(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】気密端子
(51)【国際特許分類】
H01R 9/16 20060101AFI20241107BHJP
C04B 35/111 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
H01R9/16 101
C04B35/111
(21)【出願番号】P 2021010641
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 晃一
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/015189(WO,A1)
【文献】特開2006-210172(JP,A)
【文献】特開2007-201335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/16
C04B 35/111
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の導体と、
該導体と同軸上に位置する金属リングと、
前記導体と同軸上に位置する絶縁リングと、
該絶縁リング上に設置され、柱状の前記導体を2つの領域に区画するフランジと、
前記導体に前記絶縁リングを固定するための第1固定部材と、
前記フランジに前記絶縁リングを固定するための第2固定部材と、
を含み
、
前記金属リング、前記第1固定部材および前記第2固定部材
が、炭素鋼、低合金鋼、工具鋼、ステンレス鋼、鉄、銅、銅合金、チタン、チタン合金、モリブデンまたはモリブデ合金で形成されており、
前記金属リングは、前記導体と接続し、かつ前記第1固定部材と接続または接触しており、
前記絶縁リングが、前記金属リングから離間して前記導体に固定されている、気密端子。
【請求項2】
前記絶縁リングが、前記金属リングの厚みの5倍以上15倍以下の厚みを有する請求項
1に記載の気密端子。
【請求項3】
前記第1固定部材および前記第2固定部材の少なくとも一方が、屈曲部を有するスリーブからなる請求項1
または2に記載の気密端子。
【請求項4】
前記第1固定部材は、屈曲部を3個有するスリーブからなる、請求項1~
3のいずれかに記載の気密端子。
【請求項5】
前記第2固定部材は、屈曲部を有するスリーブからなり、該スリーブの一部が前記絶縁リングの前記フランジ側の主面と、前記フランジの前記絶縁リング側の主面との間に設置されてなる、請求項1~
4のいずれかに記載の気密端子。
【請求項6】
前記導体の軸心から前記第1固定部材および前記第2固定部材それぞれの先端面までの距離が異なる請求項1~
5のいずれかに記載の気密端子。
【請求項7】
前記金属リングと前記第1固定部材との間に、周方向に沿って複数のスペーサが備えられている請求項1~
6のいずれかに記載の気密端子。
【請求項8】
前記スペーサを等間隔で配置する請求項
7に記載の気密端子。
【請求項9】
前記スペーサの少なくとも1つは、外周面に第1溝部が形成されている請求項
7または
8に記載の気密端子。
【請求項10】
前記金属リングは、内周面に第2溝部が複数形成されている、請求項1~
9のいずれかに記載の気密端子。
【請求項11】
前記絶縁リングが、酸化アルミニウムを主成分とするセラミックスを含み、酸化アルミニウムの結晶が、5μm以上20μm以下の平均粒径を有する請求項1~
10のいずれかに記載の気密端子。
【請求項12】
前記酸化アルミニウムの結晶の粒径が、0以上の尖度を有する請求項
11に記載の気密端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気密端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粒子加速器、核融合装置などに使用される高真空排気系の一部に、電源系統から電気的に絶縁することができるセラミックリングを用いた気密端子が使用されている。例えば、特許文献1には、このようなセラミックリングが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セラミックリングのいずれか一方側にコバールリングを当接した状態で、スリーブを介してセラミックリングを導体に固定する場合、セラミックリングおよびスリーブと、導体およびスリーブとをそれぞれろう材を用いて接続すると、接合後にセラミックリングやスリーブにクラックが発生することがある。特に、導体が重量物になると、クラックの発生が顕著である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る気密端子は、柱状の導体と、導体と同軸上に位置する金属リングと、導体と同軸上に位置する絶縁リングと、絶縁リング上に設置され、柱状の導体を2つの領域に区画するフランジと、導体に絶縁リングを固定するための第1固定部材と、フランジに絶縁リングを固定するための第2固定部材とを含む。金属リング、第1固定部材および第2固定部材が、炭素鋼、低合金鋼、工具鋼、ステンレス鋼、鉄、銅、銅合金、チタンまたはチタン合金、モリブデンまたはモリブデン合金で形成されている。金属リングと第1固定部材とが接続されており、絶縁リングが、金属リングから離間して導体に固定されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る気密端子は、第1固定部材および第2固定部材をそれぞれ絶縁リングにろう材で接合しても、絶縁リングの第2固定部材側の表層部に残る応力が低減する。その結果、絶縁リング、第1固定部材および第2固定部材にクラックが発生しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態に係る気密端子を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すX-X線で切断した際の断面を示す説明図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る気密端子に含まれる第2固定部材の変形例を示す。
【
図4】本開示の一実施形態に係る気密端子に含まれる金属リングを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の一実施形態に係る気密端子を、
図1および2に基づいて説明する。
図1に示す一実施形態に係る気密端子1は、導体11、金属リング12、絶縁リング13、フランジ14、第1固定部材15、第2固定部材16、およびスペーサ17を含む。
【0009】
一実施形態に係る気密端子1に含まれる導体11は柱状を有しており、柱状であれば大きさや形状については限定されない。
図1に示すように、導体11は、円柱状部分と四角柱状(板状)部分とが存在するような形状であってもよい。導体11の大きさは、気密端子1を備える装置などに応じて適宜設定すればよい。導体11が円柱状部分と四角柱状(板状)部分とが軸方向に接続する形状である場合、例えば、長さ(全長)が200mm~300mm程度であり、円柱状部分の外径が90mm~110mm程度であり、四角柱状(板状)部分の幅が80mm~88mm程度である。導体11は、例えば、無酸素銅、タフピッチ銅、リン脱酸銅などの銅や銅合金などで形成されている。
【0010】
一実施形態に係る気密端子1に含まれる金属リング12は、導体11と同軸上に位置するように備えられている。金属リング12は、炭素鋼、低合金鋼、工具鋼、ステンレス鋼、鉄、銅、銅合金、チタン、チタン合金、モリブデンまたはモリブデン合金で形成されている。金属リング12を形成するこれらの金属は、30℃~400℃における平均線膨張率が導体11を構成する銅や銅合金などの平均線膨張率と同等、あるいは銅や銅合金などの平均線膨張率よりも低いため、後述するろう材で金属リング12を導体11に加熱接合する場合、金属リング12と導体11との間に隙間を発生させることなく、気密の信頼性を高くすることができる。
【0011】
炭素鋼とは、Feと0.02~2.14質量%のCとの合金であり、C以外にSi、Mn、P、Sが含まれる。このような炭素鋼としては、例えば、JIS G4051:2016で規定されるS10C,S12C,S15C,S17C,S20C,S22C,S25C,S28C,S30C,S33C,S35C,S38C,S40C,S43C,S45C,S48C,S50C,S53C,S55C,S58C,S60C,S65C,S70C,S75Cである。
低合金鋼とは、Al、B、Co、Cr、Cu、La、Mo、Nb、Ni、Pb、Se、Te、Ti、V、WおよびZrの少なくともいずれかを含み、これらの元素の含有量の合計が5質量%以下の炭素鋼をいう。
工具鋼とは、JIS G 4401:2009で規定される炭素工具鋼材およびJIS G 4404:2006で規定される合金工具鋼材をいう。
ステンレス鋼とは、Feと10.5質量%以上のCrとの合金であり、Cの含有量が1.2%以下のものをいい、これら以外の成分は、例えば、ISO 15510:2014で規定される。
絶縁リング13がセラミックスからなる場合、セラミックスは、上記金属よりも30℃~400℃における平均線膨張率が最も低い。セラミックスからなる絶縁リング13を第1固定部材15および第2固定部材16に加熱接合する場合、セラミックスにクラックを発生させるおそれが最も低いという点で、金属リング1は、チタンまたはチタン合金を用いるのがよい。チタンやチタン合金の平均線膨張率は、セラミックスの平均線膨張率に近いからである。
金属リング12は、導体11の外周面に、例えば、銀ろう材(Bag-8、Bag-9など)などによって取り付けられている。
【0012】
金属リング12は、
図2に示すように、第1固定部材15とも接続されている。金属リング12が第1固定部材15と接続されていると、導体11と第1固定部材15との接合を補強することができる。金属リング12と第1固定部材15とは、例えば、ロウ付けによって接続されていてもよく、単に接触している形態であってもよい。
【0013】
金属リング12の大きさは、導体11を挿入し得る大きさであれば限定されない。例えば、金属リング12の外径は、導体11の外径の1.1倍以上1.4倍以下である。金属リング12の厚みも限定されず、例えば、2mm~4mm程度である。
【0014】
一実施形態に係る気密端子1に含まれる絶縁リング13は、導体11と同軸上に位置するように備えられている。絶縁リング13の両側の主面13a、13bの平面度は、いずれも50μm以下であるとよい。主面13aの平面度が50μm以下であると、主面13a上にメタライズ層(図示しない)を形成して、第1固定部材15と絶縁リング13をろう材で接合する場合、主面13aとメタライズ層との間に隙間が生じにくくなり、第1固定部材15と絶縁リング13との接合信頼性が向上する。同様に、主面13bの平面度が50μm以下であると、主面13b上にメタライズ層(図示しない)を形成して、第2固定部材16と絶縁リング13をろう材で接合する場合、主面13bとメタライズ層との間に隙間が生じにくくなり、第2固定部材16と絶縁リング13との接合信頼性が向上する。
メタライズ層は、例えば、マンガンを10質量%~30質量%含み、残部がモリブデンからなる。
主面13bに対する主面13aの平行度は0.1mm以下であるとよい。平行度が0.1mm以下であると、絶縁リング13の内周側空間に導体11を挿入して固定する場合、絶縁リング13の内周面が導体11の外周面に接触してこの外周面に傷を入れるおそれを低減させる。
絶縁リング13は、絶縁性を有する物質、例えば、体積抵抗率が1012Ω・m以上の物質で形成されていれば限定されない。このような絶縁性を有する物質としては、例えば、酸化アルミニウム、炭化珪素または窒化珪素を主成分とするセラミックスなどが挙げられる。
これらの物質の中でも、1次原料が安価であり、加工が容易であるという点で、酸化アルミニウムを主成分とするセラミックスを用いるのがよい。
【0015】
酸化アルミニウムの結晶は、5μm以上20μm以下の平均粒径を有するのがよい。本発明における主成分とは、セラミックスを構成する成分の合計100質量%における80質量%以上を占める成分をいう。セラミックスに含まれる各成分の同定は、CuKα線を用いたX線回折装置で行い、各成分の含有量は、例えばICP(InductivelyCoupled Plasma)発光分光分析装置または蛍光X線分析装置により求めればよい。
【0016】
酸化アルミニウムの結晶の平均粒径が5μm以上であると、5μm未満である場合に比べて、単位面積当たりの粒界相の占める面積が少なくなるため、熱伝導性が向上する。一方、平均粒径が20μm以下であると、平均粒径が20μmを超える場合に比べて、単位面積当たりの粒界相の占める面積が増えるため、ろう材を構成する成分のアンカー効果により、密着性が高くなるので、信頼性が向上するとともに、機械的強度が高くなる。
【0017】
酸化アルミニウムの結晶の粒径は、以下のようにして求めることができる。まず、絶縁リング13の表面から厚み方向に0.6mmの深さまで、平均粒径D50が3μmのダイヤモンド砥粒を用いて銅盤にて研磨する。その後、平均粒径D50が0.5μmのダイヤモンド砥粒を用いて錫盤にて研磨する。これらの研磨によって得られる研磨面を、結晶粒子と粒界層とが識別可能になるまで1480℃で熱処理して、観察面とする。熱処理は、例えば30分程度行う。
【0018】
観察面を光学顕微鏡で観察し、例えば400倍の倍率で撮影する。撮影された画像のうち、面積が4.8747×102μmの範囲を計測範囲とする。この計測範囲を、画像解析ソフト(例えば、三谷商事(株)製、Win ROOF)を用いて解析することによって、個々の結晶の粒径と、この粒径から平均粒径を算出することができる。
【0019】
さらに、局部的な機械的強度の低下を抑制する点で、酸化アルミニウムの結晶の粒径が0以上の尖度を有するのがよく、1以上8以下であってもよい。酸化アルミニウムの結晶の粒径の尖度が0以上であると、粒径のバラツキが抑制される。その結果、気孔の凝集が減少して、気孔の輪郭や内部から生じる脱粒を減らすことができ、特に1以上であるとよい。一方、酸化アルミニウムの結晶の粒径の尖度が8以下であると、粒径の大きい結晶と粒径の小さい結晶とが適切な比率で存在し、粒径の小さい結晶が3重点を充填するような構造になるため熱伝導率が向上する。
【0020】
ここで、尖度とは、分布のピークと裾が正規分布からどれだけ異なっているかを示す指標(統計量)であり、尖度が0よりも大きい場合、鋭いピークを有する分布となり、尖度が0の場合、正規分布となり、尖度が0よりも小さい場合、分布は丸みがかったピークを有する分布となる。酸化アルミニウムの結晶の粒径の尖度は、Excel(登録商標、Microsot Corporation)に備えられている関数Kurtを用いて求めればよい。
【0021】
絶縁リング13は、第1固定部材15を介して導体11に固定されている。第1固定部材15は、炭素鋼、低合金鋼、工具鋼、ステンレス鋼、鉄、銅、銅合金、チタン、チタン合金、モリブデンまたはモリブデン合金で形成されている。第1固定部材15を形成するこれらの金属は、30℃~400℃における平均線膨張率が導体11を構成する銅や銅合金などの平均線膨張率と同等、あるいは銅や銅合金などの平均線膨張率よりも低い。また、絶縁リング13がセラミックスからなる場合、ろう材で第1固定部材15を導体11および絶縁リング13に加熱接合しても、第1固定部材15と導体11との間、また、第1固定部材15と絶縁リング13との間に隙間を発生させることなく、気密の信頼性を高くすることができる。これらの金属の中でも、30℃~400℃における平均線膨張率が最も低く、セラミックスからなる絶縁リング13を加熱接合する場合、セラミックスにクラックを発生させるおそれが最も低いという点で、第1固定部材11は、チタンまたはチタン合金を用いるのがよい。
【0022】
絶縁リング13の大きさは、導体11を挿入し得る大きさであれば限定されない。例えば、絶縁リング13の外径は、導体11の外径よりも1.2~1.5倍程度大きい。絶縁リング13の厚みも限定されず、例えば、28mm~32mm程度である。絶縁リング13の第2固定部材16側の表層部に残る応力がより低減するため、クラックがより発生しにくくなる点で、絶縁リング13の厚みは、金属リング12の厚みの5倍以上であるのがよい。また、材料費を抑制することができるという点で、絶縁リング13の厚みは、金属リング12の厚みの15倍以下であるのがよい。
【0023】
絶縁リング13は、金属リング12から離間して導体11に固定されている。金属リング12と絶縁リング13とを離間して備えることによって、絶縁リング13の第2固定部材16側の表層部に残る応力が低減しているので、加熱および冷却を繰り返したとしても絶縁リング13、第1固定部材15および第2固定部材16にクラックが生じにくくなる。金属リング12と絶縁リング13との離間距離は限定されず、気密端子1の大きさに応じて適宜設定される。金属リング12と絶縁リング13との離間距離は、例えば、8mm~12mm程度である。
【0024】
一実施形態に係る気密端子1に含まれるフランジ14は、絶縁リング13上に設置され、導体11を2つの領域に区画している。一実施形態に係る気密端子1では、
図1に示すように、フランジ14は、導体11を円柱状部分と四角柱状(板状)部分とに区画している。
【0025】
フランジ14は、第2固定部材16を介して絶縁リング13に固定されている。第2固定部材16は、炭素鋼、低合金鋼、工具鋼、ステンレス鋼、鉄、銅、銅合金、チタン、チタン合金、モリブデンまたはモリブデン合金で形成されている。第2固定部材16を形成するこれらの金属は、30℃~400℃における平均線膨張率が導体11を構成する銅や銅合金などの平均線膨張率と同等、あるいは銅や銅合金などの平均線膨張率よりも低い。また、絶縁リング13がセラミックスからなる場合、ろう材で第2固定部材16を導体11および絶縁リング13に加熱接合しても、第2固定部材16と導体11との間、また、第2固定部材16と絶縁リング13との間に隙間を発生させることなく、気密の信頼性を高くすることができる。これらの金属の中でも、30℃~400℃における平均線膨張率が最も低く、セラミックスからなる絶縁リング13を加熱接合する場合、セラミックスにクラックを発生させるおそれが最も低いという点で、チタンまたはチタン合金を用いるのがよい。
金属リング12、第1固定部材15および第2固定部材16の少なくともいずれか1つがステンレス鋼からなる場合、そのステンレス鋼は、例えば、SUS304、SUS304L、SUS304ULC、SUS310ULCまたはSUSXM15J1である。
【0026】
フランジ14の大きさは、導体11を挿入し得る大きさであれば限定されない。例えば、フランジ14の外径は、絶縁リング13の外径の1.5倍以上2.5倍以下である。フランジ14の厚みは限定されず、例えば、8mm~16mm程度である。フランジ14には、複数の孔が形成されている。この孔は、気密端子1を装置に固定するために使用されるネジ孔である。
【0027】
一実施形態に係る気密端子1に含まれるスペーサ17は、金属リング12と第1固定部材15との間に備えられている。スペーサ17を備えることによって、絶縁リング13の外周部における保持力が高くなり、得られる気密端子1の信頼性がより向上する。スペーサ17は、例えば、SUS304、SUS304L、SUS304ULC、SUS310ULC、SUSXM15J1などのステンレス鋼で形成されている。スペーサ17の厚みは限定されず、例えば、6mm~14mm程度である。
【0028】
スペーサ17は、周方向(円柱状の導体11であれば、円周方向)に沿って複数備えられている。絶縁リング13の外周部を、比較的均一に保持することができる点で、スペーサ17は、等間隔で備えられているのがよい。その結果、得られる気密端子1の信頼性がより向上する。さらに、スペーサ17の少なくとも1つには、スペーサ17の外周面に第1溝部が形成されていてもよい。第1溝部を形成することによって、加熱および冷却を繰り返したとしても、第1溝部によって熱応力が緩和されるため、絶縁リング13にかかる応力をより低減することができる。第1溝部は、例えば、上記周方向に沿って形成されており、その形状は、V溝状、U溝状等である。
同様に、
図4に示すように、金属リング12は、内周面に第2溝部12aが複数形成されていてもよい。第2溝部12aを形成することによって、加熱および冷却を繰り返したとしても、第2溝部12aによって熱応力が緩和されるため、金属リング12にかかる応力をより低減することができる。特に、第2溝部12aは、内周面に沿って等間隔に位置しているとよく、第2溝部の個数は、例えば、3個以上20個以下である。
第2溝部12aの形状は、例えば、
図4(a)に示すように矩形状、
図4(b)に示すように半円状である。
【0029】
本開示に係る気密端子は、上述の一実施形態に限定されない。例えば、上述の気密端子1は、スペーサ17を備えている。しかし、本開示に係る気密端子はスペーサ17を備えていなくてもよい。スペーサ17は、本開示に係る気密端子の効果をより向上させるために使用される部材である。
【0030】
本開示に係る気密端子において、第1固定部材15および第2固定部材16の少なくとも一方は、屈曲部を有するスリーブからなっていてもよい。このような構成によって、第1固定部材15および第2固定部材16の屈曲部周辺における応力がより低減され、クラックがより発生しにくくなる。屈曲部の内径半径は限定されず、より優れた応力の低減効果を考慮すると、2mm以上であるのがよく、4mm以下であってもよい。
特に、
図2に示すように、第1固定部材15は、屈曲部を3個有するスリーブからなるとよい。このような構成であると、第1固定部材15は、絶縁リング13の金属リング12側の主面および導体11の外周面を接合面とすることができる。これらが接合面であれば、接合面積を大きくすることが容易となり、気密の信頼性をさらに向上させることができる。
また、
図2に示すように、第2固定部材16は、屈曲部を有するスリーブからなり、該スリーブの一部が絶縁リング13のフランジ14側の主面と、フランジ14の絶縁リング13側の主面との間に設置されているとよい。このような構成であると、第2固定部材16は、絶縁リング13のフランジ14側の主面およびフランジ14の絶縁リング13側の主面を接合面とすることができる。これらが接合面であれば、接合面積を大きくすることが容易となり、気密の信頼性をさらに向上させることができる。さらに、絶縁リング13の反対側からフランジ14に高圧が加えられたとしても、耐久性を十分維持することができる。
【0031】
さらに、本開示に係る気密端子において、導体11の軸心から第1固定部材15および第2固定部材16それぞれの先端面15a、16aまでの距離L1、L2は、
図2に示すように同じであってもよく、
図3に示すように異なっていてもよい。絶縁リング13に軸方向に沿うクラックが発生しにくくなる点で、導体11の軸心から第1固定部材15および第2固定部材16それぞれの先端面15a、16aまでの距離L1、L2は、
図3に示すように異なっているのがよい。例えば、ろう材の接合工程で降温でろう材が収縮して絶縁リング13が軸方向に引っ張られても、その引張応力を抑制することができるためである。導体11の軸心から第1固定部材15および第2固定部材16それぞれの先端面15a、16aまでの距離L1、L2の差δは、例えば、3mm以上6mm以下である。
【0032】
上述の気密端子1において、導体11は、円柱状部分と四角柱状(板状)部分とが存在するような形状を有している。しかし、本開示に係る気密端子において導体の形状は、柱状であれば限定されない。導体の形状は、気密端子を備える装置などに応じて、適宜設計すればよい。
【符号の説明】
【0033】
1 気密端子
11 導体
12 金属リング
13 絶縁リング
14 フランジ
15 第1固定部材
16 第2固定部材
17 スペーサ