(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】測定システム、測定方法、及び測定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 17/34 20200101AFI20241107BHJP
G01S 17/58 20060101ALI20241107BHJP
G01S 17/66 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G01S17/34
G01S17/58
G01S17/66
(21)【出願番号】P 2021123356
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅重
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓
(72)【発明者】
【氏名】松本 義輝
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-288223(JP,A)
【文献】特開2021-004800(JP,A)
【文献】特開2020-085723(JP,A)
【文献】特開2018-115930(JP,A)
【文献】特開2017-194369(JP,A)
【文献】特開2017-090143(JP,A)
【文献】特開2014-062804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0215816(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111751827(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S7/00-17/95
G01B9/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一周波数光源(5)の搬送波を変調することで生成される周波数を変化させた副搬送波を含む送信光をターゲット(A)に出力し、前記ターゲットに反射して受信される受信光をコヒーレント検波して前記ターゲットまでの距離及び前記ターゲットとの間の相対速度を測定する測定システム(1)であって、
前記受信光の同相成分と直交成分の双方に基づいて生成された信号をFFT処理して前記距離に関するピーク周波数(fR;fRx1~fRxm)と前記相対速度に関するピーク周波数(fd;fdx1~fdxm)とを第一の結果とする第一結果取得部(B1;S401a、S401b)と、
前記同相成分と前記直交成分の少なくとも何れか一方の信号をFFT処理して検出されるピーク周波数(f;f1~fn)を第二の結果とする第二結果取得部(B2、B3;S402)と、
前記第一の結果と前記第二の結果の両方に基づいて
複数のターゲットについての前記距離
の検出信号と前記相対速度
の検出信号の対応関係の組み合わせを第三の結果として決定する組合せ決定部(S108;S208、S209;S403~S414)と、
を備える測定システム。
【請求項2】
前記搬送波を変調するときに周波数を連続的に変化させることで前記副搬送波を生成す
る変調器(6)を備える請求項1記載の測定システム。
【請求項3】
前
記変調器は、前記副搬送波の周波数変化をリニアとする請求項2記載の測定システム。
【請求項4】
前記組合せ決定部(S108)は、前記第二の結果を用い、前記第一の結果から得られた前記距離に関するピークの周波数に対しそれぞれ互いに等しい前記相対速度に関するピークの周波数だけ離間した条件を備えた前記ピークの組合せが存在するか否かを判定し、前記存在した条件を満たした前記ピークの組合せを選択する請求項1記載の測定システム。
【請求項5】
前記距離に関するピーク周波数と、選択された前記ピークの周波数との差分周波数に基づいて前記相対速度を算出する処理を含む請求項4記載の測定システム。
【請求項6】
前記組合せ決定部(S208、S209)は、前記第一の結果の前記距離に関するピーク周波数(fR)と前記第二の結果のピーク周波数(f)との差分周波数(fΔ)を算出し、前記差分周波数(fΔ)と前記第一の結果の前記相対速度に関する前記ピーク周波数(fd)とが一致しているか否かを判定し
てピークの組合せの対応関係を決定する請求項1記載の測定システム。
【請求項7】
前記組合せ決定部(S208、S209)にて対応関係が決定された前記ピークに基づいて算出される前記相対速度の符号を、前記第一の結果の前記相対速度に関する前記ピーク周波数(fd)と照合して決定する処理を含む請求項6記載の測定システム。
【請求項8】
前記第二の結果は、前記同相成分と前記直交成分をそれぞれFFT演算し、それらのスペクトルを加算して算出される請求項1記載の測定システム。
【請求項9】
単一周波数光源(5)の搬送波を変調することで生成される周波数を変化させた副搬送波を含む送信光をターゲット(A)に出力し、前記ターゲットに反射して受信される受信光をコヒーレント検波して前記ターゲットまでの距離及び前記ターゲットとの間の相対速度を測定する測定方法であって、
第一結果取得部(B1)により、前記受信光の同相成分と直交成分の双方に基づいて生成された信号をFFT処理して得られたピークを算出して第一の結果とする過程と、
第二結果取得部(B2、B3)により、前記同相成分と前記直交成分の少なくとも何れか一方の信号をFFT処理して得られたスペクトルの検出ピーク(f1~fn)を第二の結果とする過程と、
組合せ決定部(S108;S208、S209)により、前記第一の結果と前記第二の結果の両方か
ら複数のターゲットについての前記距離
の検出信号と前記相対速度
の検出信号との対応関係の組み合わせを第三の結果として決定する過程と、
を備える測定方法。
【請求項10】
単一周波数光源(5)の搬送波を変調することで生成される周波数を変化させた副搬送波を含む送信光をターゲット(A)に出力し、前記ターゲットに反射して受信される受信光をコヒーレント検波して前記ターゲットまでの距離及び前記ターゲットとの間の相対速度を測定する測定システムの測定プログラムであって、
前記測定システムに、
第一結果取得部(B1)により、前記受信光の同相成分と直交成分の双方に基づいて生成された信号をFFT処理して得られたピークを算出して第一の結果とする手順と、
第二結果取得部(B2、B3)により、前記同相成分と前記直交成分の少なくとも何れか一方の信号をFFT処理して得られたスペクトルの検出ピーク(f1~fn)を第二の結果とする手順と、
組合せ決定部(S108;S208、S209)により、前記第一の結果と前記第二の結果の両方か
ら複数のターゲットについての前記距離
の検出信号と前記相対速度
の検出信号との対応関係の組み合わせを第三の結果として決定する手順と、
を実行させる測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定システム、測定方法、及び測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光検出による測距装置は様々な分野で広く使用されている。自動車や自律ロボットの周辺環境認識センサや建設土木現場における形状計測等への応用を目的として、LiDAR:Light Detection and Rangingの開発が進展している。LiDARの中でも、周波数変調連続波FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式のLiDARは、ピーク電力を低くできると共に、ダイナミックレンジを広くでき、測距分解能が優れている。その結果、FMCW方式のLiDARは、3Dイメージング、気象観測、自律航法、リモートセンシング、および自動運転に広く応用されている。例えば、位相ダイバーシティコヒーレント検出は光信号の強度と位相を同時に測定できるため、LiDARのパフォーマンスを最適化できる。
【0003】
しかし、自律ナビゲーションなどの一部のアプリケーションでは、ターゲットが移動しているため、距離に関連したチャープ周波数にドップラー周波数シフトの影響が追加され、この影響が重畳されることになる。FMCW-LiDARでは、通常三角波形変調が採用されており、距離と速度を分離して測定することが試みられている。ただし、従来のFMCW-LiDARの場合、距離と速度を分離するために、三角波変調のアップチャープで得られる周波数とダウンチャープで得られる周波数の両方を用いる必要があるため、ある時点での距離と速度に関する情報を同時に得ることができない。
【0004】
非特許文献1記載の技術では、距離と速度の同時測定を可能にする位相多様性コヒーレント光受信機に基づくFMCW LiDARを提案している。このLiDARは、副搬送波を用いたFMCW方式を採用しており、副搬送波の周波数をチャープすると共に、一部を参照光としてヘテロダイン検波することで、ビート信号を生成して距離と速度を算出している。またヘテロダイン検波にコヒーレント検波を用いることで、距離と速度を分離している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Zhang et.al , ”Frequency-modulated continuous-wave lidar using a phase- diversity coherent optical receiver for simultaneous ranging and velocimetry”, IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL. 31, NO. 22, NOVEMBER 15, 1822 (2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数のターゲットから反射した光を受光すると、これらのターゲットまでの距離毎に検出信号が生成される。それぞれの検出信号が各ターゲットに対応しているため、各ターゲットまでの距離測定は可能である。
【0007】
ただし、速度に基づく検出信号も複数生成されるため、どの距離に基づく検出信号に対応したターゲットがどの速度に基づく検出信号に対応するか判別できない。各検出信号の強度に基づいて距離の検出信号と速度の検出信号とを対応させる手法も考えられるが、同程度の反射強度の場合には判別できない。
【0008】
また、原理的にターゲットとの相対速度がゼロの場合、速度ピークは生成されないため、速度ピークがある値である場合、どちらかのターゲットの相対速度は把握できるものの、どちらかのターゲットの相対速度がゼロなのか、複数のターゲットが同一速度なのか判別できない。
【0009】
本発明の目的は、複数のターゲットについての距離の検出信号と速度の検出信号の対応関係を判別できるようにした測定システム、測定方法、及び測定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、単一周波数光源(5)の搬送波を変調することで生成される周波数を変化させた副搬送波を含む送信光をターゲットに出力し、ターゲットに反射して受信される受信光をコヒーレント検波してターゲットまでの距離及びターゲットとの間の相対速度を測定する測定システムを対象としている。第一結果取得部は、受信光の同相成分と直交成分の双方に基づいて生成された信号をFFT処理して距離に関するピーク周波数と相対速度に関するピーク周波数とを第一の結果とする。
【0011】
第二結果取得部は、同相成分と直交成分の少なくとも何れか一方の信号をFFT処理して検出されるピーク周波数を第二の結果とする。組合せ決定部は、第一の結果と第二の結果の両方に基づいて複数のターゲットについての距離の検出信号と相対速度の検出信号の対応関係の組み合わせを第三の結果として決定する。
【0012】
請求項1記載の発明によれば、組合せ決定部が、第一の結果と第二の結果の両方に基づいて複数のターゲットについての距離の検出信号と相対速度の検出信号の対応関係の組み合わせを第三の結果として決定でき、複数のターゲットについての距離の検出信号と速度の検出信号の対応関係を判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】第2実施形態の処理の流れを説明するフローチャート
【
図5】第3実施形態における第二結果取得部の処理の流れを説明するフローチャート
【
図6】第4実施形態の処理の流れを説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、測定システムに係る複数の実施形態について図面を参照して説明する。以下に示す各実施形態において、先行する実施形態で説明した内容に対応する部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略することがある。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態について
図1から
図3を参照して説明する。測定システム1は、例えば自動車に搭載され、自車周辺の他車や歩行者等をターゲットAとして検知し、衝突を未然に回避して安全安心な走行を確保することを目的として用いられる。
図1に示すように、測定システム1は、変調光出力部2と、スキャナ3と、計測部4とを備える。
【0016】
変調光出力部2は、レーザ5と、変調器6と、を備える。計測部4は、コヒーレント検波器8と、A/D9と、DSP(Digital Signal Processor)10とを備える。スキャナ3は、送信用スキャナと受信用スキャナとにより構成される。送信用及び受信用のスキャナ3は、例えば角度を変更する機構を有する反射ミラーやプリズム、または光フェーズドアレイ(OPA:Optical Phased Array)等により構成される。
【0017】
レーザ5は、それぞれDFB(Distributed Feedback)レーザ、DBR(Distributed Bragg Reflector)レーザ、又は外部共振型レーザ等により構成される。レーザ5は、単一周波数光源として搬送波を出力する。
【0018】
変調器6は、例えばマッハツェンダー変調器を用いて周波数を変化させた副搬送波を生成する。変調器6は、レーザ5から発振光を入力すると、その入力した発振光を、外部から入力する交流信号及び直流バイアスに基づいて変調する。変調器6は、レーザ5が出力するレーザ光の搬送波を変調することで副搬送波を有する送信光を生成出力する。
【0019】
変調器6は、副搬送波の周波数変化をリニアとする。副搬送波の周波数は線形的に変化するが、所定周波数からアップチャープ又はダウンチャープの何れに変化させても良い。送信光は2分岐され、一方の光は参照光としてコヒーレント検波器8に入光され、他方の光は光サーキュレータ11を通じてスキャナ3に入光される。
【0020】
送信用のスキャナ3は、光サーキュレータ11を通じて入光すると、その入力した光を空間に出力する。出力光がターゲットAに当たり反射すると、その反射光が入射光として受信用のスキャナ3に入射する。受信用のスキャナ3は、光サーキュレータ11を通じてコヒーレント検波器8に受信光を出力する。
【0021】
コヒーレント検波器8は、90°光ハイブリッド8a及びバランスドフォトダイオード8bを用いて構成され、スキャナ3から光サーキュレータ11を通じて受信光を入力すると、その入力した受信光と参照光の間の振幅と位相の差分を検出し、ビート信号の同相成分Iと直交成分Qを生成して出力する。
【0022】
この場合、反射光と参照光との間には、その副搬送波周波数成分に、測定システム1からターゲットAまでの距離に対応した変調光の往復時間差に基づく周波数差を生じる。また、反射光と参照光との間には、その搬送波周波数成分に、測定システム1とターゲットAとの相対速度vに応じた周波数変化がドップラーシフトとして生じる。ビート信号にはこれらの周波数成分変化の差が現れる。
【0023】
コヒーレント検波器8は、ビート信号の同相成分Iと直交成分QをA/D9を通じてDSP10に出力する。DSP10は、ビート信号のデジタル信号を入力すると、各種の処理を施すことで距離Rと相対速度vを求める。
【0024】
例えば、DSP10は、コヒーレント検波器8のバランスドフォトダイオード8bにて検出される同相成分Iと直交成分Qの2乗和平方根を振幅成分として求める。そして、DSP10は、当該振幅成分をFFT処理して得られたピークの周波数fRを取得する。これが本形態に係る第一の結果となる。またDSP10は、同相成分Iを直交成分Qで除算した除算値を求め当該除算値をアークタンジェントして位相成分を求めFFT処理する。DSP10は、デジタルFFT処理して得られたピーク周波数fdを取得する。これも本形態に係る第一の結果となる。
図2に示す第一結果取得部B1参照。すなわち、第一結果取得部B1は、受信光の同相成分Iと直交成分Qの双方に基づいて生成された信号をFFT処理して得られたピーク周波数を第一の結果としている。
【0025】
この後、DSP10は、これらのピーク周波数により距離R及び相対速度vを算出する。距離Rはピーク周波数fRに依存した値として算出できる。相対速度vは、このピーク周波数fdに依存した値として算出できる。ターゲットAが一つの場合には、ピーク周波数fRとピーク周波数fdは一つのターゲットAに対応して求められる。このため、その一つのターゲットAに対する距離R及び相対速度vを算出できる。
【0026】
以下、複数のm個のターゲットAを測定対象とした場合について説明する。発明が解決しようとする課題の欄で説明したように、複数のターゲットAから反射光が入射した場合、対応したピーク周波数を検出することで、各ターゲットAまでの距離Rを測定できる。ただし、速度に関するピーク周波数も複数検出されるため、どの距離に基づく検出ピークに対応したターゲットAがどの速度に基づく検出ピークに対応するか判別できない。
【0027】
そこで本実施形態では、DSP10が
図2に示す流れに沿う処理を行うことで、m個のターゲットAに対する距離Rと相対速度vをそれぞれ算出する。以下、詳細を説明する。まずDSP10は、同相成分I及び直交成分Qを入力すると、S101i及びS101qにおいて同相成分I及び直交成分Qに生じている歪を補正する。
【0028】
次にDSP10は、S102iにおいて同相成分Iと直交成分Qの2乗和平方根を振幅成分として求めると共に、S102jにおいて同相成分Iを直交成分Qにて除算してアークタンジェントした位相成分を求める。次にDSP10は、S103i及びS103jにおいて、S102i及びS102jの処理結果をそれぞれ個別にデジタルFFT処理する。
【0029】
次に、DSP10は、S103iにおいてS102iで求められた値に応じて距離に関するm個のピーク周波数fRを検出すると共に、S103jにおいて、S102jで求められた値に応じて、速度に関するm個のピーク周波数fdを検出する。ここまでは、前述した第一結果取得部B1の処理内容と同様である。
【0030】
他方、DSP10は、S105i及びS105qにおいて同相成分I及び直交成分QのスペクトルをFFT処理し、S106においてスペクトル加算する。これにより同相成分I及び直交成分Qを平均化してノイズ除去でき、S107においてピークの周波数fを検出する。この検出ピークが本形態に係る第二の結果となる。
図2の第二結果取得部B2参照。このピーク周波数fは、ビート信号の原信号の周波数に対応している。
【0031】
DSP10は、S108においてピーク周波数fR±fdのピーク組み合わせを算出する。この処理が本願に係る組合せ決定部としての動作となる。ここでは、m個のターゲットAを測定対象とした場合、(m個のfR)±(m個のfd)の組み合わせを算出する。以下では、(m個のfR)の検出ピーク周波数を便宜的にfR→fRx1、…、fRxmとし、(m個のfd)の検出ピーク周波数をfd→fdx1、…、fdxmとする。そしてDSP10は、S107にて求められたビート信号の原信号のピーク周波数fに基づいて複数のターゲットAの距離Rに関するピーク周波数と、相対速度vに関するピーク周波数との対応関係を導出する。
【0032】
m=2個のターゲットAを測定対象とした場合の例を
図3に示している。距離に関する検出ピーク周波数fRx1、fRx2とし、速度に関する検出ピーク周波数fdx1、fdx2とした場合、S108にて求められる周波数の全組合せは、fRx1±fdx1、fRx1±fdx2、fRx2±fdx1、fRx2±fdx2となり、これらを組合せ候補として挙げることができる。
【0033】
それぞれのターゲットAに関する検出ピークは、原理的に、原信号(I
I,I
Q)のfR1±fd1及びfR2±fd2に表れる。
図3の下図参照。このため、前述の検出ピーク周波数の組合せ候補の中から、原信号(I
I,I
Q)に関して原理的に満足する条件を満たすピークの組合せを選択することで距離Rに関するピークの周波数と相対速度vに関するピークの周波数との対応関係を導出できる。
【0034】
例えば、距離Rに関する検出ピーク周波数fRx1又はfRx2に対しそれぞれ互いに等しい速度に関する検出ピーク周波数fdx1又はfdx2だけ離間した条件を備えた検出ピークの組合せが存在するか否かを原信号のピーク周波数fを用いて判定し、この存在条件を満たした検出ピークの組合せを選択する。このようにすることで、距離Rに関する検出ピーク周波数fRx1、fRx2が、相対速度vに関する検出ピーク周波数fdx1、fdx2の何れに対応しているか対応関係を導出できる。
【0035】
ここでは、2個のターゲットAを検出対象とした例を説明したが、検出対象となるターゲットAが3以上のm個存在している場合でも同様にこれらの関係性を決定できる。
【0036】
これにより、どの距離に基づく検出ピークに対応したターゲットAがどの速度に基づく検出ピークに対応するか判別でき、複数のターゲットAについての距離Rの検出ピークと相対速度vの検出ピークの対応関係を判別できる。
【0037】
距離Rに関する検出ピーク周波数fRx1、fRx2と相対速度vに関する検出ピーク周波数fdx1、fdx2の組合せを選択した場合、検出された距離に関するピーク周波数fRx1、fRx2からそれぞれ選択したピーク周波数fdx1、fdx2までの差分周波数に基づいて相対速度vを算出するようにしても良い。これにより、複数のターゲットAが、それぞれどのような相対速度vで動いているか特定できる。
【0038】
(第2実施形態)
第2実施形態について
図4を参照しながら説明する。
図4に示すように、DSP10は、S101i~S104i、S105i及びS105q、S106、並びにS107の処理を実行した後、S208において、S107にて求められたピーク周波数fと距離に関するピーク周波数fRとの差分周波数fΔを算出する。他方、DSP10は、S101q~S104qの処理を並行して進める。その後、S209の処理を実行する。
【0039】
DSP10は、S209においてS104qにて求められた相対速度vに関するm個のピーク周波数fdと、S104i及びS107のみから求められた差分周波数fΔとが一致しているか否かを検証する。DSP10は、これらが一致していると判定すれば、ピーク周波数fdとピーク周波数fRとの対応関係を決定できる。これらのS208、S209の処理が組合せ決定部としての処理を示す。
【0040】
そして、対応関係が決定されたピークに基づいて各ターゲットAの相対速度vを算出した後、相対速度vの符号を、S208にて検出されたピーク周波数fΔとS104qにて検出されたピーク周波数fdとを照合して決定すると良い。これにより、各ターゲットAの進行方向を決定できる。
【0041】
DSP10は、S210においてピーク周波数fR及びピーク周波数fdの対応関係を相対速度vの方向と共に出力する。DSP10は、一致しているか否かを判定することで、相対速度vの位相成分を考慮して相対速度vの符号を判定でき、ターゲットAが遠ざかっているか近づいているか判定できる。
【0042】
(第3実施形態)
第3実施形態について
図5を参照しながら説明する。前述実施形態では、
図2又は
図4の第二結果取得部B2に示したように、同相成分I、直交成分QをそれぞれFFT処理した後、スペクトル加算することで原信号を平均化した形態を示したが、これに代えて、
図5に示すように、第二結果取得部B3は、S305において同相成分I、直交成分Qを信号加算した後、S306においてデジタルFFT処理し、S307においてピークを検出するようにしても良い。これにより、前述実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0043】
(第4実施形態)
第4実施形態について
図6を参照しながら説明する。m個のターゲットAを検出するための方法を説明する。まず、
図6に示すS401aにおいて、距離Rに関するピーク周波数をfR1、fR2、…、fRmとする。S401bにおいて、相対速度vに関するピーク周波数をfv1、fv2、…、fvmとする。そして、S402において同相成分I又は直交成分Qにより検出される周波数をf1、f2、…、fnとする。
【0044】
これらの周波数fR1、fR2、…、fRm、fv1、fv2、…、fvm、及びf1、f2、…、fnは、第1~第3実施形態で説明した第一結果取得部B1、第二結果取得部B2、B3と同様の処理を実行することで検出できる。
【0045】
次に、DSP10は、同相成分I及び直交成分Qにより検出した原信号の周波数f1、f2、…、fnと、距離に関するピーク周波数fR1、fR2、…、fRmとの差分で構成される周波数差Rx群を生成する。
図6のS403~S405では、xを変数としてn回繰り返すことで周波数Rx群を生成している。生成結果は下記のようになる。
R1群 f1-fR1、f1-fR2、f1-fRm
R2群 f2-fR1、f2-fR2、f2-fRm
…
Rn群 fn-fR1、fn-fR2、fn-fRm
【0046】
次に、DSP10は、S407において上記の演算で得られた全周波数の絶対値を昇順又は降順に並べ替える。このときソートして得られたn×m個の周波数差をfΔ1、fΔ2、…、fΔnxmとする。
【0047】
次に、DSP10は、S408にて変数kの初期値を設定し、S409において、iを変数として周波数差fΔiと周波数差fΔi+1が一致する又は近接する、つまり、周波数差fΔi-周波数差fΔi+1の絶対値が最小となる組合せを探索する。
【0048】
そしてS410において、探索された周波数差の組合せ(fΔi、fΔi+1)が何れもRx群に属しているか判定する。何れもRx群に属している場合、S411にてその距離に関するピーク周波数fRxに対応していると見なす。そして、S413にてfΔi、fΔi+1を探索対象から外しつつ、S414にて変数kを変化させながら、S409~S412の処理をn回繰り返すことで、全てのターゲットAについて距離Rと相対速度vに関するピーク周波数の組合せを求めることができる。本願に係る組合せ決定部としての処理内容を示す。
【0049】
S412にてYES、すなわち対応する組み合わせが存在しないRx群がある場合、S415においてその距離Rの検出ピークに対応したターゲットAの相対速度vはゼロ、すなわち静止しているとみなす。これにより、全ての検出対象としたターゲットAについて距離Rと相対速度vを把握できる。
【0050】
(他の実施形態)
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができ、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。例えば以下に示す変形又は拡張が可能である。
【0051】
前述実施形態では、同相成分I及び直交成分QをそれぞれFFT処理した後に加算することで平均化した後にピーク検出した形態を示した。また、前述実施形態では、同相成分I及び直交成分Qをそのまま波形加算することで平均化した後にピーク検出した形態を説明したが、これに限定されるものではない。
【0052】
同相成分I又は直交成分Qの何れか一方の信号をFFT処理した結果についてピーク検出して第二の結果として用いても良い。すなわち、同相成分Iと直交成分Qの少なくとも何れか一方の信号をFFT処理して得られたピークを第二の結果としても良い。
【0053】
本開示に記載のDSP10による手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載のDSP10及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載のDSP10及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。
【0054】
本発明は、前述した実施形態に準拠して記述したが、本発明は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0055】
図面中、5はレーザ(単一周波数光源)、Aはターゲット、B1は第一結果取得部、B2、B3は第二結果取得部、S108は組合せ決定部、を示す。