の小さい側からの個数割合([個数]/[全個数])が0超1/10以下の範囲の粒子の平均異形度[A]を求め、粒子径の小さい側からの個数割合([個数]/[全個数])が9/10超10/10以下の範囲の粒子の平均異形度[B]を求め、さらに、[B]/[A]の値を算出した。
(2-4)異形粒子率
走査型電子顕微鏡写真を解析して、任意の100個以上の粒子について各粒子の異形度を求めた。そして、全粒子に占める異形粒子率([異形度が1.2以上の粒子の個数]/[全粒子の個数]×100%)を算出した。
(2-5)立体構造率
走査型電子顕微鏡写真を解析して、任意の100個以上の粒子について立体構造を有する粒子の個数Sを求めた。そして、全粒子個数Tとの比、T/S×100%を立体構造率として求めた。
(2-6)粗大粒子数
異形シリカ系微粒子分散液の粗大粒子数は、Particle sizing system Inc.社製Accusizer 780APSを用いて測定を行った。また測定試料を純水で1質量%に希釈調整した後、測定装置に5mLを注入して、以下の条件にて測定を行い、3回測定した後、得られた測定データの0.51μm以上の粗大粒子数の値の平均値を算出した。さらに平均値を100倍して、異形シリカ系微粒子分散液のドライ換算の粗大粒子数とした。なお、測定条件は以下の通りである。
<System Setup>
・Stir Speed Control / Low Speed Factor 1500 / High Speed Factor 2500
<System Menu>
・Data Collection Time 60 Sec.
・Syringe Volume 2.5mL
・Sample Line Number:Sum Mode
・Initial 2nd-Stage Dilution Factor 350
・Vessel Fast Flush Time 35 Sec.
・System Flush Time / Before Measurement 60 Sec. / After Measurement 60 Sec.
・Sample Equilibration Time 30 Sec./ Sample Flow Time 30 Sec.
【0059】
(3)異形シリカ系微粒子分散液の研磨特性
(3-1)評価用の研磨スラリーの調製
異形シリカ系微粒子分散液に純水を加え、SiO濃度1.0質量%に調整し、さらに5%硝酸を滴下し、pHを6.0に調整して、評価用の研磨スラリーとした。
(3-2)TEOS膜研磨速度
研磨装置は、ナノファクター社製NF-300を用い、研磨パッドはIC-1000/SUBA400の2層パッドを用いた。基板は8インチのプラズマTEOS膜(膜厚2μm)を29mm角にカットしたものを用いた。研磨荷重は0.08MPaで、回転数ヘッドとプラテンの回転数は、それぞれ93rpm、87rpmとし、スラリー流量50g/minで15分間研磨を行った。研磨膜厚は、研磨前後の基板重量差を研磨膜厚として算出した。
【0060】
(3-3)研磨傷
[研磨試験]
・被研磨基板
被研磨基板として、ハードディスク用ニッケルメッキしたアルミ基板(東洋鋼鈑社製ニッケルメッキサブストレート)を使用した。本基板はドーナツ形状の基板である(外径95mmφ、内径25mmφ、厚さ1.27mm)。
・研磨試験
9質量%のシリカ系粒子分散液344gを作製し、これに31質量%過酸化水素水を5.65g加えた後に10質量%硝酸にてpHを1.5に調整して研磨スラリーを作製した。
上記被研磨基板を研磨装置(ナノファクター社製:NF300)にセットし、研磨パッド(FILWEL社製「ベラトリックスNO178」)を使用し、基板荷重0.05MPa、定盤回転数50rpm、ヘッド回転数50rpmで、研磨スラリーを40g/分の速度で供給しながら1μm研磨を行った。
・基板の研磨傷
研磨試験により得られた研磨基板を、超微細欠陥・可視化マクロ装置(VISION PSYTEC社製、製品名:Maicro―Max VMX-3100)を使用し、観察条件はMME-250Wの白色光を10%に調整し、LA-180Meは0%にて観察した。
この観察では、基板表面にスクラッチ等で欠陥が存在すると白色光が乱反射され、欠陥部分が白く観察される。一方、欠陥が無い部分は白色光が正反射され、全面が黒く観察される。このように観察を行い、基板表面に存在するスクラッチ(線状痕)等によって生じる欠陥の面積(基板が白く観察される面積)を、次の基準に従って評価した。
「非常に少ない」:欠陥の面積が、3%未満である。
「少ない」:欠陥の面積が、3%以上、20%未満である。
「多い」:欠陥の面積が、20%以上、40%未満である。
「非常に多い」:欠陥の面積が、40%以上である。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
図1