IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ケイミュー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-出隅部材の接続構造 図1
  • 特許-出隅部材の接続構造 図2
  • 特許-出隅部材の接続構造 図3
  • 特許-出隅部材の接続構造 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】出隅部材の接続構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 19/02 20060101AFI20241107BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
E04F19/02 Q
E04F13/08 101Q
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020217255
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102488
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福山 友理
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-068881(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0262784(US,A1)
【文献】意匠登録第1567979(JP,S)
【文献】実開昭62-85632(JP,U)
【文献】意匠登録第1610096(JP,S)
【文献】意匠登録第1426759(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/02
E04F 13/08-13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に隣接する二つの出隅部材を備え、
前記各出隅部材は、
壁下地の出隅部分に固定された固定部と、
前記固定部に繋がり、建物の出隅部分において隣り合う二つの壁材の出隅側の端部を覆った化粧部とを有し、
前記化粧部は、
表面部と、
裏面部とを有し、
前記二つの出隅部材のうちの一方の出隅部材は、
前記化粧部から他方の出隅部材側に突出し、前記他方の出隅部材の前記表面部と前記裏面部との間に配置された差込部を更に有し、
前記差込部は、先端側ほど幅が小さ
前記一方の出隅部材の固定部は、
前記固定部における出隅とは反対側の端部に折返部を有し、
前記一方の出隅部材は、
前記固定部から前記他方の出隅部材側に突出し、前記他方の出隅部材の前記固定部の裏側に配置された別の差込部を更に有し、
前記別の差込部は、先端側ほど幅が小さい、
出隅部材の接続構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、出隅部材の接続構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、出隅部材を用いた出隅部の施工構造が開示されている。この施工構造では、上側の出隅部材と下側の出隅部材とが接続される。各出隅部材は、化粧部材と一対の固定部材とからなる。化粧部材は一対の固定部材よりも下方にずれて配置されている。上下の出隅部材は、上側の化粧部材に形成された係合空間に、下側の出隅部材の固定部材が有するガイド片が挿入されることで接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-82651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した施工構造では、下側の出隅部材のガイド片を上側の化粧部材の狭い係合空間に挿入する必要があり、上下の出隅部材を接続する作業が難しいという課題がある。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、出隅部材同士を容易に接続できる出隅部材の接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る出隅部材の接続構造は、上下方向に隣接する二つの出隅部材を備え、前記各出隅部材は、壁下地の出隅部分に固定された固定部と、前記固定部に繋がり、建物の出隅部分において隣り合う二つの壁材の出隅側の端部を覆った化粧部とを有する。前記化粧部は、表面部と、裏面部とを有する。前記二つの出隅部材のうちの一方の出隅部材は、前記化粧部から他方の出隅部材側に突出し、前記他方の出隅部材の前記表面部と前記裏面部との間に配置された差込部を更に有する。前記差込部は、先端側ほど幅が小さい。
【0007】
本発明の一態様に係る出隅部材は、壁下地の出隅部分に固定される固定部と、前記固定部に繋がり、建物の出隅部分において隣り合う二つの壁材の出隅側の端部を覆う化粧部とを備える。前記化粧部は、表面部、裏面部、差込部及び受部を有する。前記差込部は、前記化粧部の上下方向の一端部に形成され、前記表面部及び前記裏面部のうちの一方から上下方向に沿って突出し、先端側ほど幅が小さい。前記受部は、前記化粧部の上下方向の他端部における前記表面部と前記裏面部とで形成され、前記差込部と同一形状の他の差込部を差込可能である。
【発明の効果】
【0008】
前記一態様に係る出隅部材の接続構造及び出隅部材は、出隅部材同士を容易に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る出隅部材の接続構造であって、図2のX1-X1に対応する部分の横断面図である。
図2図2は、同上の出隅部材同士の接続部分を示した斜視図である。
図3図3は、同上の出隅部材を他の出隅部材に接続する様子を示した斜視図である。
図4図4は、同上の出隅部材の接続構造であって、図2のX4-X4に対応する部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の出隅部材の接続構造及び出隅部材について説明する。
【0011】
(1)実施形態
図1及び図2に本実施形態の出隅部材2の接続構造1を示す。本実施形態の接続構造1は、外壁の出隅部分を構成する出隅構造を兼ねる。接続構造1が適用される建物は、例えば、木造軸組工法、木造枠組構造又は鉄骨造等の家屋である。なお、以下では、屋外側を外側とし、屋内側を内側として、実施形態について説明する。
【0012】
図1に示す接続構造1は、壁下地5、複数の出隅部材2及び複数の壁材6を備えている。壁下地5は、複数の壁材6の下地である。複数の出隅部材2及び複数の壁材6は、壁下地5に取り付けられている。複数の壁材6は、出隅部分において隣り合う二つの壁材61,62を含んでいる。以下、二つの壁材61,62のうちの一方を一方壁材61といい、他方を他方壁材62という。
【0013】
以下では、一方壁材61側の要素及び他方壁材62側の要素の各々については、屋外側を外側とすると共に屋内側を内側とし、かつ、屋内外方向と直交する水平方向を幅方向として説明する。また、一方壁材61側の要素については、幅方向の他方側である他方壁材62側を出隅側とし、他方壁材62側の要素については、幅方向の一方側である一方壁材61側を出隅側として説明する。
【0014】
壁下地5は、複数の柱50、複数の下地板53及び複数の胴縁54を有している。複数の柱50は、隅柱である柱500を含んでいる。柱500は、直角に隣接した二つの外面(屋外側の面)501,502を有している。
【0015】
複数の下地板53の各々は、例えば、単数又は複数の合板である。複数の下地板53は、例えば、釘又はねじ等の固着具によって複数の柱50に取り付けられる。複数の下地板53は、柱500に取り付けられた2枚の下地板531,532を含んでいる。2枚の下地板531,532は、それぞれ柱500の二つの外面501,502に沿って配置されている。
【0016】
複数の下地板53には、複数の胴縁54が取り付けられている。各胴縁54は、下地板53の外面に沿って上下方向に延びた縦胴縁である。各胴縁54は、例えば、釘又はねじ等の固着具によって下地板53に取り付けられる。なお、各下地板53の外面には、透湿防水シートが張り付けられてもよい。この場合、各胴縁54は、透湿防水シートを介して下地板53に取り付けられる。
【0017】
複数の胴縁54は、壁下地5の出隅部分に設けられた二つの胴縁541,542を含んでいる。二つの胴縁541,542のうちの一方の胴縁541は、一方の下地板531の外面における出隅側(他方の下地板532側)の端部に取り付けられており、他方の胴縁542は、他方の下地板532の外面における出隅側(一方の下地板531側)の端部に取り付けられている。
【0018】
壁下地5は、出隅部分において隣り合う二つの外面51,52を有している。二つの外面51,52は、互いに垂直である。二つの外面51,52は、それぞれ二つの胴縁541,542の外面で構成されている。なお、壁下地5の各外面51,52は、胴縁541,542の外面で構成されたものに限定されない。例えば、壁下地5の各外面51,52は、下地板531,532の外面であってもよい。また、壁下地5の二つの外面51,52がなす角度は、直角に限定されず、鈍角であってもよいし、鋭角であってもよい。すなわち、出隅部分において二つの壁材61,62がなす角度は、直角に限定されず、鈍角であってもよいし、鋭角であってもよい。また、壁下地5は、既設の外壁であってもよい。この場合、各壁材6はリフォーム用の壁材として用いられ、各壁材6及び出隅部材2は、既設の外壁に取り付けられる。
【0019】
壁下地5には、外壁の出隅役物として、複数の出隅部材2が取り付けられている。複数の出隅部材2は、図2に示すように上下方向に隣接して配置されている。各出隅部材2は、図1に示す壁下地5の二つの外面51,52に沿って上下方向に延びた長尺部材である。各出隅部材2の上下長さは、例えば、3030mmである。なお、各出隅部材2の上下長さは、限定されない。
【0020】
各出隅部材2は、一続きの単一部材であり、一部材だけで構成されている。本実施形態の各出隅部材2は、板金製であり、一枚の金属板を曲げ加工して形成されている。なお、各出隅部材2は、複数の部材を組み合わせて形成されてもよい。
【0021】
複数の出隅部材2のうち、下端に位置する出隅部材2を除く他の出隅部材2は、図3に示すように、本体部3と、本体部3から下方に突出した突出部4とを有している。上下に隣接する出隅部材2は、上側の出隅部材2の突出部4を下側の出隅部材2の本体部3に差し込むことで接続される。なお、複数の出隅部材2のうち、下端に位置する出隅部材2は、突出部4を有さず本体部3だけで構成されてもよいし、他の出隅部材2と同様に本体部3に加えて突出部4を有してもよい。
【0022】
本体部3の水平断面形状(上下方向と直交する断面の形状)は、本体部3の上下方向の全長にわたって一様である。本体部3は、図4に示すように、壁下地5に固定された固定部30と、固定部30から外側に突出した化粧部31とを有している。
【0023】
固定部30は、壁下地5の二つの外面501,502(二つの胴縁541,542の外面)に沿ってそれぞれ配置された二つの固定片301,302を有している。各固定片301,302は、平板状に形成されており、対応する胴縁541,542の外面に沿っている。ただし、二つの固定片301,302は連続しておらず、互いに分離している。
【0024】
二つの固定片301,302は、それぞれ胴縁541,542に取り付けられている。各固定片301,302は、例えば、釘又はねじ等の固着具によって対応する胴縁54に取り付けられる。以下、二つの固定片301,302のうちの一方を一方固定片301といい、他方を他方固定片302という。一方固定片301の幅方向は、他方固定片302の厚み方向と平行である。
【0025】
各固定片301,302の出隅とは反対側の端部は、自由端である。ただし、各固定片301,302の出隅とは反対側の端部の外面側には、固定片301,302を構成する板状部分を折り返して形成された折返部303,304が形成されている。折返部303,304は、例えば、固定片301,302を構成する板状部分を鋭角曲げした後につぶし曲げを行うヘミング加工により形成され、折返部303,304の内面は、固定片301,302における折返部303,304以外の部分の外面に接する。
【0026】
化粧部31は、固定部30と一体に形成されている。化粧部31は、一対の化粧片311,312を有している。一対の化粧片311,312のうちの一方は、一方固定片301の出隅側の端部から外側に向かって突出し、他方は他方固定片302の出隅側の端部から外側に向かって突出している。以下、一対の化粧片311,312のうちの一方を一方化粧片311といい、他方を他方化粧片312という。
【0027】
各化粧片311,312は、水平断面形状がL字状であり、板金を折り返すことで形成された二重の板状部分で構成されている。一方化粧片311は、一方固定片301に連続している。他方化粧片312は他方固定片302に連続し、かつ、一方化粧片311に連続している。
【0028】
各化粧片311,312は、端面覆部313,315と、表面覆部314,316とを有している。一方化粧片311の端面覆部313は、一方固定片301の出隅側の端部から一方固定片301の外面側に突出している。一方化粧片311の端面覆部313は、他方固定片302と平行な平板状に形成されている。一方化粧片311の表面覆部314は、端面覆部313において一方固定片301に接続された端部とは反対側の端部から、出隅とは反対側(端面覆部313の裏面側)に向かって突出している。一方化粧片311の表面覆部314及び一方固定片301は、端面覆部313から同じ向きに突出している。一方化粧片311の表面覆部314は、一方固定片301と平行な平板状に形成されている。一方化粧片311の表面覆部314において端面覆部313に接続された端部とは反対側の端部は自由端である。一方化粧片311の端面覆部313の幅は、一方固定片301の幅よりも小さい。一方化粧片311の表面覆部314の幅は、一方化粧片311の端面覆部313の幅よりも小さい。なお、表面覆部314の幅は、端面覆部313の幅よりも大きくてもよいし、端面覆部313の幅と同じであってもよい。
【0029】
他方化粧片312の端面覆部315は、他方固定片302の出隅側の端部から他方固定片302の外面側に突出している。他方化粧片312の端面覆部315は、一方固定片301と平行な平板状に形成されている。他方化粧片312の表面覆部316は、端面覆部315において他方固定片302に接続された端部とは反対側の端部から、出隅とは反対側(端面覆部313,315の裏面側)に突出している。他方化粧片312の表面覆部316及び他方固定片302は、端面覆部315から同じ向きに突出している。他方化粧片312の表面覆部316は、他方固定片302と平行な平板状に形成されている。他方化粧片312の表面覆部316において端面覆部315に接続された端部とは反対側の端部は自由端である。他方化粧片312の端面覆部315の幅は、他方固定片302の幅よりも小さい。他方化粧片312の表面覆部316の幅は、他方化粧片312の端面覆部315の幅よりも小さい。なお、表面覆部316の幅は、端面覆部315の幅よりも大きくてもよいし、端面覆部315の幅と同じであってもよい。
【0030】
各化粧片311,312の端面覆部313,315は、二重の板状部分のうちの表側の板状部分で構成された表面部313A,315Aと、裏側の板状部分で構成された裏面部313B,315Bとを有している。各化粧片311,312の表面覆部314,316は、二重の板状部分のうちの表側の板状部分で構成された表面部314A,316Aと、裏側の板状部分で構成された裏面部314B,316Bとを有している。
【0031】
図3に示すように、突出部4は、固定部30及び化粧部31から隣接する出隅部材2が位置する下方に向かって突出している。突出部4は、本体部3と一体に形成されている。突出部4は、固定部30から下方に突出した一対の差込部41,42と、化粧部31から下方に突出した一対の差込部43,44とを有している。以下、固定部30から突出した差込部41,42を固定部側差込部41,42といい、化粧部31から突出した差込部43,44を化粧部側差込部43,44という。
【0032】
一対の固定部側差込部41,42は、それぞれ一対の固定片301,302に一対一で対応している。各固定部側差込部41,42は、対応する固定片301,302から下方に突出している。各固定部側差込部41,42は、対応する固定片301,302に連続しており、固定部側差込部41,42と対応する固定片301,302との境界は外観上現れない。各固定部側差込部41,42は、対応する固定片301,302と平行な平板状に形成されている。各固定部側差込部41,42は、対応する固定片301,302における出隅側の端から、出隅とは反対側の端よりもやや出隅側に控えた箇所にまで亘っている。各固定部側差込部41,42は、重なり部分の無い一枚板状に形成されている。
【0033】
一対の化粧部側差込部43,44は、それぞれ一対の化粧片311,312に一対一で対応している。各化粧部側差込部43,44は、対応する化粧片311,312の端面覆部313,315における裏面部313B,315Bから下方に突出している。各化粧部側差込部43,44は、対応する端面覆部313,315の裏面部313B,315Bに連続しており、同裏面部313B,315Bと化粧部側差込部43,44との境界は、外観上現れない。各化粧部側差込部43,44は、対応する化粧片311,312の端面覆部313,315と平行な平板状に形成されている。各化粧部側差込部43,44は、対応する化粧片311,312の端面覆部313,315の幅方向の全長にわたっている。より具体的には、各化粧部側差込部43,44の基端(各端面覆部313,315と繋がる部分であって、図3において上端)は、各端面覆部313,315の幅と同一又は若干短く形成されている。
【0034】
各化粧部側差込部43,44は、隣接する固定部側差込部41,42に繋がっており、対応する固定部側差込部41,42に連続している。各化粧部側差込部43,44の厚みは、対応する化粧片311,312の端面覆部313,315の裏面部313B,315Bの厚みと同じであり、対応する化粧片311,312の端面覆部313,315の厚み(二重板状部分の厚み)よりも小さい。
【0035】
各固定部側差込部41,42の出隅とは反対側の端面は、下端に近い部分ほど出隅側に位置するように上下方向に対して傾斜した傾斜面になっている。これにより、各固定部側差込部41,42の幅は、固定部側差込部41,42の下側(先端側)ほど小さくなっている。また、各固定部側差込部41,42の出隅とは反対側の端面の下端部は、下側ほど出隅側に位置するように湾曲した弧状の曲面になっており、固定部側差込部41,42の下端面に連続している。なお、固定部側差込部41,42の出隅とは反対側の端面の下端部は、曲面になっていなくてもよい。また、各固定部側差込部41,42は、対応する化粧部側差込部43,44に繋がっていなくてもよい。この場合、固定部側差込部41,42は、固定部側差込部41,42の幅が下側ほど小さくなるのであれば、出隅側(対応する化粧部側差込部43,44側)の端面が下端に近い部分ほど出隅とは反対側に位置するように傾斜していてもよいし、幅方向の両側の端面が上下方向に対して傾斜してもよい。
【0036】
図1に示すように、各固定部側差込部41,42は、下方に隣接する出隅部材2の固定片301,302の上端部の裏側(内面側)に位置し、この上端部とこれに対向する胴縁541,542の外面との間に配置されている。これにより、各固定部側差込部41,42は、下方に隣接する出隅部材2の対応する固定部30及び胴縁541,542によって、屋内側及び屋外側に移動することが規制されている。
【0037】
図3に示すように、各化粧部側差込部43,44の外側(他方の化粧部側差込部43,44に接続された端部とは反対側)の端面は、下端に近い部分ほど内側に位置するように上下方向に対して傾斜した傾斜面になっている。これにより、各化粧部側差込部43,44の幅は、化粧部側差込部43,44の下側(先端側)ほど小さくなっている。化粧部側差込部43,44の外側の端面の下端部は、下側ほど内側に位置するように湾曲した弧状の曲面になっており、化粧部側差込部43,44の下端面に連続している。なお、化粧部側差込部43,44の外側の端面の下端部は、曲面になっていなくてもよい。また、化粧部側差込部43,44は、対応する固定部側差込部41,42に繋がっていない場合、化粧部側差込部43,44の幅が下側ほど小さくなるのであれば、内側(対応する固定部側差込部41,42側)の端面が下端に近い部分ほど外側に位置するように傾斜していてもよいし、幅方向の両側の端面が上下方向に対して傾斜してもよい。
【0038】
図1に示すように、各化粧部側差込部43,44は、下方に隣接する出隅部材2の対応する端面覆部313,315の上端部における表面部313A,315Aと裏面部313B,315Bとの間に位置している。これにより、各化粧部側差込部43,44は、下方に隣接する出隅部材2の対応する化粧片311,312によって表側及び裏側に移動することが規制されている。すなわち、上下に隣接する出隅部材2のうち下側に位置する出隅部材2は、化粧部31の上端部における表面部313A,315Aと裏面部313B,315Bとで形成され、化粧部側差込部43,44と同一形状の他の化粧部側差込部(上側に位置する出隅部材2の化粧部側差込部43,44)を差込可能な受部317,318を有している。
【0039】
図2に示すように、上下方向に隣接する出隅部材2のうちの上側の出隅部材2は、各固定片301,302の出隅とは反対側の端部の下端面が、下側の出隅部材2の対応する固定片301,302における出隅とは反対側の端部の上端面に突き付けられている。また、上側の出隅部材2は、各化粧片311,312の表面覆部314,316の下端面及び端面覆部313,315の表面部313A,315Aの下端面は、下側の出隅部材2の対応する化粧片311,312の表面覆部314,316の上端面及び端面覆部313,315の表面部313A,315Aの上端面にそれぞれ突き付けられている。
【0040】
図1に示す複数の壁材6の各々は、例えば、窯業系パネル、木製パネル、ALC(Autoclaved Lightweight aerated Concrete)パネル又は金属系サイディング等である。各壁材6は、矩形板状に形成されている。
【0041】
複数の壁材6のうちの一つである一方壁材61は、出隅側の端部が、出隅部材2の一方固定片301及び一方化粧片311で構成された、出隅とは反対側に開口する凹部に嵌まり込んだ状態で、壁下地5に取り付けられている。
【0042】
一方壁材61は、例えば、釘又はビス等の固着具によって複数の胴縁54に固定されることで、壁下地5に取り付けられる。一方壁材61の裏面(内面)は、出隅部材2の一方固定片301の外面に沿っている。一方壁材61の出隅側の端面は、出隅部材2の一方化粧片311の端面覆部313の裏面に沿っている。一方壁材61の表面(外面)における出隅側の端部は、出隅部材2の一方化粧片311の表面覆部314の裏面(内面)に沿っている。
【0043】
複数の壁材6のうちの一つである他方壁材62は、出隅側の端部が、出隅部材2の他方固定片302及び他方化粧片312で構成された出隅とは反対側に開口する凹部に嵌まり込んだ状態で、壁下地5に取り付けられている。
【0044】
他方壁材62は、例えば、釘又はビス等の固着具によって複数の胴縁54に固定されることで、壁下地5に取り付けられる。他方壁材62の裏面(内面)は、出隅部材2の他方固定片302の外面に沿っている。他方壁材62の出隅側の端面は、出隅部材2の他方化粧片312の端面覆部315の裏面に沿っている。他方壁材62の表面(外面)における出隅側の端部は、出隅部材2の他方化粧片312の表面覆部316の裏面(内面)に沿っている。
【0045】
一方壁材61及び他方壁材62は、例えば、複数の出隅部材2が上下方向に並んだ状態で壁下地5に取り付けられた後、壁下地5に取り付けられる。
【0046】
複数の出隅部材2は、例えば、下方に位置する出隅部材2から順に壁下地5に取り付けられる。この場合、複数の出隅部材2のうち最下段に位置する出隅部材2が最初に壁下地5に取り付けられる。次に、この出隅部材2の上方に、他の出隅部材2が壁下地5に取り付けられる。この際、上側に位置する出隅部材2は、本体部3から下方に突出した突出部4が、先に壁下地5に取り付けられた下側の出隅部材2の上端部に差し込まれることにより、下側の出隅部材2に接続される。この場合、上側の出隅部材2の各固定部側差込部41,42は、下側の出隅部材2の対応する固定片301,302と対応する胴縁54との間に上方から差し込まれる。また、上側の出隅部材2の各化粧部側差込部43,44は、下側の出隅部材2の対応する受部317,318(端面覆部313,315の表面部313A,315Aと裏面部313B,315Bとの間)に上方から差し込まれる。
【0047】
上述したように、各固定部側差込部41,42の幅は、下側ほど小さくなっている(図3参照)。このため、各固定部側差込部41,42は、下側の出隅部材2の対応する固定片301,302と対応する胴縁54との間に差し込みやすい。また、各化粧部側差込部43,44の幅は下側ほど小さくなっている(図3参照)。このため、各化粧部側差込部43,44は、下側の出隅部材2の対応する端面覆部313,315の表面部313A,315Aと裏面部313B,315Bとの間に差し込みやすい。したがって、作業者は、出隅部材2を他の出隅部材2に容易に接続することができ、出隅部材2の施工を容易に行うことができる。
【0048】
固定部側差込部41,42の出隅とは反対側の端面の下端部は、固定部側差込部41,42の下端面に連続した弧状の曲面になっている(図3参照)。このため、固定部側差込部41,42は、下側の出隅部材2の固定片301,302と胴縁541,542との間に一層差し込みやすい。
【0049】
例えば、化粧部側差込部43,44が端面覆部313,315の裏面部313B,315Bではなく、表面部313A,315Aから突出していたとする。この場合、同表面部313A,315Aの表面に沿って流れる雨水は、化粧部側差込部43,44の表面を伝って、下側の出隅部材2の対応する端面覆部313,315の表面部313A,315Aと裏面部313B,315Bとの間に流れ込む可能性がある。しかし、本実施形態では、化粧部側差込部43,44が端面覆部313,315の裏面部313B,315Bから突出しているため、表面部313A,315Aと裏面部313B,315Bとの間に雨水が入り難い。
【0050】
また、化粧部側差込部43,44が端面覆部313,315の裏面部313B,315Bから突出していることは、以下の利点を有する。すなわち、本実施形態のように一枚の金属板から出隅部材2を製造する場合、化粧部側差込部43,44及び固定部側差込部41,42を構成する板状部分を曲げるだけで、化粧部側差込部43,44及び固定部側差込部41,42を形成することができる。したがって、出隅部材2を容易に製造することができる。
【0051】
なお、本実施形態の各固定部側差込部41,42は、下側の出隅部材2の対応する固定片301,302と対応する胴縁54との間に配置されるが、固定部側差込部41,42が対応する化粧部側差込部43,44に繋がっていない場合、下側の出隅部材2の対応する固定片301,302の表面側に配置されてもよい。この場合、各固定部側差込部41,42は、例えば、下側の出隅部材2の対応する固定片301,302の折返部303,304と、同固定片301,302に連続する端面覆部313,315との間に上方から差し込まれる。
【0052】
化粧部側差込部43,44の外側の端面の下端部は、下側ほど内側に位置するように湾曲した弧状の曲面になっている(図3参照)。このため、化粧部側差込部43,44は、下側の出隅部材2の端面覆部313,315の表面部313A,315Aと裏面部313B,315Bとの間に一層差し込みやすい。
【0053】
また、各化粧部側差込部43,44は、対応する端面覆部313,315の表面部313A,315Aから下方に突出してもよい。また、本実施形態の突出部4は、出隅部材2の下端部に形成されているが、出隅部材2の上端部に形成されてもよい。この場合、上下方向に隣接する出隅部材2は、下側の出隅部材2の本体部3から上方に突出した突出部4が、上側の出隅部材2の下端部に差し込まれることによって接続される。また、出隅部材2は、固定部側差込部41,42を有さなくてもよい。また、この他、上記実施形態の出隅部材2の接続構造1における各要素の形状、大きさ、位置、数及び材質等は、適宜変更可能である。
【0054】
(2)態様
以上説明した実施形態から明らかなように、第1の態様の出隅部材2の接続構造1は、以下に示す構成を有する。出隅部材2の接続構造1は、上下方向に隣接する二つの出隅部材2を備える。各出隅部材2は、固定部30と、化粧部31とを有する。固定部30は、壁下地5の出隅部分に固定されている。化粧部31は、固定部30に繋がり、建物の出隅部分において隣り合う二つの壁材61,62の出隅側の端部を覆っている。化粧部31は、表面部313A,315Aと、裏面部313B,315Bとを有している。二つの出隅部材2のうちの一方の出隅部材2は、差込部(化粧部側差込部)43,44を更に有している。差込部43,44は、化粧部31から他方の出隅部材2側に突出し、他方の出隅部材2の表面部313A,315Aと裏面部313B,315Bとの間に配置されている。差込部43,44は、先端側ほど幅が小さい。
【0055】
この態様によれば、一方の出隅部材2の差込部43,44を、他方の出隅部材2の表面部313A,315Aと裏面部313B,315Bとの間に差し込むことで、上下に隣接する出隅部材2を接続することができる。この場合、差込部43,44は、先端側ほど幅が小さいため、他方の出隅部材2の表面部313A,315Aと裏面部313B,315Bとの間に容易に差し込むことができる。したがって、上下に隣接する出隅部材2を容易に接続することができる。
【0056】
第2の態様の出隅部材2の接続構造1は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様は、以下に示す構成を有する。一方の出隅部材2の固定部30は、固定部30における出隅とは反対側の端部に折返部303,304を有する。一方の出隅部材2は、固定部30から他方の出隅部材2側に突出し、他方の出隅部材2の固定部30の裏側に配置された別の差込部(固定部側差込部)41,42を更に有する。別の差込部41,42は、先端側ほど幅が小さい。
【0057】
この態様によれば、一方の出隅部材2の別の差込部41,42を、他方の出隅部材2の固定部30の裏側に差し込むことにより、上下に隣接する出隅部材2をより強固に接続することができる。また、別の差込部41,42は、先端側ほど幅が小さいため、他方の出隅部材2の固定部30の裏側に容易に差し込むことができる。
【0058】
第3の態様の出隅部材2は、以下に示す構成を有する。固定部30と、化粧部31とを備える。固定部30は、壁下地5の出隅部分に固定される。化粧部31は、固定部30に繋がり、建物の出隅部分において隣り合う二つの壁材61,62の出隅側の端部を覆う。化粧部31は、表面部313A,315A、裏面部313B,315B、差込部43,44及び受部317,318を有する。差込部43,44は、化粧部31の上下方向の一端部に形成され、表面部313A,315A及び裏面部313B,315Bのうちの一方から上下方向に沿って突出し、先端側ほど幅が小さい。受部317,318は、化粧部31の上下方向の他端部(差込部43,44とは反対側の端部)における表面部313A,315Aと裏面部313B,315Bとで形成され、差込部43,44と同一形状の他の差込部43,44を差込可能である。
【0059】
この態様によれば、出隅部材2の差込部43,44を、他の出隅部材2の受部317,318に差し込むことで、出隅部材2を他の出隅部材2に接続することができる。この場合、差込部43,44は、先端側ほど幅が小さいため、他の出隅部材2の受部317,318に容易に差し込むことができる。したがって、出隅部材2を他の出隅部材2に容易に接続することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 接続構造
2 出隅部材
30 固定部
303 折返部
304 折返部
31 化粧部
313A 表面部
313B 裏面部
315A 表面部
315B 裏面部
317 受部
318 受部
41 固定部側差込部(別の差込部)
42 固定部側差込部(別の差込部)
43 化粧部側差込部(差込部)
44 化粧部側差込部(差込部)
5 壁下地
61 一方壁材(壁材)
62 他方壁材(壁材)
図1
図2
図3
図4