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特許7583704電極板の製造方法、二次電池の製造方法、電極板および二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-06
(45)【発行日】2024-11-14
(54)【発明の名称】電極板の製造方法、二次電池の製造方法、電極板および二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/64 20060101AFI20241107BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20241107BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241107BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241107BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20241107BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20241107BHJP
   H01M 50/536 20210101ALI20241107BHJP
   H01M 50/538 20210101ALI20241107BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20241107BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20241107BHJP
【FI】
H01M4/64 A
H01M4/04 A
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/66 A
H01M50/531
H01M50/536
H01M50/538
H01G11/68
H01G11/86
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021213044
(22)【出願日】2021-12-27
(65)【公開番号】P2023096957
(43)【公開日】2023-07-07
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】塚本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】角 恭伍
(72)【発明者】
【氏名】曲 佳文
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-037296(JP,A)
【文献】特開2016-033912(JP,A)
【文献】特開2018-166079(JP,A)
【文献】特開2015-069938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
4/64-4/84
50/50-598
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔である電極芯体と、前記電極芯体の表面に付与された電極活物質層とを備えた電極板を製造する方法であって、
前記電極芯体の表面に前記電極活物質層が付与された活物質付与領域と、前記電極活物質層が付与されずに前記電極芯体が露出した芯体露出領域とを有する電極前駆体を準備する前駆体準備工程と、
前記芯体露出領域をレーザで切断して電極タブを形成する芯体露出領域切断工程と
を備え、
前記電極芯体は、第1面と、当該第1面の反対側の面であって前記第1面よりも表面粗さが小さい第2面とを有しており、
前記芯体露出領域切断工程において、前記第1面に前記レーザを照射する、電極板の製造方法。
【請求項2】
前記レーザがパルスレーザである、請求項1に記載の電極板の製造方法。
【請求項3】
前記電極芯体は、銅又は銅合金を含む、請求項1または2に記載の電極板の製造方法。
【請求項4】
前記第2面の平均粗さSaが0.07μm以上0.25μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の電極板の製造方法。
【請求項5】
前記第1面の平均粗さSaが0.1μm以上0.3μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の電極板の製造方法。
【請求項6】
前記活物質付与領域をレーザで切断する活物質付与領域切断工程をさらに備え、
前記芯体露出領域切断工程と前記活物質付与領域切断工程を交互に実施することによって、前記活物質付与領域の側縁部から複数の前記電極タブが突出する電極板を製造する、請求項1~5のいずれか一項に記載の電極板の製造方法。
【請求項7】
正極板と負極板を含む電極体を備えた二次電池の製造方法であって、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電極板の製造方法を用いて、前記正極板と前記負極板の少なくとも一方を製造する、二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記電極タブが複数枚積層された電極タブ群を有する電極体を作製する電極体作製工程と、
前記電極タブ群の一方の表面に集電部材を接続する集電部材接続工程と
をさらに備え、
前記集電部材接続工程において、前記集電部材が接続されない前記電極タブ群の他方の表面に前記電極芯体の前記第2面を配置する、請求項7に記載の二次電池の製造方法。
【請求項9】
箔状の金属部材である電極芯体と、前記電極芯体の表面に付与された電極活物質層とを備えた電極板であって、
前記電極芯体の表面に前記電極活物質層が付与された領域である極板本体部と、
前記極板本体部から突出し、前記電極活物質層が付与されておらず、前記電極芯体が露出している露出領域を含む電極タブと
を備え、
前記電極芯体は、第1面と、当該第1面の反対側の面であって前記第1面よりも表面粗さが小さい第2面とを有しており、
前記電極タブにおいて露出する前記電極芯体は、前記第2面に付着した金属粒子の数が前記第1面に付着した金属粒子の数よりも少なく、
前記第1面における前記金属粒子の付着数が80個/cm 以下であり、かつ、前記第2面における前記金属粒子の付着数が40個/cm以下である、電極板。
【請求項10】
箔状の金属部材である電極芯体と、前記電極芯体の表面に付与された電極活物質層とを備えた電極板であって、
前記電極芯体の表面に前記電極活物質層が付与された領域である極板本体部と、
前記極板本体部から突出し、前記電極活物質層が付与されておらず、前記電極芯体が露出している露出領域を含む電極タブと
を備え、
前記電極芯体は、第1面と、当該第1面の反対側の面であって前記第1面よりも表面粗さが小さい第2面とを有しており、
前記電極タブにおいて露出する前記電極芯体は、前記第2面に付着した金属粒子の数が前記第1面に付着した金属粒子の数よりも少なく、
前記第1面における前記金属粒子の付着数が80個/cm 以下であり、かつ、前記第1面における前記金属粒子の付着数に対する前記第2面における前記金属粒子の付着数割合が1/2以下である、電極板。
【請求項11】
箔状の金属部材である電極芯体と、前記電極芯体の表面に付与された電極活物質層とを備えた電極板であって、
前記電極芯体の表面に前記電極活物質層が付与された領域である極板本体部と、
前記極板本体部から突出し、前記電極活物質層が付与されておらず、前記電極芯体が露出している露出領域を含む電極タブと
を備え、
前記電極芯体は、第1面と、当該第1面の反対側の面であって前記第1面よりも表面粗さが小さい第2面とを有しており、
前記電極タブにおいて露出する前記電極芯体は、前記第2面に付着した金属粒子の数が前記第1面に付着した金属粒子の数よりも少なく、
前記極板本体部の外側縁部に、前記電極芯体上に前記電極活物質層の変性物が固着した変性物固着領域が形成されており、前記第1面における前記変性物固着領域の幅が、前記第2面における前記変性物固着領域の幅よりも大きい、電極板。
【請求項12】
前記電極タブは、前記極板本体部の外側縁部から外側に向かって複数突出しており、
前記電極タブの各々は、前記極板本体部と隣接した前記電極タブの根本部分に、前記電極活物質層が付与されている活物質層付与領域を含む、請求項9に記載の電極板。
【請求項13】
正極板と負極板を含む電極体を備えた二次電池であって、
前記正極板と前記負極板の少なくとも一つが請求項9~12のいずれか一項に記載の電極板である、二次電池。
【請求項14】
前記電極体は、前記電極タブが複数枚積層された電極タブ群を備えており、
前記電極タブ群の一方の表面に集電部材が接続され、かつ、前記集電部材が接続されない前記電極タブ群の他方の表面に前記電極芯体の前記第2面が配置されている、請求項13に記載の二次電池。
【請求項15】
前記集電部材と前記電極体の側面とが対向するように前記電極タブ群が折り曲げられている、請求項14に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極板の製造方法、二次電池の製造方法、電極板および二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、例えば、セパレータを介して正極板と負極板とが対向した電極体を備えている。以下、これらの正極板と負極板をまとめて「電極板」と称する。この電極板は、例えば、金属箔である電極芯体と、当該電極芯体の表面に付与された電極活物質層とを備えている。かかる構成の電極板の製造では、まず、大型の電極芯体に電極活物質層を付与し、電極板の前駆体(以下「電極前駆体」という)を作製する。そして、レーザ等を用いて電極前駆体から電極板を切り出す。これによって、所望のサイズの電極板を得ることができる。この電極板の切り出しには、連続波レーザ(CWレーザ)やパルスレーザ等の種々のレーザが使用される(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、二次電池を構築する際には、電極芯体が露出した電極タブを電極板の一部に形成し、当該電極タブと導電部材(集電部材等)とを接続することがある。この電極タブを有する電極板を製造する場合には、まず、電極活物質層が付与されておらず、電極芯体が露出した領域(芯体露出領域)を電極前駆体に形成する。そして、電極前駆体から電極板を切り出す際に、芯体露出領域の一部を切り出す。これによって、芯体露出領域の一部(電極タブ)を有する電極板を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-37308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電極タブを有する電極板の製造では、金属箔(電極芯体)が露出する芯体露出領域をレーザ切断する際に、溶融した微細な金属片(スパッタ)が飛散し、電極板の電極タブに付着することがある。そして、構築後の二次電池内部で電極タブからスパッタが大量に脱離すると、微小な内部短絡が発生する可能性が高くなるおそれがある。
【0006】
本発明は、上述の課題を鑑みてなされたものであり、電極板の電極タブへのスパッタの付着数を低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を実現するべく、ここに開示される電極板の製造方法が提供される。
【0008】
ここに開示される電極板の製造方法は、金属箔である電極芯体と、電極芯体の表面に付与された電極活物質層とを備えた電極板を製造する。かかる電極板の製造方法は、電極芯体の表面に電極活物質層が付与された活物質付与領域と、電極活物質層が付与されずに電極芯体が露出した芯体露出領域とを有する電極前駆体を準備する前駆体準備工程と、芯体露出領域をレーザで切断して電極タブを形成する芯体露出領域切断工程とを備えている。そして、ここに開示される電極板の製造方法では、電極芯体は、第1面と、当該第1面の反対側の面であって第1面よりも表面粗さが小さい第2面とを有しており、芯体露出領域切断工程において、第1面にレーザを照射する。
【0009】
ここに開示される技術は、電極芯体の各面の表面粗さの違いがスパッタの付着量に大きな影響を与えることに着目してなされたものである。具体的には、レーザ照射面におけるスパッタの付着量は、レーザ照射面の表面粗さの大小による影響を受け難いことを見出した。また、レーザ非照射面におけるスパッタの付着量は、レーザ非照射面の表面粗さの大小による影響を受け易く、レーザ非照射面の表面粗さが大きいほど、スパッタの付着量が多くなることを見出した。そして、ここに開示される電極板の製造方法では、表面粗さが小さい方の第2面をレーザ非照射面としている。これによって、電極芯体のレーザ非照射面側に飛散したスパッタが電極芯体のレーザ非照射面に付着され難くなり、電極タブへのスパッタの付着数を低減できる。
【0010】
ここに開示される電極板の製造方法の好適な一態様では、レーザがパルスレーザである。パルスレーザは、他のレーザ(CWレーザ等)と比べて容易に電極板を切断できる一方で、スパッタの飛散量が多くなる傾向がある。しかし、ここに開示される製造方法によると、パルスレーザを使用してスパッタの飛散量が増大した場合でも、電極タブへのスパッタの付着量を十分に低減することができる。
【0011】
ここに開示される電極板の製造方法の好適な一態様では、電極芯体は、銅又は銅合金を含む。これらの銅系材料を含む負極芯体から生じたスパッタは、導電性が高いため、微小な内部短絡による電池性能の低下を生じさせやすい。しかし、ここに開示される電極板の製造方法は、電極タブへのスパッタの付着量を低減できるため、銅系材料を含む電極芯体を用いた場合でも、微小な内部短絡による電池性能の低下を好適に防止できる。
【0012】
ここに開示される電極板の製造方法の好適な一態様では、第2面の平均粗さSaが0.07μm以上0.25μm以下である。このような表面粗さの小さな第2面を有する電極芯体を用いることによって、スパッタの付着量をより好適に低減することができる。
【0013】
ここに開示される電極板の製造方法の好適な一態様では、第1面の平均粗さSaが0.1μm以上0.3μm以下である。ここに開示される電極板の製造方法によると、このような第1面を有する電極芯体を用いた場合でも、電極芯体へのスパッタの付着量を低減できる。
【0014】
ここに開示される電極板の製造方法の好適な一態様では、活物質付与領域をレーザで切断する活物質付与領域切断工程をさらに備え、芯体露出領域切断工程と活物質付与領域切断工程を交互に実施することによって、活物質付与領域の側縁部から複数の電極タブが突出する電極板を製造する。これによって、電極板の表面側に多量のスパッタが飛散する芯体露出領域のレーザ切断を最小限に留めることができるため、電極タブへのスパッタの付着量をさらに低減できる。
【0015】
また、ここに開示される技術の他の側面として、二次電池の製造方法が提供される。かかる二次電池の製造方法は、正極板と負極板を含む電極体を備えた二次電池を製造する方法であって、上記構成の電極板の製造方法を用いて、正極板と負極板の少なくとも一方を製造する。これによって、製造後の二次電池内部で電極板からスパッタが脱離すること抑制し、二次電池の性能低下を防止することができる。
【0016】
ここに開示される二次電池の製造方法の好適な一態様では、電極タブが複数枚積層された電極タブ群を有する電極体を作製する電極体作製工程と、電極タブ群の一方の表面に集電部材を接続する集電部材接続工程とをさらに備え、集電部材接続工程において、集電部材が接続されない電極タブ群の他方の表面に電極芯体の第2面を配置する。これによって、スパッタの付着量が第2面よりも多い第1面を電極タブと集電部材との間(又は複数枚の電極タブの間)に封入できるため、電極板からのスパッタの脱離をより好適に抑制できる。
【0017】
また、ここに開示される技術の他の側面として、電極板が提供される。すなわち、ここに開示される電極板は、箔状の金属部材である電極芯体と、電極芯体の表面に付与されて電極活物質を含む電極活物質層とを備えている。また、この電極板は、電極芯体の表面に電極活物質層が付与された領域である極板本体部と、極板本体部から突出し、電極活物質層が付与されておらず、電極芯体が露出している露出領域を含む電極タブとを備えている。そして、この電極板の電極芯体は、第1面と、当該第1面の反対側の面であって第1面よりも表面粗さが小さい第2面とを有しており、電極タブにおいて露出する電極芯体は、第2面に付着した金属粒子の数が第1面に付着した金属粒子の数よりも少ない。ここに開示される電極板は、上記構成の電極板の製造方法によって製造されたものである。この電極板は、相対的に表面粗さが小さい第2面における金属粒子(スパッタ)の付着数が少ないという構造的な特徴を有している。
【0018】
ここに開示される電極板の好適な一態様では、電極タブは、極板本体部の外側縁部から外側に向かって複数突出しており、電極タブの各々は、極板本体部と隣接した電極タブの根本部分に、電極活物質層が付与されている活物質層付与領域を含む。かかる構成の電極板を製造するには、芯体露出領域切断工程と活物質付与領域切断工程を交互に実施する必要がある。上述した通り、このような製造工程を採用すると、多量のスパッタが飛散する芯体露出領域のレーザ切断を最小限に留めることができるため、電極タブへのスパッタの付着量をさらに低減できる。
【0019】
ここに開示される電極板の好適な一態様では、極板本体部の外側縁部に、電極芯体上に電極活物質層の変性物が固着した変性物固着領域が形成されており、第1面における変性物固着領域の幅が、第2面における変性物固着領域の幅よりも大きい。ここに開示される電極板では、電極芯体の第1面の表面粗さが第2面よりも大きいため、レーザ照射面である第1面に多く付着した電極活物質層の変性物が電極芯体から脱離することを抑制できる。
【0020】
また、ここに開示される技術の他の側面として、二次電池が提供される。かかる二次電池は、正極板と負極板を含む電極体を備えた二次電池であって、正極板と負極板の少なくとも一つが上記構成の電極板である。これによって、二次電池の内部で電極板からスパッタが脱離すること抑制し、微小な内部短絡による二次電池の性能低下を防止できる。
【0021】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、電極体は、電極タブが複数枚積層された電極タブ群を備えており、電極タブ群の一方の表面に集電部材が接続され、かつ、集電部材が接続されない電極タブ群の他方の表面に電極芯体の第2面が配置されている。これによって、スパッタの付着量が第2面よりも多い第1面が電極タブと集電部材との間(又は複数枚の電極タブの間)に封入されるため、電極タブからのスパッタの脱離をより好適に抑制できる。
【0022】
ここに開示される二次電池の好適な一態様では、集電部材と電極体の側面とが対向するように電極タブ群が折り曲げられている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態に係る電極板の製造方法を示すフローチャートである。
図2】一実施形態に係る電極板の製造方法によって製造される負極板を模式的に示す平面図である。
図3】一実施形態に係る電極板の製造方法を説明する平面図である。
図4図3中のIV-IV矢視断面図である。
図5図2中のV-V矢視断面図である。
図6】一実施形態に係る二次電池を模式的に示す斜視図である。
図7図6中のVII-VII線に沿う模式的な縦断面図である。
図8図6中のVIII-VIII線に沿う模式的な縦断面図である。
図9図6中のIX-IX線に沿う模式的な横断面図である。
図10】封口板に取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
図11】正極第2集電部と負極第2集電部が取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
図12】一実施形態に係る二次電池の電極体を説明する斜視図である。
図13】正極第2集電部と負極第2集電部が取り付けられた電極体を模式的に示す正面図である。
図14図13中のXIV-XIV矢視断面図である。
図15】他の実施形態に係る二次電池の集電部と電極体との接続部分を模式的に示す断面図である。
図16】従来の電極板の製造方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術の実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0025】
なお、本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して一対の電極(正極と負極)の間で電荷担体が移動することによって充放電反応が生じる蓄電デバイス一般をいう。かかる二次電池は、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のいわゆる蓄電池の他に、電気二重層キャパシタ等のキャパシタなども包含する。
【0026】
1.電極板の製造方法
ここに開示される電極板の製造方法は、二次電池用の電極板を製造する。以下では、ここに開示される電極板の製造方法の一実施形態として、リチウムイオン二次電池の負極側の電極板(負極板)を製造する方法を説明する。図1は、本実施形態に係る電極板の製造方法を示すフローチャートである。図2は、本実施形態に係る電極板の製造方法によって製造される負極板を模式的に示す平面図である。図3は、本実施形態に係る電極板の製造方法を説明する平面図である。また、図4は、図3中のIV-IV矢視断面図である。図5は、図2中のV-V矢視断面図である。なお、図2~5中の符号Lは負極板20(又は負極前駆体20A)の「長手方向」を示し、符号Sは「短手方向」を示し、符号Tは「厚み方向」を示す。
【0027】
図1に示すように、本実施形態に係る電極板の製造方法は、前駆体準備工程S1と、活物質付与領域切断工程S2と、芯体露出領域切断工程S3とを備えている。これによって、図2に示す構成の負極板20が製造される。以下、製造対象である負極板20の概要を説明した後に、図1に示す各工程について説明する。
【0028】
(1)負極板の概要
図2に示すように、負極板20は、長尺な帯状部材である。負極板20は、長尺な金属箔である負極芯体22と、負極芯体22の表面に付与された負極活物質層24とを備えている。なお、負極活物質層24は、負極芯体22の両面に付与されていることが好ましい(図5参照)。これによって、より優れた電池性能を有する二次電池を構築できる。そして、本実施形態における負極板20は、平面視において、極板本体部20bと、負極タブ22tという2つの領域を備えている。極板本体部20bは、負極芯体22の表面に負極活物質層24が付与された領域である。一方、負極タブ22tは、極板本体部20bから突出した部分であり、負極活物質層24が付与されておらず、負極芯体22が露出している露出領域を含んでいる。
【0029】
負極タブ22tは、極板本体部20bの外側縁部20b1から外側(図2では短手方向Sの上方)に向かって複数突出している。これらの複数の負極タブ22tは、負極板20の長手方向Lにおいて所定の間隔を空けて設けられている。また、極板本体部20bと隣接した負極タブ22tの根本部分には、負極活物質層24が付与されている活物質層付与領域が形成されている。詳しくは後述するが、かかる構成の負極板20は、活物質付与領域切断工程S2と芯体露出領域切断工程S3を交互に複数回実施することによって製造される。これによって、多量のスパッタが飛散する負極芯体露出領域A2(図3参照)のレーザ切断を最小限に留めることができるため、負極タブ22tへのスパッタの付着量をさらに低減できる。
【0030】
負極板20を構成する各部材には、従来公知の一般的な二次電池で使用され得る材料を特に制限なく使用できる。例えば、負極芯体22には、所定の導電性を有した金属材料が使用される。かかる負極芯体22は、例えば、銅または銅合金製であることが好ましい。これらの銅系材料は、好適な導電性を有し、かつ、安価であるため、負極芯体22の材料として好適である。一方で、銅系材料を含む負極芯体22から生じたスパッタは、導電性が高いため、微小な内部短絡を生じさせやすい。しかし、本実施形態に係る電極板の製造方法によると、レーザ切断時に生じたスパッタが負極タブ22tに付着することを抑制できる。また、負極芯体22は、銅系材料以外の材料を含んでいてもよい。例えば、負極芯体22は、クロム(Cr)等の副成分を含んでいてもよい。このような高融点の副成分を負極芯体22に混入させることによって、レーザ切断時のスパッタの飛散量を低減できる。また、負極芯体22の厚みは、3μm~50μmが好ましく、5μm~20μmがより好ましい。
【0031】
一方、負極活物質層24は、負極活物質を含む層である。負極活物質には、正極活物質との関係において、電荷担体を可逆的に吸蔵・放出できる材料が用いられる。かかる負極活物質としては、炭素材料、シリコン系材料などが挙げられる。炭素材料としては、例えば、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン、非晶質炭素等を使用し得る。また、黒鉛の表面が非晶質炭素で被覆された非晶質炭素被覆黒鉛などを使用することもできる。一方、シリコン系材料としては、シリコン、シリコン酸化物(シリカ)などが挙げられる。また、シリコン系材料は、他の金属元素(例えばアルカリ土類金属)や、その酸化物を含有していてもよい。また、負極活物質層24は、負極活物質以外の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤の一例として、バインダ、増粘剤等が挙げられる。バインダの具体例として、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム系のバインダが挙げられる。また、増粘剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。また、負極活物質層24の厚みは、10μm~500μmが好ましく、30μm~400μmがより好ましく、50μm~300μmがさらに好ましい。
【0032】
上記構成の負極板20は、図1に示す前駆体準備工程S1と、活物質付与領域切断工程S2と、芯体露出領域切断工程S3とを実施することによって製造される。以下、各々の工程について説明する。
【0033】
(2)前駆体準備工程S1
本工程では、電極板の前駆体である電極前駆体を準備する。図3に示す電極前駆体は、負極板の前駆体(負極前駆体20A)である。この負極前駆体20Aは、帯状の金属箔である負極芯体22を備えている。この負極前駆体20Aの負極芯体22の面積は、製造後の負極板20(図2参照)の面積よりも広い。そして、当該負極芯体22の表面には、負極活物質層24が付与されている。なお、負極活物質層24は、短手方向Sにおける負極芯体22の中央部に、長手方向Lに沿って延びるように付与される。本明細書では、この負極活物質層24が付与された領域を「負極活物質付与領域A1」と称する。一方、負極前駆体20Aの両側縁部(短手方向Sにおける負極活物質層24の両外側の領域)は、負極活物質層24が付与されておらず、負極芯体22が露出している。本明細書では、かかる負極芯体22が露出した領域を「負極芯体露出領域A2」と称する。上記構成の負極前駆体20Aを準備する手段は、特に限定されず、従来公知の種々の手法を特に制限なく採用できる。例えば、負極活物質等を含む原料ペーストを負極芯体22の表面に塗布した後に乾燥させることによって負極前駆体20Aを作製できる。また、本工程は、負極前駆体20Aを準備できれば、特に限定されない。例えば、上記構成を有する負極前駆体20Aを購入して準備してもよい。なお、負極前駆体は、負極活物質付与領域と、負極芯体露出領域を備えていればよく、図2に示される構造に限定されない。例えば、負極前駆体は、片方の側縁部のみに負極芯体露出領域が形成された構造を採用することもできる。
【0034】
(3)活物質付与領域切断工程S2
本実施形態に係る電極板の製造方法では、負極前駆体20Aの負極活物質付与領域A1をレーザで切断する活物質付与領域切断工程S2を備えている。具体的には、活物質付与領域切断工程S2では、図3中の点線LN1に示すように、負極活物質付与領域A1の側縁部A1aに沿うように、負極活物質付与領域A1上にレーザを走査させる。これによって、製造後の負極板20へのスパッタの付着をより好適に防止できる。具体的には、本工程のように負極活物質付与領域A1をレーザ切断している間は、負極活物質層24が壁となってスパッタを遮るため、スパッタが負極板20の表面側に飛散しにくい。一方で、後述する芯体露出領域切断工程S3(図3中の点線LN2)では、壁となる負極活物質層24が存在しないため、スパッタが負極板20の表面側に飛散しやすい。すなわち、図3に示すように、芯体露出領域切断工程S3(点線LN2)と活物質付与領域切断工程S2(点線LN1)とを交互に実施することによって、負極芯体露出領域A2のレーザ切断を最低限に留めることができるため、スパッタの飛散量自体を大幅に低減できる。また、負極活物質付与領域A1の側縁部A1aは、負極活物質層24の厚みが不均一になりやすい。これに対して、活物質付与領域切断工程S2を実施すると、負極活物質付与領域A1の側縁部A1aが切除されるため、負極活物質層24の厚みが均一な負極板20の製造にも貢献できる。
【0035】
(4)芯体露出領域切断工程S3
芯体露出領域切断工程S3では、負極前駆体20Aの負極芯体露出領域A2をレーザで切断して負極タブ22tを形成する。具体的には、本工程では、まず、図3中の点線LN2に示すように、負極活物質付与領域A1から負極芯体露出領域A2に向かうように、負極前駆体20Aの短手方向Sに沿ってレーザを走査させる。そして、負極芯体露出領域A2において、負極前駆体20Aの長手方向Lに沿うようにレーザを一定距離走査させた後に、再び負極活物質付与領域A1に向かうように短手方向Sに沿ってパルスレーザを走査させる。これによって、負極芯体露出領域A2の一部が凸状に切り出されて負極タブ22t(図2参照)が形成される。そして、上述した通り、本実施形態に係る製造方法では、活物質付与領域切断工程S2(点線LN1)と、芯体露出領域切断工程S3(点線LN2)を一定の周期毎に繰り返す。これによって、負極活物質付与領域A1の側縁部A1aを切除すると共に、複数の負極タブ22tを切り出すことができる。
【0036】
ここで、本実施形態において使用される負極芯体22は、図4に示すように、第1面22aと、当該第1面22aの反対側の面であって第1面22aよりも表面粗さが小さい第2面22bとを有している。そして、本実施形態に係る製造方法では、芯体露出領域切断工程S3において、相対的に表面粗さが小さい第2面22bをレーザ非照射面とし、第1面22aにレーザLを照射する。これによって、製造後の負極板20の負極タブ22tへのスパッタSpの付着数を低減することができる。以下、本実施形態に係る電極板の製造方法がスパッタの付着数を低減できる理由について、従来の電極板の製造方法(図16参照)と対比しながら説明する。
【0037】
まず、図16に示すように、電極板の製造では、表面粗さが小さい側の面である第2面122bがレーザ照射面となり、表面粗さが大きい側の面である第1面122aがレーザ照射面となることがある。この状態で負極芯体露出領域A2(負極芯体122)のレーザ切断を実施すると、次のようなメカニズムで負極芯体122の第1面122aと第2面122bの両方に多量のスパッタSpが付着すると推測される。まず、負極芯体露出領域A2にレーザを照射すると、レーザ照射面である第2面122bが凹形状となるように負極芯体露出領域A2が僅かに撓む。そして、溶融した負極芯体122がスパッタSpとして飛散する。このとき、第2面122bは凹形状となっているため、飛散したスパッタSpが付着し易い状態となっている。したがって、スパッタSpの付着量は、第2面122bの表面粗さの大小の影響を受け難い。一方、負極芯体露出領域A2が撓んだ結果、第1面122aは、凸形状となるため、飛散したスパッタSpが付着し難いものの、表面粗さが大きい場合には表面の凹凸により飛散したスパッタSpが付し易くなる。このため、レーザ非照射面である第1面122aの表面粗さが大きい場合、切断後の負極板(典型的には負極タブ122t)におけるスパッタSpの付着量が多くなる。
【0038】
これに対して、本実施形態に係る製造方法では、図4に示すように、芯体露出領域切断工程S3において、表面粗さの小さな第2面22bをレーザ非照射面とし、第1面22aにレーザLを照射する。換言すると、本実施形態に係る製造方法は、負極芯体22の両面の表面粗さを確認する工程と、第1面22aにレーザLを照射する工程を含んでいる。これによって、飛散するスパッタSpが負極芯体22に捕集されることを防止できる。一方で、本実施形態に係る製造方法では、表面粗さの大小に影響されずに、スパッタが付着しやすいレーザ照射面に、表面粗さが大きい側の面である第1面22aを配置する。これによって、相対的に表面粗さが小さな第2面22bにおけるスパッタの付着量が大幅に低減した負極芯体22を製造することができる。
【0039】
なお、負極芯体22の第2面22bの表面粗さが小さくなるに従って、第2面22bへのスパッタSpの付着量が少なくなる傾向がある。かかる観点から、第2面22bの最大高さSzは、2.5μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.8μm以下がより好ましく、1.4μm以下が特に好ましい。一方、スパッタの付着量の低減という観点では、第2面22bの最大高さSzの下限は、特に限定されず、0.7μm以上でもよく、0.9μm以上でもよく、1.0μm以上でもよい。なお、本明細書における「最大高さSz」は、ISO25178に準じて測定したものであり、負極芯体の表面粗さ測定における最大山高さSpと最大谷深さSvとの和である。
【0040】
また、負極芯体22の平均粗さSaは、第2面22bへのスパッタSpの付着量を少なくするという観点から、0.25μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましく、0.18μm以下がより好ましく、0.14μm以下が特に好ましい。一方、第2面22bの平均粗さSaの下限は、特に限定されず、0.07μm以上でもよく、0.09μm以上でもよく、0.1μm以上でもよい。なお、本明細書における「平均粗さSa」も、ISO25178に準じて測定したものである。
【0041】
一方で、上述した通り、第1面22aは、レーザ照射面であるため、表面粗さに影響されずに一定量のスパッタが付着する。このため、スパッタの付着量を低減するという観点では、第1面22aの表面粗さは特に限定されない。例えば、第1面22aの最大高さSzは、3μm以下でもよく、2.5μm以下でもよく、1.8μm以下でもよい。一方、第1面22aの最大高さSzの下限値は、1μm以上でもよく、1.25μm以上でもよく、1.5μm以上でもよい。また、第1面22aの平均粗さSaは、0.3μm以下でもよく、0.25μm以下でもよく、0.18μm以下でもよい。また、第1面22aの平均粗さSaは、0.1μm以上でもよく、0.14μm以上でもよい。
【0042】
なお、ここに開示される電極板の製造方法において使用されるレーザの種類は、特に限定されず、電極前駆体の切断に使用され得る従来公知のレーザを特に制限なく使用できる。この種のレーザの一例として、連続発振レーザ(CWレーザ)やパルスレーザが挙げられる。これらの中でも、パルスレーザは、短い時間幅で大きなエネルギーを集中して加えることができる(ピーク出力が高い)ため、負極前駆体20Aを速やかに切断し、製造効率の向上に貢献できる。一方で、パルスレーザは、レーザ照射時の衝撃が大きいため、負極芯体22を切断する際のスパッタ飛散量が増大する原因にもなる。しかし、本実施形態に係る製造方法によると、スパッタの飛散量が増大した場合でも、負極タブ22tへのスパッタの付着量を十分に低減できるため、パルスレーザを使用することによる問題点を好適に解消できる。
【0043】
なお、ここに開示される技術におけるレーザ照射条件は、特に限定されず、レーザの種類や負極前駆体20Aの構造(典型的には、負極活物質層24や負極芯体22の厚みや材料)に応じて適宜調節することが好ましい。一例として、パルスレーザを使用する場合には、繰り返し周波数を小さくすることが好ましい。これによって、レーザの照射回数が少なくなるため、スパッタの飛散量を低減できる。かかる観点から、パルスレーザの周波数は、1000KHz以下が好ましく、800KHz以下がより好ましい。一方、パルスレーザの周波数を大きくすると、短い時間幅で大きなエネルギーを集中して加えることができるため、製造効率の向上に貢献することができる。かかる観点から、パルスレーザの周波数は、50KHz以上が好ましく、80KHz以上がより好ましい。
【0044】
また、パルスレーザを使用する場合の平均出力は、50W以上が好ましく、80W以上がより好ましく、95W以上が特に好ましい。パルスレーザの平均出力が大きくなるにつれて、負極前駆体20Aの切断が容易になる傾向がある。一方、パルスレーザの平均出力は、500W以下が好ましく、300W以下がより好ましく、285W以下が特に好ましい。パルスレーザの平均出力が小さくなるにつれて、レーザ照射時の衝撃が小さくなるため、スパッタの飛散量が少なくなる傾向がある。また、パルスレーザを使用する場合のパルス幅は、30ns以上が好ましく、50ns以上がより好ましく、60ns以上が特に好ましい。パルス幅が大きくなるにつれて、負極前駆体20Aを加熱する時間が長くなるため、負極前駆体20Aの切断が容易になる傾向がある。一方、パルスレーザのパルス幅は、300ns以下が好ましく、200ns以下がより好ましく、150ns以下がさらに好ましく、120ns以下が特に好ましい。パルス幅が小さくなるにつれて、負極芯体22の溶融量が少なくなるため、スパッタの飛散量が少なくなる傾向がある。
【0045】
また、パルスレーザのスポット径は、10μm~60μmが好ましく、20μm~50μmがより好ましく、25μm~40μmがさらに好ましい。これによって、負極前駆体20Aから負極板20を容易に切り出すことができる。さらに、パルスレーザの走査速度は、5000mm/sec以下が好ましく、3000mm/sec以下がより好ましい。このように走査速度を遅くすることによって負極芯体22の切断不良を抑制できる。一方、パルスレーザの走査速度の下限値は、特に限定されず、20mm/sec以上であってもよい。なお、切断時間の短縮による製造効率の向上という観点から、パルスレーザの走査速度の下限値は、200mm/sec以上が好ましく、500mm/sec以上がより好ましい。
【0046】
(5)他の工程
上述した通り、本実施形態に係る製造方法では、活物質付与領域切断工程S2(図3中の点線LN1)と、芯体露出領域切断工程S3(図3中の点線LN2)を一定の周期毎に繰り返すことによって、負極活物質付与領域A1の側縁部A1aを切除すると共に、複数の負極タブ22tを形成する。さらに、本実施形態に係る製造方法では、図3中の二点鎖線LN3に示すように、負極前駆体20Aの短手方向Sの中央部を長手方向Lに沿って裁断する。これによって、図2に示すように、極板本体部20bの外側縁部20b1の一辺のみに負極タブ22tが形成された負極板20を作製できる。また、本実施形態では、二点鎖線LN4に示すように、長さ方向Lにおいて所定の間隔を空けて、負極前駆体20Aを短手方向Sに沿って裁断している。これによって、所望の長さの負極板20を製造できる。なお、二点鎖線LN3、LN4に沿った負極前駆体20Aの裁断には、レーザ切断を使用せずに、切断刃、金型、カッター等を使用してもよい。また、これらの二点鎖線LN3、LN4に沿った切断は、製造後の負極板の形状に応じて適宜実施すればよく、ここに開示される技術を限定するものではない。
【0047】
2.負極板の構造
次に、本実施形態に係る電極板の製造方法を用いて製造した電極板(負極板20)の詳細な構造について説明する。
【0048】
まず、図2に示す通り、本実施形態に係る負極板20は、負極芯体22と、負極活物質層24とを備えている。また、この負極板20は、負極芯体22の表面に負極活物質層24が付与された領域である極板本体部20bと、極板本体部20bから突出し、負極活物質層24が付与されておらず、負極芯体22が露出した露出領域を含む負極タブ22tとを備えている。これらについては、既に説明したため、重複する説明を省略する。
【0049】
また、本実施形態に係る負極板20の負極タブ22tの各々は、極板本体部20bと隣接した負極タブ22tの根本部分に、負極活物質層24が付与されている活物質層付与領域を含む。この活物質層付与領域は、上述したように、活物質付与領域切断工程S2と芯体露出領域切断工程S3を繰り返して負極板20を製造することによって形成される。また、図示は省略するが、本実施形態に係る負極板20では、極板本体部20bの外側縁部20b1に、負極芯体22上に負極活物質層24の変性物が固着した変性物固着領域が形成されることがある。この変性物固着領域は、活物質付与領域切断工程S2におけるレーザの衝撃によって負極活物質層24の一部が吹き飛ばされると共に、レーザの熱によって負極活物質層24が熱変性することによって形成され得る。そして、上述した通り、本実施形態では、負極前駆体20Aの第1面(負極芯体22の表面粗さが相対的に粗い側の面)をレーザ照射面としているため、製造後の負極板20では、第1面における変性物固着領域の幅の方が、第2面における変性物固着領域の幅よりも大きくなり得る。なお、本実施形態では、負極芯体22の第1面22a(レーザ照射面)の表面粗さが第2面22b(レーザ非照射面)よりも大きいため、第1面22aに多く付着した変性物が負極芯体22から脱離しにくいという効果も発揮される。また、変性物固着領域における変性物の層の厚みは、負極活物質層24の厚みよりも小さいことが好ましい。
【0050】
そして、図5に示すように、本実施形態に係る負極板20の負極芯体22は、相対的に表面粗さが大きい第1面22aと、相対的に表面粗さが小さい第2面22bとを有している。上述した通り、本実施形態に係る製造方法では、相対的に表面粗さが小さい第2面22bがレーザ非照射面となるようにレーザ切断を行っている。このため、製造後の負極板20の負極タブ22t(露出した負極芯体22)では、第2面22bに付着した金属粒子(スパッタ)の数が第1面22aに付着した金属粒子の数よりも少なくなる。かかる負極板20を使用することによって、二次電池の内部でスパッタが脱離して微小な内部短絡を発生させることを防止できる。
【0051】
なお、負極タブ22tの各々の面における金属粒子(スパッタ)の具体的な付着数は、特に限定されない。例えば、第1面22aのスパッタ付着数は、20個/cm以上でもよく、25個/cm以上でもよく、30個/cm以上でもよい。一方、第1面22aのスパッタ付着数は、200個/cm以下が好ましく、150個/cm以下がより好ましく、100個/cm以下がさらに好ましく、80個/cm以下が特に好ましい。一方、第2面22bのスパッタ付着数は、0個/cm(スパッタが付着していない)でもよく、1個/cm以上でもよく、2個/cm以上でもよい。一方、第2面22bのスパッタ付着数は、50個/cm以下が好ましく、45個/cm以下がより好ましく、40個/cm以下が特に好ましい。また、第1面22aに対する第2面22bのスパッタ付着割合は、1/2以下が好ましく、1/3以下がより好ましく、1/4以下がさらに好ましく、1/5以下が特に好ましい。なお、「スパッタの付着数」は、顕微鏡観察にて確認された粒子径5μm以上の金属粒子の個数である。また、スパッタの形状は、球状に限定されず、楕円形状、棒状、針状、板状などにもなり得る。これらの非球形のスパッタが確認された場合には、最も大きな寸法である最大粒子径が5μm以上となった金属粒子の個数をスパッタの付着数としてカウントする。
【0052】
3.二次電池
次に、本実施形態に係る負極板20を用いて作製した二次電池について説明する。図6は、本実施形態に係る二次電池を模式的に示す斜視図である。図7は、図6中のVII-VII線に沿う模式的な縦断面図である。図8は、図6中のVIII-VIII線に沿う模式的な縦断面図である。図9は、図6中のIX-IX線に沿う模式的な横断面図である。図10は、封口板に取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。図11は、正極第2集電部と負極第2集電部が取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。図12は、本実施形態に係る二次電池の電極体を説明する斜視図である。図13は、正極第2集電部と負極第2集電部が取り付けられた電極体を模式的に示す正面図である。図14は、図13中のXIV-XIV矢視断面図である。なお、図6~14における符号Xは、二次電池100の「厚み方向」を示し、符号Yは「幅方向」を示し、符号Zは「上下方向」を示す。また、厚み方向XにおけるFは「前」を示し、Rrは「後」を示す。幅方向YにおけるLは「左」を示し、Rは「右」を示す。そして、上下方向ZにおけるUは「上」を示し、「D」は下を示す。但し、これらの方向は説明の便宜上の定めたものであり、二次電池100の設置形態を限定することを意図したものではない。
【0053】
図6~9に示すように、本実施形態に係る二次電池100は、電極体40と、電池ケース50と、正極端子60と、負極端子65と、正極集電部70と、負極集電部75と、を備えている。また、図示は省略するが、この二次電池100の電池ケース50の内部には、電極体40の他に、非水電解液も収容されている。この非水電解液は、非水系溶媒に支持塩を溶解させることによって調製される。非水系溶媒の一例として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート系溶媒が挙げられる。支持塩の一例として、LiPF等のフッ素含有リチウム塩が挙げられる。
【0054】
(1)電池ケース
電池ケース50は、電極体40を収容する筐体である。本実施形態における電池ケース50は、扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース50の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース50は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。電池ケース50は、外装体52と、封口板54と、を備えている。
【0055】
外装体52は、上面に開口52hを有する扁平な有底角型の容器である。図6に示すように、外装体52は、平面略矩形の底壁52aと、底壁52aの長辺から上下方向Zに延びる一対の長側壁52bと、底壁52aの短辺から上下方向Zに延びる一対の短側壁52cとを備えている。一方、封口板54は、外装体52の開口52hを塞ぐ、平面略矩形の板状部材である。そして、封口板54の外周縁部は、外装体52の開口52hの外周縁部と接合(例えば溶接)されている。これによって、内部が気密に封止(密閉)された電池ケース50が作製される。また、封口板54には、注液孔55と、ガス排出弁57とが設けられている。注液孔55は、外装体52と封口板54とを接合した後の電池ケース50の内部に、非水電解液を注液するために設けられている。なお、非水電解液の注液後の二次電池100では、注液孔55が封止部材56によって封止される。また、ガス排出弁57は、電池ケース50内で大量のガスが発生した際に、予め定められた圧力で破断(開口)し、電池ケース50内のガスを排出するように設計された薄肉部である。
【0056】
(2)電極端子
また、二次電池100の長辺方向Yにおける封口板54の一方(図6図7中の左側)の端部には正極端子60が取り付けられている。かかる正極端子60は、電池ケース50の外側において、板状の正極外部導電部材62と接続されている。一方、二次電池100の長辺方向Yにおける封口板54の他方(図6図7中の右側)の端部には、負極端子65が取り付けられている。かかる負極端子65にも、板状の負極外部導電部材67が取り付けられている。これらの外部導電部材(正極外部導電部材62および負極外部導電部材67)は、外部接続部材(バスバー等)を介して、他の二次電池や外部機器と接続される。なお、外部導電部材は、導電性に優れた金属(アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等)で構成されていることが好ましい。
【0057】
(3)電極集電部
二次電池100には、電池ケース50の内部に複数個(図では3個)の電極体40が収容されている。正極端子60は、電池ケース50内に収容された正極集電部70を介して、複数の電極体40の各々と接続されている。具体的には、電池ケース50の内部には、正極端子60と電極体40とを接続する正極集電部70が収容されている。図7に示すように、正極集電部70は、封口板54の内側面に沿って延びた板状の導電部材である正極第1集電部71と、上下方向Zに沿って延びた板状の導電部材である複数の正極第2集電部72とを備えている。そして、正極端子60の下端部60cは、封口板54の端子挿通孔58を通って電池ケース50の内部に向かって延び、正極第1集電部71と接続される(図7参照)。一方、正極第2集電部72は、電極体40の正極タブ群42と接続される。この正極第2集電部72と正極タブ群42との接続では、超音波接合、抵抗溶接、レーザ溶接などが用いられ、接続部分には第1接合部72aが形成される(図13参照)。なお、正極タブ群42との接合性を考慮すると、正極第2集電部72は、正極芯体12と同じ素材(例えば、アルミニウム、アルミニウム合金等)であることが好ましい。そして、図9に示すように、電極体40の正極タブ群42は、正極第2集電部72と電極体40の一方の側面40aとが対向するように折り曲げられている。これによって、正極第2集電部72の上端部と正極第1集電部71とが電気的に接続される。
【0058】
一方、負極端子65は、電池ケース50内に収容された負極集電部75を介して、複数の電極体40の各々と接続される。かかる負極側の接続構造は、上述した正極側の接続構造と略同一である。具体的には、負極集電部75は、封口板54の内側面に沿って延びた板状の導電部材である負極第1集電部76と、上下方向Zに沿って延びた板状の導電部材である複数の負極第2集電部77とを備えている。そして、負極端子65の下端部65cは、端子挿通孔59を通って電池ケース50の内部に延びて負極第1集電部76と接続される(図7参照)。また、負極第2集電部77は、電極体40の負極タブ群44と接続される。この負極第2集電部77と負極タブ群44との接続においても、超音波接合、抵抗溶接、レーザ溶接などが好ましく用いられる。そして、負極第2集電部77と負極タブ群44との接続部分には第2接合部77aが形成される(図13参照)。なお、負極タブ群44との接合性を考慮すると、負極第2集電部77は、負極芯体22と同じ素材(例えば、銅、銅合金等)であることが好ましい。そして、負極タブ群44は、負極第2集電部77と電極体40の他方の側面40bとが対向するように折り曲げられている(図9参照)。これによって、負極第2集電部77の上端部と負極第1集電部76とが電気的に接続される。
【0059】
(4)絶縁部材
また、本実施形態に係る二次電池100では、電極体40と電池ケース50との導通を防止する種々の絶縁部材が取り付けられている。具体的には、正極外部導電部材62(負極外部導電部材67)と封口板54の外側面との間には、外部絶縁部材92が介在している(図6参照)。これによって、正極外部導電部材62や負極外部導電部材67が封口板54と導通することを防止できる。また、封口板54の端子挿通孔58、59の各々にはガスケット90が装着されている(図7参照)。これによって、端子挿通孔58、59に挿通された正極端子60(又は負極端子65)が封口板54と導通することを防止できる。また、正極第1集電部71(又は負極第1集電部76)と封口板54の内側面との間には、内部絶縁部材94が配置されている。この内部絶縁部材94は、正極第1集電部71(又は負極第1集電部76)と封口板54の内側面との間に介在する板状のベース部94aを備えている。これによって、正極第1集電部71や負極第1集電部76が封口板54と導通することを防止できる。さらに、内部絶縁部材94は、封口板54の内側面から電極体40に向かって突出する突出部94bを備えている。これによって、上下方向Zにおける電極体40の移動を規制し、電極体40と封口板54が直接接触することを防止できる。加えて、電極体40は、絶縁性の樹脂シートからなる電極体ホルダ98(図8参照)に覆われた状態で電池ケース50の内部に収容されている。これによって、電極体40と外装体52が直接接触することを防止できる。なお、上述した各々の絶縁部材の材料は、所定の絶縁性を有していれば特に限定されない。一例として、ポリオレフィン系樹脂(例、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE))、フッ素系樹脂(例、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))等の合成樹脂材料を使用できる。
【0060】
(5)電極体
電極体は、正極板10と負極板20を備えている。図12に示すように、本実施形態における電極体40は捲回電極体である。このような捲回電極体では、セパレータ30を介して一対の電極板(正極板10、負極板20)が対向した状態で捲回される。この電極体40を作製する際には、まず、長尺な帯状のセパレータ30を介在させつつ、長尺な帯状の正極板10と長尺な帯状の負極板20とを積層させた積層体を形成する。そして、この積層体を長手方向に沿って捲回した後に、最外周に配置されたセパレータ30の終端部30aに巻止めテープ38(図13参照)を貼り付ける。以下、電極体40を構成する各部材について説明する。
【0061】
(a)セパレータ
まず、セパレータ30は、正極板10と負極板20との接触を防止すると共に、電荷担体を通過させる機能を有したシート状の部材である。かかるセパレータ30の一例として、電荷担体が通過し得る微細な孔が複数形成された樹脂シートが挙げられる。かかる樹脂シートは、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP))からなる樹脂層を含むことが好ましい。また、上記樹脂シートの表面には、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、チタニア等の無機フィラーを含む耐熱層が形成されていてもよい。
【0062】
(b)正極板
正極板10は、箔状の金属部材である正極芯体12と、正極芯体12の表面に付与された正極活物質層14と、正極板10の側縁部10aに隣接するように正極芯体12の表面に付与された保護層16と、を備えている。正極芯体12には、所定の導電性を有した金属材料が使用される。かかる正極芯体12には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス等が使用され得る。また、正極板10の側縁部10aには、短手方向Sの外側(図12中の左側)に向かって突出する正極タブ12tが、正極板10の長手方向Lにおいて所定の間隔を空けて複数設けられている。この正極タブ12tは、正極活物質層14や保護層16が付与されておらず、正極芯体12が露出した領域である。そして、捲回後の電極体40では、正極タブ12tが複数枚積層された正極タブ群42が形成される。上述した通り、この正極タブ群42は、正極第2集電部72と接続される(図13参照)。なお、電池性能の観点から、正極活物質層14と保護層16は、正極芯体12の両面に付与されていることが好ましい。また、保護層16は、その一部が正極活物質層14の側縁部を覆うように付与されていてもよい。なお、正極活物質層14や保護層16の材料は、一般的な二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)で使用され得る従来公知の材料を特に制限なく使用でき、ここに開示される技術を限定するものではないため詳細な説明を省略する。
【0063】
(c)負極板
一方、この二次電池100では、本実施形態に係る負極板20が使用されている。上述した通り、本実施形態に係る電極板の製造方法では、負極前駆体20Aの負極芯体露出領域A2(負極芯体22)を切断する際に、相対的に表面粗さが小さい第2面22bをレーザ非照射面とし、相対的に表面粗さが大きい第1面22aをレーザ照射面としている。このため、製造後の負極板20では、負極タブ22tにおけるスパッタの付着量が低減している。このような負極板20を使用することによって、二次電池100の内部で負極タブ22tからスパッタが脱離して微小な内部短絡を生じさせることを防止できる。
【0064】
上記構成の正極板10と負極板20とセパレータ30とを含む積層体を捲回することによって、セパレータ30を介して正極活物質層14と負極活物質層24とが対向したコア部46を有する電極体40が形成される(図13参照)。そして、図12及び図13に示すように、捲回後の電極体40では、負極タブ22tが複数枚積層された負極タブ群44が形成される。本実施形態では、負極板20を一回捲回する度に負極タブ22tが1枚積層されるように、負極板20の長手方向Lにおける負極タブ22tの間隔が設定されている。この結果、捲回後の電極体40では、図14に示すように、負極タブ群44の一方の面44aに負極タブ22t(負極芯体22)の第1面22aが配置され、他方の面44bに負極タブ22t(負極芯体22)の第2面22bが配置される。このような負極タブ22tが形成される場合には、負極芯体22の第1面22aが配置される方の面44aに負極第2集電部77を接続し、負極第2集電部77と接続されていない他方の面44bに負極芯体22(負極タブ22t)の第2面22bを配置することが好ましい。これによって、スパッタの付着量が多い第1面22aを負極タブ22tと負極第2集電部77との間(又は複数枚の負極タブ22tの間)に封入できるため、負極板20からのスパッタの脱離をより好適に抑制できる。なお、負極タブ群44における負極タブ22tの第1面22aの配置位置は、ここに開示される技術を限定するものではない。ここに開示される技術によると、負極タブ22tに付着するスパッタの総量を低減できるため、負極第2集電部77と接続されていない他方の面44bに第1面22aを配置した場合でも、従来の技術と比べて負極タブ22tから脱離するスパッタの量を低減できる。
【0065】
4.他の実施形態
以上、ここに開示される技術の一実施形態について説明した。なお、上述の実施形態は、ここに開示される技術が適用される一例を示したものであり、ここに開示される技術を限定するものではない。
【0066】
例えば、上述の実施形態では、ここに開示される技術の対象を負極板としている。しかし、ここに開示される技術の対象は、負極板に限定されず、正極板であってもよい。かかる正極板を製造対象とした場合であっても、製造後の電極板(正極板)へのスパッタの付着数を低減することができる。
【0067】
また、電極体の構造も、ここに開示される技術を限定する要素ではない。例えば、上述の実施形態における電極体40は、負極板20を一回捲回する度に負極タブ22tが1枚積層されるような構成を採用している。しかし、電極体の構成は、特に限定されず、負極板を一回捲回する度に負極タブが2枚積層されるような構成を採用することもできる。この場合には、図15に示すように、負極タブ22t(負極芯体22)の第1面22aが幅方向Yの内側に配置されるように負極板20の捲回方向を調節することが好ましい。これによって、スパッタの付着量が多い第1面22aを負極タブ22tの間に封入できる。
【0068】
また、上述の実施形態では、電極体として捲回電極体を使用している。しかし、電極体は、正極板と負極板を備えていればよく、捲回電極体に限定されない。電極体の構造の他の例として、セパレータを介在させながら、複数枚の正極板と負極板とを順次積層させた積層電極体が挙げられる。この種の積層電極体用の負極板を作製するには、図3中の二点鎖線LN4に示すような短手方向Sに沿った裁断を、1つの負極タブ22t毎に実施するとよい。詳細な説明は省略するが、正極板の作製も同様である。そして、正極タブが同じ位置に積層され、かつ、負極板の負極タブが同じ位置に積層されるように、セパレータを介在させながら複数枚の正極板と複数枚の負極板を順次積層する。これによって積層電極体を作製できる。
【0069】
また、上述の実施形態では、電池ケース50の内部に3つの電極体40が収容された高容量の二次電池100を対象としている。しかし、1つの電池ケース内に収容される電極体の数は、特に限定されず、2つ以上(複数)であってもよいし、1つであってもよい。さらに、上述の実施形態に係る二次電池100は、リチウムイオンが電荷担体であるリチウムイオン二次電池である。しかし、ここに開示される二次電池は、リチウムイオン二次電池に限定されない。他の二次電池(例えばニッケル水素電池など)の製造工程においても、電極前駆体の活物質付与領域と芯体露出領域をレーザで切断する工程が存在しているため、ここに開示される技術を特に制限なく適用することができる。
【0070】
また、上述の実施形態に係る二次電池100は、電解質として非水電解液を用いた非水電解液二次電池である。しかし、ここに開示される技術は、非水電解液二次電池以外の電池に適用することもできる。二次電池の構造の他の例として、全固体電池が挙げられる。この全固体電池では、正極板と負極板との間に介在させるセパレータとして、固体電解質をシート状に成形した固体電解質層が用いられる。この全固体電池では、セパレータと電解質とが一体化され、電極体の内部に含まれるため、電解液の漏出などを防止できる。この種の全固体電池の製造工程においても、電極前駆体の芯体露出領域をレーザで切断する工程が存在しているため、ここに開示される技術を特に制限なく適用することができる。
【0071】
[試験例]
以下、本発明に関する試験例を説明する。なお、以下に記載する試験例の内容は、本発明を限定することを意図したものではない。
【0072】
1.サンプルの準備
(実施例1)
実施例1では、負極前駆体の負極活物質付与領域と芯体露出領域をレーザ切断することによって、リチウムイオン二次電池用の負極を製造した。まず、厚み8μmの負極芯体(銅箔)の両面に、厚さ80μmの負極活物質層が付与された負極前駆体を準備した。この負極前駆体の負極活物質層には、負極活物質と、増粘剤と、バインダとが98.3:0.7:1.0の割合で含まれている。なお、負極活物質には黒鉛(グラファイト)を使用し、増粘剤にはカルボキシメチルセルロース(CMC)を使用し、バインダにはスチレンブタジエンゴム(SBR)を使用した。次に、所定の条件で負極前駆体から負極板を切り出した。具体的には、実施例1では、パルス幅を120ns、パワーを35%、出力を105W、周波数を300kHzに設定したパルスレーザを使用した。そして、実施例1では、相対的に表面粗さが小さい側の面をレーザ非照射面とし、相対的に表面粗さの大きい側の面をレーザ照射面として負極板の切り出しを行った。
【0073】
(比較例1)
比較例1では、負極前駆体から負極板を切り出す際に、相対的に表面粗さの小さい側の面をレーザ照射面とした点を除いて、実施例1と同じ条件で負極板を製造した。
【0074】
(実施例2、比較例2)
実施例2では、パルスレーザのパルス幅を120ns、パワーを95%、出力を285W、周波数を300kHzに設定した点を除いて、実施例1と同じ条件で負極板の切り出しを行った。また、比較例2では、相対的に表面粗さの小さい側の面をレーザ照射面とした点を除いて、実施例2と同じ条件で負極板を製造した。
【0075】
(実施例3、比較例3)
実施例3では、パルスレーザのパルス幅を120ns、パワーを95%、出力を95W、周波数を100kHzに設定した点を除いて、実施例1と同じ条件で負極板の切り出しを行った。また、比較例3では、相対的に表面粗さの小さい側の面をレーザ照射面とした点を除いて、実施例3と同じ条件で負極板を製造した。
【0076】
(実施例4、比較例4)
実施例4では、パルスレーザのパルス幅を60ns、パワーを35%、出力を105W、周波数を750kHzに設定した点を除いて、実施例1と同じ条件で負極板の切り出しを行った。また、比較例4では、相対的に表面粗さの小さい側の面をレーザ照射面とした点を除いて、実施例4と同じ条件で負極板を製造した。
【0077】
(実施例5、比較例5)
実施例5では、パルスレーザのパルス幅を60ns、パワーを95%、出力を114W、周波数を300kHzに設定した点を除いて、実施例1と同じ条件で負極板の切り出しを行った。また、比較例5では、相対的に表面粗さの小さい側の面をレーザ照射面とした点を除いて、実施例5と同じ条件で負極板を製造した。
【0078】
2.評価試験
(1)表面粗さの測定
本試験では、レーザ切断による負極板の切り出しを行う前に、芯体露出領域(露出した負極芯体)のレーザ照射面と、その反対側の面の表面粗さを測定した。具体的には、ISO25178に準じて、負極芯体の両面の最大高さSzと平均粗さSaを測定した。測定結果を表1に示す。
【0079】
(2)スパッタ付着数の測定
本試験では、レーザ切断後の負極板の負極タブにおけるスパッタの付着数を測定した。具体的には、負極タブの上面と下面の各々に粘着テープを貼り付け、当該粘着テープを剥がすことによって、負極タブに付着していたスパッタを採集した。このとき、粘着テープの貼り付け面積は、各々の面において3.7cmとした。そして、この粘着テープを台紙も貼り付けて顕微鏡で観察することによって、各例の負極タブのレーザ照射面とレーザ非照射面のスパッタ付着数を測定した。なお、スパッタ付着数の測定は、光学顕微鏡(株式会社キーエンス製、型式:VHX-6000)を用いて撮影した粘着テープの顕微鏡写真に画像解析を行い、5μm以上の金属粒子の個数をカウントすることによって実施した。写真撮影及び画像解析の詳細な条件は以下の通りである。また、測定結果を表1に示す。なお、表1におけるスパッタ付着数は、単位面積あたりの個数(個/cm)を示す。
【0080】
[撮影条件]
倍率 :200倍
撮影モード :画像連結
画像色調整 :R=1.65、G=1.00、B=2.22
リング照明 :180(1160 lux)ステージ-照明間距離67mm
シャッタースピード:33.00ms
【0081】
[解析条件(自動面積計測)]
色相 :0~45、240~255
彩度 :35~255
分離度 :100
【0082】
【表1】
【0083】
表1に示すように、実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1では、負極タブにおけるスパッタの付着数が低減していた。そして、レーザ照射面とレーザ非照射面の各々におけるスパッタの付着数を確認したところ、表面粗さが小さい側の面をレーザ非照射面とした実施例1では、当該レーザ非照射面におけるスパッタの付着数が比較例1と比べて特に顕著に低減していた。また、実施例2~5と比較例2~6との比較においても同様の傾向が確認された。このことから、表面粗さが小さい側の面をレーザ非照射面とし、表面粗さの大きい側の面をレーザ照射面とすることによって、製造後の電極板におけるスパッタの付着数を低減できることが分かった。
【0084】
以上、本発明を詳細に説明したが、上述の説明は例示にすぎない。すなわち、ここで開示される技術には上述した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0085】
10 正極板
20 負極板
20A 負極前駆体
22 負極芯体
22t 負極タブ
24 負極活物質層
30 セパレータ
40 電極体
50 電池ケース
60 正極端子
65 負極端子
70 正極集電部
75 負極集電部
100 二次電池
A1 負極活物質付与領域
A2 負極芯体露出領域
S1 前駆体準備工程
S2 活物質付与領域切断工程
S3 芯体露出領域切断工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16