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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/00 20060101AFI20241107BHJP
   F25B 47/02 20060101ALI20241107BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
F24F6/00 331
F25B47/02 550P
F25B47/02 550R
F25B13/00 J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021016223
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119249
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 理
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-093235(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109506333(CN,A)
【文献】特開2014-169861(JP,A)
【文献】特開2009-300030(JP,A)
【文献】特開2010-014288(JP,A)
【文献】特開昭63-297955(JP,A)
【文献】特開2013-053789(JP,A)
【文献】特開昭53-084343(JP,A)
【文献】特開平09-026152(JP,A)
【文献】国際公開第2007/091813(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0090943(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00
F25B 47/02
F25B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器の順で冷媒を循環させる冷凍サイクルにおける、前記凝縮器または前記蒸発器である室内熱交換器と、
前記冷凍サイクルによって前記室内熱交換器で熱交換された空気を、室内に送り出す送風機と、
前記室内熱交換器の表面に液体を供給する液体供給部と、
前記圧縮機と、前記膨張弁と、室外熱交換器と、を有する室外ユニットと、
を含み、
前記液体供給部は、
前記室内熱交換器が前記凝縮器となり、前記室外熱交換器が前記蒸発器となる暖房動作において、前記室内熱交換器の表面に前記液体を供給して気化させる加湿動作を行い、
前記圧縮機は、
前記加湿動作を伴う前記暖房動作においては、前記加湿動作を伴わない前記暖房動作を行う場合に比べて、前記冷媒の圧縮度合いを高くする空気調和機。
【請求項2】
請求項において、
前記液体供給部は、
前記室内熱交換器の温度が所与の閾値以上である場合に、前記室内熱交換器の表面に前記液体を供給する空気調和機。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記送風機は、
前記加湿動作を伴う前記暖房動作においては、前記加湿動作を伴わない前記暖房動作を行う場合に比べて、風量を下げる空気調和機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項において、
前記液体供給部は、
前記室内熱交換器に前記液体を注ぐ注液ユニットと、
前記液体を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽に貯留された前記液体を前記注液ユニットに供給するポンプと、
前記ポンプと前記注液ユニットとの間に設けられる配管と、
を含み、
前記ポンプは、
前記注液ユニットに対して、間欠的に前記液体を供給する空気調和機。
【請求項5】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器の順で冷媒を循環させる冷凍サイクルにおける、前記凝縮器または前記蒸発器である室内熱交換器と、
前記冷凍サイクルによって前記室内熱交換器で熱交換された空気を、室内に送り出す送風機と、
前記室内熱交換器の表面に液体を供給する液体供給部と、
前記冷凍サイクル、前記送風機、及び前記液体供給部を制御する制御部と、
を含み、
前記液体供給部は、
前記室内熱交換器が前記凝縮器となり、室外熱交換器が前記蒸発器となる暖房動作において、前記室内熱交換器の表面に前記液体を供給して気化させる加湿動作を行い、
前記制御部は、
前記暖房動作の停止操作を受け付けた後に、前記暖房動作を継続する内部乾燥動作を実行可能であって、
前記暖房動作における前記加湿動作の停止後、前記暖房動作の前記停止操作までに、前記加湿動作を伴わない前記暖房動作が所与の時間以上継続されていた場合、前記内部乾燥動作をスキップする制御を行う空気調和機。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項において、
前記液体供給部は、
前記室内熱交換器が前記蒸発器となり、前記室外熱交換器が前記凝縮器となる除霜動作において、前記室内熱交換器の表面に前記液体を供給する空気調和機。
【請求項7】
請求項において、
前記送風機は、
前記除霜動作においては、前記除霜動作の開始前に比べて、風量を下げる空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冬季には空気が乾燥するため、暖房とともに加湿を行うことに対する要求がある。例えば特許文献1には、給湯用温水が循環される熱交換器の表面に、温水を供給する給水器を有する空気調和機が開示されている。温度の高い温水が熱交換器で蒸発することによって加湿が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-26152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の手法は、室内機の熱交換器内に温水を循環させて暖房を行う構成において、当該熱交換器の表面に温水を滴下するものである。しかしながら、冷凍サイクルを利用して冷暖房を行う空気調和機では、室内機の熱交換器内に温水を循環させる必要がないため、特許文献1の手法を適用できない。
【0005】
本開示のいくつかの態様によれば、利便性の高い空気調和機等を提供できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器の順で冷媒を循環させる冷凍サイクルにおける、前記凝縮器または前記蒸発器である室内熱交換器と、前記冷凍サイクルによって前記室内熱交換器で熱交換された空気を、室内に送り出す送風機と、前記室内熱交換器の表面に液体を供給する液体供給部と、を含む空気調和機に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】空気調和機の室内ユニットの断面図。
図2】空気調和機の室内ユニット及び液体供給部の断面図
図3】空気調和機の構成例。
図4】冷房動作における冷凍サイクルの説明図。
図5】暖房動作における冷凍サイクルの説明図。
図6】暖房動作における処理を説明するフローチャート。
図7】加湿動作における処理を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について図面を参照しつつ説明する。図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本開示の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1.空気調和機の構成例
図1は、本実施形態に係る空気調和機10の室内ユニット100の構成を示す断面図である。図1では、室内の壁面に固定される家庭用の空気調和機を例示している。なお、以下では、水平方向のうち、固定面に垂直な方向を前後方向と記載し、前後方向に直交する方向を左右方向と記載する。図1は、左右方向に垂直な断面における室内ユニット100の断面図である。
【0010】
図1に示すように、室内ユニット100は、送風機110と、室内熱交換器120と、注液ユニット164を含む。ただし、本実施形態に係る空気調和機10の構成は図1に限定されず、一部の構成を省略する、他の構成を追加する等の種々の変形実施が可能である。また、具体的な構成について種々の変形実施が可能である点は、後述する図2図5においても同様である。
【0011】
送風機110は、具体的には室内ファン111と、当該室内ファンを駆動する図1には不図示の室内ファンモータ112を含む。室内ファンモータ112によって室内ファン111が回転することによって、室内ユニット100の上部に設けられる吸い込み口から外気が吸引される。吸引された外気は、室内熱交換機120における熱交換を経た後に、室内ユニット100の前面側に設けられる吹き出し口から送出される。
【0012】
室内熱交換器120は、例えば第1室内熱交換器120aと第2室内熱交換器120bを含んでもよい。第1室内熱交換器120aと第2室内熱交換器120bは、例えばそれぞれが、冷媒が流れるチューブと、フィンとを含むフィンチューブ式熱交換器である。ただし、本実施形態における室内熱交換器120の具体的な構成は種々の変形実施が可能である。また、室内熱交換器120の数は図1の例に限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また室内ユニット100における室内熱交換器120の位置についても種々の変形実施が可能である。
【0013】
図4及び図5を用いて後述するように、本実施形態における室内熱交換器120は、冷凍サイクルにおける熱交換器である。例えば室内熱交換器120は、図4に示すように圧縮機250、凝縮器、膨張弁260、及び蒸発器の順で冷媒を循環させる冷凍サイクルにおける、蒸発器であってもよい。また室内熱交換器120は、図5に示すように冷凍サイクルにおける、凝縮器であってもよい。
【0014】
注液ユニット164は、室内熱交換器120の表面に液体を供給する。注液ユニット164は、多孔質体であって、例えば毛細管現象によって内部を液体が浸透可能な物体である。より具体的には、注液ユニット164はスポンジであってもよい。注液ユニット164は、室内熱交換器120の鉛直上方に設けられる。例えば注液ユニット164は、室内熱交換器120のフィンの上端に接触する位置に設けられ、フィンの表面に液体を供給する。ここでの液体は例えば水であるが、他の液体が用いられてもよい。
【0015】
図2は、前後方向に垂直な断面における室内ユニット100の断面図であって、液体供給部160との関係を示す図である。液体供給部160は、貯留槽161と、ポンプ162と、配管163と、注液ユニット164を含む。液体供給部160のうち、貯留槽161、ポンプ162は、室内ユニット100の外部に設けられる筐体165に配置されてもよい。ただし、液体供給部160の構成はこれに限定されず、貯留槽161、ポンプ162及び配管163が室内ユニット100の内部に設けられてもよい。
【0016】
貯留槽161は、注液ユニット164によって室内熱交換器120に供給される液体を貯留する。例えば、貯留槽161は、筐体165から取り外しが可能なタンクであって、空気調和機10のユーザは、水道水等を補充したタンクを筐体165の所定位置にセットする。これにより、貯留槽161に液体が充填された状態となる。
【0017】
ポンプ162は、後述する室内制御部130の制御に従って動作する。ここでのポンプ162は公知の構成を広く適用可能であるため、具体的な構成に関する説明は省略する。
【0018】
配管163は、ポンプ162と注液ユニット164の間に設けられる。ポンプ162が、貯留槽161に貯留された液体を配管163に供給することによって、注液ユニット164に液体が供給される。図2の例では、配管163の一端は、筐体165内のポンプ162に接続される。配管163は、室内ユニット100の側面に設けられた不図示の開口から室内ユニット100の内部に挿入されており、当該配管163の他端は注液ユニット164の近傍に位置する。
【0019】
注液ユニット164は、例えば図2に示すように、左右方向において室内熱交換器120に対応する長さを有する板状の部材である。配管163の注液ユニット164側の端部は、例えば注液ユニット164の左右方向における一端の近傍に設けられる。ポンプ162からの液体は、注液ユニット164の一端に供給され、毛細管現象によって他端側へ浸透していく。ポンプ162によってある程度の量の液体が供給されることによって、注液ユニット164の広い領域に液体が浸透可能である。ただし、注液ユニット164へ液体を供給する構成はこれに限定されず、配管163の位置等については種々の変形実施が可能である。
【0020】
注液ユニット164の下方側は例えばフィンに接触している。注液ユニット164に比べてフィンの親水性を高くすることによって、注液ユニット164内に浸透した液体はフィンに供給され、フィンが濡れた状態を実現できる。
【0021】
また図1及び図2に示すように、室内ユニット100は、室内熱交換器120の下方に設けられるドレンパン170を含んでもよい。注液ユニット164によって供給された液体のうち、室内熱交換器120の表面で気化することなく落下した液体は、ドレンパン170によって回収される。ドレンパン170は、例えば不図示の配管によって貯水槽161と接続されており、ドレンパン170に回収された液体は貯留槽161に戻される。ドレンパン170は、例えば室内熱交換器120に含まれるフィンの一部と接触する位置に配置される。ただし、ドレンパン170は、室内熱交換器120から落下する液体を回収可能な位置に設けられればよく、具体的な配置は種々の変形実施が可能である。
【0022】
図3は、本実施形態に係る空気調和機10の構成を示すブロック図である。空気調和機10は、室内ユニット100と室外ユニット200を含む。
【0023】
室内ユニット100は、室内制御部130、環境検出部140、リモコン送受信部150、室内ファンモータ112、ポンプ162を含む。なお上述したように、ポンプ162は、室内ユニット100の外部に設けられてもよい。
【0024】
室内制御部130は、運転制御部131と、指令送信部132を含む。運転制御部131は、暖房運転、加湿運転、冷房運転、除霜運転等の各種の運転制御を行う。具体的には、運転制御部131は、室内ファンモータ112の駆動/停止処理、風量の決定処理、ポンプ162の駆動処理等を行う。また運転制御部131は、図6図7を用いて後述する処理を実行する。
【0025】
指令送信部132は、運転制御部131における処理に従って、室内ユニット100の各部を動作させるための制御信号を生成し、当該制御信号を出力する。例えば指令送信部132は、室内ファンモータ112やポンプ162へ制御信号を出力する。
【0026】
また室内制御部130は、室外制御部230と情報の送受信を行うことで室外制御部230に所定の制御を実行させる。例えば、上記運転制御において、室内制御部130は、後述する四方弁270を切り替える制御を室外制御部230に実行させる。このように、空気調和機10では、所与の運転モードでの動作を実現する際に、室内制御部130と室外制御部230が連動して動作する場合がある。よって、以下の本明細書では室内制御部130と室外制御部230を総称して単に制御部とも表記する。
【0027】
環境検出部140は、室温センサ141、室内熱交換器温度センサ142を含む。室温センサ141は、例えば吸い込み口の近傍に設けられ、室内ユニット100が設置される室内の温度を検出するセンサである。室内熱交換器温度センサ142は、室内熱交換器120の近傍に設けられ、室内熱交換器120の温度を検出するセンサである。室温センサ141、室内熱交換器温度センサ142によって検出された温度情報は、室内制御部130に出力される。
【0028】
リモコン送受信部150は、ユーザが使用するリモコンと信号の送受信を行うインターフェースである。リモコン送受信部150は、リモコンとの間で赤外線を用いた通信を行ってもよいし、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineering)802.11等の他の方式に従った通信を行ってもよい。リモコン送受信部150は、例えば暖房動作の開始/終了指示、加湿動作の開始/終了指示等の信号をリモコンから受信する。
【0029】
室外ユニット200は、室外制御部230、室外ファンモータ212、環境検出部240、圧縮機250、膨張弁260、四方弁270等を含む。
【0030】
室外制御部230は、運転制御部231と、指令送信部232を含む。運転制御部231は、暖房運転、加湿運転、冷房運転、除霜運転等の各種の運転制御を行う。具体的には、運転制御部231は、室外ファンモータ212の駆動/停止処理、風量の決定処理等を行う。また運転制御部231は、圧縮機250における圧縮度合いの決定処理、四方弁270の切り替え処理等を行う。
【0031】
指令送信部232は、運転制御部231における処理に従って、室外ユニット200の各部を動作させるための制御信号を生成し、当該制御信号を出力する。例えば指令送信部232は、室外ファンモータ212、圧縮機250、膨張弁260、四方弁270へ制御信号を出力する。圧縮機250の制御は、圧縮機250における圧縮度合いの制御が含まれる。また指令送信部232は、四方弁270を制御することによって、冷凍サイクルにおける冷媒の循環方向を切り替える制御を行う。
【0032】
環境検出部240は、外気温センサ241、室外熱交換器温度センサ242を含む。外気温センサ241は、室外ユニット200周辺の外気温を検出するセンサである。室外熱交換器温度センサ242は、室外熱交換器220の近傍に設けられ、室外熱交換器220の温度を検出するセンサである。外気温センサ241、室外熱交換器温度センサ242によって検出された温度情報は、室外制御部230に出力される。
【0033】
圧縮機250は、冷凍サイクルにおける圧縮機である。圧縮機250は、冷媒を圧縮することによって、高温高圧の冷媒を、凝縮器へ接続される冷媒配管に出力する。圧縮機250としては、例えば、ロータリ圧縮機、スクロール圧縮機等を用いることが可能である。圧縮機250は、例えばモータ等の駆動量に応じて、冷媒の圧縮度合いを制御可能である。
【0034】
四方弁270は、冷凍サイクルにおける冷媒の循環方向を冷房運転時と暖房運転時とで切り替えるためのものである。具体的な切り替えについて、図4及び図5を用いて説明する。
【0035】
図4は、冷房運転時の冷凍サイクルの説明図であり、図5は暖房運転時の冷凍サイクルの説明図である。上述してきたように、室内ユニット100は、送風機110、室内熱交換器120、室温センサ141、室内熱交換器温度センサ142を含む。送風機110は、例えば室内ファン111と室内ファンモータ112を含み、図4では、室内ファン111を図示している。室外ユニット200は、送風機210、室外熱交換器220、外気温センサ241、室外熱交換器温度センサ242、圧縮機250、膨張弁260、四方弁270を含む。送風機210は、例えば室外ファン211と室外ファンモータ212を含み、図4では、室外ファン211を図示している。また室外ユニット200は、冷凍サイクルにおける冷媒回路に設けられる弁である三方弁280、二方弁290を含む。
【0036】
図4及び図5に示すように、四方弁270を切り替えることによって、冷房運転と暖房運転が切り替えられる。図4に示すように、冷房運転時には、四方弁270は、冷媒を圧縮機250、室外熱交換器220、膨張弁260、室内熱交換器120の順に循環させるように切り替えられる。冷房運転時には、室内熱交換器120が蒸発器であり、室外熱交換器220が凝縮器である。また、圧縮機250、四方弁270、凝縮器である室外熱交換器220、膨張弁260、二方弁290、蒸発器である室内熱交換器120、三方弁280は、冷媒配管によって連結され、内部に作動流体としての冷媒が封入されたクローズドサイクルの冷媒回路が形成されている。本実施形態における冷媒は、R32、R410、R22、CO2等、種々の冷媒を利用可能である。
【0037】
図5に示すように、暖房運転時には、四方弁270は、冷媒を圧縮機250、室内熱交換器120、膨張弁260、室外熱交換器220の順に循環させるように切り替えられる。暖房運転時には、室内熱交換器120が凝縮器であり、室外熱交換器220が蒸発器である。それぞれの構成が冷媒配管によって連結され、内部に作動流体としての冷媒が封入されたクローズドサイクルの冷媒回路が形成されている点は図4と同様である。
【0038】
以上のように、本実施形態の空気調和機10では、冷凍サイクルにおける凝縮器または蒸発器である室内熱交換器120の表面に液体が供給される。本実施形態の手法によれば、冷凍サイクルを用いた動作に好適な空気調和機10を実現できる。具体的には、後述するように暖房動作時に加湿を行うことや、除霜動作時に動作効率を向上させること等が可能になる。
【0039】
2.空気調和機の動作
室内熱交換器120表面への液体の供給は、暖房動作時又は除霜運転時に行われる。以下、それぞれの場合について空気調和機10の具体的な動作を説明する。
【0040】
2.1 暖房動作における給水制御
図6は暖房動作を説明するフローチャートである。図6に示す処理は、例えばユーザがリモコンの暖房ボタンを押下操作し、リモコン送受信部150を介して、室内制御部130が当該押下操作に対応する制御信号を受信した場合に実行される。
【0041】
まずステップS101において、制御部は、暖房動作を開始する。具体的には、室外制御部230は四方弁270を制御することによって、図5に示したように、冷媒を圧縮機250、室内熱交換器120、膨張弁260、室外熱交換器220の順に循環させる。これにより、室内熱交換器120には高温高圧の冷媒が供給される。また室内制御部130は、室内ファンモータ112を制御することで、室内熱交換器120において熱交換された高温の空気を室内に送出する。これ以降、後述するステップS109を除いて特に明示はしないが、ステップS110の処理が行われるまでは暖房動作が継続される。
【0042】
暖房動作の開始後、ステップS102において、室内制御部130は、加湿開始指示が行われたかを判定する。室内制御部130は、例えばユーザがリモコンの加湿開始ボタンを押下操作し、リモコン送受信部150を介して当該押下操作に対応する制御信号を受信した場合に、加湿開始指示が行われたと判定する。加湿開始指示が行われた場合、ステップS103において、室内制御部130は加湿動作を開始する。
【0043】
図7は、ステップS103における加湿動作を説明するフローチャートである。上述したように、図7に示す処理は、加湿開始指示が行われた場合に開始される。また後述するように、図7に示す処理は、加湿停止指示が行われた場合に終了される。
【0044】
加湿動作が開始されると、まずステップS201において、室内制御部130は、室内熱交換器120の温度が所定値以上であるかを判定する。例えば、加湿動作を伴わない通常の暖房動作時は、室内熱交換器120の温度は摂氏40度~60度程度である。ここでの所定値は、通常の暖房動作時の室内熱交換器120の温度に基づいて設定される値であって、例えば40度である。このようにすれば、通常範囲を外れる程度に室内熱交換器120の温度が低下しているか否かを判定できる。なお、ここでの所定値は40度に限定されず、より低い温度であってもよいし、より高い温度であってもよい。またユーザがリモコンを用いて設定した設定温度に応じて、ステップS201の処理において用いられる所定値が変更されてもよい。
【0045】
室内熱交換器120の温度が所定値未満の場合、ステップS202において、室内制御部130は、所定時間待機する。所定時間の待機後、ステップS201に戻り、室内制御部130は、室内熱交換器120の温度を判定する。即ち、室内熱交換器120の温度が所定値以上となるまで待機状態が継続される。ステップ202においては、室内熱交換器120の加熱を促進するために室内ファン111の回転数を低下させてもよい。
【0046】
室内熱交換器120の温度が所定値以上である場合、ステップS203において、室内制御部130は、注水制御を開始する。具体的には、室内制御部130の制御に従って、液体供給部160のポンプ162は、貯留槽161に貯留された液体を、配管163を介して注液ユニット164に供給する。これにより、注液ユニット164から室内熱交換器120の表面に液体の供給が開始される。
【0047】
図6、及び図7のステップS203に示したように、液体供給部160は、室内熱交換器120が凝縮器となり、室外熱交換器220が蒸発器となる暖房動作において、室内熱交換器120の表面に液体を供給して気化させる加湿動作を行う。具体的には、室内熱交換器120が高温であること、及び、室内ファン111による送風が行われることによって、室内熱交換器120の表面に供給された液体が気化する。
【0048】
暖房運転を行う際には室内が乾燥しやすいところ、本実施形態の手法によれば暖房と加湿を同時に行うことが可能になる。暖房動作時には室内熱交換器120が高温であり、且つ、室内ファン111による送風が行われるため、液体が気化しやすく、効率的な加湿が可能になる。例えば本実施形態の加湿動作は、暖房動作時に限定して行われてもよい。
【0049】
なおステップS203の注水制御において、液体供給部160のポンプ162は、注液ユニットに対して、間欠的に液体を供給してもよい。例えば、室内制御部130は、ポンプ162を長さt1の期間だけ駆動した後、長さt2の期間だけ停止させるという制御を繰り返す。ここでのt1は例えば1分程度の時間であり、t2は3分程度の時間である。ただし、t1及びt2の具体的な値は種々の変形実施が可能である。
【0050】
このようにすれば、室内熱交換器120の表面に適切な量の液体を供給することが可能になる。供給される液体が過剰に少ない場合、気化する液体の量も少なくなるため加湿効果が低くなる可能性がある。また供給される液体が過剰に多い場合、気化しないまま室内熱交換器120から下方に滴下される液体が増える可能性がある。この場合、ポンプ162は加湿に寄与しない液体を供給することになるため、非効率的である。また、室内熱交換器120の表面に過剰に液体が存在する場合、液滴が発生し、当該液滴が室内ファン111の送風によって室内に飛んでしまう可能性もある。その点、間欠制御を行うことで、容易な制御により供給される液体の量を制御できる。
【0051】
注水制御が行われている間、ステップS204において、室内制御部130は、定期的に室内熱交換器120の温度が所定値以上であるかを判定する。ステップS204の処理は、ステップS201と同様であり、例えば室内熱交換器温度センサ142によって検出された温度が、40度等の所定値以上であるか否かの判定処理である。室内熱交換器120の温度が所定値以上である場合、ステップS203の注水制御が継続される。
【0052】
室内熱交換器120の温度が所定値未満である場合、ステップS205において室内制御部130は、注水制御を停止する。具体的には、室内制御部130は、液体供給部160のポンプ162を停止する制御を行う。注液ユニット164や室内熱交換器120の表面に液体が残ることがあるため、室内熱交換器120表面における液体の気化は継続する可能性があるが、ここではポンプ162の停止と、液体の気化の終了との間のタイムラグについては特に考慮しない。
【0053】
ポンプ162の停止後、ステップS206において、室内制御部130は、所定時間待機した後、ステップS201に戻り処理を継続する。即ち、気化する液体の量が減少することで室内熱交換器120の温度が上昇し、所定値以上となった場合に(ステップS201でYes)、ステップS203において注水制御が再開される。
【0054】
液体の供給中は室内熱交換器120の表面で液体が気化することで、気化熱が奪われるため、室内熱交換器120の温度が低下すると考えられる。室内熱交換器120の温度が過剰に低下した場合、室内熱交換器120において熱交換された空気の温度も低下するため、暖房効率が低下してしまう。
【0055】
これに対して本実施形態では、図7のステップS201及びS204に示したように、液体供給部160は、室内熱交換器120の温度が所与の閾値以上である場合に、室内熱交換器120の表面に液体を供給してもよい。換言すれば、液体供給部160は、室内熱交換器120の温度が所与の閾値未満である場合、室内熱交換器120の表面に液体を供給する制御を実行しない。これにより、加湿に伴う暖房機能の低下を抑制可能である。なお特許文献1の手法では、室内熱交換器120に温水が供給されるため、室内熱交換器120の温度が低下しにくく、加湿に伴う暖房機能の低下が一切考慮されていない。
【0056】
図6に戻って暖房動作の説明を続ける。ステップS103における加湿動作の開始後、ステップS104において、室内制御部130は、加湿停止指示が行われたかを判定する。室内制御部130は、例えばユーザがリモコンの加湿停止ボタンを押下操作し、リモコン送受信部150を介して当該押下操作に対応する制御信号を受信した場合に、加湿停止指示が行われたと判定する。なお、加湿開始ボタンと加湿停止ボタンは異なる2つのボタンであってもよいし、同一のボタンであってもよい。
【0057】
加湿停止指示が行われていない場合、室内制御部130は、ステップS103に戻り加湿動作を継続する。加湿停止指示が行われた場合、ステップS105において、室内制御部130は、加湿動作を停止する。例えば室内制御部130は、図7のいずれのステップを実行していたかにかかわらず、図7に示す処理を終了する。なお注水制御の実行中であれば、室内制御部130は、当該注水制御を終了した上で、図7に示す処理を終了する。
【0058】
ステップS102で加湿開始指示が行われていない場合、または、ステップS105の処理後、ステップS106において、室内制御部130は、暖房停止指示が行われたか否かを判定する。室内制御部130は、例えばユーザがリモコンの停止ボタンを押下操作し、リモコン送受信部150を介して当該押下操作に対応する制御信号を受信した場合に、暖房停止指示が行われたと判定する。
【0059】
なお、本実施形態の加湿動作は暖房動作時に行われるものであり、暖房停止指示は加湿停止指示を含む。即ち、ステップS103における加湿動作時に暖房停止指示が行われた場合、室内制御部130は、加湿停止指示ありと判定し(ステップS104でYes)、ステップS105において加湿動作を停止し、さらにステップS106に移行し、暖房停止指示ありと判定する。
【0060】
本実施形態の手法では、暖房動作の停止後に、内部乾燥動作を実行可能であってもよい。内部乾燥動作とは、暖房サイクルで室内熱交換器120の温度を上昇させることで、注液ユニット164や室内熱交換器120に付着している水分を飛ばして、注液ユニット164や室内熱交換器120を乾燥させるための運転モードである。そのため、内部乾燥動作は基本的には暖房動作と同じであり、室内ファン111は回転させることが好ましい。
【0061】
例えば空気調和機10は、冷凍サイクル、送風機110、及び液体供給部160を制御する制御部を含んでもよい。ここでの制御部は、例えば上述したように、室内制御部130と室外制御部230を含む。制御部は、暖房動作の停止操作を受け付けた後に、暖房動作を継続する内部乾燥動作を実行可能である。
【0062】
従来の暖房動作であれば、室内ユニット100の内部は乾燥することが想定されるため、暖房停止指示の後に別途内部乾燥動作を行う必要性は低い。しかし、本実施形態では加湿動作が行われる可能性があり、当該加湿動作では注液ユニット164や、室内熱交換器120の表面に液体が供給される。当該液体を放置するとカビの要因となるため、本実施形態では暖房動作の後に内部乾燥動作を行うことが有効である。
【0063】
しかし図6に示したように、加湿開始指示が行われない場合(ステップS102でNo)、加湿動作を伴わない通常の暖房動作が実行される。例えば一連の暖房動作において1回も加湿動作が行われていない場合、内部乾燥動作を行う必要性は低い。また、加湿動作が行われた場合であっても、加湿動作が停止され、その後、暖房動作が継続された場合(ステップS104でYes、且つ、ステップS106でNo)、当該暖房動作によって室内ユニット100の内部が十分乾燥される場合もある。
【0064】
よって本実施形態では、制御部は、暖房動作における加湿動作の停止後、暖房動作の停止操作までに、加湿動作を伴わない暖房動作が所与の時間以上継続されていた場合、内部乾燥動作をスキップする制御を行ってもよい。このようにすれば、必要性の低い内部乾燥動作を省略できるため、効率的な動作が可能になる。
【0065】
具体的には、暖房停止指示があった場合(ステップS106でYes)、ステップS107において、制御部は、暖房動作中に加湿動作が行われたかを判定する。加湿動作が行われていない場合、制御部は、ステップS108及びS109の処理を省略し、ステップS110において暖房動作を停止する。
【0066】
暖房動作中に加湿動作が行われた場合、ステップS108において、加湿停止後の暖房継続時間が所定時間以上であるかを判定する。例えば、制御部は、ステップS105で加湿動作を停止した第1タイミングと、暖房停止指示が行われステップS106でYesと判定した第2タイミングとの時間差を加湿停止後の暖房継続時間として取得する。なお、加湿動作停止後に、暖房動作を停止することなく再度加湿動作が開始された場合、それまでの第1タイミングは破棄され、再開後の加湿動作が停止されたタイミングが新たに第1タイミングに設定される。
【0067】
加湿停止後の暖房継続時間が所定時間未満である場合(ステップS108でNo)、室内制御部130は、ステップS109において、内部乾燥動作を実行する。なお上述したように、内部乾燥動作とは暖房動作であるため、制御部は、暖房停止指示が行われる前と同様の暖房動作を継続する。ただし、暖房停止指示前の暖房動作と内部乾燥動作とで、圧縮機250の圧縮度合い、送風機110の送風強度等が変更されてもよい。
【0068】
そして加湿停止後の暖房継続時間が所定時間以上となった場合(ステップS108でYes)、制御部は、ステップS110において暖房動作を停止する。このようにすれば、加湿動作によって濡れた状態となる注液ユニット164や室内熱交換器120を適切に乾燥させることが可能になる。
【0069】
2.2 暖房動作における変形例
<加湿動作の有無に応じた制御>
以上、図6のステップS101~S106を用いて上述したように、本実施形態では、暖房開始指示によって暖房動作が開始された後は、以下の何れかの動作が実行される。
(A)加湿動作を伴わない暖房動作
(B)加湿動作を伴う暖房動作
【0070】
(A)は、加湿開始指示が行われておらず(ステップS102でNo)、暖房停止指示が行われていない(ステップS106でNo)場合のループ処理に対応する動作である。(B)は、加湿開始指示が行われており(ステップS102でYes)、且つ、その後、加湿停止指示が行われていない(ステップS104でNo)場合のループ処理に対応する動作である。
【0071】
本実施形態では、上記(A)と(B)に応じて異なる制御が行われてもよい。例えば本実施形態の空気調和機10は、図3図5に示すように、圧縮機250と、膨張弁260と、室外熱交換器220と、を有する室外ユニット200を含んでもよい。そして圧縮機250は、加湿動作を伴う暖房動作においては、加湿動作を伴わない暖房動作を行う場合に比べて、冷媒の圧縮度合いを高くしてもよい。
【0072】
例えば、ユーザがリモコンで温度設定をT1度にした場合、室外制御部230は、圧縮機250を所与の圧縮度合いとなるように動作させるとする。当該圧縮度合いを用いて加湿動作を伴わない暖房動作が行われた場合、室内熱交換器120がT2度程度となることで所定温度の温風が送出され、結果として室内がT1に近い温度となる。
【0073】
しかし加湿動作を伴う暖房動作では、液体の気化熱によって室内熱交換器120の温度が低下する。そのため、温度設定がT1度であって、室外制御部230が圧縮機250を同様の圧縮度合いで動作させた場合であっても、室内熱交換器120がT2度まで上昇しない可能性がある。結果として、熱交換された温風が送出されても室内はT1度まで上昇せず、暖房性能が低下する。
【0074】
これに対して、加湿動作を伴う暖房動作時に圧縮機250の圧縮度合いを高くすることによって、圧縮熱が大きくなる。結果として、気化熱を考慮しても室内熱交換器120の温度を上記T2度程度まで上昇させることが可能であり、暖房性能の低下を抑制できる。
【0075】
また送風機110は、加湿動作を伴う暖房動作においては、加湿動作を伴わない暖房動作を行う場合に比べて、風量を下げてもよい。上述したように、加湿動作では室内熱交換器120の表面に液体が供給される可能性があり、当該室内熱交換器120に対する送風が強すぎる場合、液体が室内に吐出されるおそれがある。一方、加湿動作を伴わない暖房動作であれば、室内熱交換器120の表面が濡れている蓋然性が低く、風量を上げても液滴が吐出されにくい。このように、状況に応じて送風機110の風量を制御することによって、液体の吐出を抑制することが可能になる。
【0076】
また、図7を用いて上述したように、図6のステップS103の加湿動作が行われている場合であっても、室内熱交換器120の温度によっては注水制御が行われている場合(ステップS201及びS204でYes)と、注水制御が行われていない場合(ステップS201またはS204でNo)とがある。よって上述した(A)、(B)の動作のうち、(B)を以下の(B1)と(B2)に分けることが可能である。
(B1)注水制御が行われていない暖房動作
(B2)注水制御が行われている暖房動作
【0077】
なお、間欠的な注水において、t1の期間でポンプ162が動作し、続くt2の期間にポンプ162が停止する例を説明した。t2の期間におけるポンプ162の停止は、室内熱交換器120に適量の液体を供給するための制御であって、この間も注液ユニット164による室内熱交換器120への注水は継続されている。よって、ステップS203の処理が行われている場合、それがt2の期間であっても注水制御は継続されており、上記(B2)に含まれるものと考える。
【0078】
上述した圧縮機250における圧縮度合いの制御、及び、送風機110の風量の制御は、室内熱交換器120の表面に液体が存在することを考慮して行われる制御である。そのため、上記(B1)の場合、圧縮度合いを上げる制御、風量を下げる制御が不要な場合もあり得る。よって本実施形態の手法では、上記の(B2)を狭義の「加湿動作を伴う暖房動作」と考えてもよい。具体的には、制御部は、(B2)に示す暖房動作においては、(A)に示す暖房動作を行う場合に比べて、圧縮度合いを上げる制御、または、風量を下げる制御、またはその両方を行ってもよい。また、(B1)に示す暖房動作においては、(A)と同様の制御を行ってもよいし、(B2)と同様の制御を行ってもよい。また(B1)の場合、(A)と(B2)の中間的な制御を行うことも可能である。
【0079】
<内部乾燥における変形例>
上述した例では、内部乾燥動作が通常の暖房動作と同様の動作であるものとした。しかし、乾燥効率を考慮すれば、内部乾燥動作は、通常の暖房動作に比べて室内熱交換器120の温度が高く設定されてもよい。例えば圧縮機250の圧縮度合いは、加湿動作を伴う暖房動作と同様に設定される。加湿動作を伴う暖房動作とは、上記の(B)に対応し、狭義には(B2)に対応する。
【0080】
また内部乾燥動作を終了する判定において、加湿動作停止後の暖房継続時間との比較処理に用いられる所定時間は、固定値であってもよいし、動的に変更されてもよい。例えば当該所定時間は、注液ユニット164が含んでいると推定される水分量に基づいて補正されてもよい。例えば制御部は、注液ユニット164の大きさ、親水性、内部乾燥動作時の温度等の情報に基づいて、上記所定時間を補正してもよい。ここでの温度は、室温であってもよいし、室内熱交換器120の温度であってもよいし、室内ユニット100の他の位置に配置される温度センサによって検出される温度であってもよい。
【0081】
また以上では内部乾燥動作を停止するかを、加湿動作停止後の暖房継続時間で判定する例について説明した。しかし判定処理はこれに限定されず、室内ユニット100の内部の湿度に基づいて、内部乾燥動作を終了するかを判定してもよい。このようにすれば、湿度に応じて内部乾燥動作を制御できるため、不要な内部乾燥動作を抑制できる。
【0082】
例えば、室内熱交換器120から吹き出し口の間に湿度センサを設け、当該湿度センサによって室内ユニット100内部の湿度を検出してもよい。ただし、吹き出し口に湿度センサを設けた場合、送風抵抗が増加するおそれがある。
【0083】
よって湿度センサは、吸い込み口付近に設けられてもよい。ただし、室内ファン111が正方向の回転を行う場合、吸い込み口に設置されている湿度センサは、空気調和機10の内部における空気の湿度を測定することが難しい。正方向の回転では、空気は吸い込み口から室内ユニット100の内部を経由して、吹き出し口から送出される流れになるためである。よって室内制御部130は、湿度測定時は室内ファン111を逆回転させることによって、吹き出し口から空気を取り込み、吸い込み口から送出するように制御してもよい。このようにすれば、送風抵抗を増加させることなく、吸い込み口近傍の湿度センサを用いて室内ユニット100内部の湿度を測定できる。
【0084】
2.3 除霜動作における給水制御
暖房運転時には、室外熱交換器220の温度が低下するため、室外熱交換器220に霜が付き熱交換能力が落ちる場合がある。そこで、室外制御部230は、室外熱交換器温度センサ242からの温度に基づいて、室外熱交換器220に霜が付いたか否かを判定してもよい。室外制御部230は、室外熱交換器220の温度が所定閾値以下の場合に、室外熱交換器220に霜が付いたと判定する。室外制御部230は、霜が付いたと判定した場合に、四方弁270を切り換えて図4に示した冷房動作を行なうことによって除霜する。以下、除霜のための冷房動作を除霜動作と表記する。
【0085】
図4に示したように、除霜運転では室外熱交換器220に高温高圧の冷媒が供給されるため、その熱によって除霜が行われる。液体供給部160は、室内熱交換器120が蒸発器となり、室外熱交換器220が凝縮器となる除霜動作において、室内熱交換器120の表面に液体を供給してもよい。
【0086】
除霜動作では室内熱交換器120には低温低圧の冷媒が供給されるため、室内熱交換器120の温度が低下する。ここでの室内熱交換器120の温度は例えば-10度~-20度程度であるが、具体的な温度は状況に応じて変化する。いずれにせよ、除霜動作においける室内熱交換器120の温度は、貯留槽161に貯留される液体の温度よりも低いことが想定される。そのため、貯留槽161の液体を、注液ユニット164を介して室内熱交換器120に供給した場合、室内熱交換器120の温度が上昇する。
【0087】
このように、除霜動作時に液体供給部160を用いて液体を室内熱交換器120に供給することによって、圧縮機250の圧縮熱に加えて、液体を熱源とできるため、除霜動作を短時間で終了できるという利点がある。
【0088】
なお加湿動作を行う場合、室内熱交換器120の表面で液体が気化すれば加湿は可能であるため、室内熱交換器120の表面に液体が付着していれば足りる。しかし液体を熱源として用いる場合、相対的に温度の高い(室内熱交換器120に熱を奪われていない)液体を常に供給することによって、室内熱交換器120の温度上昇効果を高くすることが可能である。よって液体供給部160は、室内熱交換器120の表面に継続的に新しい液体を供給してもよい。例えば室内制御部130は、除霜動作時は、暖房動作における加湿動作時に比べて液体の供給量を増やす。具体的には、室内制御部130は、ポンプ162を連続的に動作させることによって、室内熱交換器120の表面に液体を供給してもよい。
【0089】
また、除霜運転は冷房サイクルとなるため、室内熱交換器120において熱交換された空気の温度が低い。よって送風機110は、除霜動作においては、除霜動作の開始前に比べて風量を下げてもよい。除霜動作の開始前とは、例えば暖房動作の実行時である。ここでの暖房動作は、狭義には加湿動作を伴わないものであるが、加湿動作を伴う暖房動作を含んでもよい。具体的には室内制御部130は、除霜動作時は、室内ファン111を停止してもよい。このようにすれば、室内に冷風を送ることを抑制できるため、室内の快適性の悪化を抑制できる。なお、室内ファン111による送風を停止した場合、送風実行時に比べて空気の移動がなくなるため、室内熱交換器120における空気と冷媒との間の熱交換が阻害される。そのため従来の空気調和機では、除霜運転時に送風機110の風量を下げた場合、冷凍サイクルの効率が悪化し、圧縮機250の負担が大きくなる可能性がある。その点、本実施形態の手法では熱源として液体を供給することが可能であるため、送風を抑制した場合にも冷凍サイクルの効率の悪化を抑制できる。即ち、本実施形態の手法によれば、冷凍サイクルの効率と、室内の快適性を両立することが可能である。なお、以上では室内ファン111を停止させる例を示したが、室内制御部130は、除霜動作時に室内ファン111を逆回転させてもよい。この場合も、室内ファン111を停止させる場合と同等の効果が期待できる。
【0090】
また除霜動作によって除霜が行われたと判定した場合、制御部は四方弁270を制御することによって暖房動作を行う。除霜が行われたか否かは、室外熱交換器温度センサ242からの温度情報に基づいて判定される。除霜動作中に室内熱交換器120の表面に供給された液体、及び注液ユニット164に浸透した液体は、暖房動作によって適切に乾燥される。また暖房動作移行後に加湿動作が行われた場合、上記のように内部乾燥動作が必要に応じて行われる。
【0091】
ただし、除霜動作が完了して暖房動作に移行した後、すぐに暖房停止指示が行われた場合には留意すべきである。除霜動作によって注液ユニット164や室内熱交換器120が濡れているにも関わらず、加湿動作が行われていない(ステップS107でNo)、あるいは最後の加湿動作停止後の暖房継続時間が所定時間以上である(ステップS108でYes)と判定され、十分な内部乾燥動作が行われない可能性があるためである。
【0092】
よって制御部は、加湿動作停止後の暖房継続時間だけでなく、除霜動作停止後の暖房継続時間を判定に用いてもよい。制御部は、暖房停止指示が行われた場合、ステップS107の処理に変えて、加湿動作と除霜動作の両方が行われていないかを判定する。加湿動作と除霜動作の少なくとも一方が行われていた場合、制御部は、加湿動作停止後の暖房継続時間が所定時間以上、且つ、除霜動作停止後の暖房継続時間が所定時間以上である場合に、暖房動作を停止する。このようにすれば、除霜動作が行われた場合も、室内ユニット100の内部を適切に乾燥できる。また制御部は、除霜運転における液体供給量が加湿動作よりも多い場合、上記所定時間を加湿動作の場合は短く、除霜動作の場合は長く設定してもよい。また制御部は、目的が加湿であるか除霜であるかを問わず、注水制御の有無や注水量に基づいて、内部乾燥動作を行ってもよい。
【0093】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また空気調和機、室内ユニット、室外ユニット等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0094】
10…空気調和機、100…室内ユニット、110…送風機、111…室内ファン、112…室内ファンモータ、120…室内熱交換器、120a…第1室内熱交換器、120b…第2室内熱交換器、130…室内制御部、131…運転制御部、132…指令送信部、140…環境検出部、141…室温センサ、142…室内熱交換器温度センサ、150…リモコン送受信部、160…液体供給部、161…貯留槽、162…ポンプ、163…配管、164…注液ユニット、165…筐体、170…ドレンパン、200…室外ユニット、210…送風機、211…室外ファン、212…室外ファンモータ、220…室外熱交換器、230…室外制御部、231…運転制御部、232…指令送信部、240…環境検出部、241…外気温センサ、242…室外熱交換器温度センサ、250…圧縮機、260…膨張弁、270…四方弁、280…三方弁、290…二方弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7