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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】接着剤及びアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 1/00 20060101AFI20241107BHJP
   B23K 35/14 20060101ALI20241107BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20241107BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20241107BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20241107BHJP
   H05K 1/14 20060101ALI20241107BHJP
   B23K 35/26 20060101ALN20241107BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20241107BHJP
【FI】
C09J1/00
B23K35/14 Z
B32B7/12
B32B15/08 N
C09J201/00
H05K1/14 H
B23K35/26 310A
C22C13/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020556996
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2020033932
(87)【国際公開番号】W WO2021054194
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2019169956
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 淳
(72)【発明者】
【氏名】松下 清人
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第98/046811(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/026990(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00
B23K 35/14
B32B 7/12
B32B 15/08
C09J 201/00
H05K 1/14
B23K 35/26
C22C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板とにおいて、前記第1の金属部と前記第2の金属部とを接着するための接着剤であり、
前記第1の基板と前記第2の基板との組み合わせが、高周波基板とアンテナを構成する基板との組み合わせであり、
前記接着剤は、アンテナ装置において、前記高周波基板と前記アンテナを構成する基板との間隔を均一かつ一定に保持するために用いられ、
下記評価試験1aにより算出される基板間におけるギャップの変化率が、10%以下である、接着剤。
評価試験1a:
第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板と、接着剤とを用意する。前記第1の基板における前記第1の金属部上に前記接着剤を配置し、前記接着剤の前記第1の基板側とは反対の表面上に、前記第2の基板を、前記第1の金属部と前記第2の金属部とが対向するように配置する。その後、JEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件でリフロー処理を行うことにより前記第1の基板と前記第2の基板とを接着して、積層体を得る。得られた積層体の基板間のギャップを測定し、加熱前のギャップとする。その後、得られた積層体をJEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件で、4回のリフロー処理を行い、リフロー処理後における積層体の基板間のギャップを測定し、加熱後のギャップとする。加熱前後のギャップから、下記式(1)によりギャップの変化率を算出する。
ギャップの変化率=[(加熱前のギャップ-加熱後のギャップ)/加熱前のギャップ]×100 式(1)
【請求項2】
金属粒子を含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板とにおいて、前記第1の金属部と前記第2の金属部とを接着するための接着剤であり、
前記第1の基板と前記第2の基板との組み合わせが、高周波基板とアンテナを構成する基板との組み合わせであり、
前記接着剤は、アンテナ装置において、前記高周波基板と前記アンテナを構成する基板との間隔を均一かつ一定に保持するために用いられ、
前記接着剤が、金属粒子を含み、
下記評価試験1bにより算出される加熱後のギャップの、前記金属粒子の平均粒子径に対する比が、0.70以上0.97以下である、接着剤。
評価試験1b:
第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板と、接着剤とを用意する。前記第1の基板における前記第1の金属部上に前記接着剤を配置し、前記接着剤の前記第1の基板側とは反対の表面上に、前記第2の基板を、前記第1の金属部と前記第2の金属部とが対向するように配置する。その後、JEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件でリフロー処理を行うことにより前記第1の基板と前記第2の基板とを接着して、積層体を得る。得られた積層体をJEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件で、4回のリフロー処理を行い、リフロー処理後における積層体の基板間のギャップを測定し、加熱後のギャップとする。
【請求項4】
前記金属粒子が、基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された金属層とを有する、請求項2又は3に記載の接着剤。
【請求項5】
前記金属層が、前記基材粒子の表面上に配置された第2の金属層と、前記第2の金属層の表面上に配置された第1の金属層とを有し、
前記第1の金属層が、はんだ層である、請求項4に記載の接着剤。
【請求項6】
下記評価試験2により算出される基板間における接着強度の変化率が、10%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の接着剤。
評価試験2:
第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板と、接着剤とを用意する。前記第1の基板における前記第1の金属部上に前記接着剤を配置し、前記接着剤の前記第1の基板側とは反対の表面上に、前記第2の基板を、前記第1の金属部と前記第2の金属部とが対向するように配置する。その後、JEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件でリフロー処理を行うことにより前記第1の基板と前記第2の基板とを接着して、積層体を得る。得られた積層体を用いて、MIL STD-883Gに準拠した条件で基板間の接着強度を測定し、加熱前の接着強度とする。その後、得られた積層体をJEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件で、4回のリフロー処理を行い、リフロー処理後における積層体を用いて、MIL STD-883Gに準拠した条件で基板間の接着強度を測定し、加熱後の接着強度とする。加熱前後の接着強度から、下記式(2)により接着強度の変化率を算出する。
接着強度の変化率=[(加熱前の接着強度-加熱後の接着強度)/加熱前の接着強度]×100 式(2)
【請求項7】
前記第1の基板が、ガラスエポキシ基板又はセラミック基板であり、
前記第2の基板が、ガラスエポキシ基板、セラミック基板又はシリコン基板である、請求項1~6のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項8】
前記第1の金属部が、銅により形成されているか、又は、ニッケル/金めっきにより形成されており、
前記第2の金属部が、銅により形成されているか、又は、ニッケル/金めっきにより形成されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項9】
第1の金属部を表面に有する第1の基板と、
第2の金属部を表面に有する第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板とを接着している接着剤部とを備え、
前記接着剤部の材料が、請求項1~8のいずれか1項に記載の接着剤であり、
前記第1の金属部と前記第2の金属部とが、前記接着剤部により接着されており、
前記第1の基板と前記第2の基板との組み合わせが、高周波基板とアンテナを構成する基板との組み合わせであり、
前記高周波基板と前記アンテナを構成する基板との間隔が、前記接着剤部により均一かつ一定に保持されており、
前記第1の基板と前記第2の基板と前記接着剤部とにより、エアキャビティが形成されている、アンテナ装置。
【請求項10】
前記第1の基板が、ガラスエポキシ基板又はセラミック基板であり、
前記第2の基板が、ガラスエポキシ基板、セラミック基板又はシリコン基板である、請求項9に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記第1の金属部が、銅により形成されているか、又は、ニッケル/金めっきにより形成されており、
前記第2の金属部が、銅により形成されているか、又は、ニッケル/金めっきにより形成されている、請求項9又は10に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの基板を接着するための接着剤に関する。また、本発明は、上記接着剤を用いたアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの被着体を接着するために、様々な接着剤が用いられている。また、該接着剤により形成される接着層の厚みを均一にし、2つの被着体の間隔(ギャップ)を制御するために、接着剤にギャップ材等のスペーサが配合されることがある。
【0003】
近年、スマートフォン、タブレット端末等の急速な普及に伴い、トラフィックの急増が課題となっている。このため、3GPP(Third Generation Partnership Project)によるLTE(Long Term Evolution)、LTE-A(LTE-Advanced)のような通信システムの後継システムや、新しい無線通信システムとして、第5世代移動通信システム(5G)の検討が進められている。
【0004】
例えば、第5世代移動通信システム(5G)では、より広い帯域を用いて高速伝送を実現するために、LTE、LTE-Aと比較して、高い搬送周波数を用いて通信することが検討されている。しかしながら、高い搬送周波数で通信する場合に、従来のアンテナ装置では、十分に性能を発揮することができない可能性がある。従来のアンテナ装置は、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【0005】
下記の特許文献1には、アンテナと多層高周波基板とを備えるアンテナ装置が開示されている。上記アンテナは、裏面に給電用導体を有する。上記多層高周波基板は、表面に、ランドを備える複数のストリップ線路を積層して構成されている。上記ランドは、スルーホールを介して、ストリップ導体と電気的に接続される。上記多層高周波基板では、積層する上記ストリップ線路のランドの間は、異方導電性接着剤により接合される。上記アンテナ装置では、上記アンテナの給電用導体と上記多層高周波基板の表面のランドとは異方導電性接着剤により接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-185550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
第5世代移動通信システム(5G)に向けた基地局及び端末のアンテナにおいては、通信速度の向上及び通信品質の向上等が要求される。通信速度の向上及び通信品質の向上等を達成するために、アンテナ内にエアキャビティ(空間)を設けることが検討されている。アンテナ内にエアキャビティ(空間)を設けることで、帯域幅を向上させたり、電磁波ノイズを低減したりすることができる。結果として、アンテナの通信速度及び通信品質等を向上させることができる。
【0008】
従来のアンテナ装置では、高いレベルの通信速度及び通信品質が要求されておらず、アンテナ内にエアキャビティ(空間)が設けられていないことがある。上記エアキャビティ(空間)は、例えば、高周波基板と、アンテナを構成する基板との間隔(ギャップ)を均一かつ一定に保持することにより形成される。アンテナの通信速度及び通信品質等を向上させるためには、上記エアキャビティ(空間)の間隔(ギャップ)を高精度に制御することが要求される。
【0009】
また、接着剤を用いて、アンテナ内にエアキャビティ(空間)を形成するように、2つの基板を接着してアンテナ装置を得たときに、該アンテナ装置は繰り返し加熱されることがある。アンテナ装置が繰り返し加熱されることで、上記エアキャビティ(空間)の間隔(ギャップ)を高精度に制御することができず、アンテナの通信速度及び通信品質等を向上させることが困難なことがある。
【0010】
本発明の目的は、繰り返し加熱された場合でも、エアキャビティのギャップを高精度に制御することができる接着剤を提供することである。また、本発明の目的は、上記接着剤を用いたアンテナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板とにおいて、前記第1の金属部と前記第2の金属部とを接着するための接着剤であり、下記評価試験1aにより算出される基板間におけるギャップの変化率が、10%以下である、接着剤が提供される。
【0012】
評価試験1a:
第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板と、接着剤とを用意する。前記第1の基板における前記第1の金属部上に前記接着剤を配置し、前記接着剤の前記第1の基板側とは反対の表面上に、前記第2の基板を、前記第1の金属部と前記第2の金属部とが対向するように配置する。その後、JEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件でリフロー処理を行うことにより前記第1の基板と前記第2の基板とを接着して、積層体を得る。得られた積層体の基板間のギャップを測定し、加熱前のギャップとする。その後、得られた積層体をJEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件で、4回のリフロー処理を行い、リフロー処理後における積層体の基板間のギャップを測定し、加熱後のギャップとする。加熱前後のギャップから、下記式(1)によりギャップの変化率を算出する。
【0013】
ギャップの変化率=[(加熱前のギャップ-加熱後のギャップ)/加熱前のギャップ]×100 式(1)
【0014】
本発明に係る接着剤のある特定の局面では、前記接着剤が、金属粒子を含む。
【0015】
本発明の広い局面によれば、第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板とにおいて、前記第1の金属部と前記第2の金属部とを接着するための接着剤であり、前記接着剤が、金属粒子を含み、下記評価試験1bにより算出される加熱後のギャップの、前記金属粒子の平均粒子径に対する比が、0.70以上0.97以下である、接着剤が提供される。
【0016】
評価試験1b:
第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板と、接着剤とを用意する。前記第1の基板における前記第1の金属部上に前記接着剤を配置し、前記接着剤の前記第1の基板側とは反対の表面上に、前記第2の基板を、前記第1の金属部と前記第2の金属部とが対向するように配置する。その後、JEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件でリフロー処理を行うことにより前記第1の基板と前記第2の基板とを接着して、積層体を得る。得られた積層体をJEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件で、4回のリフロー処理を行い、リフロー処理後における積層体の基板間のギャップを測定し、加熱後のギャップとする。
【0017】
本発明に係る接着剤のある特定の局面では、前記金属粒子が、基材粒子と、前記基材粒子の表面上に配置された金属層とを有する。
【0018】
本発明に係る接着剤のある特定の局面では、前記金属層が、前記基材粒子の表面上に配置された第2の金属層と、前記第2の金属層の表面上に配置された第1の金属層とを有し、前記第1の金属層が、はんだ層である。
【0019】
本発明に係る接着剤のある特定の局面では、下記評価試験2により算出される基板間における接着強度の変化率が、10%以下である。
【0020】
評価試験2:
第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板と、接着剤とを用意する。前記第1の基板における前記第1の金属部上に前記接着剤を配置し、前記接着剤の前記第1の基板側とは反対の表面上に、前記第2の基板を、前記第1の金属部と前記第2の金属部とが対向するように配置する。その後、JEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件でリフロー処理を行うことにより前記第1の基板と前記第2の基板とを接着して、積層体を得る。得られた積層体を用いて、MIL STD-883Gに準拠した条件で基板間の接着強度を測定し、加熱前の接着強度とする。その後、得られた積層体をJEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件で、4回のリフロー処理を行い、リフロー処理後における積層体を用いて、MIL STD-883Gに準拠した条件で基板間の接着強度を測定し、加熱後の接着強度とする。加熱前後の接着強度から、下記式(2)により接着強度の変化率を算出する。
【0021】
接着強度の変化率=[(加熱前の接着強度-加熱後の接着強度)/加熱前の接着強度]×100 式(2)
【0022】
本発明に係る接着剤のある特定の局面では、前記第1の基板が、ガラスエポキシ基板又はセラミック基板であり、前記第2の基板が、ガラスエポキシ基板、セラミック基板又はシリコン基板である。
【0023】
本発明に係る接着剤のある特定の局面では、前記第1の金属部が、銅により形成されているか、又は、ニッケル/金めっきにより形成されており、前記第2の金属部が、銅により形成されているか、又は、ニッケル/金めっきにより形成されている。
【0024】
本発明の広い局面によれば、第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板とを接着している接着剤部とを備え、前記接着剤部の材料が、上述した接着剤であり、前記第1の金属部と前記第2の金属部とが、前記接着剤部により接着されており、前記第1の基板と前記第2の基板と前記接着剤部とにより、エアキャビティが形成されている、アンテナ装置が提供される。
【0025】
本発明に係るアンテナ装置のある特定の局面では、前記第1の基板が、ガラスエポキシ基板又はセラミック基板であり、前記第2の基板が、ガラスエポキシ基板、セラミック基板又はシリコン基板である。
【0026】
本発明に係るアンテナ装置のある特定の局面では、前記第1の金属部が、銅により形成されているか、又は、ニッケル/金めっきにより形成されており、前記第2の金属部が、銅により形成されているか、又は、ニッケル/金めっきにより形成されている。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る接着剤は、第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板とにおいて、上記第1の金属部と上記第2の金属部とを接着するための接着剤である。本発明に係る接着剤では、上記評価試験1aにより算出される基板間におけるギャップの変化率が、10%以下である。本発明に係る接着剤では、上記の構成が備えられているので、繰り返し加熱された場合でも、エアキャビティのギャップを高精度に制御することができる。
【0028】
本発明に係る接着剤は、第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板とにおいて、上記第1の金属部と上記第2の金属部とを接着するための接着剤である。本発明に係る接着剤は、金属粒子を含む。本発明に係る接着剤では、上記評価試験1bにより算出される加熱後のギャップの、上記金属粒子の平均粒子径に対する比が、0.70以上0.97以下である。本発明に係る接着剤では、上記の構成が備えられているので、繰り返し加熱された場合でも、エアキャビティのギャップを高精度に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る接着剤に使用可能な金属粒子の第1の例を示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る接着剤に使用可能な金属粒子の第2の例を示す断面図である。
図3図3は、本発明に係る接着剤を用いたアンテナ装置の一例を示す断面図である。
図4図4は、図3に示すアンテナ装置における金属粒子と金属部との接着部分を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0031】
(接着剤)
本発明に係る接着剤は、第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板とにおいて、上記第1の金属部と上記第2の金属部とを接着するための接着剤である。本発明に係る接着剤では、下記評価試験1aにより算出される基板間におけるギャップの変化率が、10%以下である。
【0032】
評価試験1a:
第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板と、接着剤とを用意する。上記第1の基板における上記第1の金属部上に上記接着剤を配置し、上記接着剤の上記第1の基板側とは反対の表面上に、上記第2の基板を、上記第1の金属部と上記第2の金属部とが対向するように配置する。その後、JEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件でリフロー処理を行うことにより上記第1の基板と上記第2の基板とを接着して、積層体を得る。得られた積層体の基板間のギャップを測定し、加熱前のギャップとする。すなわち、加熱前のギャップとは、積層体が加熱される前のギャップを意味する。その後、得られた積層体をJEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件で、4回のリフロー処理を行い、リフロー処理後における積層体の基板間のギャップを測定し、加熱後のギャップとする。すなわち、加熱後のギャップとは、積層体が4回加熱された後のギャップを意味する。加熱前後のギャップから、下記式(1)によりギャップの変化率を算出する。
【0033】
ギャップの変化率=[(加熱前のギャップ-加熱後のギャップ)/加熱前のギャップ]×100 式(1)
【0034】
上記評価試験1aでは、上記加熱前のギャップが、60μm以上となるように上記接着剤が配置されることが好ましく、850μm以下となるように上記接着剤が配置されることが好ましい。
【0035】
本発明の係る接着剤は、第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板とにおいて、上記第1の金属部と上記第2の金属部とを接着するための接着剤である。本発明に係る接着剤は、金属粒子を含む。本発明に係る接着剤では、下記評価試験1bにより算出される加熱後のギャップの、上記金属粒子の平均粒子径に対する比が、0.70以上0.97以下である。
【0036】
評価試験1b:
第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板と、接着剤とを用意する。上記第1の基板における上記第1の金属部上に上記接着剤を配置し、上記接着剤の上記第1の基板側とは反対の表面上に、上記第2の基板を、上記第1の金属部と上記第2の金属部とが対向するように配置する。その後、JEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件でリフロー処理を行うことにより上記第1の基板と上記第2の基板とを接着して、積層体を得る。得られた積層体をJEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件で、4回のリフロー処理を行い、リフロー処理後における積層体の基板間のギャップを測定し、加熱後のギャップとする。
【0037】
上記評価試験1bでは、上記積層体(リフロー処理前の積層体)の基板間のギャップが、60μm以上となるように上記接着剤が配置されることが好ましく、850μm以下となるように上記接着剤が配置されることが好ましい。
【0038】
本発明に係る接着剤では、上記の構成が備えられているので、繰り返し加熱された場合でも、エアキャビティのギャップを高精度に制御することができる。
【0039】
接着剤を用いて、アンテナ内にエアキャビティ(空間)を形成するように、2つの基板を接着してアンテナ装置を得たときに、該アンテナ装置は繰り返し加熱されることがある。従来の接着剤を用いて得られるアンテナ装置では、アンテナ装置が繰り返し加熱されることで、上記エアキャビティ(空間)の間隔(ギャップ)を高精度に制御することができず、アンテナの通信速度及び通信品質等を向上させることが困難なことがある。
【0040】
これに対して、本発明に係る接着剤では、上記の構成が備えられているので、繰り返し加熱された場合でも、基板間のギャップを高精度に制御することができ、上記エアキャビティのギャップを高精度に制御することができる。結果として、アンテナの通信速度及び通信品質等をより一層向上させることができる。
【0041】
本発明に係る接着剤は、第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板とにおいて、上記第1の金属部と上記第2の金属部とを接着するための接着剤である。本発明に係る接着剤は、2つの基板を接着するための接着剤である。本発明に係る接着剤は、2つの基板における金属部同士を接着するための接着剤であることが好ましい。
【0042】
本発明に係る接着剤では、上記評価試験1aにより算出される基板間におけるギャップの変化率は、10%以下である。上記評価試験1aにより算出される基板間におけるギャップの変化率は、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。上記評価試験1aにより算出される基板間におけるギャップの変化率が上記上限以下であると、繰り返し加熱された場合でも、エアキャビティのギャップを高精度に制御することができる。
【0043】
本発明に係る接着剤では、上記評価試験1bにより算出される加熱後のギャップの、上記金属粒子の平均粒子径に対する比(上記評価試験1bにより算出される加熱後のギャップ/金属粒子の平均粒子径)が、0.70以上0.97以下である。上記比(上記評価試験1bにより算出される加熱後のギャップ/金属粒子の平均粒子径)は、好ましくは0.75以上、より好ましくは0.80以上であり、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.90以下である。上記比(上記評価試験1bにより算出される加熱後のギャップ/金属粒子の平均粒子径)が上記下限以上及び上記上限以下であると、繰り返し加熱された場合でも、エアキャビティのギャップを高精度に制御することができる。
【0044】
上記接着剤では、下記評価試験2により算出される基板間における接着強度の変化率は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である。下記評価試験2により算出される基板間における接着強度の変化率が上記上限以下であると、繰り返し加熱された場合でも、基板間における接着強度を維持することができ、エアキャビティのギャップを高精度に制御することができる。
【0045】
評価試験2:
第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板と、接着剤とを用意する。上記第1の基板における上記第1の金属部上に上記接着剤を配置し、上記接着剤の上記第1の基板側とは反対の表面上に、上記第2の基板を、上記第1の金属部と上記第2の金属部とが対向するように配置する。その後、JEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件でリフロー処理を行うことにより上記第1の基板と上記第2の基板とを接着して、積層体を得る。得られた積層体を用いて、MIL STD-883Gに準拠した条件で基板間の接着強度を測定し、加熱前の接着強度とする。その後、得られた積層体をJEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件で、4回のリフロー処理を行い、リフロー処理後における積層体を用いて、MIL STD-883Gに準拠した条件で基板間の接着強度を測定し、加熱後の接着強度とする。加熱前後の接着強度から、下記式(2)により接着強度の変化率を算出する。
【0046】
接着強度の変化率=[(加熱前の接着強度-加熱後の接着強度)/加熱前の接着強度]×100 式(2)
【0047】
上記評価試験2では、上記積層体(リフロー処理前の積層体)の基板間のギャップが、60μm以上となるように上記接着剤が配置されることが好ましく、850μm以下となるように上記接着剤が配置されることが好ましい。
【0048】
上記評価試験2において、上記加熱前の接着強度は、好ましくは1.5kgf以上、より好ましくは2.0kgf以上である。上記加熱前の接着強度が上記下限以上であると、繰り返し加熱された場合でも、基板間における接着強度を維持することができ、エアキャビティのギャップを高精度に制御することができる。
【0049】
上記評価試験1a、上記評価試験1b、及び上記評価試験2において、上記第1の基板は、ガラスエポキシ基板又はセラミック基板であることが好ましい。上記評価試験1a、上記評価試験1b、及び上記評価試験2において、上記第2の基板は、ガラスエポキシ基板、セラミック基板又はシリコン基板であることが好ましい。
【0050】
上記評価試験1a、上記評価試験1b、及び上記評価試験2において、上記第1の金属部は、銅により形成されているか、又は、ニッケル/金めっきにより形成されていることが好ましい。上記評価試験1a、上記評価試験1b、及び上記評価試験2において、上記第2の金属部は、銅により形成されているか、又は、ニッケル/金めっきにより形成されていることが好ましい。
【0051】
上記評価試験1a、上記評価試験1b、及び上記評価試験2は、上記ギャップの変化率、上記比(上記評価試験1bにより算出される加熱後のギャップ/金属粒子の平均粒子径)及び上記接着強度の変化率を算出するために行われる。上記接着剤の実際の使用時には、上記評価試験1a、上記評価試験1b、及び上記評価試験2で規定されている条件で処理されなくてもよい。例えば、上記接着剤の実際の使用時には、JEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件でリフロー処理が行われなくてもよい。
【0052】
繰り返し加熱された場合でも、エアキャビティのギャップを高精度に制御する観点からは、上記接着剤は、金属粒子を含むことが好ましい。上記接着剤は、上記金属粒子以外の成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。繰り返し加熱された場合でも、エアキャビティのギャップをより一層高精度に制御する観点からは、上記接着剤は、上記金属粒子のみを含むことが好ましく、複数の金属粒子の粒子群であることが好ましい。
【0053】
上記接着剤は、例えば、2つの被着体を接着可能である。上記被着体は、基板であることが好ましく、金属部を表面に有する基板であることがより好ましい。上記接着剤は、2つの基板を接着するために用いられることが好ましい。上記接着剤は、2つの金属部同士を接着するために用いられることが好ましい。さらに、上記接着剤は、2つの基板のギャップを制御するために用いられることが好ましい。上記接着剤は、2つの基板間におけるギャップを制御するために用いられることが好ましい。
【0054】
上記接着剤は、導電接続に用いられてもよく、導電接続に用いられなくてもよい。上記接着剤は、アンテナ装置に用いられることが好ましい。上記接着剤は、エアキャビティを形成するために用いられることが好ましい。上記接着剤は、アンテナ装置において、エアキャビティを形成するために用いられることが好ましい。上記接着剤は、アンテナ装置において、高周波基板と、アンテナを構成する基板との間隔(ギャップ)を均一かつ一定に保持するために用いられることが好ましい。上記接着剤は、アンテナ装置において、エアキャビティを形成し、アンテナの通信速度及び通信品質等を向上させるために用いられることが好ましい。
【0055】
(金属粒子)
本発明に係る接着剤は、金属粒子を含むことが好ましい。上記金属粒子は、金属を含む粒子を意味する。上記金属粒子は、金属以外の構成成分を有していてもよい。上記金属粒子は、例えば、2つの基板の間隔(ギャップ)を規制する役割を有することが好ましい。上記金属粒子は、はんだのみにより形成されたはんだ粒子ではないことが好ましい。上記金属粒子は、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置された金属層とを有することが好ましい。上記金属層は、単層構造であってもよく、2層以上の複層構造であってもよい。
【0056】
上記金属粒子は、上記金属層の外表面部分にはんだを有することが好ましい。上記基材粒子は、はんだのみにより形成されたはんだ粒子ではないことが好ましい。なお、上記金属粒子が、中心部分及び金属層の外表面部分のいずれもがはんだにより形成されたはんだ粒子である場合には、繰り返し加熱された際に、加熱によりはんだが濡れ拡がるために、エアキャビティのギャップを制御することが困難なことがある。上記金属粒子が、はんだにより形成されていない基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置された金属層(はんだ層)とを有する金属粒子である場合には、繰り返し加熱されても、加熱によるはんだの過度な濡れ拡がりを抑制することができるので、エアキャビティのギャップを高精度に制御することができる。したがって、上記金属粒子は、はんだにより形成されたはんだ粒子ではないことが好ましい。上記金属粒子は、中心部分及び金属層の外表面部分のいずれもがはんだにより形成されたはんだ粒子ではないことが好ましい。
【0057】
上記金属粒子の平均粒子径は、特に限定されない。上記金属粒子の平均粒子径は、目的とするエアキャビティのギャップに合わせて適宜選択することができる。上記金属粒子の平均粒子径は、例えば、80μm以上であってもよく、900μm以下であってもよい。
【0058】
上記金属粒子の平均粒子径は、数平均粒子径であることが好ましい。上記金属粒子の平均粒子径は、例えば、任意の金属粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各金属粒子の粒子径の平均値を算出することや、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりの金属粒子の粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意の50個の金属粒子の円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。レーザー回折式粒度分布測定では、1個当たりの金属粒子の粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。
【0059】
上記金属粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。上記金属粒子の粒子径の変動係数が上記上限以下であると、エアキャビティのギャップをより一層高精度に制御することができる。
【0060】
上記変動係数(CV値)は、以下のようにして測定できる。
【0061】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:金属粒子の粒子径の標準偏差
Dn:金属粒子の粒子径の平均値
【0062】
上記金属粒子の形状は特に限定されない。上記金属粒子の形状は、球状であってもよく、球状以外の形状であってもよく、扁平状等の形状であってもよい。
【0063】
次に、図面を参照しつつ、金属粒子の具体例を説明する。
【0064】
図1は、本発明の一実施形態に係る接着剤に使用可能な金属粒子の第1の例を示す断面図である。
【0065】
図1に示す金属粒子1は、基材粒子2と、基材粒子2の表面上に配置された金属層3とを有する。金属層3は、基材粒子2の表面を被覆している。金属粒子1は、基材粒子2の表面が金属層3により被覆された被覆粒子である。
【0066】
金属層3は、第2の金属層3Aと、はんだ層3B(第1の金属層)とを有する。金属粒子1は、基材粒子2とはんだ層3Bとの間に、第2の金属層3Aを備える。したがって、金属粒子1は、基材粒子2と、基材粒子2の表面上に配置された第2の金属層3Aと、第2の金属層3Aの外表面上に配置されたはんだ層3Bとを備える。このように、金属層3は、2層以上の複層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0067】
図2は、本発明の一実施形態に係る接着剤に使用可能な金属粒子の第2の例を示す断面図である。
【0068】
図1における金属粒子1の金属層3は、2層構造を有する。図2に示す金属粒子1Aは、単層の金属層として、はんだ層4を有する。金属粒子1Aは、基材粒子2と、基材粒子2の表面上に配置されたはんだ層4とを備える。
【0069】
以下、金属粒子の他の詳細について説明する。
【0070】
基材粒子:
上記基材粒子としては、樹脂粒子、金属含有粒子を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属含有粒子等が挙げられる。上記基材粒子は、金属含有粒子を除く基材粒子であることが好ましく、樹脂粒子、金属含有粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であることがより好ましい。上記基材粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを備えるコアシェル粒子であってもよい。上記コアが有機コアであってもよく、上記シェルが無機シェルであってもよい。
【0071】
上記樹脂粒子の材料として、種々の有機物が好適に用いられる。上記樹脂粒子の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、及びポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ジビニルベンゼン重合体、並びにジビニルベンゼン系共重合体等が挙げられる。上記ジビニルベンゼン系共重合体等としては、ジビニルベンゼン-スチレン共重合体及びジビニルベンゼン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記樹脂粒子の硬度を好適な範囲に容易に制御できるので、上記樹脂粒子の材料は、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を1種又は2種以上重合させた重合体であることが好ましい。
【0072】
上記樹脂粒子を、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を重合させて得る場合には、該エチレン性不飽和基を有する重合性単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
【0073】
上記非架橋性の単量体としては、スチレン、及びα-メチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、及び無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、及びグリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート化合物;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、及びプロピルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、及びステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル化合物;エチレン、プロピレン、イソプレン、及びブタジエン等の不飽和炭化水素;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、及びクロルスチレン等のハロゲン含有単量体等が挙げられる。
【0074】
上記架橋性の単量体としては、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物;トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、並びに、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、及びビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体等が挙げられる。
【0075】
「(メタ)アクリレート」の用語は、アクリレートとメタクリレートとを示す。「(メタ)アクリル」の用語は、アクリルとメタクリルとを示す。「(メタ)アクリロイル」の用語は、アクリロイルとメタクリロイルとを示す。
【0076】
上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法により重合させることで、上記樹脂粒子を得ることができる。この方法としては、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法等が挙げられる。
【0077】
上記基材粒子が金属含有粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子である場合には、基材粒子を形成するための無機物としては、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム、ジルコニア及びカーボンブラック等が挙げられる。上記無機物は、金属ではないことが好ましい。上記シリカにより形成された粒子としては特に限定されないが、例えば、加水分解性のアルコキシシリル基を2つ以上有するケイ素化合物を加水分解して架橋重合体粒子を形成した後に、必要に応じて焼成を行うことにより得られる粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子としては、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。
【0078】
上記有機無機ハイブリッド粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを有するコアシェル型の有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましい。上記コアが有機コアであることが好ましい。上記シェルが無機シェルであることが好ましい。電極間の接続抵抗をより一層効果的に低くする観点からは、上記基材粒子は、有機コアと上記有機コアの表面上に配置された無機シェルとを有する有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましい。
【0079】
上記有機コアの材料としては、上述した樹脂粒子の材料等が挙げられる。
【0080】
上記無機シェルの材料としては、上述した基材粒子の材料として挙げた無機物が挙げられる。上記無機シェルの材料は、シリカであることが好ましい。上記無機シェルは、上記コアの表面上で、金属アルコキシドをゾルゲル法によりシェル状物とした後、該シェル状物を焼成させることにより形成されていることが好ましい。上記金属アルコキシドはシランアルコキシドであることが好ましい。上記無機シェルはシランアルコキシドにより形成されていることが好ましい。
【0081】
上記基材粒子が金属含有粒子である場合に、該金属含有粒子の材料である金属としては、銀、銅、ニッケル、ケイ素、金及びチタン等が挙げられる。
【0082】
上記基材粒子の粒子径は、特に限定されない。上記基材粒子の粒子径は、目的とするエアキャビティのギャップに合わせて適宜選択することができる。上記基材粒子の粒子径は、例えば、80μm以上であってもよく、900μm以下であってもよい。
【0083】
上記基材粒子の粒子径は、基材粒子が真球状である場合には、直径を示し、基材粒子が真球状ではない場合には、球相当径を示す。
【0084】
上記基材粒子の粒子径は、数平均粒子径であることが好ましい。上記基材粒子の粒子径は粒度分布測定装置等を用いて求められる。基材粒子の粒子径は、任意の基材粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求めることが好ましい。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりの基材粒子の粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意の50個の基材粒子の円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。レーザー回折式粒度分布測定では、1個当たりの基材粒子の粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。
【0085】
金属層:
上記金属粒子は、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置された金属層とを有することが好ましい。上記金属層は、単層構造であってもよく、2層以上の複層構造であってもよい。上記金属層が2層以上の複層構造である場合に、上記金属粒子は、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置された第2の金属層と、上記第2の金属層の表面上に配置されたはんだ層(第1の金属層)とを有することが好ましい。上記金属粒子は、上記金属層の外表面部分にはんだを有することが好ましい。
【0086】
上記金属層は、金属を含む。上記金属層を構成する金属は特に限定されない。上記金属としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム、並びにこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属として、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだを用いてもよい。上記金属は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。エアキャビティのギャップをより一層高精度に制御する観点、及び基板間の接着強度をより一層高める観点からは、最外層の金属層に含まれる上記金属は、はんだであることが好ましい。
【0087】
上記基材粒子の融点は、上記金属層の融点よりも高いことが好ましい。上記基材粒子の融点は、好ましくは160℃を超え、より好ましくは300℃を超え、さらに好ましくは400℃を超え、特に好ましくは450℃を超える。なお、上記基材粒子の融点は、400℃未満であってもよい。上記基材粒子の融点は、160℃以下であってもよい。上記基材粒子の軟化点は260℃以上であることが好ましい。上記基材粒子の軟化点は260℃未満であってもよい。
【0088】
上記金属粒子は、単層のはんだ層を有していてもよい。上記金属粒子は、複数の層の金属層(第2の金属層及びはんだ層(第1の金属層))を有していてもよい。すなわち、上記金属粒子では、金属層が2層以上積層されていてもよい。上記金属層が2層以上の場合、上記金属粒子は、金属層の外表面部分にはんだを有することが好ましい。
【0089】
上記はんだは、融点が450℃以下である金属(低融点金属)であることが好ましい。上記はんだ層は、融点が450℃以下である金属層(低融点金属層)であることが好ましい。上記低融点金属層は、低融点金属を含む層である。上記金属粒子におけるはんだは、融点が450℃以下である金属(低融点金属)であることが好ましい。上記低融点金属とは、融点が450℃以下の金属を示す。上記低融点金属の融点は、好ましくは300℃以下、より好ましくは220℃以下である。
【0090】
上記低融点金属の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。示差走査熱量測定(DSC)装置としては、SII社製「EXSTAR DSC7020」等が挙げられる。
【0091】
また、上記金属粒子におけるはんだは、錫を含むことが好ましい。上記金属粒子におけるはんだに含まれる金属100重量%中、錫の含有量は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記金属粒子におけるはんだに含まれる錫の含有量が上記下限以上であると、基板間の接着強度をより一層高めることができる。
【0092】
なお、上記錫の含有量は、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製「ICP-AES」)、又は蛍光X線分析装置(島津製作所社製「EDX-800HS」)等を用いて測定することができる。
【0093】
上記はんだを金属層の外表面部分に有する金属粒子を含む接着剤を、2つの基板上に形成された金属部同士を接着するために用いた場合には、はんだを溶融させて金属部と接合させることができる。例えば、はんだと金属部とが点接触ではなく面接触しやすいため、基板間の接着強度をより一層高めることができ、上記金属粒子と上記金属部との接触面積を十分に大きくすることができる。
【0094】
上記はんだ層及び上記金属粒子におけるはんだを構成する低融点金属は特に限定されない。該低融点金属は、錫、又は錫を含む合金であることが好ましい。該合金としては、錫-銀合金、錫-銅合金、錫-銀-銅合金、錫-ビスマス合金、錫-亜鉛合金、錫-インジウム合金等が挙げられる。金属部に対する濡れ性に優れることから、上記低融点金属は、錫、錫-銀合金、錫-銀-銅合金、錫-ビスマス合金、又は錫-インジウム合金であることが好ましい。
【0095】
上記はんだ層及び上記金属粒子におけるはんだを構成する材料は、JIS Z3001:溶接用語に基づき、液相線が450℃以下である溶加材であることが好ましい。上記はんだの組成としては、例えば亜鉛、金、銀、鉛、銅、錫、ビスマス、インジウム等を含む金属組成が挙げられる。
【0096】
上記金属粒子におけるはんだと金属部との接合強度をより一層高めるために、上記金属粒子におけるはんだは、ニッケル、銅、アンチモン、アルミニウム、亜鉛、鉄、金、チタン、リン、ゲルマニウム、テルル、コバルト、ビスマス、マンガン、クロム、モリブデン、パラジウム等の金属を含んでいてもよい。また、上記金属粒子におけるはんだと金属部との接着強度をより一層高める観点からは、上記金属粒子におけるはんだは、ニッケル、銅、又はアンチモンを含むことが好ましい。上記金属粒子におけるはんだと金属部との接着強度をより一層高める観点からは、接着強度を高めるためのこれらの金属の含有量は、上記金属粒子におけるはんだ100重量%中、好ましくは0.001重量%以上であり、好ましくは1重量%以下である。
【0097】
上記金属粒子は、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置された第2の金属層と、上記第2の金属層の表面上に配置されたはんだ層とを有することが好ましい。
【0098】
上記第2の金属層の融点は、上記はんだ層の融点よりも高いことが好ましい。上記第2の金属層の融点は、好ましくは220℃を超え、より好ましくは300℃を超え、さらに好ましくは400℃を超え、さらに一層好ましくは450℃を超え、特に好ましくは500℃を超え、最も好ましくは600℃を超える。上記はんだ層は融点が低いために、エアキャビティを形成する際に溶融することが好ましい。上記第2の金属層は、エアキャビティを形成する際に溶融しないことが好ましい。上記金属粒子は、はんだを溶融させて用いられることが好ましく、上記はんだ層を溶融させて用いられることが好ましく、上記はんだ層を溶融させてかつ上記第2の金属層を溶融させずに用いられることが好ましい。上記第2の金属層の融点が上記はんだ層の融点よりも高いことによって、エアキャビティを形成する際に、上記第2の金属層を溶融させずに、上記はんだ層のみを溶融させることができる。
【0099】
上記はんだ層の融点と上記第2の金属層との融点との差の絶対値は、0℃を超え、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは30℃以上、特に好ましくは50℃以上、最も好ましくは100℃以上である。
【0100】
上記第2の金属層は、金属を含む。上記第2の金属層を構成する金属は、特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム、並びにこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属として、錫ドープ酸化インジウム(ITO)を用いてもよい。上記金属は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0101】
上記第2の金属層は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層であることが好ましく、ニッケル層、金層又は銅層であることがより好ましく、銅層であることがさらに好ましい。上記金属粒子は、ニッケル層、パラジウム層、銅層又は金層を有することが好ましく、ニッケル層、金層又は銅層を有することがより好ましく、銅層を有することがさらに好ましい。これらの好ましい金属層を有する金属粒子を含む接着剤を用いて、2つの基板を接着することで、エアキャビティのギャップをより一層高精度に制御することができる。また、これらの好ましい金属層の表面には、はんだ層をより一層容易に形成できる。
【0102】
上記金属層の厚みは、好ましくは3.5μm以上、より好ましくは8μm以上であり、好ましくは80μm以下、より好ましくは65μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。上記金属層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、基板間の接着強度をより一層高めることができる。
【0103】
上記第2の金属層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは3μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。上記第2の金属層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、基板間の接着強度をより一層高めることができる。
【0104】
上記はんだ層(第1の金属層)の厚みは、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。上記はんだ層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、基板間の接着強度をより一層高めることができる。
【0105】
上記金属層の厚み、上記第2の金属層の厚み及び上記はんだ層の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、金属粒子の断面を観察することにより測定できる。
【0106】
上記基材粒子の表面上に金属層を形成する方法は特に限定されない。上記金属層を形成する方法としては、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的な衝突による方法、メカノケミカル反応による方法、物理的蒸着又は物理的吸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子の表面にコーティングする方法等が挙げられる。上記金属層を形成する方法は、無電解めっき、電気めっき又は物理的な衝突による方法であることが好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。また、上記物理的な衝突による方法では、例えば、シーターコンポーザ(徳寿工作所社製)等が用いられる。
【0107】
(アンテナ装置)
本発明に係るアンテナ装置は、第1の金属部を表面に有する第1の基板と、第2の金属部を表面に有する第2の基板と、上記第1の基板と上記第2の基板とを接着している接着剤部とを備える。本発明に係るアンテナ装置では、上記接着剤部の材料が、上述した接着剤である。本発明に係るアンテナ装置では、上記第1の金属部と上記第2の金属部とが、上記接着剤部により接着されている。本発明に係るアンテナ装置では、上記第1の基板と上記第2の基板と上記接着剤部とにより、エアキャビティが形成されている。
【0108】
上記第1の基板は、ガラスエポキシ基板又はセラミック基板であることが好ましい。上記第2の基板は、ガラスエポキシ基板、セラミック基板又はシリコン基板であることが好ましい。上記基板は、高周波基板やアンテナを構成する基板等であってもよい。上記第1の金属部は、銅により形成されているか、又は、ニッケル/金めっきにより形成されていることが好ましい。上記第2の金属部は、銅により形成されているか、又は、ニッケル/金めっきにより形成されていることが好ましい。上記第1の金属部及び上記第2の金属部は、銅により形成されていてもよく、ニッケル/金めっきにより形成されていてもよい。
【0109】
図3は、本発明に係る接着剤を用いたアンテナ装置の一例を示す断面図である。
【0110】
図3に示すアンテナ装置11は、第1の基板12と、第2の基板13と、第1の基板12と第2の基板13とを接着している接着剤部とを備える。上記接着剤部の材料は、上述した接着剤である。本実施形態では、上記接着剤部の材料は、金属粒子1である。上記接着剤部は、上記金属粒子により形成されていることが好ましい。
【0111】
第1の基板12は、表面(上面)に、複数の第1の金属部12aを有する。第2の基板13は、表面(下面)に、複数の第2の金属部13aを有する。第1の金属部12aと第2の金属部13aとが、1つ又は複数の金属粒子1(接着剤部)により接着されている。アンテナ装置11では、第1の基板12と第2の基板13と金属粒子1(接着剤部)とにより、エアキャビティ14が形成されている。金属粒子1(接着剤部)により、第1の基板12と第2の基板13との間隔(ギャップ)が一定に保持されている。金属粒子1(接着剤部)により、エアキャビティ14のギャップが制御されている。
【0112】
上記アンテナ装置における上記ギャップは、アンテナ装置が対象とする周波数帯域に合わせて設定すればよい。
【0113】
上記アンテナ装置の製造方法は特に限定されない。アンテナ装置の製造方法の一例として、上記第1の金属部と上記第2の金属部との間に上述した接着剤を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。上記加圧の圧力は9.8×10Pa~4.9×10Pa程度である。上記加熱の温度は、120℃~250℃程度である。エアキャビティのギャップをより一層高精度に制御する観点からは、上記アンテナ装置の製造時に加圧しないことが好ましい。上記アンテナ装置の製造時に加圧しないことで、溶融した上記金属粒子の上記はんだ層が、上記第1の金属部及び上記第2の金属部に過度に濡れ拡がらないので、エアキャビティのギャップをより一層高精度に制御することができる。
【0114】
図4は、図3に示すアンテナ装置における金属粒子と金属部との接着部分を拡大して示す断面図である。
【0115】
図4に示すように、アンテナ装置11では、上記積層体を加熱することで、金属粒子1のはんだ層3Bが溶融した後、溶融したはんだ層部分3Baが第1の金属部12a及び第2の金属部13aと十分に接触する。最外層がはんだ層である金属粒子1を用いることにより、最外層がニッケル、金又は銅等の金属である金属粒子を用いた場合と比較して、金属粒子1と第1の金属部12a及び第2の金属部13aとの接触面積を大きくすることができ、エアキャビティのギャップをより一層高精度に制御することができる。また、はんだにより形成されたはんだ粒子ではない金属粒子1を用いることにより、中心部分及び金属層の外表面部分のいずれもがはんだにより形成されたはんだ粒子を用いた場合と比較して、繰り返し加熱されても、加熱によるはんだの過度な濡れ拡がりを抑制することができ、エアキャビティのギャップをより一層高精度に制御することができる。
【0116】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0117】
(金属粒子1)
ジビニルベンゼン50重量部と、テトラメチロールメタンテトラアクリレート50重量部とを共重合させ、樹脂粒子である基材粒子(平均粒子径240μm、CV値1.85%)を作製した。得られた基材粒子を無電解ニッケルめっきし、基材粒子の表面上に厚さ0.3μmの下地ニッケルめっき層を形成した。次いで、下地ニッケルめっき層が形成された基材粒子を電解銅めっきし、厚さ10μmの銅層を形成した。更に、電解めっきし、厚さ25μmの錫を含有するはんだ層を形成した。このようにして、基材粒子の表面上に厚み10μmの銅層が形成されており、該銅層の表面に厚み25μmのはんだ層(錫:銀=96.5重量%:3.5重量%)が形成されている金属粒子1(平均粒子径310μm、CV値2.85%)を作製した。
【0118】
(金属粒子2)
金属粒子1と同様にして樹脂粒子である基材粒子(平均粒子径260μm、CV値1.92%)を作製した。得られた基材粒子を無電解ニッケルめっきし、基材粒子の表面上に厚さ0.3μmの下地ニッケルめっき層を形成した。次いで、下地ニッケルめっき層が形成された基材粒子を電解銅めっきし、厚さ5μmの銅層を形成した。更に、電解めっきし、厚さ20μmの錫を含有するはんだ層を形成した。このようにして、基材粒子の表面上に厚み5μmの銅層が形成されており、該銅層の表面に厚み20μmのはんだ層(錫:銀=96.5重量%:3.5重量%)が形成されている金属粒子2(平均粒子径310μm、CV値2.76%)を作製した。
【0119】
(金属粒子3)
金属粒子1と同様にして樹脂粒子である基材粒子(平均粒子径210μm、CV値1.68%)を作製した。得られた基材粒子を無電解ニッケルめっきし、基材粒子の表面上に厚さ0.3μmの下地ニッケルめっき層を形成した。次いで、下地ニッケルめっき層が形成された基材粒子を電解銅めっきし、厚さ10μmの銅層を形成した。更に、電解めっきし、厚さ40μmの錫を含有するはんだ層を形成した。このようにして、基材粒子の表面上に厚み10μmの銅層が形成されており、該銅層の表面に厚み40μmのはんだ層(錫:銀=96.5重量%:3.5重量%)が形成されている金属粒子3(平均粒子径310μm、CV値3.21%)を作製した。
【0120】
(金属粒子X1)
錫、銀及び銅を含有するはんだにより形成されたはんだボール(千住金属工業社製「M705」、錫:銀:銅=96.5重量%:3重量%:0.5重量%)を、金属粒子X1(平均粒子径300μm)とした。
【0121】
(金属粒子の平均粒子径)
金属粒子の平均粒子径は、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製「VHX-5000」)を用いて、上述した方法により測定した。
【0122】
(実施例1)
金属粒子1以外の接着成分を用いずに、得られた金属粒子1自体を接着剤として用いた。
【0123】
(アンテナ装置Aの作製)
第1の基板として、銅により形成された金属部(第1の金属部)を20個有するガラスエポキシ基板を用意した。第2の基板として、銅により形成された金属部(第2の金属部)を20個有するガラスエポキシ基板を用意した。上記金属部はアンテナ回路を形成するための金属部である。上記第1の基板の上記第1の金属部の表面上に、フラックス(クックソンエレクトロニクス社製「WS-9160-M7」)を塗布した。次いで、塗布したフラックスの表面上に金属粒子1を配置し、リフロー処理(加熱温度250℃及び加熱時間30秒間)して、金属粒子1と第1の金属部とを接着した。次いで、上記第2の基板の上記第2の金属部の表面上に、はんだペースト(千住金属工業社製「M705-GRN360-K2-V」)を塗布した。上記第1の基板と上記金属粒子1との接着構造体とはんだペーストが塗布された第2の基板とを、上記第1の金属部と上記第2の金属部とが対向するように配置し、リフロー処理(加熱温度250℃及び加熱時間30秒間)を行った。このようにして、第1の金属部と第2の金属部とが金属粒子1により形成された接着部を介して接着されたアンテナ装置Aを作製した。
【0124】
(アンテナ装置Bの作製)
第2の基板として、ニッケル/金めっきにより形成された金属部(第2の金属部)を20個有するガラスエポキシ基板を用いたこと以外は、アンテナ装置Aの作製方法と同様にして、アンテナ装置Bを作製した。
【0125】
(アンテナ装置Cの作製)
第1の基板及び第2の基板として、ニッケル/金めっきにより形成された金属部(第2の金属部)を20個有するガラスエポキシ基板を用いたこと以外は、アンテナ装置Aの作製方法と同様にして、アンテナ装置Cを作製した。
【0126】
(実施例2)
接着剤として金属粒子1の代わりに金属粒子2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、アンテナ装置A,B,Cを作製した。
【0127】
(実施例3)
接着剤として金属粒子1の代わりに金属粒子3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、アンテナ装置A,B,Cを作製した。
【0128】
(比較例1)
接着剤として金属粒子1の代わりに金属粒子X1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、アンテナ装置A,B,Cを作製した。
【0129】
(評価)
(1)基板間におけるギャップの変化率(評価試験1a)
(1-1)得られた金属粒子(接着剤)を用意した。また、銅により形成された第1の金属部を表面に有する第1の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。銅により形成された第2の金属部を表面に有する第2の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。用意した金属粒子(接着剤)、第1の基板及び第2の基板を用いて、上述した方法で、基板間におけるギャップの変化率を算出した。
【0130】
(1-2)得られた金属粒子(接着剤)を用意した。また、銅により形成された第1の金属部を表面に有する第1の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。ニッケル/金めっきにより形成された第2の金属部を表面に有する第2の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。用意した金属粒子(接着剤)、第1の基板及び第2の基板を用いて、上述した方法で、基板間におけるギャップの変化率を算出した。
【0131】
(1-3)得られた金属粒子(接着剤)を用意した。また、ニッケル/金めっきにより形成された第1の金属部を表面に有する第1の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。ニッケル/金めっきにより形成された第2の金属部を表面に有する第2の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。用意した金属粒子(接着剤)、第1の基板及び第2の基板を用いて、上述した方法で、基板間におけるギャップの変化率を算出した。
【0132】
[基板間におけるギャップの変化率の判定基準]
〇:ギャップの変化率が10%以下
×:ギャップの変化率が10%を超える
【0133】
(2)比(加熱後のギャップ/金属粒子の平均粒子径)(評価試験1b)
(2-1)得られた金属粒子(接着剤)を用意した。また、銅により形成された第1の金属部を表面に有する第1の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。銅により形成された第2の金属部を表面に有する第2の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。用意した金属粒子(接着剤)、第1の基板及び第2の基板を用いて、上述した方法で、比(加熱後のギャップ/金属粒子の平均粒子径)を算出した。
【0134】
(2-2)得られた金属粒子(接着剤)を用意した。また、銅により形成された第1の金属部を表面に有する第1の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。ニッケル/金めっきにより形成された第2の金属部を表面に有する第2の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。用意した金属粒子(接着剤)、第1の基板及び第2の基板を用いて、上述した方法で、比(加熱後のギャップ/金属粒子の平均粒子径)を算出した。
【0135】
(2-3)得られた金属粒子(接着剤)を用意した。また、ニッケル/金めっきにより形成された第1の金属部を表面に有する第1の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。ニッケル/金めっきにより形成された第2の金属部を表面に有する第2の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。用意した金属粒子(接着剤)、第1の基板及び第2の基板を用いて、上述した方法で、比(加熱後のギャップ/金属粒子の平均粒子径)を算出した。
【0136】
[比(加熱後のギャップ/金属粒子の平均粒子径)の判定基準]
〇:比(加熱後のギャップ/金属粒子の平均粒子径)が0.70以上0.97以下
×:比(加熱後のギャップ/金属粒子の平均粒子径)が0.70未満又は0.97を超える
【0137】
(3)基板間における接着強度の変化率(評価試験2)
(3-1)得られた金属粒子(接着剤)を用意した。また、銅により形成された第1の金属部を表面に有する第1の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。銅により形成された第2の金属部を表面に有する第2の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。用意した金属粒子(接着剤)、第1の基板及び第2の基板を用いて、上述した方法で、基板間における接着強度の変化率を算出した。
【0138】
(3-2)得られた金属粒子(接着剤)を用意した。また、銅により形成された第1の金属部を表面に有する第1の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。ニッケル/金めっきにより形成された第2の金属部を表面に有する第2の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。用意した金属粒子(接着剤)、第1の基板及び第2の基板を用いて、上述した方法で、基板間における接着強度の変化率を算出した。
【0139】
(3-3)得られた金属粒子(接着剤)を用意した。また、ニッケル/金めっきにより形成された第1の金属部を表面に有する第1の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。ニッケル/金めっきにより形成された第2の金属部を表面に有する第2の基板(ガラスエポキシ基板)を用意した。用意した金属粒子(接着剤)、第1の基板及び第2の基板を用いて、上述した方法で、基板間における接着強度の変化率を算出した。
【0140】
[基板間における接着強度の変化率の判定基準]
〇:接着強度の変化率が10%以下
×:接着強度の変化率が10%を超える
【0141】
(4)ギャップ制御性
得られた5個のアンテナ装置Aについて、実体顕微鏡(ニコン社製「SMZ-10」)を用いて、エアキャビティの厚みを測定し、5個のアンテナ装置Aにおけるエアキャビティの平均厚みをそれぞれ算出した。平均厚みの最大値と平均厚みの最小値との差から、ギャップ制御性を下記の基準で判定した。また、得られたアンテナ装置B,Cについても同様の評価を行った。
【0142】
[ギャップ制御性の判定基準]
○:エアキャビティの平均厚みの最大値と平均厚みの最小値との差が10μm未満
×:エアキャビティの平均厚みの最大値と平均厚みの最小値との差が10μm以上
【0143】
(5)リフロー処理後のギャップ制御性
上記の(4)ギャップ制御性の評価後の5個のアンテナ装置Aを用いて、JEDEC J-STD-020で規定されるリフロー条件で、4回のリフロー処理を実施した。リフロー処理後のアンテナ装置Aについて、上記の(4)ギャップ制御性と同様の評価を実施した。リフロー処理後のギャップ制御性を下記の基準で判定した。また、得られたアンテナ装置B,Cについても同様の評価を行った。
【0144】
[リフロー処理後のギャップ制御性の判定基準]
○:エアキャビティの平均厚みの最大値と平均厚みの最小値との差が10μm未満
×:エアキャビティの平均厚みの最大値と平均厚みの最小値との差が10μm以上
【0145】
(6)アンテナの通信品質
上記の(5)リフロー処理後のギャップ制御性の評価後のアンテナ装置Aを用いて、アンテナが精度良く作動するか否かを確認した。アンテナの通信品質を下記の基準で判定した。また、得られたアンテナ装置B,Cについても同様の評価を行った。
【0146】
[アンテナの通信品質の判定基準]
○:アンテナ装置が、ばらつきなく安定して作動する
×:アンテナ装置の作動にばらつきがある
【0147】
結果を下記の表1に示す。
【0148】
【表1】
【0149】
第1の基板及び第2の基板として、ガラスエポキシ基板の代わりに、セラミック基板又はシリコン基板を用いた場合でも、同様の傾向が見られた。
【符号の説明】
【0150】
1,1A…金属粒子
2…基材粒子
3…金属層
3A…第2の金属層
3B…はんだ層(第1の金属層)
3Ba…溶融したはんだ層部分
4…はんだ層
11…アンテナ装置
12…第1の基板
12a…第1の金属部
13…第2の基板
13a…第2の金属部
14…エアキャビティ
図1
図2
図3
図4