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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】ポイント付与システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0226 20230101AFI20241107BHJP
【FI】
G06Q30/0226
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021016762
(22)【出願日】2021-02-04
(65)【公開番号】P2022119548
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】591057256
【氏名又は名称】株式会社エクサ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島 知弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 圭
(72)【発明者】
【氏名】田中 寛典
【審査官】田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228151(JP,A)
【文献】特開2002-230283(JP,A)
【文献】特開2009-271670(JP,A)
【文献】特開2018-147192(JP,A)
【文献】特開2022-69818(JP,A)
【文献】特開2018-180853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経済的価値を有するポイントをユーザに対して付与するポイント付与システムであって、
前記ユーザが支払をするとき前記ユーザに対して前記ポイントを付与するポイント付与部、
前記ユーザが負担する債務に対する返済を処理する返済処理部、
を備え、
前記ポイント付与部は、前記ユーザが負担する債務として前記ポイントを前記ユーザに対して付与することにより、前記支払の価額を割引するとともに、前記ポイントに対応する価額の債務を前記ユーザに対して負担させ、
前記返済処理部は、前記ポイントに対する返済を免除または猶予する条件を前記ユーザに対して提示し、
前記返済処理部は、前記ユーザが前記条件のうち少なくとも一部を満たした場合は、その充足の程度に応じて前記ポイントに対する返済を免除または猶予する
ことを特徴とするポイント付与システム。
【請求項2】
前記返済処理部は、前記条件として、前記ユーザが実施すべき行動を提示し、
前記返済処理部は、前記条件が指定する行動のうち少なくとも一部を前記ユーザが実施した場合は、その実施の程度に応じて前記ポイントに対する返済を免除または猶予する
ことを特徴とする請求項1記載のポイント付与システム。
【請求項3】
前記ポイント付与部は、前記ユーザが所有している電子的支払カードに付随した電子的情報として、前記ポイントを付与し、
前記返済処理部は、前記条件として、前記電子的支払カードを提供する事業者にとって利益となる行動を提示する
ことを特徴とする請求項2記載のポイント付与システム。
【請求項4】
前記返済処理部は、前記条件として、前記ユーザが実施すべき行動の選択肢を提示し、
前記返済処理部は、前記ユーザが前記選択肢のなかの行動のうちいずれか1以上を選択した結果を受け取り、
前記返済処理部は、前記ユーザが選択した行動のうち少なくとも一部を前記ユーザが実施した場合は、その実施の程度に応じて前記ポイントに対する返済を免除または猶予する
ことを特徴とする請求項1記載のポイント付与システム。
【請求項5】
前記ポイント付与部は、前記ユーザが所有している電子的支払カードに付随した電子的情報として、前記ポイントを付与し、
前記返済処理部は、前記ユーザが前記電子的支払カードを用いて支払をしたとき、その支払価額に応じて前記ポイント付与部が前記ユーザに対して付与する前記ポイントを、前記債務として前記ユーザが負担した前記ポイントに対する返済に充当する
ことを特徴とする請求項1記載のポイント付与システム。
【請求項6】
前記ポイント付与部は、前記債務として前記ポイントを前記ユーザに対して付与する際に、返済期限を併せて設定し、
前記返済処理部は、前記債務として前記ユーザが負担した前記ポイントに対して前記返済期限までに前記ユーザが返済完了しなかった場合は、前記ポイントを用いずに返済するように前記ユーザに対して要求する
ことを特徴とする請求項1記載のポイント付与システム。
【請求項7】
前記返済処理部は、前記ユーザが前記条件を充足する期限をセットし、
前記返済処理部は、前記ユーザが前記期限内に前記条件を全て充足しなかった場合は、前記ポイントに対する返済を免除も猶予もしない
ことを特徴とする請求項1記載のポイント付与システム。
【請求項8】
前記返済処理部は、前記ユーザが前記条件を充足する期限をセットし、
前記返済処理部は、前記ユーザが前記期限内に前記条件のうち一部を充足しなかった場合は、前記ユーザが充足した前記条件の程度に応じて、前記ポイントに対する返済を免除または猶予する
ことを特徴とする請求項1記載のポイント付与システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経済的価値を有するポイントをユーザに対して付与するポイント付与システムに関する。
【背景技術】
【0002】
個人顧客を対象とする流通業や小売業においては一般に、例えばクレジットカードなどの電子的支払カードを用いた決済を許容している。さらに、カード会員がそのカードを用いて決済をしたときなどの所定条件を満たしたとき、カード会員に対して、経済的価値に換価可能な電子的ポイントを付与する場合がある。このポイントは、典型的には現金と等価な経済的価値を有し、現金に代えてまたは現金と併用して、決済のために消費することができる。
【0003】
電子的ポイントの用途をさらに進めて、ポイントを前借りできるようにする技術も存在する。ここでいう前借りとは、ユーザ(カード会員)が決済をする際に、保有しているポイントが決済額に満たない場合であっても、先行的にポイントを付与し、そのポイントを用いて決済することを許容するものである。すなわち当該ユーザは、前借りしたポイントに相当する債務を負担することになる。前借りしたポイントは、後に同等額を返済する必要がある。返済手段として典型的であるのは、後に当該カードを用いて決済することによって新たなポイントを取得し、そのポイントを前借り分の返済へ充当することである。
【0004】
下記特許文献1は、ポイント前借りに関する技術を記載している。同文献は、『特典を有効活用することができるとともに、特典を用いての販売促進を図るための特典管理システム、特典管理方法及び特典管理プログラムを提供する。』ことを課題として、『利用者毎に特典残高を記憶した利用者情報記憶部22と、利用者のポイントを管理する制御部21を備えた管理サーバ20を用いて、特典管理を行なう。制御部21は、先行取引時に、利用者の前借り希望に基づいて、利用者に対して、前借りポイントを提供し、前借り状況を利用者情報記憶部22に記録し、前借りポイントを用いて支払処理を実行する。後続取引において、利用者の認証に基づいて、利用者情報記憶部22に前借りポイントが記録されていると判定した場合には、前記後続取引の支払に応じて提供されるポイントを用いて、前借りポイントを減算する返済処理を実行する。』という技術を開示している(要約参照)。
【0005】
下記特許文献2も、ポイント前借りに関する技術を記載している。同文献は、『失効直前のポイントであっても、消費者の希望する条件での利用を可能とする。』ことを課題として、『ポイント使用斡旋システム100において、消費者が購買活動で獲得したポイントの情報を格納するポイント管理テーブル126を記憶した記憶装置101と、ポイント管理テーブル126で所定消費者に関するポイントの情報を特定し、ポイントの情報と、所定消費者が所望するポイントの使用条件とに基づき、使用条件でのポイント使用に所定消費者の保有ポイントを適用する場合の、不足ポイント数を算定し、実際の購買活動より前に所定消費者に付与しうる前借りポイント数を、所定消費者によるポイント獲得の傾向に基づき算定し、算定した前借りポイント数を、不足ポイント数に充当する所定処理を実行する演算装置104を含む構成とする。』という技術を開示している(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-228151号公報
【文献】特開2018-055398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~2においては、前借りポイントの仕組みを実現するとともに、前借りポイントに対する返済処理について規定している。例えば特許文献1の0070は、後続取引によって前借りポイントを返済することを記載しており、特許文献2の0048は、実際の購買活動によって獲得したポイントによって前借りポイントを返済することを記載している。
【0008】
特許文献1~2のような従来のポイント前借りにおいては、所定の返済期日までに前借りポイント全額を返済することが想定されていると考えられる。他方で現金を用いた通常の経済取引においては、返済の全部または一部を免除または猶予する場合がある。前借りポイントにおいても同様の仕組みを提供することができれば、ポイントサービスの有用性を高めることができる。
【0009】
ただし免除または猶予を無制限に許容することはできないので、何らかの制約や条件を設ける必要がある。現金を用いた取引においては、支払者と事業者が直接交渉することにより、その条件を柔軟に定めることができる。しかし電子的ポイントを用いた取引においては、事業者が支払者に対して返済条件を提示するのは、必ずしも支払者と事業者が直接的にやり取りする場面に限らない。例えばWebサイト上で商品を購入する際に、支払者がポイントを前借りするとき、何らかの返済条件を提示することが考えられる。
【0010】
返済条件は、支払者と事業者の双方にとってメリットがあることが望ましい。特許文献1~2のような従来のポイント前借りにおいては、返済免除や返済猶予について考慮されていない。したがって、返済免除や返済猶予をする場合において支払者と事業者の双方にとってメリットがある返済条件について、従来のポイント前借りの仕組みによって定めることは困難である。
【0011】
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、ポイント前借りの仕組みを提供するとともに、前借りしたポイントの返済免除または返済猶予するための有用な条件を提示することができる、ポイント付与システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るポイント付与システムは、ポイントに対する返済を免除または猶予する条件を前記ユーザに対して提示し、ユーザが前記条件を満たした場合は、その充足の程度に応じて前記ポイントに対する返済を免除または猶予する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るポイント付与システムによれば、ポイント前借りの仕組みを提供するとともに、前借りしたポイントの返済免除または返済猶予するための有用な条件を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係るポイント付与システム1の構成図である。
図2A】ポイント残高テーブル131の構成とデータ例を示す。
図2B】付与履歴テーブル132の構成とデータ例を示す。
図2C】返済履歴テーブル133の構成とデータ例を示す。
図3A】ユーザがオンラインショッピングサイトにおいて商品を購入し、決済手段を選択する際の画面例を示す。
図3B図3Aにおいてユーザがポイントによって決済することを選択した場合の画面例を示す。
図4A】ポイントを前借りしたユーザが前借り分を返済する際の条件を指定する際にアクセスする画面の例である。
図4B】返済免除の条件を提示する画面の例である。
図4C】返済猶予の条件を提示する画面の例である。
図5】ユーザが前借りポイントを用いてショッピングサイト上で商品を購入する場合における処理シーケンス図である。
図6図5の後にユーザがクレジットカードを用いて商品を購入する場合における処理シーケンス図である。
図7A】ユーザが前借りポイントの返済免除の条件を選択する画面の例である。
図7B図7Aの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施形態1に係るポイント付与システム1の構成図である。ポイント付与システム1は、経済的価値を有する電子的ポイント(以下では単に「ポイント」と呼ぶ場合がある)をユーザに対して付与するシステムである。ポイント付与システム1は、ユーザ端末20がサーバ10に対して、購買行動にともなうリクエストを送信することによって構成される。
【0016】
ユーザ端末20は、ユーザが購買行動を実施するために用いる端末であり、例えばスマートフォンやパーソナルコンピュータによって構成される。ユーザはユーザ端末20を用いて、例えばオンラインショッピングサイトにアクセスし、購入する商品と支払手段を選択する。例えばユーザが所有するクレジットカードを、支払手段として用いることができる。
【0017】
ユーザは、後述する前借りポイントに対する返済を実施する際、またはその返済条件について提示を受ける際にも、ユーザ端末20を用いてサーバ10にアクセスする。返済手順の詳細については後述する。
【0018】
サーバ10は、ポイント付与部11、返済処理部12、データベース13を備える。ポイント付与部11と返済処理部12は、これらの機能を実装した回路デバイスなどのハードウェアによって構成することもできるし、これらの機能を実装したソフトウェアを演算装置が実行することによって構成することもできる。データベース13は、例えばレコードを記述したデータファイルを記憶装置に格納することによって構成できる。
【0019】
ポイント付与部11は、ユーザに対してポイントを付与し、その履歴をデータベース13に格納する。付与履歴テーブルの例については後述する。ポイントを付与する機会としては、例えばユーザがクレジットカードを用いて決済を実施したときが挙げられるが、これに限らず例えばクレジットカードの会員となってから1年経過するごとに付与するなどであってもよい。ポイント付与部11はさらに、上述の前借りポイントをユーザに対して付与する。ポイントを前借りすることによりユーザはその価額に応じた債務を負担することになる。
【0020】
返済処理部12は、前借りポイントに対する返済を処理する。前借りポイントの返済手段としては例えば以下のようなものが挙げられる:(a)ユーザがクレジットカードを用いて新たに購買行動をすることによって新たに付与されたポイントを、返済に充当する;(b)クレジットカードを用いた支払によって返済する;(c)返済額を事業者の指定口座などへ直接入金する。返済処理部12は、返済手続の履歴をデータベース13に格納する。返済履歴テーブルの構成例については後述する。
【0021】
データベース13は、ポイント残高テーブル131、付与履歴テーブル132、返済履歴テーブル133を有する。これらテーブルは、ユーザの取引履歴に関するレコードを保持するデータテーブルである。これらテーブルの構成例については後述する。
【0022】
図2Aは、ポイント残高テーブル131の構成とデータ例を示す。ポイント残高テーブル131は、ユーザが保有しているポイントの残高を記録するデータテーブルである。ポイント残高テーブル131は、データフィールドとして、ユーザID1311、ポイント残高1312を有する。
【0023】
ユーザID1311は、ユーザを固有に識別するIDを保持する。ポイント残高1312は、そのユーザが保有しているポイントの残高を保持する。
【0024】
図2Bは、付与履歴テーブル132の構成とデータ例を示す。付与履歴テーブル132は、ポイント付与部11がユーザに対してポイントを付与した履歴を記録するデータテーブルである。付与履歴テーブル132は、データフィールドとして、付与ID1321、ユーザID1322、付与ポイント1323、ポイント種別1324を有する。
【0025】
付与ID1321は、レコードを識別するIDである。ユーザID1322は、ポイントを付与したユーザのユーザID1311である。付与ポイント1323は、ユーザに対して付与したポイントまたはユーザが消費したポイントの量(通常はポイントの価額を表す数値)を示す。ポイント種別1324は、そのポイントが前借りとして付与されたのかそれとも通常ポイントとして付与されたのかそれとも消費されたのかを区別する。1行目のレコードは、7000ポイントを消費したことを示す。2行目のレコードは、1000ポイントを前借りしたことを示す。
【0026】
図2Cは、返済履歴テーブル133の構成とデータ例を示す。返済履歴テーブル133は、返済処理部12が前借りポイントに対する返済を処理した結果を記録するデータテーブルである。返済履歴テーブル133は、データフィールドとして、返済ID1331、付与ID1332、返済手段1333、返済額1334を有する。
【0027】
返済ID1331は、レコードを識別するIDである。付与ID1332は、返済対象となる前借りポイントを付与した履歴レコードを識別するIDであり、返済対象となるレコードの付与ID1321が格納される。図2Bの例においては、前借りポイントを記録しているのは付与ID:g1のレコードなので、図2Cにおいてもレコードg1を返済対象とした。返済手段1333は、返済金額を提供する手段を表し、例えば返済処理部12の説明において記載した(a)~(c)などの手段が用いられる。返済額1334は、返済金額である。
【0028】
図3Aは、ユーザがオンラインショッピングサイトにおいて商品を購入し、決済手段を選択する際の画面例を示す。この例におけるユーザはポイント残高として7000ポイントを有しており、1ポイントは1円と等価であるものとする。ショッピングサイトにおいては、決済手段を選択することができるのが通常である。ここでは口座振込/クレジットカード/ポイントのうちいずれかを選択できるものとする。
【0029】
図3Bは、図3Aにおいてユーザがポイントによって決済することを選択した場合の画面例を示す。購入金額は8000円、ポイント残高は7000円なので、1000円分の不足額が生じる。ユーザはさらに、不足額の決済手段を選択することができる。選択肢の1つとして、ポイント前借りがある。ユーザがポイント前借りを選択した場合、ユーザは1000ポイント(=1000円)の債務を負担することになる。
【0030】
図4Aは、ポイントを前借りしたユーザが前借り分を返済する際の条件を指定する際にアクセスする画面の例である。ここでは図3Bの購買行動をユーザが実施した後の場面を想定する。したがってユーザのポイント残高は-1000ポイント(=1000円の債務を負っている)となっている。この画面は返済処理部12によってユーザ端末20に対して提供される。ユーザが決済手段を選択した直後(すなわち図3Bの次の画面)にこの画面を提供してもよいし、ユーザが任意のタイミングでユーザ端末20を介してサーバ10へアクセスした際にこの画面を提供してもよい。
【0031】
返済処理部12は、前借りポイントに対して返済免除/返済猶予いずれかを選択できる旨を、ユーザに対して提示する。例えば図4Aに示すように、返済免除/返済猶予を選択肢として提示する画面を、ユーザ端末20に対して提示する。ここではユーザが返済免除を選択したものとする。ユーザは「次へ」ボタンを押下する。
【0032】
図4Bは、返済免除の条件を提示する画面の例である。返済処理部12は、返済免除の条件をユーザに対して提示する。返済免除はユーザにとってはメリットであるものの、クレジットカード事業者にとっては単に返済免除するのみではデメリットが大きい。そこで返済処理部12は、返済免除の条件として、クレジットカード事業者にとってメリットがある行動をユーザに促すような返済免除条件を提示する。これにより、ユーザと事業者の双方にとってメリットがある返済手続を提供することができる。
【0033】
条件を複数提示し、ユーザがそのなかから希望するものを選択するようにしてもよい。図4Bにおいては3つの選択肢から1つを選択する例を示した。さらに免除の程度を選択肢ごとに変えてもよい。図4Bにおいては全ての選択肢がそれぞれ異なる免除額を提供する例を示した。これにより、事業者が希望する行動をユーザが実施するように促す度合いを事業者がある程度調整することができる。
【0034】
図4Cは、返済猶予の条件を提示する画面の例である。図4Aにおいてユーザが返済猶予を選択した場合、返済処理部12は図4Bと同様に、図4Cのような選択肢を返済猶予条件として提示する。さらに猶予の程度を選択肢ごとに変えてもよい。図4Cにおいては全ての選択肢がそれぞれ異なる猶予期間を提供する例を示した。
【0035】
図4B図4Cにおいて例示した免除条件や猶予条件は、あらかじめデータベース13にリストとして格納しておけばよい。さらに、条件ごとに適用可否を定めてもよい。例えば以下のような例が考えられる:(a)全額免除と90日間猶予については購買金額が10000円を超えた場合のみ適用可とする;(b)ポイント残高が-10000以下(債務が10000円以上)である場合は、返済免除は不可。この適用可否のルールについても、条件とともにデータベース13に格納しておけばよい。
【0036】
返済処理部12は、ユーザが選択した条件を充足した時点で、その条件に対応する返済免除または返済猶予を実施する。返済免除する場合は、返済履歴テーブル133において、返済手段1333として「免除」を指定したレコードを記録する。返済猶予する場合は、返済期限を記録したデータを、猶予後の内容に更新する。
【0037】
図5は、ユーザが前借りポイントを用いてショッピングサイト上で商品を購入する場合における処理シーケンス図である。ショッピングサイトはサーバ10によって提供することもできるし、ショッピングサイトが決済処理のみサーバ10に対して依頼するように構成してもよい。ここではサーバ10は決済処理のみ提供することとする。以下図5の各ステップについて説明する。
【0038】
図5:ステップ(1))
ユーザは、図3Aにおいて例示したように、商品の決済手段としてポイントを選択する。説明簡易化のため明示していないが、ショッピングサイトへのログインなどの事前処理はあらかじめ実施済であるものとする。
【0039】
図5:ステップ(2))
ショッピングサイト(具体的には、ショッピングサイトを提供するサーバ、以下同様)は、ユーザのポイント残高をサーバ10に対して照会する。ポイント付与部11(あるいは返済処理部12、以下の残高照会においても同様)は、ポイント残高テーブル131からポイント残高1312を取得して返信する。本ステップはユーザがショッピングサイトにログインしたときなどに実施してもよいが、本図においてはログイン処理を省略したので本ステップにおいて実施することとした。ショッピングサイトにおけるユーザIDとサーバ10におけるユーザIDは、適当な手段によってあらかじめ連動させておく。
【0040】
図5:ステップ(3))
ユーザは、図3Bにおいて説明したように、不足額の決済手段としてポイント前借りを選択する。ユーザは決済をするようにWebブラウザ上で指示する。例えば図3Bの画面における決済ボタンを押下する。
【0041】
図5:ステップ(4))
ショッピングサイトは、サーバ10に対して、商品購入の決済手続を処理するようにリクエストする。この決済リクエストは、ユーザが決済しようとする金額、その決済手段の内訳、などを含む。図3A図3Bを用いて説明した例においては、決済金額:8000円、決済手段:7000ポイント+前借り1000ポイント、などの内容を含む。以下ではこの例を用いる。
【0042】
図5:ステップ(5))
ポイント付与部11は、ユーザが有する7000ポイントを消費した旨のレコードを付与履歴テーブル132に記録するとともに、ユーザに対して前借りポイントを1000ポイント付与した旨のレコードを付与履歴テーブル132に記録する。例えば図2Bの1~2行目に例示したレコードを記録する。ポイント付与部11は、付与したポイントにしたがってポイント残高テーブル131を更新する。ここではポイント残高1312を-1000に更新する。
【0043】
図5:ステップ(6))
ポイント付与部11は、決済完了した旨をショッピングサイトへ返信する。ショッピングサイトはその旨を表示する画面を生成し、ユーザ端末20へ送信する。
【0044】
図6は、図5の後にユーザがクレジットカードを用いて商品を購入する場合における処理シーケンス図である。以下図6の各ステップについて説明する。
【0045】
図6:ステップ(1))
ショッピングサイトは、ユーザのポイント残高をサーバ10に対して照会する。ポイント付与部11は、ポイント残高テーブル131からポイント残高1312を取得して返信する。ここでは-1000ポイントを返信することになる。本ステップは、例えばユーザがショッピングサイトにログインしたときや、購入する商品を選択したときなど、ユーザが決済を実施する前の適当なタイミングで実施すればよい。
【0046】
図6:ステップ(2))
ユーザは、ショッピングサイト上で新たに商品を購入する。この時点においてユーザはポイントを前借りしているので、サーバ10はさらなる前借りを許容しない。したがってユーザは、決済手段としてその他のものを選択する必要がある。ここではクレジットカードを選択したものとする。
【0047】
図6:ステップ(3))
ショッピングサイトは、図5のステップ(4)と同様に、サーバ10に対して、商品購入の決済手続を処理するようにリクエストする。
【0048】
図6:ステップ(4))
ポイント付与部11は、決済額に応じた新規ポイントを付与した旨のレコードを付与履歴テーブル132に記録する。ポイント付与部11は、付与したポイントにしたがってポイント残高テーブル131を更新する。ポイント付与部11は、クレジットカードによる決済そのものについても処理する。クレジットカードによる決済処理の具体的手法は公知であるので、ここでは省略する。
【0049】
図6:ステップ(5))
返済処理部12は、新規ポイントを前借りポイントの返済として充当した旨のレコードを、返済履歴テーブル133に記録する。例えば図2Cの1行目のようなレコードを記録する。
【0050】
図6:ステップ(6))
ポイント付与部11は、決済完了した旨をショッピングサイトへ返信する。ショッピングサイトはその旨を表示する画面を生成し、ユーザ端末20へ送信する。
【0051】
図6の処理シーケンスにより、ユーザが前借りしたポイントに対して、新規ポイントが返済として充当される。ユーザはその他に、口座振込などの決済手段によって、新規ポイントを用いることなく直接的に返済することもできる。ただしユーザがクレジットカードを使用することを促すのであれば、前借りポイントに対する返済手段は新規ポイントに限ることが望ましい。他方でユーザの利便性を重視するのであれば、新規ポイント以外の返済手段を併用することが望ましい。
【0052】
サーバ10は、図5から図6に至る間の任意の時点、または図6以降の任意の時点において、図4A図4Cで説明した、返済免除/返済猶予の条件を指定する画面を提供することができる。サーバ10が提供タイミングを指定するのであれば、例えば図5のステップ(6)に続いて図4Aの画面を開始すればよい。ユーザが希望する任意のタイミングで提供するのであれば、図4Aの画面を提供するアドレス(例:URL)を例えば図5のステップ(6)とともに案内しておき、ユーザは任意のタイミングでそのアドレスにアクセスする。
【0053】
ユーザが条件を充足したか否かは、ユーザが選択した行動を実施する際に用いるWebサイトなどからその行動結果を受け取ることによって判断すればよい。例えばクレジットカードのグレードを上げる場合は、サーバ10自身がそのためのWebサイトを提供すればよい。商品購入などの条件を選択した場合は、ショッピングサイトから購入内容を取得すればよい。
【0054】
<実施の形態1:まとめ>
本実施形態1に係るポイント付与システム1は、ユーザがクレジットカードを用いて決済する際にポイントを付与する。ユーザはそのポイントを新たな決済手段として用いることができる。ユーザはさらに、ポイントを前借りすることにより、ポイントが決済額に満たない場合であっても、購買行動をすることができる。これにより、購買機会の損失を回避することができる。
【0055】
本実施形態1に係るポイント付与システム1は、前借りポイントに対する返済免除または返済猶予の条件として、クレジットカード事業者にとって利点のある行動をユーザが実施するように促す選択肢を提示する。これにより、ユーザにとっては返済免除または返済猶予のメリットが得られるとともに、事業者にとってもメリットのある行動を促すことができる。すなわち、ユーザと事業者の双方にとって有用な決済システムを提供することができる。
【0056】
本実施形態1に係るポイント付与システム1は、前借りポイントに対する返済免除または返済猶予の条件として提示する選択肢の内容ごとに、それぞれ異なる免除額や猶予期間を提示することができる。すなわち、提示する条件の充足度合いに応じて、ユーザに対して提供するメリットの内容や量を調整することができる。これにより、ユーザが事業者にとって望ましい行動を実施することを、より効果的に促すことができる。
【0057】
<実施の形態2>
実施形態1においては、返済免除または返済猶予の条件として、事業者が選択肢を提示し、ユーザはその選択肢のなかからいずれかを選ぶ例を説明した。返済免除/返済猶予の内容と選択肢との間の関係は必ずしも1:1である必要はなく、例えば選択肢のうち2つ以上と1つの条件が対応しているような例も考えられる。本発明の実施形態2では、その1例について説明する。
【0058】
図7Aは、ユーザが前借りポイントの返済免除の条件を選択する画面の例である。この画面は実施形態1における図4A図4Bに対応するものである。本実施形態2において返済処理部12は、ユーザが選択した選択肢の個数に応じて、返済免除の程度を変更する。選択肢はいずれもクレジットカード事業者にとってメリットがある行動なので、ユーザが選択した選択肢の個数が多いほど、より多くのメリットをユーザに対して提供するような条件となっている。返済猶予についても同様に規定することができる。選択肢と返済免除内容または返済猶予内容との間の関係は、実施形態1と同様にあらかじめデータベース13に格納しておけばよい。
【0059】
図7Bは、図7Aの変形例である。ユーザは図4Bと同様に、いずれかの返済免除の内容を選択する。ただし図4Bとは異なり、1つまたは複数の行動を実施することが、免除条件としてセットされている。実施する行動が多いほど免除の程度も大きくなる。
【0060】
ユーザが選択した行動を実施したか否かは、実施形態1と同様に、ユーザが選択した行動を実施する際に用いるWebサイトなどからその行動結果を受け取ることによって判断すればよい。ユーザが選択した行動のうち一部のみを実施した場合は、必ずしも条件不成立としなくともよい。例えば実施した行動に対応する免除または猶予を適用することもできる。
【0061】
<実施の形態3>
実施形態1~2において、前借りしたポイントには、返済期限を設けることができる。期限はデータベース13内の適当なレコードに格納しておけばよい。返済期限までにユーザが前借りポイントを返済しなかった場合、ユーザは新規ポイントを得るような購買行動を今後も積極的にしない可能性がある。そこで返済処理部12は、返済期限までにユーザが前借りポイントを返済しなかった場合は、新規ポイントによる返済以外の手段によって返済すべき旨を、ユーザに対して通知してもよい。例えば返済期限を過ぎた時点や、前借りポイントを用いて決済した時点において、その旨のメッセージ(例:電子メール)をユーザに対して通知すればよい。ポイント付与部11は、ユーザが返済期限を徒過した以後は、ユーザがクレジットカードを使用しても、新規ポイントを付与しない。ユーザが前借りポイントを返済した時点でその制約を解除し、新規ポイントを付与することができるようになる。
【0062】
実施形態1~2において、返済免除または返済猶予の条件には、成立期限を設けることができる。期限はデータベース13内の適当なレコードに格納しておけばよい。成立期限までにユーザが条件を充足しなかった場合は、その免除または猶予を適用しないこととしてもよいし、実施形態2のように実施した行動に対応する免除または猶予を適用してもよい。
【0063】
<本発明の変形例について>
以上の実施形態において、ユーザがポイント前借りによって決済しようとするとき、そのユーザがクレジットカードを所有していない場合は、新規クレジットカードを発行する手続を即時実施して、そのカードに対して前借りポイントを付与してもよい。
【0064】
以上の実施形態において、前借りポイントに対する返済を、さらなる前借りポイントによって実施することを許容する場合は、例えば返済手続を実施するためのWebサイトにおいて、返済手段としてクレジットカードや口座振込と併記して、前借りポイントを選択肢として提示すればよい。前借りポイントを付与する処理については、購入決済時と同様である。
【0065】
返済免除または返済猶予の条件として返済処理部12が提示する条件のその他の例としては、例えば以下のようなものが考えられる:
(条件例その1)指定した商品をユーザが購入する;
(条件例その2)指定した数量の商品をユーザが購入する;
(条件例その3)指定した回数分の購買行動をユーザが実施する;
(条件例その4)指定した額の購買行動をユーザが実施する;
(条件例その5)クレジットカードの分割払の回数を事業者が指定したものに変更する;
(条件例その6)指定した加盟店をユーザが利用する;
(条件例その7)指定した日時(または指定した期間)でユーザが購買行動を実施する;
(条件例その8)新規クレジットカードをユーザが申し込む;
(条件例その9)指定したサービスをユーザが利用登録する(例:Web会員に登録する、3Dセキュアを利用登録する、ダイレクトメールを配信登録する、など);
(条件例その10)ユーザの個人情報を追加登録する;
(条件例その11)指定したサービスをユーザが契約する(例:指定した電力会社へ変更する、指定したインターネットプロバイダへ変更する、など);
(条件例その12)アンケート調査へ協力する;
(条件例その13)上記の組み合わせ;
(条件例その14)上記を指定した期間内に実施する。
(条件例その15)過去に購入した商品を買い取りに出す。
【0066】
以上の実施形態において、ポイントが付与される電子的支払カードとしてクレジットカードを例示したが、その他の電子的支払カードにおいても以上の実施形態と同様に、支払手段として用いるとともにポイント前借り機能(返済免除と返済猶予を含む)を提供することができる。
【符号の説明】
【0067】
1:ポイント付与システム
10:サーバ
11:ポイント付与部
12:返済処理部
13:データベース
20:ユーザ端末
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B