(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】トリム機器及びチューブ状部材の切断方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
A61M25/00 502
(21)【出願番号】P 2021033270
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】石田 昌弘
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-155910(JP,A)
【文献】特開2004-351499(JP,A)
【文献】特開昭46-004988(JP,A)
【文献】特開昭51-012481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
B26D 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状部材の切断面が形成された端部に挿入されて前記チューブ状部材の
前記端部を軸方向に対して傾斜するように広げる拡径部材と、
前記拡径部材で広げられた部分の前記チューブ状部材を切断して、前記チューブ状部材の
前記端部に傾斜面を形成する切刃と、
を備える、トリム機器。
【請求項2】
請求項1記載のトリム機器であって、
前記拡径部材は、前記チューブ状部材を弾性変形させ、前記チューブ状部材は前記拡径部材から外した後に元の直径に弾性復元する、トリム機器。
【請求項3】
請求項1又は2記載のトリム機器であって、
前記切刃は、前記チューブ状部材の軸方向に沿って前記チューブ状部材を切断する、トリム機器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のトリム機器であって、前記切刃は、前記チューブ状部材を環状に切断する、トリム機器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のトリム機器であって、さらに、前記チューブ状部材を保持するとともに前記拡径部材に対向して配置されるクランプ部を有し、前記切刃は前記クランプ部の前記拡径部材に対向する部分に設けられている、トリム機器。
【請求項6】
請求項5記載のトリム機器であって、前記拡径部材はテーパ状に形成され、テーパ面が前記切刃に当接するスパイク部を有する、トリム機器。
【請求項7】
請求項6記載のトリム機器であって、前記クランプ部と前記拡径部材とは軸方向に移動可能であり、前記クランプ部に前記チューブ状部材を把持した状態で前記クランプ部を前記拡径部材に向けて押し込むと、前記チューブ状部材が前記スパイク部によってテーパ状に押し広げられ、前記スパイク部によって押し広げられた部分の前記チューブ状部材を前記切刃が切断する、トリム機器。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載のトリム機器であって、前記拡径部材には前記切刃を挿入可能な溝が形成されている、トリム機器。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のトリム機器であって、前記切刃は環状の刃先を有する、トリム機器。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のトリム機器であって、前記切刃及び前記拡径部材の少なくとも一方に、前記チューブ状部材を加熱する発熱体を有する、トリム機器。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のトリム機器であって、前記切刃を前進させる力の一部を前記切刃の回転力に変換する回転機構を備える、トリム機器。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のトリム機器であって、前記切刃の表面が、前記チューブ状部材の切断部分の表面に転写される薬剤層で覆われている、トリム機器。
【請求項13】
チューブ状部材を切断するステップと、
切断された前記チューブ状部材の切断面が形成された端部
に拡径部材を挿入することにより前記端部を軸方向に対して傾斜するように広げるステップと、
前記拡径部材で広げられた部分の前記チューブ状部材を切断するステップと、
前記チューブ状部材を弾性復元させるステップと、
を備える、チューブ状部材の切断方法。
【請求項14】
請求項13記載のチューブ状部材の切断方法であって、前記チューブ状部材を切断するステップは、前記チューブ状部材を加熱しながら行う、チューブ状部材の切断方法。
【請求項15】
請求項13又は14記載のチューブ状部材の切断方法であって、前記チューブ状部材を切断するステップは、切刃を前記チューブ状部材に対して回転させながら押し込んで行う、チューブ状部材の切断方法。
【請求項16】
請求項13~15のいずれか1項に記載のチューブ状部材の切断方法であって、前記チューブ状部材を切断するステップにおいて、前記チューブ状部材を環状に切断する、チューブ状部材の切断方法。
【請求項17】
請求項13~16のいずれか1項に記載のチューブ状部材の切断方法であって、前記チューブ状部材を弾性復元させるステップは、前記チューブ状部材を加熱しつつ行う、チューブ状部材の切断方法。
【請求項18】
請求項13~17のいずれか1項に記載のチューブ状部材の切断方法であって、前記チューブ状部材を弾性復元させるステップの後に、前記チューブ状部材の先端部を丸めるステップをさらに有する、チューブ状部材の切断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル等のチューブ状部材を切断する際に用いるトリム機器及びチューブ状部材の切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場において、カテーテル等のチューブ状部材の長さ調節を行うためにチューブ状部材の切断が行われている。例えば、中心静脈カテーテルでは、通常、販売されているカテーテルは長すぎる(例えば、特許文献1)。そのため、ユーザが余分なカテーテルの一部を鋏やナイフ刃等で切断して所望の長さに切断して用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カテーテルを鋏やナイフ刃等で切断すると、カテーテルの先端に、軸方向に垂直に切り立った切断面が形成されてしまう。このような切断面は、周縁部に鋭利なエッジが形成されているため、カテーテルを血管に導入した際に血管を傷つけてしまい、血栓を発生させるおそれがある。
【0005】
また、血管以外の生体組織に挿入されて用いられる各種チューブ状部材においても、切断面にエッジが生じていると、生体組織を傷つけるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明の一実施形態は、カテーテル等のチューブ状部材を切断して長さを調整する際に、切断面の鋭利なエッジを除去できるトリム機器及びチューブ状部材の切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の開示の一観点は、チューブ状部材の切断面が形成された端部に挿入されて前記チューブ状部材の端部を軸方向に対して傾斜するように広げる拡径部材と、前記拡径部材で広げられた部分の前記チューブ状部材を切断して、前記チューブ状部材の端部に傾斜面を形成する切刃と、を備える、トリム機器にある。
【0008】
別の一観点は、チューブ状部材を切断するステップと、切断された前記チューブ状部材の切断面が形成された端部を軸方向に対して傾斜するように広げるステップと、前記拡径部材で広げられた部分の前記チューブ状部材を切断するステップと、前記チューブ状部材を弾性復元させるステップと、を備える、チューブ状部材の切断方法にある。
【発明の効果】
【0009】
上記観点のトリム機器及びチューブ状部材の切断方法によれば、カテーテル等のチューブ状部材を切断して長さを調整する際に生じる切断面の鋭利なエッジを除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るカテーテルを示す説明図である。
【
図2】
図2Aは、第1実施形態に係るカテーテルの切断工程を示す説明図であり、
図2Bは
図2Aの切断工程で形成されるカテーテルの先端部を拡大した断面図である。
【
図3】
図3Aは、第1実施形態に係るトリム機器の断面図あり、
図3Bは
図3Aのクランプ部を基端側から見て示す正面図である。
【
図4】
図4Aは、トリム機器に
図2Aで切断したカテーテルを取り付ける工程の断面図であり、
図4Bはトリム機器でカテーテルの先端を変形させる工程の断面図である。
【
図5】
図5Aは、トリム機器で、変形させたカテーテルの先端を切断する工程の断面図であり、
図5Bはトリム機器からカテーテルを取り外す工程の断面図である。
【
図6】
図6Aは、
図5Bの工程で切断したカテーテルの先端を復元させる工程の断面図であり、
図6Bはカテーテルの先端を面取りする工程の断面図である。
【
図7】
図7Aは、シングルルーメンカテーテルの先端部の加工例を示す斜視図であり、
図7Bはダブルルーメンカテーテルの先端部の加工例を示す斜視図である。
【
図8】
図8Aは、実験例におけるカテーテルの先端を変形させた様子を示す写真であり、
図8Bは
図8Aのカテーテルの先端をトリム機器で切断する様子を示す写真であり、
図8Cは
図8Bの工程で加工されたカテーテルの先端部の写真である。
【
図9】第2実施形態に係るトリム機器の断面図である。
【
図10】
図10Aは、第3実施形態に係るトリム機器の断面図であり、
図10Bは
図10Aのトリム機器で加工した造影剤付きのカテーテルの加工例を示す断面図である。
【
図11】第4実施形態に係るトリム機器の断面図である。
【
図12】第5実施形態に係るトリム機器の断面図である。
【
図13】第6実施形態に係るトリム機器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、トリム機器及びチューブ状部材の切断方法について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
本実施形態に係るトリム機器10(
図3A参照)は、例えば、
図1に示す中心静脈カテーテル100(チューブ状部材の一例)の切断の際に用いられる。中心静脈カテーテル100は、図示のように、患者の皮膚から穿刺された状態でテープ102によって皮膚に固定される。中心静脈カテーテル100の先端は体内の中心静脈の内部に配置される。このような中心静脈カテーテル100は、販売されている状態では長すぎるため、長さを調節するために余分な部分を切断して用いられる。中心静脈カテーテル100の販売品のパッケージには、カテーテル及びコネクタ類の他に、切断器具104(
図2A参照)及び本実施形態のトリム機器10(
図3A参照)が付属している。
【0013】
図2Aに示すように、中心静脈カテーテル100は、使用する直前に、ユーザによって切断される。中心静脈カテーテル100は、切断器具104の切断刃104aによって軸方向に略垂直に切断される。なお、中心静脈カテーテル100は、ユーザが鋏やナイフ刃等で切断してもよい。
【0014】
図2Bに示すように、切断された中心静脈カテーテル100の先端には、中心静脈カテーテル100の中心軸に対して略垂直な切断面106が形成される。切断面106の周縁部には、直角に切り立った鋭利なエッジ108が形成される。エッジ108がそのまま残っていると、中心静脈カテーテル100を静脈内に挿入した際に、静脈の内壁を傷つけて血栓を発生させる要因となる。
【0015】
ユーザは、切断面106の周縁部のエッジ108を取り除くために、
図3Aに示すトリム機器10を用いることができる。以下、本実施形態のトリム機器10の構成について説明し、その後、トリム機器10を用いたエッジ108の処理方法について説明する。
【0016】
図3Aに示すように、本実施形態のトリム機器10は、拡径部材14と、切断部材12とを備える。このうち、拡径部材14は、中心静脈カテーテル100の切断面106が形成された端部からルーメン100aに挿入されて、中心静脈カテーテル100の端部(ルーメン100a)を軸方向に対して傾斜するように広げるスパイク部18と、スパイク部18の基端側に設けられた基部16とを有している。
【0017】
スパイク部18は、円錐形に形成されており、15°~60°程度の鋭角の頂点18aと、その基端側に設けられた傾斜した円錐面18bとを有している。スパイク部18は、例えば、ステンレス鋼等の金属よりなる硬質の材料によって形成されている。スパイク部18の基端部は基部16に接続されている。基部16は、板状に形成された部材であり、使用者が把持しやすい形状に形成されてもよい。基部16の一方の面からスパイク部18が突出するように設けられている。特に限定されるものではないが、スパイク部18と基部16とは一体的に形成することができる。
【0018】
切断部材12は、切刃20と、切刃20の基端側に接合されたクランプ部22とを有する。切刃20及びクランプ部22の内部には、中心静脈カテーテル100を挿通可能な挿通孔20a、22aが形成されている。切刃20は、円筒状に形成されており、その先端部には環状の刃先24を有している。刃先24は、外周側に傾斜した刃面24aが形成されており、内周側に環状の稜線部24bが形成されている。刃先24の稜線部24bは、中心静脈カテーテル100を切断可能なように鋭利に形成されている。切刃20をスパイク部18側に移動させると、刃先24の稜線部24bの全体がスパイク部18の円錐面18bに当接する。
【0019】
切刃20は、クランプ部22の変形に影響を受けないように、切刃20の基端部周方向の一部分のみでクランプ部22に接合されている。特に限定されるものではないが、クランプ部22の自然状態の挿通孔22aと切刃20の挿通孔20aとは同じ内径とすることができ、環状の刃先24の稜線部24bの直径は、クランプ部22の挿通孔22aと同じ大きさとすることができる。切刃20の材料には、例えばステンレス鋼等の硬質な金属材料を用いることができる。
【0020】
クランプ部22は、切刃20の基端側に設けられており、切刃20の基端部と接合されている。内部に挿通孔22aを有している。挿通孔22aは、中心静脈カテーテル100の外径よりも僅かに大きな内径を有しており、挿通孔22aに中心静脈カテーテル100を挿通することができる。
【0021】
図3Bに示すように、クランプ部22には、挿通孔22aの内径を調節する締付機構26が設けられている。締付機構26は、クランプ部22の周方向の一部を切り欠いてなるギャップ部28と、ギャップ部28の近傍に設けられた一対のリブ30と、リブ30を閉め付けるネジ31とを有している。
【0022】
ギャップ部28は、クランプ部22の初期状態において間隙を形成している。リブ30は、ギャップ部28を挟む部分のクランプ部22の外周部から外方に突出して形成されている。一対のリブ30の間隔はギャップ部28の間隙と同じ間隔で離間している。ネジ31は、一対のリブ30を厚さ方向に貫通するように設けられている。ネジ31を締め込むことにより、一対のリブ30の間隙を狭めることができ、挿通孔22aの内径を縮小することができる。
【0023】
なお、クランプ部22のギャップ部28の数は1つに限定されるものではなく、周方向に180°離間して一対設けられていてもよい。この場合には、クランプ部22は、半円状の2つの部材で構成されてもよい。上記のクランプ部22は、弾性変形が容易な樹脂材料で構成すると好適である。
【0024】
次に、本実施形態のトリム機器10を用いたエッジ108の処理方法について説明する。
【0025】
まず、
図4Aに示すように、ユーザが中心静脈カテーテル100を切断部材12に取り付ける。すなわち、中心静脈カテーテル100の切断面106が形成された端部を、クランプ部22の挿通孔22aに通し、さらに切刃20の挿通孔20aを通過させ、刃先24から突出させる。次に、ユーザがクランプ部22の締付機構26を操作してクランプ部22を締め込んでクランプ部22で中心静脈カテーテル100を確実に把持させる。以上の操作により、切断部材12への中心静脈カテーテル100の装着が完了する。
【0026】
次に、ユーザは切断部材12を拡径部材14に向けて移動させ、突出した中心静脈カテーテル100の先端のルーメン100aに、拡径部材14のスパイク部18の頂点18aを挿入する。
【0027】
次に、
図4Bに示すように、ユーザは切断部材12をさらに拡径部材14に向けて押し込む。この操作により、中心静脈カテーテル100の先端が拡径部材14のスパイク部18によって弾性変形しつつ押し広げられ、ルーメン100aが拡径する。中心静脈カテーテル100の先端は、スパイク部18の円錐面18bに沿うように変形し、中心軸に対してテーパ状に傾斜するように形付けられる。
【0028】
図5Aに示すように、ユーザが切断部材12をさらに拡径部材14に向けて前進させると、切刃20の刃先24が中心静脈カテーテル100の先端のテーパ状に傾斜した部分に切り込み、中心静脈カテーテル100の軸方向に切断する。この操作により、中心静脈カテーテル100の先端側が環状に切断され、新たな先端部が形成される。切断面106が形成された部分は、中心静脈カテーテル100から切り離される。
【0029】
その後、
図5Bに示すように、ユーザが切断部材12を拡径部材14から引き離す。これにより、スパイク部18によって拡径された中心静脈カテーテル100が弾性復元力により縮径し、ルーメン100aが元の内径に復元する。また、中心静脈カテーテル100の縮径により、切刃20によって軸方向に切断された部分が内側に向かうように縮径し、中心静脈カテーテル100の外周面に対して鈍な傾斜面110が形成される。なお、中心静脈カテーテル100の弾性的な復元が不十分で元の直径に復元しきれない場合には、中心静脈カテーテル100の先端を加熱することで元の直径に戻すことができる。
【0030】
その後、ユーザがクランプ部22の締付機構26の締め込みを緩めることで、
図6Aに示すように、切断面106の外周部のエッジ108が除去された中心静脈カテーテル100が得られる。図示のように、中心静脈カテーテル100の傾斜面110の先端に細い稜線部110aが形成される。
【0031】
その後、中心静脈カテーテル100の稜線部110aを切断器具104で切り落とすことで、
図6Bに示す中心静脈カテーテル100が得られる。なお、中心静脈カテーテル100は、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂やシリコーン樹脂等の樹脂よりなるため、融点以上の温度に加熱することで傾斜面110を軟化させて丸めることで、稜線部110aを取り除いてもよい。また、稜線部110aは薄く軟弱なバリ状に残るだけなので、
図6Bのような稜線部110aを取り除く操作を省くこともできる。
【0032】
以上により、切断した中心静脈カテーテル100の鋭利なエッジ108の除去が完了する。本実施形態のトリム機器10は、
図7Aに示すシングルルーメンの中心静脈カテーテル100だけでなく、
図7Bに示すダブルルーメンの中心静脈カテーテル100Aに対しても用いることができる。
【0033】
以下、本実施形態のトリム機器10を用いた中心静脈カテーテル100の加工を行った実験例について説明する。
【0034】
図8Aに示すように、円錐状の拡径部材14に中心静脈カテーテル100を押し込むことにより、中心静脈カテーテル100をテーパ状に拡径する。その後、
図8Bに示すように、切断部材12の環状の刃先24を有する切刃20を押し込むことにより、中心静脈カテーテル100を軸方向に切断できることが確認できた。
【0035】
図8Cに示すように、切断部材12及び拡径部材14を用いることにより、中心静脈カテーテル100の形状が元の外径寸法に復元した際に外周面に対して鈍角を成す傾斜面110が形成され、外周部のエッジ108を除去できた。
【0036】
本実施形態のトリム機器10及びチューブ状部材の切断方法は、以下の効果を奏する。
【0037】
本実施形態のトリム機器10は、チューブ状部材(例えば、中心静脈カテーテル100)の切断面106が形成された端部に挿入されてチューブ状部材の端部を軸方向に対して傾斜するように広げる拡径部材14と、拡径部材14で広げられた部分のチューブ状部材を切断して、チューブ状部材の端部に傾斜面110を形成する切刃20と、を備える。
【0038】
上記のトリム機器10によれば、チューブ状部材の切断面106の端部の鋭利なエッジ108を取り除くことができる。また、簡素な装置構成で済むため、1回のみ使用するための付属品として好適である。
【0039】
上記のトリム機器10において、拡径部材14は、チューブ状部材を弾性変形させ、チューブ状部材は拡径部材14から外した後に元の直径に弾性復元する。この構成によれば、チューブ状部材の寸法変形を生じないので、エッジ108を除去した後の成形が不要となる。
【0040】
上記のトリム機器10において、切刃20は、チューブ状部材の軸方向に沿ってチューブ状部材を切断してもよい。この構成によれば、チューブ状部材のエッジ108を切除できるとともに、チューブ状部材が弾性復元した際に、切刃20で切断された面がチューブ状部材の外周面に対して鈍角の面となる。
【0041】
上記のトリム機器10において、切刃20は、チューブ状部材を環状に切断してもよい。
【0042】
上記のトリム機器10において、さらにチューブ状部材を保持するとともに拡径部材14に対向して配置されるクランプ部22を有し、切刃20はクランプ部22の拡径部材14に対向する部分に設けられてもよい。すなわち、切刃20及びクランプ部22よりなる切断部材12が拡径部材14に対向配置される。この構成によれば、ユーザは、チューブ状部材をクランプ部22で確実に保持しつつエッジ108の切断除去を簡単に行える。
【0043】
上記のトリム機器10において、拡径部材14はテーパ状に形成され、テーパ面(例えば、円錐面18b)が切刃20に当接するスパイク部18を有してもよい。この構成によれば、スパイク部18によってチューブ状部材をテーパ状に押し広げることができる。
【0044】
上記のトリム機器10において、クランプ部22と拡径部材14とは軸方向に移動可能であり、クランプ部22にチューブ状部材を把持した状態でクランプ部22を拡径部材14に向けて押し込むと、チューブ状部材がスパイク部18によってテーパ状に押し広げられ、スパイク部18によって押し広げられた部分のチューブ状部材を切刃20が切断するように構成してもよい。この構成によれば、簡素な装置構成で、チューブ部状部材のエッジ108を除去できる。
【0045】
本実施形態のチューブ状部材の切断方法は、チューブ状部材を切断するステップと、切断されたチューブ状部材の切断面106が形成された端部を軸方向に対して傾斜するように拡径するステップと、チューブ状部材の傾斜した拡径部分を切断するステップと、チューブ状部材を弾性復元させるステップと、を有する。この方法によれば、チューブ状部材を弾性復元させた際に、切断した部分がチューブ状部材の外周面に対して鈍角となるため、鋭利なエッジ108を取り除くことができる。
【0046】
上記のチューブ状部材の切断方法において、チューブ状部材を弾性復元させるステップは、チューブ状部材を加熱しつつ行ってもよい。これにより、チューブ状部材が一部塑性変形した場合であっても、元の直径に戻すことができる。
【0047】
上記のチューブ状部材の切断方法であって、チューブ状部材を弾性復元させるステップの後に、チューブ状部材の先端部を丸めるステップをさらに有してもよい。この方法によれば、チューブ状部材の先端に生じるバリ状の稜線部110aを取り除くことができる。
【0048】
(第2実施形態)
以下、本実施形態のトリム機器10Aについて説明する。なお、トリム機器10Aにおいて、
図3Aに示すトリム機器10と同様の構成については同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0049】
図9に示すように、本実施形態のトリム機器10Aは、切刃20の表面に、中心静脈カテーテル100の切断部分の表面に転写される薬剤層32が形成されている。薬剤層32は、潤滑性物質、抗血栓剤及び抗菌剤を含む液体又は固体よりなり、切刃20の挿通孔20a及び刃面24aの上に形成されている。薬剤層32は、
図5Aで参照しつつ説明したように、切刃20を中心静脈カテーテル100に切り込んだ際に、中心静脈カテーテル100の切断部分に転写される。これにより、中心静脈カテーテル100の切断部分を薬剤層32で被覆できる。
【0050】
本実施形態のトリム機器10Aは、切刃20の表面が、チューブ状部材の切断部分の表面に転写される薬剤層32で覆われている。中心静脈カテーテル100を切刃20で切断すると新たな面が傾斜面110として表れるが、本実施形態のトリム機器10Aによれば、傾斜面110に薬剤層32を転写することができるため、中心静脈カテーテル100の潤滑性、抗血栓性、及び抗菌性を維持できる。
【0051】
(第3実施形態)
以下、本実施形態のトリム機器10Bについて説明する。なお、トリム機器10Bにおいて、
図3Aに示すトリム機器10と同様の構成については同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0052】
図10Aに示すように、本実施形態のトリム機器10Bは、切刃20に発熱体34が設けられている。発熱体34は、例えば抵抗発熱体であり、外部からの通電により切刃20を、中心静脈カテーテル100の融点よりも高い温度に加熱することができる。切刃20の加熱は、
図5Aに示す中心静脈カテーテル100の切断の際に行われる。すなわち、切刃20を通じて中心静脈カテーテル100を加熱しながら中心静脈カテーテル100を切断する。
【0053】
以上のように、本実施形態のトリム機器10Bは、切刃20にチューブ状部材(例えば、中心静脈カテーテル100)を加熱する発熱体34が設けられている。これにより、チューブ状部材をより軽い力で環状に切断できる。また、加熱した切刃20でチューブ状部材を切断すると切断部分の表面を滑らかに形成することができる。
【0054】
本実施形態のトリム機器10Bは、
図10Bに示す造影層112を含む中心静脈カテーテル100Aの加工に好適である。
図10Bに示す中心静脈カテーテル100Aは、造影剤を含むチューブ状の造影層112と、造影層112の外周部を覆う軟質樹脂層114とで構成されている。造影層112は、造影剤の粒子を含んでおり、表面が粗いため、表面に露出すると血栓ができやすい。そこで、本実施形態のトリム機器10Bで外側の軟質樹脂層114を溶かしながら切断することにより、切断部分の表面(傾斜面110)を軟質樹脂層114aで覆うことができる。
【0055】
(第4実施形態)
以下、本実施形態のトリム機器10Cについて説明する。なお、トリム機器10Cにおいて、
図3Aに示すトリム機器10と同様の構成については同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0056】
図11に示すように、本実施形態のトリム機器10Cは、拡径部材14のスパイク部18に発熱体34が設けられている。発熱体34は、例えば抵抗発熱体であり、外部からの通電によりスパイク部18を、中心静脈カテーテル100の融点よりも高い温度に加熱することができる。スパイク部18の加熱は、
図5Aに示す中心静脈カテーテル100の切断の際に行われ、スパイク部18を通じて中心静脈カテーテル100を加熱しながら切断が行われる。
【0057】
以上のように、本実施形態のトリム機器10Cは、スパイク部18にチューブ状部材(例えば、中心静脈カテーテル100)を加熱する発熱体34が設けられている。これにより、チューブ状部材をより軽い力で環状に切断できる。また、加熱した中心静脈カテーテル100を切刃20で切断すると切断部分の表面を滑らかに形成できる。
【0058】
また、本実施形態のチューブ状部材の切断方法は、チューブ状部材を加熱しながら環状に切断するため、切刃20で切断した傾斜面110が滑らかになるとともに、軽い力で切断できる。
【0059】
(第5実施形態)
以下、本実施形態のトリム機器10Dについて説明する。なお、トリム機器10Dにおいて、
図3Aに示すトリム機器10と同様の構成については同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0060】
図12に示すように、本実施形態のトリム機器10Dは、拡径部材14のスパイク部18に、切刃20を挿入可能な溝36が設けられている。溝36は、切刃20の形状と一致するように円環状に形成されている。
図12に示すように、中心静脈カテーテル100を押し広げた状態で切刃20を溝36に向けて押し込むと、剪断力が作用しながら中心静脈カテーテル100が切断される。これにより、切断部分にバリ等を残さずに、軽い力で中心静脈カテーテル100を環状に切断できる。
【0061】
以上のように、本実施形態のトリム機器10Dは、拡径部材14に切刃20を挿入可能な溝36が形成されている。この構成によれば、中心静脈カテーテル100を確実に切断できる。
【0062】
(第6実施形態)
以下、本実施形態のトリム機器10Eについて説明する。なお、トリム機器10Eにおいて、
図3Aに示すトリム機器10と同様の構成については同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0063】
図13に示すように、本実施形態のトリム機器10Eは、切断部材12Eと、拡径部材14とが連結部材38を介して接続されている。連結部材38は枠状の部材であり、切断部材12Eを拡径部材14に対して接近又は離間する方向(軸方向)にスライド可能に支持している。連結部材38の切断部材12Eと当接する部分には、案内溝38aが形成されている。
【0064】
切断部材12Eには、外周部にスパイラル突起40が形成されている。スパイラル突起40は、切断部材12Eの移動方向に対して螺旋状に形成されている。スパイラル突起40は、連結部材38の案内溝38aと係合している。そのため、切断部材12Eが拡径部材14に向けて前進又は後退すると、スパイラル突起40及び案内溝38aによって、切断部材12Eに回転変位が生じる。すなわち、スパイラル突起40及び案内溝38aにより、切断部材12Eの切刃20を前進させる力の一部を切刃20の回転力に変換する回転機構42が構成される。
【0065】
以上のように、本実施形態のトリム機器10Eは、切刃20を前進させる力の一部を切刃20の回転力に変換する回転機構42を備えている。また、本実施形態のチューブ状部材の切断方法によれば、切刃20を回転させながらチューブ状部材を環状に切断する。本実施形態のトリム機器10E及びチューブ状部材の切断方法によれば、軽い力でチューブ状部材を切断できる。
【0066】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0067】
10、10A、10B、10C、10D、10E…トリム機器
12…切断部材 14…拡径部材
18…スパイク部 20…切刃
22…クランプ部 24…刃先
32…薬剤層 34…発熱体
36…溝 42…回転機構
106…切断面 110…傾斜面