(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B65H 7/12 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
B65H7/12
(21)【出願番号】P 2021034620
(22)【出願日】2021-03-04
【審査請求日】2023-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000136136
【氏名又は名称】株式会社PFU
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100135976
【氏名又は名称】宮本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】堺 雅晃
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0091344(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送する搬送部と、
重なり検出センサと、
前記重なり検出センサの検出出力に基づいて、前記搬送部によって搬送される媒体について、媒体上で重なりが発生していると見なせる重なり検出箇所を検出する重なり検出部と、
前記重なり検出部の検出結果に基づいて、前記重なり検出箇所が連続している重なり検出長さを算出する算出部と、
前記重なり検出長さに基づいて、異常処理を実行する制御部と、
を有し、
前記算出部は、前記重なり検出長さを算出する上で、
第1の重なり検出箇所と
第2の重なり検出箇所との間の距離が所定距離以内
である場合
は、
前記第1の重なり検出箇所と前記第2の重なり検出箇所の間に重なりが発生していないと判定された箇所が存在する場合であっても、前記第1の重なり検出箇所と
前記第2の重なり検出箇所とは連続していると判断する、ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記算出部は、媒体の搬送方向に沿って、媒体の搬送方向と直交する方向に沿って、又は、媒体の搬送方向及び媒体の搬送方向と直交する方向の両方向に沿って、前記重なり検出長さを算出する、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記重なり検出長さが複数算出された場合、複数の当該重なり検出長さの平均値、最大値、最小値、又は、中央値に基づいて異常処理を実行する、請求項1又は2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記重なり検出センサは、媒体を透過した超音波の透過強度を検出する超音波センサであり、
前記重なり検出部は、前記超音波センサが検出した透過強度と所定の閾値とを比較して前記重なり検出箇所を検出する、請求項1~3の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記重なり検出センサは、媒体が搬送される搬送方向と直交する方向に沿って複数配置されている、請求項1~4の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記重なり検出部は、所定の周期で、前記重なり検出箇所が存在するか否かを検出する、請求項1~5の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
前記重なり検出長さに基づいて、重送が発生したか否かを判定する重送判定部をさらに有し、
前記制御部は、前記重送判定部の判定結果に基づいて、重送による異常処理を実行する、請求項1~6の何れか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
媒体を搬送する搬送部と、重なり検出センサと、前記重なり検出センサの検出出力に基づいて、前記搬送部によって搬送される媒体について、媒体上で重なりが発生していると見なせる重なり検出箇所を検出する重なり検出部と、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、
前記重なり検出部の検出結果に基づいて、前記重なり検出箇所が連続している重なり検出長さを算出し、
前記重なり検出長さに基づいて、異常処理を実行することを含み、
前記重なり検出長さを算出する上で、
第1の重なり検出箇所と
第2の重なり検出箇所との間の距離が所定距離以内
である場合
は、
前記第1の重なり検出箇所と前記第2の重なり検出箇所の間に重なりが発生していないと判定された箇所が存在する場合であっても、前記第1の重なり検出箇所と
前記第2の重なり検出箇所とは連続していると判断する、
ことを特徴とする媒体搬送装置の制御方法。
【請求項9】
媒体を搬送する搬送部と、重なり検出センサと、前記重なり検出センサの検出出力に基づいて、前記搬送部によって搬送される媒体について、媒体上で重なりが発生していると見なせる重なり検出箇所を検出する重なり検出部と、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、
前記重なり検出部の検出結果に基づいて、前記重なり検出箇所が連続している重なり検出長さを算出し、
前記重なり検出長さに基づいて、異常処理を実行することを前記媒体搬送装置に実行させ、
前記重なり検出長さを算出する上で、
第1の重なり検出箇所と
第2の重なり検出箇所との間の距離が所定距離以内
である場合
は、
前記第1の重なり検出箇所と前記第2の重なり検出箇所の間に重なりが発生していないと判定された箇所が存在する場合であっても、前記第1の重なり検出箇所と
前記第2の重なり検出箇所とは連続していると判断する、
ことを特徴とする媒体搬送装置の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムに関し、特に、媒体の重送が発生したか否かを判定する媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スキャナ等の媒体搬送装置は、複数の媒体が重なって搬送される重送が発生したか否かを検出し、重送が発生した際には媒体の搬送を自動的に停止する機能を有している。
【0003】
例えば、搬送されるシートの複数の箇所において受信した超音波信号の信号強度の集合からばらつきを表す指標を算出し、この指標が所定の設定値(閾値)より大きい場合にシートが重送されていると判定する重送検知装置が開示されている(特許文献1を参照)。
【0004】
また、搬送手段により搬送されるシートに向けて信号を発信する発信手段と、シートを透過した信号を受信して、受信した信号の強度に応じた出力信号を出力する受信手段とを有する、シート給送装置が開示されている(特許文献2を参照)。このシート給送装置は、積載手段に積載されたシートが特定の種類であるときに、1枚のシートに対して取得する複数の出力信号の所定の値及びばらつき幅に応じて、搬送手段により搬送されるシートの重送を検知する。更に、原稿1枚毎において、重送を判定する長さが所定の長さよりも短い場合は、重送検出を禁止することで、貼付物がある原稿に対する誤検知を防止する重送検知装置が開示されている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-147659号公報
【文献】特開2018-95424号公報
【文献】特開平07-291485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
媒体搬送装置では、媒体の重送が発生したか否かをより精度良く判定できることが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、媒体の重送が発生したか否かをより精度良く判定することが可能な媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る媒体搬送装置は、媒体を搬送する搬送部と、重なり検出センサと、重なり検出センサの検出出力に基づいて、搬送部によって搬送される媒体について、媒体上で重なりが発生していると見なせる重なり検出箇所を検出する重なり検出部と、重なり検出部の検出結果に基づいて、重なり検出箇所が連続している重なり検出長さを算出する算出部と、重なり検出長さに基づいて、重送が発生したか否かを判定する重送判定部と、重送判定部の判定結果に基づいて、重送による異常処理を実行する制御部と、を有し、算出部は、重なり検出長さを算出する上で、一つの重なり検出箇所と他の重なり検出箇所との間の距離が所定距離以内の場合、当該一つの重なり検出箇所と他の重なり検出箇所とは連続していると判断する。
【0009】
また、本発明の一側面に係る制御方法は、媒体を搬送する搬送部と、重なり検出センサと、重なり検出センサの検出出力に基づいて、搬送部によって搬送される媒体について、媒体上で重なりが発生していると見なせる重なり検出箇所を検出する重なり検出部と、を有する媒体搬送装置の制御方法であって、重なり検出部の検出結果に基づいて、重なり検出箇所が連続している重なり検出長さを算出し、重なり検出長さに基づいて、重送が発生したか否かを判定し、重送が発生したか否かの判定結果に基づいて、重送による異常処理を実行することを含み、重なり検出長さを算出する上で、一つの重なり検出箇所と他の重なり検出箇所との間の距離が所定距離以内の場合、当該一つの重なり検出箇所と他の重なり検出箇所とは連続していると判断する。
【0010】
また、本発明の一側面に係る制御プログラムは、媒体を搬送する搬送部と、重なり検出センサと、重なり検出センサの検出出力に基づいて、搬送部によって搬送される媒体について、媒体上で重なりが発生していると見なせる重なり検出箇所を検出する重なり検出部と、を有する媒体搬送装置の制御プログラムであって、重なり検出部の検出結果に基づいて、重なり検出箇所が連続している重なり検出長さを算出し、重なり検出長さに基づいて、重送が発生したか否かを判定し、重送が発生したか否かの判定結果に基づいて、重送による異常処理を実行することを媒体搬送装置に実行させ、重なり検出長さを算出する上で、一つの重なり検出箇所と他の重なり検出箇所との間の距離が所定距離以内の場合、当該一つの重なり検出箇所と他の重なり検出箇所とは連続していると判断する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、媒体搬送装置、制御方法及び制御プログラムは、媒体の重送が発生したか否かをより精度良く判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に従った媒体搬送装置100を示す斜視図である。
【
図2】媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【
図3】超音波センサ115等の配置について説明するための模式図である。
【
図4】媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【
図5】記憶装置140及び処理回路150の概略構成を示す図である。
【
図6】媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【
図7】(A)は超音波信号の信号値と媒体上の位置との関係を表すグラフを示し、(B)は重なり検出長さについて説明するためのグラフである。
【
図8】(A)は媒体搬送方向A1に沿った重なり検出長さについて説明するための模式図であり、(B)は幅方向A2に沿った重なり検出長さについて説明するための模式図であり、(C)は、超音波信号が取得された時に超音波センサ115と対向していた媒体内の各領域の間の距離について説明するための模式図である。
【
図9】他の処理回路250の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一側面に係る媒体搬送装置について図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0014】
図1は、イメージスキャナとして構成された、第1実施形態に従った媒体搬送装置100を示す斜視図である。媒体搬送装置100は、原稿である媒体を搬送し、撮像する。媒体は、用紙、カード又は冊子等である。用紙には、薄紙、PPC(Plain Paper Copier)用紙又は厚紙等が含まれる。冊子には、パスポート又は通帳等が含まれる。また、媒体は、ラベル(シール)又は小型紙片(写真、切り抜き、切手、印紙等)等の貼付物が貼付された媒体を含む。媒体搬送装置100は、ファクシミリ、複写機、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。なお、搬送される媒体は、原稿でなく印刷対象物等でもよく、媒体搬送装置100はプリンタ等でもよい。
【0015】
媒体搬送装置100は、下側筐体101、上側筐体102、載置台103、排出台104、操作装置105及び表示装置106等を備える。
【0016】
上側筐体102は、媒体搬送装置100の上面を覆う位置に配置され、媒体つまり時、媒体搬送装置100内部の清掃時等に開閉可能なようにヒンジにより下側筐体101に係合している。
【0017】
下側筐体101の上面は、媒体の搬送路の下側ガイド107aを形成し、上側筐体102の下面は、媒体の搬送路の上側ガイド107bを形成する。
図1において矢印A1は媒体搬送方向を示す。以下では、上流とは媒体搬送方向A1の上流のことをいい、下流とは媒体搬送方向A1の下流のことをいう。
【0018】
載置台103は、搬送される媒体を載置可能に下側筐体101に係合している。載置台103は、媒体を載置する載置面103aを有する。載置面103a上には、第1サイドガイド108a及び第2サイドガイド108bが設けられている。
【0019】
排出台104は、排出された媒体を保持可能に下側筐体101に係合している。
【0020】
操作装置105は、ボタン等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による入力操作を受け付け、利用者の入力操作に応じた操作信号を出力する。表示装置106は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、画像データをディスプレイに表示する。
【0021】
図2は、媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
【0022】
媒体搬送装置100内部の搬送経路は、接触センサ111、給送ローラ112、ブレーキローラ113、媒体センサ114、超音波発信器115a、超音波受信器115b、第1搬送ローラ116、第2搬送ローラ117、第1撮像装置118a、第2撮像装置118b、第3搬送ローラ119及び第4搬送ローラ120等を有している。給送ローラ112、ブレーキローラ113、第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117は、媒体を搬送する搬送部の一例である。なお、各ローラの数は一つに限定されず、各ローラの数はそれぞれ複数でもよい。以下では、第1撮像装置118a及び第2撮像装置118bを総じて撮像装置118と称する場合がある。
【0023】
接触センサ111は、給送ローラ112及びブレーキローラ113より上流側に配置される。接触センサ111は、媒体を接触検知することにより、載置台103に媒体が載置されているか否かを検出する。接触センサ111は、載置台103に媒体が載置されている状態と載置されていない状態とで信号値が変化する第1媒体信号を生成して出力する。
【0024】
給送ローラ112は、下側筐体101に設けられ、載置台103に載置された媒体を下側から順に給送する。ブレーキローラ113は、上側筐体102に設けられ、給送ローラ112と対向して配置される。
【0025】
媒体センサ114は、給送ローラ112及びブレーキローラ113より下流側且つ第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117より上流側に配置される。特に、媒体センサ114は、媒体搬送方向A1において、給送ローラ112と、超音波発信器115a及び超音波受信器115bとの間に配置される。媒体センサ114は、その位置に媒体が存在するか否かを検出する。媒体センサ114は、媒体の搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器と、搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置に設けられたミラー等の反射部材(図示せず)とを含む。発光器は、搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、発光器により照射され、反射部材により反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である第2媒体信号を生成して出力する。媒体センサ114の位置に媒体が存在する場合、発光器により照射された光はその媒体により遮光されるため、媒体センサ114の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで第2媒体信号の信号値は変化する。なお、発光器及び受光器は、搬送路を挟んで相互に対向する位置に設けられ、反射部材は省略されてもよい。
【0026】
超音波発信器115a及び超音波受信器115bは、給送ローラ112及びブレーキローラ113に対して媒体搬送方向A1の下流側且つ第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117に対して媒体搬送方向A1の上流側に配置される。超音波発信器115a及び超音波受信器115bは、媒体の搬送路の近傍に、搬送路を挟んで対向して配置される。超音波発信器115aは、超音波を出力可能である。一方、超音波受信器115bは、超音波発信器115aにより発信され、媒体を通過した超音波を受信し、受信した超音波に応じた電気信号である超音波信号を生成して出力する。以下では、超音波発信器115a及び超音波受信器115bを総じて超音波センサ115と称する場合がある。超音波センサ115は、媒体を透過した超音波の透過強度を検出する。超音波センサ115は、重なりセンサの一例である。
【0027】
第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117は、給送ローラ112及びブレーキローラ113に対して媒体搬送方向A1の下流側且つ撮像装置118に対して媒体搬送方向A1の上流側に配置される。
【0028】
第1撮像装置118aは、第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117に対して媒体搬送方向A1の下流側に配置される。第1撮像装置118aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を有する等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)によるラインセンサを有する。ここでは、主走査方向は、媒体の搬送方向と直交する方向である。ラインセンサは、媒体を撮像する撮像センサの一例である。また、第1撮像装置118aは、搬送される媒体に向けて光を照射する光源と、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置118aは、一定間隔毎に、搬送されている媒体の表面のラインセンサと対向する領域を撮像してライン画像を順次生成し、出力する。即ち、ライン画像の垂直方向(副走査方向)の画素数は1であり、水平方向(主走査方向)の画素数は複数である。
【0029】
同様に、第2撮像装置118bは、第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117に対して媒体搬送方向A1の下流側に配置される。第2撮像装置118bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を有する等倍光学系タイプのCISによるラインセンサを有する。ラインセンサは、媒体を撮像する撮像センサの一例である。また、第2撮像装置118bは、搬送される媒体に向けて光を照射する光源と、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置118bは、一定間隔毎に、搬送されている媒体の裏面のラインセンサと対向する領域を撮像してライン画像を順次生成し、出力する。
【0030】
なお、媒体搬送装置100は、第1撮像装置118a及び第2撮像装置118bを一方だけ配置し、媒体の片面だけを読み取ってもよい。また、CMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサの代わりに、CCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサが利用されてもよい。また、CMOS又はCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサが利用されてもよい。
【0031】
載置台103に載置された媒体は、給送ローラ112が
図2の矢印A4の方向に回転することによって、下側ガイド107aと上側ガイド107bの間を媒体搬送方向A1に向かって搬送される。ブレーキローラ113は、媒体搬送時、矢印A5の方向に回転する。給送ローラ112及びブレーキローラ113の働きにより、載置台103に複数の媒体が載置されている場合、載置台103に載置されている媒体のうち給送ローラ112と接触している媒体のみが分離される。これにより、分離された媒体以外の媒体の搬送が制限されるように動作する(重送の防止)。給送ローラ112及びブレーキローラ113は、載置台103に載置された媒体を分離して給送する給送部の一例である。
【0032】
媒体は、下側ガイド107aと上側ガイド107bによりガイドされながら、第1搬送ローラ116と第2搬送ローラ117の間に送り込まれる。媒体は、第1搬送ローラ116及び第2搬送ローラ117がそれぞれ矢印A6及び矢印A7の方向に回転することによって、第1撮像装置118aと第2撮像装置118bの間に送り込まれる。撮像装置118により読み取られた媒体は、第3搬送ローラ119及び第4搬送ローラ120がそれぞれ矢印A8及び矢印A9の方向に回転することによって排出台104上に排出される。
【0033】
図3は、超音波センサ115等の配置について説明するための模式図である。
【0034】
図3は、上側筐体102を開いた状態で、下側ガイド107aを上方から見た模式図である。
図3に示すように、超音波センサ115は、媒体が搬送される搬送方向と直交する幅方向A2に沿って複数配置されている。
図3に示す例では、20の超音波センサ115が、幅方向A2の両端部間にわたって、等間隔に並べて配置されている。これにより、媒体搬送装置100は、幅方向A2の複数の位置において媒体の重なりを検出することができる。なお、超音波センサ115の数は、20に限定されず、1~19又は21以上でもよい。
【0035】
媒体センサ114は、媒体搬送方向A1において、超音波受信器115bと給送ローラ112との間に配置される。
【0036】
図4は、媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
【0037】
媒体搬送装置100は、前述した構成に加えて、モータ131、インタフェース装置132、記憶装置140及び処理回路150等をさらに有する。
【0038】
モータ131は、1つ又は複数のモータを含み、処理回路150からの制御信号によって、給送ローラ112、ブレーキローラ113、第1~第4搬送ローラ116、117、119及び120を回転させて媒体を搬送させる。
【0039】
インタフェース装置132は、例えばUSB等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、不図示の情報処理装置と電気的に接続して、ライン画像に基づいて生成された媒体画像及び各種の情報を送受信する。また、インタフェース装置132の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース装置とを有する通信部が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LAN(Local Area Network)である。
【0040】
記憶装置140は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置140には、媒体搬送装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能で非一時的な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置140にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。
【0041】
記憶装置140は、データとして、媒体搬送路における複数の超音波センサ115の配置位置等を記憶する。
【0042】
処理回路150は、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づいて動作する。処理回路150は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。処理回路150として、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等が用いられてもよい。
【0043】
処理回路150は、操作装置105、表示装置106、接触センサ111、媒体センサ114、超音波センサ115、撮像装置118、モータ131、インタフェース装置132及び記憶装置140等と接続され、これらの各部を制御する。処理回路150は、モータ131の駆動制御、撮像装置118の撮像制御等を行い、媒体画像を生成し、インタフェース装置132を介して情報処理装置に送信する。また、処理回路150は、超音波センサ115が出力する超音波信号に基づいて、重送が発生したか否かを判定し、その判定結果に基づいて、重送による異常処理を実行する。
【0044】
図5は、記憶装置140及び処理回路150の概略構成を示す図である。
【0045】
図5に示すように、記憶装置140には、制御プログラム141、画像生成プログラム142、重なり検出プログラム143、算出プログラム144、重送判定プログラム145等が記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。処理回路150は、記憶装置140に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作する。これにより、処理回路150は、制御部151、画像生成部152、重なり検出部153、算出部154及び重送判定部155として機能する。
【0046】
図6は、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
【0047】
以下、
図6に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置140に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路150により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。
図6に示す動作のフローは、定期的に実行される。なお、媒体搬送装置100は、媒体を給送する給送モードとして、複数の媒体を分離して給送する分離モードと、媒体を分離せずに給送する非分離モードとを有している。
図6に示す動作のフローは、給送モードが分離モードに設定されている場合に実行される。
【0048】
最初に、制御部151は、利用者により操作装置105を用いて媒体の読み取りの指示が入力されて、媒体の読み取りを指示する操作信号を操作装置105から受信するまで待機する(ステップS101)。
【0049】
次に、制御部151は、接触センサ111から第1媒体信号を取得し、取得した第1媒体信号に基づいて、載置台103に媒体が載置されているか否かを判定する(ステップS102)。
【0050】
載置台103に媒体が載置されていない場合、制御部151は、ステップS101へ処理を戻し、操作装置105から新たに操作信号を受信するまで待機する。
【0051】
一方、載置台103に媒体が載置されている場合、制御部151は、モータ131を駆動し、給送ローラ112、ブレーキローラ113、第1~第4搬送ローラ116、117、119、120を回転させて、媒体を搬送させる(ステップS103)。制御部151は、分離モードでは、給送ローラ112及び第1~第4搬送ローラ116、117、119、120をそれぞれ矢印A4、A6、A7、A8、A9の方向(媒体給送方向又は媒体搬送方向)に回転させるようにモータ131を駆動する。また、制御部151は、ブレーキローラ113を矢印A5の方向(媒体給送方向の反対方向)に回転させるようにモータ131を駆動する。
【0052】
次に、重なり検出部153は、各超音波センサ115から超音波信号を取得して超音波信号の信号値を記憶装置140に記憶する(ステップS104)。重なり検出部153は、モータ131を予め設定された所定量だけ駆動するたびに、各超音波センサ115から超音波信号を取得する。媒体搬送装置100は、所定量を小さい値に設定することにより、重送の検出精度を向上させることが可能となり、所定量を大きい値に設定することにより、媒体読取処理の処理負荷を低減させることが可能となる。重なり検出部153は、媒体の給送を開始してから現在までにモータ131を駆動させた駆動量と、記憶装置140に記憶された各超音波センサ115の配置位置とに基づいて、搬送中の媒体内で現在各超音波センサ115と対向している位置を特定する。媒体搬送方向A1の位置は、モータ131の搬送量と各超音波センサ115の媒体搬送方向A1の配置位置とから算出され、幅方向A2の位置は、各超音波信号を出力した各超音波センサ115の幅方向A2の位置から算出される。重なり検出部153は、超音波信号の信号値を、特定した媒体内の位置と関連付けて記憶装置140に記憶する。なお、重なり検出部153は、原稿の先端が媒体センサ114を通過してから現在までにモータ131を駆動させた駆動量と、記憶装置140に記憶された各超音波センサ115の配置位置とに基づいて、搬送中の媒体内で現在各超音波センサ115と対向している位置を特定してもよい
【0053】
次に、制御部151は、媒体全体が撮像装置118の撮像位置を通過したか否かを判定する(ステップS105)。制御部151は、例えば、媒体センサ114から受信する第2媒体信号に基づいて媒体の後端が媒体センサ114の位置を通過したか否かを判定する。制御部151は、媒体センサ114から定期的に第2媒体信号を取得し、第2媒体信号の信号値が、媒体が存在することを示す値から媒体が存在しないことを示す値に変化したときに、媒体の後端が媒体センサ114の位置を通過したと判定する。制御部151は、媒体の後端が媒体センサ114の位置を通過してから所定時間が経過した時に媒体の後端が撮像装置118の撮像位置を通過し、媒体全体が撮像されたと判定する。なお、制御部151は、媒体の給送を開始してから所定時間が経過した時に、搬送された媒体の全体が撮像されたと判定してもよい。まだ媒体全体が撮像位置を通過していない場合(ステップS105-No)、制御部151は、処理をステップS104へ戻す。
【0054】
一方、媒体全体が撮像位置を通過した場合(ステップS105-Yes)、重なり検出部153は、記憶装置140から各超音波信号の信号値を読み出し、読み出した超音波信号の信号値に基づいて、媒体の重なり検出箇所を検出する(ステップS106)。重なり検出箇所は、媒体上で重なりが発生していると見なせる箇所である。
【0055】
重なり検出部153は、超音波センサ115の検出出力に基づいて、搬送部によって搬送される媒体について重なり検出箇所を検出する。重なり検出部153は、超音波センサ115が検出した透過強度と重なり閾値とを比較して重なり検出箇所を検出する。重なり検出部153は、信号値が重なり閾値未満である超音波信号と関連付けて記憶された媒体内の各位置を重なり検出箇所として検出する。一方、重なり検出部153は、信号値が重なり閾値以上である超音波信号と関連付けて記憶された媒体内の各位置については重なりが発生していないと判定する。重なり閾値は、一枚の媒体が搬送されているときの超音波信号の信号値と、媒体の重なりが発生しているときの超音波信号の信号値との間の値に設定される。これにより、重なり検出部153は、媒体内で重なりが発生している位置を精度良く特定することができる。
【0056】
また、重なり検出部153は、モータ131を所定量だけ駆動するたびに取得した各超音波信号に基づいて重なり検出箇所を検出している。即ち、重なり検出部153は、所定の周期で、重なり検出箇所が存在するか否かを検出する。これにより、重なり検出部153は、媒体読取処理の処理負荷の増大を抑制しつつ、媒体の重送を精度良く検出することができる。
【0057】
図7(A)は、超音波信号の信号値と媒体上の位置との関係を表すグラフを示す。
【0058】
図7(A)の縦軸は、超音波信号の信号値を示し、横軸は、媒体の搬送方向A1における位置を示す。
図7(A)に示すグラフは、薄紙が重送して搬送された場合に出力された超音波信号の信号値を示す。
図7(A)に示すように、薄紙内の繊維のむらにより、薄紙を透過した超音波の強度は、ばらつきを有する。また、PPC用紙等の通常の用紙が重送して搬送される場合も、二つの用紙の間の距離(空気の厚さ)のばらつきにより、二つの用紙を透過した超音波の強度は、ばらつきを有する。そのため、媒体内で重なり検出箇所として検出される領域と、重なり検出箇所として検出されない領域とが混在している。
【0059】
次に、算出部154は、重なり検出部153の検出結果に基づいて、重なり検出長さを算出する(ステップS107)。
【0060】
算出部154は、媒体の搬送方向A1に沿って、重なり検出長さを算出する。即ち、算出部154は、幅方向A2において各超音波センサ115に対向する媒体内の位置毎に、媒体搬送方向A1において重なり検出箇所が連続している長さを重なり検出長さとして算出する。但し、算出部154は、媒体搬送方向A1において、二つの重なり検出箇所の間に、重なりが発生していないと判定された位置が存在する場合でも、その二つの重なり検出箇所の間の距離が基準距離以下である場合、その二つの重なり検出箇所は連続しているとみなす。即ち、算出部154は、一つの重なり検出箇所と他の重なり検出箇所との間の距離が基準距離以内の場合、その一つの重なり検出箇所と他の重なり検出箇所とは連続していると判断する。基準距離は、媒体搬送装置100がサポートする媒体(薄紙)の厚さ又は硬さ等に基づいて適宜設定される。基準距離は、例えば、二枚の薄紙を重ねて搬送させて重なり検出箇所を検出する事前の実験において、連続して媒体の重なりが検出されなかった領域の最大長さに設定される。
【0061】
図7(B)は、重なり検出長さについて説明するためのグラフである。
【0062】
図7(B)は、
図7(A)に示したグラフと同様のグラフである。
図7(B)に示す例では、第1領域W1、第2領域W2、第3領域W3及び第4領域W4において、重なり検出箇所が連続している。第1領域W1と第2領域W2の間、第2領域W2と第3領域W3の間、及び、第3領域W3と第4領域W4の間には、重なりが発生していないと判定された領域(それぞれ20mm、6mm、4mmの長さを有する領域)が存在する。例えば、基準距離Lthが25mmに設定されている場合、第1領域W1、第2領域W2、第3領域W3及び第4領域W4は、連続しているとみなされ、第1領域W1の先端から第4領域W4の後端までの領域W5の長さ(61mm)が重なり検出長さとして算出される。
【0063】
次に、重送判定部155は、算出部154により算出された重なり検出長さが長さ閾値以上であるか否かを判定する(ステップS108)。長さ閾値は、例えば、一般的な履歴書に貼付される写真又は切手等の貼付物のサイズと、媒体搬送装置100がサポートする最小サイズの媒体のサイズの間の値(例えば20mm)に設定される。これにより、重送判定部155は、貼付物が貼付された媒体が搬送されているか媒体の重送が発生しているかを適切に判別することができる。
【0064】
算出部154により算出された重なり検出長さのうちの少なくとも一つが長さ閾値以上である場合(ステップS108-Yes)、重送判定部155は、媒体の重送が発生したと判定する(ステップS109)。
【0065】
図7(A)及び
図7(B)に示す例では、媒体搬送方向A1において重なり検出箇所が実際に連続している最大長さは領域W3の12mmである。したがって、仮に、媒体搬送方向A1における長さ閾値が20mmである場合、間隔が基準距離以下である重なり検出箇所が連続しているとみなさなければ、媒体の重送が発生していないと判定される。
【0066】
一方、算出部154は、第1領域W1、第2領域W2、第3領域W3及び第4領域W4が連続していると判断し、第1領域W1の先端から第4領域W4の後端までの領域W5の長さ(61mm)を重なり検出長さとして算出する。したがって、重なり検出長さは長さ閾値以上となり、媒体の重送が発生していると判定される。このように、媒体搬送装置100は、位置毎に透過する超音波の強度にばらつきが発生する媒体の重送が発生した場合でも、媒体の重送が発生したと正しく判定することができる。
【0067】
媒体の重送が発生したと判定された場合、制御部151は、重送による異常処理として、モータ131を停止して、媒体の給送及び搬送を停止する(ステップS110)。制御部151は、媒体の重送が発生している場合に、媒体の給送及び搬送を停止することにより、媒体が損傷することを抑制できる。また、制御部151は、重送による異常処理として、重送が発生した旨を表示装置106に表示、又は、インタフェース装置132を介して情報処理装置に送信し、利用者に警告を通知する。このように、制御部151は、重送判定部155の判定結果に基づいて、重送による異常処理を実行する。
【0068】
次に、制御部151は、給送ローラ112及び第1~第4搬送ローラ116、117、119、120をそれぞれ矢印A4、A6、A7、A8、A9(媒体給送方向又は媒体搬送方向)の反対方向に回転させるようにモータ131を駆動する。また、制御部151は、ブレーキローラ113を矢印A5の方向(媒体給送方向の反対方向)に回転させるようにモータ131を駆動する。これにより、制御部151は、媒体を逆送させて、載置台103に一旦戻す(ステップS111)。
【0069】
次に、制御部151は、給送モードを分離モードから非分離モードに変更する(ステップS112)。制御部151は、非分離モードでは、給送ローラ112及び第1~第4搬送ローラ116、117、119、120をそれぞれ矢印A4、A6、A7、A8、A9の方向(媒体給送方向又は媒体搬送方向)に回転させる。また、制御部151は、非分離モードでは、モータ131からブレーキローラ113への駆動力を遮断することにより、給送する媒体の分離機能をOFFにする。なお、制御部151は、ブレーキローラ113を媒体給送方向(矢印A5の反対方向)に回転させることにより、又は、ブレーキローラ113による分離力を低減させることにより、給送する媒体の分離機能をOFFにしてもよい。
【0070】
次に、制御部151は、モータ131を再駆動し、給送ローラ112及び第1~第4搬送ローラ116、117、119、120を媒体給送方向又は媒体搬送方向に再回転させて、媒体を再給送及び再搬送させる(ステップS113)。次に、制御部151は、処理をステップS104へ移行させる。このとき、ブレーキローラ113は、給送ローラ112に従動し、又は、モータ131により媒体給送方向に回転し、媒体を分離しない。
【0071】
このように、制御部151は、異常処理として、媒体の給送を停止した後に、その媒体を載置台103に一旦戻し、分離せずに再給送するように給送ローラ112及びブレーキローラ113を制御する。これにより、利用者は、媒体の分離機能をOFFにして媒体を再給送する必要がなくなり、制御部151は、利用者の利便性を向上させることが可能となる。なお、ステップS108及びS110の処理が省略され、制御部151は、媒体の給送及び搬送を停止したまま、給送モードの変更のみを実行してもよい。その場合、利用者は、給送モードを変更する必要がなくなり、制御部151は、利用者の利便性を向上させることが可能となる。
【0072】
一方、算出部154により算出された全ての重なり検出長さが長さ閾値未満である場合(ステップS108-No)、重送判定部155は、媒体の重送が発生していないと判定する(ステップS114)。
【0073】
このように、重送判定部155は、算出部154により算出された重なり検出長さに基づいて、媒体の重送が発生したか否かを判定する。特に、重送判定部155は、算出部154により算出された各重なり検出長さの最大値が長さ閾値以上である場合、媒体の重送が発生したと判定し、その最大値が長さ閾値未満である場合、媒体の重送が発生していないと判定する。なお、重送判定部155は、各重なり検出長さの最大値以外の統計値に基づいて、媒体の重送が発生したか否かを判定してもよい。最大値以外の統計値は、例えば平均値、最小値又は中央値である。重送判定部155は、各重なり検出長さの統計値が長さ閾値以上である場合、媒体の重送が発生したと判定し、その統計値が長さ閾値未満である場合、媒体の重送が発生していないと判定してもよい。即ち、重送判定部155は、重なり検出長さが複数算出された場合、複数の重なり検出長さの平均値、最大値、最小値、又は、中央値に基づいて重送が発生したか否かを判定する。これにより、重送判定部155は、重送が発生したか否かをより高精度に判定することができる。
【0074】
次に、画像生成部152は、記憶装置140から媒体搬送中に生成された各ライン画像を読み出し、取得した全てのライン画像を合成して媒体画像を生成し、インタフェース装置132を介して情報処理装置へ送信する(ステップS115)。
【0075】
次に、制御部151は、接触センサ111から取得する第1媒体信号に基づいて載置台103に媒体が残っているか否かを判定する(ステップS116)。載置台103に媒体が残っている場合、制御部151は、ステップS104へ処理を戻し、ステップS104~S116の処理を繰り返す。
【0076】
一方、載置台103に媒体が残っていない場合、制御部151は、モータ131を停止して、媒体の搬送を停止し(ステップS117)、一連のステップを終了する。
【0077】
なお、ステップS111~S113の処理が省略され、制御部151は、媒体の給送及び搬送を停止した場合、媒体の再給送を行わずに、一連のステップを終了してもよい。
【0078】
また、処理回路150は、媒体全体が撮像装置118の撮像位置を通過した後でなく、所定期間毎(モータ131が所定量だけ駆動されるたび)に、ステップS106~S113の処理を実行してもよい。その場合、重送判定部155は、媒体全体が撮像装置118の撮像位置を通過するまで、重なり長さが長さ閾値未満である場合に、媒体の重送が発生していないと判定する。
【0079】
また、ステップS107において、算出部154は、媒体の搬送方向と直交する幅方向A2に沿って、又は、媒体の搬送方向A1及び媒体の搬送方向と直交する幅方向A2の両方向に沿って、重なり検出長さを算出してもよい。
【0080】
幅方向A2に沿って重なり検出長さを算出する場合、算出部154は、媒体搬送方向A1において超音波信号を取得したタイミングで各超音波センサ115に対向していた媒体内の位置毎に、幅方向A2において重なり検出箇所が連続している長さを重なり検出長さとして算出する。但し、算出部154は、幅方向A2において、二つの重なり検出箇所の間に、重なりが発生していないと判定された位置が存在する場合でも、その二つの重なり検出箇所の間の距離が基準距離以下である場合、その二つの重なり検出箇所は連続しているとみなす。即ち、算出部154は、一つの重なり検出箇所と他の重なり検出箇所との間の距離が基準距離以内の場合、その一つの重なり検出箇所と他の重なり検出箇所とは連続していると判断する。なお、幅方向A2に沿った重なり検出長さを算出する際の基準距離は、媒体搬送方向A1に沿った重なり検出長さを算出する際の基準距離と異なる値に設定されてもよい。
【0081】
この場合、ステップS108において、重送判定部155は、幅方向A2に沿った重なり検出長さが長さ閾値以上であるか否かを判定することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定する。なお、幅方向A2に沿った重なり検出長さと比較する長さ閾値は、媒体搬送方向A1に沿った重なり検出長さと比較する長さ閾値と異なる値に設定されてもよい。
【0082】
または、重送判定部155は、媒体搬送方向A1に沿った重なり検出長さ及び幅方向A2に沿った重なり検出長さが長さ閾値以上であるか否かを判定することにより、媒体の重送が発生したか否かを判定する。その場合、重送判定部155は、媒体搬送方向A1に沿った重なり検出長さ及び幅方向A2に沿った重なり検出長さの何れかが長さ閾値以上である場合、媒体の重送が発生したと判定し、その両方が長さ閾値未満である場合、媒体の重送が発生していないと判定する。また、重送判定部155は、媒体搬送方向A1に沿った重なり検出長さ及び幅方向A2に沿った重なり検出長さの両方が長さ閾値以上である場合、媒体の重送が発生したと判定し、その何れかが長さ閾値未満である場合、媒体の重送が発生していないと判定してもよい。媒体搬送方向A1及び幅方向A2の両方向に沿った重なり検出長さを用いることにより、重送判定部155は、重送が発生したか否かをより高精度に判定することができる。
【0083】
また、この場合も、重送判定部155は、各重なり検出長さの平均値、最大値、最小値、又は、中央値等の統計値が長さ閾値以上であるか否かに基づいて、媒体の重送が発生したか否かを判定してもよい。
【0084】
図8(A)は、媒体搬送方向A1に沿った重なり検出長さについて説明するための模式図であり、
図8(B)は、幅方向A2に沿った重なり検出長さについて説明するための模式図である。
図8(C)は、超音波信号が取得された時に超音波センサ115と対向していた媒体内の各領域の間の距離について説明するための模式図である。
【0085】
図8(A)及び
図8(B)は、媒体搬送装置100によって搬送された媒体300を示している。媒体300内で超音波信号が取得された時に超音波センサ115と対向していた領域は丸で表されており、そのうち、重なり検出箇所は黒丸で表され、重なりが発生していないと判定された領域は白丸で表されている。
図8(A)及び
図8(B)に示す例では、
図8(C)に示すように、超音波センサ115は幅方向A2において間隔ΔX毎に配置され、超音波信号は媒体搬送方向A1において間隔ΔY毎に取得されている。
【0086】
図8(A)及び
図8(B)に示す例では、媒体搬送方向A1において相互に隣接する重なり検出箇所の最大連続数は4であり、その長さは3ΔYである。また、幅方向A2において相互に隣接する重なり検出箇所の最大連続数は4であり、その長さは3ΔXである。したがって、仮に、媒体搬送方向A1における長さ閾値が4ΔYであり、幅方向A2における長さ閾値が4ΔXである場合、間隔が基準距離以下である重なり検出箇所が連続しているとみなさなければ、媒体の重送が発生していないと判定される。
【0087】
一方、媒体搬送方向A1における基準距離が3ΔYであり、幅方向A2における基準距離が3ΔXである場合、媒体搬送方向A1における重なり検出長さは11ΔYとなり、幅方向A2における重なり検出長さは6ΔXとなる。したがって、媒体の重送が発生していると判定される。このように、媒体搬送装置100は、位置毎に透過する超音波の強度にばらつきが発生する媒体の重送が発生した場合でも、媒体の重送が発生したと正しく判定することができる。
【0088】
以上詳述したように、本実施形態の媒体搬送装置100は、重なり検出箇所が連続している重なり検出長さに基づいて重送が発生したか否かを判定する。これにより、媒体搬送装置100は、媒体の重送が発生したか否かをより精度良く判定することが可能となった。
【0089】
一般に、媒体搬送装置は、小型の貼付物が貼付された媒体が搬送された場合に、重送が発生したと誤って判定する可能性がある。媒体搬送装置100は、媒体内で重なりが発生している領域の長さに基づいて媒体の重送が発生しているか否かを判定することにより、小型の貼付物が貼付された媒体が搬送された場合に、重送が発生したと誤って判定することを抑制できる。さらに、媒体搬送装置100は、複数の重なり検出箇所の間の距離が所定距離以内の場合、その複数の重なり検出箇所は連続していると判断することにより、位置毎に透過する超音波の強度にばらつきが発生する媒体の重送を高精度に検出できる。特に、媒体搬送装置100は、単純な演算で、媒体内で重なりが発生している領域の長さを算出できるので、媒体読取処理の処理負荷及びメモリ使用量を軽減することができる。
【0090】
上述した実施形態では、重なり検出部として、超音波の透過情報を出力する超音波センサが用いられていたが、重なり検出部として、媒体の厚さ情報を検出する厚さセンサが用いられてもよい。厚さセンサは、各超音波センサ115が配置される位置に配置される。厚さセンサは、媒体の搬送路の近傍に、搬送路を挟んで対向して配置された発光器及び受光器を含む。発光器は、受光器に向けて光(赤外光又は可視光)を照射する。一方、受光器は、発光器により照射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である厚さ信号を生成して出力する。厚さセンサの位置に媒体が存在する場合、発光器により照射された光はその媒体により減衰し、媒体の厚さが大きい程、その減衰量は大きくなる。例えば、厚さセンサは、媒体の厚さが大きい程、信号値が大きくなるように厚さ信号を生成する。
【0091】
なお、厚さセンサとして、反射光センサ、圧力センサ又は機械式センサが用いられてもよい。反射光センサは、媒体の搬送路に対して一方の側に設けられた発光器及び受光器のペアと、他方の側に設けられた発光器及び受光器のペアとを含む。反射光センサは、一方のペアが媒体の一方の面に光を照射してから反射光を受光するまでの時間と、他方のペアが媒体の他方の面に光を照射してから反射光を受光するまでの時間とから、各ペアと媒体の各面までの距離を検出する。反射光センサは、二つのペアの間の距離から、検出した各距離を減算した減算値を厚さ情報として示す厚さ信号を生成する。圧力センサは、媒体の厚さに応じて変化する圧力を検出し、検出した圧力を厚さ情報として示す厚さ信号を生成する。機械式センサは、媒体に接するローラの移動量を検出し、検出した移動量を厚さ情報として示す厚さ信号を生成する。
【0092】
重なり検出部として厚さセンサが用いられる場合、
図6のステップS104において、重なり検出部153は、超音波信号の代わりに、各厚さセンサから厚さ信号を取得し、媒体内の位置と関連付けて記憶装置140に記憶する。また、ステップS106において、重なり検出部153は、記憶装置140から各厚さ信号の信号値を読み出し、信号値が重なり閾値以上である厚さ信号と関連付けて記憶された媒体内の各位置を重なり検出箇所として検出する。
【0093】
また、上述した実施形態では、給送ローラ112がブレーキローラ113の下側に配置されて載置台103に載置された媒体を下側から順に給送していたが、載置台に載置された媒体を上側から順に給送するように、給送ローラがブレーキローラの上側に配置されてもよい。
【0094】
図9は、他の処理回路250の概略構成を示す図である。処理回路250は、媒体搬送装置100の処理回路150の代わりに使用され、処理回路150の代わりに、媒体読取処理、重なり検出処理、重なり検出長算出処理、重送判定処理及び制御処理を実行する。処理回路250は、制御回路251、画像生成回路252、重なり検出回路253、算出回路254、重送判定回路255等を有する。なお、これらの各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。
【0095】
制御回路251は、制御部の一例であり、制御部151と同様の機能を有する。制御回路251は、操作装置105から操作信号を、接触センサ111から第1媒体信号を、媒体センサ114から第2媒体信号をそれぞれ受信し、記憶装置140から媒体画像を読み出す。制御回路251は、受信又は読み出した各情報に応じて媒体の給送及び搬送を制御するように、モータ131に制御信号を出力する。また、制御回路251は、記憶装置140から重送の判定結果を読み出し、読み出した判定結果に基づいて、重送による異常処理を実行する。
【0096】
画像生成回路252は、画像生成部の一例であり、画像生成部152と同様の機能を有する。画像生成回路252は、撮像装置118からライン画像を受信して記憶装置140に記憶するとともに、媒体画像を生成し、インタフェース装置132を介して情報処理装置へ送信する。
【0097】
重なり検出回路253は、重なり検出部の一例であり、重なり検出部153と同様の機能を有する。重なり検出回路253は、超音波センサ115からの超音波信号に基づいて重なり検出箇所を検出し、検出結果を記憶装置140に記憶する。
【0098】
算出回路254は、算出部の一例であり、算出部154と同様の機能を有する。算出回路254は、記憶装置140から重なり検出箇所の検出結果を読み出し、読み出した検出結果に基づいて重なり検出長さを算出し、記憶装置140に記憶する。
【0099】
重送判定回路255は、重送判定部の一例であり、重送判定部155と同様の機能を有する。重送判定回路255は、記憶装置140から重なり検出長さを読み出し、重なり検出長さに基づいて、重送が発生したか否かを判定し、判定結果を記憶装置140に記憶する。
【0100】
以上詳述したように、媒体搬送装置は、処理回路250を用いる場合においても、媒体の重送が発生したか否かをより精度良く判定することが可能となった。
【符号の説明】
【0101】
100 媒体搬送装置、103 載置台、111 接触センサ、112 給送ローラ、113 ブレーキローラ、114 媒体センサ、115 超音波センサ、116 第1搬送ローラ、117 第2搬送ローラ、118 撮像装置、151 制御部、152 画像生成部、153 重なり検出部、154 算出部、155 重送判定部