(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】3次元表示装置
(51)【国際特許分類】
H04N 13/366 20180101AFI20241107BHJP
H04N 13/317 20180101ALI20241107BHJP
H04N 13/31 20180101ALI20241107BHJP
H04N 13/125 20180101ALI20241107BHJP
G02B 30/30 20200101ALI20241107BHJP
G02B 30/29 20200101ALI20241107BHJP
G02B 27/01 20060101ALN20241107BHJP
【FI】
H04N13/366
H04N13/317
H04N13/31
H04N13/125
G02B30/30
G02B30/29
G02B27/01
(21)【出願番号】P 2021010442
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】林下 歩樹
(72)【発明者】
【氏名】草深 薫
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/029433(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0373716(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0063001(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0081183(US,A1)
【文献】特開2019-082671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 13/00 - 17/06
G09G 3/00 - 5/42
G02B 30/30
G02B 30/29
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向および該第1方向に略直交する第2方向に沿って格子状に配列された複数のサブピクセルを備えるアクティブエリアを有し、該アクティブエリアに第1画像と第2画像とが混合された視差画像を表示可能に構成される表示パネルと、
前記視差画像の光線方向を規定する複数の開口を有する光学素子と、
利用者の眼の位置を検出する検出装置と、
基準視差画像に対して、前記検出装置が検出した
前記利用者の第1眼およ
び第2眼のいずれか一方の
検出眼の位置に基づいて、
前記第1画像と、
前記第2画像とを混合して表示するように前記表示パネルを制御するコントローラと、を含み、
前記第1眼および前記第2眼のいずれか一方から前記光学素子の前記開口を介して前記表示パネルの表示面に垂直な方向に観察距離をあけて前記基準視差画像を見たとき、前記第1画像および前記第2画像の画像光を出射するサブピクセル数に対する、前記開口を介して視認可能な前記第1画像および前記第2画像のいずれか一方の画像光を出射するサブピクセル数の割合を、集光度とし、前記集光度が100%であるときを第1集光度、前記集光度が0%であるときを第2集光度、前記集光度が50%であるときを第3集光度としたとき、
前記コントローラは、
前記第2集光度の場合、前記コントローラに設定された第1周期ごとに1サブピクセルずつシフト量が大きくなるように前
記一方の
検出眼の位置を基準にして外側に前記
視差画像をシフトさせる
とともに、前記一方の検出眼が1サブピクセルだけシフトすると、そのシフト方向と同じ方向に前記視差画像の境界線を1サブピクセル分動かす第1シフト処理と、
前記第1集光度、前記第2集光度、および前記第3集光度の場合、前
記一方の
検出眼が
第1距離(ただし、第1距離は、前記視差画像の全画素を1サブピクセルシフトさせる必要が生じる距離である)だけシフトすると、
そのシフト方向と同じ方向に前記第1シフト処理の境界を
前記第1距離シフトさせる第2シフト処理と、
前記第3集光度の場合、前記一方の検出眼のシフト量が前記第1周期分のサブピクセル数と集光度
との積
に達し、さらに前記一方の検出眼が前記第1距離シフトしたときに、前記積として求めた第2周期分のサブピクセルを、
前記一方の検出眼のシフト方向と逆方向に前記視差画像の1サブピクセル分だけシフトさせ、前記境界を前記第1周期分のサブピクセル数だけシフトさせる第3シフト処理との
少なくとも1つのシフト処理を、実行するように構成される、3次元表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元表示装置出であって、
前記第1シフト処理は、前記第1集光度の場合、前記一方の検出眼が1サブピクセルだけシフトすると、そのシフト方向と同じ方向に前記視差画像の境界線を1サブピクセル分動かす、3次元表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の3次元表示装置であって、
前記第3シフト処理は、前記第2集光度の場合、前記一方の検出眼が静止しているときには前記視差画像における前記境界の両側の領域を1サブピクセルずつシフトし、前記第3集光度の場合、前記一方の検出眼が静止しているときには前記視差画像のシフト幅が前記第1距離の2倍の間隔となるようにし、前記一方の検出眼が1サブピクセルだけシフトすると、そのシフト方向と同じ方向に前記境界を1サブピクセル分シフトする、3次元表示装置。
【請求項4】
請求項
1に記載の3次元表示装置であって、
前記コントローラは、前記第1周期分のサブピクセルと第2周期分のサブピクセルとが重なる際に、前記第1シフト処理、前記第2シフト処理および前記第3シフト処理のうちの2つのシフト処理をそれぞれ実行する、3次元表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の3次元表示装置であって、
前記利用者が視覚的に捉える空間での前記アクティブエリアを表示面とするとき
、
前記表示面上における前記サブピクセルの前記第1方向に沿う大きさをHpとし、
前記表示面上における前記サブピクセルの前記第2方向に沿う大きさをVpとし、
前記表示面上における前記境界の前記第2方向に対する角度をθとし、
aおよびbを自然数とするとき、アクティブエリアの前記表示面上における前記境界は、
次式、
によって表される角度で傾斜した方向に延びる、3次元表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3次元表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、眼鏡を用いずに3次元表示を行うために、表示パネルから出射される画像光の一部を右眼に到達させ、表示パネルから出射される画像光の他の一部を左眼に到達させる光学素子を備える3次元表示装置が知られている。左右の眼を結ぶ線に沿う方向を水平方向とし、これに直交する方向を垂直方向とするとき、表示パネルのサブピクセルは、水平および垂直方向に配列された矩形形状を有する。左右の眼に到達する画像光を制御するために、垂直方向に延びる複数の帯状の開口を有する視差バリアが用いられる。しかし、垂直方向に延びる視差バリアを水平方向に並べて配列すると、モアレの発生等のために画像が見にくくなるという課題がある。そこで、特許文献1では、サブピクセルの対角線方向に延びる視差バリアが配列された光学素子を備える3次元表示装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2015/0363740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
2次元表示装置には、3次元画像を観察するのに適した距離である適視距離(OVD;Optimum Viewing Distance)がある。適視距離は、3次元表示装置の利用者の頭の移動などの使用環境に応じてクロストーク抑制して適切に設定可能であることが好ましい。
【0005】
したがって、これらの点に着目してなされた本開示の目的は、適視距離の設定の自由度が高い3次元表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の3次元表示装置は、第1方向および該第1方向に略直交する第2方向に沿って格子状に配列された複数のサブピクセルを備えるアクティブエリアを有し、該アクティブエリアに第1画像と第2画像とが混合された視差画像を表示可能に構成される表示パネルと、前記視差画像の光線方向を規定する複数の開口を有する光学素子と、利用者の眼の位置を検出する検出装置と、基準視差画像に対して、前記検出装置が検出した前記利用者の第1眼および第2眼のいずれか一方の検出眼の位置に基づいて、前記第1画像と、前記第2画像とを混合して表示するように前記表示パネルを制御するコントローラと、を含み、前記第1眼および前記第2眼のいずれか一方から前記光学素子の前記開口を介して前記表示パネルの表示面に垂直な方向に観察距離をあけて前記基準視差画像を見たとき、前記第1画像および前記第2画像の画像光を出射するサブピクセル数に対する、前記開口を介して視認可能な前記第1画像および前記第2画像のいずれか一方の画像光を出射するサブピクセル数の割合を、集光度とし、前記集光度が100%であるときを第1集光度、前記集光度が0%であるときを第2集光度、前記集光度が50%であるときを第3集光度としたとき、
前記コントローラは、前記第2集光度の場合、前記コントローラに設定された第1周期ごとに1サブピクセルずつシフト量が大きくなるように前記一方の検出眼の位置を基準にして外側に前記視差画像をシフトさせるとともに、前記一方の検出眼が1サブピクセルだけシフトすると、そのシフト方向と同じ方向に前記視差画像の境界線を1サブピクセル分動かす第1シフト処理と、前記第1集光度、前記第2集光度、および前記第3集光度の場合、前記一方の検出眼が第1距離(ただし、第1距離は、前記視差画像の全画素を1サブピクセルシフトさせる必要が生じる距離である)だけシフトすると、そのシフト方向と同じ方向に前記第1シフト処理の境界を前記第1距離シフトさせる第2シフト処理と、前記第3集光度の場合、前記一方の検出眼のシフト量が前記第1周期分のサブピクセル数と集光度との積に達し、さらに前記一方の検出眼が前記第1距離シフトしたときに、前記積として求めた第2周期分のサブピクセルを、前記一方の検出眼のシフト方向と逆方向に前記視差画像の1サブピクセル分だけシフトさせ、前記境界を前記第1周期分のサブピクセル数だけシフトさせる第3シフト処理との少なくとも1つのシフト処理を、実行するように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の3次元表示装置によれば、適視距離の設定の自由度が高い3次元表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本開示の一実施形態に係る3次元表示装置が基礎とする模式図である。
【
図2】
図2は表示パネルの表示面を利用者の眼側から見た図である。
【
図4】
図4は表示パネルと利用者の眼との位置変化によるサブピクセルの表示変更を説明する図である。
【
図5】
図5は表示パネルと利用者の眼との位置変化によるサブピクセルの表示変更を説明する図である。
【
図6】
図6は表示パネルの表示面を利用者の眼側から見た第2例を示す図である。
【
図7】
図7は
図6に示す表示パネルに対し利用者の眼が移動したときのサブピクセルの表示変更を説明する図である。
【
図8】
図8は表示パネルの表示面を利用者の眼側から見た第3例を示す図である。
【
図9】
図9は眼間距離、適視距離、ギャップ、バリアピッチ、および画像ピッチの関係を説明するための模式図である。
【
図10】
図10は一実施形態に係る3次元表示装置の他の概略構成を示す図である。
【
図11】
図11は表示パネルの表示面を利用者の眼側から見た第4例を示す図である。
【
図14】
図14は
図11に示す表示パネルに対し利用者の眼の位置が移動したときのサブピクセルの表示変更を説明する図である。
【0009】
【
図15】
図15は表示面のサブピクセル配置の比較例を示す図である。
【
図16】
図16は表示パネルの表示面を利用者の眼側から見た第5例を示す図である。
【
図17】
図17は表示パネルの表示面を利用者の眼側から見た第6例を示す図である。
【
図18】
図18は光学素子をレンチキュラレンズとした場合の3次元表示装置の概略構成図である。
【
図19】
図19はヘッドアップディスプレイ(HUD)システムの概略構成図である。
【
図21】
図21は3次元表示装置の設計方法を示すフローチャートである。
【
図22】
図22は第1集光度の場合の視野範囲を示す図である。
【
図24】
図24は、第2集光度の場合の視野範囲を示す図である。
【
図25】
図25は第3集光度の場合の視野範囲を示す図である。
【
図26】
図26は第3集光度の場合の視野範囲を示す図である。
【
図28】
図28は第1集光度の場合の視野範囲を示す図である。
【
図29】
図29は、利用者が頭を静止させているときの第1集光度の場合の観察画面を示す図である。
【
図30】
図30は利用者が頭を右に1サブピクセル動かしたときの完全集光(集光度200%)の場合の観察画面を示す図である。
【
図31】
図31は、利用者が頭を右に15.75mm(63mm/4)動かしたときの第1集光度の場合の観察画面を示す図である。
【
図32】
図32は、利用者が頭を静止させているときの第2集光度の場合の観察画面を示す図である。
【0010】
【
図33】
図33は利用者が頭を静止させているときの第2集光度の場合の観察画面を示す図である。
【
図34】
図34は利用者が頭を右に1サブピクセル動かしたときの第2集光度の場合の観察画面を示す図である。
【
図35】
図35は利用者が頭を右に1サブピクセル動かしたときの第2集光度の場合の観察画面を示す図である。
【
図36】
図36は利用者が頭を右に15.75mm(63mm/4)動かしたときの第2集光度の場合の観察画面を示す図である。
【
図37】
図37は利用者が頭を静止させているとき第3集光度の場合の観察画面を示す図である。
【
図38】
図38は集光度0%では、隣の眼の画像の視野範囲を示す三角形の底辺が一致に近づくようにサブピクセルのシフトを導入する。
【
図39】
図39は一斉シフト前に頭を15.75mm(63mm/4)動かしたときの第3集光度の場合の観察画面を示す図である。
【
図40】
図40は一斉シフト後に頭を15.75mm(63mm/4)動かしたときの第3集光度の場合の観察画像を示す図である。
【
図41】
図41は、3次元表示装置のクロストーク低減効果を確認するための輝度測定設備の概略的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(基礎構成)
まず、
図1~
図17を参照して、本開示に係る実施形態の3次元表示装置が基礎とする構成について説明する。本実施形態の3次元表示装置1は、
図1に示されるように、検出装置2、光照射器4、表示パネル5および光学素子である視差バリア6を含んで構成される。
図1は3次元表示装置1を、表示パネル5に表示される画像を観察する利用者の上方から見た模式図である。
【0012】
(検出装置)
検出装置2は、利用者の眼の位置を検出し、後述する3次元表示装置1のコントローラ7に検出した位置情報を出力する。検出装置2は、例えばカメラを備えていてよい。検出装置2は、カメラによって利用者の顔を撮影してよい。検出装置2は、カメラの撮影画像から、左眼および右眼の少なくとも一方の位置を3次元空間の座標として検出してよい。検出装置2は、2以上のカメラの撮影画像から、左眼および右眼の少なくとも一方の位置を3次元空間の座標として検出してよい。
【0013】
検出装置2は、左眼および右眼の少なくとも一方の位置の検出結果に基づいて、眼球の配列方向に沿った、左眼および右眼の移動距離を検出してよい。
【0014】
3次元表示装置1は、検出装置2を備えなくてよい。3次元表示装置1が検出装置2を備えない場合、コントローラ7は、装置外の検出装置からの信号を入力するための入力端子を備えてよい。装置外のカメラは入力端子に直接的に接続されてよい。装置外のカメラは共有の情報通信ネットワークを介して入力端子に間接的に接続されてよい。カメラを備えない検出装置2は、カメラが映像信号を入力する入力端子を備えてよい。カメラを備えない検出装置2は、入力端子に入力された映像信号から左眼および右眼の少なくとも一方の位置を検出してよい。
【0015】
検出装置2は、例えば、センサを備えてよい。センサは、超音波センサまたは光センサ等であってよい。検出装置2は、センサによって利用者の頭部の位置を検出し、頭部の位置に基づいて、左眼および右眼の少なくとも一方の位置を検出してよい。検出装置2は、1または複数のセンサによって、左眼および右眼の少なくとも一方の位置を3次元空間の座標として検出してよい。
【0016】
検出装置2は、左眼および右眼の少なくとも一方の位置の検出結果に基づいて、眼球の配列方向に沿った、左眼および右眼の移動距離を検出してよい。
【0017】
3次元表示装置1は、検出装置2を備えなくてよい。3次元表示装置1が検出装置2を備えない場合、コントローラ7は、装置外の検出装置からの信号を入力する入力端子を備えよい。装置外の検出装置は、入力端子に接続されてよい。装置外の検出装置は、入力端子に対する共有の情報通信ネットワークを介して入力端子に間接的に接続されてよい。コントローラ7は、装置外の検出装置から取得した左眼および右眼の少なくとも一方の位置を示す位置座標が入力されよい。また、コントローラ7は、位置座標に基づいて、水平方向に沿った、左眼および右眼の移動距離を算出してよい。コントローラ7は、検出装置2から一方の眼の位置のみを取得する場合、利用者の眼間距離の情報または一般的な眼間距離の情報から、他方の眼の位置を推定し得る。
【0018】
3次元表示装置1の表示パネル5と利用者の眼の相対的位置関係が所定の範囲に限定された眼の位置に基づいて、表示パネル5に画像を表示させることができる。
【0019】
本開示の実施形態の一例において、3次元表示装置1は、光照射器4、表示装置としての表示パネル5、および光学素子としての視差バリア6を含んで構成される。3次元表示装置1は、さらに、コントローラ7を含んで構成し得る。コントローラ7は、3次元表示装置1に含まれず、3次元表示装置1の外部に配置してよい。
【0020】
光照射器4は、表示パネル5の一方の面側に配置され、表示パネル5を面的に照射する。光照射器4は、表示パネル5から見て利用者と反対側に配置される。光照射器4は、光源、導光板、拡散板、拡散シート等を含んで構成されてよい。光照射器4は、光源、導光板、拡散シート等により照射光を表示パネル5の光入射面に面方向に均一化する。光照射器4は、均一化された光を表示パネル5に向けて出射する。
【0021】
表示パネル5は、例えば透過型液晶表示パネル等を採用し得る。表示パネル5は、種々の画像を
図2に示されるアクティブエリア51に表示する。本開示において、利用者が視覚的に捉える空間での表示パネル5のアクティブエリア51を表示面71とし得る。利用者と表示パネル5のアクティブエリア51との間にレンズ、凹面鏡および/または凸面鏡等が介在せず、利用者が表示パネル5のアクティブエリア51を直接視覚的に捉えるとき、表示面71は、表示パネル5のアクティブエリア51の虚像として捉えられ、表示面71は表示パネル5のアクティブエリア51の虚像の位置と一致する。表示パネル5は、
図2に示されるように、第1方向(x方向)および第1方向に略直交する第2方向(y方向)に区画された区画領域を含むアクティブエリア51を有する。
図2において、表示面71は、アクティブエリア51に一致する。第1方向(x方向)は、利用者の両眼に視差を与える方向に対応する。利用者が通常の着席または直立した姿勢で表示パネル5を直接見るように構成された3次元表示装置1において、第1方向xは利用者から観た横方向であり、第2方向yは利用者から観た縦方向である。以下では、第1方向をx方向、第2方向をy方向として説明する。表示パネル5を示す各図において、x方向およびy方向に直交し、利用者の眼の側に向く方向をz方向とする。
【0022】
区画領域の各々には、1つのサブピクセル11が対応する。複数のサブピクセル11はx方向よりもy方向に長い。各サブピクセル11はR(Red)、G(Green)、B(Blue)のいずれかの色に対応する。R、G、Bの3つのサブピクセル11は、一組として1つのピクセル12を構成し得る。1つのピクセル12は、1画素と呼び得る。x方向は、例えば、1つのピクセル12を構成する複数のサブピクセル11が並ぶ方向である。x方向のサブピクセル11の配列を「行」と呼ぶ。y方向は、例えば、同じ色のサブピクセル11が並ぶ方向である。y方向のサブピクセル11の配列を「列」と呼ぶ。後述するように、本開示の他の実施形態においては、サブピクセル11はy方向よりもx方向に長くすることができる。
【0023】
表示パネル5としては、透過型の表示パネルに限られず、自発光の表示パネル等他の表示パネルを使用することもできる。透過型の表示パネルは、液晶パネルを含む。自発光型の表示パネル5は、有機EL(electro-luminescence)、および有機ELの表示パネル5を含む。表示パネル5として、自発光型の表示パネルを使用した場合、光照射器4は不要となる。
【0024】
視差バリア6は、サブピクセル11から射出される画像光の光線方向を規定する。視差バリア6は、例えば、
図3に示されるように、複数の遮光領域61と複数の透光領域62とを有する。複数の遮光領域61および複数の透光領域62は、第1方向に沿って交互に並び得る。複数の遮光領域61は互いに略等しい幅を有して、x方向に沿って周期的に並ぶ。サブピクセル11から射出される画像光は、視差バリア6によって左眼および右眼のそれぞれに対して視認可能な範囲が定まる。視差バリア6は、
図1に示されるように、表示パネル5に対して光照射器4とは反対側に位置することができる。後述するように、他の実施形態においては、視差バリア6は、表示パネル5の光照射器4側に位置することができる。
【0025】
光学素子である視差バリア6は、本実施形態では、例えば光透過性の低い樹脂フィルムを用いることができ、表示パネル5の出射側の主面に貼付けられる。樹脂フィルムの素材としては、ポリエステル(1軸延伸ポリエステル)、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホンなどを用いることができる。このような樹脂フィルムは、いわゆるブラックマトリクスとして機能する。
【0026】
透光領域62は、視差バリア6に入射する光を透過させる部分である。透光領域62は、第1所定値以上の透過率で光を透過させてよい。第1所定値は、例えば略100%であってよく、100%未満の値であってよい。アクティブエリア51から射出される画像光が良好に視認できる範囲であれば、第1所定値は、100%以下の値、例えば80%または50%などとし得る。遮光領域61は、表示パネル5のアクティブエリア51に表示される画像が、利用者の眼に到達することを遮る。遮光領域61は、第2所定値以下の透過率で光を遮ってよい。第2所定値は、例えば略0%であってよく、0%より大きく0%に近い値であってよい。第1所定値は、第2所定値よりも数倍以上、例えば5倍以上または10倍以上大きい値とし得る。
【0027】
視差バリア6は、液晶シャッターによって構成されてよい。液晶シャッターは、液晶層を挟む透明電極間に印加する電圧に応じて光の透過率を制御し得る。液晶シャッターは、複数の画素を構成し、各画素における光の透過率を制御してよい。液晶シャッターは、光の透過率が高い領域または光の透過率が低い領域を任意の形状に形成し得る。視差バリア6が液晶シャッターで構成される場合、透光領域62は第1所定値以上の透過率を有する領域としてよい。視差バリア6が液晶シャッターで構成される場合、遮光領域61は、第2所定値以下の透過率を有する領域としてよい。視差バリア6は、微小領域ごとに透光状態と遮光状態とを可変可能なシャッターパネルを含む。当該シャッターパネルは、液晶シャッターの他にMEMS(Micro Electro Mechanical System)シャッターを採用したMEMSシャッターパネルを含む。
【0028】
図2は、利用者の眼側から見た視差バリア6の輪郭が、表示面71上に示されている。すなわち、
図2に示される遮光領域61および透光領域62は、利用者の眼が位置する適視距離の点から表示面71上に射影されたものである。本開示において「射影」とは、目的とする物体が緯(x方向)のある基準点からその物体上の全ての点を光路に沿って直線で結び、それらの直線とその物体が射影される平面との交点により形成される図形を意味する。また、「射影する」とは、その物体の射影を平面上に形成することを意味する。基準点と物体上の点とを結ぶ直線は、視差バリア6の有する光学効果により屈折、偏向等を受ける経路に沿うものとする。
【0029】
図2に示す視差バリア6の透光領域62を通過した画像光は、利用者の眼に到達する。利用者の左眼は、透光領域62に対応する帯状領域として、アクティブエリア51上の左眼可視領域52を視認し得る。視差バリア6の遮光領域61に対応するアクティブエリア51上の左眼遮光領域53を殆ど視認できない。左眼可視領域52および左眼遮光領域53のそれぞれは、視差バリア6の透光領域62および遮光領域61が、利用者の左眼が位置する適視距離の点からアクティブエリア51上に射影された領域と一致する。なお、
図2では、説明の便宜のため、視差バリア6の遮光領域61の背後に位置するアクティブエリア51を表示している。
図4~8,11,12,14においても、説明の便宜のため、視差バリア6の遮光領域61の背後に位置するアクティブエリア51を表示している。
【0030】
図1から理解されるように、3次元表示装置1において、利用者の右眼から見たとき、利用者は、透光領域61を介して、アクティブエリア51上の左眼透光領域53を少なくとも部分的に視認し得る。視差バリア6の遮光領域61によって、画像光が遮られることによって、利用者の右眼はアクティブエリア51上の左眼可視領域52を少なくとも部分的に視認できない。左眼遮光領域53に表示される右眼画像の少なくとも一部を利用者の右眼に向かう光路の方向に透過させる。視差バリア6をシャッターパネルで構成する場合、視差バリア6は左眼画像の少なくとも一部を利用者の左眼に向かう光路の方向に透過させるべく、透光領域62の位置を選択的に変更し得る。視差バリア6をシャッターパネルで構成する場合、視差バリア6は右眼画像の少なくとも一部を利用者の右眼に向かう光路の方向に透過させるべく、透光領域62の位置を選択的に変更し得る。
【0031】
図1において、コントローラ7は、3次元表示装置1の各構成要素に接続され、各構成要素を制御する。コントローラ7は、例えば、プロセッサとして構成される。コントローラ7は、1以上のプロセッサを含んでよい。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行する汎用のプロセッサ、および特定の処理に特化した専用のプロセッサを含んでよい。プロセッサは特定用途向けIC(Application Specific Integrated Circuit;ASIC)を含んでよい。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device;PLD)を含んでよい。PLDは、FPGA(Field Programmable Gate Array)を含んでよい。コントローラ7は、1つまたは複数のプロセッサが協働するSoC(System-on-a-Chip)、およびSiP(System In a Package)のいずれかであってよい。コントローラ7は、記憶部を備え、記憶部に各種情報、または3次元表示装置1の各構成部を動作させるためのプログラム等を格納してよい。記憶部は、例えば半導体メモリ等で構成されてよい。記憶部は、コントローラ7のワークメモリとして機能してよい。
【0032】
(左眼画像および右眼画像を表示するサブピクセルの配置)
コントローラ7は、利用者の左右の眼の位置と、表示パネル5および視差バリア6の構成に応じて、左眼画像および視差バリア6の構成に応じて、複数のサブピクセル11の中から、第1サブピクセル11Lと、第2サブピクセル11Rとを決定する。コントローラ7は、1つの最小繰り返し単位に属する複数のサブピクセル11の中から、第1サブピクセル11Lと第2サブピクセル11Rとを決定し得る。最小繰り返し単位は、複数あり、各々に複数のサブピクセル11が属している。複数の最小繰り返し単位は、x方向およびy方向において周期性を持って並んでいる。コントローラ7は、複数の最小繰り返し単位のサブピクセル群に対して、同じ配置パターンで、第1サブピクセル11Lと第2サブピクセル11Rとを決定し得る。視差バリア6により、第1サブピクセル11Lは利用者の左眼から視認可能である。視差バリア6により、第2サブピクセル11Rは右眼から視認可能である。一実施形態に係る第1サブピクセル11Lと第2サブピクセル11Rとの配置方向の一例を、
図2を用いて説明する。
【0033】
図2において、視差バリア6の遮光領域61と透光領62とのx方向の幅が等しい例を示す。すなわち、3次元表示装置1のバリア開口率は50%である。このバリア開口率では、左眼遮光領域53は、右眼可視領域に略一致させることができる。しかし、3次元表示装置1のバリア開口率は50%に限られない。クロストークを低減するために、遮光領域61のx方向の幅を、透光領域62のx方向の幅よりも大きくすることもできる。クロストークは、左眼画像の一部が利用者の右眼に入射し、および/または、右眼画像の一部が利用者の左眼に入射する現象である。遮光領域61のx方向の幅を、透光領域62のx方向の幅より大きくした場合、クロストークを低減することができる。その場合、バリア開口率は、50%より小さくなる。
【0034】
図2において、説明のためサブピクセル11の各々には、1~12の番号のいずれかが付されている。
図2は、利用者の眼が表示パネル5に対して基準位置に位置するときを示す図である。
図2の番号1~6のサブピクセル11の各々は、領域の半分以上が左眼可視領域52に属するので、左眼画像を表示する第1サブピクセル11Lとする。
図2の番号7~12のサブピクセル11の各々は、領域の半分以上が左眼遮光領域53(右眼可視領域)に属するので、右眼画像を表示する第2サブピクセル11Rとする。以下の図において、第1サブピクセル11Lは網掛け無しで図示する。また、第2サブピクセル11Rは網掛けをして図示する。
【0035】
図2においては、バリア開口率を50%としているため、領域の半分が左眼可視領域52に属するか否かを基準としているが、これに限られない。バリア開口率が50%未満のとき、左眼可視領域52と右眼可視領域とは互いに離れ、ともにアクティブエリア51の半分より狭くなる。その場合でも、1つのサブピクセル11の属する領域が右眼可視領域53より左眼可視領域52が広ければ、当該サブピクセル11を第1サブピクセル11Lとし得る。1つのサブピクセル11の属する領域が、左眼可視領域52より右眼可視領域53が広ければ当該サブピクセル11を第2サブピクセル11Rとし得る。
【0036】
1から12の番号が付された12個のサブピクセル11の一纏まりを最小繰り返し単位54と呼び、この最小繰り返し単位54に属するサブピクセル11の数を2n(nは自然数)で表す。
図2の例では、n=6である。
図2において、一纏まりの最小繰り返し単位54のサブピクセル群を、太線で囲んで示す。
図2の例において、最小繰り返し単位54のサブピクセル群は、アクティブエリア51上のx方向に並ぶ複数のサブピクセル11の配列(行)およびy方向に並ぶ複数のサブピクセル11の配列(列)に跨っている。
図2において、最小繰り返し単位54のサブピクセル群は、y方向の同じ位置にx方向に繰り返し同じパターンで配置される。
図2において、x方向において隣り合う最小繰り返し単位54のサブピクセル群は、拡がる列が異なっている。
図2において、y方向の正の側に並ぶ最小繰り返し単位54のサブピクセル群は、x方向の位置が負の側に2サブピクセルずれた位置となっている。
【0037】
最小繰り返し単位54に属するサブピクセル11の数2nは、表示面71上におけるサブピクセル11のx方向のピッチ(水平ピッチHp)、表示面71上におけるy方向のピッチ(垂直ピッチVp)、表示面71上におけるバリア傾斜角θ、および表示面71上における利用者の眼の位置から表示面71上に射影された視差バリア6の傾斜角である。より具体的には、バリア傾斜角θは、透光領域62および遮光領域61の表示面71上の射影が延在する方向のy方向に対する角度である。画像ピッチkは、隣接する左眼可視領域52および左眼遮光領域53を合わせた領域の、x方向の幅に等しい。
【0038】
バリア傾斜角θは、表示面71上に射影され視差バリア6の透光領域62の端線が、自然数a個の水平ピッチHpを横切る間に自然数b個の垂直ピッチVpを横切るように設定される。すなわち、aおよびbを自然数とするとき、次の式(1)で示される。
【0039】
【0040】
図2の例では、a=2、b=3である。このようにすることによって、モアレの発生等を低減しつつ、バリア傾斜角θを、表示面71のサブピクセル11の対角線方向以外にも設定することが可能となる。aおよびbとしては、互いに素となる自然数の組合わせを採用することができる。
【0041】
また、最小繰り返し単位54のサブピクセル11の数2nと画像ピッチkとは、次の式(2)の関係を有する。
【0042】
【0043】
最小繰り返し単位54は、第1サブピクセル11Lおよび第2サブピクセル11Rについての同一の配置パターンを有する複数のサブピクセル11の最小の纏まりである。最小繰り返し単位54のサブピクセル11を表示面71上で繰り返し配列することによって、コントローラ7は、全体の画像を規則的に再構成することができる。第1サブピクセル11Lおよび第2サブピクセル11Lの配置は、最小繰り返し単位54に基づいて制御することができる。
【0044】
図1のコントーラ7は、検出装置2により検出された利用者の両眼の位置に応じて、最小繰り返し単位54に属するサブピクセル11を、第1サブピクセル11Lおよび第2サブピクセル11Rのいずれかに決定する。
図2の例において、1~6番目のサブピクセル11は左眼により視認可能な第1サブピクセル11Lである。7~12番のサブピクセル11は右眼により視認可能な第2サブピクセル11Rである。
【0045】
図4は、適視距離に位置する利用者の眼から見た視差バリア6の位置が、
図2の位置からx方向の負の側(矢印の方向)に水平ピッチHpの約1/3だけ相対的に変位した場合の、第1サブピクセル11Lおよび第2サブピクセル11の半分以上の領域が左眼遮光領域53に含まれるため、このサブピクセル11を第1サブピクセル11Lから第2サブピクセル11Rに変更している。このように、全ての最小繰り返し単位54のサブピクセル群で、1番および7番のサブピクセル11の間で第1サブピクセル11Lと第2サブピクセル11Rの付け替えが行われる。これによって、使用者の眼の位置が変化しても、表示パネル5は利用者に対して立体画像を表示し続けることができる。
【0046】
本開示の実施形態において、一群の第1サブピクセル11Lと一群の第2サブピクセル11Rとの間の境界を表示境界と呼ぶ。第1サブピクセル11Lと一群の第2サブピクセル11Rとの間は、表示境界により、分けられる。表示境界は、複数のサブピクセル間の境界を通る。
図2において、x方向に隣接する最小繰り返し単位54のサブピクセル11内の4番と7番、5番と8番、6番と9番の各サブピクセルの間にも表示境界が通る。
図4では、
図2において同一の最小繰り返し単位54の4番のサブピクセル11と7番のサブピクセル11との間にあった表示境界が、7番のサブピクセル11と10番のサブピクセル11との間に移動している。
図4では、
図2において、10番のサブピクセル11と隣接するサブピクセル11と隣接する最小繰り返し単位54の1番のサブピクセル11との間にあった表示境界が、1番のサブピクセル11と4番のサブピクセル11との間に移動している。このように、コントローラ7による表示パネル5の制御は、アクティブエリア51上での表示境界をシフトさせる。それぞれの最小繰り返し単位54で第1サブピクセル11Lと第2サブピクセル11Rとの境を変更することは、表示境界をシフトさせることと実質的に同じことである。
【0047】
利用者から見た視差バリア6の表示面71に対する相対位置が変化するに従い、コントローラ7は、最小繰り返し単位54のサブピクセルの中で、第1サブピクセル11Lおよび第2サブピクセル11Rとの付け替えを順次行う。
図5は、
図4の状態からさらに利用者の眼から見た視差バリア6の相対位置が変化した場合の第1サブピクセル11Lおよび第2サブピクセル11Rの配置を示す。表示面71に射影された視差バリア6の位置は、
図2の状態からx方向の負の側に水平ピッチHpの2倍ずれている。水平ピッチHpの2倍は、画像ピッチkの半分の長さである。この場合、
図2の状態から、最小繰り返し単位54のサブピクセル群の全てで、第1サブピクセル11Lと第2サブピクセル11Rとの間の付け替えが生じている。すなわち、1番~6番のサブピクセル11が、右眼画像を表示する第2サブピクセル11Rとなり、7番~12番のサブピクセル11が、左眼画像を表示する第1サブピクセル11Lとなっている。この場合、表示境界が表示面71上全体で水平ピッチHpの2倍の距離だけx方向の負の側へシフトしたことになる。
【0048】
図6は、表示パネル5の表示面71を利用者の眼側から見た第2例を示す。
図6は、視差バリア6の遮光領域61および透光領域62の配置が第1例と異なっている。この配置の異なりによって、
図6は、左眼画像および右眼画像を表示するサブピクセル11の配置が第1例と異なっている。
図6の例において、適視距離から見た表示面71上に射影される視差バリア6の遮光領域61および透光領域62の端線の傾きは、
図2の例に等しい。すなわち、a=2、b=3である。一方、最小繰り返し単位54に属するサブピクセル数2nは、10に設定される。また、画像ピッチkは10Hp/3となる。すなわち、複数の透光領域62のそれぞれのx方向に沿ったピッチは、x方向に沿うサブピクセル11の幅である水平ピッチHpの非整数倍である。
【0049】
最小繰り返し単位54のサブピクセル群は、
図6に太線で囲まれた一群のサブピクセル11として示される。
図6において、1番~5番のサブピクセル11は左眼により視認可能な第1サブピクセル11Lである。6番~10番のサブピクセル11は右眼により視認可能な第2サブピクセル11Rである。
図6においても、左眼可視領域52に、半分以上の領域が属するサブピクセル11を第1サブピクセル11Lとする。左眼遮光領域(右眼可視領域)53に半分以上の領域が属するサブピクセル11を第2サブピクセル11Rとする。
【0050】
図2の例とは異なり、最小繰り返し単位54のサブピクセル群は、y方向の同じ位置にx方向に繰り返し同じパターンで配置されていない。隣接する複数の最小繰り返し単位54のサブピクセル群は、互いにxy方向にずれた位置に配置される。
図6において、x方向において隣り合う最小繰り返し単位54のサブピクセル群は、一部が同じ行に拡がっている。
図6において、y方向において隣り合う最小繰り返し単位54のサブピクセル群は、一部が同じ列に並んでいる。本発明者らは、このような配置により、最小繰り返し単位54を構成するサブピクセル数2nをbの倍数とは異なる自然数とすることが可能になることを見出した。2nをbの倍数以外からも選択できることにより、画像ピッチkの設定の自由度が大幅に高くなる。
【0051】
図7は、適視距離に位置する利用者の眼から見た視差バリア6の位置が、
図6の位置からx方向の負の側(矢印の方向)に水平ピッチHpの約2/5だけ相対的に変位した場合の、第1サブピクセル11Lおよび第2サブピクセル11Rの配列を示す。コントローラ7は、1番を付したサブピクセル11の半分以上の領域が左眼遮光領域53に含まれるため、このサブピクセル11を第1サブピクセル11Lから第2サブピクセル11Rに変更している。また、コントローラ7は、6番を付したサブピクセル11の半分以上の領域が左眼可視領域52に含まれるので、このサブピクセル11を第2サブピクセル11Rから第1サブピクセル11Lに変更している。このように、全ての最小繰り返し単位54のサブピクセル群で、1番および6番のサブピクセル11の間で第1サブピクセル11Lと第2サブピクセル11Rの付け替えが行われる。表示面71上での視差バリア6の射影の相対位置が変化するに従い、順次最小繰り返し単位54のサブピクセル群内で、第1サブピクセル11Lと第2サブピクセル11Rとの付け替えが行われる。このように、2nがbの整数倍でない場合でも、コントローラ7は、利用者の眼の位置に応じて第1サブピクセル11Lと第2サブピクセル11Rとを付け替えて、立体画像を表示することができる。
【0052】
上記
図2および
図6に示した例では、2つの自然数aおよびbの関係は、a<bであった。自然数aおよびbは、a>bとしてよい。
図8は、表示パネル5の表示面71を利用者の眼側から見た第3例を示す。
図8に示す第3例では、適視距離から見た表示面71上に射影される視差バリア6の遮光領域61および透光領域62の端線は、水平ピッチHpの5倍の長さを横切る間に、垂直ピッチVpの3倍の長さを横切る。すなわち、a=5、b=3である。また、最小繰り返し単位54に属するサブピクセル11の数は、10である。したがって、画像ピッチkは10Hp/3である。
図8に示すように、a>bであっても、3次元表示装置1は良好に動作させることができる。
【0053】
(適視距離の設計)
図9を用いて3次元表示装置1の適視距離について説明する。
図9は、使用者の眼、表示パネル5および視差バリア6をy方向から見た模式図に、寸法を示す符号を加えたものである。バリアピッチBp、ギャップg、適視距離d、利用者の眼間距離E、および画像ピッチkの間には、次の式(3)および式(4)が成り立つ。
【0054】
【0055】
【0056】
ここで、バリアピッチBpは、視差バリア6の遮光領域61と透光領域62を合わせたx方向のピッチである。ギャップgは、表示面71と視差バリア6との間の間隔である、ギャップgは、所定距離に相当する。利用者と表示パネル5のアクティブエリア51との間にレンズ凹面鏡および/または凸面鏡等の屈折力を有する光学素子である視差バリア6を含まないタイプの3次元表示装置1において、バリアピッチBpおよびギャップgは、各デバイスの実物の寸法に相当するる。
【0057】
眼間距離Eは、制御できない変数であるため、統計上の平均値とする。ギャップgは、3次元表示装置1ごとに個別に設定することが容易ではない。上記式(3)、(4)から適視距離dを細かく設定するためには、画像ピッチkを細かく設定できることが好ましい。画像ピッチkの値が限定されると、適視距離dの設計の自由度が低くなる。本開示の実施形態では、最小繰り返し単位54に属するサブピクセル11の数2nがbの倍数に限定されないので、画像ピッチkの設計の自由度が高い。その結果、適視距離dの設計の自由度が高い。
【0058】
また、式(2)および式(4)によれば、表示面71上におけるバリアピッチBpは次の式(5)で表される。
【0059】
【0060】
実施形態の一例において、視差バリア6は、表示パネル5と光照射器4との間に配置されてもよい。
図10は、表示パネル5のアクティブエリア51の利用者の眼が配置される側と反対側に視差バリア6を設ける構成を説明する図である。視差バリア6は、遮光領域61および透光領域62を含む。視差バリア6の背面に位置する光照射器4からの光が、視差バリア6の透光領域62を通過し、表示パネル5のアクティブエリア51の左眼可視領域52を通り利用者の左眼に入射する。また、光照射器4からの光が、視差バリア6の透光領域62を通過し、表示パネル5の左眼遮光領域(右眼可視領域)52を通り、利用者の右眼に到達する。サブピクセル11のアクティブエリア51上の位置に応じて、左眼から視認可能である第1サブピクセル11Lと右眼から視認可能である第2サブピクセル11Rとを配置し、利用者に対し3次元画像を表示することができる。
【0061】
図10の構成によれば、表示面71と利用者の眼との間の適視距離をd、表示面71と視差バリア6との間の距離をg、視差バリア6のバリアピッチをBpとするとき、次の式(6)と式(7)とが成り立つ。
【0062】
【0063】
上記式(6)、(7)から適視距離dを細かく設定するためには、画像ピッチkを細かく設定できることが望ましい。
図10の3次元表示装置1は、最小繰り返し単位54に属するサブピクセル11の数2nがbの倍数に限定されないので、適視距離dの設計の自由度を高くすることができる。
【0064】
また、式(2)および式(7)によれば、
図10の3次元表示装置1のバリアピッチBpは次の式(8)で表される。
【0065】
【0066】
図2、
図6および
図8等の例では、表示パネル5のサブピクセル11はx方向よりもy方向に長い。しかし、本開示の3次元表示装置1において、表示パネル5のサブピクセル11はy方向よりもx方向の長さが長くてよい。また、x方向とy方向の長さを等しくすることもできる。以下において、y方向よりもx方向に長いサブピクセル11を有する表示パネル5を用いる例について説明する。
【0067】
図11は、表示パネル5の表示面71を利用者の眼側から見た第4例を示す。
図11において、表示面71は、アクティブエリア51に一致する。
図11は、本開示の一実施形態に係る3次元表示装置1における表示パネル5のアクティブエリア51の構成を示す。
図11は、アクティブエリア51上での右眼画像および左眼画像を表示するサブピクセル11の配置を示す。アクティブエリア51には、y方向よりもx方向に長いサブピクセル11が、x方向およびy方向に配列される。この実施形態の3次元表示装置1の構成は、表示パネル5および視差バリア6の構成を除き、
図1において示した3次元表示装置1と同じである。なお、前述の実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。
図11上において、利用者側から見た視差バリア6の遮光領域61および透光領域62の表示パネル5上への射影が示される。
【0068】
図11において、各サブピクセル11はR,G,Bのいずれかの色に対応する。R,G,Bの3つのサブピクセル11を一組として1つのピクセル12を構成することができる。y方向は、例えば、1つのピクセル12を構成する複数のサブピクセル11が並ぶ方向である。x方向は、例えば、同じ色のサブピクセル11が並ぶ方向である。
【0069】
図11において、説明のためサブピクセル11の各々には、1~26の番号のいずれかが付されている。番号1~13のサブピクセル11の各々は、領域の半分以上が左眼可視領域52に属するので、左眼画像を表示する第1サブピクセル11Lとする。番号14~26のサブピクセル11の各々は、領域の半分以上が左眼遮光領域53に属するので、右眼画像を表示する第2サブピクセル11Rとする。
【0070】
一実施形態において、第1サブピクセル11Lおよび第2サブピクセル11Rは、次のようなルールで配列することができる。
【0071】
まず、x方向の最も負の側に位置する列のサブピクセル11の番号に1が割り当てられる。
図2では右上端のサブピクセル11の番号に1が割り当てられている。例えば、番号1が割り当てられるサブピクセル11は、基準位置において、左眼画像が表示されるべき連続する第1サブピクセル11Lのy方向の配列の最も負の側の端(
図11において右上端)にあるサブピクセル11である。基準位置は、表示パネル5、視差バリア6および利用者の眼が基準となる位置にあることを意味する。基準位置は、表示パネル5、視差バリア6および利用者の位置関係が、利用者の眼が表示パネル5および視差バリア6の中心を正面から見るときの位置関係とすることができる。
【0072】
番号1が割り当てられた列において、y方向に向かって各サブピクセル11に1~2r(rは正の整数)の番号が昇順で割り当てられる。rは第1所定数である。第1所定数rは、片方の眼に割り振られるサブピクセル11の数ということができる。番号が2rに到達した後は1に戻ることで、同じ列のサブピクセル11に1~2r(rは正の整数)の番号が繰り返し割り当てられる。
図11の例では、rが13のとき、番号の最大値が26である場合を示している。
【0073】
番号が割り当てられた列の各サブピクセル11の番号にt(tはr以下の正の整数)を加えた番号を、x方向(
図2において左側)に隣接する列の隣接するサブピクセル11に割り当てる。tは第2所定数である。第2所定数tは、左眼可視領域52および左眼遮光領域53の間の境界が、1ピクセル分x方向に進む間にy方向に通過するサブピクセル11の数ということができる。第2所定数tを加えた番号が2rを超える場合、第2所定数tを加えた番号から2rを引いた番号が隣接するサブピクセル11に割り当てられる。この操作を、順次隣接する列に対して繰り返す。
図11の例では第2所定数tは9である。
【0074】
表示パネル5および視差バリア6に対し利用者の眼が基準位置にあるとき、上記のように、番号が与えられたサブピクセル11のうち、番号が1~2rのサブピクセル11は、左眼画像を表示する第1サブピクセル11Lになる。また、番号が(r+1)~2rのサブピクセル11は、右眼画像を表示する第2サブピクセル11Rになる。
【0075】
表示面71上におけるサブピクセル11の1画素のy方向の長さを垂直ピッチVp,表示面71上におけるx方向の長さを水平ピッチHpとするとき、第2所定数tとバリア傾斜角θとは、式(9)を満たす。
【0076】
サブピクセル11の水平ピッチHpをピクセルピッチともいう。
【0077】
図11の表示面71の第1サブピクセル11Lおよび第2サブピクセル11Rの配置は、
図12に太線で示す最小繰り返し単位54のサブピクセル群を表示面71上に繰り返し配置したものと同じものと考えることができる。透光領域62の端線は、x方向に1個の水平ピッチHpを横切る間に9個の垂直ピッチVpを横切っている。第1所定数rは最小繰り返し単位54に含まれるサブピクセル11の数2nの半分(すなわちn)に等しい。自然数aに相当する数は1であり、第2所定数tは、bと同じものである。第1~3例の
図2、6および8等の表示面71と
図11の表示面71との第1サブピクセル11Lと第2サブピクセル11Rの付け替えは、実質的に同じ方法として行うことができる。しかしながら、以下の説明では、第1サブピクセル11Lと第2サブピクセル11Rとの付け替えを、
図2、6および8等の表示面71における説明とは異なり、表示境界の移動に着目して説明する。
【0078】
図13に示すように、番号1~13に対応する第1サブピクセル11Lと、番号14~26に対応する第2サブピクセル11Rとは、第1サブピクセル11Lおよび第2サブピクセル11Rの間の境界を通る仮想的な表示境界15によって分けることができる。表示境界15は、
図13において太線で強調して示す。表示境界15は周期的な段差を有する階段状の形状を有する。
【0079】
コントローラ7は、検出装置2により検出される利用者の眼の位置に基づいて、表示境界15をシフトさせることができる。
図14は、利用者の眼から見た視差バリア6の位置が、
図11の位置からx方向の負の側(矢印の方向)に相対的に変位した場合の、表示境界15の位置を示す。このような動きは、利用者の眼が相対的に左に移動した場合に生じ得る。
図14において、
図11および
図13と同じサブピクセル11には、同じ番号を付している。
図14に示すように、利用者の眼の位置が変化すると、コントローラ7は、表示境界15をずらして、一部の第1サブピクセル11Lと第2サブピクセル11Rとを付け替える。例えば、
図14の例では、
図11および
図13の左眼画像を表示する11~13番の第1サブピクセル11Lが、右眼画像を表示する第2サブピクセル11Rに変更されている。また、
図11および
図13の右眼画像を表示する24~26番の第2サブピクセル11Rが、左眼画像を表示する第1サブピクセル11Lに変更されている。全体として、表示境界15は、y方向の負の側(
図14において上方向)に垂直ピッチVpの大きさの3倍ずれている。コントローラ7が付け替える第1サブピクセル11Lおよび第2サブピクセル11Rの数は、利用者の眼の位置の変位量によって異なる。
【0080】
図13に示すように、第1サブピクセル11Lおよび前記第2サブピクセル11Rは、それぞれの列において第1所定数r個のサブピクセル11が連続して並ぶ。また、隣接する2つの列の間で第1サブピクセル11Lおよび前記第2サブピクセル11Rが配列された領域がy方向に第2所定数t個ずつずれている。第1所定数rは第2所定数tよりも大きく第2所定数tの倍数でなくてよい。第1所定数rが第2所定数tの倍数ではないとき、
図13に両矢印で示すように、同じ形の表示境界15が、y方向およびx方向の双方に傾いた斜め方向に周期的に繰り返し配列されている。これに対して、後述する
図15の比較例では、同じ形の表示境界15がx方向にのみ、周期的に繰り返し配列される。
【0081】
図15から
図17を用いて、本開示の3次元表示装置1が、比較例に比べて画像ピッチkを細かく設定できることを説明する。
【0082】
図15は、比較例に係る3次元表示装置の表示面71上の第1サブピクセル11Lと第2サブピクセル11Rとの配置を示す図である。
図15上には、左眼可視領域52と左眼遮光領域53との間の表示境界15を表す境界線が、斜め方向に延びる直線で示されている。
図15のサブピクセル11の配置では、第1所定数r=18、第2所定数t=9としている。第1サブピクセル11Lには、番号1~18が付されている、第2サブピクセル11Rには、番号19~36が付されている。
図15に示すように、r=2tとなるようにして、第1サブピクセル11Lおよび第2サブピクセル11Rの配置を決めると、画像ピッチkの値がサブピクセル11の水平ピッチHpの4倍に限定される。
【0083】
図15のように、サブピクセル11を有する表示パネル5が与えられた場合、画像ピッチkをサブピクセル11の水平ピッチHpの整数倍とする構成は最も採用し易い構成である。この構成であれば、常にx方向に第1サブピクセル11Lと第2サブピクセル11Rが、2つずつ繰り返し整然と配列される。また、特許文献1のサブピクセルの対角線方向に延びる視差バリア6を有する3次元表示装置においても、画像ピッチkは水平ピッチHpの整数倍である。さらに、x方向の視差を与えるために、表示境界15を水平方向にずらして配列することは直感的にも理解しやすい。
【0084】
しかし、前述のように、本件発明者らが鋭意検討したところ、本開示の方法に従えば、画像ピッチkを水平ピッチHpの整数倍に限定することなく、左眼用の第1サブピクセル11Lおよび右眼用の第2サブピクセル11Rを配置することが可能であることが分かった。これにより、画像ピッチkを水平ピッチHpを単位とするよりも細かく設定することが可能になる。画像ピッチkは、次の式(10)により決定される。
【0085】
【0086】
すなわち、画像ピッチkは、第1所定数rの2倍を第2所定数tで割った商にサブピクセル11の第1方向のピッチである水平ピッチHpをかけた値に略等しくなる。画像ピッチkが決定されると、画像ピッチk、適視距離dおよびギャップgに基づいて、バリアピッチBpを決めることができる。上述の
図11のサブピクセル11の配置は、このような発想に基づくものである。以下に、本開示の実施形態に係る、表示面71上のサブピクセル11の他の配置例を
図16および
図17に示す。
【0087】
図16は、第1所定数r=17、第2所定数t=9として設計した表示面71の、右眼画像および左眼画像を表示するサブピクセル11の配置の第5例を示している。第1所定数rは第2所定数tより大きく第2所定数tの整数倍ではない。このサブピクセル11の配置によれば、画像ピッチkは、水平ピッチHpの34/9(約3.78)倍となる。
【0088】
図17は、第1所定数r=19、第2所定数t=9として設計した表示面71の、右眼画像および左眼画像を表示するサブピクセル11の配置の第6例を示している。第1所定数rは第2所定数tより大きく第2所定数tの整数倍ではない。このサブピクセル11の配置によれば、画像ピッチkは、水平ピッチHpの38/9(約4.22)倍となる。
【0089】
図16および
図17によれば、画像ピッチkは水平ピッチHpの整数倍とは異なる倍数となっている。このように、第1所定数rと第2所定数tの値を適宜設定することによって、画像ピッチkの大きさを、より細かく設定することができる。これにより、本開示の3次元表示装置1では、適視距離dをより高い自由度で設定することが可能になる。
【0090】
また、上記
図11、
図16および
図17に例示の実施形態では、サブピクセル11の垂直ピッチVpよりも視差方向であるx方向の水平ピッチHpの方が長い。このようにサブピクセル11が配置されている場合、画像ピッチkを水平ピッチHpの整数倍に限定してしまうと、サブピクセル11の水平ピッチHpが垂直ピッチVpよりも短い場合と比較して、適視距離dの設定の自由度が特に低く、設計上の制約となる。本開示の3次元表示装置1は、サブピクセル11が視差方向に長くなるように配列された場合に、適視距離dの設定の制約を少なくすることができ、特に有効である。
【0091】
図18に、複数の実施形態の1つにかかる3次元表示装置1が示される。上述の各実施形態では、3次元表示装置1が光学素子として視差バリア6を有するものとした。3次元表示装置1は、光学素子として、視差バリア6に代えて、レンチキュラレンズ9を有することができる。この場合、レンチキュラレンズ9は、x方向およびy方向に対して、斜め方向に延びる微細な細長い半円筒型のシリンドリカルレンズ10を配列して構成され得る。
【0092】
図18の3次元表示装置1は、利用者が表示パネル5を直接見るタイプのものなので、利用者が視覚的に捉える空間での表示面71は、アクティブエリア51に一致する。適視距離dに位置する利用者の左眼および右眼からそれぞれ視認可能な表示パネル5のアクティブエリア51上の領域を左眼可視領域52および左眼遮光領域53(右眼可視領域)とすることができる。レンチキュラレンズ9は、表示パネル5の左眼可視領域52から射出された左眼画像の画像光の少なくとも一部を利用者の左眼に向けて偏向する。レンチキュラレンズ9は、表示パネル5の左眼遮光領域53(右眼可視領域)から射出された右眼画像の画像光の少なくとも一部を適視距離dに位置する利用者の右眼に向けて偏向する。すなわち、レンチキュラレンズ9は、左眼画像の少なくとも一部を選択的に利用者の左眼に向かう光路の方向に透過させ、右眼画像の少なくとも一部を選択的に利用者の右眼に向かう光路の方向に透過させる光学素子である。
【0093】
光学素子にレンチキュラレンズ9を用いた場合も、視差バリア6を用いた場合と同様の効果が得られる。画像ピッチkは、左眼可視領域52の第1方向に沿うピッチとすることができる。バリア傾斜角θは、左眼可視領域52のアクティブエリア51上のy方向に対する角度とすることができる。アクティブエリア51上の左眼画像および右眼画像の各サブピクセル11の表示位置は、レンチキュラレンズ9の各シリンドリカルレンズ10による画像光の屈折、偏向等の効果が考慮される。
【0094】
(ヘッドアップディスプレイ)
複数の実施形態の1つにおいて、
図19に示されるように、3次元表示装置1は、ヘッドアップディスプレイ100に搭載され得る。ヘッドアップディスプレイ100は、HUD(Head Up Display)ともいう。HUD100は、3次元表示装置1と、光学部材110と、被投影面130を有する被投影部材120とを備える。光学部材110および被投影部材120は、利用者の視野に虚像を結像するように投影する光学系に含まれる。本開示において、光学部材110および被投影部材120をまとめて、単に光学系と呼ぶ場合がある。HUD100は、3次元表示装置1から射出される画像光を、光学部材110を介して被投影部材120に到達させる。HUD100は、被投影部材120で反射させた画像光を、利用者の左眼および右眼に到達させる。つまり、HUD100は、破線で示される光路140に沿って、3次元表示装置1から利用者の左眼および右眼まで画像光を進行させる。利用者は、光路140に沿って到達した画像光を、虚像150として視認し得る。3次元表示装置1は、利用者の左眼および右眼の位置に応じて表示を制御することによって、利用者の動きに応じて立体視を提供し得る。
【0095】
HUD100において、表示面71は、虚像150の表示される位置に位置する。虚像150が表示される位置とは、アクティブエリア51に表示される画像を、利用者が虚像として視覚的に捉える位置である。HUD100において、表示パネル5のアクティブエリア51上でのバリア傾斜角θは、表示面71上に射影される視差バリア6の複数の透光領域62の第2方向に対する角度である。HUD100は、利用者の眼が配置される適視距離dの点から虚像を結像する光学系を介して、表示パネル5および視差バリア6を表示面71上へ射影する。例えば、バリア傾斜角θは、虚像として利用者に視認される表示面71上で、前述の式(1)を満たすように設定される。表示パネル5の表示面71上での画像ピッチkは、表示面71上に射影される視差バリア6の複数の透光領域62のx方向のピッチである。画像ピッチkは、前述の式(2)を満たすように設定される。本開示のHUD100は、画像ピッチkを水平ピッチHpの整数倍とする必要がないので、設計の自由度が高い。
【0096】
HUD100において、利用者は、適視距離dから虚像としての表示面71を視認する。虚像系においても、式(3)~式(10)が成り立つ。虚像系において、バリアピッチBpは、視差バリア6の虚像における透光領域62のx方向のピッチであり、ギャップgは、表示パネル5のアクティブエリア51の虚像と視差バリア6の虚像との間の間隔であり、適視距離dは、表示パネル5のアクティブエリア51の虚像(表示面71)と利用者との距離であり、画像ピッチkは、視差バリア6の複数の透光領域62を表示面71に射影した際のx方向のピッチである。
【0097】
図20に示されるように、HUD100、3次元表示装置1は、移動体に搭載されてよい。HUD100、3次元表示装置1および3次元表示装置1は構成の一部を、当該移動体が備える他の装置、部品と兼用してよい。例えば、移動体は、ウインドシールドをHUD100の被投影部材120として兼用してよい。
【0098】
本開示の実施形態における「移動体」には、車両、船舶、航空機を含む。本開示における「車両」には、自動車および産業車両を含むが、これに限られず、鉄道車両および生活車両、滑走路を走行する固定翼機を含めてよい。自動車は、乗用車、トラック、バス、二輪車、およびトロリーバス等を含むがこれに限られず、道路上を走行する他の車両を含んでよい。産業車両は、農業および建設向けの産業車両を含む。産業車両には、フォークリフト、およびゴルフカートを含むがこれに限られない。農業向けの産業車両には、トラクター、耕耘機、移植機、バインダー、コンバイン、および芝刈り機を含むが、これに限られない。建設向けの産業車両には、ブルドーザー、スクレーバー、ショベルカー、クレーン車、ダンプカー、およびロードローラを含むが、これに限られない。車両は、人力で走行するものを含む。なお、車両の分類は、上述に限られない。例えば、自動車には、道路を走行可能な産業車両を含んでよく、複数の分類に同じ車両が含まれてよい。本開示における船舶には、マリンジェット、ボート、タンカーを含む。本開示における航空機には、固定翼機、回転翼機を含む。
【0099】
(3次元表示装置等の設計方法)
図21を用いて、本開示の3次元表示装置1、HUD100(以下、「3次元表示装置等」とする)の設計方法について、
図11、
図15~
図17の例に基づいて説明する。3次元表示装置等の設計方法は、表示パネル5のサブピクセル11の配置および視差バリア6の形状等を設計する方法を含む。
【0100】
本開示の3次元表示装置1は、種々の利用環境において使用される。そのため、利用環境に応じて、視差バリア6から利用者の眼までの距離に要求される仕様が、ある程度決定される。例えば、HUDを車両に搭載した場合、利用者である運転者の頭部の位置はある程度の範囲に限られる。また、パチンコまたはスロットマシン等の遊戯機器に採用された場合も、遊戯機器の表示画面から利用者の眼までの距離は、ある程度限られる。そのため、本開示の3次元表示装置等の設計では、まず、はじめに利用用途に応じた、適視距離dが決定される(ステップS01)。適視距離dは、ある程度の範囲を有する距離として決定されてよい。
【0101】
次に、ステップS01で決定された適視距離d、利用者の平均的な眼間距離E、表示面71と視差バリア6との間のギャップgの採用可能な範囲等のパラメータに基づいて、許容できる画像ピッチkの範囲が決定される(ステップS02)。ここで、注目すべきは、本開示の設計方法によれば、画像ピッチkの決定において、表示パネル5の水平ピッチHpの整数倍の大きさに制約される必要がないことである。
【0102】
次に、画像ピッチkが、ステップS02により決定された画像ピッチkの範囲となるように、正の整数の第1所定数rおよび第2所定数tが決定される(ステップS03)。画像ピッチkと第1所定数rおよび第2所定数tとの間には、前述の式(10)の関係が成立する。決定された第1所定数rおよび第2所定数tは、コントローラ7に記憶され、使用される。コントローラ7は、第1所定数rおよび第2所定数tを、3次元表示装置等の使用時に、第1サブピクセル11Lおよび第2サブピクセル11Rを、表示パネル5のアクティブエリア51上のサブピクセル11に割り当てるために使用する。
【0103】
第1所定数rおよび第2所定数tが決定されると、前述の式(9)に基づいて、視差バリア6のバリア傾斜角θを求めることができる。また、画像ピッチk、適視距離dおよびギャップgから、視差バリア6のバリアピッチBpが決定される。これによって、視差バリア6の形状が決定される(ステップS04)。
【0104】
以上のようにして、3次元表示装置等の、サブピクセル11の配置方法および視差バリア6の形状が決定する。これによって、所望の適視距離dに応じて3次元表示装置1を構成することができる。
【0105】
図2、
図6および
図8等の例では、表示パネル5のサブピクセル11はx方向よりもy方向に長い。しかし、本開示の3次元表示装置1において、表示パネル5のサブピクセル11はy方向よりもx方向の長さが長くてよい。また、x方向とy方向の長さを等しくすることもできる。以下において、y方向よりもx方向に長いサブピクセル11を有する表示パネル5を用いる例について説明する。
【0106】
(本実施形態の構成)
次に、本開示に係る実施形態の3次元表示装置1について説明する。なお前述の各実施形態と対応する部分には、同一の参照符を付す。本実施形態の3次元表示装置1は、第1方向xおよび該第1方向xに略直交する第2方向yに沿って格子状に配列された複数のサブピクセル11を備えるアクティブエリア51を有し、該アクティブエリア51に第1画像と第2画像とが混合された視差画像を表示可能に構成される表示パネル5と、視差画像の光線方向を規定する複数の開口を有する光学素子としての視差バリア6と、前記検出装置2が検出した前記第1眼および前記第2眼のいずれか一方の位置に基づいて、第1画像と、第2画像とを混合して表示するように前記表示パネル5を制御するコントローラ7と、を含む。本実施形態において、第1眼は右眼に対応し、第2眼は左眼に対応する。
【0107】
コントローラ7は、該コントローラ7に設定された第1周期ごとに1サブピクセルずつシフト量が大きくなるように前記検出装置2によって検出された前記一方の眼の位置を基準にして外側にシフトさせる第1シフト処理と、前記検出装置2によって検出された前記第1眼および前記第2眼のいずれか一方が1サブピクセルシフトすると、前記第1シフト処理の境界を、1サブピクセルずつシフトさせる第2シフト処理と、利用者の眼が前記第1周期分のサブピクセル数と集光度とを乗算の積として求めた第2周期分のサブピクセル11を、1サブピクセルシフトさせ、前記境界を前記第1周期分のサブピクセルをシフトさせる第3シフト処理とを、実行するように構成される。
【0108】
前述の3次元表示装置1において、「集光度」は、第1眼および第2眼のいずれか一方から視差バリア6の開口を介して表示パネル5の表示面71に垂直な方向に観察距離LRをあけて視差画像を見たとき、開口を介して視認可能な第1画像および第2画像のいずれか一方の画像光を出射するサブピクセル11の数を被除数とし、第1画像および第2画像の画像光を出射するサブピクセル11の数を除数とする除算の商の整数部である。要するに、「集光度」は、第1眼および第2眼のいずれか一方から視差バリア6の開口を介して表示パネル5の表示面71に垂直な方向に観察距離LRをあけて基準視差画像を見たとき、第1画像および第2画像の画像光を出射するサブピクセル数に対する、開口を介して視認可能な第1画像および第2画像のいずれか一方の画像光を出射するサブピクセル数の割合である。
【0109】
前述の3次元表示装置1において、コントローラ7は、第1周期分のサブピクセル11と第2周期分のサブピクセル11とが重なる際に、第1シフト処理、第2シフト処理および第3シフト処理のうちの二つのシフト処理をそれぞれ実行するように構成される。
【0110】
前述の3次元表示装置1において、第2シフト処理でサブピクセル11を移動させる方向は、第1眼および第2眼のいずれか一方の移動方向と同じ方向に構成されてよい。
【0111】
前述の3次元表示装置1であって、第3シフト処理でサブピクセル11をシフトさせる方向は、第1眼および第2眼のうちいずれか一方の移動方向とは逆方向に構成されてよい。
【0112】
前述の3次元表示装置1において、利用者が視覚的に捉える空間でのアクティブエリア51を表示面71とするとき、アクティブエリア51の表示面71上における境界線203(
図29参照)は、表示面71上におけるサブピクセル11の第1方向xに沿う大きさをHpとし、表示面71上におけるサブピクセル11の第2方向yに沿う大きさをVpとし、表示面71上における第2方向yに対する角度をθとし、aおよびbを自然数とするとき、次式(11)、
【0113】
【0114】
によって表される角度で傾斜した方向に延びて構成されてよい。
【0115】
(構成の詳細)
集光度説明(頭を動かしたときの画素制御)
【0116】
図22は、第1集光度の場合の視野範囲を示す図である。第1集光度は、集光度100%である。第1集光度は完全集光と言いうる。利用者の頭が観察距離L
Rの位置で静止しているとき、3次元画像を適視できる適視幅は無限大であり、このときの利用者が見ている
図29に示す画面202には、集光度100%かつ適視距離dのとき、適視幅が無限大のため、クロストークのない左眼画像(第1サブピクセル11L)および右眼画像(第2サブピクセル11R)の3次元画像を見ることができる領域Wにおいては、適視幅の境界線203は3次元画像面に表示されない。このような第1集光度の状態では、第1眼および第2眼の互いの視野範囲を示す三角形の底辺が一致している。
【0117】
図23は、第2集光度の場合の視野範囲を示す図である。第2集光度は、集光度0%である。第2集光度では、光学的に集光をしていない。集光度0%では、観察距離L
Rにおいて第1眼および第2眼のそれぞれの眼の画像の視野範囲を示す三角形の斜辺が互いに平行となり、各三角形の底辺が互いに制御単位である8サブピクセル分ずつずれている。
【0118】
図24は、第2集光度の場合の視野範囲を示す図である。第2集光度(集光度0%)では、各眼の画像の視野範囲を示す三角形の底辺が、一致するように表パネル5のコントローラ7による制御にサブピクセルシフトする処理が導入される。隣接する三角形の底辺の重なる領域Wがクロストークのない左眼画像が見える領域となるように、視差バリア6の遮光領域61および透孔領域62に対して表示パナル5の第1サブピクセル11Lおよび第2サブピクセル22Rが制御される。
【0119】
図25は、第3集光度の場合の視野範囲を示す図である。第3集光度では、光学的に集光しているものの、完全に集光していない。第3集光度は、第1集光度と第2集光度との間の集光度合である。ここでは、第3集光度を集光度50%として説明するが、これに限定されない。利用者の頭を右に1サブピクセル動かしたとき、集光度50%では、一方の眼の画像の視野範囲を示す三角形の底辺のずれが4サブピクセル/8サブピクセル(=50%のサブピクセル数)が重なることになる。50%以外の集光度では、集光度に応じてズレが重なるピクセル数が増減する。この場合、
図30に示されるように、頭を右に1サブピクセル分動かすと同時にシフト幅の境界線203も右に1サブピクセル分動かす。
【0120】
図26は、第3集光度の場合の視野範囲を示す図である。この場合、コントローラ7は、表示パネル5のシフト幅を、第1集光度(例えば、集光度100%)のときのシフト幅の2倍(=B)をシフトさせる。これによってクロストークのない3次元画像の視認領域Wを得ることができる。
【0121】
図27は、第2集光度の場合の視野範囲を示す図である。利用者の頭が静止しているとき、第2集光度(例えば、集光度0%)では、一方の眼の画像の視野範囲を示す各三角形の底辺は一致しない。第2集光度では、各三角形の斜辺が互いに平行となり、各底辺は制御単位の8サブピクセル分(≒0/8)ずれている。
【0122】
図28は、第1集光度の場合の視野範囲を示す図である。頭が静止しているとき、si1集光度(集光度100%)では、一方の眼の画像の視野範囲を示す三角形の底辺がククロストークのない視野領域Wで一致(≒8/8)する。
【0123】
図29は、利用者が頭が静止しているときの、第1集光度(例えば、集光度100%)の場合の観察画面を示す図である。前述の
図22で述べたように。3次元画像面は利用者が見ている画面となる。第1集光度では、第1眼および第2眼が適視距離dに静止しているとき、シフト幅Bが無限大であるため、シフト幅Bの境界線203は観察画面202の3次元画像には表示されない。
【0124】
図30は、利用者が頭を右に1サブピクセル動かしたときの、第1集光度(例えば、集光度100%)の場合の観察画面202を示す図である。利用者の頭を右に1サブピクセル分動かすと、コントローラ7は、同時に表示パネル5の左右の視差画像の境界線203も右に1サブピクセル分動かすように第1シフト処理を実行する。
【0125】
図31は、利用者が頭を右に第1距離動かしたときの、第1集光度の場合の観察画面202を示す図である。この図では、第1集光度において、観察距離L
Rが適視距離と等しく、水平ピッチHpが4サブピクセルである。
図31の場合、3D画像面の全画素は、頭が第1距離動くごとに、表示されている画像の表示位置を1サブピクセルシフトしないと、立体視を維持できなくなる。第1距離は、第1集光度のときに、表示画像を1サブピクセルをシフトさせる必要が生じる距離とする。第1距離は、例えば15.75mm(63mm/4)とする。第1集光度のとき、頭が右に第1距離動くと、コントローラ7は、表示パネル5の視差画像のシフト幅の境界線203も右に第1距離移動させる第2シフト処理を実行する。このとき、3D画像面前の画素は、頭が静止しているときと比べて、1サブピクセル左にシフトしている。
【0126】
図32は、利用者の頭が静止しているときの、第2集光度(例えば、集光度0%)の場合の観察画面202を示す図である。頭が静止し、第2集光度で、かつ観察距離L
Rが第1集光度(例えば、集光度100%)のときの適視距離dと等しいとき、コントローラ7は、表示パネル5のシフト幅B15.75mm(=63mm/4)間隔の中央領域の境界線を基準として、
図33に示されるように、基準の境界線の両側の領域を1サブピクセルずつシフトする第3シフト処理を実行する。
【0127】
図34は、利用者が頭を右に1サブピクセル動かしたときの第2集光度の場合の観察画面202を示す図である。第2集光度(例えば、集光度0%)において、利用者が頭を右に1サブピクセル動かしたとき、コントローラ7は、
図35に示されるように、表示パネル5の中央領域の境界線を基準にして、境界線の両側の視差画像を同時に1サブピクセルずつずらし、シフト幅Bの境界線203も右に1サブピクセル分動かす第1シフト処理を実行する。
【0128】
図36は、利用者が頭を右に第1距離動かしたときの第2集光度の場合の観察画面を示す図である。第2集光度(例えば、集光度0%)において、水平方向の画像ピッチkサブピクセルでかつ観察距離が第1集光度(例えば、集光度100%)のときの観察距離L
Rが第1集光度のときの適視距離dと等しいとき、コントローラ7は、表示パネル5の視差画像の全画素は、頭が15.75mm動くごとに、頭が動く前の状態から1サブピクセルシフトされてないと立体視を維持できるように、頭が静止しているときと比べて、左に1サブピクセルシフトさせる第2シフト処理を実行する。
【0129】
図37は、利用者の頭が静止しているとき、完全ではない第3集光度(例えば、集光度50%)の場合の観察画面101を示す図である。利用者の頭が静止しており、完全ではない集光(例えば、集光度50%)であり、観察距離L
Rが第1集光度(例えば、集光度100%)のときの観察距離(=集光度100%のときの適視距離d)と等しいとき、コントローラ7は、表示パネル5の視差画像をシフト幅が第1距離の2倍の間隔となるように第3シフト処理を実行する。
【0130】
図38は、利用者が頭を右に1サブピクセル相当の距離を動かしたときの観察画面202を示す図である。第3集光度(例えば、集光度50%)において、頭を右に1サブピクセル動かすと、コントローラ7は、同時に表示パネル6の視差画像のシフト幅Bの境界線203も右に1サブピクセル分動かす第3シフト処理を実行する。
【0131】
図39は、頭を右に第1距離動かしたとき、完全ではない第3集光度(例えば、集光度50%の)の場合の観察画面202を示す図である。利用者がサブピクセルのシフト前に頭を第1距離動かしたとき、水平方向の画像ピッチを4サブピクセルとし、観察距離L
Rが第1集光度(例えば、集光度100%)のときの適視距離dと等しいとき、コントローラ7は、表示パネル5の視差画像の全画素は頭が第1距離動くごとに、1サブピクセル分シフトさせる第2シフト処理を実行する。一斉シフト処理と1サブピクセル毎のシフト処理は独立しており、同時(又は逐次)される。1サブピクセル毎のシフト処理は頭が単位距離を移動するたびに実行が必要な処理であるので、一斉シフト処理に対して時間的な前後は生じないように実行される。
【0132】
図40は、一斉サブピクセルシフト後に利用者が頭を右に第1距離動かしたときの第3集光度の場合の観察画面を示す図である。第3集光度の場合に利用者が頭を第1距離シフトさたとき、コントローラ7は、表示パネル5の視差画像を一斉に左に1サブピクセルシフトさせる第3シフト処理を実行する。
【0133】
(主な設定値の具体例)
コントローラ7の主な設定値は以下のようにして算出することができ、コントローラ7に設定される。
【0134】
「基準インデックス番号」は、「基準番号」と「初期インデックス値」との和を被除数とし、「インデックス数」を除数として算出された剰余の値である。基準番号は、サブピクセルを特定する通しの数値である。基準番号は、例えばサブピクセル番号を採用しうる。ここでは、サブピクセル番号を基準番号として説明する。初期インデックス値は、基準番号の開始値を調整するための定数である。この基準インデックス番号は、固定値となる。
【0135】
「基準シフト量」は、「サブピクセル番号」を被除数とし「シフト周期」を除数としたときの商として算出される。
【0136】
この場合の「インデックス番号」は、基準インデックスと基準シフト量との差として算出される。インデックス番号は、視差画像を左右いずれを表示するかを定めるものである。
【0137】
インデックス番号は、完全集光しない、集光度が100%以下である場合に、シフト周期ごとにサブピクセルをシフトする。サブピクセルをシフトするシフト位置は、利用者の移動に合わせてシフトする。利用者に移動がある場合、シフト量は、「サブピクセル番号」と「利用者移動量」との差を被除数とし、「シフト周期」を除数としたときの商となる。つまり、シフト量は、基準シフト量の被除数から利用者移動量を引いた値となる。
【0138】
利用者が移動した際のシフト位置の移動を考慮した「インデックス番号」は、「基準インデックス番号」と「シフト量」との差を被除数とし、「インデックス数」を除数として算出した剰余の値となる。利用者の移動方向の一方を正方向としたとき、一方とは逆方向のときを負の方向とし、マイナスの数値に設定される。
【0139】
集光度が0%以上である、「集光する場合」は、利用者が移動した場合の「インデックス番号」は、利用者の「移動量」が「シフト周期」と「集光度」との「積」に達するごとに、画像全体で「インデックス」を一斉にシフトする必要が生じる。また、「集光する場合」は、利用者の移動に合わせてシフト位置がシフトする。「移動量」を被除数とし、「シフト周期」と「集光度」との「積」を除数としたときの「商」に応じたシフトが生じる。この「商」は、「第2シフト量」とする。
【0140】
利用者が移動した際の「インデックスの一斉シフトを考慮した「インデックス番号」は、「基準インデックス番号」と「シフト量」との「差」から、さらに「シフト周期」と「第2シフト量」との「積」を減じた値を被除数とし、「インデックス番号」を除数としたときの「剰余の値」となる。
【0141】
図41は、3次元表示装置1のクロストーク低減効果を確認するための輝度測定設備の概略的な構成を示す図である。3次元表示装置1を含むHUD100は、車両、船舶、航空機等の移動体に搭載されてよい。HUD100は、構成の一部を、該移動体が備える他の装置、部品と兼用してよい。例えば、移動体は、ウインドシールドを被投影部材120として兼用してよい。構成の一部を該移動体が備える他の装置、部品と兼用する場合、他の構成をHUDモジュールまたは3次元表示コンポーネントと呼びうる。HUD100は、移動体に搭載されてよい。
【0142】
移動体は、3次元表示装置1のインデックスの調整が、第1基準画像が投影されている利用者の顔の像に基づいて行われることから、利用者の主観的な判断を排除した調整を行うことができる。したがって、移動体は、利用者に3次元画像を適切に視認させることができる。移動体は、インデックスを調整するにあたって、利用者の判断を必要としない。したがって、移動体によれば、利用者に煩わしさを感じさせることなく、インデックスの調整を複数回繰り返すことが可能になり、インデックスの調整精度を向上させることができる。
【0143】
本開示における「車両」には、自動車および産業車両を含むが、これに限られず、鉄道車両および生活車両、滑走路を走行する固定翼機を含めてよい。自動車は、乗用車、トラック、バス、二輪車、およびトロリーバス等を含むがこれに限られず、道路上を走行する他の車両を含んでもよい。産業車両は、農業および建設向けの産業車両を含む。産業車両には、フォークリフト、およびゴルフカートを含むが、これに限られない。農業向けの産業車両には、トラクター、耕耘機、移植機、バインダー、コンバイン、および芝刈り機を含むが、これに限られない。建設向けの産業車両には、ブルドーザー、スクレーパー、ショベルカー、クレーン車、ダンプカー、およびロードローラを含むが、これに限られない。車両は、人力で走行するものを含む。なお、車両の分類は、上述に限られない。例えば、自動車には、道路を走行可能な産業車両を含んでよく、複数の分類に同じ車両が含まれてよい。本開示における船舶には、マリンジェット、ボート、タンカーを含む。本開示における航空機には、固定翼機、回転翼機を含む。
【0144】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、また、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0145】
2 検出装置
3 3次元表示装置
4 光照射器
5 表示パネル(表示装置)
6 視差バリア(光学素子)
7 コントローラ
8 移動体
9 レンチキュラレンズ(光学素子)
10 シリンドリカルレンズ
11 サブピクセル
11L 第1サブピクセル
11R 第2サブピクセル
12 ピクセル
15 表示境界
51 アクティブエリア
52 左眼可視領域
53 左眼遮光領域
54 最小繰り返し単位
61 遮光領域
62 透光領域
71 表示面
100 ヘッドアップディスプレイ
110 光学部材
120 被投影部材
130 被投影面