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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】インホイールモータ
(51)【国際特許分類】
   B60K 7/00 20060101AFI20241107BHJP
   F16D 65/853 20060101ALI20241107BHJP
   F16D 65/02 20060101ALI20241107BHJP
   F16D 55/228 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
B60K7/00
F16D65/853
F16D65/02 A
F16D55/228
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021140874
(22)【出願日】2021-08-31
(65)【公開番号】P2023034572
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】須藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 暁史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-282158(JP,A)
【文献】特開2004-129389(JP,A)
【文献】特開平8-68432(JP,A)
【文献】特開2012-31978(JP,A)
【文献】特表2009-542496(JP,A)
【文献】特開2005-337355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12, 7/00- 8/00,16/00
F16D 55/00-55/50,65/00-65/853
H02K 7/00- 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部がホイールの内部に配置され前記ホイールに動力を伝達するモータを備えたインホイールモータにおいて、
前記モータのステータを液状冷媒を使用して冷却する冷却装置と、前記ホイールを制動するブレーキ装置と、を備え、
前記ブレーキ装置は、前記ホイールと共に回転するブレーキディスクと、前記ブレーキディスクに摩擦を与えて制動するブレーキキャリパからなり、
前記ブレーキキャリパは、前記モータの軸方向に動作して前記ブレーキディスクを制動し、
前記ブレーキキャリパの軸方向端部の一部は、前記ステータに接し、
前記冷却装置は、前記液状冷媒が循環する第1冷却部と、前記液状冷媒を循環しない第2冷却部から構成され、
前記ブレーキキャリパは、前記第2冷却部を介して前記第1冷却部と接することを特徴とするインホイールモータ。
【請求項2】
請求項1に記載のインホイールモータであって、
前記ステータは、軸方向の一方が開放され、内部にロータを備えたステータハウジングと、前記ステータハウジングの開放側を閉塞するステータハウジングカバーを備え、
前記ステータハウジングは、軸方向に延びた筒状のハウジング環状部と、軸方向と直交する径方向に延びたハウジング平板部とを備え、
前記ブレーキキャリパは、前記ブレーキキャリパの軸方向端面が前記ハウジング平板部と接することを特徴とするインホイールモータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のインホイールモータであって、
前記ブレーキキャリパは、前記ブレーキキャリパ及び前記ステータよりもヤング率が小さい弾性体を介して前記ステータと接することを特徴とするインホイールモータ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れ1項に記載のインホイールモータであって、
前記ブレーキキャリパの一部は、径方向において前記ステータと重なる位置に配置されたことを特徴とするインホイールモータ。
【請求項5】
請求項4に記載のインホイールモータであって、
前記ステータは、ステータコイルが装着されたステータコアを備え、
前記ブレーキキャリパは、前記ステータコアよりも内径側に配置されたことを特徴とするインホイールモータ。
【請求項6】
請求項に記載のインホイールモータであって、
前記第1冷却部と前記第2冷却部は、前記ステータの内部空間をロータによって区画して形成されたことを特徴とするインホイールモータ。
【請求項7】
請求項1乃至の何れ1項に記載のインホイールモータであって、
前記ブレーキキャリパは、長手方向が上下方向を向くように配置され、
前記ブレーキキャリパの上下方向の両端部が、固定ボルトによって前記ステータに固定されたことを特徴とするインホイールモータ。
【請求項8】
請求項1乃至の何れ1項に記載のインホイールモータであって、
前記ブレーキキャリパは、前記ホイール側から前記ステータに固定されたことを特徴とするインホイールモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の車輪を駆動するインホイールモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキユニットとモータを一体化したインホイールモータとしては、例えば特許文献1に記載の技術がある。特許文献1には、タイヤが取り付けられるホイールと、このホイールと同軸上に配置され、ホイールを駆動するモータを備えたインホイールモータが開示されている。ホイールを駆動するモータは、ハウジングの内部に収納されている。ハウジングの外周には、ホイールに制動力を与えるブレーキユニットが備えられている。ブレーキユニットには、ブレーキユニットに供給されるブレーキ液が通る第1の通路と、ブレーキユニットから排出されたブレーキ液が通る第2の通路とが備えられている。第1の通路若しくは第2の通路の少なくとも一方の通路は、モータを収容するハウジングの外側に巻き付くように配置され、ハウジングの外側に巻き付けられた第1の通路若しくは第2の通路を通るブレーキ液によりモータを冷却している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-113722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホイールを駆動するモータは、駆動力を向上するために、できる限りホイールの外径に近づけるように外径を大型化することが好ましい。
【0005】
特許文献1に記載の技術においては、モータを収納するハウジングの外周にブレーキユニットを配置するようにしているので、ハウジングの外周に配置されるブレーキユニットの分だけモータの外径を小さくする必要があり、駆動力が低下するといった課題があった。
【0006】
また、特許文献1では、モータを冷却するために、第1の通路若しくは第2の通路の少なくとも一方の通路を、ハウジングの外側に巻き付くように配置しているので、構造が複雑化するといった課題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決し、モータの駆動力を向上すると共に、モータ及びブレーキ装置の冷却構造を簡素化したインホイールモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、少なくとも一部がホイールの内部に配置され前記ホイールに動力を伝達するモータを備えたインホイールモータにおいて、前記モータのステータを液状冷媒を使用して冷却する冷却装置と、前記ホイールを制動するブレーキ装置と、を備え、前記ブレーキ装置は、前記ホイールと共に回転するブレーキディスクと、前記ブレーキディスクに摩擦を与えて制動するブレーキキャリパからなり、前記ブレーキキャリパは、前記モータの軸方向に動作して前記ブレーキディスクを制動し、前記ブレーキキャリパの軸方向端部の一部は、前記ステータに接し、前記冷却装置は、前記液状冷媒が循環する第1冷却部と、前記液状冷媒を循環しない第2冷却部から構成され、前記ブレーキキャリパは、前記第2冷却部を介して前記第1冷却部と接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モータの駆動力を向上すると共に、モータ及びブレーキ装置の冷却構造を簡素化したインホイールモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係るサスペンション装置、インホイールモータ、車輪の分解斜視図である。
図2】本発明の実施例に係るサスペンション装置とインホイールモータを組み付けた状態におけるサスペンション装置、インホイールモータ、車輪の分解斜視図である。
図3】本発明の実施例に係るサスペンション装置とインホイールモータを組み付けた状態における斜視図である。
図4】本発明の実施例に係るサスペンション装置、インホイールモータ、車輪を組み付けた状態における斜視図である。
図5】本発明の実施例に係るインホイールモータを車輪側から見た正面図である。
図6図5のVI-VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照しつつ説明する。同様の構成要素には同様の符号を付し、同様の説明は繰り返さない。
【0012】
本発明の各種の構成要素は必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、一の構成要素が複数の部材から成ること、複数の構成要素が一の部材から成ること、或る構成要素が別の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複すること、などを許容する。
【0013】
図1は、本発明の実施例に係るサスペンション装置、インホイールモータ、車輪の分解斜視図である。図2は、本発明の実施例に係るサスペンション装置とインホイールモータを組み付けた状態におけるサスペンション装置、インホイールモータ、車輪の分解斜視図である。図3は、本発明の実施例に係るサスペンション装置とインホイールモータを組み付けた状態における斜視図である。図4は、本発明の実施例に係るサスペンション装置、インホイールモータ、車輪を組み付けた状態における斜視図である。
【0014】
図1乃至図4では、1輪のみを示している。車両が4輪ある場合、少なくとも1つの車輪にインホイールモータを設けることが可能である。
【0015】
車輪10は、ホイール11と、ホイール11の外周に取り付けられたタイヤ12を備えている。ホイール11は、中央部から径方向外側に向かって放射状に延びた複数のスポーク13と、スポーク13と接合されたリム14から構成されている。リム14の外周には、タイヤ12が取り付けられている。スポーク13は、リム14の幅方向に対し、車両外側に位置するようにオフセットされて配置されている。
【0016】
ホイール11には、車輪10を回転駆動させるインホイールモータ20が接続されている。インホイールモータ20は、少なくとも一部がホイール11の内部に配置される。
【0017】
本実施例のインホイールモータ20とは、ホイール11内に収納された車輪の駆動手段を意図している。インホイールモータ20は、インナーロータ方式、アウターロータ方式があり、さらに減速ギアを備えているもの、減速ギアを備えていないものがあり、大きく分けて4種類に分類できる。本実施例では減速ギアを備えていない(ダイレクトドライブ)のインナーロータ方式を例として説明するが、アウターロータ方式であっても構わない。
【0018】
インホイールモータ20は、軸方向の一方が開放されたステータハウジング21aと、ステータハウジング21aの開放側からステータハウジング21a内に挿入され、ステータハウジング21aの内部で回転するロータ22と、ステータ21の開放側を閉塞するステータハウジングカバー21bと、ステータハウジングカバー21bに固定されたインバータ装置24と、ステータハウジング21aの反開放側に固定されたブレーキ装置25と、ステータハウジング21aに回転可能に軸支され、ブレーキディスク251及び車輪10と共に回転するハブ軸受26を備えている。
【0019】
ハブ軸受26は、ステータハウジング21aの中央部に形成されたハブ軸受取付部216に固定されている。ハブ軸受26には複数本(本実施例では5本)のハブボルト261が備えられている。ハブボルト261はブレーキディスク251を貫通している。車輪10は、ホイール11の貫通孔にハブボルト261を挿入し、ナットを螺合することにより、ハブ軸受26に固定される(図4)。
【0020】
本実施例では、ステータハウジング21aとステータハウジングカバー21bによってステータ21を構成している。ステータ21は、インバータ装置24、ブレーキ装置25、ハブ軸受26等を支持し、車体側のサスペンション装置30に取り付けられる。その結果、インホイールモータ20はサスペンション装置30を介して車両に取付けられる。また、インホイールモータ20は、ステータ21(ステータハウジング21aとステータハウジングカバー21b)と、ステータ21の内部に配置されるロータ22によりホイール11(車輪10)を駆動するモータを構成している。
【0021】
車体の方向を変える車輪である操舵輪においては、車両進行方向から見た時に、操舵の回転中心となるキングピン軸とタイヤ接地面の交点と、タイヤの幅方向の中心線との間隔(スクラブ半径)を小さくすることが好ましい。ホイールにインホイールモータを装着する場合、インホイールモータの軸方向が車体側に突出し、キングピン軸がタイヤの中心位置から離れ、スクラブ半径が大きくなりやすい。スクラブ半径が大きくなると、ステアリング操作時にステアリング機構に大きな反力が加わるほか、荒れた路面を走行する際に、路面のうねりや段差にステアリングが取られやすい。また、操舵輪が駆動輪を兼ねていると、駆動力がキングピン軸中心の回転モーメントになってしまうために制御性や乗り心地の悪化が懸念される。そのため、インホイールモータの軸方向の長さを小さくすることが好ましい。一方で、モータの駆動トルクを向上させるためには、モータの外径を大きくすることが好ましい。さらに、インホイールモータにはブレーキ装置が備えられているため、ブレーキ装置が発生する熱を冷却することが好ましい。これらの課題を解決する手段について、以下説明する。
【0022】
図5は、本発明の実施例に係るインホイールモータを車輪側から見た正面図である。図6は、図5のVI-VI線断面図である。
【0023】
ステータハウジング21aは、軸方向において一方(本実施例では車体側)が開放されている。ステータハウジング21aは、軸方向に延びた筒状のハウジング環状部21a1と、軸方向と直交する径方向に延びたハウジング平板部21a2と、軸方向に延び一端がハウジング平板部21a2に接続された折返し部21a3と、軸方向と直交する径方向に延びハウジング環状部21a1と折返し部21a3の他端と接続されたフランジ部21a4から構成されている。
【0024】
ハウジング平板部21a2は、フランジ部21a4(ハウジング環状部21a1における反開放部側の端部)の位置から、折返し部21a3を介して開放部側(本実施例では車体側)に配置している。換言すると、ハウジング平板部21a2は、フランジ部21a4(ハウジング環状部21a1における反開放部側の端部)の位置から、開放部側(本実施例では車体側)に凹ませて配置されている。すなわち、ステータハウジング21aには、フランジ部21a4(反開放部側の端部)の位置から開放部側に向かって凹んだハウジング凹部211が形成されている。また、ステータハウジング21aのハウジング環状部21a1の径方向内側には、複数のステータコア212が配置され、ステータコア212にはステータコイル213が装着されている。
【0025】
ステータハウジングカバー21bは、ステータハウジング21aの開放側を閉塞するように配置される。ステータハウジングカバー21bは、軸方向と直交する径方向に延び外周側に位置するリング状のハウジングカバーフランジ部21b4と、軸方向に延び一端がハウジングカバーフランジ部21b4と接続された筒状のハウジングカバー環状部21b1と、ハウジングカバー環状部21b1の他端と接続され軸方向と直交する径方向に延びたハウジングカバー平板部21b2と、ハウジングカバー平板部21b2に備えられた補強部材としてのリブ21b3から構成されている。
【0026】
ハウジングカバー平板部21b2は、ステータハウジングカバー21bがステータハウジング21aの開放側を閉塞した状態において、ハウジングカバーフランジ部21b4の位置から、反開放部側(本実施例では車輪側)に位置して形成されている。換言すると、ハウジングカバー平板部21b2は、ハウジングカバーフランジ部21b4の位置から、反開放部側(本実施例では車輪側)に凹ませて配置されている。ステータハウジングカバー21bには、ハウジングカバーフランジ部21b4(開放部側の端部)の位置から反開放部側に向かって凹んだハウジングカバー凹部215が形成され、このハウジングカバー凹部215にリブ21b3が配置されている。
【0027】
ハウジングカバーフランジ部21b4は、ステータハウジング21aのハウジング環状部21a1と接続され、固定される。そして、ステータ21の内部には、空間が形成されている。
【0028】
ステータ21の内部の空間には、車輪を回転駆動するロータ22が配置されている。ロータ22には、回転軸223(図1)が備えられている。ロータ22は、軸方向に延びた筒状のロータハウジング22aと、軸方向と直交する径方向に延びたロータ平板部22bとから構成されている。ロータ平板部22bは、ロータハウジング22aの軸方向中心位置から車体側に寄せて配置されている。ロータハウジング22aの径方向外側には、径方向外側に向かって突出した2つの支持部22cが形成されている。
【0029】
また、ロータハウジング22aの径方向外側には、支持部22cで挟むように複数の永久磁石221が備えられている。永久磁石221は、所定の隙間を設けてステータコア212と対向するように配置されている。さらに、ロータハウジング22aの径方向外側には、ステータ21に対してロータ22を回転可能に支持するモータ軸受222としての第1軸受222a及び第2軸受222bが備えられている。第1軸受222aは車体側に配置され、第2軸受222bは車体側とは反対の車輪側に配置される。モータ軸受222は、外輪部と内輪部の間に転動体を有している。
【0030】
ステータハウジング21aには、ブレーキ装置25が取り付けられている。ブレーキ装置25は、ロータ22、ハブ軸受26、ホイール11と共に回転するブレーキディスク251と、ブレーキディスク251に摩擦力を与えホイールを制動するブレーキキャリパ252を備えている。ブレーキ装置25は、モータの回転軸223の軸方向と同方向に動作する。
【0031】
車輪をモータで駆動する車両のブレーキ装置は、回生ブレーキや廃電ブレーキなどの電気ブレーキが主体となるが、急制動や満充電時、電気ブレーキ失陥に備えて機械式ブレーキも備える必要がある。機械式ブレーキとしては、ドラムブレーキやディスクブレーキがある。ブレーキ装置の制御性を向上させるために、本実施例では機械式ブレーキとしてディスクブレーキを用いている。
【0032】
図6に示すように、ブレーキ装置25は、その一部がステータハウジング21aのハウジング凹部211内に収められている。これにより、インホイールモータ20の軸方向の全長を短くすることができる。
【0033】
ステータハウジング21aのハウジング凹部211には、折返し部21a3とハブ軸受取付部216とを繋ぐ複数本のリブ214(補強部材)が備えられている。複数本のリブ214は、ハブ軸受取付部216から上下において放射状に配置されている。上側に配置された複数本のリブ214のうち、リブ214aは水平の位置から垂直方向(90度)の位置に配置されている。リブ214bは、リブ214aから20度開く方向、すなわち水平の位置から110度の位置に配置されている。リブ214cは、リブ214aから40度開く方向、すなわち水平の位置から130度の位置に配置されている。リブ214dは、リブ214aから20度閉じる方向、すなわち水平の位置から70度の位置に配置されている。リブ214eは、リブ214aから40度閉じる方向、すなわち水平の位置から50度の位置に配置されている。
【0034】
一方、下側に配置された複数本のリブ214のうち、リブ214fは垂直方向(270度)の位置に配置されている。リブ214gは、リブ214gから20度開く方向、すなわち水平の位置から290度の位置に配置されている。リブ214hは、リブ214fから40度開く方向、すなわち水平の位置から310度の位置に配置されている。リブ214iは、リブ214fから20度閉じる方向、すなわち水平の位置から250度の位置に配置されている。リブ214jは、リブ214aから40度閉じる方向、すなわち水平の位置から230度の位置に配置されている。
【0035】
本実施例では、ブレーキ装置25の一部をステータハウジング21aのハウジング凹部211内に収めている。リブ214とブレーキ装置25の干渉を避けるために、本実施例では、リブ214cからリブ214の間、及びリブ214eからリブ214hの間にはリブが形成されていない。本実施例では、このリブ214が形成されていないハウジング凹部211にブレーキ装置25を配置している。
【0036】
リブ214は、ステータ21の補強部材として機能しており、上記したリブ214cからリブ214iの間、及びリブ214eからリブ214hの間の強度が低下する。走行中の車輪10は、路面の凹凸により、上下方向の荷重を受ける。車輪10に備えられるインホイールモータ20では、車輪10と同様、上下方向の荷重を受けることとなる。そのため、ステータハウジング21aに配置するリブ214は、上下方向の荷重を受けるように配置すれば良く、リブ214cからリブ214の間、及びリブ214eからリブ214hの間にリブ214を配置しない場合であってもステータ21の強度を確保することができる。本実施例では、リブ214cからリブ214の間、及びリブ214eからリブ214hの間には、リブ214を配置しないようにしているので、インホイールモータ20を軽量化でき、バネ下質量を軽減することができる。そして、本実施例では、バネ下質量の軽減により路面の凹凸に対するサスペンション装置30の追従性が向上し、車両の乗り心地を向上することができる。
【0037】
ステータ21の上下方向の強度を確保するために、リブ214は垂直位置から開く方向、閉じる方向に45度の範囲、すなわち上部において45度~135度、下部において225度から315度の範囲に備えるようにすると良い。
【0038】
さらに、本実施例では、ブレーキキャリパ252は、その長手方向が上下方向(鉛直方向)を向くように配置している。そして、ブレーキキャリパ252の両端部が固定ボルト255a,255bによってステータ21(ステータハウジング21a)に固定されている。すなわち、ブレーキキャリパ252の上部が固定ボルト255aによってステータハウジング21aに固定され、ブレーキキャリパ252の下部が固定ボルト255bによってステータハウジング21aに固定されている。本実施例では、ブレーキキャリパ252は、その長手方向が上下方向(鉛直方向)を向くように配置しているので、ブレーキキャリパ252自体で上下方向の荷重を受けることができ、ステータ21の強度を向上することができる。また、ブレーキキャリパ252は、車輪10(ホイール11)側からステータハウジング21aに固定するようにしているので、ブレーキキャリパ252への接近が容易であり、ブレーキキャリパ252に装着されたブレーキパッド254の交換等の作業性を向上することができる。
【0039】
ブレーキキャリパ252には、ブレーキフルードの油圧によって軸方向に動作し、ブレーキディスク251を挟んで対向するように配置されたピストン253a,253bと、ピストン253a,253bによってブレーキディスク251に押圧され、摩擦力によって制動力を発生するブレーキパッド254を備えている。ブレーキパッド254はブレーキディスク251を挟むようにして制動力を発生させる。ブレーキディスク251は、ハブ軸受26とホイール11の間に設置される。ブレーキディスク251は、ベンチレーテッドディスクでもソリッドディスクでも良い。ブレーキディスク251の材料は鋳鉄などを用いる。
【0040】
ブレーキ装置は、大型化するほど制動力は上がり発熱は下がるので、ブレーキ装置は大型化(大径化)することが好ましい。一方、モータのトルク向上のためには、モータを大径化することが好ましい。ブレーキ装置とモータを共に大径化した場合、ブレーキ装置とモータが軸方向に重なり合い、インホイールモータ(ブレーキ装置+モータ)の軸長が伸びてしまう。
【0041】
本実施例では、ブレーキ装置を小型化し、その一部をステータハウジング21aのハウジング凹部211内に収められている。これにより、インホイールモータ20の軸方向の全長を短くすることができる。
【0042】
本実施例では、ブレーキ装置を小型化しているので、ブレーキ作動時の発熱が大きくなる。油圧式のブレーキ装置の主なトラブルは、べーパーロック現象とフェード現象である。べーパーロック現象とは、ブレーキ装置の発熱によりブレーキフルードが沸騰して気泡が発生、油圧が効かなくなる現象である。フェード現象とは、ブレーキの発熱によりブレーキパッドの摩擦材が熱分解しガスが発生、摩擦力が減る現象である。何れもブレーキ装置の発熱によるものであり、同車重であればブレーキ装置を小型化するほど発生しやすい。また、安全性以外にも、バネ下質量低減(乗り心地向上)の観点からもブレーキ装置は小型軽量化することが望ましい。
【0043】
ブレーキ装置の冷却方法について説明する。ブレーキ装置の冷却には、液体冷媒を使用している。インホイールモータ20には、熱交換器40が接続されている。ステータハウジングカバー21bには、熱交換器40からの液体冷媒をステータ21の内部空間に送水する第1配管41と、ステータ21の内部空間からの液体冷媒を熱交換器40に戻す第2配管42が接続されている。ステータの内部空間(ステータハウジング21aとステータハウジングカバー21bとで形成された空間)は、液体冷媒によって満たされている。熱交換器40は、例えばラジエータであり、走行中の走行風で液体冷媒を冷却する。熱交換器40と第1配管41を繋ぐ経路には、図示しないポンプが備えられており、第1配管41及び第2配管42を介して熱交換器40とステータ21の内部空間の液体冷媒を循環させる。ロータ22は、液体冷媒で満たされたステータ21の内部空間で回転する。
【0044】
ステータ21の内部空間には、ステータハウジングカバー21bとロータ22との間に形成される第1冷却部45と、ステータハウジング21aとロータ22との間に形成される第2冷却部46とを備えている。換言すると、ロータ22は、ステータ21の内部空間を第1冷却部45と第2冷却部46に区画している。ロータ22は、ステータ21の内部空間を第1冷却部45と第2冷却部46とに区画している。
【0045】
熱交換器40から第1配管41を介して第1冷却部45に流入した液体冷媒は、破線で示した矢印のように径方向外側に向かって流れ、ロータハウジング22aに衝突した後、軸方向に沿って車体側に流れる。さらに液体冷媒は方向転換し、永久磁石221とステータコア212の隙間を流れ、再び方向転換し、ステータコア212の外周に沿って流れ、第2配管42を介して熱交換器40に流入する。このように液体冷媒が空間内を流れることにより、モータを冷却することができる。一方、第2冷却部46の液体冷媒は、循環せずに滞留している。
【0046】
ブレーキキャリパ252の一部は、径方向においてステータ21(ステータハウジング21a)と重なる位置に配置されている。また、ブレーキキャリパ252はステータコア212よりも内径側に配置されている。ブレーキキャリパ252(ブレーキ装置25)の軸方向端面(軸方向端部の一部)は、ハウジング平板部21a2(ステータ21)に接している。換言すると、ブレーキキャリパ252(ブレーキ装置25)の軸方向端面とハウジング平板部21a2(ステータ21)とは、面接触している。なお、ブレーキキャリパ252は、ブレーキキャリパ252及びステータ21よりもヤング率が小さい弾性体(グリス、ゴム)を介して接触するようにしても良い。
【0047】
ブレーキ装置25が動作すると、ブレーキパッド254がブレーキディスク251に押圧し、摩擦力により制動力を得る。この際、ブレーキパッド254がブレーキディスク251に接触することにより、摩擦熱が発生する。例えば、急制動時には、ブレーキキャリパ252は、300℃程度まで温度上昇する。本実施例では、ブレーキキャリパ252(ブレーキ装置25)の軸方向端面とハウジング平板部21a2(ステータ21)とが面接触しているので、ブレーキキャリパ252で発生した熱が、ハウジング平板部21a2(ステータ)に伝達する。ハウジング平板部21a2(ステータ)に伝達した熱は、第2冷却部46内の液体冷媒、ロータ22、第1冷却部45内の液体冷媒に伝達する。第1冷却部45では液体冷媒が循環しているので、第1冷却部45内で液体冷媒が受け取った熱は、熱交換器40に送水され、熱交換器40にて冷却される。これにより、モータを冷却すると共に、ブレーキキャリパ252が冷却される。本実施例では、熱交換器40、第1配管41、第2配管42、第1冷却部45、第2冷却部46によってモータ及びブレーキ装置25の冷却装置を構成している。
【0048】
なお、本実施例では、第2冷却部46の液体冷媒は、循環せずに滞留している。急制動時によりブレーキキャリパ252の温度が300℃程度まで上昇すると、液体冷媒の温度が急激に上昇し、高温となる。高温となった液体冷媒が循環すると、液体冷媒と接するポンプやモータ等の機器が、熱により損傷する可能性がある。
【0049】
そこで、本実施例では液体冷媒が循環する第1冷却部45が第2冷却部46を介してブレーキキャリパ252と接するようにしている。急制動時、ブレーキキャリパ252で発生した熱は、第2冷却部46で滞留している液体冷媒が受けた後に、第1冷却部45内の液体冷媒に伝達されるので、第1冷却部45内の液体冷媒が急激に上昇し高温となるのを抑制でき、ポンプやモータ等が損傷することを抑制できる。
【0050】
以上説明したように本実施例によれば、モータの駆動力を向上すると共に、モータ及びブレーキ装置の冷却構造を簡素化したインホイールモータを提供することができる。
【0051】
なお、本発明は、上述した実施例に限定するものではなく、様々な変形例が含まれる。上述した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。
【符号の説明】
【0052】
10…車輪、11…ホイール、12…タイヤ、13…スポーク、14…リム、20…インホイールモータ、21…ステータ、21a…ステータハウジング、21a1…ハウジング環状部、21a2…ハウジング平板部、21a3…折返し部、21a4…フランジ部、21b…ステータハウジングカバー、21b1…ハウジングカバー環状部、21b2…ハウジングカバー平板部、21b3…リブ、22…ロータ、22a…ロータハウジング、22b…ロータ平板部、22c…支持部、24…インバータ装置、25…ブレーキ装置、26…ハブ軸受、30…サスペンション装置、40…熱交換器、41…第1配管、42…第2配管、45…第1冷却部、46…第2冷却部、211…ハウジング凹部、212…ステータコア、213…ステータコイル、214,214a~214j…リブ、215…ハウジングカバー凹部、216…ハブ軸受取付部、221…永久磁石、222…モータ軸受、222a…第1軸受、222b…第2軸受、223…回転軸、251…ブレーキディスク、252…ブレーキキャリパ、253a,253b…ピストン、254…ブレーキパッド、255a,255b…固定ボルト、261…ハブボルト
図1
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図3
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図6