(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】地盤比抵抗測定装置および地盤比抵抗測定方法
(51)【国際特許分類】
G01V 3/22 20060101AFI20241107BHJP
G01V 3/02 20060101ALI20241107BHJP
【FI】
G01V3/22
G01V3/02 C
(21)【出願番号】P 2021182269
(22)【出願日】2021-11-09
【審査請求日】2024-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】忠野 祐介
(72)【発明者】
【氏名】藤原 斉郁
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-015436(JP,A)
【文献】実開昭62-186308(JP,U)
【文献】米国特許第04236113(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1429658(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/22
G01V 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体と、
前記袋体に設けられた複数の導電体と、
前記袋体内に挿入可能な測定用ゾンデと、を備える地盤比抵抗測定装置であって、
前記袋体は、内部に流体を圧入することにより円柱状に膨張し、
複数の前記導電体は、前記袋体の内面と外面とに面しているとともに、前記袋体の長さ方向に間隔をあけて設けられており、
前記測定用ゾンデは、多芯ケーブルと、前記多芯ケーブルに設けられた複数の電極と、からなり、
前記多芯ケーブルの先端は、前記袋体の先端に固定されていて、
前記袋体を膨張させた際に、前記多芯ケーブルが前記袋体内に誘導されるとともに、前記電極と前記導電体とが当接するように構成されていることを特徴とする、地盤比抵抗測定装置。
【請求項2】
前記袋体の基端に前記測定用ゾンデを挿通可能な逆流防止部が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の地盤比抵抗測定装置。
【請求項3】
前記袋体を内挿可能な測定管をさらに備えており、
前記測定管には、前記測定管の内面と外面に面した状態で、複数の第二導電体が設けられており、
前記袋体を膨張させた際に、前記導電体と第二導電体とが当接するように構成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の地盤比抵抗測定装置。
【請求項4】
地中に測定孔を形成する削孔工程と、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の地盤比抵抗測定装置を前記測定孔に挿入する挿入工程と、
前記地盤比抵抗測定装置により比抵抗分布を測定する測定工程と、を備える地盤比抵抗測定方法であって、
前記挿入工程では、前記袋体内に流体を圧入して当該袋体を前記測定孔内において円柱状に膨張させることで、前記袋体の内部に測定用ゾンデを誘導するとともに、前記導電体と前記電極とを当接させることを特徴とする、地盤比抵抗測定方法。
【請求項5】
前記挿入工程では、前記袋体に流体を圧入する前に、前記袋体を内挿可能な測定管を前記測定孔に挿入する作業を行い、
前記測定管には、前記測定管の内面と外面に面した状態で、複数の第二導電体が設けられていて、
前記袋体に流体を圧入することで、前記袋体を前記測定管内で膨張させて、前記導電体と前記第二導電体とを当接させることを特徴とする、請求項4に記載の地盤比抵抗測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤比抵抗測定装置およびこれを使用する地盤比抵抗測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事では、長距離ボーリング等で地山状態を事前に把握する地山前方探査を実施し、出水や崩落などの施工トラブルを防止する対策を講じることがある。特に、シールドトンネルの場合、掘削面を目視できないため、掘削前に地表面からボーリング調査を行うことが多い。一方、都市部ではボーリング調査を行うための用地の確保が困難であることが多く、掘削全長の地層構造を綿密に把握するための十分なボーリング調査数を確保できないことがある。
そのため、1次元情報であるボーリング調査地点間の情報を補間し、面的な地層構造を把握できる物理探査法が広く普及している。物理探査法には、様々な手法が存在するが、その中でも地盤の電気特性を把握する電気探査法は資源開発や土木工事を始め、利用例が多い。電気探査の内、比抵抗トモグラフィは、地盤中の間隙率に応じて比抵抗(≒電気抵抗)が変化する性質を活用して、地層構造を把握する手法である。
【0003】
比抵抗探査では、複数の電極を地盤に配置したうえで、交替直流電流を地盤に印加し、電圧を計測する。そして、得られた計測データの逆解析を行うと、地盤の比抵抗分布を2次元・3次元で得ることができる。比抵抗探査における電極の設置法は、地表面に設置する方式と、事前に削孔した孔内に電極を挿入する方式の2種類のいずれかを採用する場合が多い。地表面に電極を設置する方式は、電極設置範囲に応じて地盤情報が得られる範囲を調整可能であり、電極近傍の地盤情報を得るのに適しており、電極設置が比較的容易である。一方、孔内に電極を設置する方式は、孔間の比抵抗分布を把握する手法であることから孔間トモグラフィとも呼ばれ、電極の設置手間はかかるが、深度方向の地層構成を把握したい場合に適している。
トンネル孔内等の地下空間から孔間トモグラフィにより比抵抗分布を把握する場合、削孔する方向によって電極設置の難易度が大きく異なる。下向きの場合には、重力に従って電極を容易に挿入可能であるが、水平~上向きの場合は、重力に逆らって挿入する必要があるため、電極の自重や配線のたわみなどを考慮した施工が必要になる。
【0004】
例えば、非特許文献1には、立坑から水平方向に計測プローブを設置する方法として、細径の塩ビ管に多芯ケーブルを結束した計測プローブを水平に削孔した計測孔に挿入し、挿入した計測プローブと地盤との空間にグラウト材を充填して固定する方法が開示されている。
また、特許文献1には、複数の水平ボーリング孔間の比抵抗を測定する電気探査方法として、いずれか一つの水平ボーリング孔の先端に高圧水により送り込み配置した電極と、他の水平ボーリング孔の軸方向に所定間隔で配置された複数の電極とを用いて電極間の比抵抗を測定する方法が開示されている。
また、特許文献2には、地下施設の上方岩盤の比抵抗を計測するために、天井に打設されたロックボルトに電線を接続して電流電極および電位電極に利用し、電流電極から直流電流を流して各電位電極間に生じた電位差から比抵抗値を求め、該比抵抗値により周辺岩盤の含水状態を推定する測定方法が開示されている。
【0005】
ところが、非特許文献1の計測方法では、計測対象地盤と電極との間にグラウト材が介するため、地盤の比抵抗分布を正確に計測できない可能性がある。また、多芯ケーブルと塩ビ管を結束する必要があり、計測孔の削孔長が大きい場合には、結束作業と挿入作業を何度も繰り返す必要があるため、手間と時間がかかる。
また、特許文献1の測定方法は、電極を高圧水により送り込むため、軟質な地山の場合、孔壁が崩落するおそれがある。また、電極と地盤との間に流体(高圧水として使用した地下水以外の水)が介在することにより、比抵抗分布を正確に計測できないおそれがある。
また、特許文献2の測定方法は、ロックボルト1本が1点の電極となるため、地下施設に面した上方地盤の比抵抗しか計測できない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】小川渉、外3名、「比抵抗トモグラフィによる薬液注入範囲の可視化」、土木建設技術発表会概要集、土木学会、205-210頁、2011年
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-15436号公報
【文献】特開平08-268497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、測定孔の削孔方向に限定されることなく、電極を容易に設置することを可能とし、より高い精度で所望の範囲の比抵抗分布を測定することが可能な地盤比抵抗測定装置および地盤比抵抗測定方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の地盤比抵抗測定装置は、袋体と、前記袋体に設けられた複数の導電体と、前記袋体内に挿入可能な測定用ゾンデとを備えている。前記袋体は内部に流体を圧入することにより円柱状に膨張し、複数の前記導電体は前記袋体の内面と外面とに面しているとともに前記袋体の長さ方向に間隔をあけて設けられている。前記測定用ゾンデは、多芯ケーブルと、前記多芯ケーブルに設けられた複数の電極とからなる。そして、前記多芯ケーブルの先端は前記袋体の先端に固定されていて、前記袋体を膨張させた際に前記多芯ケーブルが前記袋体内に誘導されるとともに前記電極と前記導電体とが当接するように構成されている。
また、本発明の地盤比抵抗測定方法は、地中に測定孔を形成する削孔工程と、前記地盤比抵抗装置を前記測定孔に挿入する挿入工程と、前記地盤比抵抗装置により比抵抗分布を測定する測定工程とを備えている。前記挿入工程では、前記袋体内に流体を圧入して当該袋体を前記測定孔内において円柱状に膨張させることで、前記袋体の内部に測定用ゾンデを誘導するとともに、前記導電体と前記電極とを当接させる。
かかる地盤比抵抗測定装置および地盤比抵抗測定方法によれば、計測孔内で袋体を膨張させることにより袋体に設けられた導電体を配置するため、計測孔の向きが水平~鉛直上向きであっても、グラウト等を介在させることなく導電体を地盤に接した状態で所望の位置に配置することができる。また、袋体を膨張させることで、袋体内に多芯ケーブルが挿入されるとともに、多芯ケーブルに固定された電極が導電体に当接する。すなわち、電極と導電体を介して地盤に電気を供給することが可能となる。
【0010】
前記袋体の基端には、袋体内に圧入した流体の漏洩を防止するための逆流防止部が設けられているのが望ましい。なお、逆流防止部は、前記測定用ゾンデを挿通可能であるのが望ましい。
また、測定対象地盤が軟質地盤(崩壊性地盤)の場合には、前記袋体を内挿可能な測定管をさらに備えているのが望ましい。この前記測定管には、前記測定管の内面と外面に面した状態で複数の第二導電体が設けられている。第二導電体は、前記袋体を膨張させた際に前記導電体と当接する。
測定管を使用する場合には、前記挿入工程において、前記袋体に流体を圧入する前に、前記袋体を内挿可能な測定管を前記測定孔に挿入する作業を行う。そして、前記袋体に流体を圧入することで、前記袋体を前記測定管内で膨張させて、前記導電体と前記第二導電体とを当接させる。こうすることで、電極、導電体および第二導電体を介して地盤に電気を供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の地盤比抵抗測定装置および地盤比抵抗測定方法によれば、測定孔の削孔方向に限定されることなく、電極を容易に設置することを可能とし、より高い精度で所望の範囲の比抵抗分布を測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】地盤比抵抗測定装置の設置状況を示す鳥瞰図である。
【
図2】第一実施形態に係る地盤比抵抗測定装置を示す図であって、(a)は膨張時の外観図、(b)は膨張時の断面図、(c)は収縮時の外観図である。
【
図3】導電体と電極との関係を示す拡大断面図である。
【
図4】(a)~(d)は測定用ゾンデが逆流防止部を通過する状況を示す模式図である。
【
図5】第一実施形態の地盤比抵抗測定方法の手順を示す図であって、(a)は削孔工程、(b)は挿入工程、(c)は測定工程である。
【
図6】第二実施形態に係る地盤比抵抗測定装置を示す図であって、(a)は収縮時の断面図、(b)は膨張時の断面図である。
【
図7】第二実施形態の地盤比抵抗測定方法の手順を示す図であって、(a)は削孔工程、(b)および(c)は挿入工程、(d)は測定工程である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第一実施形態>
第一実施形態では、地盤比抵抗測定装置1を利用して地盤の電気的な比抵抗分布を測定して、トンネルT(本実施形態ではシールドトンネル)の周辺地盤(地盤G)の調査を行う場合について説明する。
図1に地盤比抵抗測定装置の設置状況の例を示す。
図1に示すように、地盤比抵抗測定装置1は、トンネル坑内から解析領域(地盤G)に対して横方向(水平)~上方向に向けて、間隔をあけて複数設置する。すなわち、地盤比抵抗測定装置1は、トンネルTから放射状に配置する。
図2に地盤比抵抗測定装置1を示す。地盤比抵抗測定装置1は、
図2(a)および(b)に示すように、袋体2と、袋体2に設けられた複数の導電体3,3,…と、袋体2内に挿入可能な測定用ゾンデ4と、袋体の基端に設けられた逆流防止部5とを備えている。
【0014】
袋体2は、内部に空気(流体)を圧入することにより円柱状に膨張する。また、袋体2は、内部に空気が圧入されていない状態では、
図2(c)に示すように、蛇腹状に収縮する。袋体2は、電気を通さない絶縁材料(例えば、塩化ビニル樹脂)からなり、漏電防止に寄与する。また、袋体2は、空気を通し難く、軟質で可撓性を有した複数の筒状部材21,21,…を連結することにより構成されている。本実施形態では、
図2(a)および(b)に示すように、複数の筒状部材21,21,…を、導電体3を介して連結することにより円柱状に形成されている。袋体2の先端に設けられた筒状部材21の先端は遮蔽されていて、袋体2に圧入された空気の漏洩が防止されている。
【0015】
複数の導電体3,3,…は、
図2(a)および(b)に示すように、袋体2を膨張させた状態で、袋体2の長さ方向に所定の間隔(例えば、0.5m~2.0m)をあけて配置されるように設けられている。
図3に地盤比抵抗測定装置1の拡大図を示す。導電体3は、リング状の金属部材からなり、
図3に示すように、袋体2を構成する筒状部材21同士の間に介設されていて、袋体2の内面(内空側の面)と外面(地山側の面)とに面している(露出している)。導電体3は、袋体2の膨張により、袋体2が設置された測定孔の孔壁(地盤)に密着する。本実施形態では、袋体2の外面に、導電体3の導電体3を挟む一対の保護材31,31が固定されている。保護材31は、ゴム製で、導電体3の袋体2からの突出長と同等以下の高さを有している。保護材31は、導電体3を地盤等との摩擦から保護するとともに、地盤等の当接面との滑り止めとして機能する。なお、導電体3が袋体2の外面から突出していない場合や袋体2の外面からの突出長が小さい場合には、保護材31は省略できる。
【0016】
測定用ゾンデ4は、
図2(b)に示すように、多芯ケーブル41と、多芯ケーブル41に設けられた複数の電極42,42,…とからなる。
多芯ケーブル41は、複数の電線(例えば、被覆銅線)を束ねることにより構成されている。多芯ケーブル41には、電極42の数に合わせて適切な芯数のものを使用するものとし、例えば、4芯~40芯程度が望ましい。電線1本毎に電極42を取り付ける。多芯ケーブル41の先端は、袋体2の先端に固定されている。
複数の電極42,42,…は、測定用ゾンデ4(多芯ケーブル41)の長さ方向に間隔をあけて設けられている。電極42同士の間隔は、袋体2に設けられた導電体3同士の間隔と同じである。本実施形態の電極42は、金属製の板バネにより構成されていて、多芯ケーブル41の長さ方向と交差する方向に拡大縮小する。電極42は、多芯ケーブル41の側面から側方(袋体2の導電体3側)に張り出すように設けられていて、袋体2を膨張させた際に、導電体3と接するように構成されている。すなわち、電極42は、自らの復元力により導電体3の内面に当接する(
図3参照)。
【0017】
逆流防止部5は、測定用ゾンデ4を挿通可能で、
図2(b)に示すように、袋体2の基端に固定されている。
図4に逆流防止部5を示す。逆流防止部5は、
図4(a)に示すように、筒状の部材からなる本体部51と、本体部51の内部に固定されたパッカー(第一パッカー52および第二パッカー53)とからなる。本体部51は、測定用ゾンデ4を挿通可能な内径を有している。本実施形態では、第一パッカー52と第二パッカー53が間隔をあけて設けられている。第一パッカー52および第二パッカー53は、伸縮可能な環状部材からなり、内部に流体を圧入することにより膨張する。第一パッカー52および第二パッカー53の膨張した際の内径は、多芯ケーブル41の外径以下であり、第一パッカー52および第二パッカー53が膨張すると多芯ケーブル41と密着する。本実施形態の逆流防止部5は、
図4(b)に示すように、電極42が第一パッカー52を通過する際には、第二パッカー53を膨張させて多芯ケーブル41に密着させた状態で、第一パッカー52を収縮させる。電極42が第一パッカー52を通過した後は、
図4(c)に示すように、両パッカー(第一パッカー52および第二パッカー53)を膨張させて多芯ケーブル41に密着させる。さらに、電極42が移動して第二パッカー53を通過する際には、
図4(d)に示すように、第一パッカー52を膨張させて多芯ケーブル41に密着させた状態で、第二パッカー53を収縮させる。そして、電極42が第二パッカー53を通過したら、両パッカーを膨張させ、多芯ケーブル41に密着させる(
図4(a)参照)。このように、2段配置されたパッカーを有する逆流防止部5を利用することで、測定用ゾンデ4を袋体2内に挿入する際に袋体2内に圧入した空気の漏洩(逆流)を防止する。
【0018】
以下、本実施形態の地盤比抵抗測定方法について説明する。地盤比抵抗測定方法は、削孔工程と、挿入工程と、測定工程とを備えている。
図5に、地盤比抵抗測定方法を示す。
削孔工程は、
図5(a)に示すように、地中に測定孔6を形成する工程である。測定孔6は、トンネル坑内から地盤を削孔することにより形成する。
挿入工程は、地盤比抵抗測定装置1(袋体2)を測定孔6に挿入する工程である。挿入工程では、まず、
図5(b)に示すように、測定孔6の孔口に、地盤比抵抗測定装置1をセットする。このとき、袋体2は収縮した状態(導電体3が重ねられた状態)である。次に、
図5(c)に示すように、袋体2内に空気を圧入して袋体2を測定孔6内において円柱状に膨張させる。袋体2の先端に多芯ケーブル41の先端が固定されているので、袋体2を膨張させると、測定用ゾンデ4が袋体2の内部に誘導される。袋体2の内部に多芯ケーブル41が誘導されることで、袋体2に設けられた導電体3と多芯ケーブル41に設けられた電極42とが当接する(
図2(b)および
図3参照)。
測定工程は、地盤比抵抗測定装置1により比抵抗分布を測定する工程である。比抵抗分布の測定は、電極42と導電体3とが当接した状態で、多芯ケーブル41に通電することで、測定に必要な電気信号を地盤に送信することにより行う。
【0019】
以上、本実施形態の地盤比抵抗測定装置1およびこの地盤比抵抗測定装置1を使用した地盤比抵抗測定方法によれば、測定孔6内で袋体2を膨張させることにより袋体2に設けられた導電体3を配置するため、測定孔6の向きが水平~鉛直上向きであっても、グラウト等を介在させることなく導電体3を地盤に接した状態で所望の位置に配置することができる。このように、本実施形態の地盤比抵抗測定装置1によれば、地盤比抵抗測定装置1の周囲にモルタル等を充填する必要がないので、施工性に優れている。また、導電体3が直接地盤Gに面していて、直接的な地盤Gの比抵抗分布の測定が可能となり、ひいては、より高い精度での測定が可能となる。
また、袋体2を膨張させることで、袋体2内に多芯ケーブル41が袋体2内に誘導されるとともに、多芯ケーブル41に固定された電極42が導電体3に当接するため、袋体2に空気を圧入するだけで測定用ゾンデ4を配設できる。そして、地盤への電気信号の供給は、電極と導電体を介して行う。そのため、従来の測定方法に比べて作業の手間を削減できる。
また、測定時に必要な止水性は袋体2によって確保している。
袋体2の基端には、袋体2内に圧入した空気の漏洩を防止するための逆流防止部5が設けられているため、測定用ゾンデ4の配設時に空気の漏洩が防止されている。
比抵抗値の測定に電極42を備えた測定用ゾンデ4を使用しているため、複雑な配線作業を要することなく、測定することができる。そのため、作業性に優れている。
【0020】
<第二実施形態>
第二実施形態では、第一実施形態と同様に、トンネル坑内から解析領域に対して横方向(水平)~上方向に向けて間隔をあけて設置した複数の地盤比抵抗測定装置1を利用して地盤の電気的な比抵抗分布を測定して、調査を行う場合について説明する(
図1参照)。
図6に本実施形態の地盤比抵抗測定装置1を示す。地盤比抵抗測定装置1は、
図6(a)および(b)に示すように、袋体2と、袋体2に設けられた複数の導電体3,3,…と、袋体2内に挿入可能な測定用ゾンデ4と、袋体の基端に設けられた逆流防止部5と、測定管7を備えている。
【0021】
袋体2の詳細は、第一実施形態で記載した袋体2と同様なため、詳細な説明は省略する。
複数の導電体3,3,…は、袋体2を膨張させた状態で、袋体2の長さ方向に所定の間隔をあけて配置されるように設けられている。導電体3は、袋体2の膨張により、袋体2が挿入された測定管7の第二導電体72に密着する。この他の導電体3の詳細は、第一実施形態で記載した導電体3と同様なため、詳細な説明は省略する。
また、測定用ゾンデ4および逆流防止部5の詳細は、第一実施形態で記載した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0022】
測定管7は、地盤を削孔することにより形成された測定孔6に設けられる電気を通さない材質の管材であって、袋体2を内挿可能な円筒状の分割管(例えば、塩化ビニル管)71,71,…を連結することにより形成されている。分割管71同士は、第二導電体72を介して連結されている。すなわち、測定管7は、複数の分割管71,71,…と複数の第二導電体72,72,…とを交互に設けることにより構成されている。分割管71は、袋体2を構成する筒状部材21と同じ長さを有している。そのため、第二導電体72は、袋体2を膨張させた際の導電体3と同じ間隔で配設されている。第二導電体72は、リング状の金属部材からなる。また、第二導電体72は、測定管7の内面および外面に面していて、測定管7の半径方向での電気的な導通を可能にしている。第二導電体72は、袋体2を膨張させた際に、導電体3に当接する内径を有している。
【0023】
以下、本実施形態の地盤比抵抗測定方法について説明する。地盤比抵抗測定方法は、削孔工程と、挿入工程と、測定工程とを備えている。
図7に、地盤比抵抗測定方法を示す。
削孔工程は、
図7(a)に示すように、地中に測定孔6を形成する工程である。測定孔6は、トンネル坑内から地盤を削孔することにより形成する。
挿入工程では、地盤比抵抗測定装置1(袋体2)を測定孔6に挿入する工程である。挿入工程では、まず、
図7(b)に示すように、測定管7を測定孔6に挿入する。測定管7を測定孔6に挿入すると、第二導電体72が測定孔6の孔壁に当接する。測定管7を測定孔6に挿入したら、
図7(c)に示すように、測定管7の基端(測定孔6の孔口)に、地盤比抵抗測定装置1をセットする。このとき、袋体2は収縮した状態(導電体3が重ねられた状態)である。次に、
図7(d)に示すように、袋体2内に空気を圧入して袋体2を測定管7内において円柱状に膨張させる。袋体2が膨張すると、測定管7内において伸張する袋体2に伴って、導電体3が測定管7内に誘導されて、導電体3と第二導電体72とが当接する。また、袋体2が膨張すると、袋体2の先端に多芯ケーブル41の先端が固定された測定用ゾンデ4が袋体2の内部に誘導される。袋体2の内部に多芯ケーブル41が誘導されることで、袋体2に設けられた導電体3と多芯ケーブル41に設けられた電極42とが当接する(
図2(b)参照)。
測定工程は、地盤比抵抗測定装置1により比抵抗分布を測定する工程である。比抵抗分布の測定は、電極42と第二導電体72とが導電体3を介して当接した状態で、多芯ケーブル41に通電することで、測定に必要な電気信号を地盤に送信することにより行う。
【0024】
以上、本実施形態の地盤比抵抗測定装置1およびこの地盤比抵抗測定装置1を使用した地盤比抵抗測定方法によれば、測定孔6内に測定管7を挿入することで、軟質な地盤であっても、孔壁の崩落を抑制しつつも、地盤の比抵抗分布の測定が可能となる。
また、測定管7を地盤G内に直接圧入するため、測定管7の周囲に充填材を充填する必要がなく、施工性に優れている。また、測定管7が地盤G内に直接配設されているため、第二導電体72が直接地盤Gに面していて、直接的な地盤Gの比抵抗分布の測定が可能となり、ひいては、より高い精度での測定が可能となる。
また、測定時に必要な止水性は測定管7によって確保されている。
この他の第二実施形態の地盤比抵抗測定装置1および地盤比抵抗測定方法の作用効果は、第一実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
地盤比抵抗測定装置1は、トンネルTの切羽に向けて設置してもよく、設置する方向は限定されるものではない。
袋体2を構成する材料は、通電不能で、圧縮空気により膨張・収縮可能な材質であれば、塩化ビニル樹脂に限定されるものではなく、例えば、他の合成樹脂製(例えば、ポリエチレン等)であってもよい。また、圧縮空気を封入することに追って、優先的に挿入方向に膨張するようなリング状の断面保持材が配設された化学繊維からなるホースであってもよい。
導電体3の形状は、袋体の内外への通電が確保できれば、リング状に限定されるものではなく、例えば、六角穴付き止めネジ(いわゆるイモネジ)や皿ネジを活用した点電極であってもよい。
前記実施形態では、袋体2に空気を圧入する場合について説明したが、袋体2を膨張させる際に袋体2に注入する流体は空気に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0026】
1 地盤比抵抗測定装置
2 袋体
3 導電体
4 測定用ゾンデ
41 多芯ケーブル
42 電極
5 逆流防止部
51 本体部
52 第一パッカー
53 第二パッカー
6 測定孔
7 測定管
72 第二導電体
T トンネル