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特許7583641受発光素子、受発光素子モジュールおよびセンサ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】受発光素子、受発光素子モジュールおよびセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/12 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
H01L31/12 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021027841
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022129220
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 伊吹
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-326908(JP,A)
【文献】国際公開第2016/175246(WO,A1)
【文献】特開2019-110194(JP,A)
【文献】特開平05-067769(JP,A)
【文献】特開2005-251890(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0237609(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/08-31/173
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および前記第1面と反対側の第2面を有する半導体基板と、
前記第1面に位置する発光部および受光部と、
前記第2面に位置する半導体層と、を備え、
前記半導体基板の構成材料が、Siであり、
前記半導体層の構成材料の屈折率が、前記半導体基板の構成材料の屈折率よりも大きい、受発光素子。
【請求項2】
前記半導体層の構成材料が、Ge、GaAs、InPおよびInAsから選ばれる1種以上である、請求項1記載の受発光素子。
【請求項3】
前記半導体基板は、P、N、As、SbおよびBiから選ばれる1種以上を含むSi基板である、請求項1または請求項2記載の受発光素子。
【請求項4】
前記半導体層の厚さが、400~1000nmである、請求項1~のいずれか1つに記載の受発光素子。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1つに記載の受発光素子と、
前記受発光素子を搭載する配線基板と、
前記発光部からの出射光が透過する第1レンズおよび前記受光部への入射光が透過する第2レンズを含む光学部材と、を備える、受発光素子モジュール。
【請求項6】
請求項に記載の受発光素子モジュールと、
前記受発光素子モジュールに電気的に接続され、前記発光部から出射する出射光を制御
し、前記受光部が受光した受光量を検出する制御用回路と、を備える、センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受発光素子、受発光素子モジュールおよびセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の受発光素子モジュールおよびそれを用いたセンサ装置は、発光素子と受光素子とを搭載し、発光素子から出射した光が被照射体で反射され、反射光を受光素子で受光するように構成されている。特許文献1記載の受発光素子モジュールは、半導体基板の一表面上に発光素子および受光素子を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/175246号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる受発光素子モジュールにおいては、発光素子と受光素子との距離を近付けるなどにより、さらなる小型化が望まれる。しかし、小型化によって、発光素子からの漏れ光の一部が、半導体基板内を透過し、基板裏面の金属層で反射して受光素子で受光してしまうおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、漏れ光による光学ノイズの発生を低減することができる受発光素子、受発光素子モジュールおよびセンサ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の受発光素子は、第1面および前記第1面と反対側の第2面を有する半導体基板と、
前記第1面に位置する発光部および受光部と、
前記第2面に位置する半導体層と、を備え、
前記半導体層の構成材料の屈折率が、前記半導体基板の構成材料の屈折率よりも大きい。
【0007】
本開示の受発光素子モジュールは、上記の受発光素子と、
前記受発光素子を搭載する配線基板と、
前記発光部からの出射光を透過する第1レンズおよび前記受光部への入射光を透過する第2レンズを含む光学部材と、を備える。
【0008】
本開示のセンサ装置は、上記の受発光素子モジュールと、
前記受発光素子モジュールに電気的に接続され、前記発光部から出射する出射光を制御し、前記受光部が受光した受光量を検出する制御用回路と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の受発光素子および受発光素子モジュールによれば、漏れ光による光学ノイズの発生を低減することができる。
【0010】
本開示のセンサ装置によれば、センシング精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態である受発光素子を示す概略断面図である。
図2】(a)は受発光素子の発光部を示す拡大断面図であり、(b)は受発光素子の受光部を示す拡大断面図である。
図3】本開示の他の実施形態である受発光素子を示す概略断面図である。
図4】本開示の実施形態である受発光素子モジュールを示す概略図であり、(a)は平面図を示し、(b)は断面図を示す。
図5】本開示の実施形態であるセンサ装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本開示の実施形態である受発光素子を示す概略断面図である。受発光素子1は、半導体基板7と、発光部3と、受光部4と、半導体層8と、を備える。半導体基板7は、半導体材料で構成されており、第1面7aおよび第1面7aと反対側の第2面7bを有する板状部材である。半導体基板7の第1面7aには、発光部3および受光部4が位置している。半導体基板7の第2面7bには、半導体層8が位置している。
【0013】
発光部3および受光部4は、1つの半導体基板7を基材として共有しており、半導体基板7の同じ第1面7aに形成されている。これにより、発光素子および受光素子を個別の素子として配線基板に搭載するような構成に比べて、発光部3と受光部4とを近接して配置することが可能になり、受発光素子1の小型化およびセンシング性能の向上が可能となる。また、本実施形態の受発光素子1は、発光部3と受光部4とを1つずつ備えているが、複数の発光部3および複数の受光部4を備えていてもよい。
【0014】
半導体基板7は、一導電型の半導体材料を構成材料としている。本実施形態の半導体基板7は、一導電型の半導体材料からなる。本実施形態の半導体基板7は、例えば、n型のSi(シリコン)基板を使用しており、厚さは、例えば300~500μmである。すなわち、半導体基板7は、構成材料がSiであって、Si基板にn型の不純物をドーピングして形成されている。Si基板に対するn型の不純物は、例えば、P(リン)、N(窒素)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)またはBi(ビスマス)などを使用すればよい。なお、本明細書中において、一導電型をn型とし、逆導電型をp型とする。
【0015】
発光部3は、図2(a)に示すように、半導体基板7の第1面7aに複数の半導体層が積層されて形成されている。発光部3は、例えば、MOCVD(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)装置により、半導体基板7にエピタキシャル成長させることによって形成することができる。本実施形態の発光部3は、例えば、波長850nmの赤外光を出射することが可能である。
【0016】
複数の半導体層は、半導体基板7の第1面7aに積層されたバッファ層81を有している。バッファ層81は、半導体基板7と複数の半導体層との界面での格子定数の差を緩衝することができる。バッファ層81は、例えば、GaAs(ガリウムヒ素)で形成されればよい。
【0017】
複数の半導体層は、バッファ層81の上面に積層されたn型コンタクト層82を有している。n型コンタクト層82は、上面に発光部3のカソード電極が形成される。n型コンタクト層82は、電極との接触抵抗を低減することができる。n型コンタクト層82は、例えば、GaAsに、n型の不純物をドーピングして形成することができる。GaAsに対するn型の不純物としては、例えば、SiまたはSe(セレン)などを使用すればよい。
【0018】
複数の半導体層は、n型コンタクト層82の上面に積層されたn型クラッド層83を有している。n型クラッド層83は、後に説明する活性層84に正孔を閉じ込めることができる。n型クラッド層83は、例えば、AlGaAs(アルミニウムガリウムヒ素)にn型の不純物をドーピングして形成することができる。AlGaAsに対するn型の不純物は、例えば、SiまたはSeなどを使用すればよい。
【0019】
複数の半導体層は、n型クラッド層83の上面に積層された活性層84を有している。活性層84は電子や正孔などのキャリアが集中して、再結合することによって光を発することができる。すなわち、活性層84は、発光層として機能することができる。活性層84は、例えば、AlGaAsで形成されればよい。
【0020】
複数の半導体層は、活性層84の上面に積層されたp型クラッド層85を有している。p型クラッド層85は、活性層84に電子を閉じ込めることができる。p型クラッド層85は、例えば、AlGaAsにp型の不純物をドーピングして形成することができる。AlGaAsに対するp型の不純物は、例えば、Zn(亜鉛)、Mg(マグネシウム)またはC(炭素)などを使用すればよい。
【0021】
複数の半導体層は、p型クラッド層85の上面に積層されたp型コンタクト層86を有している。p型コンタクト層86は、上面に発光部3のアノード電極が形成される。p型コンタクト層86は、電極との接触抵抗を低減することができる。p型コンタクト層86は、例えば、AlGaAsにp型の不純物をドーピングして形成することができる。なお、p型コンタクト層86は、電極との接触抵抗を低減するために、p型クラッド層85よりもキャリア密度が高く設定されていればよい。なお、p型コンタクト層86へのアノード電極の接続およびn型コンタクト層82へのカソード電極の接続は、以上の複数の半導体層を覆うように絶縁層を形成し、この絶縁層のp型コンタクト層86上の部位およびn型コンタクト層82上の部位にそれぞれ形成したコンタクトホール(接続孔)に、それぞれの電極層を入り込ませることで行なわれている。
【0022】
図2(b)に示すように、半導体基板7の第1面7aにp型半導体領域41を設けている。その結果、n型の半導体基板7とp型半導体領域41との界面でpn接合が形成され、受光部4を形成することができる。p型半導体領域41は、半導体基板7にp型の不純物をドーピングすることによって形成されている。本実施形態の半導体基板7は、Si基板であることから、p型の不純物としては、例えば、Zn、Mg、B(ホウ素)またはIn(インジウム)などが挙げられる。
【0023】
発光部3と受光部4との距離を近付ける(例えば、3mm程度)ほど小型化が可能となるが、発光部3からの漏れ光の一部が、半導体基板7内を透過し、受光部4に入射してしまうおそれがあり、光学ノイズが生じることとなる。半導体基板7の第2面7bには、受発光素子1を実装する実装基板との接合のために、例えばCrなどの金属層を設けるが、発光部3から半導体基板7内への漏れ光がこの金属層に全反射臨界角以上の角度で入射した時に全反射することで、半導体基板7内から受光部4に入射し易くなる。
【0024】
本実施形態の受発光素子1は、半導体基板7の第2面7bに半導体層8を設けている。第2面7bに位置する半導体層8の構成材料として、半導体基板7の構成材料よりも大きい屈折率を有する半導体材料を用いる。このような屈折率を有する半導体材料を用いることで、半導体基板7と半導体層8との境界における漏れ光の反射を低減させ、受光部4に入射する光量を低減させる。これにより、受発光素子1における光学ノイズの発生を低減することができる。
【0025】
半導体層8の屈折率が、半導体基板7より大きいと、半導体基板7内を透過して半導体層8との境界に達した漏れ光は全反射しないので、漏れ光が半導体層8を透過しやすくなり、半導体基板7と半導体層8との境界で反射して受光部4に入射する光量を低減させることができる。また、半導体層8を透過した漏れ光の一部は、半導体層8と外部との境界で反射され、一部は、外部へと透過する。半導体層8内で反射した光は、半導体基板7内に戻るが、このような光の進行を繰り返すうちに半導体基板7内および半導体層8内で漏れ光は減衰する。本実施形態の受発光素子1では、このようにして、受光部4に入射する漏れ光が低減され、光学ノイズの発生が低減される。
【0026】
半導体基板7の構成材料の屈折率をn1とし、半導体層8の構成材料の屈折率をn2とすると、n2>n1である。本開示における屈折率は、発光部3から出射される光(漏れ光)の波長における屈折率である。本実施形態では、例えば、発光部3の出射光の波長が850nmであるので、波長850nmにおける屈折率である。本実施形態では、例えば、半導体基板7の構成材料がSiであり、屈折率n1は、3.42である。半導体層8の構成材料は、例えば、Ge(ゲルマニウム)、GaAs、InP(インジウムリン)およびInAs(インジウムヒ素)から選ばれる1種以上である。Geは、屈折率n2が4.6であり、GaAsは、屈折率n2が3.63であり、InPは、屈折率n2が3.44であり、InAsは、屈折率n2が3.71であり、いずれの半導体材料も屈折率n2>屈折率n1である。
【0027】
半導体層8の厚さは、半導体層8を構成する半導体材料に応じて適宜設定すればよく、構成材料がGeであれば、例えば、400~1000nmである。半導体層8の形成方法は、半導体層8を構成する半導体材料に応じて適宜選択すればよく、構成材料がGeであれば、例えば、蒸着によって形成することができる。
【0028】
図3は、本開示の他の実施形態である受発光素子を示す概略断面図である。本実施形態の受発光素子1Aは、半導体基板7の第1面7aにも半導体層8Aを備える構成が、前述の受発光素子1と異なるだけであるので、同じ構成には同じ参照符号を付与し、詳細な説明は省略する。半導体層8Aは、半導体基板7の第1面7aであって、発光部3と受光部4との間に位置する。
【0029】
前述のように、発光部3から半導体基板7内への漏れ光の一部は、半導体基板7と半導体層8との境界および半導体層8と外部との境界で反射し、半導体基板7内に戻る。この戻り光は、半導体基板7の第1面7aにおける外部(例えば空気)との境界で反射することになる。本実施形態では、第1面7aに半導体層8Aを設けることで、半導体層8と同様に、第1面7aにおける半導体基板7と半導体層8Aとの境界に達した戻り光が全反射せずに半導体層8Aを透過し、減衰する。これにより、受発光素子1Aでは、光学ノイズの発生がさらに低減される。
【0030】
半導体層8Aの構成材料は、半導体層8と同様に、例えば、Ge、GaAs、InPおよびInAsから選ばれる1種以上であればよく、半導体層8の構成材料と半導体層8Aの構成材料とが同一であっても、異なっていてもよい。
【0031】
半導体層8Aの厚さは、半導体層8Aを構成する半導体材料に応じて適宜設定すればよく、構成材料がGeであれば、例えば、半導体層8と同様に400~1000nmである。半導体層8Aは、半導体層8と同様の方法で形成することができる。
【0032】
図4は、本開示の実施形態である受発光素子モジュールを示す概略図であり、(a)は平面図を示し、(b)は断面図を示す。受発光素子モジュール100は、上記の受発光素子1と、受発光素子1を搭載する配線基板2と、光学部材9と、を備える。本実施形態の受発光素子モジュール100は、受発光素子1を備える例を示しているが、受発光素子1に代えて受発光素子1Aを備えていてもよい。受発光素子モジュール100は、いずれの方向が上方または下方とされて使用されてもよいものであるが、本開示では、便宜的に、図4の紙面に向かって上下方向(図4中に示すZ軸方向)を基準として上面または下面等の語を用いるものとする。
【0033】
受発光素子モジュール100は、被照射物に発光部3から光を照射し、被照射物での反射光を受光部4で受光することができる。その結果、受発光素子モジュール100は、被照射物の表面状態等をセンシングすることができる。
【0034】
受発光素子モジュール100は、例えば、コピー機またはプリンタなどの画像形成装置に搭載されて、トナーまたはメディアなどの被照射物の位置情報、距離情報または濃度情報などの検出に用いられる。また、受発光素子モジュール100は、例えば、工作機械などにも搭載されて、被工作物の表面状態をセンシングしてもよい。なお、受発光素子モジュール100は、上記の例に限られず、様々な装置への搭載が考えられる。
【0035】
配線基板2は、受発光素子1が実装され、受発光素子1を支持することができる。そして、配線基板2は、外部装置に電気的に接続されて、例えば発光部3および受光部4にバイアス電圧を印加することが、また受光部4が受光して出力した電気信号を取り出すことができる。
【0036】
配線基板2は、例えば、矩形板状などの形状であればよい。配線基板2は、例えば、樹脂基板またはセラミック基板などを使用することができる。本実施形態の配線基板2は、例えば、樹脂基板である。なお、本開示において、樹脂基板とは、配線基板2の絶縁材料が樹脂材料からなる基板をいう。また、セラミック基板とは、配線基板2の絶縁材料がセラミック材料からなる基板をいう。なお、配線基板2は、従来公知の方法によって形成することができる。
【0037】
受発光素子1は、半導体層8側(半導体基板7の第2面7b側)を配線基板2の上面に接合する。例えば、はんだまたはろう材などを用いて、半導体層8を配線基板2に接合することができる。また、受発光素子1と配線基板2との接合強度を高めるために、半導体層8の表面に、Cr、Auなどの金属層を形成してもよい。
【0038】
光学部材9は、発光部3からの出射光が透過する第1レンズ12と、受光部4への入射光が透過する第2レンズ13と、を含み、支持部10と、支柱11とを含んでいてよい。第1レンズ12および第2レンズ13のそれぞれは、例えば凸レンズ、球面レンズまたは非球面レンズなどである。支持部10は、第1レンズ12および第2レンズ13を支持することができる。支柱11は、支持部10の下面に設けられ、支持部10を支持することができる。
【0039】
第1レンズ12および第2レンズ13(以下、レンズ12,13という場合がある)は、例えば、透光性材料で形成されていればよい。透光性材料は、例えば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂ならびにエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂、またはポリカーボネイト樹脂ならびにアクリル樹脂などの熱可塑性樹脂などのプラスチック、あるいはサファイアおよび無機ガラスなどを用いることができる。レンズ12,13は、例えば、射出形成等により形成することができる。なお、光学部材9において、レンズ12,13が透光性を有していればよく、支持部10および支柱11は透光性を有していなくてもよい。
【0040】
支持部10は、レンズ12,13を保持する機能を有する。支持部10は、例えば、板状であればよい。支持部10は、レンズ12,13と一体的に形成されることによってレンズ12,13を保持してもよく、支持部10にレンズ12,13が嵌め込まれることによってレンズ12,13を保持してもよい。なお、「一体的」とは、継ぎ目がなく、レンズ12,13と支持部10とが連続していることを指す。すなわち、レンズ12,13および支持部10は、同じ材料から1つのプロセスで同時に形成されてもよい。
【0041】
支柱11は、レンズ12,13を保持した支持部10を支持するものであり、ひいてはレンズ12,13を支持することができる。レンズ12,13および支持部10は、発光部3および受光部4から離れて上方に位置している。そして、支柱11は、支持部10の下面から配線基板2に延びており、支柱11の下部先端は、配線基板2の上面に接している。支柱11の長さによって、第1レンズ12と発光部3との距離および第2レンズ13と受光部4との距離を適切な距離に位置決めすることができる。例えば、枠状の部材などで上下方向の位置決めを行なう場合と比較して、支柱11は配線基板2に接触する面積が小さいので、配線基板2の上面の形状による位置決め精度への影響を小さくすることができる。したがって、より効果的にレンズ12,13の上下方向の位置ずれを低減することができ、受発光素子モジュール100のセンシング性能を向上させることができる。
【0042】
支柱11の配線基板2側の先端面は、例えば、凸曲面であってもよい。支柱11と配線基板2との接触を点接触に近付けることができるため、配線基板2の上面の形状による位置決め精度への影響を効果的に小さくすることができる。したがって、より効果的に上下方向の位置ずれを低減することができる。また、支柱11の先端面を曲面にすることによって、先端が尖っている場合と比較して、支柱11の先端の欠けの発生を低減することができる。
【0043】
第1レンズ12、第2レンズ13、支持部10および支柱11は、これらが一体的に形成されていてもよい。すなわち、光学部材9は、一体的に形成されていてもよい。また、言い換えれば、第1レンズ12、第2レンズ13、支持部10および支柱11は、各構成部材の接触箇所において境界がなく、各構成部材が連続していてもよい。その結果、例えば光学部材9の各構成部材を別々に作製した後、それらを接着させて光学部材9を形成する場合と比べて、各構成部材の位置関係のばらつきを低減することができる。
【0044】
また、受発光素子1の発光部3および受光部4は、1つの半導体基板7上に形成されていることから、発光部3および受光部4を個別の素子として配線基板2に実装する場合と比較して、発光部3と受光部4との位置関係のばらつきを低減することができる。
【0045】
本実施形態の受発光素子モジュール100は、遮光体6をさらに有している。遮光体6は、受発光素子1の上方および側方において、意図しない光(迷光)が受光部4で受光されることを低減することができる。遮光体6は、光学部材9と配線基板2との間に配されており、発光部3および受光部4を囲むように配置されている。その結果、遮光体6は、上述した通り、迷光が受光部4で受光されることを低減することができる。
【0046】
遮光体6は、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)などの汎用プラスチック、ポリアミド樹脂(PA)ポリカーボネイト樹脂(PC)などのエンジニアリングプラスチック、液晶ポリマーなどのスーパーエンジニアリングプラスチック、およびアルミニウム(Al)、チタン(Ti)などの金属材料などで形成されればよい。遮光体6は、例えば、射出形成などにより形成することができる。
【0047】
遮光体6は、壁部14と蓋部15とを有している。壁部14は、発光部3および受光部4を取り囲んだ枠状の部材であればよい。蓋部15は、枠状の壁部14の上端側開口に嵌め込まれるように配されていればよい。また、蓋部15は、発光部3から第1レンズ12までの光路上および第2レンズ13から受光部4までの光路上に位置した光通過部16を有している。本実施形態の光通過部16は、蓋部15を厚さ方向に貫通する貫通孔である。
【0048】
壁部14は、上下方向に貫通した貫通孔17を有している。そして、貫通孔17内には、光学部材9の支柱11が配されている。言い換えれば、貫通孔17に、支柱11が挿入されている。支柱11が遮光体6の壁部14に被覆されることから、支柱11を保護することができ、例えば外部からの衝撃によって支柱11が折れることを低減することができる。
【0049】
また、複数の支柱11の配線基板2側の先端部は、先端に向かって先細り形状になっていてもよい。受発光素子モジュール100の製造時において、光学部材9を遮光体6に挿入しやすくなり、受発光素子モジュール100の生産効率を向上させることができる。
【0050】
遮光体6の上面は、光学部材9の支持部10の下面から離れて下方に位置していてもよい。すなわち、遮光体6の上面と支持部10の下面との間には隙間を有していてもよい。例えば、遮光体6の熱膨張等によって光学部材9が押し上げられることを低減することができる。したがって、レンズ12,13と発光部3および受光部4との距離を保持しやすく、受発光素子モジュール100のセンシング性能を維持することができる。
【0051】
受発光素子モジュール100を上面視したときに、遮光体6の外縁は、光学部材9の外縁よりも外側に位置していてもよい。そして、遮光体6の外縁部の上面が上方に突出した凸部18を有していてもよい。その結果、例えば外部応力から光学部材9を保護することができる。なお、本実施形態では、凸部18が、支持部10を取り囲むように連続して形成されている。
【0052】
光学部材9は、遮光体6の凸部18の内面と支持部10の側面とにおいて接着剤を介して、固定されていてもよい。支持部10の下面と蓋部15の上面との間に入り込む接着剤の量を低減することができ、接着剤が熱膨張してレンズ12,13の上下方向の位置ずれが生じるのを低減することができる。
【0053】
また、遮光体6の位置決めは、本実施形態では貫通孔17を使用して行なっているが、遮光体6の上面または支持部10の下面のいずれかに、突起部および窪み部を形成して、それらを組み合わせることによって位置合わせしてもよい。
【0054】
図5は、本開示の実施形態であるセンサ装置を示す模式図である。なお、図5に示す二点鎖線の矢印は、発光部3から出射され、受光部4で受光される光の経路を示している。センサ装置200は上記の受発光素子モジュール100と、制御用回路101と、を備える。制御用回路101は、受発光素子モジュール100に電気的に接続され、発光部3から出射する出射光を制御し、受光部4が受光した受光量を検出する。制御用回路101は、例えば、発光部3を駆動させるための駆動回路、受光部4からの出力(電流または電圧など)を処理する演算回路、外部装置と通信するための通信回路等を含んでいてよい。センサ装置200は、制御用回路101によって、例えば、受光部4からの出力または演算回路の演算結果を、センシングによる検出結果として外部に出力することができる。
【0055】
(実施例)
半導体基板の第2面に、半導体層としてGe層を設けた受発光素子を実施例とし、半導体層の代わりにCr層を設けた受発光素子を比較例として作製した。実施例および比較例の半導体基板の厚さを350μmとし、実施例のGe層の厚さを500nmとし、比較例のCr層の厚さを30nmとした。
【0056】
以下に示す条件で実施例および比較例を動作させ、漏れ光の低減率を評価した。
・発光部電流値:6mA
・受光部正規出力:3V
【0057】
漏れ光の測定方法は、以下の通りである。
(1)被照射物を配置した状態で、受光部の出力が正規出力3Vとなるように調整
(2)被照射物を配置しない状態で、受光部の出力を測定
(3)漏れ光(%)=(測定出力/正規出力)×100を算出
(2)は、被照射物が配置されていないので、受光部が被照射物からの反射光を受光しておらず、測定された出力は、漏れ光によるものとみなすことができる。
【0058】
実施例の漏れ光(%)を測定し、比較例の漏れ光(%)を測定し、
漏れ光低減率(%)=((実施例の漏れ光-比較例の漏れ光)/比較例の漏れ光)×100
を算出した。
【0059】
実施例の測定出力は0.111Vであり、漏れ光は3.7%であった。比較例の測定出力は0.138Vであり、漏れ光は4.6%であった。これらの結果から、漏れ光低減率は20%であり、実施例では、受光部に入射する漏れ光について光量の低減が可能であることがわかった。
【符号の説明】
【0060】
1、1A 受発光素子
2 配線基板
3 発光部
4 受光部
6 遮光体
7 半導体基板
7a 第1面
7b 第2面
8、8A 半導体層
9 光学部材
10 支持部
11 支柱
12 第1レンズ
13 第2レンズ
14 壁部
15 蓋部
16 光通過部
17 貫通孔
18 凸部
100 受発光素子モジュール
101 制御用回路
200 センサ装置
図1
図2
図3
図4
図5