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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】作業車両用の自動走行システム
(51)【国際特許分類】
   A01B 63/00 20060101AFI20241107BHJP
【FI】
A01B63/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021211776
(22)【出願日】2021-12-27
(62)【分割の表示】P 2018159777の分割
【原出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2022034045
(43)【公開日】2022-03-02
【審査請求日】2021-12-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(72)【発明者】
【氏名】藤本 祥語
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】古屋野 浩志
【審判官】西田 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-31565(JP,A)
【文献】特開2017-167995(JP,A)
【文献】特開2018-156(JP,A)
【文献】特開2005-24320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 63/00
A01B 63/111
G05D 1/00- 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の自動走行を可能にする自動走行ユニットと、無線通信による前記作業車両の遠隔操作を可能にする遠隔操作装置と、を備え、
前記作業車両は、昇降可能な作業装置を有し、
前記遠隔操作装置は、前記作業車両の遠隔操作に関する情報を表示する表示デバイスと、前記作業車両の自動走行モードにおいて前記作業装置の作業高さの手動調整を可能にする作業高さ調整器と、
前記作業高さ調整器によって手動調整された前記作業装置の作業高さを、前記作業車両に備えられている操作具で設定されている設定高さにリセットするリセット部と、を有し、
前記表示デバイスは、前記作業高さ調整器により調整された作業高さを示す第1インジケータと、前記作業装置の作業高さを検出する作業高さ検出器で検出される作業高さを示す第2インジケータと、を同軸表示し、前記第1インジケータと前記作業高さ調整器とを同一画面上に表示する、
作業車両用の自動走行システム。
【請求項2】
前記第1インジケータは、前記作業高さ調整器による作業高さの変更操作に応じて移動する、
請求項1に記載の作業車両用の自動走行システム。
【請求項3】
前記第2インジケータは、前記作業装置の昇降に応じて移動する、
請求項1又は2に記載の作業車両用の自動走行システム。
【請求項4】
前記第1インジケータと前記第2インジケータとは、同一方向に沿って移動する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の作業車両用の自動走行システム。
【請求項5】
前記表示デバイスは、前記作業装置の作業高さを表すバー状の作業高さ表示部を表示し、
前記第1インジケータは、前記作業高さ表示部に沿って移動する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の作業車両用の自動走行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の自動走行を可能にする自動走行ユニットと、無線通信による前記作業車両の遠隔操作を可能にする遠隔操作装置とを備えた作業車両用の自動走行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車両用の自動走行システムとしては、トラクタの後部に作業装置(作業機)が昇降可能に連結された作業車両に、作業装置の昇降操作を可能にする昇降スイッチを備えるのに加えて、遠隔操作装置(無線通信端末)に、作業装置の現在の高さを数値表示する作業機高さ表示部と、作業機の高さを微調整するための作業機高さ調整部と、を表示するディスプレイを備えることで、ユーザは、遠隔操作装置のディスプレイに表示された作業機高さ調整部を操作することにより、自動走行中の作業車両を一旦停止させて作業車両に備えられた昇降スイッチを操作する手間を要することなく、自動走行中の作業車両に対する作業装置の高さ調整操作が可能になるように構成されたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-167995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、作業車両が自動走行しているときに、ユーザが、遠隔操作装置の作業機高さ調整部を操作して作業装置の高さを微調整する場合には、ディスプレイの作業機高さ表示部において作業装置の現在の高さが表示されるだけであることから、ユーザが作業機高さ調整部を操作してから、その操作に基づいて作業装置の現在の高さが変更されるまでの間、ユーザは、作業機高さ調整部の操作に応じた作業装置の高さを把握することができず、しかも、ユーザは、作業機高さ調整部を操作する前に、作業機高さ表示部にて表示された作業装置の現在の高さを覚えていなければ、作業機高さ調整部の操作による作業装置の高さ調整量を把握することができなくなる。そのため、作業機高さ調整部の操作による作業装置の高さ調整を適正に行うことが難しくなっていた。
【0005】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、自動走行中の作業車両に対する遠隔操作装置を使用した遠隔操作による作業装置の作業高さの調整を容易かつ適正に行えるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る作業車両用の自動走行システムは、作業車両の自動走行を可能にする自動走行ユニットと、無線通信による前記作業車両の遠隔操作を可能にする遠隔操作装置と、を備える。前記作業車両は、昇降可能な作業装置を有する。前記遠隔操作装置は、前記作業車両の遠隔操作に関する情報を表示する表示デバイスと、前記作業車両の自動走行モードにおいて前記作業装置の作業深さの手動調整を可能にする作業高さ調整器と、を有する。前記表示デバイスは、前記作業高さ調整器により設定された作業深さを示すインジケータを表示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】作業車両用の自動走行システムの概略構成を示す図
図2】作業車両用の自動走行システムの概略構成を示すブロック図
図3】作業車両の遠隔操作に関する概略構成を示すブロック図
図4】目標経路生成部により生成される目標経路の一例を示す図
図5】側面視における各ライダーセンサの測定範囲などを示す図
図6】平面視における各ライダーセンサの測定範囲などを示す図
図7】作業高さ設定ダイヤル及び昇降スイッチなどの配置を示すアームレストの斜視図
図8】調整スイッチや作業高さ表示部などを表示する昇降操作画面を示す図
図9】障害物の存否などの報知が可能な自動走行監視画面を示す図
図10】自動走行監視画面の画像表示部を利用した障害物の報知形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車両用の自動走行システムを、作業車両の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本発明に係る作業車両用の自動走行システムは、トラクタ以外の、例えば乗用草刈機、乗用田植機、コンバイン、ホイールローダ、除雪車、などの作業車両に適用することができる。
【0009】
図1~3に示すように、この実施形態で例示する作業車両用の自動走行システムは、トラクタ1の自動走行を可能にする自動走行ユニット2、及び、自動走行ユニット2と無線通信可能に通信設定された携帯通信端末3、などを備えている。携帯通信端末3は、前述した通信設定により、無線通信によるトラクタ1の遠隔操作を可能にする遠隔操作装置として機能する。携帯通信端末3には、自動走行や遠隔操作に関する各種の情報表示や入力操作などを可能にするマルチタッチ式の表示デバイス(例えば液晶パネル)4などを有するタブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォンなどを採用することができる。
【0010】
図4に示すように、トラクタ1は、作業車両用の自動走行システムによって作業地の一例である圃場Aなどにおいて自動走行することが可能に構成されている。図1図5~6に示すように、トラクタ1は、その後部に3点リンク機構5を介して、作業装置の一例であるロータリ耕耘装置6が昇降可能かつローリング可能に連結されている。これにより、このトラクタ1は、ロータリ耕耘装置6によって耕耘作業を行うロータリ耕耘仕様に構成されている。
なお、トラクタ1の後部には、ロータリ耕耘装置6に代えて、プラウ、ディスクハロー、カルチベータ、サブソイラ、播種装置、散布装置、草刈装置、などの各種の作業装置を連結することができる。これにより、このトラクタ1は、プラウによって耕耘作業を行うプラウ仕様や、播種装置によって播種作業を行う播種仕様、などに仕様変更することができる。
【0011】
図1~3、図5~6に示すように、トラクタ1には、駆動可能で操舵可能な左右の前輪10、駆動可能な左右の後輪11、搭乗式の運転部12を形成するキャビン13、コモンレールシステムを有する電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)14、エンジン14からの動力を変速する変速ユニット15、左右の前輪10を操舵する全油圧式のパワーステアリングユニット16、左右の後輪11を制動するブレーキユニット17、ロータリ耕耘装置6に対する伝動を断続する電子油圧制御式の作業クラッチユニット19、ロータリ耕耘装置6を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動ユニット20、ロータリ耕耘装置6をロール方向に駆動する電子油圧制御式のローリング駆動ユニット21、トラクタ1における各種の設定状態や各部の動作状態などを検出する各種のセンサやスイッチなどを含む車両状態検出機器23、トラクタ1の現在位置や現在方位などを測定する測位ユニット24、及び、各種の制御部を有する車載制御ユニット40、などが備えられている。
なお、エンジン14には、電子ガバナを有する電子制御式のガソリンエンジンなどを採用してもよい。パワーステアリングユニット16は電動モータを備えた電動式であってもよい。
【0012】
運転部12には、アクセルレバーや図7に示す主変速レバー29などの操作レバー類、及び、アクセルペダルやクラッチペダルなどの操作ペダル類、などとともに、図1~2、図5に示す手動操舵用のステアリングホイール30と、搭乗者用の座席31と、各種の情報表示や入力操作などを可能にするマルチタッチ式の液晶モニタ32とが備えられている。
【0013】
図示は省略するが、変速ユニット15には、エンジン14からの動力を変速する電子制御式の無段変速装置、及び、無段変速装置による変速後の動力を前進用と後進用とに切り換える電子油圧制御式の前後進切換装置、などが含まれている。無段変速装置には、静油圧式無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission)よりも伝動効率が高い油圧機械式無段変速装置の一例であるI-HMT(Integrated Hydro-static Mechanical Transmission)が採用されている。前後進切換装置には、前進動力断続用の油圧クラッチと、後進動力断続用の油圧クラッチと、それらに対するオイルの流れを制御する電磁バルブとが含まれている。
なお、無段変速装置には、I-HMTの代わりに、油圧機械式無段変速装置の一例であるHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)、静油圧式無段変速装置、又は、ベルト式無段変速装置、などを採用してもよい。又、変速ユニット15には、無段変速装置の代わりに、複数の変速用の油圧クラッチとそれらに対するオイルの流れを制御する複数の電磁バルブとを有する電子油圧制御式の有段変速装置が含まれていてもよい。
【0014】
図示は省略するが、ブレーキユニット17には、左右の後輪11を個別に制動する左右のブレーキ、運転部12に備えられた左右のブレーキペダルの踏み込み操作に連動して左右のブレーキを作動させるフットブレーキ系、運転部12に備えられたパーキングレバーの操作に連動して左右のブレーキを作動させるパーキングブレーキ系、及び、左右の前輪10の設定角度以上の操舵に連動して旋回内側のブレーキを作動させる旋回ブレーキ系、などが含まれている。
【0015】
図2~3に示すように、車載制御ユニット40には、エンジン14に関する制御を行うエンジン制御部41、トラクタ1の車速や前後進の切り換えに関する制御を行う車速制御部42、ステアリングに関する制御を行うステアリング制御部43、ロータリ耕耘装置6などの作業装置に関する制御を行う作業装置制御部44、液晶モニタ32などによる表示や報知に関する制御を行う表示制御部45、自動走行に関する制御を行う自動走行制御部46、及び、圃場内に区分けされた走行領域に応じて生成された自動走行用の目標経路などを記憶する不揮発性の車載記憶部47、などが含まれている。各制御部41~46は、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。各制御部41~46は、CAN(Controller Area Network)を介して相互通信可能に接続されている。ちなみに、各制御部41~46での相互通信は、CANに限らず、他の通信規格や次世代通信規格(例えば、CAN-FD(CAN with FLexible Data rate)や車載Ethernet)にて行うこともできる。
【0016】
車両状態検出機器23は、トラクタ1の各部に備えられた各種のセンサやスイッチなどの総称である。車両状態検出機器23には、アクセルレバーの操作位置を検出するアクセルセンサ、主変速レバー29の操作位置を検出する変速用の第1位置センサ、前後進切り換え用のリバーサレバーの操作位置を検出する前後進切り換え用の第2位置センサ、エンジン14の出力回転数を検出する回転センサ、トラクタ1の車速を検出する車速センサ、及び、前輪10の操舵角を検出する舵角センサ、などに加えて、図3に示すように、ロータリ耕耘装置6に対する伝動の断続を指令するPTOスイッチ50、ロータリ耕耘装置6の作業高さを設定する作業高さ設定ダイヤル(作業高さ設定器及び昇降用操作具の一例)51、ロータリ耕耘装置6の別の作業高さである作業深さ(耕耘深さ)を設定する作業深さ設定ダイヤル(作業高さ設定器及び昇降用操作具の一例)52、ロータリ耕耘装置6を上方に退避させる退避高さを設定する退避高さ設定ダイヤル(昇降用操作具の一例)53、ロータリ耕耘装置6の昇降を指示する昇降スイッチ(昇降指示具及び昇降用操作具の一例)54、ロータリ耕耘装置6の高さ位置を検出する高さ検出器55、ロータリ耕耘装置6の作業深さを検出する作業深さ検出器56(高さ検出器の一例)、ロータリ耕耘装置6のロール角を設定するロール角設定ダイヤル57、及び、トラクタ1のロール角を検出するする傾斜センサ58、などが含まれている。
【0017】
図7に示すように、作業高さ設定ダイヤル51は、主変速レバー29などとともに、座席31における右側のアームレスト31Aに備えられている。昇降スイッチ54は、主変速レバー29の前部に備えられている。図示は省略するが、作業深さ設定ダイヤル52は、PTOスイッチ50及び退避高さ設定ダイヤル53などとともに、座席31の右側方に配置された操作パネルに備えられている。
【0018】
高さ検出器55は、昇降駆動ユニット20に含まれた左右のリフトアームの上下揺動角をロータリ耕耘装置6の高さ位置として検出する。作業深さ検出器55は、ロータリ耕耘装置6の作業深さに応じて上下揺動する後部カバー6A(図1図5参照)の上下揺動角をロータリ耕耘装置6の作業深さとして検出する。
ちなみに、作業深さ検出器55は、トラクタ1の後部に連結される作業装置が、プラウ、カルチベータ、サブソイラなどの牽引式の作業装置である場合には、3点リンク機構5にかかる牽引負荷を作業装置の作業深さとして検出するものに変更される。
【0019】
エンジン制御部41は、アクセルセンサからの検出情報と回転センサからの検出情報とに基づいて、エンジン回転数をアクセルレバーの操作位置に応じた回転数に維持するエンジン回転数維持制御、などを実行する。
【0020】
車速制御部42は、第1位置センサからの検出情報と車速センサからの検出情報などに基づいて、トラクタ1の車速が主変速レバー29の操作位置に応じた速度に変更されるように無段変速装置の作動を制御する車速制御、及び、第2位置センサからの検出情報に基づいて前後進切換装置の伝動状態を切り換える前後進切り換え制御、などを実行する。車速制御には、主変速レバー29が零速位置に操作された場合に、無段変速装置を零速状態まで減速制御してトラクタ1の走行を停止させる減速停止処理が含まれている。
【0021】
図3に示すように、作業装置制御部44には、作業クラッチユニット19の作動を制御するクラッチ制御モジュール44A、昇降駆動ユニット20の作動を制御する昇降制御モジュール(昇降制御部の一例)44B、及び、ローリング駆動ユニット21の作動を制御するローリング制御モジュール44C、などが含まれている。
【0022】
クラッチ制御モジュール44Aは、PTOスイッチ50の操作によってロータリ耕耘装置6への伝動が指示されたときは、ロータリ耕耘装置6に動力が伝達されるように作業クラッチユニット19の作動を制御する作業動力伝達制御を実行する。クラッチ制御モジュール44Aは、PTOスイッチ50の操作によってロータリ耕耘装置6への伝動の遮断が指示されたときは、ロータリ耕耘装置6への伝動が遮断されるように作業クラッチユニット19の作動を制御する作業動力遮断制御を実行する。
【0023】
昇降制御モジュール44Bは、昇降スイッチ54の操作によってロータリ耕耘装置6の昇降が指示されたときに、その昇降指示に基づいて、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が、作業高さ設定ダイヤル51にて設定されたロータリ耕耘装置6の作業高さ(以下、設定作業高さと称する)、作業深さ設定ダイヤル52にて設定されたロータリ耕耘装置6の作業深さ(以下、設定作業深さと称する)、又は、退避高さ設定ダイヤル53にて設定された退避高さ、に一致するように、昇降駆動ユニット20の作動を制御してロータリ耕耘装置6を昇降させる自動昇降制御を実行する。
【0024】
自動昇降制御について詳述すると、昇降制御モジュール44Bは、ロータリ耕耘装置6が退避高さに位置している状態において、昇降スイッチ54が下方に操作されてロータリ耕耘装置6の下降指示を送信した場合は、その下降指示を受信するとともに、作業高さ設定ダイヤル51による設定作業高さが最下降位置か否かを判定する作業高さ位置判定処理を行う。
そして、昇降制御モジュール44Bは、作業高さ位置判定処理において設定作業高さが最下降位置でないと判定した場合は、自動昇降制御におけるロータリ耕耘装置6の制御目標高さを作業高さ設定ダイヤル51による設定作業高さに設定する。その後、昇降駆動ユニット20の作動を制御して、ロータリ耕耘装置6の高さ位置(高さ検出器55によって検出されるロータリ耕耘装置6の高さ位置)が設定作業高さに一致する(設定作業高さの不感帯幅内に収まる)までロータリ耕耘装置6を下降させる第1下降処理を開始し、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が設定作業高さに一致するのに伴って第1下降処理を終了する。
又、昇降制御モジュール44Bは、作業高さ位置判定処理において設定作業高さが最下降位置であると判定した場合は、自動昇降制御におけるロータリ耕耘装置6の制御目標高さを作業深さ設定ダイヤル52による設定作業深さに設定する。その後、昇降駆動ユニット20の作動を制御して、ロータリ耕耘装置6の高さ位置(作業深さ検出器56によって検出されるロータリ耕耘装置6の作業深さ)が設定作業深さに一致する(設定作業深さの不感帯幅内に収まる)までロータリ耕耘装置6を下降させる第2下降処理を開始する。そして、ロータリ耕耘装置6の作業深さが設定作業深さに一致するのに伴って、第2下降処理を終了するとともに、ロータリ耕耘装置6の作業深さが設定作業深さに一致する状態が維持されるようにロータリ耕耘装置6を昇降させる作業深さ維持処理を開始する。
昇降制御モジュール44Bは、ロータリ耕耘装置6が設定作業高さ又は設定作業深さに位置している状態において、昇降スイッチ54が上方に操作されてロータリ耕耘装置6の上昇指示を送信した場合は、その上昇指示を受信するとともに、自動昇降制御におけるロータリ耕耘装置6の制御目標高さを退避高さ設定ダイヤル53による退避高さに設定する。その後、昇降駆動ユニット20の作動を制御して、ロータリ耕耘装置6の高さ位置(高さ検出器55によって検出されるロータリ耕耘装置6の高さ位置)が前述した退避高さに一致する(退避高さの不感帯幅内に収まる)までロータリ耕耘装置6を上昇させる上昇処理を開始し、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が退避高さに一致するのに伴って上昇処理を終了する。
【0025】
ローリング制御モジュール44Cは、ロール角設定ダイヤル57にて設定されたロータリ耕耘装置6のロール角、及び、傾斜センサ58にて検出されたトラクタ1のロール角、などに基づいて、ローリング駆動ユニット21の作動を制御して、ロータリ耕耘装置6のロール方向での傾斜姿勢を、ロール角設定ダイヤル57にて設定されたロータリ耕耘装置6のロール角に対応する所定の傾斜姿勢(例えば水平姿勢)に維持するロール角維持制御を実行する。
【0026】
測位ユニット24は、衛星測位システム(NSS:Navigation Satellite System)の一例であるGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用してトラクタ1の現在位置と現在方位とを測定する衛星航法装置25、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサなどを有してトラクタ1の姿勢や方位などを測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)26、などを有している。GNSSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS:相対測位方式)やRTK-GPS(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)などがある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK-GPSが採用されている。そのため、図1に示すように、圃場周辺の既知位置には、RTK-GPSによる測位を可能にする基準局73が設置されている。
【0027】
図1~2に示すように、トラクタ1と基準局73とのそれぞれには、GPS衛星74(図1参照)から送信された電波を受信するGPSアンテナ75,76、及び、トラクタ1と基準局73との間における測位情報を含む各情報の無線通信を可能にする通信モジュール77,78、などが備えられている。これにより、測位ユニット24の衛星航法装置25は、トラクタ側のGPSアンテナ75がGPS衛星74からの電波を受信して得た測位情報と、基地局側のGPSアンテナ76がGPS衛星74からの電波を受信して得た測位情報とに基づいて、トラクタ1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定することができる。又、測位ユニット24は、衛星航法装置25と慣性計測装置26とを有することにより、トラクタ1の現在位置、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
【0028】
このトラクタ1において、測位ユニット24の慣性計測装置26、GPSアンテナ75、及び、通信モジュール77は、図1に示すアンテナユニット79に含まれている。アンテナユニット79は、キャビン13の前面側における上部の左右中央箇所に配置されている。そして、トラクタ1におけるGPSアンテナ75の取り付け位置が、GPSを利用してトラクタ1の現在位置などを測定するときの測位対象位置p0となっている(図4参照)。
【0029】
図2~3に示すように、携帯通信端末3には、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどを有する端末制御ユニット80、及び、トラクタ側の通信モジュール77との間における測位情報を含む各情報の無線通信を可能にする通信モジュール90、などが備えられている。端末制御ユニット80には、表示デバイス4の作動などを制御する表示制御部81、自動走行用の目標経路Pを生成する目標経路生成部82、及び、目標経路生成部82が生成した目標経路Pなどを記憶する不揮発性の端末記憶部83、などが含まれている。端末記憶部83には、目標経路Pの生成に使用する各種の情報として、トラクタ1の旋回半径や作業幅などの車体情報、及び、前述した測位情報から得られる圃場情報、などが記憶されている。図4に示すように、圃場情報には、圃場Aの形状や大きさなどを特定するために、トラクタ1を圃場Aの外周縁に沿って走行させたときにGPSを利用して取得した圃場Aにおける複数の形状特定地点(形状特定座標)となる4つの角部地点Ap1~Ap4、及び、それらの角部地点Ap1~Ap4を繋いで圃場Aの形状や大きさなどを特定する矩形状の形状特定線AL、などが含まれている。
【0030】
図4に示すように、目標経路生成部82は、車体情報に含まれたトラクタ1の旋回半径や作業幅、及び、圃場情報に含まれた圃場Aの形状や大きさ、などに基づいて、目標経路Pを生成する。
具体的には、図4に示すように、例えば矩形状の圃場Aにおいて、自動走行の開始地点p1と終了地点p2とが設定され、トラクタ1の作業走行方向が圃場Aの短辺に沿う方向に設定されている場合は、目標経路生成部82は、先ず、圃場Aを、前述した4つの角部地点Ap1~Ap4と矩形状の形状特定線ALとに基づいて、圃場Aの外周縁に隣接するマージン領域A1と、マージン領域A1の内側に位置する走行領域A2とに区分けする。
次に、目標経路生成部82は、トラクタ1の旋回半径や作業幅などに基づいて、走行領域A2に、圃場Aの長辺に沿う方向に作業幅に応じた一定間隔をあけて並列に配置される複数の並列経路P1を生成するとともに、走行領域A2における各長辺側の外縁部に配置されて複数の並列経路P1を走行順に接続する複数の旋回経路P2を生成する。
そして、走行領域A2を、走行領域A2における各長辺側の外縁部に設定される一対の非作業領域A2aと、一対の非作業領域A2aの間に設定される作業領域A2bとに区分けするとともに、各並列経路P1を、一対の非作業領域A2aに含まれる非作業経路P1aと、作業領域A2bに含まれる作業経路P1bとに区分けする。
これにより、目標経路生成部82は、図4に示す圃場Aにおいてトラクタ1を自動走行させるのに適した目標経路Pを生成することができる。
【0031】
図4に示す圃場Aにおいて、マージン領域A1は、トラクタ1が走行領域A2の外周部を自動走行するときに、ロータリ耕耘装置6などが圃場Aに隣接する畦などの他物に接触することを防止するために、圃場Aの外周縁と走行領域A2との間に確保された領域である。各非作業領域A2aは、トラクタ1が圃場Aの畦際において現在の作業経路P1bから次の作業経路P1bに旋回移動するための畦際旋回領域である。
【0032】
図4に示す目標経路Pにおいて、各非作業経路P1aと各旋回経路P2は、トラクタ1が耕耘作業を行わずに自動走行する経路であり、前述した各作業経路P1bは、トラクタ1が耕耘作業を行いながら自動走行する経路である。各作業経路P1bの始端地点p3は、トラクタ1が耕耘作業を開始する作業開始地点であり、各作業経路P1bの終端地点p4は、トラクタ1が耕耘作業を停止する作業停止地点である。各非作業経路P1aは、トラクタ1が旋回経路P2にて旋回走行する前の作業停止地点p4と、トラクタ1が旋回経路P2にて旋回走行した後の作業開始地点p3とを、トラクタ1の作業走行方向で揃えるための位置合せ経路である。各並列経路P1と各旋回経路P2との各接続地点p5,p6のうち、各並列経路P1における終端側の接続地点p5はトラクタ1の旋回開始地点であり、各並列経路P1における始端側の接続地点p6はトラクタ1の旋回終了地点である。
【0033】
なお、図4に示す目標経路Pはあくまでも一例であり、目標経路生成部82は、トラクタ1の機種や作業の種類などに応じて異なる車体情報、及び、圃場Aに応じて異なる圃場Aの形状や大きさなどの圃場情報、などに基づいて、それらに適した種々の目標経路Pを生成することができる。
【0034】
目標経路Pは、車体情報や圃場情報などに関連付けされた状態で端末記憶部83に記憶されており、携帯通信端末3の表示デバイス4にて表示することができる。目標経路Pには、各並列経路P3におけるトラクタ1の目標車速、各旋回経路P2bにおけるトラクタ1の目標車速、各並列経路P1における前輪操舵角、及び、各旋回経路P2bにおける前輪操舵角、などが含まれている。
【0035】
端末制御ユニット80は、車載制御ユニット40からの送信要求指令に応じて、端末記憶部83に記憶されている車体情報と圃場情報と目標経路Pなどを車載制御ユニット40に送信する。車載制御ユニット40は、受信した車体情報と圃場情報と目標経路Pなどを車載記憶部47に記憶する。目標経路Pの送信に関しては、例えば、端末制御ユニット80が、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階において、目標経路Pの全てを端末記憶部83から車載制御ユニット40に一挙に送信するようにしてもよい。又、例えば、端末制御ユニット80が、目標経路Pを所定距離ごとの複数の分割経路情報に分割して、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階からトラクタ1の走行距離が所定距離に達するごとに、トラクタ1の走行順位に応じた所定数の分割経路情報を端末記憶部83から車載制御ユニット40に逐次送信するようにしてもよい。
【0036】
車載制御ユニット40において、自動走行制御部46には、車両状態検出機器23に含まれた各種のセンサやスイッチなどからの検出情報が、車速制御部42やステアリング制御部43などを介して入力されている。これにより、自動走行制御部46は、トラクタ1における各種の設定状態や各部の動作状態などを監視することができる。
【0037】
自動走行制御部46は、トラクタ1の走行モードが自動走行モードに切り換えられた状態において、搭乗者や車外の管理者などのユーザによって携帯通信端末3の表示デバイス4が操作されて自動走行の開始が指示された場合に、測位ユニット24にてトラクタ1の現在位置や現在方位などを取得しながら目標経路Pに従ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を開始する。
【0038】
自動走行制御部46による自動走行制御には、エンジン14に関する自動走行用の制御指令をエンジン制御部41に送信するエンジン用自動制御処理、トラクタ1の車速や前後進の切り換えに関する自動走行用の制御指令を車速制御部42に送信する車速用自動制御処理、ステアリングに関する自動走行用の制御指令をステアリング制御部43に送信するステアリング用自動制御処理、及び、ロータリ耕耘装置6などの作業装置に関する自動走行用の制御指令を作業装置制御部44に送信する作業用自動制御処理、などが含まれている。
【0039】
自動走行制御部46は、エンジン用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた設定回転数などに基づいてエンジン回転数の変更を指示するエンジン回転数変更指令、などをエンジン制御部41に送信する。エンジン制御部41は、自動走行制御部46から送信されたエンジン14に関する各種の制御指令に応じてエンジン回転数を自動で変更するエンジン回転数変更制御、などを実行する。
【0040】
自動走行制御部46は、車速用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた目標車速に基づいて無段変速装置の変速操作を指示する変速操作指令、及び、目標経路Pに含まれたトラクタ1の進行方向などに基づいて前後進切換装置の前後進切り換え操作を指示する前後進切り換え指令、などを車速制御部42に送信する。車速制御部42は、自動走行制御部46から送信された無段変速装置や前後進切換装置などに関する各種の制御指令に応じて、無段変速装置の作動を自動で制御する自動車速制御、及び、前後進切換装置の作動を自動で制御する自動前後進切り換え制御、などを実行する。自動車速制御には、例えば、目標経路Pに含まれた目標車速が零速である場合に、無段変速装置を零速状態まで減速制御してトラクタ1の走行を停止させる自動減速停止処理などが含まれている。
【0041】
自動走行制御部46は、ステアリング用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた前輪操舵角などに基づいて左右の前輪10の操舵を指示する操舵指令、などをステアリング制御部43に送信する。ステアリング制御部43は、自動走行制御部46から送信された操舵指令に応じて、パワーステアリングユニット16の作動を制御して左右の前輪10を操舵する自動操舵制御、及び、左右の前輪10が設定角度以上に操舵された場合に、ブレーキユニット17を作動させて旋回内側のブレーキを作動させる自動ブレーキ旋回制御、などを実行する。
【0042】
自動走行制御部46は、作業用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた作業開始地点p3に基づいてロータリ耕耘装置6の作業状態への切り換えを指示する作業開始指令、及び、目標経路Pに含まれた作業停止地点p4に基づいてロータリ耕耘装置6の非作業状態への切り換えを指示する作業停止指令、などを作業装置制御部44に送信する。
作業装置制御部44は、自動走行制御部46からの作業開始指令を受信した場合は、先ず、前述した昇降制御モジュール44Bによる自動昇降制御の作業高さ位置判定処理を行う。
作業装置制御部44は、作業高さ位置判定処理において設定作業高さが最下降位置でないと判定した場合は、前述した昇降制御モジュール44Bによる自動昇降制御の第1下降処理を開始するとともに、前述したクラッチ制御モジュール44Aによる作業動力伝達制御を実行し、かつ、ローリング制御モジュール44Cによるロール角維持制御を開始する。そして、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が設定作業高さに一致するのに伴って第1下降処理を終了する。これにより、ロータリ耕耘装置6を設定作業高さにて所定の傾斜姿勢に維持しながら作動させる耕耘作業を開始することができる。
作業装置制御部44は、作業高さ位置判定処理において設定作業高さが最下降位置であると判定した場合は、前述した昇降制御モジュール44Bによる自動昇降制御の第2下降処理を開始するとともに、前述したクラッチ制御モジュール44Aによる作業動力伝達制御を実行し、かつ、ローリング制御モジュール44Cによるロール角維持制御を開始する。そして、ロータリ耕耘装置6の作業深さが設定作業深さに一致するのに伴って、第2下降処理を終了するとともに、昇降制御モジュール44Bによる自動昇降制御の作業深さ維持処理を開始する。これにより、ロータリ耕耘装置6を設定作業深さに維持するとともに所定の傾斜姿勢に維持しながら作動させる耕耘作業を開始することができる。
作業装置制御部44は、自動走行制御部46からの作業停止指令を受信した場合は、前述した昇降制御モジュール44Bによる自動昇降制御の上昇処理を開始するとともに、前述したクラッチ制御モジュール44Aによる作業動力遮断制御を実行し、かつ、ローリング制御モジュール44Cによるロール角維持制御を終了する。そして、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が退避高さに一致するのに伴って上昇処理を終了する。これにより、ロータリ耕耘装置6による耕耘作業を停止させてロータリ耕耘装置6を退避高さに退避させることができる。
【0043】
つまり、前述した自動走行ユニット2には、パワーステアリングユニット16、ブレーキユニット17、作業クラッチユニット19、昇降駆動ユニット20、ローリング駆動ユニット21、車両状態検出機器23、測位ユニット24、車載制御ユニット40、及び、通信モジュール77、などが含まれている。そして、これらが適正に作動することにより、トラクタ1を目標経路Pに従って精度よく自動走行させることができるとともに、ロータリ耕耘装置6による耕耘を適正に行うことができる。
【0044】
図2に示すように、トラクタ1には、その周囲における障害物の存否を検知する障害物検知ユニット100が備えられている。障害物検知ユニット100が検知する障害物には、圃場Aの走行領域A2内で作業する作業者などの人物や他の作業車両、及び、圃場Aの走行領域A2内に既存の電柱や樹木などの物体が含まれている。
【0045】
自動走行制御部46は、障害物検知ユニット100が障害物の存在を検知したときに、障害物に対するトラクタ1の接触を回避する接触回避制御を実行する。接触回避制御には、トラクタ1の液晶モニタ32や携帯通信端末3の表示デバイス4などを使用して障害物の存在などをユーザに知らせる報知処理、トラクタ1の車速を自動で低下させる自動減速処理、及び、トラクタ1の車速を零速まで低下させてトラクタ1を停止させる自動減速停止処理、などが含まれている。
【0046】
図1~2、図5~6に示すように、障害物検知ユニット100は、トラクタ1の前後に位置する障害物の相対位置を測定する前後2台のライダーセンサ(LiDAR Sensor:Light Detection and Ranging Sensor)101,102と、トラクタ1からその左右に位置する障害物までの距離を測定する左右2組のソナーユニット103,104とを有している。
【0047】
図5~6に示すように、各ライダーセンサ101,102は、レーザを用いて障害物までの距離などを3次元で測定して3次元画像を生成する。各ライダーセンサ101,102は、レーザ光(例えば、パルス状の近赤外レーザ光)が障害物に当たって跳ね返ってくるまでの往復時間から障害物までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式によって障害物までの距離を測定する。各ライダーセンサ101,102は、レーザ光を上下方向及び左右方向に高速で走査し、各走査角における障害物までの距離を順次測定することで、障害物までの距離を3次元で測定する。各ライダーセンサ101,102は、それらの測定範囲C,D内における障害物までの距離をリアルタイムで繰り返し測定する。各ライダーセンサ101,102は、それぞれの測定結果に含まれている障害物までの直線距離や障害物に対する照射角度などから、障害物の相対位置を取得するとともに3次元画像を生成して車載制御ユニット40に出力する。各ライダーセンサ101,102からの3次元画像は、トラクタ1の液晶モニタ32や携帯通信端末3の表示デバイス4などにおいて表示させることができ、これにより、ユーザなどにトラクタ1の前方側の状況と後方側の状況とを視認させることができる。ちなみに、3次元画像では、例えば、色などを用いて遠近方向での距離を示すことができる。
【0048】
図1図5~6に示すように、前後のライダーセンサ101,102のうち、前ライダーセンサ101は、前述したアンテナユニット79が配置されているキャビン13の前面側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。これにより、前ライダーセンサ101は、トラクタ1の前方側が測定範囲Cとなるように設定されている。後ライダーセンサ102は、キャビン13の後端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の後方側を斜め上方側から見下ろす後下がり姿勢で配置されている。これにより、後ライダーセンサ102は、トラクタ1の後方側が測定範囲Dとなるように設定されている。
【0049】
各ライダーセンサ101,102の測定範囲C,Dにおいて、トラクタ1の一部やロータリ耕耘装置6の一部が入り込む領域には、それらの領域に入り込んだトラクタ1の一部やロータリ耕耘装置6の一部を各ライダーセンサ101,102が障害物として検知しないように、それらの領域を覆い隠すマスキング処理が施されている。
【0050】
なお、各ライダーセンサ101,102の測定範囲C,Dに関しては、それらの左右方向の範囲をロータリ耕耘装置6の作業幅に応じた設定範囲に制限するカット処理を施すようにしてもよい。
【0051】
前後のライダーセンサ101,102は、変速ユニット15の前後進切換装置が前進伝動状態に切り換えられたトラクタ1の前進走行時には、前ライダーセンサ101が測定状態になり、後ライダーセンサ102が測定停止状態になる。又、変速ユニット15の前後進切換装置が後進伝動状態に切り換えられたトラクタ1の後進走行時には、前ライダーセンサ101が測定停止状態になり、後ライダーセンサ102が測定状態になる。前後のライダーセンサ101,102は、それらの測定範囲C,D内に複数の障害物が存在する場合は、各障害物までの距離などを個別に測定する。
【0052】
図1図5~6に示すように、各ソナーユニット103,104は超音波を用いて障害物までの距離を測定する。各ソナーユニット103,104は、発信した超音波が障害物に当たって跳ね返ってくるまでの往復時間から障害物までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式によって障害物までの距離を測定する。左右のソナーユニット103,104のうち、右ソナーユニット103は、キャビン13の右側下方に配置された右乗降ステップ13Aに、小さい俯角を有する右下向き姿勢で取り付けられている。これにより、右ソナーユニット103は、トラクタ1の右外方側が測定範囲Nとなるように設定された状態で右側の前輪10と右側の後輪11との間の比較的高い位置に配置されている。左ソナーユニット104は、キャビン13の左側下方に配置された左乗降ステップ13Aに、小さい俯角を有する左下向き姿勢で取り付けられている。これにより、左ソナーユニット104は、トラクタ1の左外方側が測定範囲Nとなるように設定された状態で左側の前輪10と左側の後輪11との間の比較的高い位置に配置されている。
【0053】
図1~2、図5に示すように、トラクタ1には、その前方側と後方側とを撮像範囲とする前後2台のカメラ108,109が備えられている。前カメラ108は、前ライダーセンサ101と同様に、キャビン13の前面側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。後カメラ109は、後ライダーセンサ102と同様に、キャビン13の後端側における上部の左右中央箇所に、トラクタ1の後方側を斜め上方側から見下ろす後下がり姿勢で配置されている。各カメラ108,109の撮像画像は、トラクタ1の液晶モニタ32や携帯通信端末3の表示デバイス4などにおいて表示させることができ、これにより、ユーザなどにトラクタ1の周囲の状況を視認させることができる。
【0054】
図8に示すように、携帯通信端末3の表示デバイス4に表示される表示画面には、トラクタ1の走行モードが自動走行モードに切り換えられた場合に、携帯通信端末3を使用したロータリ耕耘装置6の昇降に関する遠隔操作を可能にする昇降操作画面が含まれている。昇降操作画面は、表示デバイス4に表示された表示画面選択スイッチの操作によって昇降操作画面が選択された場合に表示デバイス4に表示される。
【0055】
図3図8に示すように、昇降操作画面には、ロータリ耕耘装置6の昇降に関する表示を行う昇降表示領域60が確保されるとともに、トラクタ1の自動走行の開始を指示するスタートスイッチ61、自動走行中のトラクタ1の非常停止を指示する非常停止スイッチ62、及び、エンジン14の負荷率を表示するエンジン負荷率表示部63、などが表示される。昇降表示領域60には、ロータリ耕耘装置6の前述した退避高さへの上昇を指示する上昇スイッチ60A、ロータリ耕耘装置6の設定作業高さ又は設定作業深さへの下降を指示する下降スイッチ60B、設定作業高さの上げ方向への手動調整を可能にする第1調整スイッチ(作業高さ調整器の一例)60C、設定作業高さの下げ方向への手動調整を可能にする第2調整スイッチ(作業高さ調整器の一例)60D、第1調整スイッチ60Cや第2調整スイッチ60Dによる設定作業高さの調整をリセットする第1リセットスイッチ60E、設定作業深さの上げ方向への手動調整を可能にする第3調整スイッチ(作業高さ調整器の一例)60F、設定作業深さの下げ方向への手動調整を可能にする第4調整スイッチ(作業高さ調整器の一例)60G、第3調整スイッチ60Fと第4調整スイッチ60Gによる設定作業深さの調整をリセットする第2リセットスイッチ60H、ロータリ耕耘装置6の作業高さなどを表示する作業高さ表示部60K、及び、ロータリ耕耘装置6の別の作業高さである作業深さなどを表示する作業深さ表示部(作業高さ表示部の一例)60L、などが表示される。
【0056】
端末制御ユニット80は、自動走行モードにおいて上昇スイッチ60Aが操作されると、上昇スイッチ60Aからの前述した上昇指示を車載制御ユニット40に送信する。車載制御ユニット40は、受信した上昇スイッチ60Aからの上昇指示を、自動走行制御部46を介して作業装置制御部44に送信する。作業装置制御部44は、受信した上昇指示に基づいて、前述した昇降制御モジュール44Bによる自動昇降制御の上昇処理を行うとともに、前述したクラッチ制御モジュール44Aによる作業動力遮断制御を実行し、かつ、ローリング制御モジュール44Cによるロール角維持制御を終了する。そして、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が退避高さに一致するのに伴って上昇処理を終了する。
これにより、ロータリ耕耘装置6が設定作業高さ又は設定作業深さに位置する作業状態でトラクタ1が自動走行しているときに、ロータリ耕耘装置6を退避高さまで上昇させる必要が生じた場合には、ユーザは、昇降操作画面の上昇スイッチ60Aを操作することにより、自動走行中のトラクタ1を停止させることなく、ロータリ耕耘装置6を作動停止させた状態で退避高さまで上昇させることができる。
【0057】
端末制御ユニット80は、自動走行モードにおいて下降スイッチ60Bが操作されると、下降スイッチ60Bからの前述した下降指示を車載制御ユニット40に送信する。車載制御ユニット40は、受信した下降スイッチ60Bからの下降指示を、自動走行制御部46を介して作業装置制御部44に送信する。作業装置制御部44は、受信した下降指示に基づいて、先ず、前述した昇降制御モジュール44Bによる自動昇降制御の作業高さ位置判定処理を行う。そして、作業高さ位置判定処理において設定作業高さが最下降位置でないと判定した場合は、前述した昇降制御モジュール44Bによる自動昇降制御の第1下降処理を開始するとともに、前述したクラッチ制御モジュール44Aによる作業動力伝達制御を実行し、かつ、ローリング制御モジュール44Cによるロール角維持制御を開始する。そして、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が設定作業高さに一致するのに伴って第1下降処理を終了する。又、作業高さ位置判定処理において設定作業高さが最下降位置であると判定した場合は、前述した昇降制御モジュール44Bによる自動昇降制御の第2下降処理を開始するとともに、前述したクラッチ制御モジュール44Aによる作業動力伝達制御を実行し、かつ、ローリング制御モジュール44Cによるロール角維持制御を開始する。そして、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が設定作業深さに一致するのに伴って、第2下降処理を終了するとともに、昇降制御モジュール44Bによる自動昇降制御の作業深さ維持処理を開始する。
これにより、ロータリ耕耘装置6が退避作業に位置する作業停止状態でトラクタ1が自動走行しているときに、トラクタ1を作業停止状態から作業状態に切り換える場合には、ユーザは、昇降操作画面の下降スイッチ60Bを操作することにより、自動走行中のトラクタ1を停止させることなく、ロータリ耕耘装置6を設定作業高さ又は設定作業深さまで下降させて作動させることができる。
【0058】
端末制御ユニット80は、自動走行モードにおいて第1調整スイッチ60Cが操作されると、第1調整スイッチ60Cの操作に応じた補正係数を、作業高さ設定ダイヤル51による設定作業高さに乗じることで、その設定作業高さを上げ方向に調整し、調整後の設定作業高さを車載制御ユニット40に送信する。車載制御ユニット40は、受信した調整後の設定作業高さを、自動走行制御部46を介して作業装置制御部44に送信する。作業装置制御部44は、調整後の設定作業高さを受信すると、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が設定作業高さか否かを判定し、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が設定作業高さであれば、自動昇降制御における制御目標高さを調整後の設定作業高さに置き換える。そして、調整後の設定作業高さに基づく昇降制御モジュール44Bの自動昇降制御により、ロータリ耕耘装置6を、第1調整スイッチ60Cによる調整後の設定作業高さまで上昇させる。
これにより、ロータリ耕耘装置6が調整前の設定作業高さに位置する作業状態でトラクタ1が自動走行している場合に、ユーザが、ロータリ耕耘装置6の作業高さを上げ方向に微調整する必要があると感じたときは、第1調整スイッチ60Cを操作することで、自動走行中のトラクタ1を停止させることなく、ロータリ耕耘装置6の作業高さを上げ方向に微調整することができる。
【0059】
端末制御ユニット80は、自動走行モードにおいて第2調整スイッチ60Dが操作されると、第2調整スイッチ60Dの操作に応じた補正係数を、作業高さ設定ダイヤル51による設定作業高さに乗じることで、その設定作業高さを下げ方向に調整し、調整後の設定作業高さを車載制御ユニット40に送信する。車載制御ユニット40は、受信した調整後の設定作業高さを、自動走行制御部46を介して作業装置制御部44に送信する。作業装置制御部44は、調整後の設定作業高さを受信すると、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が設定作業高さか否かを判定し、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が設定作業高さであれば、自動昇降制御における制御目標高さを調整後の設定作業高さに置き換える。そして、調整後の設定作業高さに基づく昇降制御モジュール44Bの自動昇降制御により、ロータリ耕耘装置6を、第2調整スイッチ60Dによる調整後の設定作業高さまで下降させる。
これにより、ロータリ耕耘装置6が調整前の設定作業高さに位置する作業状態でトラクタ1が自動走行している場合に、ユーザが、ロータリ耕耘装置6の作業高さを下げ方向に微調整する必要があると感じたときは、第2調整スイッチ60Dを操作することで、自動走行中のトラクタ1を停止させることなく、ロータリ耕耘装置6の作業高さを下げ方向に微調整することができる。
【0060】
端末制御ユニット80は、自動走行モードにおいて第1リセットスイッチ60Eが操作されると、作業高さ設定ダイヤル51による設定作業高さが第1調整スイッチ60Cや第2調整スイッチ60Dによって調整されている場合は、その調整をリセットするとともに、第1リセット指令を車載制御ユニット40に送信する。車載制御ユニット40は、受信した第1リセット指令を、自動走行制御部46を介して作業装置制御部44に送信する。作業装置制御部44は、第1リセット指令を受信すると、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が調整後の設定作業高さか否かを判定し、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が調整後の設定作業高さであれば、自動昇降制御における制御目標高さを、作業高さ設定ダイヤル51による設定作業高さ(調整前の設定作業高さ)に置き換える。そして、調整前の設定作業高さに基づく昇降制御モジュール44Bの自動昇降制御により、ロータリ耕耘装置6を、作業高さ設定ダイヤル51による設定作業高さまで昇降させる。
これにより、ロータリ耕耘装置6が調整後の設定作業高さに位置する作業状態でトラクタ1が自動走行している場合に、ユーザが、ロータリ耕耘装置6の作業高さを、作業高さ設定ダイヤル51による設定作業高さに戻す必要があると感じたときは、第1リセットスイッチ60Eを操作することで、自動走行中のトラクタ1を停止させることなく、ロータリ耕耘装置6の作業高さを作業高さ設定ダイヤル51による設定作業高さに戻すことができる。
【0061】
端末制御ユニット80は、自動走行モードにおいて第3調整スイッチ60Fが操作されると、第3調整スイッチ60Fの操作に応じた補正係数を、作業深さ設定ダイヤル52による設定作業深さに乗じることで、その設定作業深さを上げ方向に調整し、調整後の設定作業深さを車載制御ユニット40に送信する。車載制御ユニット40は、受信した調整後の設定作業深さを、自動走行制御部46を介して作業装置制御部44に送信する。作業装置制御部44は、調整後の設定作業深さを受信すると、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が設定作業深さか否かを判定し、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が設定作業深さであれば、自動昇降制御における制御目標高さを調整後の設定作業深さに置き換える。そして、調整後の設定作業深さに基づく昇降制御モジュール44Bの自動昇降制御により、ロータリ耕耘装置6を、第3調整スイッチ60Fによる調整後の設定作業深さまで上昇させる。
これにより、ロータリ耕耘装置6が調整前の設定作業深さに位置する作業状態でトラクタ1が自動走行している場合に、ユーザが、ロータリ耕耘装置6の作業深さを上げ方向に微調整する必要があると感じたときは、第3調整スイッチ60Fを操作することで、自動走行中のトラクタ1を停止させることなく、ロータリ耕耘装置6の作業深さを上げ方向に微調整することができる。
【0062】
端末制御ユニット80は、自動走行モードにおいて第4調整スイッチ60Gが操作されると、第4調整スイッチ60Gの操作に応じた補正係数を、作業深さ設定ダイヤル52による設定作業深さに乗じることで、その設定作業深さを下げ方向に調整し、調整後の設定作業深さを車載制御ユニット40に送信する。車載制御ユニット40は、受信した調整後の設定作業深さを、自動走行制御部46を介して作業装置制御部44に送信する。作業装置制御部44は、調整後の設定作業深さを受信すると、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が設定作業深さか否かを判定し、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が設定作業深さであれば、自動昇降制御における制御目標高さを調整後の設定作業深さに置き換える。そして、調整後の設定作業深さに基づく昇降制御モジュール44Bの自動昇降制御により、ロータリ耕耘装置6を、第4調整スイッチ60Gによる調整後の設定作業深さまで下降させる。
これにより、ロータリ耕耘装置6が調整前の設定作業深さに位置する作業状態でトラクタ1が自動走行している場合に、ユーザが、ロータリ耕耘装置6の作業深さを下げ方向に微調整する必要があると感じたときは、第4調整スイッチ60Gを操作することで、自動走行中のトラクタ1を停止させることなく、ロータリ耕耘装置6の作業深さを下げ方向に微調整することができる。
【0063】
端末制御ユニット80は、自動走行モードにおいて第2リセットスイッチ60Hが操作されると、作業深さ設定ダイヤル52による設定作業深さが第3調整スイッチ60Fや第4調整スイッチ60Gによって調整されている場合は、その調整をリセットするとともに、第2リセット指令を車載制御ユニット40に送信する。車載制御ユニット40は、受信した第2リセット指令を、自動走行制御部46を介して作業装置制御部44に送信する。作業装置制御部44は、第2リセット指令を受信すると、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が調整後の設定作業深さか否かを判定し、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が調整後の設定作業深さであれば、自動昇降制御における制御目標高さを、作業深さ設定ダイヤル52による設定作業深さ(調整前の設定作業深さ)に置き換える。そして、調整前の設定作業深さに基づく昇降制御モジュール44Bの自動昇降制御により、ロータリ耕耘装置6を、作業深さ設定ダイヤル52による設定作業深さまで昇降させる。
これにより、ロータリ耕耘装置6が調整後の設定作業深さに位置する作業状態でトラクタ1が自動走行している場合に、ユーザが、ロータリ耕耘装置6の作業深さを、作業深さ設定ダイヤル52による設定作業深さに戻す必要があると感じたときは、第2リセットスイッチ60Hを操作することで、自動走行中のトラクタ1を停止させることなく、ロータリ耕耘装置6の作業深さを作業深さ設定ダイヤル52による設定作業深さに戻すことができる。
【0064】
図2~3に示すように、端末制御ユニット80には、作業高さ設定ダイヤル51又は作業深さ設定ダイヤル52による設定作業高さ又は設定作業深さが各調整スイッチ60C,60D,60F,60Gによって手動調整される場合に、調整後の設定作業高さ又は設定作業深さがロータリ耕耘装置6の機械的な昇降限界高さを超えないように、各調整スイッチ60C,60D,60F,60Gによる設定作業高さ又は設定作業深さの手動調整に制限をかける調整制限部84が備えられている。
【0065】
図8に示すように、作業高さ表示部60Kは、作業高さ設定ダイヤル51による設定作業高さと、第1調整スイッチ60C又は第2調整スイッチ60Dによる調整後の設定作業高さと、高さ検出器55により検出されたロータリ耕耘装置6の高さ位置とを表示する。作業深さ表示部60Lは、作業深さ設定ダイヤル52による設定作業深さと、第3調整スイッチ60F又は第4調整スイッチ60Gによる調整後の設定作業深さと、作業深さ検出器56により検出されたロータリ耕耘装置6の作業深さとを表示する。
【0066】
作業高さ表示部60Kにおいて、設定作業高さは、右向きの矢印60Kaで表示され、作業高さ設定ダイヤル51の操作に応じて上下方向に移動する。調整後の設定作業高さは、左向きの矢印60Kbで表示され、第1調整スイッチ60Cの操作に応じて上方に移動し、第2調整スイッチ60Dの操作に応じて下方に移動し、第1リセットスイッチ60Eの操作に応じて作業高さ設定ダイヤル51による設定作業高さに移動する。作業高さ表示部60Kにおいて、左向きの矢印60Kbに隣接して表示される矩形枠60Kcは、調整後の設定作業高さの不感帯幅であり、左向きの矢印60Kbと一体的に上下方向に移動する。
【0067】
作業深さ表示部60Lにおいて、設定作業深さは、右向きの矢印60Laで表示され、作業深さ設定ダイヤル52の操作に応じて上下方向に移動する。調整後の設定作業深さは、左向きの矢印60Lbで表示され、第3調整スイッチ60Fの操作に応じて上方に移動し、第4調整スイッチ60Gの操作に応じて下方に移動し、第2リセットスイッチ60Hの操作に応じて作業深さ設定ダイヤル52による設定作業深さに移動する。作業深さ表示部60Lにおいて、左向きの矢印60Lbに隣接して表示される矩形枠60Lcは、調整後の設定作業深さの不感帯幅であり、左向きの矢印60Lbと一体的に上下方向に移動する。
【0068】
ロータリ耕耘装置6の高さ位置は、トラクタ1がロータリ耕耘装置6を設定作業深さに位置させた作業状態で自動走行しているとき、つまり、設定作業高さが最下降位置に設定されることで、設定作業高さを示す右向きの矢印60Kaが作業高さ表示部60Kの最下端に位置する状態において、作業深さ検出器56が後部カバー6A(図1図5参照)の上下揺動を検出している間は、作業深さ表示部60Lにおいて横線60Mで表示され、それ以外のときは、作業深さ表示部60Lにおいて横線60Mで表示される。そして、ロータリ耕耘装置6の高さ位置を示す横線60Mは、ロータリ耕耘装置6の昇降に応じて、作業高さ表示部60K又は作業深さ表示部60Lにおいて上下方向に移動する。
【0069】
これにより、ロータリ耕耘装置6が設定作業高さに位置する作業状態でトラクタ1が自動走行しているときに、ユーザが、ロータリ耕耘装置6の作業高さを微調整する必要があると感じた場合は、図8に示す昇降操作画面の作業高さ表示部60Kを目視することで、右向きの矢印60Kaで表示される作業高さ設定ダイヤル51による設定作業高さと、左向きの矢印60Kbで表示される第1調整スイッチ60C又は第2調整スイッチ60Dによる調整後の設定作業高さと、横線60Mで表示される高さ検出器55にて検出されたロータリ耕耘装置6の高さ位置とのそれぞれを容易に把握することができる。そして、第1調整スイッチ60C又は第2調整スイッチ60Dを操作して、ロータリ耕耘装置6の作業高さを微調整するときには、図8に示す昇降操作画面の作業高さ表示部60Kに表示されたロータリ耕耘装置6の設定作業高さと調整後の設定作業高さとロータリ耕耘装置6の高さ位置とを比較することで、第1調整スイッチ60C又は第2調整スイッチ60Dによる設定作業高さの調整量や、その調整量に応じたロータリ耕耘装置6の高さ位置の変化量を容易に把握することができる。
【0070】
又、トラクタ1がロータリ耕耘装置6を設定作業深さに位置させた作業状態で自動走行しているときに、ユーザが、ロータリ耕耘装置6の作業深さを微調整する必要があると感じた場合は、図8に示す昇降操作画面の作業深さ表示部60Lを目視することで、右向きの矢印60Laで表示される作業深さ設定ダイヤル52による設定作業深さと、左向きの矢印60Lbで表示される第3調整スイッチ60F又は第4調整スイッチ60Gによる調整後の設定作業深さと、横線60Mで表示される作業深さ検出器56にて検出されたロータリ耕耘装置6の作業深さとのそれぞれを容易に把握することができる。そして、第3調整スイッチ60F又は第4調整スイッチ60Gを操作して、ロータリ耕耘装置6の作業深さを微調整するときには、図8に示す昇降操作画面の作業深さ表示部60Lに表示されたロータリ耕耘装置6の設定作業深さと調整後の設定作業深さとロータリ耕耘装置6の作業深さとを比較することで、第3調整スイッチ60F又は第4調整スイッチ60Gによる設定作業深さの調整量や、その調整量に応じたロータリ耕耘装置6の作業深さの変化量を容易に把握することができる。
【0071】
その結果、自動走行中のトラクタ1に対する携帯通信端末3を使用した遠隔操作によるロータリ耕耘装置6の作業高さ又は作業深さの調整を容易かつ適正に行うことができる。
【0072】
作業装置制御部44の昇降制御モジュール44Bは、昇降操作画面に表示された一時停止スイッチの操作などに基づいて自動走行モードにおけるトラクタ1の自動走行が一時的に停止された場合は、各調整スイッチ60C,60D,60F,60Gによる設定作業高さ又は設定作業深さの手動調整を有効な状態に維持する。
これにより、上記のようなトラクタ1の一時停止状態において、図8に示す昇降操作画面に表示されたスタートスイッチ61が操作されて、自動走行モードにおけるトラクタ1の自動走行が再開された場合には、ロータリ耕耘装置6を、一時停止前の自動走行モードにおけるトラクタ1の自動走行時と同じ設定作業高さ又は設定作業深さに簡便に位置させることが可能になり、一時停止前と同じ状態で耕耘作業を行わせることができる。
【0073】
作業装置制御部44の昇降制御モジュール44Bは、図8に示す昇降操作画面に表示された非常停止スイッチ62の操作、又は、障害物検知ユニット100による障害物の検知に基づく接触回避制御の実行などにより、トラクタ1を自動走行させる自動走行モードが終了されたときは、自動走行モードの終了に伴って、各調整スイッチ60C,60D,60F,60Gによる設定作業高さ又は設定作業深さの手動調整を無効にするとともに自動昇降制御の実行を禁止する。
【0074】
これにより、自動走行モード終了後の手動走行モードにおいても、各調整スイッチ60C,60D,60F,60Gによる設定作業高さ又は設定作業深さの手動調整が有効になることに起因して、各調整スイッチ60C,60D,60F,60Gによる設定作業高さ又は設定作業深さの調整前と調整後とで、作業高さ設定ダイヤル51又は作業深さ設定ダイヤル52の操作に応じて得られる設定作業高さ又は設定作業深さに差が生じることを回避することができる。
【0075】
そして、自動走行モードの終了に伴って、各調整スイッチ60C,60D,60F,60Gによる設定作業高さ又は設定作業深さの手動調整が無効になることで、設定作業高さ又は設定作業深さが作業高さ設定ダイヤル51又は作業深さ設定ダイヤル52の操作に対応する作業高さ又は作業深さ(調整前の作業高さ又は作業深さ)に戻されても、自動走行モードの終了後は自動昇降制御の実行が禁止されることから、自動走行モードの終了後に自動昇降制御が実行されることに起因して、ロータリ耕耘装置6が、調整後の設定作業高さ又は設定作業深さに対応する高さ位置から調整前の設定作業高さ又は設定作業深さに対応する高さ位置に不測に昇降する虞を回避することができる。
【0076】
作業装置制御部44の昇降制御モジュール44Bは、前述した自動昇降制御の実行禁止中に、図3に示す昇降スイッチ54や作業高さ設定ダイヤル51などのトラクタ1に備えられたいずれかの昇降用操作具が操作されたときに、自動昇降制御の実行禁止を解除する。
【0077】
これにより、ユーザが、自動走行モードが終了されたトラクタ1に搭乗して、トラクタ1に備えられた昇降スイッチ54又は作業高さ設定ダイヤル51などの昇降用操作具を操作したときに、自動走行モードの終了に伴って実行が禁止された自動昇降制御の実行禁止が解除されることから、ユーザがトラクタ1を手動走行モードで走行させるときには、昇降スイッチ54又は作業高さ設定ダイヤル51などの昇降用操作具の操作によるロータリ耕耘装置6の昇降操作が可能になり、ロータリ耕耘装置6を作業高さ設定ダイヤル51による設定作業高さ又は作業深さ設定ダイヤル52による設定作業深さなどに位置させることができる。
【0078】
そして、ユーザが昇降スイッチ54や作業高さ設定ダイヤル51などの昇降用操作具を操作するときは、その操作に基づくロータリ耕耘装置6の昇降をユーザが予測していることから、いずれかの昇降用操作具が操作されることで、自動昇降制御の実行禁止が解除されて、ロータリ耕耘装置6が、調整後の設定作業高さ又は設定作業深さに対応する高さ位置から調整前の設定作業高さ又は設定作業深さに対応する高さ位置などに昇降したとしても、このときのロータリ耕耘装置6の昇降がユーザにとって不測の事態になることを回避することができる。
【0079】
その結果、自動走行モード終了後の自動昇降制御によってロータリ耕耘装置6が不測に昇降する虞を回避しながらも、ユーザがトラクタ1を手動走行モードで走行させるときには、昇降スイッチ54などの操作に基づく自動昇降制御により、ロータリ耕耘装置6を作業高さ設定ダイヤル51による設定作業高さ又は作業深さ設定ダイヤル52による設定作業深さなどに昇降させることができる。
【0080】
図2~3に示すように、端末制御ユニット80は、通信モジュール77,90を介した車載制御ユニット40との通信状態を判定する通信状態判定部85と、通信状態判定部85により通信状態に異常が生じていると判定された場合に、判定後の各調整スイッチ60C,60D,60F,60Gによる設定作業高さ又は設定作業深さの手動調整を無効にする調整無効部86とを有している。
【0081】
これにより、自動走行中のトラクタ1に対して、ユーザが携帯通信端末3のいずれかの調整スイッチ60C,60D,60F,60Gを操作して設定作業高さ又は設定作業深さを調整するときに、端末制御ユニット80と車載制御ユニット40との通信状態に異常が生じていなければ、調整無効部86により、その調整スイッチ60C,60D,60F,60Gによる設定作業高さ又は設定作業深さの手動調整が無効にされることはないことから、その調整スイッチ60C,60D,60F,60Gの操作に応じた設定作業高さ又は設定作業深さの調整を応答性良く行うことができる。これにより、ロータリ耕耘装置6を設定作業高さ又は設定作業深さに位置させた状態でトラクタ1が自動走行しているときには、各調整スイッチ60C,60D,60F,60Gによる調整後の設定作業高さ又は設定作業深さに基づく自動昇降制御により、ロータリ耕耘装置6を調整後の設定作業高さ又は設定作業深さに応じた高さ位置に応答性良く昇降させることができる。
【0082】
一方、自動走行中のトラクタ1に対して、ユーザが携帯通信端末3のいずれかの調整スイッチ60C,60D,60F,60Gを操作して設定作業高さ又は設定作業深さを調整するときに、端末制御ユニット80と車載制御ユニット40との通信状態に異常が生じていれば、調整無効部86により、その調整スイッチ60C,60D,60F,60Gによる設定作業高さ又は設定作業深さの手動調整が無効にされることから、通信状態に異常が生じている間も、各その調整スイッチ60C,60D,60F,60Gによる設定作業高さ又は設定作業深さの手動調整が有効になることに起因して、通信状態の異常が解消されたときに、調整前の設定作業高さ又は設定作業深さから大きく離れた調整後の設定作業高さ又は設定作業深さが端末制御ユニット80と車載制御ユニット40に送信され、その大きく離れた調整後の設定作業高さ又は設定作業深さに基づく自動昇降制御により、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が急激に変更される虞を回避することができる。
【0083】
その結果、端末制御ユニット80と車載制御ユニット40との通信状態に異常が生じていないときには、自動走行中のトラクタ1に対する携帯通信端末3を使用した遠隔操作によるロータリ耕耘装置6の作業高さ又は作業深さの調整を応答性良く良好に行えるようにしながら、端末制御ユニット80と車載制御ユニット40との通信状態に異常が生じた後の異常解消時に、ロータリ耕耘装置6の高さ位置が急激に変更されることに起因してロータリ耕耘装置6が故障するなどの不具合が生じる虞を回避することができる。
【0084】
図6に示すように、障害物検知ユニット100において、各ライダーセンサ101,102の測定範囲C,Dは、各ライダーセンサ101,102から前後方向に離れた領域でロータリ耕耘装置6の作業幅よりも広い左右幅を有するように設定された減速制御領域C1,D1と、減速制御領域C1,D1よりも各ライダーセンサ101,102に近い領域に設定された停止制御領域C2,D2と、これらの領域C1,C2,D1,D2から左右に外れた左右の非減速制御領域C3,D3とに区画されている。
【0085】
自動走行制御部46は、障害物検知ユニット100による障害物の検知領域が減速制御領域C1,D1であれば、前述した接触回避制御の自動減速処理を行うことでトラクタ1の車速を低下させるとともに、前述した接触回避制御の報知処理を行うことで、減速制御領域C1,D1に障害物が存在してトラクタ1の減速操作が行われることを、トラクタ1の液晶モニタ32や携帯通信端末3の表示デバイス4などを使用してユーザに知らせる。
自動走行制御部46は、障害物検知ユニット100による障害物の検知領域が停止制御領域C2,D2であれば、前述した接触回避制御の自動減速停止処理を行うことでトラクタ1を停止させるとともに、前述した接触回避制御の報知処理を行うことで、停止制御領域C2,D2に障害物が存在してトラクタ1の減速停止操作が行われることを、トラクタ1の液晶モニタ32や携帯通信端末3の表示デバイス4などを使用してユーザに知らせる。
自動走行制御部46は、障害物検知ユニット100による障害物の検知領域が非減速制御領域C3,D3であれば、前述した接触回避制御の報知処理を行うことで、非減速制御領域C3,D3に障害物が存在するがトラクタ1の減速操作及び減速停止操作が行われないことを、トラクタ1の液晶モニタ32や携帯通信端末3の表示デバイス4などを使用してユーザに知らせる。
【0086】
図9に示すように、携帯通信端末3の表示デバイス4に表示される表示画面には、トラクタ1の走行モードが自動走行モードに切り換えられた場合に、自動走行モードによって自動走行するトラクタ1の車外からの監視を行い易くする自動走行監視画面が含まれている。自動走行監視画面は、表示デバイス4に表示された表示画面選択スイッチの操作によって自動走行監視画面が選択された場合に表示デバイス4に表示される。
【0087】
図9に示すように、自動走行監視画面には、目標経路Pに対するトラクタ1の走行状態を把握させる走行状態表示領域65が確保されるとともに、昇降操作画面と同様に表示されるスタートスイッチ61、非常停止スイッチ62、エンジン負荷率表示部63、及び、各カメラ108,109の撮像画像を表示する画像表示部64、などに加えて、障害物検知ユニット100による障害物の検知情報を表示する障害物情報表示部66などが表示される。画像表示部64は、前カメラ108の撮像画像を表示する前画像表示領域64Aと、後カメラ109の撮像画像を表示する後画像表示領域64Bとに上下に区画されている。
【0088】
障害物情報表示部66は、車載制御ユニット40の自動走行制御部46による前述した接触回避制御の報知処理に基づいて、障害物情報表示部66の表示色が変更される。
自動走行制御部46は、障害物検知ユニット100による障害物の検知領域が減速制御領域C1,D1であれば、前述した接触回避制御の報知処理において、障害物情報表示部66の表示色として黄色を指定し、黄色表示指令を携帯通信端末3の端末制御ユニット80に送信する。端末制御ユニット80は、その黄色表示指令に基づいて障害物情報表示部66の表示色を黄色にすることで、減速制御領域C1,D1に障害物が存在してトラクタ1の減速操作が行われることをユーザに知らせる。
自動走行制御部46は、障害物検知ユニット100による障害物の検知領域が停止制御領域C2,D2であれば、前述した接触回避制御の報知処理において、障害物情報表示部66の表示色として赤色を指定し、赤色表示指令を携帯通信端末3の端末制御ユニット80に送信する。端末制御ユニット80は、その赤色表示指令に基づいて障害物情報表示部66の表示色を赤色にすることで、停止制御領域C2,D2に障害物が存在してトラクタ1の減速停止操作が行われることをユーザに知らせる。
自動走行制御部46は、障害物検知ユニット100による障害物の検知領域が非減速制御領域C3,D3であれば、前述した接触回避制御の報知処理において、障害物情報表示部66の表示色として緑色(通常色)を指定し、緑色表示指令を携帯通信端末3の端末制御ユニット80に送信する。端末制御ユニット80は、その緑色表示指令に基づいて障害物情報表示部66の表示色を緑色にすることで、減速制御領域C1,D1及び停止制御領域C2,D2に障害物が存在しないことでトラクタ1の減速操作及び減速停止操作が行われないことをユーザに知らせる。
これにより、ユーザは、携帯通信端末3に対する特別な操作を行わなくても、障害物情報表示部66を監視することで、トラクタ1の周囲における障害物の存否と、障害物の検知に基づくトラクタ1の走行状態の遷移とを、車外からでも容易に把握することができる。
【0089】
図9~10に示すように、自動走行監視画面の画像表示部64は、画像表示部64を前画像表示領域64Aと後画像表示領域64Bとに区画する区画枠64Cが障害物情報表示部として機能するように表示設定されている。区画枠64Cは、車載制御ユニット40の自動走行制御部46による前述した接触回避制御の報知処理に基づいて、その表示状態が図10(a)に示す通常表示状態から以下に示す表示状態などに変更される。
自動走行制御部46は、例えば、障害物検知ユニット100による障害物の検知領域が前方の減速制御領域C1又は停止制御領域C2であれば、前述した接触回避制御の報知処理において、区画枠64Cにおける上片部64Caの赤色表示への変更を指示する上辺部赤色表示指令を携帯通信端末3の端末制御ユニット80に送信する。端末制御ユニット80は、その上辺部赤色表示指令に基づいて、図10(b)に示すように区画枠64Cにおける上片部64Caの表示色を赤色に変更することで、前方の減速制御領域C1又は停止制御領域C2に障害物が存在することをユーザに知らせる。
自動走行制御部46は、例えば、障害物検知ユニット100による障害物の検知領域が前左方の非減速制御領域C3であれば、前述した接触回避制御の報知処理において、区画枠64Cにおける左辺部64Cbの赤色表示への変更を指示する左辺部赤色表示指令を携帯通信端末3の端末制御ユニット80に送信する。端末制御ユニット80は、その左辺部赤色表示指令に基づいて、図10(c)に示すように区画枠64Cにおける左辺部64Cbの表示色を赤色に変更することで、前左方の非減速制御領域C3に障害物が存在することをユーザに知らせる。
自動走行制御部46は、例えば、障害物検知ユニット100による障害物の検知領域が前方の減速制御領域C1又は停止制御領域C2と前左方の非減速制御領域C3であれば、前述した接触回避制御の報知処理において、区画枠64Cにおける上片部64Caと左辺部64Cbの赤色表示への変更を指示する上左辺部赤色表示指令を携帯通信端末3の端末制御ユニット80に送信する。端末制御ユニット80は、その上左辺部赤色表示指令に基づいて、図10(d)に示すように区画枠64Cにおける上片部64Caと左辺部64Cbの表示色を赤色に変更することで、前方の減速制御領域C1又は停止制御領域C2と前左方の非減速制御領域C3とに障害物が存在することをユーザに知らせる。
このように、トラクタ1の障害物検知ユニット100が障害物を検知した場合は、その検知情報が携帯通信端末3の端末制御ユニット80に送信され、端末制御ユニット80が、その検知情報に基づいて、自動走行監視画面における画像表示部64の区画枠64Cを利用して障害物のトラクタ1との相対位置を表示することから、ユーザは、携帯通信端末3に対する特別な操作を行わなくても、画像表示部64の区画枠64Cを監視することで、トラクタ1の周囲における障害物の存否と、障害物のトラクタ1との相対位置とを、車外からでも容易に把握することができる。
【0090】
なお、接触回避制御の報知処理に関しては、トラクタ1の液晶モニタ32や携帯通信端末3の表示デバイス4などに備えられている文字表示機能や音声発生機能などを使用して、トラクタ1の周囲における障害物の存否、障害物のトラクタ1との相対位置、及び、障害物の検知に基づくトラクタ1の走行状態の遷移、などを文字や音声で知らせるようにしてもよい。
【0091】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
なお、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0092】
(1)作業車両1の構成に関する代表的な別実施形態は以下の通りである。
例えば、作業車両1は、左右の後輪11に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両1は、左右の前輪10及び左右の後輪11に代えて左右のクローラを備えるフルクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両1は、エンジン14の代わりに電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両1は、エンジン14と電動モータとを備えるハイブリッド仕様に構成されていてもよい。
【0093】
(2)昇降制御部44Bは、自動走行モードの終了に伴って自動昇降制御の実行を禁止し、自動昇降制御の実行禁止中に、作業車両1の作業高さ設定器51,52が操作されて、この操作で変更される設定作業高さが、自動走行モード終了時点の作業高さ調整器60C,60D,60F,60Gによる調整後の設定作業高さと一致したときに、自動昇降制御の実行禁止を解除するように構成されていてもよい。
【0094】
(3)遠隔操作装置3は、遠隔操作による作業装置6の作業高さ(作業深さを含む)の手動調整を可能にする作業高さ調整器60C,60D,60F,60Gに加えて、遠隔操作による作業装置6のロール角の手動調整を可能にするロール角調整器を有するように構成されていてもよい。
そして、表示デバイス4は、ロール角設定ダイヤル57により設定された作業装置6のロール角と、ロール角調整器による調整後のロール角と、傾斜センサ58により検出された作業車両1のロール角とを表示するロール角表示部を有するように構成されていてもよい。
【0095】
(4)複数の昇降用操作具には、作業装置のポジション制御を行うときに使用する昇降レバーなどが含まれていてもよい。
【0096】
<発明の付記>
本発明の第1特徴構成は、作業車両用の自動走行システムにおいて、
作業車両の自動走行を可能にする自動走行ユニットと、無線通信による前記作業車両の遠隔操作を可能にする遠隔操作装置と、を備え、
前記作業車両は、昇降可能な作業装置と、前記作業装置の作業高さを設定する作業高さ設定器と、前記作業装置の高さ位置を検出する高さ検出器と、前記作業装置の昇降を指示する昇降指示具と、前記作業装置の昇降を制御する昇降制御部と、を有し、
前記昇降制御部は、前記昇降指示具からの指示に基づいて、前記作業装置の制御目標高さを前記作業高さに設定して、前記作業装置の高さ位置を前記作業高さに一致させる自動昇降制御を実行し、
前記遠隔操作装置は、前記作業車両の遠隔操作に関する情報を表示する表示デバイスと、前記作業車両の自動走行モードにおいて前記作業高さの手動調整を可能にする作業高さ調整器と、を有し、
前記表示デバイスは、前記作業高さ設定器により設定された作業高さと、前記作業高さ調整器による調整後の作業高さと、前記高さ検出器により検出された前記作業装置の高さ位置と、を表示する作業高さ表示部を有している点にある。
【0097】
本構成によれば、作業車両が自動走行しているときに、ユーザが、遠隔操作装置の作業高さ調整器を使用して作業装置の作業高さを手動調整する場合には、遠隔操作装置における表示デバイスの作業高さ表示部において、作業車両の作業高さ設定器により設定された作業装置の作業高さ(以下、設定作業高さと称する)、遠隔操作装置の作業高さ調整器により手動調整された後の設定作業高さ(調整後の作業高さ)と、高さ検出器により検出された作業装置の高さ位置が表示される。
【0098】
これにより、ユーザは、表示デバイスの作業高さ表示部を目視することで、設定作業高さと、調整後の設定作業高さと、作業装置の高さ位置とのそれぞれを容易に把握することができる。そして、作業高さ調整器を操作して設定作業高さを手動調整するときには、作業高さ表示部に表示された設定作業高さと調整後の設定作業高さと作業装置の高さ位置とを比較することで、作業高さ調整器による設定作業高さの調整量や、その調整量に応じた作業装置の高さ位置の変化量などを容易に把握することができる。
【0099】
その結果、自動走行中の作業車両に対する遠隔操作装置を使用した遠隔操作による作業装置の作業高さの調整を容易かつ適正に行うことができる。
【0100】
本発明の第2特徴構成は、
前記昇降制御部は、前記自動走行モードの終了に伴って、前記作業高さ調整器による前記作業高さの手動調整を無効にするとともに前記自動昇降制御の実行を禁止する点にある。
【0101】
本構成によれば、自動走行モードの終了後も作業高さ調整器による設定作業高さの手動調整が有効になることに起因して、作業高さ調整器による設定作業高さの調整前と調整後とで、作業高さ設定器の操作に応じて得られる設定作業高さに差が生じることを回避することができる。
【0102】
そして、自動走行モードの終了に伴って、作業高さ調整器による設定作業高さの手動調整が無効になることで、設定作業高さが作業高さ調整器による調整前の作業高さ設定器の操作に対応する作業高さに戻されても、自動走行モードの終了後は自動昇降制御の実行が禁止されることから、自動走行モードの終了後に自動昇降制御が実行されることに起因して、作業装置が、作業高さ調整器による調整後の設定作業高さに対応する高さ位置から調整前の設定作業高さに対応する高さ位置に不測に昇降する虞を回避することができる。
【0103】
本発明の第3特徴構成は、
前記作業車両には、前記作業高さ設定器と前記昇降指示具とを含む前記作業装置の昇降に関する複数の昇降用操作具が備えられ、
前記昇降制御部は、前記自動昇降制御の実行禁止中にいずれかの前記昇降用操作具が操作されたときに、前記自動昇降制御の実行禁止を解除する点にある。
【0104】
本構成によれば、ユーザが、自動走行モードが終了された作業車両に搭乗して、作業車両に備えられたいずれかの昇降用操作具を操作したときに、自動走行モードの終了に伴って実行が禁止された自動昇降制御の実行禁止が解除されることから、ユーザが作業車両を手動走行モードで走行させるときには、昇降指示具の操作による作業装置の昇降操作が可能になり、作業装置を作業高さ設定器による設定作業高さなどに位置させることができる。
【0105】
そして、ユーザがいずれかの昇降用操作具を操作するときは、その操作に基づく作業装置の昇降をユーザが予測していることから、いずれかの昇降用操作具が操作されることで自動昇降制御の実行禁止が解除されて、作業装置が、作業高さ調整器による調整後の設定作業高さに対応する高さ位置から調整前の設定作業高さに対応する高さ位置などに昇降したとしても、このときの作業装置の昇降がユーザにとって不測の事態になることを回避することができる。
【0106】
その結果、自動走行モード終了後の自動昇降制御によって作業装置が不測に昇降する虞を回避しながらも、ユーザが作業車両を手動走行モードで走行させるときには、昇降指示具などの操作に基づく自動昇降制御により、作業装置を作業高さ設定器による設定作業高さなどに昇降させることができる。
【0107】
本発明の第4特徴構成は、
前記遠隔操作装置は、前記作業車両との通信状態を判定する通信状態判定部と、前記通信状態判定部により前記通信状態に異常が生じていると判定された場合に、判定後の前記作業高さ調整器による前記作業高さの手動調整を無効にする調整無効部とを有している点にある。
【0108】
本構成によれば、自動走行中の作業車両に対して、ユーザが遠隔操作装置の作業高さ調整器を操作して設定作業高さを調整するときに、遠隔操作装置と作業車両との通信状態に異常が生じていなければ、調整無効部によって作業高さ調整器による設定作業高さの手動調整が無効にされることはないことから、ユーザによる作業高さ調整器の操作に応じた設定作業高さの調整を応答性良く行うことができる。これにより、作業装置を設定作業高さに位置させた状態で作業車両が自動走行しているときには、作業高さ調整器による調整後の設定作業高さに基づく自動昇降制御により、作業装置を調整後の設定作業高さに応じた高さ位置に応答性良く昇降させることができる。
【0109】
一方、自動走行中の作業車両に対して、ユーザが遠隔操作装置の作業高さ調整器を操作して設定作業高さを調整するときに、遠隔操作装置と作業車両との通信状態に異常が生じていれば、調整無効部によって作業高さ調整器による設定作業高さの手動調整が無効にされることから、通信状態に異常が生じている間も、作業高さ調整器による設定作業高さの手動調整が有効になることに起因して、通信状態の異常が解消されたときに、調整前の設定作業高さから大きく離れた調整後の設定作業高さが遠隔操作装置から作業車両に送信され、その大きく離れた調整後の設定作業高さに基づく自動昇降制御により、作業装置の高さ位置が急激に変更される虞を回避することができる。
【0110】
その結果、遠隔操作装置と作業車両との通信状態に異常が生じていないときには、自動走行中の作業車両に対する遠隔操作装置を使用した遠隔操作による作業装置の作業高さの調整を応答性良く良好に行えるようにしながら、遠隔操作装置と作業車両との通信状態に異常が生じた後の異常解消時に、作業装置の高さ位置が急激に変更されることに起因して作業装置が故障するなどの不具合が生じる虞を回避することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 トラクタ(作業車両)
2 自動走行ユニット
3 携帯通信端末(遠隔操作装置)
4 表示デバイス
6 ロータリ耕耘装置(作業装置)
44B 昇降制御モジュール(昇降制御部)
51 作業高さ設定ダイヤル(作業高さ設定器、昇降用操作具)
52 作業深さ設定ダイヤル(作業高さ設定器、昇降用操作具)
53 退避高さ設定ダイヤル(昇降用操作具)
54 昇降スイッチ(昇降指示具、昇降用操作具)
55 高さ検出器
56 作業深さ検出器(高さ検出器)
60C 第1調整スイッチ(作業高さ調整器)
60D 第2調整スイッチ(作業高さ調整器)
60F 第3調整スイッチ(作業高さ調整器)
60G 第4調整スイッチ(作業高さ調整器)
60K 作業高さ表示部
60L 作業深さ表示部(作業高さ表示部)
85 通信状態判定部
86 調整無効部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10