(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】出隅部材及び出隅構造
(51)【国際特許分類】
E04F 19/02 20060101AFI20241107BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
E04F19/02 Q
E04F13/08 Y
(21)【出願番号】P 2020217254
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福山 友理
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104695655(CN,A)
【文献】実開昭53-034829(JP,U)
【文献】実開昭58-093134(JP,U)
【文献】実開昭57-176548(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/02
E04F 13/08-13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の出隅部において隣り合う二つの壁材うちの一方である一方壁材の表面側に露出する幅広部と、
前記二つの壁材のうちの他方である他方壁材の表面側に露出し、前記幅広部よりも幅が狭い幅狭部とを有した
出隅部材であって、
前記出隅部材は、平板状に形成された一方固定片が壁下地に沿って取り付けられて前記壁下地に固定される固定部と、前記固定部から外側に突出する突出部と、を有し、
前記突出部は、目地材収容部として前記幅広部と前記一方壁材との間に目地材を収容する一方壁材側収容部と、前記固定部と前記一方壁材側収容部とを接続する一方接続部と、を備え、
前記一方壁材側収容部は、壁材位置決部として、前記一方壁材の前記幅広部側への移動を規制する一方壁材用位置決部を有し、
前記一方接続部は、外側に近い部分ほど出隅とは反対側に位置するように、前記一方固定片に対して傾斜した平板状に形成されている、
出隅部材。
【請求項2】
前記幅広部は前記一方壁材の表面側から見て面状をなし、
前記幅狭部は前記他方壁材の表面側から見て線状をなしている、
請求項1に記載の出隅部材。
【請求項3】
目地材収容部として、前記幅狭部と前記他方壁材との間に目地材を収容する他方壁材側収容部を備え、
前記他方壁材側収容部は、壁材位置決部として、
前記他方壁材の前記幅狭部側への移動を規制する他方壁材用位置決部を有する、
請求項1又は請求項2に記載の出隅部材。
【請求項4】
前記目地材収容部は、当該目地材収容部に収容された目地材の裏側に位置する底部を有し、
前記底部が前記壁材位置決部である、
請求項
3に記載の出隅部材。
【請求項5】
一部材で構成された、
請求項1~4のいずれか1項に記載の出隅部材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の出隅部材が、壁下地に固定された、
出隅構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出隅部材及び出隅構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外壁出隅部の目地構造が開示されている。この目地構造では、外壁の出隅部に位置する柱における屋外側の隣り合う各面に受け板が取り付けられており、両受け板に接合部材が取り付けられている。接合部材は、断面略十字状に形成されており、所定角度を成して一対の長尺状の固定片の各側縁同士が結合され、この結合部から一対の長尺状のガイド片が固定片の長手方向と平行になるように突設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した接合部材は、結合部から突出した一対のガイド片が外観上目立ちやすく、見栄えが良くないという課題がある。
【0005】
本発明は上記事由に鑑みてなされており、外観上目立ち難い出隅部材及びこれを備えた出隅構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る出隅部材は、建物の出隅部において隣り合う二つの壁材のうちの一方である一方壁材の表面側に露出する幅広部と、前記二つの壁材のうちの他方である他方壁材の表面側に露出し、前記幅広部よりも幅が狭い幅狭部とを有する。
【0007】
本発明の一態様に係る出隅構造は、前記出隅部材が、壁下地に固定される。
【発明の効果】
【0008】
前記一態様に係る出隅部材及び出隅構造では、出隅部材を外観上目立ち難くすることができ、見栄えを良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る出隅構造の横断面図である。
【
図2】
図2は、同上の出隅構造が備える出隅部材の斜視図である。
【
図3】
図3は、変形例1の出隅構造の横断面図である。
【
図4】
図4は、変形例2の出隅構造の横断面図である。
【
図5】
図5は、変形例3の出隅構造の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の出隅部材及び出隅構造について説明する。
【0011】
(1)実施形態
図1に本実施形態の出隅部材2を備えた出隅構造1を示す。出隅構造1は、外壁の出隅部を構成している。出隅構造1が適用される建物は、例えば、木造軸組工法、木造枠組構造又は鉄骨造等の家屋である。
【0012】
出隅構造1は、壁下地5、出隅部材2、複数の壁材6及び複数の目地材7を備えている。壁下地5は、複数の壁材6の下地である。出隅部材2及び複数の壁材6は、壁下地5に取り付けられている。複数の壁材6は、出隅部において隣り合う二つの壁材61,62を含んでいる。以下、二つの壁材61,62のうちの一方を一方壁材61といい、他方を他方壁材62という。複数の目地材7は、出隅部材2と一方壁材61との間に配置された目地材71と、出隅部材2と他方壁材62との間に配置された目地材72との二つの目地材71,72を含んでいる。以下、目地材71を一方目地材71といい、目地材72を他方目地材72という。
【0013】
以下では、一方壁材61側の要素及び他方壁材62側の要素の各々については、屋外側を外側とすると共に屋内側を内側とし、かつ、屋内外方向と直交する水平方向を幅方向として説明する。また、一方壁材61側の要素については、幅方向の他方側である他方壁材62側を出隅側とし、他方壁材61側の要素については、幅方向の一方側である一方壁材61側を出隅側として説明する。
【0014】
壁下地5は、複数の柱50、複数の下地板53及び複数の胴縁54を有している。複数の柱50は、隅柱である柱500を含んでいる。柱500は、直角に隣接した二つの外面(屋外側の面)501,502を有している。
【0015】
複数の下地板53の各々は、例えば、単数又は複数の合板である。複数の下地板53は、例えば、釘又はねじ等の固着具によって複数の柱50に取り付けられる。複数の下地板53は、柱500に取り付けられた2枚の下地板531,532を含んでいる。2枚の下地板531,532は、それぞれ柱500の二つの外面501,502に沿って配置されている。
【0016】
複数の下地板53には、複数の胴縁54が取り付けられている。各胴縁54は、下地板53の外面に沿って上下方向に延びた縦胴縁である。各胴縁54は、例えば、釘又はねじ等の固着具によって下地板53に取り付けられる。なお、各下地板53の外面には、透湿防水シートが張り付けられてもよい。この場合、各胴縁54は、透湿防水シートを介して下地板53に取り付けられる。
【0017】
複数の胴縁54は、壁下地5の出隅部に設けられた二つの胴縁541,542を含んでいる。二つの胴縁541,542のうちの一方の胴縁541は、一方の下地板531の外面における出隅側(他方の下地板532側)の端部に取り付けられており、他方の胴縁542は、他方の下地板532の外面における出隅側(一方の下地板531側)の端部に取り付けられている。
【0018】
壁下地5は、出隅部において隣り合う二つの外面51,52を有している。二つの外面51,52は、互いに垂直である。二つの外面51,52は、それぞれ二つの胴縁541,542の外面で構成されている。
【0019】
なお、壁下地5の各外面51,52は、胴縁54の外面で構成されたものに限定されない。例えば、壁下地5の各外面51,52は、下地板53の外面であってもよい。また、壁下地5の二つの外面51,52がなす角度は、直角に限定されず、鈍角であってもよいし、鋭角であってもよい。すなわち、出隅構造1の二つの壁材61,62がなす角度は、直角に限定されず、鈍角であってもよいし、鋭角であってもよい。また、壁下地5は、既設の外壁であってもよい。この場合、各壁材6はリフォーム用の壁材として用いられ、各壁材6及び出隅部材2は、既設の外壁に取り付けられる。
【0020】
壁下地5には、外壁の出隅役物として、
図2に示す出隅部材2が取り付けられている。出隅部材2は、壁下地5の二つの外面51,52に沿って上下方向に延びた長尺部材である。出隅部材2の上下長さは、例えば、3030mmである。なお、出隅部材2の上下長さは、限定されない。
【0021】
出隅部材2は、一続きの単一部材であり、一部材だけで構成されている。出隅部材2は、板金製であり、一枚の金属板を曲げ加工して形成されている。なお、出隅部材2は、複数の部材の組み合わせであってもよく、一部材で構成されなくてもよい。
【0022】
出隅部材2の水平断面形状(出隅部材2の長さ方向と直交する断面の形状)は、出隅部材2の全長にわたって一様である。出隅部材2は、
図1に示すように、壁下地5に固定された固定部3と、固定部3から外側(一方固定片31の外面側)に突出した突出部4とを有している。固定部3は、水平断面形状がL字状であり、その入隅部分が壁下地5の二つの外面51,52に沿った状態で、壁下地5に固定されている。
【0023】
固定部3は、二つの胴縁541,542の外面に沿ってそれぞれ配置された二つの固定片31,32を有している。各固定片31,32は、平板状に形成されており、対応する胴縁541,542の外面に沿っている。二つの固定片31,32は、出隅側の端部同士がつながっている。
【0024】
二つの固定片31,32は、それぞれ二つの胴縁541,542に取り付けられている。各固定片31,32は、例えば、釘又はねじ等の固着具によって対応する胴縁54に取り付けられる。以下、二つの固定片31,32のうちの一方を一方固定片31といい、他方を他方固定片32という。
【0025】
一方固定片31の幅方向は、他方固定片32の厚み方向と平行である。一方固定片31は、他方固定片32から他方固定片32の厚み方向に沿って内側に向かって突出し、他方固定片32は、一方固定片31から一方固定片31の厚み方向に沿って内側に向かって突出している。一方固定片31における出隅とは反対側(他方固定片32とは反対側)の端部及び他方固定片32における出隅とは反対側(一方固定片31とは反対側)の端部の各々は、自由端である。一方固定片31においては、他方固定片32から突出した一方固定片31の突出方向と反対側が出隅側であり、他方固定片32においては、一方固定片31から突出した他方固定片32の突出方向と反対側が出隅側である。
【0026】
一方固定片31は、板金を折り返すことで形成された二重の板状部分で構成されている。他方固定片32の出隅とは反対側の端部の外面側には、他方固定片32を構成する板状部分を折り返して形成された折返部320が形成されている。折返部320は、例えば、板状部分を鋭角曲げした後につぶし曲げを行うヘミング加工により形成され、折返部320の内面は、他方固定片32における折返部320以外の部分の外面に接する。他方固定片32において、出隅とは反対側の端部を除く他の部分は、重なり部分の無い一枚板状に形成されている。一方固定片31と他方固定片32とは、連続している。
【0027】
突出部4は、出隅部材2の一部分であり、固定部3と一体に形成されている。突出部4は、一方固定片31における出隅側の端部から外側に向かって突出している。
【0028】
突出部4は、二つの目地材収容部41,42と、二つの接続部43,44とを有している。各目地材収容部41,42は、対応する壁材61,62との協働で目地材7を収容する。以下、二つの目地材収容部41,42のうちの一方を一方壁材側収容部41といい、他方を他方壁材側収容部42という。また、二つの接続部43,44のうちの一方を一方接続部43といい、他方を他方接続部44という。
【0029】
一方接続部43は、固定部3と一方壁材側収容部41とを接続している。一方接続部43は、二重の板状部分である一方固定片31における外側の板状部分に連続しており、同板状部分における出隅側の端部から、一方固定片31の外面側に突出している。
【0030】
一方接続部43は、外側に近い部分ほど出隅とは反対側に位置するように、一方固定片31に対して傾斜した平板状に形成されている。一方接続部43と一方固定片31との間には、隙間が形成されている。一方接続部43において固定部3に接続された端部とは反対側の端部には、一方壁材側収容部41が接続されている。
【0031】
一方壁材側収容部41は、一方接続部43に連続している。一方壁材側収容部41は、水平断面L字状に形成されており、底部410と、側壁部411とを有している。底部410は、一方接続部43において固定部3に接続された端部とは反対側の端部から、一方接続部43の外面側に突出している。底部410は、一方固定片31と平行な平板状に形成されている。底部410と一方接続部43との間には、隙間が形成されている。
【0032】
側壁部411は、底部410において一方接続部43に接続された端部とは反対側の端部から底部410の外面側に向かって突出している。側壁部411は、他方固定片32と平行な平板状に形成されている。側壁部411における出隅側を向く面と、他方固定片32の外面とは、他方固定片32の厚み方向において略同位置に配されている。
【0033】
他方接続部44は、一方壁材側収容部41と他方壁材側収容部42とを接続している。他方接続部44は、一方壁材側収容部41に連続しており、一方壁材側収容部41の側壁部411の外側の端部から出隅側に突出している。他方接続部44は、一方固定片31と平行な平板状に形成されている。他方接続部44の出隅側の端部(側壁部411に接続された端部とは反対側の端部)には、他方壁材側収容部42が接続されている。
【0034】
他方壁材側収容部42は、他方接続部44に連続している。他方壁材側収容部42は、水平断面L字状に形成されており、側壁部421と、底部420とを有している。側壁部421は、他方接続部44の内面側に位置しており、他方接続部44における出隅側の端部から、出隅とは反対側(側壁部411側)に向かって突出している。
【0035】
他方壁材側収容部42の側壁部421は、他方接続部44を構成する板状部分を折り返すことで形成されている。側壁部421と他方接続部44との接続部分は、水平断面形状が側壁部411とは反対側に向かって突となる弧状の曲部45となっている。側壁部421は、他方接続部44と平行な平板状に形成されている。側壁部421は、他方接続部44の内面側に間隔をあけて位置しており、側壁部421と他方接続部44との間には、隙間が形成されている。
【0036】
他方壁材側収容部42の底部420は、側壁部421において出隅とは反対側の端部(他方接続部44に接続された端部とは反対側の端部)から側壁部421の内面側(他方接続部44とは反対側)に向かって突出している。底部420は、一方壁材側収容部41の側壁部411と平行な平板状に形成されている。底部420は、一方壁材側収容部41の側壁部411と間隔をあけて位置しており、底部420と一方壁材側収容部41の側壁部411との間には、隙間が形成されている。底部420において側壁部411に接続された端部とは反対側の端部は、自由端である。ただし、底部420の側壁部411に接続された端部とは反対側の端部の側壁部411側には、底部420を構成する板状部分を折り返して形成された折返部422が形成されている。折返部422は、例えば、底部420を構成する板状部分をヘミング加工することにより形成される。
【0037】
出隅構造1は、二つのバックアップ材81,82を備えている。各バックアップ材81,82は、例えば、樹脂又はゴム等から形成される。二つのバックアップ材81,82のうちの一方のバックアップ材81は、一方目地材71をバックアップし、他方のバックアップ材82は他方目地材72をバックアップする。以下、バックアップ材81を一方バックアップ材81といい、バックアップ材82を他方バックアップ材82という。
【0038】
一方バックアップ材81は、出隅部材2の一方壁材側収容部41の底部410の外面に沿って上下方向に延びており、出隅部材2に取り付けられている。他方バックアップ材82は、出隅部材2の他方壁材側収容部42の底部420の外面に沿って上下方向に延びており、出隅部材2に取り付けられている。一方バックアップ材81及び他方バックアップ材82の各々は、例えば、接着剤、粘着剤又は両面テープ等によって出隅部材2に取り付けられる。なお、本実施形態の各バックアップ材81,82は、出隅部材2の出荷前に取り付けられるが、出荷後の出隅部材2に取り付けられてもよい。
【0039】
複数の壁材6の各々は、例えば、窯業系パネル、木製パネル、ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)パネル又は金属系サイディング等である。各壁材6は、矩形板状に形成されている。複数の壁材6のうちの一つである一方壁材61は、裏面(内面)が出隅部材2の一方固定片31の外面に沿い、かつ、出隅側の端面が、出隅部材2の一方壁材側収容部41の底部410(詳しくは、底部410と一方接続部43との接続部分)に接した状態で、壁下地5に取り付けられている。一方壁材61は、例えば、釘又はビス等の固着具によって複数の胴縁54に固定されることで、壁下地5に取り付けられる。一方壁材61の表面(外面)は、一方壁材61の厚み方向において、出隅部材2の他方接続部44の外面(側壁部421とは反対側の面)と同位置に位置している。
【0040】
複数の壁材6のうちの一つである他方壁材62は、裏面(内面)が出隅部材2の他方固定片32の外面に沿い、かつ、出隅側の端面が、出隅部材2の他方壁材側収容部42の底部420(詳しくは、底部420における側壁部421が接続された端部とは反対側の端部)に接した状態で、壁下地5に取り付けられている。他方壁材62は、例えば、釘又はビス等の固着具によって複数の胴縁54に固定されることで、壁下地5に取り付けられる。他方壁材62の表面(外面)は、他方壁材62の厚み方向において、出隅部材2の曲部45の外面と略同位置に位置している。
【0041】
一方壁材61における出隅側の端面は、出隅部材2の一方壁材側収容部41の側壁部411と、幅方向に間隔をあけて位置している。一方壁材61における出隅側の端面と、出隅部材2の側壁部411との間には、上下方向に延びた目地91が形成されている。目地91には、一方目地材71が配置されている。
【0042】
一方目地材71は、湿式の目地材であり、詳しくはシーリング材である。一方目地材71は、出隅部材2の一方壁材側収容部41(底部410及び側壁部411)と、一方壁材61における出隅側の端面と、一方バックアップ材81とで囲まれた空間に充填されている。一方壁材側収容部41の底部410は、一方バックアップ材81の裏側(屋内側)、かつ、一方目地材71の裏側に位置している。一方目地材71は、目地91から、屋内側に水が浸入することを抑制する。なお、一方目地材71は、乾式の目地材であってもよい。
【0043】
他方壁材62における出隅側の端面は、出隅部材2の他方壁材側収容部42の側壁部421と、幅方向に間隔をあけて位置している。他方壁材62における出隅側の端面と、出隅部材2の側壁部421との間には、上下方向に延びた目地92が形成されている。目地92には、他方目地材72が配置されている。
【0044】
他方目地材72は、湿式の目地材であり、詳しくはシーリング材である。他方目地材72は、出隅部材2の他方壁材側収容部42(底部420及び側壁部421)と、他方壁材62における出隅側の端面と、他方バックアップ材82とで囲まれた空間に充填されている。他方目地材72は、目地92から屋内側に水が浸入することを抑制する。なお、一方目地材71及び他方目地材72の各々は、乾式の目地材であってもよい。他方壁材側収容部42の底部420は、他方バックアップ材82の裏側(屋内側)、かつ、他方目地材72の裏側に位置している。
【0045】
出隅部材2の突出部4は、一方壁材61の表面側に露出した幅広部46と、他方壁材62の表面側に露出した幅狭部47とを有している。本実施形態において、幅広部46は他方接続部44であり、幅狭部47は曲部45である。
【0046】
幅広部46は突出部4において一方目地材71の出隅側に位置し、出隅部材2において幅広部46よりも一方壁材61側に位置する部分は、一方壁材61及び一方目地材71によって屋外側が覆われている。出隅部材2及び突出部4の各々は、幅広部46だけが一方壁材61の表面側に露出している。
【0047】
幅狭部47は突出部4において他方目地材72の出隅側に位置し、出隅部材2において幅狭部47よりも他方壁材62側に位置する部分は、他方壁材62及び他方目地材72によって屋外側が覆われる。出隅部材2及び突出部4の各々は、幅狭部47だけが他方壁材62の表面側に露出している。
【0048】
幅広部46(他方接続部44)は、一方壁材61の表面側から見て、上下方向に延びた矩形の面状をなしている。幅広部46の幅は、幅広部46の上下方向の全長に亘って一定である。幅狭部47(曲部45)は、他方壁材62の表面側から見て上下方向に延びた線状をなしている。幅狭部47の幅は、幅狭部47の上下方向の全長に亘って一定である。幅狭部47の幅は、幅広部46(一方接続部43)の幅よりも小さい。このため、出隅構造1を他方壁材62の表面側から見たときには、出隅部材2の露出する部分(幅狭部47)の面積が小さく、出隅部材2は目立ち難い。殊に、一方壁材61の表面が、隣接する建物に臨む場合又は建物に隣接する駐車場側に臨む場合等、他方壁材62の表面と比べて外観上見られる機会が少ない場合、出隅構造1の外観は、非常にシンプルで優れた外観となる。
【0049】
出隅構造1の施工は、例えば、以下に示すように行われる。まず、出隅部材2が壁下地5に取り付けられる。次に、一方壁材61及び他方壁材62が壁下地5に取り付けられる。この後、一方壁材61と出隅部材2との間と、他方壁材62と出隅部材2との間とに、一方目地材71及び他方目地材72がそれぞれ充填される。これにより、出隅構造1の施工が完了する。本実施形態の出隅部材2は、一部材で構成されているため、施工が容易である。
【0050】
出隅部材2の一方壁材側収容部41及び他方壁材側収容部42の各々は、壁材61,62の位置決めに利用し得る壁材位置決部413,423を有している。一方壁材側収容部41の壁材位置決部413は、一方壁材61の移動を規制する一方壁材用位置決部であり、他方壁材側収容部42の壁材位置決部423は、他方壁材62の移動を規制する他方壁材用位置決部である。本実施形態において、一方壁材用位置決部413は一方壁材側収容部41の底部410であり、他方壁材用位置決部423は他方壁材側収容部42の底部420である。
【0051】
一方壁材61を壁下地5に取り付ける際には、一方壁材61の裏面が出隅部材2の一方固定片31の外面に沿った状態で、一方壁材61の出隅側の端面を出隅部材2の一方壁材用位置決部413(詳しくは、底部410において側壁部411が接続された端部とは反対側の端部)に接触させる。これにより、一方壁材61の幅広部46(他方接続部44)側への移動を規制することができ、この状態で一方壁材61を壁下地5に取り付けることで、一方壁材61を所定位置に配置できる。
【0052】
他方壁材62を壁下地5に取り付ける際には、他方壁材62の裏面が出隅部材2の他方固定片32の外面に沿った状態で、他方壁材62の出隅側の端面を出隅部材2の他方壁材用位置決部423(詳しくは、底部420において側壁部421が接続された端部とは反対側の端部)に接触させる。これにより、他方壁材62の幅狭部47(曲部45)側への移動を規制することができ、この状態で他方壁材62を壁下地5に取り付けることで、他方壁材62を所定位置に配置できる。したがって、各壁材61,62を水平方向における所定位置に容易に施工することが可能になる。また、一方壁材61と幅広部46との間に形成される目地91の幅及び他方壁材62と幅狭部47との間に形成される目地92の幅の各々を一定にすることができ、出隅構造1の外観を一層向上できる。
【0053】
(2)変形例
次に上記実施形態の変形例について説明する。なお、以下の変形例の説明では、上記実施形態と共通する事項については説明を省略する。
【0054】
(2-1)変形例1
図3に示す変形例1の出隅構造1は、出隅部材2の他方壁材側収容部42の形状が、実施形態と異なる。本変形例の出隅部材2は、他方壁材側収容部42の底部420が、一方壁材側収容部41の側壁部411に接している。底部420において側壁部421に接続された端部とは反対側の端部には、折返部422(
図1参照)が形成されておらず、底部420は重なり部分の無い一枚板状に形成されている。他方壁材側収容部42の底部420が、一方壁材側収容部41の側壁部411に支持されることで、一方壁材側収容部41の変形が抑制される。
【0055】
(2-2)変形例2
図4に示す変形例2の出隅構造1は、出隅部材2の突出部4の形状が、実施形態と異なる。本変形例の突出部4は、他方壁材側収容部42の底部420が一方壁材側収容部41の側壁部411を兼ねている。突出部4は、他方接続部44(
図1参照)を有していない。
【0056】
固定部3から一方固定片31の外面側に突出した一方接続部43は、一方固定片31に対して垂直で他方固定片32と平行な平板状に形成されている。他方壁材側収容部42の側壁部421は、一方壁材側収容部41の側壁部411を兼ねる底部420に連続している。側壁部421は、底部420において一方側壁材側収容部41の底部410が接続された端部とは反対側の端部から出隅側に向かって突出している。他方壁材側収容部42の側壁部421は、一方固定片31と平行な平板状に形成されている。
【0057】
側壁部421における出隅側の端部は、自由端である。ただし、側壁部421における出隅側の端部の内面側には、側壁部421を構成する板状部分を折り返して形成された折返部422が形成されている。折返部422は、例えば、側壁部421を構成する板状部分をヘミング加工することにより形成される。
【0058】
本変形例の出隅構造1は、バックアップ材81,82(
図1参照)を備えていない。なお、出隅構造1は、上記実施形態と同様に、各目地材71,72をバックアップするバックアップ材81,82を備えてもよい。
【0059】
一方壁材61は、出隅側の端面が、出隅部材2の一方接続部43に接した状態で、壁下地5に取り付けられている。本変形例の一方壁材用位置決部413は、一方接続部43である。一方壁材61の表面は、一方壁材61の厚み方向において、出隅部材2の他方壁材側収容部42の側壁部421の外面と同位置に位置している。
【0060】
他方壁材62は、出隅側の端面が、出隅部材2の一方壁材側収容部41の底部410に接した状態で壁下地5に取り付けられている。本変形例の他方壁材用位置決部423は、一方壁材側収容部41の底部410である。他方壁材62の表面は、他方壁材62の厚み方向において、出隅部材2の一方壁材側収容部41の側壁部411における出隅側の端部と同位置に位置している。
【0061】
一方目地材71は、一方壁材61の出隅側の端面と出隅部材2の側壁部411との間に形成された目地91の全体に充填されている。他方目地材72は、他方壁材62の出隅側の端面と出隅部材2の側壁部421との間に形成された目地92の全体に充填されている。
【0062】
本変形例では、出隅部材2の幅広部46が、他方壁材側収容部42の側壁部421であり、幅狭部47が側壁部421において側壁部411が接続された端部とは反対側の端部である。幅狭部47は、ヘミング加工により形成された側壁部421の端部であって幅が非常に小さいため、一層目立ち難い。
【0063】
(2-3)変形例3
図5に示す変形例3の出隅構造1は、出隅部材2の形状が、実施形態と異なる。突出部4は、目地材収容部として、他方壁材側収容部42のみを有しており、一方壁材側収容部41(
図1参照)を有していない。突出部4は、二つの接続部43,44に代えて、固定部3と他方壁材側収容部42とを接続する接続部48を有している。一方固定片31の外側の板状部分は、他方固定片32よりも他方固定片32の外面側に延び出ており、この延び出た部分が接続部48を構成している。接続部48は、一方固定片31と平行な平板状に形成されている。
【0064】
他方壁材側収容部42の底部420は、接続部48において固定部3に接続された端部とは反対側の端部から接続部48の外面側に向かって突出している。底部420は、他方固定片32と平行な平板状に形成されている。
【0065】
他方壁材側収容部42の側壁部421は、底部420において接続部48に接続された端部とは反対側の端部から底部420の外面側に向かって突出している。側壁部421は、一方固定片31と平行な平板状に形成されている。
【0066】
突出部4は、覆部49を更に有している。覆部49は、水平断面L字状に形成されており、幅狭片490と、幅広片491とを有している。幅狭片490は、側壁部421における底部420に接続された端部とは反対側の端部から側壁部421の外面側に向かって突出している。幅狭片490は、他方壁材側収容部42の底部420と平行な平板状に形成されている。
【0067】
幅広片491は、幅狭片490における出隅側の端部(側壁部421に接続された端部とは反対側の端部)から幅狭片490の内面側に向かって突出している。幅広片491は、他方壁材側収容部42の側壁部421と平行な平板状に形成されている。幅広片491の幅は、幅狭片490の幅よりも大きい。幅広片491における出隅とは反対側の端部(幅狭片490に接続された端部とは反対側の端部)は、自由端である。ただし、幅広片491において幅狭片490に接続された端部とは反対側の端部の内面側には、幅広片491を構成する板状部分を折り返して形成された折返部492が形成されている。折返部492は、例えば、幅広片491を構成する板状部分をヘミング加工することにより形成される。幅広片491において幅狭片490が接続された端部とは反対側の端部は、他方壁材側収容部42の底部420よりも、出隅とは反対側に向かって突出している。本変形例では、幅広片491が幅広部46であり、幅狭片490が幅狭部47である。
【0068】
本変形例の出隅構造1は、バックアップ材81,82(
図1参照)を備えていない。なお、出隅構造1は、上記実施形態と同様に、目地材72をバックアップするバックアップ材82を備えてもよい。
【0069】
一方壁材61における出隅側の端部は、一方固定片31、接続部48、底部420及び幅広片491で構成され出隅とは反対側に向かって開口した凹部に嵌め込まれている。一方壁材61は、出隅側の端面が出隅部材2の他方壁材側収容部42の底部420に接した状態で、壁下地5に取り付けられている。本変形例の一方壁材用位置決部413は、他方壁材側収容部42の底部420である。幅広片491において幅狭片490に接続された端部とは反対側の端部は、一方壁材61における出隅側の端部の表面を覆っている。このため、一方壁材61と出隅部材2との間には、水が入り込み難い。
【0070】
他方壁材62は、出隅側の端面が、出隅部材2の接続部48に接した状態で壁下地5に取り付けられている。本変形例の他方壁材用位置決部423は、出隅部材2の接続部48である。他方壁材62の表面は、他方壁材62の厚み方向において、出隅部材2の幅狭片490の表面と同位置に位置している。
【0071】
本変形例の出隅構造1は、一方目地材71(
図1参照)及び他方目地材72のうち、他方目地材72のみを備えている。他方目地材72は、他方壁材62の出隅側の端面と出隅部材2の側壁部421との間に形成された目地92の全体に充填されている。本変形例では、一方目地材71を省略でき、出隅構造1の施工が容易である。
【0072】
(3)態様
以上説明した実施形態及び各変形例から明らかなように、第1の態様の出隅部材2は、以下に示す構成を有する。出隅部材2は、幅広部46と、幅狭部47とを有する。幅広部46は、建物の出隅部において隣り合う二つの壁材61,62うちの一方である一方壁材61の表面側に露出する。幅狭部47は、二つの壁材61,62のうちの他方である他方壁材62の表面側に露出する。幅狭部47の幅は、幅広部46の幅よりも狭い。
【0073】
この態様によれば、出隅構造1が他方壁材62の表面側から見られたときに、出隅部材2の露出する部分の面積を小さくして出隅部材2を目立ち難くすることができる。このため、出隅構造1の外観をシンプルで優れたものにすることができる。
【0074】
第2の態様の出隅部材2は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様は、以下に示す構成を有する。幅広部46は一方壁材61の表面側から見て面状をなしている。幅狭部47は他方壁材62の表面側から見て線状をなしている。
【0075】
この態様によれば、幅狭部47を外観上一層目立ち難くすることができる。
【0076】
第3の態様の出隅部材2は、第1又は第2の態様との組み合わせにより実現され得る。第3の態様は、以下に示す構成を有する。出隅部材2は、目地材収容部として、他方壁材側収容部42を備える。他方壁材側収容部42は、幅狭部47と他方壁材62との間に目地材72を収容する。他方壁材側収容部42は、壁材位置決部として、他方壁材用位置決部423を有する。他方壁材用位置決部423は、他方壁材62の幅狭部47側への移動を規制する。
【0077】
この態様によれば、目地材72を収容する他方壁材側収容部42を利用して、他方壁材62の位置決めを行うことができる。
【0078】
第4の態様の出隅部材2は、第1~第3のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現され得る。第4の態様は、以下に示す構成を有する。出隅部材2は、目地材収容部として、一方壁材側収容部41を備える。一方壁材側収容部41は、幅広部46と一方壁材61との間に目地材71を収容する。一方壁材側収容部41は、壁材位置決部として、一方壁材用位置決部413を有する。一方壁材用位置決部413は、一方壁材61の幅広部46側への移動を規制する。
【0079】
この態様によれば、目地材72を収容する一方壁材側収容部41を利用して、一方壁材61の位置決めを行うことができる。
【0080】
第5の態様の出隅部材2は、第3又は第4の態様との組み合わせにより実現され得る。第5の態様は、以下に示す構成を有する。目地材収容部41,42は、目地材収容部41,42に収容された目地材71,72の裏側に位置する底部410,420を有する。底部410,420が壁材位置決部413,423である。
【0081】
この態様によれば、目地材収容部41,42の底部410,420を利用して壁材61,62の移動を規制することができる。
【0082】
第6の態様の出隅部材2は、第1~第5のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現され得る。第6の態様の出隅部材2は、一部材で構成される。
【0083】
この態様によれば、出隅部材2の施工が容易になる。
【0084】
第7の態様の出隅構造1は、以下に示す構成を有する。出隅構造1は、第1~第6のいずれか一つの態様の出隅部材2が、壁下地5に固定される。
【0085】
この態様によれば、出隅構造1の外観を向上できる。
【符号の説明】
【0086】
1 出隅構造
2 出隅部材
41 一方壁材側収容部(目地材収容部)
410 底部
413 一方壁材用位置決部(壁材位置決部)
42 他方壁材側収容部(目地材収容部)
420 底部
423 他方壁材用用位置決部(壁材位置決部)
46 幅広部
47 幅狭部
5 壁下地
61 一方壁材(壁材)
62 他方壁材(壁材)
71 目地材(一方目地材)
72 目地材(他方目地材)