(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】走行機能の安全性を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241107BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20241107BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241107BHJP
B60W 30/12 20200101ALI20241107BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241107BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20241107BHJP
【FI】
G08G1/16 A
B60W50/14
B60W60/00
B60W30/12
G06T7/00 650A
G06T7/60 200J
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020209121
(22)【出願日】2020-12-17
【審査請求日】2023-08-29
(31)【優先権主張番号】10 2020 202 964.4
(32)【優先日】2020-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(72)【発明者】
【氏名】カイ・アレクサンダー・ヴィットカンプフ
(72)【発明者】
【氏名】ザンドロ・ジグダ
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-099635(JP,A)
【文献】特開2019-175097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 50/14
B60W 60/00
B60W 30/12
G06T 7/00
G06T 7/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部自動化車両または完全自律車両における走行機能の安全性を向上させる方法において、以下のステップ:
-少なくとも1つの周辺検出センサ(2)を用いて、周辺画像または一連の周辺画像を撮影するステップ(S1)と、
-前記周辺画像または前記一連の周辺画像における車線境界線を検出するステップ(S2)と、
-検出された前記車線境界線に基づいて、車線推移を算出するステップ(S3)と、
-さらなる車線推移をデータソースから取り込むステップ(S4)と、
-前記車線推移の一致を検証することにより、算出された前記車線推移を妥当性確認するステップ(S5)と、
-前記一致の度合を決定するステップ(S6)と、
-前記一致の前記度合に基づいて、信頼値を決定するステップ(S7)と、
-算出された前記車線推移が
、車線維持支援を正確に機能させることが可能である走行機能に供給されるか否かを決定
し、信頼値が所定の信頼閾値を超過する場合、算出された前記車線推移が走行機能に供給され、信頼値が所定の信頼閾値未満である場合、取り込まれた車線推移が走行機能に供給されるステップ(S8)と、を備える方法。
【請求項2】
前記さらなる車線推移は、HDマップ、クラウドまたはインフラストラクチャから取り込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車線推移の一致を検証する際、曲率半径の一致が検証される、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
信頼値が所定の信頼閾値未満である場合、警告が運転者に与えられる、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
一部自動化車両または完全自律車両における走行機能の安全性を向上させるシステム(1)において、少なくとも1つの周辺検出センサ(2)と、データ処理装置(3)とを備え、前記データ処理装置(3)は請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成される、システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機能の安全性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の操舵介入をともなう運転支援システムにおいては、対応する操舵信号にしたがって走行されるべき軌道は、車道区画線に基づいて決定される。この場合、区画線は、様々なカメラシステムの形態を有するセンサにより検出される。ここで、誤検出はさらなるカメラシステムによってのみ認識可能である。1つのカメラのみが搭載されている場合、区画線の誤検出があると、計画された軌道からの離脱が発生する。このことは、特に運転者自身が操舵していない場合(「ハンズオフ」)、重大な安全性問題を呈する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の課題は、走行機能の安全性とロバスト性を向上させる方法を提供することである。
【0004】
最初の考察は、さらなるカメラを用いても、検出された車線の妥当性確認は当を得ないという趣旨であった。共通原因故障(common cause failures)(共通する電子/電気的故障、逆光、雪、雨など)により、カメラは、特定の状況において同じように影響を受ける。それとは別にしても第2カメラを搭載する必要があるが、これは小さなコスト要因ではない。
【0005】
「ハンズオフ」で使用されてよい車線維持機能(lane keeping)の安全コンセプトの発展により、要件が高くなっている。「ハンズオン」機能に関して定められる安全目標のASILによると、検出された車線の追加的妥当性確認が必要になる。現在、市場に流通するカメラは、高められた完全性要件を満たしていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明によると、SAE J3016におけるSAE L2以上の自動レベルを有する車両における走行機能の安全性を向上させる方法において、以下のステップ:
-少なくとも1つの周辺検出センサを用いて、周辺画像または一連の周辺画像を撮影するステップと、
-周辺画像または一連の周辺画像における車線境界線を検出するステップと、
-検出された車線境界線に基づいて、車線推移を算出するステップと、
-さらなる車線推移をデータソースから取り込むステップと、
-車線推移の一致を検証することにより、算出された車線推移を妥当性確認するステップと、
-一致の度合を決定するステップと、
-一致の度合に基づいて、信頼値を決定するステップと、
-算出された車線推移が走行機能に供給されるか否かを決定するステップと、を備える方法が提案される。
【0007】
周辺検出センサは、好ましくは、単眼カメラまたはステレオカメラである。車線境界線とは、本発明の観点からは、走行区画線とガードレール、または他の隆起した車道境界線、例えば工事現場の境界線と理解される。
【0008】
車線推移は、例えば、キーポイント回帰を用いて、車線検出の検出点から算出することができる。
【0009】
一致の度合は、例えば、車線推移の一致パーセンテージであってよい。この一致パーセンテージに基づいて、算出された車線推移の信頼値が決定されてよい。したがって、この信頼値は、その前に決定された信頼閾値と比較可能である。このようにして、算出された車線推移が十分に信頼性を有するか否か、走行機能、例えば車線維持支援が正確に機能可能であること、または計画された軌道の自律走行が可能か否かを決定することができる。
【0010】
1つの好ましい実施形態において、さらなる車線推移は、HDマップ、クラウドまたはインフラストラクチャから取り込まれる。したがって、上記データソースは、例えば、自車および/またはさらなる車両の様々な現時点のセンサデータから生成されるHDマップであってよい。また、その前の走行および記録に同じ車両周辺が基づくマップをすでにシステムに設けておいてもよい。また、車線推移を、クラウドを介して取り込むことも考えられる。このクラウドに、例えば他の車両および/またはインフラストラクチャから現時点の車線推移を供給してよい。また、代替または追加として、インフラストラクチャ要素を用いてV2X直接通信を行ってもよい。このインフラストラクチャ要素は、例えば車線脇に設けられてよく、実際の車線推移を対応する交通参加者に伝達してよい。このことが有利であるのは、このようにして、つねに最新で正確な車線推移が、算出された車線推移を検証するのに利用可能であるからである。
【0011】
さらなる好ましい実施形態において、信頼値が所定の信頼閾値を超過する場合、算出された車線推移は走行機能に供給される。このようにして、誤りのない走行機能を可能にする車線推移のみが供給されることが確実になる。
【0012】
特に好ましくは、車線推移の一致を検証する際、曲率半径の一致が検証される。特に、曲線に関しては、誤操舵介入を防止するために、車線推移の正確な把握が重要である。したがって、有利には、逆に認識された曲線または誤って認識された曲線が確定され、それに応じて走行機能が制御される。
【0013】
また、好ましくは、信頼値が所定の信頼閾値未満である場合、警告が運転者に与えられる。また、警告は、引継要請を運転者に示してもよい。また、警告の代替または追加として、算出された車線推移の代わりに、取り込まれた車線推移を走行機能に供給することも考えられる。このことが特に完全自律車両に関して有利であるのは、これらをステアリングホイールなしで構成することも可能であり、このようにして人による介入が不可能になるからである。このようにして、フォールバックレベルが生成され、これによりシステム全体の信頼性の向上に貢献する。
【0014】
さらなる有利な構成が図面の対象となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本方法の1つの実施形態の概略フロー図である。
【
図2】
図2は、本システムの1つの実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には、本方法の1つの実施形態の概略フロー図が示される。最初のステップS1において、少なくとも1つの周辺検出センサを用いて、周辺画像または一連の周辺画像を撮影する。ステップS2において、周辺画像または一連の周辺画像における車線境界線を検出する。ステップS3において、検出された車線境界線に基づいて、車線推移を算出する。さらなるステップS4において、さらなる車線推移をデータソースから取り込む。ステップS5において、車線推移の一致を検証することにより、算出された車線推移を妥当性確認する。さらなるステップS6において、一致の度合を決定する。ステップS7において、一致の度合に基づいて、信頼値を決定する。最後に、ステップS8において、算出された車線推移が走行機能に供給されるか否かを決定する。
【0017】
図2は、システム1の1つの実施形態の概略図である。システム1は、周辺検出センサ2と、データ処理装置3とを備える。データ処理装置3は、データ接続部Dを介して周辺検出センサ2と接続される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下を含む。
1.
一部自動化車両または完全自律車両における走行機能の安全性を向上させる方法において、以下のステップ:
-少なくとも1つの周辺検出センサ(2)を用いて、周辺画像または一連の周辺画像を撮影するステップ(S1)と、
-前記周辺画像または前記一連の周辺画像における車線境界線を検出するステップ(S2)と、
-検出された前記車線境界線に基づいて、車線推移を算出するステップ(S3)と、
-さらなる車線推移をデータソースから取り込むステップ(S4)と、
-前記車線推移の一致を検証することにより、算出された前記車線推移を妥当性確認するステップ(S5)と、
-前記一致の度合を決定するステップ(S6)と、
-前記一致の前記度合に基づいて、信頼値を決定するステップ(S7)と、
-算出された前記車線推移が走行機能に供給されるか否かを決定するステップ(S8)と、を備える方法。
2.
前記さらなる車線推移は、HDマップ、クラウドまたはインフラストラクチャから取り込まれる、上記1の方法。
3.
信頼値が所定の信頼閾値を超過する場合、算出された前記車線推移は走行機能に供給される、上記1の方法。
4.
前記車線推移の一致を検証する際、曲率半径の一致が検証される、上記1~3のいずれか1つの方法。
5.
信頼値が所定の信頼閾値未満である場合、警告が運転者に与えられる、上記1~4のいずれか1つの方法。
6.
一部自動化車両または完全自律車両における走行機能の安全性を向上させるシステム(1)において、少なくとも1つの周辺検出センサ(2)と、データ処理装置(3)とを備え、前記データ処理装置(3)は上記1~5のいずれか1つの方法を実行するように構成される、システム(1)。