(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】バレル研磨装置及びバレル研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 31/02 20060101AFI20241107BHJP
B24B 31/16 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B24B31/02 Z
B24B31/16
(21)【出願番号】P 2021043657
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】矢ヶ崎 徹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健一
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-164058(JP,U)
【文献】特開平07-132455(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103769990(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 31/02
B24B 31/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークとメディアとを投入した状態で回転軸を中心に回転することで、該ワークのバレル研磨を行うバレル槽を備えるバレル研磨装置において、
前記バレル槽に設けられ、前記ワークを前記バレル槽に対して出し入れ可能な開口と、
前記ワークよりも小さく且つ前記メディアよりも大きな網目を有する網と、
前記バレル研磨後、前記バレル槽の内面と前記回転軸との間に前記網を設置する網設置部と、
を備え
、
前記バレル槽は、前記回転軸に垂直な断面が多角形である筒状部材であり、
前記開口は、前記多角形の各辺のうち、1つの辺に設けられ、
前記網設置部は、前記バレル槽の断面視で、前記多角形の各頂点のうち、1つの頂点で前記網の一端部を固定した状態で、前記網の他端部が前記回転軸を指向するように、前記1つの頂点と前記回転軸との間に前記網を設置する、バレル研磨装置。
【請求項2】
請求項
1記載のバレル研磨装置において、
2つの前記網を備え、
前記網設置部は、前記バレル研磨後、前記多角形の各頂点のうち、2つの頂点に2つの前記網の一端部を固定することで、2つの前記網を向かい合わせるように設置する共に、2つの前記網で前記バレル槽を2つに分割する、バレル研磨装置。
【請求項3】
請求項
2記載のバレル研磨装置において、
前記網設置部は、互いに向かい合う2つの前記頂点に2つの前記網の一端部を固定すると共に、2つの前記網の他端部が前記回転軸を挟んで互いに向かい合うように、2つの前記網を設置する、バレル研磨装置。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載のバレル研磨装置において、
前記開口に設けられ、前記バレル槽に対して前記ワークを出し入れする際に開く蓋部を備える、バレル研磨装置。
【請求項5】
請求項
4記載のバレル研磨装置において、
前記バレル槽には、前記バレル槽の内面と前記回転軸との間に設置される前記網を挟んだ状態で2つの前記開口が設けられ、
2つの前記開口は、2つの前記蓋部で閉塞される、バレル研磨装置。
【請求項6】
ワークとメディアとをバレル槽に投入した状態で回転軸を中心に該バレル槽を回転することにより、前記ワークのバレル研磨を行うバレル研磨方法において、
前記回転軸を中心に前記バレル槽を回転させて、前記バレル研磨を行う工程と、
前記バレル研磨後、前記バレル槽の内面と前記回転軸との間に、前記ワークよりも小さく且つ前記メディアよりも大きな網目を有する網を設置する工程と、
前記回転軸を中心に前記バレル槽を回転させ、前記網目に前記メディアを通すことで、前記ワークと前記メディアとを分離する工程と、
分離した前記ワークを前記バレル槽に設けられた開口から取り出す工程と、
を備え
、
前記バレル槽は、前記回転軸に垂直な断面が多角形である筒状部材であり、
前記開口は、前記多角形の各辺のうち、1つの辺に設けられ、
前記網を設置する工程では、前記バレル槽の断面視で、前記多角形の各頂点のうち、1つの頂点で前記網の一端部を固定した状態で、前記網の他端部が前記回転軸を指向するように、前記1つの頂点と前記回転軸との間に前記網を設置する、バレル研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークのバレル研磨を行うバレル研磨装置及びバレル研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バレル加工のみ行うバレル研磨機の外部に選別装置及び減圧装置を設けることが開示されている。バレル研磨機は、ワークと研磨石とを投入した状態でワークを研磨するバレル槽を備える。選別装置は、バレル研磨後、バレル槽から排出されたワーク及び研磨石を受け入れ、ワークと研磨石とを選別する。減圧装置は、バレル槽内の空気を吸引して減圧することで、選別された研磨石を選別装置からバレル槽内に移送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、バレル槽からワーク及び研磨石(メディア)を共に排出し、選別装置で選別する。そのため、バレル研磨機(バレル研磨装置)とは別に外部の選別装置が必要となる。また、バレル槽から共に排出されたワーク及び研磨石は、選別装置の振動かごに投入される。選別装置は、振動かごを振動させることでワーク及び研磨石を一緒に振動させ、該振動かごの孔から研磨石を落下させることにより、ワークと研磨石とを仕分ける。その際、ワークが研磨石によって傷を付けられる可能性がある。
【0005】
本発明は、このような課題を考慮してなされたものであり、外部の選別装置を用いることなくワークとメディアとを分離可能にすると共に、バレル槽からワークを取り出す際、及び、ワークとメディアとを選別する際に、ワークがメディアによって傷を付けられることを防止することができるバレル研磨装置及びバレル研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、ワークとメディアとを投入した状態で回転軸を中心に回転することで、該ワークのバレル研磨を行うバレル槽を備えるバレル研磨装置において、前記バレル槽に設けられ、前記ワークを前記バレル槽に対して出し入れ可能な開口と、前記ワークよりも小さく且つ前記メディアよりも大きな網目を有する網と、前記バレル研磨後、前記バレル槽の内面と前記回転軸との間に前記網を設置する網設置部とを備える。
【0007】
本発明の第2の態様は、ワークとメディアとをバレル槽に投入した状態で回転軸を中心に該バレル槽を回転することにより、前記ワークのバレル研磨を行うバレル研磨方法において、前記回転軸を中心に前記バレル槽を回転させて、前記バレル研磨を行う工程と、前記バレル研磨後、前記バレル槽の内面と前記回転軸との間に、前記ワークよりも小さく且つ前記メディアよりも大きな網目を有する網を設置する工程と、前記回転軸を中心に前記バレル槽を回転させ、前記網目に前記メディアを通すことで、前記ワークと前記メディアとを分離する工程と、分離した前記ワークを前記バレル槽に設けられた開口から取り出す工程とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バレル研磨後、バレル槽内に設置した網によってワーク及びメディアをバレル槽内で分離する。これにより、ワーク及びメディアを選別する外部の選別装置が不要となる。また、網によってワークとメディアとを分離した後に、分離したワークをバレル槽から取り出す。これにより、ワークとメディアとが不必要に接触することがないので、ワークがメディアによって傷を付けられることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、比較例のバレル加工を示す断面図であり、
図1Bは、比較例のバレル加工の終了時の状態を示す断面図である。
【
図2】
図2Aは、比較例の媒材(水)の排出を示す断面図であり、
図2Bは、比較例のワークの取り出しを示す断面図である。
【
図3】
図3Aは、第1実施形態のバレル加工を示す断面図であり、
図3Bは、第1実施形態のバレル加工の終了時の状態(網の設置)を示す断面図である。
【
図4】
図4Aは、第1実施形態でのワークとメディア(研磨石)との分離を示す断面図であり、
図4Bは、第1実施形態のワークの取り出し及び媒材(水)の排出を示す断面図である。
【
図5】
図5Aは、第2実施形態のバレル加工の終了時の状態(網の設置)を示す断面図であり、
図5Bは、第2実施形態でのワークとメディア(研磨石)との分離を示す断面図である。
【
図6】第2実施形態のワークの取り出し及び媒材(水)の排出を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るバレル研磨装置及びバレル研磨方法について好適な実施形態を例示し、添付の図面を参照しながら説明する。
【0011】
[1.比較例の説明]
本実施形態の説明に先立ち、比較例のバレル研磨装置10について、
図1A~
図2Bを参照しながら説明する。
【0012】
比較例のバレル研磨装置10は、回転軸12を有するバレル槽14を備える。バレル槽14は、
図1A~
図2Bのように、回転軸12に垂直な断面視で、該回転軸12を幾何中心とする多角形の筒状部材である。
図1A~
図2Bでは、一例として、バレル槽14が六角形状である場合を図示している。また、バレル槽14を構成する多角形の各辺のうち、1つの辺には開口16が形成されている。開口16には、蓋部18が取り付けられている。なお、図示はしないが、バレル槽14の回転軸12に沿った両端部には、回転軸12の方向に延出する軸部材が設けられ、2つの軸部材は、回転軸12の機能を担う。従って、バレル槽14は、2つの軸部材を軸回りに回すことにより、回転軸12を中心に回転可能である。
【0013】
ここで、比較例のバレル研磨装置10によるワーク20のバレル研磨について説明する。先ず、
図1Aのように、蓋部18及び開口16が回転軸12よりも上側に位置するようにバレル槽14を配置した状態で、蓋部18を開いて開口16を開放させる。次に、バレル研磨の対象となるワーク20と、メディア22と、水等の媒材24とを、開口16を介してバレル槽14内に投入する。投入後、蓋部18を閉じて開口16を閉塞させる。一例として、ワーク20は、円盤状又はリング状のワーク20とする。また、メディア22は、円錐状の研磨石とする。さらに、水の比重を1とした場合、メディア22の比重を2とする。
【0014】
次に、不図示の駆動手段を駆動させて回転軸12(軸部材)を
図1Aの矢印方向に回転させることにより、該回転軸12を中心にバレル槽14を回転させる。これにより、媒材24中でワーク20とメディア22とが擦れ合い、該ワーク20を研磨することができる。なお、媒材24中にメディア22が存在すると、メディア22の相対的な比重が低下するので、メディア22からワーク20への負荷が減少する。この結果、バレル研磨中、メディア22によってワーク20に傷が付くことが回避される。
【0015】
次に、
図1Bのように、駆動手段の駆動を停止させることで回転軸12及びバレル槽14の回転を停止させ、ワーク20のバレル研磨を終了させる。この場合、蓋部18及び開口16が回転軸12よりも上側に位置するように、バレル槽14の回転を停止させる。次に、開口16から蓋部18を取り外し、該開口16に網26を取り付ける。網26は、金属製の網26(金網)であって、ワーク20及びメディア22よりも小さな網目28を有する。なお、網26は、周知の固定手段(例えば、バレル槽14の開口16近傍に形成された溝への嵌め込み、ネジによる固定等)によって開口16に取り付けられる。
【0016】
このように開口16に網26を取り付けた状態で駆動手段を再度駆動させ、
図2Aの矢印方向に回転軸12を回転させる。これにより、バレル槽14から網目28を介して媒材24が排出される。
【0017】
媒材24の排出後、駆動手段の駆動を停止させることで回転軸12及びバレル槽14の回転を停止させる。この場合、網26及び開口16が回転軸12よりも上側に位置するように、バレル槽14の回転を停止させる。次に、
図2Bのように開口16から網26を取り外し、バレル槽14から開口16を介して、ワーク20を取り出す。最後に、バレル槽14から開口16を介して、メディア22を取り出す。
【0018】
しかしながら、比較例では、比重2のメディア22の中をワーク20が移動するようにワーク20を取り出すので、ワーク20がメディア22によって傷を付けられる可能性がある。なお、上記の説明は、媒材24が水である湿式のバレル研磨であるが、媒材が固形である乾式のバレル研磨においても、同様の問題が発生する。
【0019】
[2.本実施形態の説明]
次に、本実施形態について
図3A~
図6を参照しながら説明する。なお、
図1A~
図2Bの比較例と同じ構成要素については同じ参照符号をつけて詳細な説明を省略する。本実施形態では、ワーク20よりも小さく且つメディア22よりも大きな網目42を有する網44を、バレル研磨後にバレル槽14内に設置する点で、比較例とは異なる。ここでは、本実施形態の態様に関し、
図3A~
図4Bの第1実施形態と、
図5A~
図6の第2実施形態とについて、順に説明する。
【0020】
<2.1 第1実施形態>
第1実施形態に係るバレル研磨装置40Aについて、
図3A~
図4Bを参照しながら説明する。
図3A~
図4Bでは、断面視で、該バレル研磨装置40Aの構成を概念的に図示している。
【0021】
バレル研磨装置40Aにおいて、バレル槽14を構成する多角形の各辺のうち、1つの辺には、第1開口16aが形成されている。また、バレル槽14には、回転軸12を挟んで、第1開口16aに向かい合う他の辺に第2開口16bが形成されている。第1開口16aは、第1蓋部18aによって閉塞される。第2開口16bは、第2蓋部18bによって閉塞される。
【0022】
また、バレル研磨装置40Aは、ワーク20よりも小さく且つメディア22よりも大きな網目42を有する網44と、バレル研磨後、バレル槽14の内面14iと回転軸12との間に網44を設置する網設置部46とを備えている。
【0023】
網44は、表面がゴムで被覆された剛性の高い金属製の網(金網)である。網設置部46は、バレル槽14を構成する多角形の各頂点のうち、1つの頂点に網44の一端部44aを固定することで、バレル槽14内に網44を設置するための網設置手段である。なお、網設置部46は、バレル槽14の内面14iにおける1つの頂点に網44の一端部44aを固定することができるものであれば、どのような固定手段であってもよい。例えば、網44の一端部44aが挿入される溝部と、該一端部44aを係止する爪部とで網設置部46を構成してもよい。
【0024】
これにより、第1実施形態では、
図3Bのように、バレル研磨後、外部から第1開口16aを介して網44を挿入し、1つの頂点に網44の一端部44aを固定することで、網44の他端部44bが回転軸12を指向するように1つの頂点と回転軸12との間に網44を設置することができる。前述のように、網44が剛性の高い金網であるため、網44は、一端部44aから他端部44bに向かって略直線状に延在している。
【0025】
また、第1実施形態では、バレル研磨後、バレル槽14内に2つの網44を設置する。そのため、網設置部46は、バレル研磨後、多角形の各頂点のうち、2つの頂点に2つの網44の一端部44aを固定することで、2つの網44を向かい合わせるように設置し、2つの網44でバレル槽14を2つに分割する。すなわち、2つの網44の一端部44aは、互いに向かい合う2つの頂点に軸支され、網設置部46は、バレル研磨後、2つの網44の他端部44bが回転軸12を挟んで互いに向かい合うように、2つの網44を設置する。
【0026】
従って、第1開口16a及び第2開口16bは、2つの網44及び回転軸12を挟んで、互いに向かい合うように設けられる。また、第1開口16a及び第2開口16bは、2つの網44によって分割されたバレル槽14内の2つの空間に連通するように設けられる。
【0027】
ここで、第1実施形態でのバレル研磨について説明する。先ず、
図3Aのように、第1蓋部18a及び第1開口16aが回転軸12よりも上側に位置するようにバレル槽14を配置した状態で、第1蓋部18aを開いて第1開口16aを開放させる。次に、バレル研磨の対象となるワーク20と、メディア22と、水等の媒材24とを、第1開口16aを介してバレル槽14内に投入する。投入後、第1蓋部18aを閉じて第1開口16aを閉塞させる。
【0028】
次に、駆動手段を駆動させて回転軸12を
図3Aの矢印方向に回転させることにより、該回転軸12を中心にバレル槽14を回転させる。これにより、媒材24中でワーク20とメディア22とが擦れ合い、該ワーク20を研磨することができる。
【0029】
次に、
図3Bのように、駆動手段の駆動を停止させることで回転軸12及びバレル槽14の回転を停止させ、ワーク20のバレル研磨を終了させる。この場合、
図3Bのように、第1蓋部18a及び第1開口16aが回転軸12よりも上側に位置するように、バレル槽14の回転を停止させる。次に、第1蓋部18aを取り外し、第1開口16aを開放する。次に、第1蓋部18aを介して一方の網44をバレル槽14内に挿入し、多角形の各頂点のうち、一方の頂点に一方の網44の一端部44aを固定する。次に、第1蓋部18aを介して他方の網44をバレル槽14内に挿入し、他方の頂点に他方の網44の一端部44aを固定する。この結果、バレル槽14の内面14iと回転軸12との間に、2つの網44を向かい合うように設置することができる。これにより、2つの頂点の間で2つの網44が略直線状に設置され、バレル槽14内が2つに分割される。
【0030】
次に、第1蓋部18aによって第1開口16aを閉塞した後に、駆動手段を再度駆動させ、
図4Aの矢印方向に回転軸12を回転させる。これにより、ワーク20及びメディア22がバレル槽14内の上側部分に移動した際、網目42を介してメディア22がバレル槽14内の下側部分に移動するので、ワーク20とメディア22とを容易に分離することができる。また、メディア22は、媒材24中でバレル槽14の下側部分に移動するので、ワーク20は、相対比重が1に近いメディア22から負荷を受けることになる。これにより、ワーク20とメディア22とを分離(選別)する際、ワーク20がメディア22によって傷を付けられることを防止することができる。
【0031】
次に、駆動手段の駆動を停止させ、回転軸12及びバレル槽14の回転を停止させる。この場合、第2蓋部18b及び第2開口16bが回転軸12よりも上側に位置するように、バレル槽14の回転を停止させる。次に、
図4Bのように第2開口16bから第2蓋部18bを取り外し、バレル槽14から第2開口16bを介してワーク20を取り出す。これにより、ワーク20とメディア22とが触れることなく、分離したワーク20を取り出すことができる。なお、
図4Bのように、第2蓋部18bを取り外すことで、第2開口16bの下端よりも上側の媒材24は外部に排出される。
【0032】
次に、第1開口16aから第1蓋部18aを取り外すことで、バレル槽14から残りの媒材24を排出する。また、バレル槽14から第1開口16aを介してメディア22を取り出す。最後に、バレル槽14の内面14iから2つの網44を取り外し、第1開口16a又は第2開口16bから取り出す。
【0033】
ワーク20のバレル研磨を再度行う場合には、上記の
図3A~
図4Bの工程を繰り返し行えばよい。また、上記の説明は、媒材24が水である湿式のバレル研磨であるが、媒材が固形である乾式のバレル研磨においても、同様の工程でバレル研磨が可能である。
【0034】
<2.2 第2実施形態>
第2実施形態に係るバレル研磨装置40Bについて、
図3A及び
図5A~
図6を参照しながら説明する。
【0035】
第2実施形態に係るバレル研磨装置40Bは、1つの網44のみがバレル槽14内に設置される点で、第1実施形態に係るバレル研磨装置40Aとは異なる。従って、第2実施形態でのバレル研磨は、
図5A~
図6のように、1つの網44でワーク20とメディア22とを分離する。従って、
図3A及び
図5A~
図6の各工程は、
図3A~
図4Bの各工程について、一方の網44のみが存在する場合の動作を示している。
【0036】
但し、
図5Bのように、1つの頂点と回転軸12との間に1つの網44を設置した状態でバレル槽14を回転させても、メディア22と分離しないワーク20が発生する場合がある。そこで、第2実施形態では、
図6に示すように、メディア22と分離した2つのワーク20を最初に取り出し、その後、第2開口16bを第2蓋部18bで閉塞し、
図5B及び
図6の工程を再度実行する。つまり、第2実施形態では、複数回に分けてワーク20を取り出すことになる。
【0037】
[3.本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係るバレル研磨装置40A、40Bは、ワーク20とメディア22とを投入した状態で回転軸12を中心に回転することで、該ワーク20のバレル研磨を行うバレル槽14を備え、バレル槽14に設けられ、ワーク20をバレル槽14に対して出し入れ可能な開口(第1開口16a、第2開口16b)と、ワーク20よりも小さく且つメディア22よりも大きな網目42を有する網44と、バレル研磨後、バレル槽14の内面14iと回転軸12との間に網44を設置する網設置部46とを備える。
【0038】
また、本実施形態に係るバレル研磨方法は、ワーク20とメディア22とをバレル槽14に投入した状態で回転軸12を中心に該バレル槽14を回転することにより、ワーク20のバレル研磨を行うバレル研磨方法であって、回転軸12を中心にバレル槽14を回転させて、バレル研磨を行う工程と、バレル研磨後、バレル槽14の内面14iと回転軸12との間に、ワーク20よりも小さく且つメディア22よりも大きな網目42を有する網44を設置する工程と、回転軸12を中心にバレル槽14を回転させ、網目42にメディア22を通すことで、ワーク20とメディア22とを分離する工程と、分離したワーク20をバレル槽14に設けられた開口から取り出す工程とを備える。
【0039】
このように、バレル槽14内に予め設置した網44によってワーク20及びメディア22をバレル槽14内で分離する。これにより、ワーク20及びメディア22を選別する外部の選別装置が不要となる。また、網44によってワーク20とメディア22とを分離した後に、分離したワーク20をバレル槽14から取り出す。これにより、ワーク20とメディア22とが不必要に接触することがないので、ワーク20がメディア22によって傷を付けられることを防止することができる。
【0040】
この場合、バレル槽14は、回転軸12に垂直な断面が多角形である筒状部材であり、開口は、多角形の各辺のうち、1つの辺に設けられる。網設置部46は、バレル槽14の断面視で、多角形の各頂点のうち、1つの頂点で網44の一端部44aを固定した状態で、網44の他端部44bが回転軸12を指向するように1つの頂点と回転軸12との間に網44を設置する。これにより、バレル研磨後、ワーク20がメディア22によって傷を付けられないようにワーク20とメディア22とを分離することができる。
【0041】
また、バレル研磨装置40Aは、2つの網44を備える。2つの網設置部46は、バレル研磨後、多角形の各頂点のうち、2つの頂点に2つの網44の一端部44aを固定することで、2つの網44を向かい合わせるように設置すると共に、2つの網44でバレル槽14を2つに分割する。これにより、ワーク20とメディア22とを確実に分離することができる。
【0042】
また、2つの網設置部46は、互いに向かい合う2つの頂点に2つの網44の一端部44aを固定すると共に、2つの網44の他端部44bが回転軸12を挟んで互いに向かい合うように、2つの網44を設置する。これにより、バレル槽14内を2つの部分に容易に分割することができる。
【0043】
また、バレル研磨装置40A、40Bは、開口に設けられ、バレル槽14に対してワーク20を出し入れする際に開く蓋部(第1蓋部18a、第2蓋部18b)を備える。これにより、バレル研磨と、バレル研磨後のワーク20及びメディア22の分離作業とを確実に行うことができる。
【0044】
また、バレル槽14には、バレル槽14の内面14iと回転軸12との間に設置される網44を挟んだ状態で2つの開口(第1開口16a、第2開口16b)が設けられ、2つの開口は、2つの蓋部(第1蓋部18a、第2蓋部18b)で閉塞される。これにより、バレル研磨と、バレル研磨後のワーク20及びメディア22の分離作業と、ワーク20、メディア22及び網44の取り出しとを確実に行うことができる。
【0045】
なお、本発明は、上述の実施形態に限らず、この明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
10、40A、40B…バレル研磨装置 12…回転軸
14…バレル槽 14i…内面
16、16a、16b…開口 20…ワーク
22…メディア 26、44…網
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